説明

育苗ポットおよびその製造方法

【課題】ポット材料の一部として焼酎粕を用いるパルプモールド成形の育苗ポットにおいて、成形時間を短縮することが可能な構造と製造方法を提供する。
【解決手段】ポット構造として、新聞故紙等のパルプ材料よりなる育苗ポット本体の表面に焼酎粕液を塗布し乾燥させた粕表面層を有する。ポット製造方法として、新聞故紙等のパルプ材料を用いて育苗ポット本体を成形する工程と、成形した育苗ポット本体の表面に焼酎粕液を塗布し乾燥させて粕表面層を形成する工程とを有する。塗布は浸漬法による。育苗ポット本体をなすパルプ材料としては竹を用いても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を育てるために用いる育苗ポットとその製造方法に係り、更に詳しくは、ポット材料の一部として焼酎粕を用いる育苗ポットとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼酎粕は、焼酎を製造する際に生じる発酵粕であり、従来は用途のないものとして海洋投棄または焼却処分するのが一般であったところ、その成分中に肥料や飼料として利用できるものが含まれていることから、昨今これを有効利用する方法が種々研究されている。その一つとして、新聞故(古)紙と焼酎粕を混合して育苗ポットを成形することが検討されており、すでに育苗ポットとして苗の生育効果も確認されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、焼酎粕は糊状でフリーネスが低いので、故紙と混合してパルプモールドを成形する際に、脱水性が良くなく、脱水時間が非常に長くかかっており、そのため生産性が低いと云う問題がある。ちなみにフリーネス値(濾水度:網に一定量のパルプと水の混合物を載せて一定時間内に網目から落ちる水量を計測する)について、新聞故紙は400〜500ml(現状での適正値)であるのに対して、新聞故紙と焼酎粕の混合原料は70〜90mlであるに過ぎない。またモールド成形における脱水時間とは、成形型から離型可能となる水分率75%になるまでの時間のことを云うが、この脱水時間が、通常の新聞故紙のポット型モールドにおいては3〜5秒であるのに対して、焼酎粕混合原料のモールドでは40〜60秒と、約10倍の時間がかかっている。
【0004】
また、新聞故紙と焼酎粕を混合して育苗ポットを成形する場合には、成形型や金網の洗浄が困難であると云う問題がある。すなわち、パルプモールド工程の連続操業においては成形型と金網を水で洗浄する必要があり、新聞故紙原料のパルプであれば、洗浄に特段の問題を生じることはない。これに対して、故紙と焼酎粕を混合した液はその粘性が非常に高いことから、細片が型や装置に滞留したり膜を残したりし易く、これを取り除くには高頻度での洗浄が必要となる。また、装置の構造上、洗浄水が原料液に入り込むことから、高頻度で洗浄を繰り返すと原料液の濃度を下げることになり、パルプモールド成形が困難となると云う問題もある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−265052号公報
【特許文献2】特開2002−65073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて、ポット材料の一部として焼酎粕を用いるパルプモールド成形の育苗ポットにおいて、その脱水時間を短縮することが可能な育苗ポットの構造と製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による育苗ポットは、新聞故紙等のパルプ材料よりなる育苗ポット本体の表面に焼酎粕液を塗布し乾燥させた粕表面層を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2による育苗ポットは、上記した請求項1記載の育苗ポットにおいて、育苗ポット本体をなすパルプ材料として、竹を用いることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3による育苗ポットの製造方法は、新聞故紙等のパルプ材料を用いて育苗ポット本体を成形する工程と、成形した育苗ポット本体の表面に焼酎粕液を塗布し乾燥させて粕表面層を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4による育苗ポットの製造方法は、上記した請求項3記載の製造方法において、塗布は浸漬法によることを特徴とする。
【0011】
更にまた、本発明の請求項5による育苗ポットの製造方法は、上記した請求項3記載の製造方法において、育苗ポット本体をなすパルプ材料として、竹を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0013】
すなわち、上記構成を有する本発明においては、新聞故紙等のパルプ材料と焼酎粕の混合原料を用いて育苗ポットをモールド成形するのではなく、新聞故紙等のパルプ材料により育苗ポット(育苗ポット本体)をモールド成形してからその表面に焼酎粕液を塗布し乾燥させて粕表面層を形成する。したがって本発明によれば、育苗ポット本体のモールド成形に際してその原料に焼酎粕は混合されていないので、脱水時間は短くて済み、成形品に焼酎粕液を塗布する時間を加算しても、トータルの時間は焼酎粕混合原料の場合よりも短くて済む。したがって、育苗ポットの成形に要する時間を実質的に短縮することが可能となる。焼酎粕液の塗布方法としては、その作業性が良いことから、育苗ポット本体を焼酎粕液槽に丸ごと浸す浸漬法が適している。
【0014】
また、本発明の育苗ポットにおいては、その表面に焼酎粕の層(粕表面層)が形成され、この粕表面層はポット内に充填される培土や苗に直接接触する。したがって、焼酎粕がポット肉厚の奥深くに埋設されている場合と比較して、その養分を供給し易いと云うことができる。
【0015】
尚、本発明において、育苗ポット本体の原料の種類は特に限定されず(但し、上記のとおり焼酎粕は除く)、新聞紙やその他の故紙等を用いることができる。また、竹を用いて、新聞故紙よりもフリーネスが高く除菌効果がある竹パルプを成形材料とすると、更に育苗に適した育苗ポットを製造することができる。
