説明

肩掛けベルト

【解決手段】携行物を吊り下げる肩掛けベルト1において、帯体3を肩パッド2の両側で互いに離間する連結部4により取着し、肩パッド2は両連結部4を結ぶ帯体3の長手方向Xで伸縮し得る伸縮材により設けられ、一方の連結部4を含む片側領域部9と、他方の連結部4を含む片側領域部10と、それらの片側領域部9,10間の中間領域部11とに肩パッド2を帯体3の長手方向Xで区分した場合、中間領域部11の伸長率よりも片側領域部9,10の伸長率を大きくした。肩パッド2は長手方向Xばかりでなくその長手方向Xに対し直交する全方向Y,Zで伸縮し得る伸縮材により設けられている。肩パッド2は主体7の外周縁に取着された縁取部8を有し、その主体7と縁取部8とを共に前記伸縮材により設けた。
【効果】各種携行物を肩に吊り下げて使用する際に肩に加わる負荷の変動を抑えて使用者の疲労を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、手持ち機器や手持ち工具やバッグやリュックやカメラケースやクーラーボックスやキャディバッグなどの携行物を肩に掛けて携行する際に使用する肩掛けベルトに係り、特に、刈払機やブロワーや噴霧器等の手持ち機器並びにハンマドリル等の手持ち工具などのように比較的重量がある携行物を上下方向や前後方向や左右方向に動かして使用する際に肩に吊り下げたり、動力源等から振動が伝わる携行物を肩に吊り下げたりする場合に適した肩掛けベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2(a)(b)に示す従来の肩掛けベルト1の肩パッド2においては、発泡ウレタン素材を扁平な直方体に成形したものを塩化ビニール等の樹脂シートで包み込むとともに、帯体3が挿通された帯通し2aが設けられている。なお、下記特許文献1にもこれと同種の肩掛けベルトが開示されている。
【特許文献1】特開2004−49621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の肩パッド2は帯体3に対しその長手方向Xへ移動し得るため、作業時に肩パッド2が移動してずれたり肩から外れると、肩や首の付根が痛くなったり、携行物の振動が直接肩に伝わり、疲労が増大した。また、ずれた肩パッド2を気にするあまり、ストレスが溜まり、さらに疲労が増大した。例えば、携行物が刈払機である場合、作業時には刈払機を多方向に振って使用するとともに、動力源からの振動が肩に伝わり、肩には多方向の負荷が掛かる。
【0004】
この発明は、各種携行物を肩に吊り下げて使用する際に肩に加わる負荷の変動を抑えて使用者の疲労を低減することができる肩掛けベルトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1(a)(b)(c)(d)に示す第1実施形態、図1(e)に示す第2実施形態、図1(f)または図1(g)に示す第3実施形態)の符号を援用して本発明を説明する。
【0006】
請求項1の発明にかかる肩掛けベルトは、携行物を吊り下げるためのものであって、第2〜3実施形態に対応し、下記のように構成されている。
この肩掛けベルト1においては、帯体3を肩パッド2の両側で互いに離間する両連結部4により取着している。この肩パッド2はこの両連結部4を結ぶ帯体3の長手方向Xで伸縮し得る伸縮材により設けられている。この両連結部4のうち一方の連結部4側の片側領域部9と、この両連結部4のうち他方の連結部4側の片側領域部10と、それらの片側領域部9,10間の中間領域部11とにこの肩パッド2を帯体3の長手方向Xで区分した場合、この肩パッド2の中間領域部11の伸長率よりもこの肩パッド2の片側領域部9,10の伸長率を大きくしている。請求項1の発明では、肩パッド2が長手方向Xへ伸縮するため、携帯物により生じる長手方向Xへの荷重や衝撃を分散して吸収することができるとともに、肩に当接している中間領域部11よりも片側領域部9,10が伸縮するため、その中間領域部11の形状変化を長手方向Xで抑制して肩や首の付根に対する肩パッド2の食い込みを防止することができる。なお、帯体3については、携行物を肩に掛けて携行する際の安定上、非伸縮性(帯体3を非伸縮材によりまたは極僅かにしか伸縮しない材質により設けた場合の状態)であることが好ましい。
【0007】
請求項2の発明にかかる肩掛けベルトは、携行物を吊り下げるためのものであって、第1〜3実施形態に対応し、下記のように構成されている。
