説明

脱着機構及びそれを用いた電子装置

【課題】本体部に対するカバーの取り付け/取り外しが容易で、しかも、本体部に接続されたコードを取り外さなければ、カバーを取り外せないように構成したことにより、感電事故の防止、装置本体の損傷を防ぐことができる脱着機構及びそれを用いた電子装置を提供する。
【解決手段】電源コード15の接続部16を有する本体部12に対し、接続部16に接続される電源コード15の貫通部17を有するカバー13を、貫通部17に電源コード15を貫通させた状態で一体的に係止させ、かつ任意に分離させることが可能な脱着機構であって、本体部12とカバー13との間に構成され、カバー13の、本体部12との一体的な係止状態から接続部16に接続された電源コード15の長手方向に沿う第1の方向Bへの移動を許容し、この第1の方向Bと直交し、接続部16に接続された電源コード15の干渉により移動が阻止される第2の方向Cへの移動により、本体部12からの分離を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源コードの接続部を有する本体部に対し、この接続部に接続される電源コードの貫通部を有するカバーを、この貫通部に電源コードを貫通させた状態で一体的に係止させ、かつ任意に分離させることが可能な脱着機構及びそれを用いた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、POSなどの情報システムに用いられる電子装置は、各種の電子機器を収容した本体ケースに対し、これを覆うカバーを一体的に取り付けて構成されていた。このような電子装置において、従来、電源コードが電源に接続されたままの状態であっても、容易にカバーを脱着できたため、保守作業する作業者が感電する虞があったり、誤って装置を損傷させてしまうことがあった。
【0003】
そこで、装置の一部を開けて基板等の交換、付加の際、電源が落ちるようにして、感電の防止、基板等の損傷等防ぐ構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この従来例では、本体後方に電源のACインレットが設けられ、ここに電源コードが差し込まれるようになっている。本体に取り付けられる下部カバーの一部は、ACインレットの周囲に回り込んで形成されており、電源コードをACインレットに差し込んだままでは下部カバーを取り外せない構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−234691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に開示された従来技術では、下部カバーの取り外しについては配慮されているが、下部カバーは電源が印加される部分の一部を覆うのみであり、他の部分については電源コードの接続状態とは関係なく露出することとなり、危険防止の上で十分なものではなかった。
【0007】
また、下部カバーは、本体からの分離時は、本体から離れる一方向のみの移動で分離されるので、電源コードをACインレットから取り外した状態では、下部カバーは本体に対して自由に取り外せる状態となる。このようなカバー取り付け構造を、充電部を有する本体部を覆うカバーの脱着構造として採用した場合、通常の使用時においてカバーを本体に対して一体的に固定するためには、例えば、平面形状が矩形のカバーであれば、四隅近くの少なくとも4箇所において、本体にねじ止めしなければならない。このようにねじ止め箇所が多くなると、本体に対するカバーの取り付け/取り外し作業が面倒となり、多くの作業時間を要することとなる。
【0008】
本発明の目的は、本体部に対するカバーの取り付け/取り外しが容易で、しかも、本体部に接続されたコードを取り外さなければ、カバーを取り外せないように構成したことにより、感電事故の防止、装置本体の損傷を防ぐことができる脱着機構及びそれを用いた電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による脱着機構は、電源コードの接続部を有する本体部に対し、前記接続部に接続される電源コードの貫通部を有するカバーを、前記貫通部に前記電源コードを貫通させた状態で一体的に係止させ、かつ任意に分離させることが可能な脱着機構であって、前記本体部とカバーとの間に構成され、前記カバーの、前記本体部との一体的な係止状態から前記接続部に接続された電源コードの長手方向に沿う第1の方向への移動を許容し、この第1の方向と直交し、前記接続部に接続された電源コードの干渉により移動が阻止される第2の方向への移動により、前記本体部からの分離を可能とすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