説明

背凭れ撓み量調整機構

【課題】背凭れの横断面形状の後方への撓み量を調整することができるようにする。
【解決手段】左右一対の背フレーム5A,5Bによって支持されると共に弾性変形可能な背板2を備える背凭れを有する椅子において、左右一対の背フレーム5A,5Bによって背板2に左右方向の力を加えて背板2を撓ませることにより背板2の後方への撓み量を調整するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れ撓み量調整機構に関する。さらに詳述すると、本発明は、座と背凭れとを有する例えば事務用椅子に適用して好適な背凭れ撓み量調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
座と背凭れとを有する事務用椅子として、例えば、図13に示すように、脚101の脚支柱102の頂部に取り付けられたベースフレーム103に支持される座104と、ベースフレーム103に前端が支持される逆向きL字形の背支桿105の上端に取り付けられた背凭れ106とを有するものがある(特許文献1)。
【0003】
座と背凭れとを有する事務用椅子として、また、背凭れを、周縁部を構成する帯板状のフレーム部材と、編地等のシート材からなりフレーム部材内に張設される張材とから構成するものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−255562号
【特許文献2】特開2007−117537号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2の背凭れは、背凭れを構成する背板や背枠自体は変形しない。したがって、背の幅(言い換えると、肩幅)や背の表面の曲率(言い換えると、背の横断面形状における後方への張り出しの程度)は個人差があるにもかかわらず、特許文献1の背凭れでは、背板が変形しないので背板の横断面形状の曲率(言い換えると、後方への撓み量)は一定であるので、背凭れによって背中全体が支持されているという十分なフィット感・サポート感を得たいと着座者が思っても横断面形状を調整することができず、背凭れの寄りかかり利用が快適であるとは言い難いという問題がある。
【0006】
また、特許文献2の背凭れでは、体重が軽い人が背凭れに寄りかかった場合には背枠内の張材が後方に少しだけ撓む一方で体重が重い人が背凭れに寄りかかった場合には張材が後方に大きく撓むので、着座者個人の好みに合わせて背凭れの横断面形状の後方への撓み量を調整することができず、背凭れの寄りかかり利用が快適であるとは言い難いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、背凭れの横断面形状の後方への撓み量を調整することができる背凭れ撓み量調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の背凭れ撓み量調整機構は、左右一対の背フレームによって支持されると共に弾性変形可能な背板若しくは背枠を備える背凭れを有する椅子において、左右一対の背フレームによって背板若しくは背枠に左右方向の力を加えて背板若しくは背枠を撓ませることにより背板若しくは背枠の後方への撓み量を調整するようにしている。
【0009】
また、請求項5記載の背凭れ撓み量調整機構は、左右方向に延出する背フレームによって支持されると共に弾性変形可能な背板若しくは背枠を備える背凭れを有する椅子において、背フレームに備えられた押圧機構によって背板若しくは背枠の左右中央部分に前後方向の力を加えて背板若しくは背枠を撓ませることにより背板若しくは背枠の後方への撓み量を調整するようにしている。
【0010】
したがって、これらの背凭れ撓み量調整機構によると、背板・背枠の横断面形状の後方への撓み量を着座者の好みに合わせて変化させたり体型に合わせて調整したりすることができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の背凭れ撓み量調整機構において、背板若しくは背枠は、左右一対の背フレームのそれぞれに設けられた連結機構を介して支持されており、当該連結機構が備える縦軸によって軸回転可能に左右一対の背フレームに支持されるようにしている。この場合には、支持部分における軸回転の自由度が確保されるので、背板若しくは背枠が変形する際に支持部分に応力が集中することがないと共に、背板若しくは背枠が円滑に変形し易くなる。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の背凭れ撓み量調整機構において、左右一対の背フレームによって背板若しくは背枠の上下中間位置よりも上方において背板若しくは背枠の背面の左右両側を支持するようにしている。この場合には、背板若しくは背枠の変形が容易になる。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の背凭れ撓み量調整機構において、操作部を操作することにより左右一対の背フレームが左右方向に移動することによって背板若しくは背枠に左右方向の力を加えて背板若しくは背枠を撓ませるようにしている。この構成により、背フレーム自体を移動させることによって背板・背枠に左右方向の力が加えられて背板・背枠が変形し撓む。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,5記載の背凭れ撓み量調整機構によれば、背板・背枠の横断面形状の後方への撓み量を着座者の好みに合わせて変化させたり体型に合わせて調整したりすることができ、背凭れの寄りかかり利用の快適性の向上を図ることが可能になる。
【0015】