この肩掛けベルト1においては、帯体3を肩パッド2の両側で互いに離間する両連結部4により取着している。この肩パッド2はこの両連結部4を結ぶ帯体3の長手方向Xばかりでなくその長手方向Xに対し直交する全方向Y,Zで伸縮し得る伸縮材により設けられている。請求項2の発明では、肩パッド2が多方向X,Y,Zへ伸縮するため、携帯物により生じる多方向X,Y,Zへの荷重や衝撃を分散して吸収することができる。なお、帯体3については、携行物を肩に掛けて携行する際の安定上、非伸縮性(帯体3を非伸縮材によりまたは極僅かにしか伸縮しない材質により設けた場合の状態)であることが好ましい。
【0008】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明(第1〜3実施形態に対応)において、前記肩パッド2は主体7の外周縁に取着された縁取部8を有し、その主体7と縁取部8とを共に前記伸縮材により設けている。請求項3の発明では、肩パッド2を縁取部8により補強するばかりでなく、肩パッド2の全体の伸縮性を維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、肩掛けベルト1において各種携行物を肩に吊り下げて使用する際に肩に加わる負荷の変動を抑えて使用者の疲労を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の第1実施形態にかかる肩掛けベルトについて図1(a)(b)(c)(d)を参照して説明する。
各種携行物を吊り下げる肩掛けベルト1においては、肩パッド2の両側で両帯体3の端部3aが互いに離間する両連結部4により取着され、この両帯体3が長さ調節金具5により互いに連結されているとともに、各種携行物を保持するための吊下フック6がこの帯体3に1個以上取り付けられている。この連結部4で肩パッド2と帯体3の端部3aとは、接着や溶着によりまたは縫製によりまたはそれらの組み合わせることにより、互いに取着されている。この両連結部4を結ぶ帯体3の長手方向Xに対し直交する幅方向Yで、肩パッド2の幅寸法W2が両帯体3の端部3aの幅寸法W3よりも大きくなっている。この肩パッド2は、長手方向X及び幅方向Yに対し直交する厚さ方向Zで厚み寸法T2が同一の薄い板状をなす主体7と、その主体7の外周縁全体に縫製等により取着された縁取部8とを備えている。この肩パッド2の主体7と縁取部8とは、共に、長手方向Xばかりでなく、その長手方向Xに対し直交する全方向(幅方向Yや厚さ方向Z等)で伸縮し得る伸縮材により設けられ、クッション性を有している。この伸縮材としては、例えば、天然繊維や合成繊維等を用いて伸縮可能に織込んだ布地(ゴム繊布やジャージ生地等)、または、発泡ウレタンや合成ゴムや天然ゴムや合成樹脂等を用いて成形したもの、または、それらを組み合わせたものを採用する。一方、前記帯体3は、非伸縮材により、または、極僅かにしか伸縮しない材質により設けられている。この非伸縮材としては、例えば、天然繊維や合成繊維等を用いて非伸縮性を有するように織込んだ布地(綿繊布やPP系繊維テープ等)、または、金属や合成樹脂等を用いて成形したもの、または、それらを組み合わせたものを採用する。
【0011】
次に、本発明の第2実施形態にかかる肩掛けベルトについて第1実施形態との相違点を中心に図1(e)を参照して説明する。
肩パッド2は、両連結部4のうち一方の連結部4を含む片側領域部9と、両連結部4のうち他方の連結部4を含む片側領域部10と、それらの片側領域部9,10間の中間領域部11とに長手方向Xで区分されている。この中間領域部11と片側領域部9,10とは、それぞれ、主体7と、それらの主体7の外周縁全体及び各主体7間の境界縁に取着された縁取部8とを備えている。この肩パッド2の主体7と縁取部8とは、共に、長手方向Xばかりでなく、その長手方向Xに対し直交する全方向(幅方向Yや厚さ方向Z等)で伸縮し得る伸縮材により設けられ、クッション性を有している。この肩パッド2において、中間領域部11の伸長率よりも片側領域部9,10の伸長率が大きくなっている。片側領域部9の伸長率と片側領域部10の伸長率とは、互いに同一になっているが、一方の伸長率が他方の伸長率よりも大きくしてもよい。その際、中間領域部11の主体7の伸長率よりも片側領域部9,10の主体7の伸長率を大きくするとともに、中間領域部11の縁取部8の伸長率よりも片側領域部9,10の縁取部8の伸長率を大きくするが、中間領域部11の縁取部8の伸長率と片側領域部9,10の縁取部8の伸長率とを互いに同一にしてもよく、肩パッド2の全体として中間領域部11と片側領域部9,10との間で伸長率に差が生じればよい。この中間領域部11(主体7及び縁取部8)とこの片側領域部9,10(主体7及び縁取部8)との間で、それらの材質を互いに変更したり、それらの編目や織目を変えて密度(組成内の空隙容積)を互いに変更したりして、それらの伸縮率に差を持たせることができる。