による電子装置は、内部に電子機器が実装され、外部に対する電源コードの接続部を有する本体部と、前記接続部に接続される電源コードの貫通部を有し、前記本体部を覆うカバーとを備えた電子装置であって、前記本体部とカバーとの間に構成され、前記カバーを、前記本体部に対して一体的に係止させると共に、この係止状態からの分離に当っては、前記カバーの、前記接続部に接続された電源コードの長手方向に沿う第1の方向への移動を許容し、この第1の方向へ移動したカバーを、この第1の方向と直交し、前記接続部に電源コードが接続されていると、この接続された電源コードとの干渉により移動が阻止される第2の方向へ移動させることにより、前記本体部からの分離を可能とする脱着機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カバーを互いに直交する2方向に移動させて本体部に対して脱着させるように構成したので、複数の取り付けねじ操作を要することなく容易に脱着することができ、しかも、本体部に接続されたコードを取り外さなければカバーを取り外せないようにしたので、保守作業者の感電事故を確実に防止でき、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による電子装置の一実施の形態を示す外観斜視図である。
【図2】図1で示した電子装置におけるカバーの本体部への係止状態における電源コード接続状態を示す部分斜視図である。
【図3】図1で示した電子装置におけるカバーを第1の方向に移動させた状態を電源コード接続状態について示す部分斜視図である。
【図4】図1で示した電子装置におけるカバーを第1の方向に移動させた状態を電源コード接続状態について示す内部構成図である。
【図5】本発明による脱着機構の一実施の形態を、係止状態について示す部分斜視図である。
【図6】本発明による脱着機構の一実施の形態を、第1の方向に移動させた状態について示す部分斜視図である。
【図7】図6で示した係合部を拡大して示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による脱着機構及びそれを用いた電子装置の一実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1乃至図3はこの実施の形態に係る、例えばPOS等の電子装置の外観形状を示している。この電子装置11は、少なくとも上面が開放された筐体状をなす本体部12と、この本体部12の開放された上面、両側面、及び背面(図1の手前側の面、以下、本体背面部とも呼ぶ))12aの一部を覆うカバー13とを有する。
【0015】
本体部12の内部には、電子装置11としての所定の機能を実現するため、図4で示すように、各種の電子機器14が実装されている。また、この本体部12の背面12aには、図2及び図3で示すように、電源コード15の先端プラグ部が差し込まれる接続部(以下、電源インレットとも呼ぶ)16が設けられている。このほか、本体部12の背面12aには外部との接続用ターミナル部やスイッチ類が設置され、その板面には多数の通気孔が形成されている。
【0016】
カバー13は、前述のように本体部12の上面、両側面、及び背面12aの一部を覆うように形成されている。このうち背面12aの一部を覆う部分とは、図1で示すように、本体背面部12aの上辺部及び左右両側部分を覆う部分であり、この部分をカバー背面部13aとする。そして、このカバー背面部13aの、図示右側の電源インレット16との対向面には、この電源インレット16に接続される電源コード15の貫通部17が形成されている。この貫通部17の貫通面積は、電源コード15の先端に設けられた大径のプラグ部分が貫通できる大きさに設定する。
【0017】
カバー13と本体部12との間には、カバー13を本体部12に対して一体的に取り付けると共に、この本体部12から任意に分離することができる脱着機構が設けられている。この脱着機構の詳細は後述するが、この脱着機構は、カバー13を本体部12に対し、その前後方向(図1の矢印A、B方向)に一定範囲スライド可能に構成している。図1は、カバー13が、図1の矢印A方向に所定範囲前進して、その前縁部が本体部12の前縁部と略重なる状態となっている。この状態では、後述する脱着機構により、カバー13は本体部12に対し一体的に係止されている。したがって、カバー13は本体部12に対し、カバー背面部13aと本体部背面12aとの間に螺着される1本のねじ18のみにより固定することができる。
【0018】
