説明

胃瘻用シース

【課題】異なる機械的特性を持たせることが容易かつ自在に実現可能な構造体を有する胃瘻用シースを提供する。
【解決手段】瘻孔63内に留置される胃瘻カテーテル50の挿入作業を補助するための胃瘻用シース100を、円筒状のシース本体10と、胃瘻カテーテル50の挿入口11と、挿入口11を閉止し胃瘻カテーテル50の挿入方向に一方的に開弁する逆止弁20と、を備えて構成する。逆止弁20は、幅方向の中央部の曲げ剛性が、両側の曲げ剛性よりも高く形成された、高剛性部25が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃瘻用シースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腹壁と胃壁とが貫通され形成された瘻孔内に留置されて、栄養液または薬液を体外から胃内へ導入するための胃瘻カテーテルが知られている。この胃瘻カテーテルを挿入して胃瘻を造成する代表的な手技として、ダイレクト法が知られている。このダイレクト法により胃瘻カテーテルの留置作業を行う際に、留置作業を補助して作業性を向上させるための胃瘻用シースに関する技術が開示されている(特許文献1参照)。胃瘻カテーテルの挿入作業を行う際には、内視鏡による視野確保のため、胃内部に空気などのガスを供給している。特許文献1に記載の胃瘻用シースでは、胃瘻カテーテルの留置作業中に胃内部のガスが外部に抜け出るのを防止するため、円筒状の本体(外筒)の胃内部に挿入する下端に、2枚の弁体がV字型に配置されてなる逆止弁を有している。そして、外筒に挿入した先端が楔型の内筒を瘻孔に挿入し、瘻孔を拡開しながら、内筒と外筒とを瘻孔内に挿入する。その後、内筒のみ抜取ることで、瘻孔内に外筒が留置される。この際に、逆止弁が閉弁することで、外筒の孔部内を密閉し、胃内部のガスなどが外部に抜け出るのを防止しようとしている。そして、外筒内に胃瘻カテーテルを挿入し、外筒を破断して除去することにより、瘻孔には胃瘻カテーテルのみが留置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−72344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の逆止弁は、軟質樹脂で全体を一様の柔らかさで形成している。そのため、気密性には優れているが、変形し易いため、硬質の塩化ビニル製の内筒を抜き取る際に、抜き取り方向への摩擦力とガス圧との作用により、逆止弁が外筒の内側に折れ曲がることがある。そして、胃内部からのガス圧により、逆止弁が復元せずに変形したままとなる可能性がある。または、柔らかいことで、拡開した後に、元の閉止形状への復元が遅れ、その間の気密性が保持できない可能性がある。いずれの場合でも、外筒の気密性が損なわれることで、胃内部のガスが外部に抜け出る可能性があった。そこで、たとえば、逆止弁を硬質の材料で形成した場合、復元は迅速に行われるが、外筒の挿抜によって変形し易く、やはり気密性が損なわれる可能性があった。このように、逆止弁の良好な気密性と、迅速な復元性とを両立させることは困難であるという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、胃瘻カテーテルの挿入作業を補助する際に、逆止弁の良好な気密性と、迅速な復元性とを両立させることが可能な胃瘻用シースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の胃瘻用シースは、瘻孔内に留置される胃瘻カテーテルを瘻孔内に挿入する作業を補助するための胃瘻用シースであって、
胃瘻カテーテルが挿入される円筒状のシース本体と、胃瘻カテーテルの挿入口と、挿入口を閉止し胃瘻カテーテルの挿入方向に一方的に開弁する逆止弁と、を備え、逆止弁は、胃瘻カテーテルの挿入方向に対する幅方向の中央部に、その両側に延在する両側部よりも曲げ剛性が高く形成された、高剛性部を有することを特徴とする。
【0007】
また本発明の胃瘻用シースにおいては、より具体的な実施の態様として、挿入口は、胃瘻カテーテルの挿入方向に対して傾斜して形成され、逆止弁は、挿入口の外方に突出した湾曲形状をなし、シース本体内に配置されているものであってもよい。
【0008】
また本発明の胃瘻用シースにおいては、より具体的な実施の態様として、高剛性部は、逆止弁の幅方向の中央部に厚肉部を設けることで形成されているものであってもよい。
【0009】
また本発明の胃瘻用シースにおいては、より具体的な実施の態様として、高剛性部は、球状の突起からなる厚肉部を含むものであってもよい。
【0010】
また本発明の胃瘻用シースにおいては、より具体的な実施の態様として、高剛性部は、幅方向に長尺な厚肉部を含むものであってもよい。
【0011】
また本発明の胃瘻用シースにおいては、より具体的な実施の態様として、高剛性部は、球状の突起からなる第一の厚肉部と、球状の突起よりも形成高さが低く、幅方向に長尺な第二の厚肉部と、を含むものであってもよい。
【0012】
また本発明の胃瘻用シースにおいては、より具体的な実施の態様として、逆止弁は、ヒンジ部を介して挿入口に対して開閉自在に配置され、第一の厚肉部は、第二の厚肉部よりも、ヒンジ部側に形成されているものであってもよい。
【0013】
また本発明の胃瘻用シースにおいては、より具体的な実施の態様として、高剛性部が、逆止弁の外周縁に形成されているものであってもよい。
【0014】
また本発明の胃瘻用シースにおいては、より具体的な実施の態様として、高剛性部が、球状の突起からなる第一の厚肉部と、幅方向に長尺な第二の厚肉部と、逆止弁の外周縁に形成された第三の厚肉部と、を含むものであってもよい。
【0015】
また本発明の胃瘻用シースにおいては、より具体的な実施の態様として、逆止弁は、ポリエチレン樹脂、シリコーンゴム、軟質塩化ビニル樹脂のいずれかにより形成されているものであってもよい。
【0016】
