説明

脱穀機

【課題】内部点検・清掃や部品の交換作業等が容易な枝梗処理装置を備えた脱穀機を提供する。
【解決手段】本願発明の脱穀機は、脱穀選別後の二番物を脱穀装置5内に戻す還元コンベヤ236を内蔵した還元筒452の上端側に、前記二番物を枝梗処理する枝梗処理胴461を内蔵した枝梗処理ケース460を備える。前記還元筒452は、前記脱穀装置5の一側壁5aに沿わせ且つ斜め上向きに傾斜した姿勢で配置される。前記枝梗処理ケース460は、前記脱穀装置5の一側壁5aに取り付けられた固定カバー465と可動カバー466とによって、前記枝梗処理胴461と前記還元コンベヤ236の上部側との両方を囲うように分割して構成される。前記可動カバー466が前記固定カバー465に対して開閉回動可能に連結される。前記可動カバー466の回動支点469が前記枝梗処理ケース460の傾斜下側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、刈り取られた穀稈を脱穀して、脱穀物から精粒を選別・収集するコンバイン等に搭載される脱穀機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインは、エンジンが搭載された走行機体と、前記走行機体を支持する左右の走行部としての走行クローラ等と、操縦ハンドル及び運転座席を有する運転部と、圃場の未刈り穀稈を刈り取る刈取装置と、刈り取った穀稈を脱穀する脱穀装置とを備えており、未刈り穀稈を連続的に刈り取って脱穀し穀粒を収集するように構成されている。この種のコンバインでは、揺動選別盤から二番コンベヤにて取り出された二番物(枝梗付き穀粒や穂切れ粒等)を、還元筒を経由して揺動選別盤に還元する(戻す)ように構成されている。また、還元筒の終端側に枝梗処理装置を配置し、枝梗処理装置にて二番物を枝梗処理してから、揺動選別盤に二番物を戻す構成もよく知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1の構成では、脱穀装置の側方に、揺動選別盤下方の一番コンベヤから一番物(脱穀後の精粒)を取り出す揚穀筒が立設されている。また、揺動選別盤の後部下方側で一番コンベヤより後方に配置された二番コンベヤの終端側に、還元筒が接続されている。還元筒は、脱穀装置の側方のうち揚穀筒が配置される側において、揚穀筒の後方から前方上向きに延びるように配置されている。従って、揚穀筒と還元筒とは側面視で互いに交差している。枝梗処理装置を構成する枝梗処理ケースは左右幅方向に延びている。枝梗処理ケース内には、二番物を処理する枝梗処理胴が左右長手の軸線回りに回動可能に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−111057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、枝梗処理装置内は精粒だけでなく枝梗や藁屑等も含む二番物が通過するため、詰まり易い傾向にある。従って、枝梗処理装置としては、内部点検・清掃や部品の交換作業等が容易な構造にすることが望まれている。しかし、前記特許文献1の枝梗処理機構の構造は、内部点検・清掃や部品の交換作業等の容易さまで考慮したものではなく、その上、枝梗処理胴に対する駆動系統の構成も複雑であり、メンテナンス性に欠けるものであった。
【0006】
そこで、本願発明は、上記のような現状を改善した脱穀機を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を達成するため、請求項1の発明は、脱穀選別後の二番物を脱穀装置内に戻す還元コンベヤを内蔵した還元筒の上端側に、前記二番物を枝梗処理する枝梗処理胴を内蔵した枝梗処理ケースを備えており、前記還元筒は、前記脱穀装置の一側壁に沿わせ且つ斜め上向きに傾斜した姿勢で配置されている脱穀機であって、前記枝梗処理ケースは、前記脱穀装置の一側壁に取り付けられた固定カバーと可動カバーとによって、前記枝梗処理胴と前記還元コンベヤの上部側との両方を囲うように分割して構成されており、前記可動カバーが前記固定カバーに対して開閉回動可能に連結されており、前記可動カバーの回動支点が前記枝梗処理ケースの傾斜下側に位置しているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した脱穀機において、前記還元コンベヤの回転軸と前記枝梗処理胴の回転軸とが平行状に延びており、前記還元コンベヤから前記枝梗処理胴に動力伝達する駆動ケースが前記固定カバーの上端側に着脱可能に取り付けられており、前記枝梗処理ケースは、前記脱穀装置の一側壁と前記固定カバーとの連結を解除した状態で、前記駆動ケースと共に前記還元筒回りに回動可能になっており、前記枝梗処理胴は、前記駆動ケースと共に取り外し可能な状態で、前記枝梗処理ケースに回転