このカバー13を本体部12から取り外す場合は、1本のねじ18を取り外したのち、先ず、カバー13を本体部12に対して、図1の矢印B方向へ所定範囲後退させる。この後退方向Bは、本体部12の接続部16に接続された電源コード15の長手方向に沿う方向であり、これを第1の方向Bと呼ぶ。この後退操作により、図2で示すように、当初、本体背面部12aに密接していたカバー背面13aは、図3及び図4で示すように、本体背面部12aから、後退分に相当する距離離間する。また、この後退操作により、後述する脱着機構により、カバー13は本体部との係止状態が解除される。そこで、次にカバー13を上方(図1の矢印C方向)に移動させ、カバー13を本体部12から取り外す。このカバー13の上方への移動方向は、前記第1の方向Bに直交する方向であり、これを第2の方向Cと呼ぶ。
【0019】
このとき、本体部12の電源インレット16に電源コード15が接続されたままの状態であると、この電源コード15は図3及び図4で示すように、カバー背面部13aに形成された貫通部17を貫通しているため、カバー13はこの電源コード15により上昇を阻止される。したがって、電源コード15が電源インレット16に接続され、本体部12内に電源が供給された状態でのカバー13の取り外しを防止でき、作業者を感電事故などから確実に保護することができる。
【0020】
すなわち、本体部12とカバー13との間に構成された脱着機構は、カバー13の、本体部12からの分離に当って、先ず、カバー13の、接続部16に接続された電源コード15の長手方向に沿う第1の方向Bへの移動を許容し、本体部12との係止状態を解除させる。その後、この第1の方向Bへ移動したカバー13を、この第1の方向Bと直交する第2の方向Cへ移動させることにより、本体部12から取り外すことができる。ただし、接続部16に電源コード15がされていると、この接続されたコード15との干渉により、カバー13の第2の方向Cの移動が阻止され、カバー13を取り外せないように構成している。
【0021】
次に、上述した脱着機構の具体的構造を図5乃至図7を用いて説明する。図5及び図6において、13bはカバー13の側面(以下、カバー側面部と呼ぶ)であり、12bは本体部12の側面(以下、本体側面部と呼ぶ)である。これらは互いに接合し、かつ、前述した前後方向(図1のA,B方向)にそれぞれ互いにスライド可能に構成されている。
【0022】
カバー側面部13bの内面、すなわち、本体側面部12bとの接合面には、前後方向に複数個(図の例では3個)の係合片19が設けられている。この係合片19は、図7で示すように、断面Z字状を成しており、このZ字の一辺19aはカバー側面部13bの内面に一体に接合されている。また、他辺19bはカバー側面部13bの内面との間に、下向きに開溝する係合溝を形成する。この係合溝の溝間隔は、本体側面部12bの板厚よりわずかに大きく設定する。
【0023】
一方、本体側面部12bには、これら係合片19と組み合わされる係合部20がそれぞれ形成されている。この係合部20は、図7で示すように、係合片19の他辺部19bが遊嵌する大きさの面積を有する開口20aと、この開口20aから本体部12の前方(図示左方)に向かって形成されたスリット20bとからなる。この開口20aは、カバー13が後退位置にあるとき、図6で示すように、係合片19の他辺部19aが遊嵌する位置に形成されている。また、スリット20bは、カバー13が前進位置にあるとき、図5で示すように係合片19の他辺部19bが形成する係合溝と係合し、カバー13を本体部12に係止させている。
【0024】
上記構成において、通常の使用状態では、図1、図2及び図5で示すように、カバー13は本体部12に対して前進位置にあり、カバー背面部13aは本体背面部12aと接合した状態にある。このとき本体部12の電源インレット16には、カバー背面部13aに形成されたコード貫通部17を通って図2で示すように電源コード15が接続されており、本体部12内に電源を供給している。また、このとき、カバー側面部13bの内面に設けられた係合片19の他辺部19bは、図5で示すように、係合部20のスリット20bと係合しており、カバー13は本体部12に一体的に係止されている。このため、カバー13は、図1で示すように、そのカバー背面部13aと本体背面部12aとの間に螺着した1本のねじ18のみにより、本体部12に固定することができる。
【0025】
保守点検作業などのために、カバー13を本体部12から取り外す場合は、先ず、1本のねじ18を取り外す。この後、カバー13を、図1及び図5で示す矢印B方向(第1の方向)にスライドさせる。このスライド操作により、図5で示したように、スリット20b内に位置し、係合状態であった係合片19は、スリット20bに沿って図示右方に移動し、最終的に図6及び図7で示すように、係合部20の開口20a内に位置する。この開口20aは、前述のように、係合片19の他辺部19bが遊嵌する大きさの面積を有するので、カバー13の両側面部の下側を僅かに外方に開くことにより、係合片19を開口20aから外すことができ、カバー図1、図4及び図7で示す矢印C方向(第1の方向に直交する第2の方向)に持ち上げて本体部12から取り外すことができる。