なお、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、逆止弁の中央部の曲げ剛性が、両側の曲げ剛性よりも高い高剛性部を有することで、逆止弁の良好な気密性と、迅速な復元性とを両立させることができ、作業効率性に優れた胃瘻用シースを提供することができる。そのため、たとえば、胃瘻カテーテルの挿入作業時に、胃瘻用シースとともに瘻孔を拡張形成するためのダイレータを瘻孔に挿入した場合、まず、ダイレータのみを抜き取る。その際に、逆止弁が元の形状に迅速かつ良好に復元して、優れた気密性が保持される。そのため、胃瘻カテーテルを挿入するまでの間に、胃内部に充填されたガスが体外に抜け出るのを良好に防止することができる。その結果、胃瘻カテーテルの挿入作業を効率的に行うことが可能な胃瘻用シースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる胃瘻用シースの全体構成を示す概略図であり、(a)は逆止弁側から視認観察した平面図であり、(b)はその左側面図であり、(c)はその左上方から視認観察した斜視図である。
【図2】第一実施形態にかかる胃瘻用シースの逆止弁の全体図であり、(a)は逆止弁の平面図であり、(b)は長手方向中心での縦断面図であり、(c)は挟持部側の側面図である。
【図3】本発明の第二実施形態にかかる胃瘻用シースの逆止弁の全体図であり、(a)は逆止弁の平面図であり、(b)は長手方向中心での縦断面図である。
【図4】本発明の第三実施形態にかかる胃瘻用シースの逆止弁の全体図であり、(a)は逆止弁の平面図であり、(b)は長手方向中心での縦断面図である。
【図5】本発明の胃瘻用シースの逆止弁における変形例の平面図であり、(a)は突起状の第一の厚肉部と長尺状の第二の厚肉部とを設けた第一変形例の逆止弁の平面図であり、(b)は突起状の第一の厚肉部と突起状の第二の厚肉部とを設けた第二変形例の逆止弁の平面図であり、(c)は長円形の突起状の第一の厚肉部と、長尺状の第二の厚肉部とを一体に形成した第三変形例の逆止弁の平面図であり、(d)は弁本体の中央部を介して両側をくり抜いて、薄肉部を形成することで、中央部に長さ方向に長尺な厚肉部を設けた第四変形例の逆止弁の平面図である。
【図6】第一実施形態の胃瘻用シースを用いて胃瘻カテーテルを瘻孔内に留置する工程において、縫合糸で固定されて密着した腹壁と胃壁とに、ガイドワイヤを挿通した状態を示す概略図である。
【図7】ダイレータを挿入した胃瘻用シースを、ガイドワイヤに沿って、瘻孔内に挿入した状態であって、逆止弁がM字状に変形した状態を示す概略図である。
【図8】ダイレータを抜き取った後の胃瘻用シースであって、M字状に変形していた逆止弁が、復元した状態を示す概略図である。
【図9】胃瘻用シースと、これに挿入する胃瘻カテーテルとを示す概略図である。
【図10】胃瘻用シースに、胃瘻カテーテルを挿入する過程であって、胃瘻用シースのスリット部の一部が裂けた状態を示す概略図である。
【図11】胃瘻用シースを介して、胃瘻カテーテルを瘻孔内への挿入が完了した状態を示す概略図である。
【図12】胃瘻用シースを除去して、胃瘻カテーテルのみを瘻孔に留置した状態を示す概略図である。
【図13】留置部を拡張させて、胃瘻カテーテルの装着が完了した状態を示す概略図である。
【図14】本発明の胃瘻用シースの逆止弁の優れた復元性の原理を説明するための説明図であり、(a)は高剛性部を設けていない従来の逆止弁であって、M字状の変形が保持されて復元しない原理を説明するための説明図であり、(b)は本発明の第一実施形態の胃瘻用シースにかかる逆止弁であって、高剛性部を設けたことにより、M字状に変形した逆止弁が確実に復元する原理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の胃瘻用シースの実施形態を、図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0020】
<第一実施形態>
〔胃瘻用シースの構成〕
図1を用いて、第一実施形態にかかる胃瘻用シース100の構成について説明する。本実施形態にかかる胃瘻用シース100は、瘻孔63内に留置される胃瘻カテーテル50を、当該瘻孔63内に挿入する作業を補助するためのものである。図1(a)〜(c)の各図に示すように、本実施形態にかかる胃瘻用シース100は、胃瘻カテーテル50が挿入される円筒状のシース本体10と、逆止弁20と、シース本体10および逆止弁20の一端を挟持固定するコネクタ30と、を備えて構成されている。また、胃瘻用シース100は、図7に示すように、瘻孔63を拡大形成するため、シース本体10内に挿入して、共に瘻孔63内に挿入するためのダイレータ40を備えている。
【0021】
シース本体10は、胃瘻カテーテル50の挿入口11と、シース本体10の長手方向であって挿入口11側の一端に突出形成された被挟持部12と、胃瘻カテーテル50を挿入する内部通路13と、被挟持部12とは対向する位置であって挿入口11にV字状に形成された切口部14と、当該V字状の切口部14の先端に連続して、内部通路13の外壁面の長手方向にV字溝状に形成されたスリット部15と、胃内に挿入されて内部通路13と胃内部60とを連通する連通口16と、逆止弁20が開弁した際に、当該逆止弁20を収納するため、シース本体10の挿入口11側を外方に突出して形成され、開弁した逆止弁20を収納するための逆止弁収納部17と、を有して構成されている。逆止弁収納部17は、開弁時の逆止弁20の弁本体21を収納することで、胃瘻カテーテル50などの挿入を弁本体21が妨げないようにするために設けてられている。
【0022】
また、挿入口11は、図1(a)、(c)に示すように、被挟持部12側が狭幅で、被挟持部12とは対向する側が次第に広幅に形成された略卵型であって、図1(b)に示すように、被挟持部12側から、胃瘻カテーテル50の挿入方向側に傾斜した構造で、後述する逆止弁20の弁本体21の面積より、開口面積が狭く形成されている。内部通路13の内径は、ダイレータ40の最大外径と略同一寸法とするのが好ましく、ダイレータ40の挿入時の気密性が保持できる。スリット部15は、図1の各図に示すとおり、挿入口11の切口部14のV字の下端から連続して、内部通路13の外壁面を、シース本体10の連通口16までV字溝状に切り込みを入れて形成されている。なお、スリット部15は、シース本体10の内腔側に貫通しないように形成されている。そのため、スリット部15を設けた外壁面は、薄肉で脆弱な状態となっているが、ダイレータ40の挿抜時は、破断しない強度を有し、胃瘻カテーテル50の挿入時は、後述する留置部52により容易に切り裂いて、挿入後に瘻孔63内からシース本体10を除去できるような強度を有している。