可能に軸支されているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した脱穀機において、前記還元筒の中途部は、前記還元コンベヤを囲う一対の半割筒体に分割して構成されており、前記一方の半割筒体が前記他方の半割筒体に対して開閉回動可能に連結されており、前記一方の半割筒体の回動支点が前記還元筒の傾斜下側に位置しているというものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちいずれかに記載した脱穀機において、前記還元筒の下端側と前記脱穀装置の一側壁とをつなぐ受継ケースは、その内部にある動力受継部を囲う一対の半割ケースに分割して構成されており、前記一方の半割ケースが前記他方の半割ケースに対して開閉回動可能に連結されているというものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によると、脱穀選別後の二番物を脱穀装置内に戻す還元コンベヤを内蔵した還元筒の上端側に、前記二番物を枝梗処理する枝梗処理胴を内蔵した枝梗処理ケースを備えており、前記還元筒は、前記脱穀装置の一側壁に沿わせ且つ斜め上向きに傾斜した姿勢で配置されている脱穀機であって、前記枝梗処理ケースは、前記脱穀装置の一側壁に取り付けられた固定カバーと可動カバーとによって、前記枝梗処理胴と前記還元コンベヤの上部側との両方を囲うように分割して構成されており、前記可動カバーが前記固定カバーに対して開閉回動可能に連結されており、前記可動カバーの回動支点が前記枝梗処理ケースの傾斜下側に位置しているから、前記可動カバーの開放によって、前記還元コンベヤの上部側と前記枝梗処理胴との両方を露出でき、前記還元コンベヤの上部側や前記枝梗処理胴周辺に詰まった藁屑・枝梗等を手早く除去できる。特にこの場合は、前記可動カバーの回動支点が前記枝梗処理ケースの傾斜下側に位置しているから、前記可動カバーを常時握っていなくても、重力の作用によって前記可動カバーを開いた状態に維持できる。従って、前記枝梗処理ケースに対するメンテナンス作業に要する手数を少なくでき、メンテナンス作業性を向上できるという効果を奏する。
【0012】
請求項2の発明によると、請求項1に記載した脱穀機において、前記還元コンベヤの回転軸と前記枝梗処理胴の回転軸とが平行状に延びており、前記還元コンベヤから前記枝梗処理胴に動力伝達する駆動ケースが前記固定カバーの上端側に着脱可能に取り付けられており、前記枝梗処理ケースは、前記脱穀装置の一側壁と前記固定カバーとの連結を解除した状態で、前記駆動ケースと共に前記還元筒回りに回動可能になっており、前記枝梗処理胴は、前記駆動ケースと共に取り外し可能な状態で、前記枝梗処理ケースに回転可能に軸支されているから、前記脱穀装置の一側壁に対する前記固定カバーの連結を解除し、前記枝梗処理ケースを前記駆動ケースごと、前記還元筒回りに回動させておけば、前記枝梗処理ケースを前記脱穀装置の一側壁から少し離しておける。この状態で前記固定カバーに対する前記駆動ケースの連結を解除すれば、前記駆動ケースと共に前記枝梗処理胴を、前記枝梗処理ケースから簡単に取り外せることになる。従って、前記枝梗処理ケース内の詰まり除去作業をより一層簡単に行えるという効果を奏する。
【0013】
請求項3の発明によると、請求項1又は2に記載した脱穀機において、前記還元筒の中途部は、前記還元コンベヤを囲う一対の半割筒体に分割して構成されており、前記一方の半割筒体が前記他方の半割筒体に対して開閉回動可能に連結されており、前記一方の半割筒体の回動支点が前記還元筒の傾斜下側に位置しているから、前記一方の半割筒体の開放によって、前記還元コンベヤの中途部を露出できると共に、重力の作用によって前記一方の半割筒体を開いた状態に維持できる。従って、前記還元コンベヤに対するメンテナンス作業性を向上できるという効果を奏する。
【0014】
請求項4の発明によると、請求項1〜3のうちいずれかに記載した脱穀機において、前記還元筒の下端側と前記脱穀装置の一側壁とをつなぐ受継ケースは、その内部にある動力受継部を囲う一対の半割ケースに分割して構成されており、前記一方の半割ケースが前記他方の半割ケースに対して開閉回動可能に連結されているから、前記枝梗処理ケースや前記還元筒の場合と同様に、前記一方の半割ケースの開放によって前記動力受継部を露出でき、前記動力受継部に対するメンテナンス作業性が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】6条刈り用コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの駆動系統図である。
【図4】脱穀装置の左側面断面図である。
【図5】脱穀装置の正面断面図である。
【図6】脱穀装置の拡大正面断面図である。
