説明

育苗用播種機

【課題】ポット集合体などに適用する播種機について、ポット集合体の多種類の規格へ対応が容易であり、なおかつ簡易な播種ロールの構造及び播種タイミング合わせの機構を提供する。
【解決手段】ポット集合体4の縦方向Lにおける個別ポット2の数及びピッチに合わせた歯数を有する欠歯歯車39と、横方向Wにおける個別ポット2の数とピッチに合わせた種子穴44を有する播種ロール30を組み合わせることによって、ポット集合体4の各種規格に対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗に使用する個別ポットを多数連接してなるポット集合体あるいはポット育苗箱へ播種する育苗用播種機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、紙又は紙のような薄膜から形成した個別ポットを水溶性接着剤を介して多数連接させたポット集合体(例えば、日本甜菜製糖株式会社製ペーパーポット(R)、チェーンポット(R)など)を展開枠を用いてハニカム状あるいは碁盤目状に展開して育苗箱に納め、これに土詰及び播種をして集中的に育苗した後、連結状態で一列に引き出してそのまま圃場に移植、若しくは個別ポットに分離して移植、又は薄膜を剥離して土付苗で移植することが盛んに行われている。また、育苗用容器には、セルトレイなどのように縦横方向に多数のセルを一体成形したポット育苗箱もあり、これも広く用いられている。
【0003】
前述のポット集合体については、作物の様々な種類・品種・作型にあわせて最適な栽培管理ができるよう、野菜用でも30種類以上の多種多様な規格(個別ポットの径、縦方向及び横方向の各個別ポットの数)が用いられている。また、セルトレイなどのポット育苗箱にも様々な規格がある。
【0004】
このような育苗用容器へは、農家では主に箱体形状を有するスライド式の播種器を用いて播種作業を行っている。
一方、育苗センターなどの大規模施設、あるいは農家数件が共同作業にて集中的に大量の育苗用容器に播種する場合などは、特許文献1に開示されているような土詰と播種を一貫して行う土詰播種機を用いて播種作業を行っている。
【0005】
播種機については、特許文献2に開示されるような、種子ホッパの種子繰出口に設置した、外周面に種子穴を有する播種ロールにより種子を順次繰り出し、下方を通過するポット育苗箱の各セル(あるいは個別ポット)に落下させるものがよく知られている。この播種機は、ポット育苗箱を通過させるだけで、碁盤目状に配置された多数のセルに播種することができるので、作業効率が非常によい。
【0006】
この播種機の播種ロールは、その外周面に、搬送されるポット育苗箱に設けた各セルの配置に符合するように多数の種子穴を配設している。すなわち、播種ロール外周面の円周方向及び幅方向の種子穴の数を、ポット育苗箱における各セルの縦方向(搬送方向)の数及び横方向の数と同数としている。また、幅方向の各種子穴のピッチが各セルの横方向のピッチと等しくなるよう配列し、播種ロールの周速度とポット育苗箱の搬送速度が等しくなるように播種タイミングをとり、ポット育苗箱の各セルに種子が落下するようにしている。この播種機では、ポット育苗箱が間隔をおいて搬送される場合は、播種を終えたポット育苗箱から後続のポット育苗箱に移行する際に播種が行われないようにする必要がある。
【0007】
この播種機では、使用するポット育苗箱の規格(縦方向及び横方向の各セルの数)に応じた播種ロールが必要となる。ポット集合体については、前述したように多数の規格がある。さらに、各個別ポットへの播種粒数も1粒から多粒までと多様である。従って実際に必要な播種ロールの種類はポット集合体の規格よりも多い。
ポット集合体の規格及び播種粒数に対応するだけの多種類の播種ロールを少量製作することは、量産化のメリットを得られず、播種機の生産においてコスト的に不利になる。
【0008】