【0023】
逆止弁20は、図2(a)に示すように、表面側から観察した際に、外周縁24が楕円形状で扁平な弁本体21と、この弁本体21の一端に一体形成された長方形状で扁平な被挟持部22と、この被挟持部22と弁本体21との間であって、弁本体21が開閉する基端となるヒンジ部23と、を有している。逆止弁20は、弁本体21に、胃瘻カテーテル50の挿入方向に対する幅方向の中央部に、その延在する両側部よりも曲げ剛性が高く形成された、高剛性部25を有している。このような逆止弁20が、シース本体10に取付けられている。この取付けは、シース本体10の被挟持部12内に逆止弁20の被挟持部22を挿入し、これらがコネクタ30によって気密的に挟持固定されることにより行われている。なお、この取付けの際は、図1(b)などに示すように、逆止弁20は、扁平な弁本体21を幅方向に湾曲させて、当該湾曲時の弁本体21の面積より開口面積が狭い挿入口11内に、外方に凸状に突出するように配置する。この弁本体21は、シース本体10の内腔によって圧持されることで、湾曲状態が保持されている。
【0024】
逆止弁20は、後述のように、ゴム弾性を有する材料で形成されているため、このような配置により、湾曲に変形された弁本体21の復元力で、弁本体21の外周縁24が、シース本体10の内部通路13の内壁面に密着して挿入口11が閉止され、当該挿入口11および内部通路13の気密性が保持される。そのため、シース本体10を瘻孔63内に挿入した場合でも、胃内部60からのガス圧が逆止弁20に作用しても、弁本体21が挿入口11に密着して閉弁することで、気密性が保持され、ガスなどが挿入口11から抜け出るのを防止可能となっている。一方、胃瘻カテーテル50の挿入方向には、ヒンジ部23を基端として弁本体21が開弁し、胃瘻カテーテル50の挿入作業を妨げることはない。なお、本実施形態では、挿入口11に密着するよう逆止弁20を設けているが、本発明がこれに限定されるわけではない。手術中に、ダイレータ40や胃瘻カテーテル50の挿入作業時は開弁するが、これらの作業時以外では、シース本体10の内部通路13内を閉止して、胃内部60と外部とを隔絶し、胃内部60のガスが外部に抜け出るのを防止できれば、内部通路13のいずれの位置に設けてもよい。
【0025】
なお、本実施形態では、胃瘻カテーテル50の挿入方向および弁本体21の厚さ方向に対して直交する方向を弁本体21の幅方向と呼ぶ。そして、上記高剛性部25の説明で記載した「曲げ剛性」とはこの幅方向へ曲げ力を作用させた際の変形のしにくさの度合い、すなわち、硬さを意味する。また、逆止弁20の「中央部」とは、弁本体21の長手方向の中心線上は勿論、中心線を含む所定幅の領域を意味する。また、高剛性部25を中央部全体に設けてもよいし、中央部の一部または離間して複数箇所に設けてもよい。また、「両側部」とは、中央部に対しその延在方向(幅方向成分を含む)の両側の所定領域を意味する。詳細は後述するが、たとえば、本実施形態にかかる逆止弁20では、図2(a)に示す3つの部分(厚肉部25a〜25c)からなる高剛性部25に対しその延在方向(点線矢印で図示)の両側が、「両側部」に相当する。
【0026】
また、本実施形態では、逆止弁20の高剛性部25は、弁本体21の中央部を厚肉にすることで、曲げ剛性を高くしている。すなわち、図1、図2(a)、(b)に示すように、弁本体21の幅方向の中央部であって長手方向の中央部よりヒンジ部23側に、球状の突起を形成して、第一の厚肉部25aを設けている。なお、「球状の突起」とは、いずれの断面が真円の球状は勿論、当該断面が楕円の球状、半球状(断面が真円、楕円の一部)の突起なども含むものとする。また、弁本体21の長手方向の略中央部を、幅方向に長尺な円柱状に厚肉に形成し、第二の厚肉部25bを設けている。さらに、外周縁24の先端側に相当する部位を、長手方向の断面形状が円形となるように厚肉に形成し、第三の厚肉部25cを設けている。この場合も、長手方向の断面形状が円形に限定されることはなく、菱形(両表面に断面三角形状に突出)、四角形以上の多角形でもよい。なお、第一の厚肉部25aの厚さは、当該第二の厚肉部25bよりも厚肉に形成している(厚さA>厚さB)。この理由については、後述するが、M字状に変形した弁本体21の復元を迅速に行うことができ、かつ優れた気密性を保持可能としている。また、弁本体21の外周縁24に形成した第三の厚肉部25cは、弁本体21の復元力の補助と同時に、厚肉にすることで、その弾性力と適度な硬さ(曲げ剛性)により、挿入口11への密着性が高まり、気密性をより向上させることも可能なものである。このように、本実施形態では、第一〜第三の厚肉部25a、25b、25cにより、高剛性部25を形成されている。また、点線矢印で示すように、第一〜第三の厚肉部25a、25b、25cに沿って延在する両側部に、薄肉部26が形成されている。
【0027】
コネクタ30は、シース本体10の被挟持部12と、その内部に挿入された逆止弁20の被挟持部22とを共に挟持し固定する。そして、胃瘻カテーテル50の挿入作業時には、コネクタ30を挟持した状態で行うことで、シース本体10を固定するとともに、当該作業を行い易くしている。また、コネクタ30は、シース本体10の挿入口11側の下端に、当該挿入口11に向かって次第に広幅となる半楕円状の導入用凹部31が表面に形成されている。この導入用凹部31に沿って、後述のダイレータ40を挿通することで、当該ダイレータ40をシース本体10内に容易かつ平行に挿通することができる。
【0028】
ダイレータ40は、瘻孔63の寸法(内径)を決定するためのものであり、図7に示すように、シース本体10の挿入口11を介して内部通路13内に挿入されて用いられる。ダイレータ40は、円筒状のダイレータ本体41と、このダイレータ本体41の先端側に設けられ、シース本体10の連通口16から突出し、瘻孔63内に突き刺して、当該瘻孔63を次第に拡開するためのテーパー状の拡開部42と、ガイドワイヤ80を挿通するため、ダイレータ本体41および拡開部42の内部に貫通形成された挿通路43とを有して構成されている。また、瘻孔63の寸法は、後述の胃瘻用カテーテル50のチューブ部51の外径と略同一寸法、または1〜2mm以上大きい寸法が好ましい。そのため、瘻孔63が当該寸法となるように、ダイレータ本体41の外径を決定する。また、ダイレータ本体41の表面には、瘻孔63内への挿入時に胃壁61と腹壁62との合計厚さなどを測定するための目盛り44が設けられている。なお、ダイレータ40は、本実施形態で用いるものに限定されるものではなく、従来公知のいずれのものを用いてもよい。