【図7】揚穀コンベヤと還元コンベヤとの配置関係を示す右側面図である。
【図8】閉じた状態の枝梗処理装置を示す拡大右側面図である。
【図9】開いた状態の枝梗処理装置を示す拡大右側面図である。
【図10】駆動ケース及び枝梗処理胴の取り外し態様を示す斜視図である。
【図11】受継ケースの拡大背面図である。
【図12】揚穀コンベヤと還元コンベヤとの配置関係の別例を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0017】
(1).コンバインの全体構造
図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。図1及び図2に示す如く、コンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む6条刈り用の刈取装置3が、昇降アクチュエータとしての単動式の昇降用油圧シリンダ4によって、横軸である刈取入力ケース16(詳細は後述する)回りに昇降調節可能に装着される。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、該脱穀装置5から取出された穀粒を貯留する穀物タンク7とが横並び状に搭載される。なお、脱穀装置5が走行機体1の前進方向左側に、穀物タンク7が走行機体1の前進方向右側に配置される。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀物タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で且つ穀物タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
【0018】
運転キャビン10内には、旋回操作具としての操縦ハンドル11と、運転座席12と、直進操作具としての主変速レバー43と、副変速スイッチ44と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り切りする作業クラッチレバー45とが配置されている。なお、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップ357(図8〜図11参照)と、操縦ハンドル11を設けたハンドルコラム46と、前記各レバー43,45及びスイッチ44等を設けたレバーコラム47とが配置されている。走行機体1における運転座席12の下方(走行機体1前部の右側)には、動力源としてのエンジン14が配置されている。
【0019】
図1に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置する。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン14の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。
【0020】
図1に示す如く、刈取装置3の骨組みを構成する刈取フレーム221の下方には、圃場に植立した未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置される。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。エンジン14にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場に植立した未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0021】
(2).脱穀装置の構造
次に、図1、図2、図4及び図5を参照しながら、脱穀装置5の構造を説明する。図1及び図2に示す如く、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を枝梗処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230とを備えている。なお、扱胴226の回転軸芯線は、フィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側は、フィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀される。
【0022】
図1に示す如く、揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。前述した揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232、排塵ファン230並びに選別ファン241等によって、穀物選別機構245を構成している。
【0023】