さらに、請求項2記載の背凭れ撓み量調整機構によれば、背板が変形する際に背板の支持部分に応力が集中してしまうことを防ぐことができるので、部品の破損や摩耗を防いて製品寿命を長くすることが可能になると共に、背板を円滑に変形させることができるので、使い勝手や使い心地のより一層の向上を図ることが可能になる。
【0016】
さらに、請求項3記載の背凭れ撓み量調整機構によれば、背板若しくは背枠の変形を容易にすることができるので、操作性・使い易さの向上を図ることが可能になる。
【0017】
また、請求項4記載の背凭れ撓み量調整機構によれば、背フレーム自体を移動させることにより、背板・背枠に左右方向の力を加えて背板・背枠を変形させて撓ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の背凭れ撓み量調整機構の実施形態の一例を示す側面図である(背板の横断面形状の後方への撓み量が小さい状態)。
【図2】本発明の背凭れ撓み量調整機構の実施形態の一例を示す図で、背板の横断面形状の後方への撓み量が小さい状態を示す図である。(A)は背板の平面図である。(B)は背板及び背フレーム支持部材・背フレームの背面図である。
【図3】本発明の背凭れ撓み量調整機構の実施形態の一例を示す図で、背板の横断面形状の後方への撓み量が大きい状態を示す図である。(A)は背板の平面図である。(B)は背板及び背フレーム支持部材・背フレームの背面図である。
【図4】実施形態の背凭れ撓み量調整機構の一部拡大側面図である。
【図5】実施形態の背凭れ撓み量調整機構(後ろ側部分で、背フレームを中心とする構成)の分解背面図である。
【図6】実施形態の背凭れ撓み量調整機構(前側部分で、背フレーム支持部材を中心とする構成)の分解背面図である。
【図7】実施形態における背フレームと背板との連結機構を示す一部拡大図である。(A)は連結機構の側面図である。(B)は連結機構の平面図である。
【図8】実施形態における座受け部材と背板とを連結するリンク部材を示す一部拡大図である。
【図9】本発明の背凭れ撓み量調整機構の第二の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の背凭れ撓み量調整機構の第三の実施形態を示す図である。
【図11】本発明の背凭れ撓み量調整機構の第四の実施形態を示す図である。
【図12】本発明の背凭れ撓み量調整機構の第五の実施形態を示す図である。
【図13】従来の背凭れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1から図8に、本発明の背凭れ撓み量調整機構の実施形態の一例を示す。なお、本実施形態では、本発明の背凭れ撓み量調整機構を図1に全体構造を示す椅子20に適用した場合を例に挙げて説明する。また、本明細書においては、椅子20の座12に座った着座者を基準にして上下、前後、左右を定義する。
【0021】
本実施形態の椅子20は、キャスターを有する脚21と、脚21の脚支柱21aの頂部に取り付けられ支持されるベースフレーム8と、ベースフレーム8の後寄り部分に前端部分が揺動可能に取り付けられる背フレーム支持部材1と、ベースフレーム8の前端部に前寄り部分が連結されると共に背フレーム支持部材1と後ろ寄り部分が連結される座受け部材11と、座受け部材11に支持される座12と、背フレーム支持部材1の後端部分に下側部分が取り付けられる背フレーム5と、背フレーム5の上端部に上寄り部分が支持されると共に座受け部材11の後端部にリンク部材3を介して下端部が連結される背板2とを有する。なお、図2及び図3においては、背板2及び背フレーム支持部材1・背フレーム5に纏わる構成に関係がない部材は図示を省略している。
【0022】
なお、本実施形態では図示していないが、背板2の前面にクッション材を取り付けるようにしても良いし、さらに、クッション材と背板2の少なくとも縁部とを覆うカバーを備えるようにしても良い。
【0023】
また、ベースフレーム8,座受け部材11,背フレーム支持部材1(1a,1b)は、左右一対の対向する板状部材を側壁として有するものとして構成される。
【0024】
ベースフレーム8は、左右の側壁を連結する底板を備える後端寄りの部分8aが例えばボルト結合やテーパー嵌合によって脚支柱21aの上端に取り付けられる。
【0025】
ベースフレーム8の後ろ寄り部分と背フレーム支持部材1の前端部分とはこれらの左右両側壁を貫通する左右方向の揺動軸8dによって揺動可能に連結され、これによって背フレーム支持部材1・背フレーム5のロッキングが可能になる。
【0026】
背フレーム支持部材1は、ベースフレーム8と連結する前端部分から後方斜め上向きに延出する傾斜部材1aと、当該傾斜部材1aの後寄りの部分に下端部が結合すると共に座12及び背板2の後方に上下方向に配置される直立部材1bとからなる。
【0027】
ベースフレーム8の左右両側壁の前端部分には概ね前後方向の貫通長孔8bが形成され、貫通長孔8b内を前後方向に摺動可能に貫通する左右方向の揺動軸8cによってベースフレーム8の前端部分と座受け部材11の前寄り部分とが揺動可能に連結される。なお、揺動軸8cは、座受け部材11に形成されている軸受け11aによって把持され支持されている。
【0028】
また、背フレーム支持部材1の傾斜部材1aの中間部と座受け部材11の後ろ寄り部分とはこれらの左右両側壁を貫通する左右方向の揺動軸1cによって揺動可能に連結される。
【0029】
ベースフレーム8と背フレーム支持部材1との間には、前端部がベースフレーム8の中間部に固定されると共に後端部が背フレーム支持部材1(傾斜部材1a)の前端(下端)部に左右方向の連結ピンを介して揺動可能に連結される反力機構13が介在している。本実施形態では、反力機構13として圧縮コイルばねが圧縮した状態で前後方向に設けられる。そして、当該反力機構13により、背フレーム支持部材1の前端部分は後ろ斜め下向きに常時付勢され、背フレーム5を介して背板2を起立させた状態が維持される。