【0029】
また、本実施形態の胃瘻用シース100により、瘻孔63内への挿入を補助される胃瘻カテーテル50も、従来公知のいずれのものを用いてもよい。本実施形態では、図9に示すように、栄養液や薬液などを胃内部60に注入するためのチューブ部51と、胃内部60に留置する留置部52と、腹壁62の表面に胃瘻カテーテル50を固定するためのストッパ部53と、未使用時にチューブ部51の注入口54に嵌め、チューブ部51内を塞ぐためのボタン部55とを有して構成された胃瘻カテーテル50を用いている。チューブ部51の寸法は、上記ダイレータ40の説明で述べた寸法とするのが好ましい。この胃瘻カテーテル50は、瘻孔63内への挿入の際には、オブチュレータ56に装着されている。オブチュレータ56も従来公知のいずれのものを用いてもよく、本実施形態では、胃瘻カテーテル50内に挿入する図示しないロッド部、ロッド部を挿入する外筒部57、およびロッド部の挿入や挿入長さを調整する押圧部58などを有して構成されている。また、外筒部57には、押圧部58を操作する際や胃瘻カテーテル50ごとオブチュレータ56を胃瘻用シース100内に挿入する際に手指を掛けて支持するためのフランジ部59が突出形成されている。
【0030】
〔逆止弁の復元の原理〕
以下、図14を用いて、高剛性部25を設けたことによる、弁本体21の優れた復元力の原理について説明する。図14(a)は高剛性部25を設けていない通常の逆止弁2の概略断面図であり、図14(b)は高剛性部25を設けた本実施形態の逆止弁20の概略断面図である。なお、図14(b)に示すように、第一の厚肉部25a部分で切断した断面図となっており、その奥(紙面奥)に第二の厚肉部25bが存在し、第三の厚肉部25cは省略しており、これらの図は原理の説明のための模式図である。
【0031】
図14(a)、(b)の逆止弁2、20は、迅速な開閉を可能とするため、ある程度硬い材料で形成した場合、ダイレータ40を挿入すると、図14(a)、(b)の各右図に示すように、中央部が点線のように元の形状と対称な円弧状には変形せず、湾曲変形する。その結果、同図のように逆止弁2、20の全体は、幅方向の断面形状がM字状に変形する。このM字状に変形した場合の湾曲の谷部Yの曲率半径は、元の円弧の曲率半径に比べて小さい。そのため、図14(a)のような高剛性部25を設けていない逆止弁2では、内表面2aに作用する伸張力が復元しようとする力よりも、外表面2bに作用する収縮力、すなわち、M字を保持しようとする力の方が強く、M字形状が保持されて安定した状態となる。そのため、図14(a)右図のように安定したM字形状を保持したままとなり、中立点Xを超えて復元することはなく、気密性が損なわれる。そのため、胃瘻カテーテル50を挿入するまでの間に、胃内部のガスがシース本体10の挿入口11から体外に抜け出てしまい、胃瘻カテーテル50の挿入作業に支障を来すことがある。
【0032】
一方、図14(b)に示す、本実施形態の逆止弁20でも、ダイレータ40の挿入の際に、M字状に変形する。しかし、ダイレータ40を抜き取った際には、高剛性部25の作用により、元の形状に迅速に復元し、かつ良好な気密性が保持される。その原理を図14(b)右図を用いて説明すると、まず、ダイレータ40によってM字状に押圧変形している際にも、厚肉な高剛性部25を形成していない薄肉な内外表面20a、20bに比べて、第一、第二の厚肉部25a、25bを設けた部分に作用する力が大きい。つまり、内表面20a側での第一、第二の厚肉部25a、25bにかかる伸張力が大きく、その反作用で元の形状に復元(収縮)しようとする力が大きい。また、外表面20b側での第一、第二の厚肉部25a、25bにかかる収縮力も大きく、その反作用で元の形状に復元(伸張)しようとする力が大きい。その結果、ダイレータ40による押圧力が解除されると、第一、第二の厚肉部25a、25bおよび図示はしないが第三の厚肉部25cを設けた部分が元の形状に復元し、それに追随して薄肉部分も復元する。したがって、逆止弁20全体が元の形状に良好に復元して、優れた気密性を保持することができる。
【0033】
より詳細には、ヒンジ部23に近く、最も厚い球状に形成された第一の厚肉部25aは、M字形状となった際に湾曲部の谷部Yの内表面20a側にかかる伸張力と外表面20b側にかかる収縮力が最も大きく、元の球状に復元しようとする力が大きい。一方、中央部に長尺に形成した第二の厚肉部25b、図示しない第三の厚肉部25cも、内表面20a側に係る伸張力と外表面20b側にかかる収縮力が、薄肉部分に比べて大きい。そのため、ダイレータ40を引き抜くと、反作用により、まず、第一の厚肉部25a部分が弾性復元する。次に、中央部に設けた長尺な第二の厚肉部25bの復元力により、逆止弁20全体を持ち上げて均一に復元する。また、逆止弁20の先端側は、第三の厚肉部25cの復元力により、逆止弁20の外周縁24が、シース本体10の挿入口11の内面に確実に密着する。以上により、本実施形態の逆止弁20は、復元性が良好で気密性に優れ、ガスの体外への流出を確実に防止するとともに、胃壁61と腹壁62との密着性も保持して、次の胃瘻カテーテル50の挿入作業を円滑に行うことができる。
【0034】
なお、逆止弁20全体を厚肉に形成すると、硬すぎて、M字状の変形が保持され、気密性が低下することがあり、好ましくない。また、逆止弁20の中央部ではなく、M字の谷部Y側の内外表面20a1、20b1に厚肉部を設けた場合、当該谷側は略平面的であるため、厚肉としても復元力と変形力とが拮抗して、復元しにくいため好ましくない。一方、M字の谷部Yの外側、すなわち変形していない部分の内外表面20a2、20b2に厚肉部を設けた場合、変形部分への影響力はないため好ましくない。したがって、本実施形態および以下で説明する他の実施形態ならびに変形例のように、逆止弁20の幅方向の中央部を厚肉に形成して高剛性部25とするのが好ましい。