また、上記播種機におけるポット育苗箱と後継するポット育苗箱との間の未播種部分については、特許文献3及び特許文献4で開示されるようにポット育苗箱を検出し、播種ロールが間欠的に回転するよう制御する、又は特許文献2に開示されるように播種ロール円周上での未播種に相当する部分に種子穴を設けないようにする、などの方法がある。
【0009】
しかし、播種ロールの回転を制御するためには、検出装置の他に、播種ロールへの動力を断接するクラッチ手段や、特許文献3に開示されるように搬送経路とは別個の播種ロール専用の動力源を必要とするため、部品点数が多くなり構造も複雑になる。
また、播種ロール円周上での未播種に相当する部分に種子穴を設けないようにするためには、その分播種ロール周長を大きくする必要があり、播種ロールの制作費が嵩み、コスト的に不利になる。
【特許文献1】特開2003−125654号公報
【特許文献2】特開2002−84821号公報
【特許文献3】実開平5−88211号公報
【特許文献4】実開平6−61011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ポット集合体あるいはポット育苗箱などを使用して育苗する農家などに、比較的構造が簡単で、かつ低コストで導入可能な育苗用播種機を提供することを目的とする。
【0011】
特に、多種類のポット集合体あるいはポット育苗箱への対応が可能な播種ロール及び播種タイミング機構を有する播種機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、紙又は紙のような薄膜から形成した個別ポットを多数連接してなるポット集合体を納めた育苗箱、あるいは縦横方向に多数のセルを一体成形したポット育苗箱をコンベヤにより搬送しながら、種子ホッパ内の種子を播種ロールにて順次繰り出し、前記育苗箱内の各個別ポットあるいは各セルに播種する育苗用播種機において、前記コンベヤが一定間隔で前記育苗箱を搬送すると共に、前記コンベヤの搬送に連動して回転する欠歯歯車によって、播種ロールが間欠回転することを特徴とする。
このように構成した育苗用播種機においては、育苗箱を搬送するコンベヤの運転に連動して欠歯歯車を回転させ、該欠歯歯車が播種ロールを間欠回転させるようにしたので、播種ロールの回転(動力)を断接するクラッチ手段や、電気的な制御手段が不要となり、構造が簡素化されるため、製造コストを低減することができる。
【0013】
請求項2の発明は、前記欠歯歯車が、前記ポット集合体あるいはポット育苗箱の搬送方向における1列あたりの個別ポット数あるいはセル数と同数の歯を有していることを特徴とする。
このように構成した育苗用播種機においては、育苗容器の種類により搬送方向における1列あたりの個別ポット数あるいはセル数が変更になっても、その数と同数の歯を有する欠歯歯車に交換するだけで、播種ロールの回転を対応させることができる。
すなわち、欠歯歯車の歯数と、ポット集合体あるいはポット育苗箱の搬送方向における1列あたりの個別ポット数あるいはセル数とを同数にしたので、前記育苗箱1個あたりのコンベヤ搬送速度と欠歯歯車の回転数(1回転)、並びに、欠歯歯車の歯の周設範囲と播種ロールの回転範囲を各々同期させることにより、播種機下部を前記育苗箱が通過するタイミングで播種ロールが間欠回転し、所望する個別ポット内あるいはセル内に播種することができる
【0014】
請求項3の発明の前記播種ロールは、種子穴を周設した円盤状の繰出ロールが軸方向に重層されていることを特徴とする。
このように構成した播種ロールにおいては、横方向のポット数あるいはセル数が同数であれば、繰出ロール上の種子穴の相対位置(角度)を組み換えることにより、ハニカム状(千鳥状)及び碁盤目状の育苗用容器の播種に用いることができる。
【0015】
請求項4の発明の前記播種ロールは、円盤状のスペーサと、種子穴を周設した円盤状の繰出ロールとが軸方向に重層されていることを特徴とする。