【0030】
さらに、ベースフレーム8と背フレーム支持部材1との間には、前端部がベースフレーム8の後端部に左右方向の連結ピンを介して揺動可能に連結されると共に後端部が背フレーム支持部材1の中間部(傾斜部材1aの後ろ寄りの部分)に左右方向の連結ピンを介して揺動可能に連結される傾動調整機構15が介在している。本実施形態では、傾動調整機構15として伸縮ロック機構付きのガススプリングが前後方向に設けられる。
【0031】
そして、傾動調整機構15はベースフレーム8及び背フレーム支持部材1(傾斜部材1a)と共に三角形状のリンク機構を構成し、傾動調整機構15の長さ変化可能な場合(即ち伸縮フリー状態)には背フレーム支持部材1はベースフレーム8に対して揺動可能である一方で、傾動調整機構15の長さを固定した場合(即ち伸縮ロック状態)では背フレーム支持部材1はベースフレーム8に対して揺動することができない。すなわち、傾動調整機構15の長さ可変と長さ固定とを切り替えることで背板2の前後傾斜角度を調整した上でロックすることができる。なお、傾動調整機構15の長さ可変と長さ固定、言い換えると、伸縮フリー状態と伸縮ロック状態との切り替えは図示しないレバーの操作によって行われる。レバーによる傾動調整機構15の操作の仕組みは、従来の種々のものが利用可能であり、この仕組み自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する。
【0032】
また、本実施形態では、座受け部材11と座12とは、座12の平面視で四隅寄りの位置に配置された弾性支持部材12a及び平面視で中央に配置された連結支持機構12bによって連結されている。
【0033】
連結支持機構12bは、機構としては、前後左右に配置された四本の揺動軸ピンによって座受け部材11と座12とを前後及び左右に傾動可能に連結する(なお、連結支持機構12bは後述する連結機構6と同様の構成を有する機構である)。すなわち、本実施形態では連結支持機構12bとしてユニバーサルジョイントを使用している。ただし、ユニバーサルジョイントに限るものではなく、例えばピボット軸受け、ボールジョイント等でも良く、あるいはコイルスプリングやゴム製ブロック等の弾性体の変形を利用して傾動可能に支持しても良い。なお、本実施形態では揺動軸ピンを前後方向と左右方向とに向けて配置するようにしているが、揺動軸ピンの配置の方向はこれに限られるものではない。
【0034】
この構造により、本実施形態では、座受け部材11に対して座12が連結支持機構12bを支点として前下がり傾斜及び左右傾斜をし得ると共に、荷重がかけられていないときには座12が例えば水平状態で安定するように支持される。一方で、座12下面後端部には下向きに突出する凸部12cが形成されており、当該凸部12cが座受け部材11の上面後端部に当接することによって後ろ下がり傾斜はしないようになっている。ただし、凸部12cを設けない構造であっても良い。
【0035】
また、本実施形態では、背板2の下部がリンク部材3を介して座受け部材11の後部と連結されている。リンク部材3は、図8に示すように、細長板状であると共に長手方向両端部に貫通孔が形成され、前記貫通孔を貫通する左右方向の連結ピン3aを介して一端が座受け部材11の後部と揺動可能に連結されると共に前記貫通孔を貫通する左右方向の連結ピン3bを介して他端が背板2の下部と揺動可能に連結されるようにしている。なお、本実施形態ではリンク部材3は座受け部材11の左右両側に配置されて左右一対で二つ設けられるようにしているが、リンク部材3の個数は二つに限られるものではなく、例えば、背板2の左右中央に更に一つ設けて合計三つ設けるようにしても良いし、背板2の左右中央に一つのみ設けるようにしても良い。
【0036】
一方、座受け部材11の左右の側壁の後端部には背板連結部11bが設けられる。本実施形態では、背板連結部11bは、座受け部材11の左右の側壁の後端部より後ろ向きから上向きに屈曲する板状に形成される。そして、背板連結部11bの後ろ上端部分には貫通孔が形成される。なお、図8においては、リンク部材3に纏わる構成に関係がない部材は図示を省略している。
【0037】
また、背板2前面の下端部の左右両端部には前方に突出する板状のリンク連結部2cが設けられ、当該リンク連結部2cには貫通孔が形成される。なお、リンク連結部2cは、背板2と一体成形されるものであっても良いし、背板2に例えば金具を取り付けて構成するようにしても良い。
【0038】
リンク部材3は細長板状に形成されて長手方向の両端部には貫通孔が形成される。そして、リンク部材3の一端(前端)が当該リンク部材3の貫通孔と座受け部材の背板連結部11bの貫通孔とを貫通する左右方向の連結ピン3aによって座受け部材11に対して揺動可能に連結され、リンク部材3の他端(後端)が当該リンク部材3の貫通孔と背板のリンク連結部2cの貫通孔とを貫通する左右方向の連結ピン3bによって背板2に対して揺動可能に連結される。
【0039】
このように座受け部材11後部と背板2下部との間にリンク部材3を介在させることにより、背板2の下部左右両端部は、座受け部材11及び座12とは独立して、座受け部材11及び座12の後端部と一定の距離を保ちながら左右方向即ち横軸方向の連結ピン3a,3bを中心に軸回転する(言い換えると、背板2の下部左右両端部は、連結ピン3aを中心に公転しながら、連結ピン3bを中心に自転する)。
【0040】
また、背フレーム5は左右一対の左背フレーム5Aと右背フレーム5Bとによって構成され、左背フレーム5Aと右背フレーム5Bとはそれぞれアーム5aと当該アーム5aの中間部分同士を結合する結合板部材5bとからなる。