【0035】
また、球状の第一の厚肉部25aが最も厚肉で復元力が強いため、この第一の厚肉部25aのみ設けてもよい。しかし、上述したように、それぞれの役割が異なる3つの厚肉部25a〜25cを設けた本実施形態の逆止弁20では、全体がバランスよく迅速に復元し、良好な復元性を得ることが可能となり、より優れた気密性を保持することが可能となる。また、本実施形態では、弁本体21の両表面を突出させて各厚肉部25a〜25cを形成しているが、いずれか一方の表面のみを突出形成して厚肉部25を形成してもよく、低コスト化が図れる。ただし、両表面側に突出させて厚肉部25を形成するほうが、上述した原理により、復元力が高い。いずれの場合でも、胃瘻カテーテル50のサイズやガス圧、コストなどに応じて、適宜選択するのが好ましい。
【0036】
また、本実施形態では、凸状に湾曲させた逆止弁20に、高剛性部25を設けているが、本発明がこれに限定されるわけではなく、平坦な逆止弁に高剛性部を設けてもよい。このような場合でも、外周縁がシース本体の内部通路の壁面に密着する。そして、ダイレータの挿入によって平坦な逆止弁がU字状や、場合によってはM字状などに変形し、ダイレータを抜取っても、高剛性部の存在により、迅速に元の形状に復元し、かつ気密性を保持することも可能である。ただし、上述のように湾曲させた逆止弁20の方が、弁本体21の外周縁24をシース本体10の内部通路13の壁面に強く押し付け可能であり、より高い気密性を得ることができる。すなわち、ガス圧は湾曲の内面に直角にかかるところ、保型性に優れた凸状の逆止弁20によれば湾曲状態は保持されるため、気密状態が良好に保持される。したがって、逆止弁20を湾曲形状とするのが好ましい。
【0037】
また、シース本体10および逆止弁20の形成材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、などを用いるのが好ましい。また、これらの中でも、シース本体10は、摩擦抵抗が低いPTFE,FEP、ETFEなどのフッ素樹脂により形成するのが特に好ましく、胃瘻カテーテル50を挿入する際に、内部通路13を通過する際の摩擦抵抗を低減させ、胃瘻カテーテル50の挿入を容易かつ円滑に行うことが可能となる。また、透明材料で形成することにより、ダイレータ40の目盛りを良好に読み取ることができる。また、逆止弁20は、ゴム弾性を有する材料により形成するのが好ましく、例えば、ポリエチレン樹脂、ゴム材料、軟質塩化ビニル樹脂(軟質PVC)などが挙げられる。ゴム材料としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などのようなジエン系ゴム材料、または、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ゴム(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)フッ素ゴム(FKM)などのような非ジエン系ゴム材料などが挙げられる。以上の材料の中でも、ポリエチレン樹脂、シリコーンゴム、軟質塩化ビニル樹脂のいずれかを用いるのが好ましく、シリコーンゴムを用いるのが最も好ましい(本実施形態ではシリコーンゴムで逆止弁20を形成している)。このような材料を用いて逆止弁20を形成することにより、ダイレータ40や胃瘻カテーテル50の挿入を妨げない柔軟性と復元のための適度な剛性を有するとともに、胃内部60からのガス圧への耐性に優れ、良好な密閉性を保持することができる。なお、本願の逆止弁20の材料が、これらの材料に限定されるものではなく、ゴム弾性を有する材料であればいずれのものを用いてもよい。
【0038】
また、コネクタ30の形成材料としては、ポリアセタール(POM)樹脂、ABS樹脂、硬質PVCなどを用いるのが好ましい。これらの材料で形成することにより、PEなどで形成されたシース本体10の被挟持部12と逆止弁20の被挟持部22とをコネクタ30で強固に挟持し、コネクタ30を把持しながら胃瘻カテーテル50の挿入作業を行うことで、シース本体10や逆止弁20が瘻孔63内から脱落するのを防ぐことができる。ここで、コネクタ30に使用される硬質塩化ビニル樹脂とは、一般的に、可塑剤がまったく含まれていないか、含まれていても少量である塩化ビニル樹脂をいう。これに対して、逆止弁20に使用される軟質塩化ビニル樹脂とは、可塑剤が多く含まれている塩化ビニル樹脂を、より具体的には、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤が30重量部以上含まれる塩化ビニル樹脂をいう。
【0039】
〔胃瘻用シースを用いた胃瘻カテーテルの挿入手順〕
次に、図6〜図13を用いて、本実施形態の胃瘻用シース100の補助により、胃内部に胃瘻カテーテル50を挿入し、留置する手順を説明する。なお、以下の作業は、患者の胃内部60に内視鏡を挿入して、状況を観察しながら行う。まず、患者の胃内部60に内視鏡によりガス(空気、二酸化炭素など)を供給し、内視鏡の視野を確保する。その後、内視鏡により胃の位置を確認し、腹壁62の表面側から触診を行って、胃壁61と腹壁62との固定部位を決定し、腹部の皮膚を消毒した後、局所麻酔を行う。
【0040】
次に、縫合糸70を用いて、胃壁61と腹壁62とが密着するよう縫合して固定し、縫合部71を形成する。この胃壁61と腹壁62との縫合糸70による固定は、以後の胃瘻カテーテル50の挿入のための瘻孔63を形成するために、最低2箇所を縫合固定し縫合部71を2箇所以上形成することが好ましい(以上、図6参照)。
【0041】
縫合部71により、胃壁61と腹壁62との固定を行ったら、図示はしないが、腹壁62の表面側から、当該腹壁62および胃壁に61に瘻孔63形成する準備段階として、穿孔針を刺して胃内部60に貫通させる。この穿孔針内にガイドワイヤ80を、胃内部60に到達するよう挿通する。次に、穿孔針のみを抜き取ると、図6に示すように、胃壁61と腹壁62とを貫通して形成された小径な瘻孔63内に、ガイドワイヤ80のみが留置される。
【0042】