このように構成した播種ロールにおいては、横方向のポットあるいはセルの数及びピッチが異なっていても、任意の厚みを有するスペーサあるいは繰出ロールに組み換えて重層させることにより多種類の育苗容器に対応することができる。
【0016】
請求項5の発明は、前記播種ロールに、円周方向に各種子穴の中心を通過する種子整列溝が設けられていることを特徴とする。
このように構成した播種ロールにおいては、播種ホッパ内の種子が種子整列溝に沿って整列するようになり、種子穴への種子取込みが安定し、播種精度が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係わる播種機は、組み換え可能な播種ロール構造、並びに変更が容易な播種タイミング機構を有しているので、多種類に及ぶポット集合体あるいはポット育苗箱の規格に対応することが容易となる。したがって、播種機の製造コストを低減することが可能となり、作物の育苗にポット集合体などを使用している農家などにとっては、経済的負担が少なく高能率な播種機を導入することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本播種機の全体的な構造を示したものである。
コンベヤ10は搬送チェーン11及び押動体12により、育苗箱1を矢印A方向へ搬送する。コンベヤ10上には、育苗箱1内に種子50を供給する播種部Sが配置されている。育苗箱1が播種部Sを通過することにより播種が行われる。
モータ26からの動力はスプロケット21、搬送チェーン11、スプロケット22を経由して、スプロケット22と同軸にあるスプロケット23からチェーン24を介してスプロケット43へと伝えられる。スプロケット43と同軸の軸40に設けられた欠歯歯車39は、コンベヤ10と同期して所定の回転数で矢印C方向へ回転し、ギヤ32を介して播種ロール30へ動力を伝達する。
【0020】
コンベヤ10は、支持脚15によりフロア51上に立設された左・右一対の本体フレーム16を備えている。本体フレーム16には、複数のローラ13が回動自在に橋架支持され、これらローラ13上に前記育苗箱1が載置されるようになっている。また、本体フレーム16の前・後端部には、回転軸18、19を用いて各一対のスプロケット20、21が支持され、これら前・後のスプロケット20と21との間には、左右一対の搬送チェーン11が掛け回されている。
【0021】
搬送チェーン11は、本体フレーム16に支持されたモータ26の回転を上流側(後側)の回転軸19から一対のスプロケット21に伝えることにより、下流側(前側)のスプロケット20が矢印B方向へエンドレスに回転するようになっている。また、搬送チェーン11には、所定のピッチで押動体12が取付けられている。押動体12のピッチは、必要とされる複数種類の育苗箱1のうち、最大の育苗箱1の縦方向(搬送方向)寸法より大きく設定されており、育苗箱1の後端に押動体12を当接させて搬送方向Aへ搬送するようになっている。
【0022】
育苗箱1内には、図2及び図3に示すように、個別ポット2を密に集合させたポット集合体4が展開枠3を用いて、ハニカム状(図2)あるいは碁盤目状(図3)に展開して納められている。
上記の個別ポット2は、紙又は紙のような薄膜を展開することにより四角又は六角筒状を呈するもので、特公昭58−11817号公報などに記載されたものと同様に、個別ポット2の相互が連結片(図示略)で連結されているか、又は特公昭38−25715号公報などに記載されたものと同様に、水溶性接着剤などで個別ポット2相互が接着されてポット集合体4が構成されている。
ポット集合体4には、縦方向(播種機における搬送方向Aと同じ)L、横方向Wにそれぞれ個別ポット2が配列している。個別ポットの径・数は育苗する作物の種類・品種・作型に応じて、多くの種類が提供されている。
【0023】