【0016】
また、本発明のポットには、いわゆる単体式のもののほか、複数のポットを連結部を介して一体に連結したポット集合体や、底付き集合多筒体等も含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0018】
構成・・・
(1)新聞故紙等のパルプを原料として、パルプモールド製法で底に孔のあいたポットを成型し、乾燥した後、金網バスケットにポットを入れて、焼酎粕液に浸漬し、その後、乾燥させた焼酎粕を含む育苗ポットおよび、育苗ポットを生産する方法。
【0019】
(2)新聞故紙等を原料とした原料液を用いて、従来のパルプモールド工程で、底に孔を持ったポットを成型し、乾燥させる。このポットを金網バスケットに入れて、焼酎粕液の中に浸漬する。この焼酎粕液は、適正な液温度、液濃度、フリーネスを設定する。そして適正時間浸漬後、金網バスケットを液中から引き上げ、水切りを行なう。その際、ポットの底に液が残らないようにする。その後、乾燥して、焼酎液を含む育苗ポットを得る。
【0020】
効果・・・
(3)肥料効果のある焼酎粕を含んだ育苗ポットを効率的に連続生産することが可能となる(タクトタイム12秒程度での連続生産が可能となる)。焼酎粕を廃棄することなく、有効利用することができる。また、ポット原料を新聞古紙の代わりに、よりフリーネスが高く除菌効果のある竹パルプとすることにより、更に育苗に適した育苗ポットとなる。
【実施例】
【0021】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施例に係る育苗ポット1の断面を示しており、すなわちこの育苗ポット1は、新聞故紙等のパルプ材料よりなる育苗ポット本体2と、この育苗ポット本体2の表面に焼酎粕液を塗布して乾燥させることにより形成された粕表面層3とを一体に有している。育苗ポット本体2は、底壁4および周壁5を一体に有し、底壁4の平面中央には水抜き用の孔6が設けられ、また周壁5の上端外周にはフランジ7が設けられている。育苗ポット本体2をなすパルプ材料としては、新聞故紙のほか、竹材等であっても良い。
【0023】
つぎに、上記育苗ポット1の製造方法は、以下のとおりである。
【0024】
すなわち先ず、図2に示すように、一般的なパルプモールド製法により、新聞故紙等のパルプを原料として、育苗ポット本体2をモールド成形する。
【0025】
パルプモールド製法の一例は、以下のとおりである。
(1)成形型(その一部を図2に符号8で図示)を原料液に浸漬する。
(2)成形型に一定時間、吸引圧をかけて、成形型表面に原料を付着させる。
(3)吸引圧はかけたままで、成形型を原料液から引き上げ、成形型表面に成形された原料が成形型から離型可能になるまで脱水する。
(4)成形型から、反転形状の受取り型に成形品を移す。成形型は上記(1)工程に戻る。
(5)受取り型から成形品を取り出す。
(6)取り出した成形品を乾燥炉または自然乾燥により乾燥する。
【0026】
ついで、上記製法により成形し乾燥した育苗ポット本体2を、図3(A)に示すように金網バスケット9に入れて、図3(B)に示すように焼酎粕液10中に浸漬する。このとき、焼酎粕液10は、液温5〜40℃、濃度0.5〜3%、フリーネス20〜70mlとし、特に、液温15〜20℃、濃度0.8〜2%、フリーネス60〜70mlとするのが好適である。浸漬時間は2〜10秒とし、その後、図3(C)に示すように金網バスケット9を焼酎粕液10中から引き上げる。育苗ポット本体2の表面には焼酎粕液10が付着し、一部は含浸することもある。ついで、育苗ポット本体2の底その他の箇所に浸漬液が残らないように水切りした後、充分に乾燥させて、製造を完了する。この製造方法によれば、タクトタイム12秒程度での連続生産が可能となり、肥料効果のある焼酎粕を含んだ育苗ポットを効率良く連続生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係る育苗ポットの断面図
【図2】本発明の実施例に係る育苗ポット製造方法の工程説明図
【図3】(A)(B)(C)とも同じく本発明の実施例に係る育苗ポット製造方法の工程説明図
【符号の説明】
【0028】
1 育苗ポット
2 育苗ポット本体
3 粕表面層
4 底壁
5 周壁
6 水抜き孔
7 フランジ
8 成形型
9 金網バスケット
10 焼酎粕液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新聞故紙等のパルプ材料よりなる育苗ポット本体の表面に焼酎粕液を塗布し乾燥させた粕表面層を有することを特徴とする育苗ポット。
【請求項2】
請求項1記載の育苗ポットにおいて、
育苗ポット本体をなすパルプ材料として、竹を用いることを特徴とする育苗ポット。
【請求項3】
新聞故紙等のパルプ材料を用いて育苗ポット本体を成形する工程と、成形した育苗ポット本体の表面に焼酎粕液を塗布し乾燥させて粕表面層を形成する工程とを有することを特徴とする育苗ポットの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の製造方法において、
塗布は浸漬法によることを特徴とする育苗ポットの製造方法。
【請求項5】
請求項3記載の製造方法において、
育苗ポット本体をなすパルプ材料として、竹を用いることを特徴とする育苗ポットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−222028(P2007−222028A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44093(P2006−44093)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(302054796)ミツオキ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】