次に、図7に示すように、シース本体10の内部通路13内に、挿入口11を介してダイレータ40を挿入する。この際に、コネクタ30の導入用凹部31に沿って、ダイレータ40を挿通することで、当該ダイレータ40をシース本体10内に容易かつ平行に挿通することができる。また、目盛り44の位置調整を行うとともに、先端の拡開部42を連通口16から外部に突出させる。このダイレータ40をシース本体10に挿通することで、逆止弁20が開弁し、シース本体10の逆止弁収納部17に収納される。その際に、図7、図14(b)右図に示すように、逆止弁20は幅方向の断面形状がM字状に変形する。なお、逆止弁20が開弁しても、シース本体10の内部通路13の内周面に、ダイレータ本体41の外周面が密着しているので、次の工程で瘻孔63内に挿入しても、内部通路13の気密性が保持されている。図7では、逆止弁20のM字状の変形を明示するため、逆止弁20とコネクタ30とは側面図として表示しているが、シース本体10は断面図として表示している。
【0043】
そして、拡開部42の先端から挿通路43内に、瘻孔63内に留置されたガイドワイヤ80を挿通する。このガイドワイヤ80に沿って、胃瘻用シース100に挿入したダイレータ40を腹壁62表面側から、腹壁62および胃壁61の瘻孔63内に徐々に挿入していく。このとき、テーパー状の拡開部42により次第に瘻孔63の内径が拡開されることにより、ダイレータ40とシース本体10とが円滑に瘻孔63内を貫通し、胃内部60に到達するとともに、瘻孔63の拡開も円滑に行うことができる(図7参照)。
【0044】
また、胃瘻カテーテル50のチューブ部51の長さは、胃壁61と腹壁62との長さに応じて決定する。それには、目盛り44の基点を胃壁61の内表面に合わせ、シース本体10を透過して腹壁62の外表面から確認できるダイレータ40の目盛り44を読み取り、腹壁62の外表面から胃壁61の内表面までの距離を測定する。この測定長さに対応した長さのチューブ部51を有する胃瘻カテーテル50を選択する。つまり、胃壁61と腹壁62との長さに対応したチューブ部51を確実に瘻孔63内に挿入し、留置部52により胃壁61の内表面などを傷つけることなく、かつ確実に胃内部60に留置することが可能となる。このように選択した胃瘻カテーテル50を、オブチュレータ56に装着し、チューブ部51と留置部52との長さに応じてオブチュレータ56のロッド部の長さも調節しておく。
【0045】
上記のように、ダイレータ40とシース本体10との挿入により、瘻孔63が拡開したら、シース本体10のみを残して、ダイレータ40とガイドワイヤ80とを体外へ抜取る(図8参照)。このようにダイレータ40をシース本体10から抜取ることにより、逆止弁20が復元して、挿入口11を閉止し、内部通路13を介した胃内部60と外部とを遮断する。前述したように、従来の逆止弁2では、M字状の変形が復元せず、気密性を損なっていた。しかし、本実施形態で用いる逆止弁20は、前述したように、第一〜第三の厚肉部25a、25b、25cからなる高剛性部25によって、良好に元の形状に復元し、挿入口11に密着して、優れた気密性を実現することができる。したがって、胃内部60に供給されたガスなどが、内部通路13から体外へ流出するのを良好に防止できる。
【0046】
次に、胃瘻カテーテル50の挿入作業を行う。まず、図9に示すように、胃瘻カテーテル50を装着したオブチュレータ56の押圧部58でのロッド部の押圧力を調整して固定し、胃瘻カテーテル50において、胃内部60に留置する留置部52を長手方向に伸張させる。この伸張状態で、胃瘻カテーテル50を、胃瘻用シース100の挿入口11を介して、シース本体10の内部通路13内に挿入する。このとき、胃瘻用シース100が胃内部60方向に移動しないように、コネクタ30を手で保持するのが好ましい。
【0047】
上記シース本体10の挿入口11には、V字状の切口部14が形成され、この切口部14に連続して、内部通路13の外壁面には、V字溝状の脆弱なスリット部15が長手方向に形成されている。一方、胃瘻カテーテル50の伸張された留置部52の外径は、シース本体10の内径よりも大径である。そのため、シース本体10内に、胃瘻カテーテル50の留置部52が挿入されることにより、図10に示すように、シース本体10は、スリット部15が長手方向に切り裂かれ、シース本体10が拡開する。その結果、大径な留置部52を、シース本体10に貫通させて胃内部60に到達させることができる。
4)。
【0048】
また、シース本体10は、前述のように、摩擦抵抗が低いフッ素系樹脂により形成され、さらに、胃瘻カテーテル50の留置部52およびチューブ部51が、内部通路13に案内されることにより、瘻孔63に影響を与えることなく、円滑に胃内部60および内部通路13内に導入される。また、ダイレータ40とシース本体10との瘻孔63内への挿入時に、目盛り44を用いて挿入の位置決めを行い、さらに、胃壁61と腹壁62との長さを計測し、その長さに対応したチューブ部51を有する胃瘻カテーテル50を用いている。そのため、図11に示すように、腹壁62の外表面に胃瘻カテーテル50のストッパ部53が到達した際に、シース本体10の連通口16から留置部52が突出し、所望の位置に留置部52を留置することができる。なお、図11では、シース本体10への胃瘻カテーテル50の挿入状態を明示するため、シース本体10を断面図として表示している。
【0049】
そして、胃瘻カテーテル50の挿入が完了したら、図12に示すように、オブチュレータ56の図示しないロッド部で胃瘻カテーテル50の留置部52を伸張させた状態で、破断したシース本体10を瘻孔63内から抜取り、胃瘻用シース100全体を体外へ除去する。
【0050】
次に、オブチュレータ56の押圧部58による押圧を解除することにより、胃瘻カテーテル50の留置部52に加えられていた、ロッド部の伸張力を解除する。この伸張力の解除により、留置部52が瘻孔63の内径よりも大径に拡張し(図13参照)、留置部52が瘻孔63内から抜出るのを良好に防止することができる。
【0051】
その後、図13に示すように、胃瘻カテーテル50が装着されていたオブチュレータ56を瘻孔63内から抜取ることにより、胃瘻カテーテル50の胃壁61および腹壁62への装着が完了する。また、図13の点線矢印のように、ボタン部55をチューブ部51の注入口54方向に回動し、当該注入口54にボタン部55を嵌めてチューブ部51内を塞ぐことで、胃瘻カテーテル50の留置作業が終了する。