【0041】
そして、左背フレーム5A及び右背フレーム5Bは、各々の結合板部材5b,5bが前後に重ね合わせられると共に各々のアーム5a,5aが離間した状態で、背フレーム支持部材1の直立部材1bの上端部分に揺動可能に取り付けられる。
【0042】
なお、背フレーム5は、椅子としての通常の使用において想定される力がかけられた場合に容易には変形しない程度の剛性を発揮し得る材質によって形成される。
【0043】
そして、本発明の背凭れ撓み量調整機構は、左右一対の背フレーム5A,5Bによって支持されると共に弾性変形可能な背板2を備える背凭れを有する椅子において、左右一対の背フレーム5A,5Bによって背板2に左右方向の力を加えて背板2を撓ませることにより背板2の後方への撓み量を調整するようにしている。
【0044】
なお、本実施形態では、背凭れに該当するものとして背板2のみを図示し説明しているが、前述の通りクッション材やカバーを有するものとして背凭れを構成するようにしても良い。
【0045】
背板2は、本実施形態では、平面視は左右中央部が後方に張り出している(後方に撓んでいる)湾曲形状であると共に側面視は背凭れ点2aを中心とする着座者の腰部周囲が前方に張り出している(突出している)形状であり、全体が一体として可撓性を有する材質で成形される。背板2は、具体的には例えばポリプロピレン,ナイロン等の樹脂によって成形される。ただし、背板2の材質となり得る樹脂はこれらに限られるものではなく、また、樹脂以外の材質によって背板2を成形しても良い。なお、本明細書では、背凭れ面の腰部付近で概ね最も前方に出ている位置のことを背凭れ点という。
【0046】
また、本実施形態では、背板2の前方に張り出す張出部(突出部)である背凭れ点2aの上下位置のそれぞれに左右方向のスリット2b,2bが形成される。なお、背板2に形成されるスリットの本数や形状は本実施形態の構成に限られるものではないし、スリットは形成されていなくても良い。
【0047】
そして、本実施形態では、図7に示すように、背板2の上部は、当該背板2に縦軸Lを中心に軸回転可能に支持されると共に横軸Hを中心に軸回転可能に左右の背フレーム5A,5Bの上端が連結される回転ブロック6cを介して左右の背フレーム5A,5Bに支持されるようにしている。
【0048】
具体的には背フレーム5の左背フレーム5A及び右背フレーム5Bのそれぞれの上端部と背板2後面(背面)の上端寄りの左右両端の部分とは連結機構6によって連結される。なお、左右の背フレーム5A,5Bによる背板2の支持位置は、背板2の背面に限られるものではなく、左右の背フレーム5A,5Bによって背板2に左右方向の力を加えて背板2を撓ませることが可能な位置であればいずれの位置であっても良い。具体的には例えば、背板2の左右両縁面に、背板2の左右両端から外側に張り出すように連結機構6を取り付けるようにしても良い。
【0049】
連結機構6は、左右の背フレーム5A,5Bのそれぞれに設けられ、把持部材6a・6a,取付部材6b,回転ブロック6c,揺動縦軸ピン6d・6d,揺動横軸ピン6e・6eからなる。すなわち、本実施形態では背板2と左右の背フレーム5A,5Bとの連結機構6としてユニバーサルジョイントを用いるようにしているが、連結機構はユニバーサルジョイントに限定されるものではなく、例えばピボット軸受けやボールジョイント等でも良く、或いはコイルスプリングやゴム製ブロック等の弾性体を利用しても良い。
【0050】
取付部材6bは板状をなし、この板状の取付部材6bの一方の面から二枚の板状の把持部材6a,6aが対向して延出する。すなわち、これら把持部材6a,6aと取付部材6bとは全体として側面視コ字形に形成される。把持部材6a各々には貫通ねじ孔が形成される。
【0051】
板状の取付部材6bのうち把持部材6a側とは反対側の面が背板2後面の上端寄りの左右端部に例えばねじ止めされて取り付けられる。
【0052】
二枚の把持部材6a,6aの間に回転ブロック6cが配置される。回転ブロック6cには中心位置において直交する二本の貫通孔が形成される。なお、本実施形態では回転ブロック6cは立方体に形成されているが、回転ブロック6cの形状はこれに限られるものではなく、例えば球であっても良い。
【0053】
そして、二本の揺動縦軸ピン6d,6dが上側把持部材6aの上方と下側把持部材6aの下方とからそれぞれ把持部材6aに形成された貫通ねじ孔を貫通して回転ブロック6cの貫通孔に挿入されて二枚の把持部材6a,6aの間に回転ブロック6cが取り付けられる。なお、揺動縦軸ピン6dの軸部(ピン)は、回転ブロック6cに形成されている二本の貫通孔が交わる部分までは到達しない長さに調整される。
【0054】
ここで、揺動縦軸ピン6d,6dの軸部の先端部分にはねじ山が形成されていない一方で軸部の根もと部分にはねじ山が形成されており、これにより、揺動縦軸ピン6d,6dは、軸部根もと部分のねじによって把持部材6a,6aに対してねじ止めされ固定されると共に、軸部先端部分によって回転ブロック6cを摺動軸回転可能に支持する。
【0055】
すなわち、回転ブロック6cは、揺動縦軸ピン6d,6dによって把持部材6a,6aに対して縦軸Lを中心に軸回転可能に支持される。なお、縦軸Lは概ね上下方向軸である。
【0056】
背フレーム5のアーム5aの上端部分は開口部を背板2側に向けた横断面コ字形に形成され、左右の側壁のそれぞれから背板2に向けて対向して突出する二枚の板状の把持部5c,5cが形成される。把持部5c各々には貫通ねじ孔が形成される。
【0057】