【0026】
しかし、電源コード15が図3及び図4で示すように、本体部12の電源インレット16に接続されたままであると、この電源コード15はカバー背面部13aに形成された貫通部17を通っていることから、カバー13の矢印C方向(第2の方向)への移動が電源コード15により阻止される。したがって、電源コード15が電源インレット16に接続され、本体部12内の電子機器に課電された状態で、カバー13が開くことはなく、保守作業者の感電事故を確実に防止でき、安全性が向上すると共に、基板などの機器の損傷を防止できる。
【0027】
なお、カバー13の本体部12への装着作業は、上述した一連の取り外し作業の逆を行えばよい。すなわち、カバー13を前述したC方向と反対向きに移動させてカバー側面部13bに設けた係合片19を、本体側面部に形成した係合部20の開口20a内に嵌め合わせる。この嵌め合わせ操作は、係合片19及びカバー側面部13bが有する弾性により容易に行うことができる。その後は、カバー13を図1で示す矢印a方向に移動させることにより、係合片19はスリット20b内をスライドして図5で示すように係合する。この操作により、カバー13は、本体ケース12に一体的に係止される。その後は、図1で示す1本のねじ18を締め付けることによりカバー13は本体ケース12上に固定される。そして、カバー背面部13aに形成された貫通部17を通して、図2で示すように電源コード15を本体背面部12aに設けられた電源インレット16に接続することにより本体部12内に設けられ電子部品14に対し電源が供給され、動作可能状態となる。
【0028】
このように、カバー13を本体部12に対し互いに直交する2方向に移動させるだけで、カバー13を本体部に一体的に係止させたり、この係止状態から分離させることができるので、カバーの固定用として1本のねじ18を取り扱えばよい。したがって、従来のように多数のねじを用いてカバーを固定する必要はなく、カバー13の脱着操作が容易となる。また、カバー13を本体部12から取り外す場合は、電源コード15が接続されている状態では、カバー13の取り外しが阻止されることから、保守作業者の感電事故などを確実に防止でき、安全性がより向上する。
【符号の説明】
【0029】
11…電子装置
12…本体部
12a…本体背面部
12b…本体側面部
13…カバー
13a…カバー背面部
13b…カバー側面部
14…電子部品
15…電源コード
16…接続部(電源インレット)
17…貫通部
18…固定用のねじ
19…係合片
20…係合部
20a…開口
20b…スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源コードの接続部を有する本体部に対し、前記接続部に接続される電源コードの貫通部を有するカバーを、前記貫通部に前記電源コードを貫通させた状態で一体的に係止させ、かつ任意に分離させることが可能な脱着機構であって、
前記本体部とカバーとの間に構成され、前記カバーの、前記本体部との一体的な係止状態から前記接続部に接続された電源コードの長手方向に沿う第1の方向への移動を許容し、
この第1の方向と直交し、前記接続部に接続された電源コードの干渉により移動が阻止される第2の方向への移動により、前記本体部からの分離を可能とする
ことを特徴とする脱着機構。
【請求項2】
内部に電子機器が実装され、外部に対する電源コードの接続部を有する本体部と、前記接続部に接続される電源コードの貫通部を有し、前記本体部を覆うカバーとを備えた電子装置であって、
前記本体部とカバーとの間に構成され、前記カバーを、前記本体部に対して一体的に係止させると共に、この係止状態からの分離に当っては、前記カバーの、前記接続部に接続された電源コードの長手方向に沿う第1の方向への移動を許容し、この第1の方向へ移動したカバーを、この第1の方向と直交し、前記接続部に電源コードが接続されていると、この接続された電源コードとの干渉により移動が阻止される第2の方向へ移動させることにより、前記本体部からの分離を可能とする脱着機構を有する
ことを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−138984(P2011−138984A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299172(P2009−299172)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】