【0052】
このチューブ部51の閉塞により、胃内部60のガスが外部に流出することはない。また、拡開された瘻孔63の内周が、復元力によりチューブ部51の外周に密着するので、瘻孔63とチューブ部51との間から胃内部60のガスなどが流出することもない。また、ガスの供給をストップしても、胃内部60の留置部52と腹壁62側に配置したストッパ部53によって胃壁61と腹壁62とを挟持しているので、これらが分離するのを防止するとともに、胃瘻カテーテル50が胃壁61や腹壁62から外れるのを良好に防止することができる。なお、栄養や薬液を胃内部60に注入する際には、ボタン部55を注入口54から外すことで、チューブ部51を介して栄養液や薬液などを胃内部60に注入することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態の胃瘻用シース100では、高剛性部25を設けた逆止弁20を用いることにより、胃瘻カテーテル50の瘻孔63への挿入作業時の胃瘻用シース100の気密性に優れるものとなる。そのため、手術中に胃内部60からのガスなどの外部への流出を良好に防止することができ、胃瘻カテーテル50の留置作業を容易に行うことができる。
【0054】
なお、上記第一実施形態では、胃瘻用シース100に用いる逆止弁20の高剛性部25を、第一〜第三の厚肉部25a、25b、25cで形成しているが、本発明がこれに限定されるわけではない。以下、第二、第三実施形態の逆止弁120、220、およびさらなる変形例の逆止弁320、420、520、620について説明する。
【0055】
<第二実施形態>
以下、図3を用いて、第二実施形態の胃瘻用シースに用いられる、逆止弁120について説明する。第二実施形態にかかる胃瘻用シースの構造は、逆止弁120の高剛性部125が異なること以外は、第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、胃瘻カテーテルの挿入作業についても、第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。図3(a)、(b)に示すように、本実施形態の逆止弁120は、外周縁124が楕円形状で扁平な弁本体121と、この弁本体121とヒンジ部123を介して一体形成された長方形状で扁平な被挟持部122と、幅方向の中央部の曲げ剛性が、両側の曲げ剛性よりも高く形成された高剛性部125と、当該高剛性部125に沿って延在する両側部に形成された薄肉部126と、を有して構成されている。
【0056】
本実施形態では、高剛性部125は、弁本体121の外周縁124の略半分を厚肉に形成してなるものである。そして、点線矢印で示す、高剛性部125に沿って延在する両側部に薄肉部126が形成されている。このように、外周縁124に設けた高剛性部125のみを有する逆止弁120であっても、第一実施形態の逆止弁20と同様に、M字状に変形した際の復元力が向上し、さらに、厚肉な外周縁124が挿入口に密着して、優れた気密性を得ることができる。
【0057】
<第三実施形態>
以下、図4を用いて、第二実施形態の胃瘻用シースに用いられる、逆止弁220について説明する。第三実施形態にかかる胃瘻用シースの構造も、逆止弁220の高剛性部225が異なること以外は、第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、胃瘻カテーテルの挿入作業についても、第一実施形態と同様であるため、説明を省略する。図4(a)、(b)に示すように、本実施形態の逆止弁220は、外周縁224が楕円形状で扁平な弁本体221と、この弁本体221とヒンジ部223を介して一体形成された長方形状で扁平な被挟持部222と、幅方向の中央部の曲げ剛性が、両側の曲げ剛性よりも高く形成された高剛性部225と、当該高剛性部225に沿って延在する両側部に形成された薄肉部226と、を有して構成されている。
【0058】
本実施形態では、高剛性部225は、弁本体221の長手方向の中央部よりも先端側であって、幅方向の中央部に、ヒンジ部223に凹面を向けたリング状の一部からなる厚肉部から形成されている。そして、点線矢印で示す、高剛性部225に沿って延在する両側部に薄肉部126が形成されている。このような高剛性部225を有する逆止弁220であっても、第一実施形態の逆止弁20と同様に、M字状に変形した際の復元力が向上し、優れた気密性を得ることができる。
【0059】
以下、図5を用いて、逆止弁(320、420、520、620)のさらなる第一〜第四変形例について、その構成のみ説明する。
【0060】
<第一変形例>
図5(a)に示す第一変形例にかかる逆止弁320は、上記第一、第二実施形態と同様に、外周縁324が楕円形状で扁平な弁本体321と、ヒンジ部323と、被挟持部322と、高剛性部325と、点線矢印で示すように、当該高剛性部325に沿って延在する両側部に形成された薄肉部326と、を有して構成されている。本変形例の高剛性部325は、弁本体321の幅方向の中央部であって、ヒンジ部323側に形成された、球状の第一の厚肉部325aと、同じく弁本体321の幅方向の中央部であって、長手方向の中央部に形成された、幅方向に長尺な第二の厚肉部325bと、から構成されている。
【0061】
<第二変形例>
図5(b)に示す第二変形例にかかる逆止弁420は、上記第一、第二実施形態と同様に、外周縁424が楕円形状で扁平な弁本体421と、ヒンジ部423と、被挟持部422と、高剛性部425と、点線矢印で示すように、当該高剛性部425に沿って延在する両側部に形成された薄肉部426と、を有して構成されている。本変形例の高剛性部425は、弁本体421の幅方向の中央部であって、幅方向の中央部を介して、ヒンジ部423側と、先端部側に対称に形成された、球状の第一の厚肉部425aと、同じく球状の第二の厚肉部425bと、から構成されている。
【0062】
<第三変形例>