そして、二つの把持部5c,5cが回転ブロック6cを左右から挟んだ状態で二本の揺動横軸ピン6e,6eが右側把持部5cの右側方と左側把持部5cの左側方とからそれぞれ把持部5cに形成された貫通ねじ孔を貫通して回転ブロック6cの貫通孔に挿入されて回転ブロック6cに背フレーム5のアーム5a上端部分が連結される。なお、揺動横軸ピン6eの軸部(ピン)は、回転ブロック6cに形成されている二本の貫通孔が交わる部分までは到達しない長さに調整される。したがって、前述の揺動縦軸ピン6dの構造と相まって、揺動縦軸ピン6d,6dと揺動横軸ピン6e,6eとは回転ブロック6c内で相互に接触することがない。
【0058】
ここで、揺動横軸ピン6e,6eの軸部の先端部分にはねじ山が形成されていない一方で軸部の根もと部分にはねじ山が形成されており、これにより、揺動横軸ピン6e,6eは、軸部根もと部分のねじによって把持部5c,5cに対してねじ止めされ固定されると共に、軸部先端部分によって回転ブロック6cを摺動軸回転可能に支持する。
【0059】
すなわち、アーム5a上端部分は、揺動横軸ピン6e,6eによって回転ブロック6cに対して横軸Hを中心に軸回転可能に連結される。なお、横軸Hは左右方向軸である。
【0060】
上述の構成により、背板2の上部左右両端部は、回転ブロック6cを介して縦軸Lを中心に軸回転可能及び横軸Hを中心に軸回転可能、且つ、高さ位置は固定されて背フレーム5(アーム5a)の上端部に支持される。このように背フレーム5(アーム5a)による背板2の支持部分を各方向に軸回転可能にすることにより、背板2が変形する際に当該支持部分に応力が集中することがないので部品の破損や摩耗を防ぐことができると共に、背板2が円滑に変形し易くなるので使い勝手や使い心地が良くなる。
【0061】
上述のように、背板2の上部を連結機構6によって高さ位置固定且つ縦軸中心及び横軸中心回転可能に背フレーム5に支持すると共に、背板2の下部をリンク部材3によって一定範囲内で横軸中心回転可能に座受け部材11に連結することにより、背板2が変形する際の自由度が高いので背板2の必要な変形が円滑に行われる。
【0062】
背フレーム5を構成する左背フレーム5Aと右背フレーム5Bとの各々の結合板部材5bには貫通孔5dが形成される。そして、本実施形態の背凭れ撓み量調整機構では、この貫通孔5dを中心として左背フレーム5Aと右背フレーム5Bとが揺動することによって背板2に左右方向の力が加えられたり解除されたりする。
【0063】
左背フレーム5A,右背フレーム5Bそれぞれの貫通孔5dには帯板環状の摺動支持部材3が取り付けられる。摺動支持部材3の内側縁辺部には当該縁辺部を一周する環状の突起部3aが形成される。そして、左背フレーム5Aに対しては前側から、右背フレーム5Bに対しては後ろ側から貫通孔5dに突起部3aを嵌め合わせて摺動支持部材3が取り付けられる。なお、左背フレーム5A及び右背フレーム5Bは摺動支持部材3に対して摺動可能である。
【0064】
一方、背フレーム支持部材1の直立部材1bは、上端部分であって左右一対の対向する側壁の間に板部16aを備えると共に、当該板部16aから後ろ向きに延出する環状の周壁を有する摺動支持部16bを備える。また、摺動支持部16bの中央位置には貫通ねじ孔16cが形成される。
【0065】
そして、背フレーム支持部材1の直立部材1b上端部の摺動支持部16bに、結合板部材5bの前面側に摺動支持部材3が取り付けられた左背フレーム5Aが摺動支持部材3中央の貫通孔に摺動支持部16bを貫通させて取り付けられ、さらに、結合板部材5bの後ろ面側に摺動支持部材3が取り付けられた右背フレーム5Bが摺動支持部材3中央の貫通孔に摺動支持部16bを貫通させて取り付けられる。
【0066】
このとき、上述の構成によって当接することになる左背フレーム5Aの結合板部材5bと右背フレーム5Bの結合板部材5bとは摺動可能である。
【0067】
さらに、右背フレーム5Bに取り付けられた摺動支持部材3の後ろ面に円盤状の蓋部材4が備えられる。
【0068】
蓋部材4の中央位置には貫通孔4aが形成されており、当該貫通孔4aから直立部材1bの摺動支持部16b中央の貫通ねじ孔16cまで到達し貫通するねじ14が貫通孔4aから挿入されて貫通ねじ孔16cにねじ込まれる。
【0069】
これにより、左背フレーム5Aと右背フレーム5Bとは、背フレーム支持部材1の直立部材1b上端部に対し、摺動支持部16bを介して左右に揺動可能に取り付けられる。
【0070】
続いて、本実施形態における操作部としての操作レバー17による操作を伝達して左背フレーム5Aと右背フレーム5Bとに左右方向の力を加えて左右の背フレーム5A,5Bを揺動させるための操作伝達機構は、本実施形態では、上部リンク7A及び左右一対の下部リンク7B,7B(以下、左右下部リンク7B,7Bとも適宜表記する)を含むリンク機構7と左右一対のスライダー9,9とを有する。
【0071】
本実施形態の操作レバー17は、グリップ17aと、当該グリップ17aから延出する第一主軸部17bと、当該第一主軸部17bから屈曲して軸心位置が第一主軸部17bの軸心位置から偏心している偏心軸部17cと、当該偏心軸部17cから再度屈曲して第一主軸部17bと軸心位置を同じくする第二主軸部17dとからなる。
【0072】
背フレーム支持部材1の直立部材1bを構成する左右一対の対向する側壁の中間位置には貫通孔が設けられる。そして、当該貫通孔に操作レバー17の軸部が挿入され、直立部材1bの一方の側壁に操作レバー17の第一主軸部17bが回転可能に支持されると共に他方の側壁に第二主軸部17dが回転可能に支持され、左右一対の側壁の間に偏心軸部17cが配置される。
【0073】
上部リンク7Aは細長板状に形成され、上端部分に貫通孔7Aaが設けられる。そして、上部リンク7Aは、貫通孔7Aaに操作レバー17の偏心軸部17cを貫通させて直立部材1bを構成する左右一対の側壁の間に配置される。