図1に示す如く、揺動選別盤227は、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、フィードパン238及びチャフシーブ239によって揺動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤227から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下することになる。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀物タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀物タンク7に搬入され、穀物タンク7に収集される。
【0024】
また、図1に示す如く、揺動選別盤227は、揺動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する選別ファン241を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下する。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀物タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の後部(チャフシーブ239の前部)の上面側に連通接続され、二番物を揺動選別盤227の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0025】
一方、図1及び図2に示す如く、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234と排藁カッタ235が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後部に設けられた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下側に排出される。
【0026】
(3).コンバインの駆動構造
次に、図3を参照しながら、コンバインの駆動構造(刈取装置3、脱穀装置5、フィードチェン6、排藁チェン234、排藁カッタ235等の駆動構造)について説明する。図3に示す如く、エンジン14の左側にその出力軸150を突出する。エンジン14の出力軸150に走行駆動ベルト151を介してミッションケース88の走行入力軸152を連結し、エンジン14の回転駆動力が、前側の出力軸150からミッションケース88に伝達されて変速された後、左右の車軸153を介して左右の走行クローラ2に伝達され、左右の走行クローラ2がエンジン14の回転力によって駆動されるように構成している。
【0027】
図3に示す如く、エンジン14を冷却するラジエータ等のための冷却ファン154が、エンジン14の右側に突出した出力軸150に設けられている。また、エンジン14の右側の出力軸150に排出オーガ駆動軸157を連結し、エンジン14の回転駆動力によって排出オーガ駆動軸157を介して排出オーガ8が駆動され、穀物タンク7内の穀粒がコンテナ等に排出されるように構成している。また、図5に示す如く、脱穀装置5の各部にエンジン14の回転駆動力を伝える脱穀選別作業入力軸165と、扱胴226及び処理胴230に脱穀選別作業入力軸165の回転駆動力を伝える脱穀駆動軸160を備える。エンジン14の左側の出力軸150には、テンションローラ形脱穀クラッチ161及び脱穀駆動ベルト162を介して、脱穀選別作業入力軸165を連結する。脱穀駆動軸160上に、扱胴低速ギヤ及び扱胴高速ギヤを配置する。脱穀選別作業入力軸165の回転力が、扱胴低速ギヤ又は扱胴高速ギヤを介して脱穀駆動軸160に伝達される。
【0028】
脱穀駆動軸160には、扱胴駆動ベルト117を介して、扱胴226を軸支した扱胴軸163と処理胴230を軸支した処理胴軸164とを連結する。エンジン14の略一定回転数の回転力によって、扱胴226及び処理胴230が所定回転数(低速回転数又は高速回転数)で回転するように構成している。また、エンジン14の略一定回転数の回転力によって、脱穀選別作業入力軸165を介して、揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232、選別ファン241、排塵ファン230が略一定回転数で回転するように構成している。
【0029】
図3に示す如く、ミッションケース88には、1対の直進用第1油圧ポンプ55及び直進用第1油圧モータ56を有する直進(走行主変速)用の油圧無段変速機53と、1対の旋回用第2油圧ポンプ57及び旋回用第2油圧モータ58を有する旋回用の油圧無段変速機54とを設けている。第1油圧ポンプ55と第2油圧ポンプ57とに、ミッションケース88の走行入力軸152をそれぞれ連結させて駆動するように構成している。ミッションケース88にPTO軸99を配置する。PTO軸99は第1油圧モータ56によって駆動される。ミッションケース88からこの左外側にPTO軸99の一端側を突設させている。