展開枠3は、育苗箱1の上縁部の輪郭形状に合せて矩形状に形成されている。この展開枠3は、その矩形の相対する短辺上に配置した一対の短尺縁フレーム5と、相対する長辺上に配置した一対の長尺縁フレーム6とを相互に接合することにより一体物として提供されている。各短尺縁フレーム5は、図4又は図5に示されるように、前記ポット集合体4の外側に位置する個別ポット2に挿入可能な櫛歯状の複数の爪片7と前記育苗箱1の外縁に係合可能な係合片8とを備えている。ここで、一方の短尺縁フレーム5の爪片7に、扁平状態のポット集合体4の片側の個別ポット2の複数を引掛けながら、ポット集合体4の他側を他方の短尺縁フレーム5側へ引張ると、ポット集合体4は、図2あるいは図3に示すように展開枠3の内一杯にハニカム状あるいは碁盤目状に展開し、そのまま引張った側の個別ポット2の複数を他方の短尺縁フレーム5の爪片7に引掛けることで、その展開された状態が維持されるようになる。そして、図4に示すように、展開枠3によりポット集合体4を展開した後、ポット集合体4を下側として展開枠3を育苗箱1に被せれば、ポット集合体4の全部が育苗箱1内に納まるようになる。なお、展開枠3を育苗箱1に被せた際、展開枠3の一対の短尺縁フレーム5の係合片8が育苗箱1に嵌合し、これにより、育苗箱1と展開枠3とは搬送方向Aに対して相対的に位置固定される。そして、育苗箱1にポット集合体4を収納した状態で、展開枠3の短尺縁フレーム5と長尺縁フレーム6とが育苗箱1の上縁部に載り、特に長尺縁フレーム6は育苗箱1の両側方へわずかにはみ出す状態となる。
【0024】
播種する前に、ポット集合体4へは、個別ポット2内へ育苗培土49(図示略)を充填する。育苗培土49を充填する手段は任意であり、手作業又は土詰機などいずれの方法でもよい。たとえば、特開2002−45048号公報に開示されているような育苗箱への培土充填装置を用いてもよい。
【0025】
図5に示すように、コンベヤ10の本体フレーム16には、搬送チェーン11の上方を覆い、かつ前記展開枠3の長尺縁フレーム6を摺接させるよう折り曲げられたガイド面17が形成されている。ガイド面17は、搬送チェーン11を覆うカバー及び育苗箱1を案内するガイドとして機能するものとなっている。
展開枠3を構成する一対の長尺縁フレーム6は、左・右ガイド面17にそれぞれの外側面が摺接するように横方向の間隔が設定されている。一方、前記ガイド面17の相互間隔は、必要とされる複数種類の育苗箱1のうち、最大の育苗箱の横方向寸法より大きく設定されている。したがって、育苗箱1にポット集合体4を納めるべく苗箱1に展開枠3を被せると、展開枠3の左・右の長尺縁フレーム6は、全種類(全サイズ)の育苗箱1に対して、その両側方へはみ出す状態となり、これによりコンベヤ10上に育苗箱1を載置した際、常に展開枠3の前記長尺縁フレーム6が前記ガイド面17に摺接するようになる。
この状態のもと、コンベヤ10の搬送チェーン11の回転により押動体12の1つが前記育苗箱1の後端に当接し、該育苗箱1を搬送方向Aへ搬送する。この時、展開枠3の前記長尺縁フレーム6が前記ガイド面17の表面に沿って摺動し、育苗箱1は多少コンベヤ幅方向(ポット集合体4における横方向Wと同じ)に移動するが、育苗箱1内の個別ポット2は展開枠3を基準に位置決めされているので、コンベヤ幅方向に対する位置は一定となる。
【0026】
図6に播種ロール30の形状及び欠歯歯車39との係合状態を示す。端部にギヤ32が取り付けられている軸31に、播種ロール30を構成する繰出ロール46とスペーサ47が重層して取り付けられている。繰出ロール46の円周方向には種子穴44がギヤ32の歯33と同数設けられている。スペーサ47の表面に種子穴はない。軸31は播種ロール30との嵌装部分の断面が六角形となっており、繰出ロール46及びスペーサ47が嵌合する軸穴は、軸31と同期するよう同じ六角形になっている。この軸31の嵌装部分は六角形に限定されず、四角形や八角形など、又はキーやセレーションなどの手段により、播種ロール30を軸31に固着してもよい。
矢印C方向へ回転する欠歯歯車39の歯41とギヤ32の歯33がかみ合い、軸31が矢印D方向へ回転し、これと共に播種ロール30(繰出ロール46及びスペーサ47)も回転する。欠歯歯車39は、播種するポット集合体4の縦方向Lの個別ポット2の数(図2、図3)と同数の歯41を有している。