【0074】
上部リンク7Aは、前面から前方に突出する凸部に固定されるガイド板7Abと、後ろ面から後方に突出する凸部に固定される下部リンク取付板7Acとを備える。
【0075】
本実施形態では、上部リンク7Aのガイド板7Abをガイド保持するために摺動保持するリンク支持機構18を備える。リンク支持機構18を取り付ける基部として、背フレーム支持部材1の直立部材1bは、中間部分であって左右一対の対向する側壁の間に板部18aを備える。当該板部18aには貫通ねじ孔(本実施形態では六つ)が形成される。
【0076】
直立部材1bの左右の側壁の間の板部18aの後ろ面には、中央の空間にガイド板7Abを収容する枠部材18bが備えられる。枠部材18bの枠部分には、直立部材1bに設けられる板部18aの貫通ねじ孔の位置に合わせて貫通孔が形成される。
【0077】
また、枠部材18bの後ろ面には、左右中央位置に上下方向のスリット(ガイド板7Abの左右方向の幅よりも狭い)を有する蓋部材18cが備えられる。蓋部材18cの周縁部にも、直立部材1bに設けられる板部18aの貫通ねじ孔の位置に合わせて貫通孔が形成される。
【0078】
そして、板部18aに枠部材18bが備えられ、当該枠部材18bの内側空間にガイド板7Abが収納され、上部リンク7Aのガイド板7Abが固定される前面の凸部を上下方向のスリットに貫通させて蓋部材18cが備えられ、蓋部材18cの貫通孔からボルトが挿入されて枠部材18bの貫通孔を通過して板部18aの貫通ねじ孔にねじ止めされる
【0079】
上述によりガイド板7Abを摺動可能に収容した状態で枠部材18b及び蓋部材18cが板部18aに固定され、枠部材18b及び蓋部材18cはガイド板7Abを摺動可能に保持することによって上部リンク7Aの上下方向の動きをガイドする。
【0080】
下部リンク7Bの長手方向の両端寄りの位置には貫通孔が形成される。また、下部リンク7Bの長手方向の両端部は円弧状に形成され、一方の端部にはギヤが形成される。
【0081】
また、上部リンク7Aの下部リンク取付板7Acには左右一対のねじ孔が形成される。そして、ねじ山が形成されていない根もと部分とねじ山が形成されている先端部分とからなる軸部を有する揺動軸ピンにより、下部リンク7Bのギヤが形成されている端部側の貫通孔と下部リンク取付板7Acの貫通孔との位置を合わせた状態で、下部リンク取付板7Acに対して二本の下部リンク7B,7Bが揺動可能に取り付けられる。
【0082】
背フレーム支持部材1の直立部材1bの下端寄りの位置には、スライダーガイド19が取り付けられる。スライダーガイド19は、底板及び前壁と左右の側壁とを有し、スライダープレート19aを介して底板及び前壁によって左右一対のスライダー9,9を摺動可能に支持する。
【0083】
スライダーガイド19の左右の側壁のそれぞれには貫通孔が設けられると共に、スライダー9,9にも左右方向の貫通孔が設けられる。そして、スライダーガイド19は、当該スライダーガイド19内に左右一対のスライダー9,9を載置した状態で、スライダーガイド19の左右の側壁の貫通孔及び左右一対のスライダー9,9の左右方向の貫通孔の全てを貫通するスライダー軸19bを備える。なお、スライダーガイド19に備えられた状態でスライダー軸19bの両端にはストッパ(図示省略)が取り付けられて抜け止めされる。
【0084】
これにより、各スライダー9は、スライダーガイド19及びスライダープレート19aに支持されると共にスライダー軸19bによってガイドされながら、上下位置固定の状態で左右方向に摺動する。
【0085】
各スライダー9の後ろ面にはねじ孔が形成される。また、前述の通り、左右下部リンク7B,7Bの長手方向の両端寄りの位置には貫通孔が形成される。さらに、左右の背フレーム5A,5Bのそれぞれには下端部に貫通孔5eが形成される。なお、貫通孔5eは左右の背フレーム5A,5Bの設置状態において左右の二つでハの字形をなす傾斜を有する長孔に形成される。
【0086】
そして、左右一対のスライダー9,9それぞれの後方に、当該スライダー9後ろ面のねじ孔の位置にギヤが形成されていない端部側(即ち下端側)の貫通孔の位置を合わせて左右下部リンク7B,7Bの下端部分が備えられ、その後方に、スライダー9後ろ面のねじ孔の位置に下端部の貫通孔5eの位置を合わせて左右の背フレーム5A,5Bの下端部分が備えられる。その上で、ねじ山が形成されていない根もと部分とねじ山が形成されている先端部分とからなる軸部を有する揺動軸ピンが背フレーム5A,5Bの貫通孔及び下部リンク7Bの貫通孔を貫通すると共にスライダー9のねじ孔に挿入されてねじ止めされる。
【0087】
これにより、スライダー9に対して下部リンク7B及び背フレーム5A,5Bが揺動可能に連結される。なお、左右下部リンク7B,7Bは背面視ハの字形に取り付けられる。
【0088】
上述の構成により、左右の背フレーム5A,5Bは、スライダー9が左右にスライドすることによって貫通孔5dを中心として揺動する。
【0089】
具体的には、前述の通り本実施形態の操作レバー17は、軸心位置を同じくする第一主軸部17b及び第二主軸部17d、並びに、これら主軸部17b,17dの軸心位置から偏心している偏心軸部17cとを有する。そして、偏心軸部17cに上部リンク7Aが連結されているので、操作レバー17を軸回転させることによって上部リンク7Aが上下移動する。
【0090】
そして、上部リンク7Aの下端部に左右下部リンク7B,7Bの上端部が連結されていると共に左右下部リンク7B,7Bそれぞれの下端部に上下位置が固定されたスライダー9が連結されているので、上部リンク7Aが上下移動すると下部リンク7Bは上端部の上下移動を下端部を左右方向にスライドさせることによって吸収するようにし、スライダー9が左右に移動する。