図5(c)に示す第三変形例にかかる逆止弁520は、上記第一、第二実施形態と同様に、外周縁524が楕円形状で扁平な弁本体521と、ヒンジ部523と、被挟持部522と、高剛性部525と、点線矢印で示すように、当該高剛性部525に沿って延在する両側部に形成された薄肉部526と、を有して構成されている。本変形例の高剛性部525は、弁本体521の幅方向の中央部であって、ヒンジ部523側に、長手方向に長尺な第一の厚肉部525aと、同じく弁本体521の幅方向の中央部であって、長手方向の中央部に形成され、幅方向に長尺な第二の厚肉部525bと、から構成され、さらに、第一の厚肉部525aと第二の厚肉部525bとが連結されて、T字型となっている。
【0063】
<第四変形例>
図5(d)に示す第三変形例にかかる逆止弁620は、上記第一、第二実施形態と同様に、外周縁624が楕円形状で扁平な弁本体621と、ヒンジ部623と、被挟持部622と、高剛性部625と、薄肉部626と、を有して構成されている。上記各実施例および各変形例では、弁本体の幅方向の中央部を、その延在する両側部よりも厚肉に形成して、高剛性部を形成し、当該両側部を薄肉部としている。しかし、本変形例では、弁本体621の幅方向の中央部を介して、弁本体621の両側を対称にえぐり取って、薄肉部626を形成することで、結果的に中央部が厚肉に形成されて、高剛性部625が形成されている。したがって、高剛性部625の中央部から延在する両側部(点線矢印で表示)に、薄肉部626が位置することとなる。
【0064】
以上の第一〜第四変形例の逆止弁320、420、520、620でも、ダイレータの挿入時にM字状に変形しても、高剛性部325、425、525、625の存在により、ダイレータを抜き取っても元の形状に良好に復元することが可能となる。そのため、優れた気密性を得ることが可能であり、胃瘻カテーテルの挿入までの胃瘻用シースからのガスなどの漏れを良好に防止することが可能となり、胃瘻カテーテルの挿入作業を効率的に行うことが可能となる。
【0065】
なお、上記各実施形態および各変形例では、弁本体の一部に厚肉部や薄肉部を設けて逆止弁の幅方向の中央部と両側との厚さを変えることで、幅方向の中央部に高剛性部を形成しているが、本発明がこれらに限定されるわけではない。M字状に変形した逆止弁を、良好に復元して優れた密閉性を保持することができれば、いずれの手段で高剛性部を形成してもよい。たとえば、逆止弁の弁本体を形成する樹脂材料よりも、曲げ剛性の高い樹脂材料やその他の材料で高剛性部を形成してもよい。または、塑性変形せずに復元力が大きい超弾性材料(たとえば、ニチノール:NiTiなど)を、弁本体の中央部に埋設や貼着により配置して、高剛性部を形成してもよい。また、シース本体の挿入口の向きも、傾斜形状に限定されることはなく、連通口と平行、すなわち、ダイレータや胃瘻カテーテルの挿入方向に対して垂直であってもよい。また、挿入口の形状も、卵型に限定されることはなく、向きが傾斜の場合は楕円形状であってもよいし、向きが垂直の場合は円形状であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 シース本体
11 挿入口
2、20、120、220、320、420、520、620 逆止弁
24、124、224、324、424、524、624 外周縁
25、125、225、325、425、525、625 高剛性部
25a、325a、425a、525a 第一の厚肉部
25b、325b、425b、525b 第二の厚肉部
25c 第三の厚肉部
26、126、226、326、426、526、626 薄肉部
50 胃瘻カテーテル
63 瘻孔
100 胃瘻用シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
瘻孔内に留置される胃瘻カテーテルを前記瘻孔内に挿入する作業を補助するための胃瘻用シースであって、
前記胃瘻カテーテルが挿入される円筒状のシース本体と、前記胃瘻カテーテルの挿入口と、前記挿入口を閉止し前記胃瘻カテーテルの挿入方向に一方的に開弁する逆止弁と、を備え、
前記逆止弁は、前記胃瘻カテーテルの挿入方向に対する幅方向の中央部に、その両側に延在する両側部よりも曲げ剛性が高く形成された、高剛性部を有することを特徴とする胃瘻用シース。
【請求項2】
前記挿入口は、前記胃瘻カテーテルの挿入方向に対して傾斜して形成され、
前記逆止弁は、前記挿入口の外方に突出した湾曲形状をなし、前記シース本体内に配置されている請求項1に記載の胃瘻用シース。
【請求項3】
前記高剛性部は、前記逆止弁の幅方向の中央部に厚肉部を設けることで形成されている請求項1または2に記載の胃瘻用シース。
【請求項4】
前記高剛性部は、球状の突起からなる厚肉部を含む請求項3に記載の胃瘻用シース。
【請求項5】
前記高剛性部は、幅方向に長尺な厚肉部を含む請求項3または4に記載の胃瘻用シース。
【請求項6】
前記高剛性部は、球状の突起からなる第一の厚肉部と、球状の前記突起よりも形成高さが低く、幅方向に長尺な第二の厚肉部と、を含む請求項3に記載の胃瘻用シース。
【請求項7】
前記逆止弁は、ヒンジ部を介して前記挿入口に対して開閉自在に配置され、
前記第一の厚肉部は、前記第二の厚肉部よりも、前記ヒンジ部側に形成されている請求項6に記載の胃瘻用シース。
【請求項8】
前記高剛性部が、前記逆止弁の外周縁に形成されている請求項1から3のいずれかに記載の胃瘻用シース。
【請求項9】
前記高剛性部が、球状の突起からなる第一の厚肉部と、幅方向に長尺な第二の厚肉部と、前記逆止弁の外周縁に形成された第三の厚肉部と、を含む請求項6から8のいずれか一項に記載の胃瘻用シース。
【請求項10】
前記逆止弁は、ポリエチレン樹脂、シリコーンゴム、軟質塩化ビニル樹脂のいずれかにより形成されている請求項1から9のいずれか一項に記載の胃瘻用シース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−9866(P2013−9866A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144888(P2011−144888)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(598111216)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】