種子穴44について、播種ロール30の横方向WのピッチMは、ポット集合体4における個別ポット2の横方向Wのピッチと同じである。
ここで、ポット集合体4の縦方向Lの個別ポット2の数及びピッチに合わせた歯数を有する欠歯歯車39と、横方向Wの個別ポット2の数とピッチに合わせた種子穴44を有する播種ロール30を、組み合わせることによって、ポット集合体4の各種の規格に合わせることができる。
【0027】
なお、欠歯歯車39については、図11に示す所定数のピン60を円周に突接させたピン歯車61などのように、播種ロール側のギヤ32とかみ合わせることにより、すべりが起きないように回転を伝達する手段であれば、これに含まれるものとする。
【0028】
播種部Sの詳細を図7に示す。播種部Sは播種ロール30、軸31、ギヤ32、種子ホッパ34、ガイド板35、播種部フレーム36、ノブボルト37、かき取りブラシ38により構成されている。播種ロール30は種子ホッパ34内の種子50を取込む複数の種子穴44を円周面に有している。種子穴44はコーティングされた種子50が入る大きさに設定されている。この播種ロール30を所定の速度で回転させることで、所定の速度で搬送される育苗箱1内の個別ポット2内に必要数(例えば1粒)の種子50が供給されるようになる。
播種ロール30と同軸の軸31に設けられたギヤ32が欠歯歯車39(図1及び図6)より動力を伝達され矢印D方向へ回転することにより、種子ホッパ34内の種子50は、播種ロール30の種子穴44に取り込まれる。種子穴44に種子50が取り込まれた播種ロール30は、かき取りブラシ38により余剰な種子50がかき取られ、必要数のみ種子穴44に保持される。前記種子50は、播種ロール30の形状に合わせて湾曲しているガイド板35により、種子穴44に保持されながら、ガイド板35から外れた播種位置Pに達すると、培土49が充填されている個別ポット2上へ落下する。播種位置Pをポット集合体4が通過することによって、すべての個別ポット2へ種子50が落下し、ポット集合体4への播種が行われる。
ここで、育苗箱1の進行方向Aにおける個別ポット2の1ピッチの移動時間と、播種位置Pにおける播種ロール30の円周上の種子穴44の1ピッチの移動時間とが完全に同期するように、前記欠歯歯車39の径及び回転数並びに歯41のピッチを定めてある。すなわち、播種位置Pにおける前記押動体12の1ピッチの通過時間と、前記欠歯歯車39の1回転に要する時間は同じである。したがって、育苗箱1を搬送し、かつ播種ロール30を回転しながら、確実に適正位置に播種できる。
【0029】
なお、播種部Sには、図示を略する消勢手段が設けられているので、欠歯歯車39とギヤ32とがかみ合うことによる動力の伝達がなければ、播種ロール30が慣性で回転することはない。
【0030】
図8に、播種ロール30における種子穴44の配列を模式的に示す。図8(a)は図3のような碁盤目状のポット集合体に適用する場合であり、種子穴44が円周方向に対して碁盤目状に配列されている。
図2のようなハニカム状のポット集合体に適用する場合には図8(b)のように、種子穴44が千鳥状の配列になるよう、繰出ロール46の種子穴44の位置が交互にずれるように重層すればよい。この時、繰出ロール46に周設する種子穴44を奇数個とし、これを交互に180°回転させて重層することにより、容易に千鳥状の配列を形成することができる。
また、1つの個別ポット2に3粒播く場合には、図8(c)に示すように、1個分種子穴44を設けた繰出ロール46と2個分種子穴44を設けた繰出ロール46とを組合せて、3粒用種子穴44の配列を形成すればよい。このとき、3個分の種子穴44を1つの繰出ロール46に設けたものを組み合わせて重層してもよい。
さらには、スペーサ47を用いず、図8(d)のように繰出ロール46のみを重層してもよい。