【0091】
上部リンク7Aが上向きに移動すると左右下部リンク7B,7Bの下端部に連結される左右のスライダー9,9は相互に近づくように移動し、これらに下端部が連結する左右の背フレーム5A,5Bは貫通孔5dを中心として揺動して上端部分が相互に離れるように移動し、背板2の上側部分に左右方向の力が加えられる。具体的には、背板2の上側部分は左右方向に拡げられ、背板2の横断面形状の後方への撓み量が小さくなる(図2)。
【0092】
一方、上部リンク7Aが下向きに移動すると左右下部リンク7B,7Bの下端部に連結される左右のスライダー9,9は相互に離れるように移動し、これらに下端部が連結する左右の背フレーム5A,5Bは貫通孔5dを中心として揺動して上端部分が相互に近づくように移動し、背板2の上側部分に左右方向の力が加えられる。具体的には、背板2の上側部分は左右方向に狭められ、背板2の横断面形状の後方への撓み量が大きくなる(図3;図中の一点鎖線は図2に示す後方への撓み量が小さい場合の背板2の形状)。
【0093】
上述の通り、本発明の背凭れ撓み量調整機構によれば、背板2の横断面形状の後方への撓み量を着座者の好みに合わせて変化させたり体型に合わせて調整したりすることができ、背凭れの寄りかかり利用の快適性の向上を図ることが可能になる。
【0094】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、本発明の背凭れ撓み量調整機構を図1に全体構造を示す椅子20に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明が適用され得る椅子は上述の実施形態の椅子20に限られるものではない。具体的には例えば、上述の実施形態では一枚の板状の背板2に対して本発明を適用するようにしているが、背凭れの周縁部を構成する帯板枠状の背枠に対しても本発明は適用可能である。また、上述の実施形態では、座部が座受け部材11と座12とによって構成されるようにしているが、本発明における座部は上述の実施形態の構成に限られるものではなく、上述の実施形態の座受け部材11と座12とに対応する構成が一体のものとして構成されている座部であっても良い。また、座受け部材11による座12の支持の仕組みも上述の実施形態の構成に限られるものではなく、例えば、弾性支持部材12aや連結支持機構12bを備えていなくても良い。
【0095】
また、上述の実施形態では回転ブロック6cが背板2に対して縦軸Lを中心に軸回転可能に支持されると共にアーム5a上端部分が回転ブロック6cに対して横軸Hを中心に軸回転可能に連結されるようにしているが、軸回転の方向の関係は逆でも良い。すなわち、背板2側の二枚の把持部材6a,6aの対向方向とアーム5a側の二枚の把持部5c,5cの対向方向とを90度回転し、回転ブロック6cが背板2に対して横軸を中心に軸回転可能に支持されると共にアーム5a上端部分が回転ブロック6cに対して縦軸を中心に軸回転可能に連結されるようにしても良い。また、上述の実施形態では連結機構6は縦軸中心及び横軸中心回転可能であるように構成されているが、縦軸(L)中心でのみ回転可能であるように構成しても良い。この場合にも、背凭れが横断面形状で後方に撓んで変形する際の主要な軸回転の自由度が確保されるので支持部分における応力の集中を大幅に軽減することができる。さらに、左右の背フレーム5A,5Bによって背板2を支持するための両者の連結は、連結機構6を用いた上述の実施形態のようにフレキシブルな連結でなく、固定的な連結であっても良い。この場合でも、可撓性を有する背板2の変形は可能である。
【0096】
また、上述の実施形態では背板2の下部がリンク部材3を介して座受け部材11の後部と連結されるようにしているが、このリンク部材3による連結は本発明に必須の構成ではなく、背板2の下部の支持の仕方は上述の実施形態の構成に限られるものではないし、背板2の下部が支持されていない構造であっても良い。背板2の下部の支持の仕方が上述の実施形態の構成と異なるものであっても、また、背板2の下部が支持されていない構造の場合には勿論のこと、可撓性を有する背板2の変形は可能である。
【0097】
また、左右一対の背フレームによって背板若しくは背枠に左右方向の力を加える機構の構成は上述の実施形態(以下、第一の実施形態という)のものには限られない。具体的には例えば、図9に示すように(第二の実施形態;以降の説明において第一の実施形態と同様の構成要素については同一符号を付してその詳細な説明を省略する)、左右のスライダー9,9をねじ機構22によって左右方向に摺動させるようにしても良い。本実施形態における操作部としてのねじ機構22は、グリップ22aと、当該グリップ22aから延出して設置状態において左右方向の軸22bと、当該軸22bの左右両側に設けられる左側ねじ22c及び右側ねじ22dとを有する。そして、例えば、左側ねじ22cのねじ山が左ねじの雄ねじであると共に左背フレーム5A下端部に連結するスライダー9に左右方向の左ねじの雌ねじ貫通孔が形成され(左ねじれはすば歯車と左ねじれウォームとの組み合わせ)、右側ねじ22dのねじ山が右ねじの雄ねじであると共に右背フレーム5B下端部に連結するスライダー9に左右方向の右ねじの雌ねじ貫通孔が形成される(右ねじれはすば歯車と右ねじれウォームとの組み合わせ)。このねじ機構22を用いた構成によってもグリップ22aを持って回転操作することによって左右のスライダー9,9を相互に近づけたり離れさせたりすることができ、それによって左右の背フレーム5A,5Bを揺動させて背板2に左右方向の力を加えることができる。ねじ機構22を用いた場合には背板2の後方への撓み量を無段階に調整することとができる。
【0098】