【0012】
次に、本発明の第3実施形態にかかる肩掛けベルトについて第1実施形態との相違点を中心に図1(f)または図1(g)を参照して説明する。
肩パッド2は、両連結部4のうち一方の連結部4を含む片側領域部9と、両連結部4のうち他方の連結部4を含む片側領域部10と、それらの片側領域部9,10間の中間領域部11とに長手方向Xで区分されている。この肩パッド2の主体7と縁取部8とは、共に、長手方向Xばかりでなく、その長手方向Xに対し直交する全方向(幅方向Yや厚さ方向Z等)で伸縮し得る伸縮材により設けられ、クッション性を有している。図1(f)に示すように、この肩パッド2において、中間領域部11の幅寸法W11よりも片側領域部9,10の幅寸法W9,W10を小さくしてそれらの外形状を互いに変更しているので、中間領域部11の伸長率よりも片側領域部9,10の伸長率が大きくなっている。片側領域部9の幅寸法W9と片側領域部10の幅寸法W10とは、互いに同一になっているが、一方の幅寸法が他方の幅寸法よりも大きくしてもよい。また、図1(g)に示すように、この肩パッド2において、中間領域部11の厚み寸法T11よりも片側領域部9,10の厚み寸法T9,T10を小さくしてそれらの外形状を互いに変更しているので、中間領域部11の伸長率よりも片側領域部9,10の伸長率が大きくなっている。片側領域部9の厚み寸法T9と片側領域部10の厚み寸法T10とは、互いに同一になっているが、一方の厚み寸法が他方の厚み寸法よりも大きくしてもよい。その際、中間領域部11の主体7の伸長率よりも片側領域部9,10の主体7の伸長率を大きくするとともに、中間領域部11の縁取部8の伸長率よりも片側領域部9,10の縁取部8の伸長率を大きくするが、中間領域部11の縁取部8の伸長率と片側領域部9,10の縁取部8の伸長率とを互いに同一にしてもよく、肩パッド2の全体として中間領域部11と片側領域部9,10との間で伸長率に差が生じればよい。図示しないが、図1(f)に示す構成と図1(g)に示す構成とを互いに組み合わせてもよい。
【0013】
第2〜3実施形態のように、肩パッド2を一方の片側領域部9と他方の片側領域部10とそれらの片側領域部9,10間の中間領域部11とで長手方向Xへ三区分する以外に、肩パッド2を長手方向Xへ三区分以上してもよく、その場合には中央側領域部から長手方向Xへ離れる両側領域部ほど伸長率を大きくする。
【0014】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 第1〜3実施形態の肩掛けベルト1では、肩パッド2が帯体3の長手方向Xばかりでなくその長手方向Xに対し直交する全方向(幅方向Yや厚さ方向Z等)で伸縮し得る伸縮材により設けられているので、肩パッド2が肩の凹凸に倣うよう変形して肩に対する肩パッド2の密着度が増すとともに、携帯物により生じる多方向への荷重や衝撃を分散して吸収することができる。例えば、刈払機や噴霧器等の動力源からの振動をも吸収することができる。
【0015】
* 第2〜3実施形態の肩掛けベルト1の肩パッド2では、過度の荷重が加わっても、肩に当接している中間領域部11よりも帯体3側の片側領域部9,10が伸び縮みするため、肩に当接している中間領域部11の形状変化を長手方向Xや幅方向Y等で抑制し、携帯物により生じる多方向への荷重や衝撃を分散して吸収することができるとともに、肩や首の付根に対する肩パッド2の食い込みまでも防止することができる。
【0016】
* 第1〜3実施形態の肩掛けベルト1の肩パッド2では、伸縮性を有する主体7を縁取部8により補強することができるばかりでなく、この縁取部8にも伸縮性を持たせているため、肩パッド2の全体の伸縮性を維持することができる。
【0017】
* 第1〜3実施形態の肩掛けベルト1では、比較的幅寸法の広い肩パッド2を有し、この肩パッド2の長手方向Xの両側に帯体3を取着しているので、肩に対する肩パッド2の当接面積が大きくなって肩の一部に過度の負荷が加わることを防止するとともに、携行物を多方向へ動かしても肩パッド2がずれたり肩から外れたりすることを防止する。
【0018】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項1の発明を前提とする第4の発明(第2実施形態に対応)において、前記肩パッド2の中間領域部11と前記肩パッド2の片側領域部9,10との間でそれらの材質または密度を互いに変更して、この中間領域部11の伸長率よりもこの片側領域部9,10の伸長率を大きくした。第4の発明では、肩パッド2において材質または密度を変更するだけで伸長率差を持たせることができる。