さらにまた、図9(a)に示すように、円周方向に切欠を有する円盤58と、切欠のない円盤59とを組み合わせて繰出ロール46を形成してもよく、図9(b)のように複数からなる円盤58と円盤59とを組み合わせて播種ロール30を形成してもよい。
【0031】
播種ロール30における種子穴44の配列は、播種する種子50の粒数、ポット集合体4の種類などに合わせて、適宜選択すればよく、また、繰出ロール46及びスペーサ47の種類・厚さ・枚数なども、それらに合わせて適宜選択し組み合わせればよい。
すなわち、上記スペーサ47においては、隣接する繰出ロール46間に複数層のスペーサ47を重層させてもよいものであり、厚みの異なるスペーサ47を組み合わせることにより、横方向WのピッチMが異なる播種ロール30に対応する範囲が拡大し、導入コストを低減することが可能となる。
【0032】
図10において、前述したように押動体12のピッチYは、育苗箱1の縦方向寸法より大きく設定されているため、播種を終えた育苗箱1から後続の育苗箱1へ移行する間の間隔Hが発生する。間隔Hのように、播種が不要な部分では、播種ロール30を回転させる必要がない。図6に示すように、欠歯歯車39において歯41のない円周部分Rは、上述した播種が不要な部分すなわち間隔Hに相当し、円周部分Rでは播種ロール30側のギヤ32の歯33に欠歯歯車39の歯41がかみ合うことがないため播種ロール30は停止し、播種は行われない。円周部分Rの弧長は、図10における間隔Hと完全に同期するように、押動体12のピッチY、コンベヤ10の搬送速度、欠歯歯車39の径及び回転数に合わせて定めてある。
【0033】
なお、図1に示すアジャストボルト42での調節によりスプロケット43と欠歯歯車39との相対角度を変更させると、欠歯歯車39の歯41とギヤ32の歯33とがかみ合うタイミングを遅速させることができ、その結果個別ポット2に対する播種タイミングの微調整が容易に行えるようになる。
【0034】
図12は種子50が繰出ロール65の種子穴44上の円周方向に整列した状態を示す模式図である。
播種精度を向上させるためには、種子50が確実に種子穴44に取り込まれる必要があるが、種子50の一粒一粒が種子穴44の真上に位置するほど、種子穴44に種子50が入りやすくなる。そこで、図12(a)に示すように、円周上に種子穴44の中心を通る種子整列溝63を設けて繰出ロール65の形状にすると、種子ホッパ34内において図12(b)に示すように、種子整列溝63が種子50について繰出ロール65の円周方向以外への転動を妨げるよう作用して、種子50は種子穴44上の円周方向へ整列する。したがって、種子50については、複数粒が種子穴44の上で相互に干渉し合うことなく、その一粒一粒が種子整列溝63に沿って移動するため、種子穴44の真上に位置することが容易になる。
このときの種子整列溝63は、種子50が種子整列溝63内に嵌り込まないように種子径よりも幅を狭くする必要があり、使用する種子径の略1/2程度の幅にするのが望ましい。また、種子整列溝63の形状は角型、U字型、V字型などのいずれでもよい。
【0035】
本発明においては、播種された育苗箱1をコンベヤ10から取り出すとともに、順次育苗箱1を供給することにより播種作業は連続して行われる。
ここで、図13に示すように、本播種機の下流側に延長コンベヤ53を連設し、これに播種が終了して下流に送られた育苗箱1を感知するリミットスイッチ54を配設し、育苗箱1が延長コンベヤ53後端に達したときにモータ26の電源を遮断し、搬送コンベヤ10を停止させるのが望ましい。
さらには、特許文献1に開示されている整形ローラ55を播種部Sの上流側に設け、ポット集合体4を整形し播種穴を加工することによって、各個別ポット2の略中央に播種することができる。
【0036】
また、図1において、モータ26により動力を得る代わりに、軸18又は軸19などに、手回し用のハンドルを接続し、手動にて動力を得るようにしてもよいものである。
【0037】