また、第一及び第二の実施形態ではスライダー9を背フレームのアーム5aの下端部と連結させるようにしているが、スライダー9と背フレームのアーム5aとの連結位置はこれに限られるものではない。例えば、背フレームの結合板部材5bよりも上方位置においてスライダー9とアーム5aとを連結させるようにしても良い。具体的には、図10に示すように(第三の実施形態)、操作部としてねじ機構22を適用して左右のスライダー9,9のそれぞれを左右の背フレーム5A,5Bのアーム5a,5aと連結させるようにしても良い。
【0099】
また、第一から第三の実施形態では左右の背フレーム5A,5Bをアーム5aと結合板部材5bとを有するものとして構成すると共に結合板部材5bに形成された貫通孔5dを中心に左右の背フレーム5A,5Bを揺動させることによって背板2に左右方向の力を加えるようにしているが、左右の背フレーム5A,5Bの構成及び背フレームを揺動させるための構成はこれに限られるものではない。例えば、図11に示すように(第四の実施形態)、左背フレーム5AをL字形(く字形でも良い)に形成すると共に右背フレーム5Bを左右逆向きのL字形(く字形でも良い)に形成し、左右の背フレーム5A,5Bの下端部のそれぞれに左右のスライダー9,9を連結するようにしても良い。そして、図11に示す例では、左右のスライダー9,9をねじ機構22によって左右方向に摺動させるようにしている。この構成の場合も、操作部としてのねじ機構22により左右のスライダー9,9を左右方向に摺動させることによって左右の背フレーム5A,5Bの間隔を拡げたり狭めたりすることができるので、背板2に左右方向の力を加えることができる。
【0100】
また、第一から第四の実施形態では背板2の後方への撓み量を調整するために左右一対の背フレーム5A,5Bによって背板2に左右方向の力を加えるようにしているが、背板2の後方への撓み量を調整するための構成として図12に示す構成(第五の実施形態)をとるようにしても良い。すなわち、背フレームを背フレーム主部5'と左右方向に延出する背フレームとしての背フレーム左枝部5A'及び背フレーム右枝部5B'とを有するものとして構成し、背フレーム左枝部5A'と背フレーム右枝部5B'とによって背板2の左右両側を支持させる。また、背フレーム左枝部5A'と背フレーム右枝部5B'との中央位置に、グリップ23aとねじ軸部23bとを有する押圧機構23を設ける。そして、グリップ23を回転操作することによってねじ軸部23bを前後方向に出し入れすることによって背板2の左右中央位置への押圧(すなわち、前後方向の力)を調整するようにしても良い。なお、この構成の場合には、押圧機構23による押圧が解除されたときには後方への撓み量が最大になるように背板2が成形される。この構成によっても、背板2の後方への撓み量を調整することができる。
【0101】
また、第一から第五の実施形態では背板2の上部を背フレーム5によって支持するようにしているが、背フレーム5による背板2の支持位置は上部に限られるものではなく、背板2の中間部分であっても構わない。そして、背板2の中間部分において左右方向の力を加えるようにしても背板2の後方への撓み量を調整することができる。なお、背板2の上下中間位置よりも上方において、特に上端寄りの位置において背板2を背フレーム5によって支持するようにすることにより、背板2が下端部において拘束されている場合の当該拘束の影響を受けないので左右方向の力を加えたときに変形させ易い。
【符号の説明】
【0102】
1 背フレーム支持部材
2 背板
3 リンク部材
5 背フレーム
5A 左背フレーム
5B 右背フレーム
11 座受け部材
12 座
20 椅子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の背フレームによって支持されると共に弾性変形可能な背板若しくは背枠を備える背凭れを有する椅子において、前記左右一対の背フレームによって前記背板若しくは背枠に左右方向の力を加えて前記背板若しくは背枠を撓ませることにより前記背板若しくは背枠の後方への撓み量を調整することを特徴とする背凭れ撓み量調整機構。
【請求項2】
前記背板若しくは背枠は、前記左右一対の背フレームのそれぞれに設けられた連結機構を介して支持されており、当該連結機構が備える縦軸によって軸回転可能に前記左右一対の背フレームに支持されることを特徴とする請求項1記載の背凭れ撓み量調整機構。
【請求項3】
前記左右一対の背フレームによって前記背板若しくは背枠の上下中間位置よりも上方において前記背板若しくは背枠の背面の左右両側を支持することを特徴とする請求項1記載の背凭れ撓み量調整機構。
【請求項4】
操作部を操作することにより前記左右一対の背フレームが左右方向に移動することによって前記背板若しくは背枠に前記左右方向の力を加えて前記背板若しくは背枠を撓ませることを特徴とする請求項1記載の背凭れ撓み量調整機構。
【請求項5】
左右方向に延出する背フレームによって支持されると共に弾性変形可能な背板若しくは背枠を備える背凭れを有する椅子において、前記背フレームに備えられた押圧機構によって前記背板若しくは背枠の左右中央部分に前後方向の力を加えて前記背板若しくは背枠を撓ませることにより前記背板若しくは背枠の後方への撓み量を調整することを特徴とする背凭れ撓み量調整機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−55586(P2012−55586A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203666(P2010−203666)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】