【0019】
第4の発明を前提とする第5の発明(第2実施形態に対応)において、前記肩パッド2の中間領域部11と前記肩パッド2の片側領域部9,10とは、それぞれ、主体7の外周縁に取着された縁取部8と、この中間領域部11と片側領域部9,10との境界縁に取着された縁取部8とを有し、その主体7と両縁取部8とを共に前記伸縮材により設けた。第5の発明では、肩パッド2の全体の伸縮性を維持することができる。
【0020】
請求項1の発明を前提とする第6の発明(第3実施形態に対応)において、前記肩パッド2の中間領域部11と前記肩パッド2の片側領域部9,10との間でそれらの外形状を互いに変更して、この中間領域部11の伸長率よりもこの片側領域部9,10の伸長率を大きくした。第6の発明では、肩パッド2の外形状を変更するだけの簡単な構造で伸長率差を持たせることができる。
【0021】
第6の発明を前提とする第7の発明(第3実施形態に対応)において、前記肩パッド2の中間領域部11と前記肩パッド2の片側領域部9,10とは、それぞれ、主体7の外周縁に取着された縁取部8を有し、その主体7と縁取部8とを共に前記伸縮材により設けた。第7の発明では、肩パッド2の全体の伸縮性を維持することができる。
【0022】
請求項1の発明または第4の発明または第5の発明または第6の発明または第7の発明を前提とする第8の発明において、前記肩パッド2は両連結部4を結ぶ帯体3の長手方向Xばかりでなくその長手方向Xに対し直交する全方向Y,Zで伸縮し得る伸縮材により設けられている。第8の発明では、携帯物によりら生じる多方向X,Y,Zへの荷重や衝撃を分散して吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は第1実施形態にかかる肩掛けベルトの使用状態を示す斜視図であり、(b)はその肩掛けベルトを示す斜視図であり、(c)はその肩掛けベルトの肩パッドを示す部分平面図であり、(d)は同じく部分正面図であり、(e)は第2実施形態にかかる肩掛けベルトの肩パッドを示す部分平面図であり、(f)は第3実施形態にかかる肩掛けベルトの肩パッドを示す部分平面図であり、(g)は第3実施形態にかかる肩掛けベルトの肩パッドを示す部分正面図である。
【図2】(a)は従来の肩掛けベルトを示す斜視図であり、(b)は同じくその肩掛けベルトの肩パッドを示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…肩掛けベルト、2…肩パッド、3…帯体、4…連結部、7…主体、8…縁取部、9,10…片側領域部、11…中間領域部、X…長手方向、Y…幅方向、Z…厚さ方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行物を吊り下げる肩掛けベルトにおいて、帯体を肩パッドの両側で互いに離間する両連結部により取着し、この肩パッドはこの両連結部を結ぶ帯体の長手方向で伸縮し得る伸縮材により設けられ、この両連結部のうち一方の連結部側の片側領域部と、この両連結部のうち他方の連結部側の片側領域部と、それらの片側領域部間の中間領域部とにこの肩パッドを帯体の長手方向で区分した場合、この肩パッドの中間領域部の伸長率よりもこの肩パッドの片側領域部の伸長率を大きくしたことを特徴とする肩掛けベルト。
【請求項2】
携行物を吊り下げる肩掛けベルトにおいて、帯体を肩パッドの両側で互いに離間する両連結部により取着し、この肩パッドはこの両連結部を結ぶ帯体の長手方向ばかりでなくその長手方向に対し直交する全方向で伸縮し得る伸縮材により設けられていることを特徴とする肩掛けベルト。
【請求項3】
前記肩パッドは主体の外周縁に取着された縁取部を有し、その主体と縁取部とを共に前記伸縮材により設けたことを特徴とする請求項2に記載の肩掛けベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−220575(P2008−220575A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62025(P2007−62025)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(592013325)ダイアトップ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】