あるいは、本播種機の上流側に、土詰機(例えば、特開2002−45048号公報に開示されているような育苗箱への培土充填装置)を連接したり、コンベヤ10の本体フレーム16を上流側へ延長して、土詰機を配設するなどして、土詰と播種の作業を一貫して行ってもよい。
【0038】
本播種機は、紙又は紙のような薄膜から形成した個別ポットを水溶性接着剤を介して多数連接させたポット集合体に適用するものであるが、これに限定されず、セルトレイなどのポット育苗箱に適用することも可能である。

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態を表す側面図である。
【図2】展開枠によりポット集合体をハニカム状に展開した状態を示す平面図である。
【図3】展開枠によりポット集合体を碁盤目状に展開した状態を示す平面図である。
【図4】ポット集合体を展開枠にて展開して育苗箱に納める手順を示す模式図である。
【図5】播種機の搬送部の構造を示す横断面図である。
【図6】欠歯歯車と播種ロールの構造を示す斜視図である。
【図7】播種部の構造を示す模式図である。
【図8】播種ロールの形態を示す模式図である。
【図9】繰出ロールの製作例を示す斜視図である。
【図10】播種部Sと育苗箱1との関係を示す模式図である。
【図11】欠歯歯車の例を示す模式図である。
【図12】種子整列溝を設けた繰出ロールを示す模式図である。
【図13】補助フレーム及び整形ローラを配設した播種機を示す側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 育苗箱
2 個別ポット
3 展開枠
4 ポット集合体
10 コンベヤ
11 搬送チェーン
12 押動体
13 ローラ
16 本体フレーム
17 ガイド面
30 播種ロール
32 ギヤ
34 種子ホッパ
35 ガイド板
38 かき取りブラシ
39 欠歯歯車
44 種子穴
46 繰出ロール
47 スペーサ
50 種子
A 搬送方向
C 欠歯歯車回転方向
D 播種ロール回転方向
L 縦方向
M 種子穴の横方向ピッチ
P 播種位置
R 歯のない円周部分
S 播種部
W 横方向
Y 押動体のピッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙又は紙のような薄膜から形成した個別ポットを多数連接してなるポット集合体を納めた育苗箱、あるいは縦横方向に多数のセルを一体成形したポット育苗箱をコンベヤにより搬送しながら、種子ホッパ内の種子を播種ロールにて順次繰り出し、前記育苗箱内の各個別ポットあるいは各セルに播種する育苗用播種機において、
前記コンベヤが一定間隔で前記育苗箱を搬送すると共に、前記コンベヤの搬送に連動して回転する欠歯歯車によって、播種ロールが間欠回転することを特徴とする育苗用播種機。
【請求項2】
前記欠歯歯車が、前記ポット集合体あるいはポット育苗箱の搬送方向における1列あたりの個別ポット数あるいはセル数と同数の歯を有していることを特徴とする、請求項1に記載の育苗用播種機。
【請求項3】
前記播種ロールは、種子穴を周設した円盤状の繰出ロールが軸方向に重層されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の育苗用播種機。
【請求項4】
前記播種ロールは、円盤状のスペーサと、種子穴を周設した円盤状の繰出ロールとが軸方向に重層されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の育苗用播種機。
【請求項5】
前記播種ロールに、円周方向に各種子穴の中心を通過する種子整列溝が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至4に記載の育苗用播種機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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