【0030】
走行機体1上のうちエンジン14の左側方で且つ脱穀装置5の前側方(軸受台15の後方でもある)に、カウンタギヤケース89を設けている。カウンタギヤケース89には、上述した脱穀駆動軸160と、脱穀駆動軸160に連結する脱穀選別作業入力軸165と、PTO軸99に連結する車速同調軸100と、脱穀選別作業入力軸165又は車速同調軸100に連結する刈取伝動軸101と、刈取り入力軸17に連結する刈取駆動軸102と、フィードチェン6及び受継用補助株元搬送チェン136を駆動するフィードチェン駆動軸103とを配置している。カウンタギヤケース89内の車速同調軸100上に、車速同調軸100の車速同調回転力を伝える一方向クラッチを設ける。車速同調軸100に、刈取変速機構と一方向クラッチとを介して刈取伝動軸101を連結する。刈取変速機構は低速側変速ギヤと高速側変速ギヤとを有する。低速及び中立(零回転)及び高速の各刈取変速を行う刈取変速操作手段によって低速側変速ギヤ又は高速側変速ギヤを刈取伝動軸101に択一的に係合させ、車速同調軸100から刈取変速機構を介して刈取伝動軸101に刈取変速出力を伝えるように構成している。
【0031】
脱穀選別作業入力軸165に一定回転機構を介して刈取伝動軸101を連結する。一定回転機構は低速側一定回転ギヤと高速側一定回転ギヤとを有する。刈取伝動軸101にトルクリミッタを介して刈取駆動軸102を連結する。刈取駆動軸102に、刈取駆動プーリ124及び刈取駆動ベルト125を介して刈取り入力軸17を連結させ、刈取装置3に刈取駆動軸102から刈取駆動力を伝達させる。刈取作業の維持に必要な一定回転数の回転出力が低速側一定回転ギヤを介して脱穀選別作業入力軸165から刈取伝動軸101に伝達される。従って、走行機体1の移動速度に関係なく、低速側一定回転ギヤからの一定回転数で刈取り入力軸17を作動させて刈取作業を維持でき、圃場の枕地での方向転換作業性等を向上できる。
【0032】
また、車速同調軸100及び高速側変速ギヤからの車速同調出力の最高速よりも速い一定回転数の回転出力が、高速側一定回転ギヤを介して脱穀選別作業入力軸165から刈取伝動軸101に伝達される。従って、車速同調出力の最高速よりも速い高速側一定回転ギヤからの一定回転数で刈取り入力軸17を駆動でき、倒伏穀稈の刈取り作業性等を向上できる。なお、トルクリミッタにて設定したトルク以下の回転力で刈取り入力軸17を駆動させることによって、刈刃132等が損傷するのを防止している。
【0033】
カウンタギヤケース89には、脱穀選別作業入力軸165にフィードチェン駆動軸103を連結する遊星ギヤ形変速構造のフィードチェン同調機構が設けられている。脱穀選別作業入力軸165の回転出力が、フィードチェン同調機構によって刈取伝動軸101の回転数に比例して変速されて、フィードチェン駆動軸103に伝達される。即ち、フィードチェン同調機構を介してフィードチェン6及び受継用補助株元搬送チェン136を作動することによって、穀稈の搬送に必要な最低回転数(低速側一定回転ギヤからの一定回転数)を確保しながら、フィードチェン6及び受継用補助株元搬送チェン136の穀稈搬送速度を車速と同調させて変更可能に構成している。
【0034】
図3に示す如く、刈取り入力軸17に、縦伝動軸140及び横伝動軸141及び左搬送駆動軸142を介して引起横伝動軸143を連結する。引起横伝動軸143は、6条分の各引起ケース29の引起タイン駆動軸144にそれぞれ連結している。分草体225の後方で且つ分草フレーム20の上方に引起ケース129が立設され、引起ケース129の背面上部側から引起タイン駆動軸144を突出させている。引起タイン駆動軸144及び引起横伝動軸143を介して、複数の引起タイン128を設けた引起タインチェン128aが駆動するように構成されている。図3に示す如く、横伝動軸141に左右のクランク軸145を介して左右の刈刃132を連結する。横伝動軸141を介して左右の刈刃132を連動させて駆動するように構成している。なお、刈刃装置222は、6条分の刈幅の中央部で分割して左右の刈刃132を形成し、左右の刈刃132を相反する方向に往復移動させ、往復移動によって発生する左右の刈刃132の振動(慣性力)を相殺可能に構成している。
【0035】
図3に示す如く、刈取り入力軸17に縦伝動ケース18内の縦伝動軸140の一端側を連結する。縦伝動軸140の他端側に横伝動ケース19内の横伝動軸141を連結する。縦伝動軸140及び横伝動軸141から、穀稈搬送装置224の各駆動部に刈取り入力軸17の回転力を伝える。すなわち、縦伝動軸140には右搬送駆動軸146を連結している。縦伝動軸140及び右搬送駆動軸146を介して、右株元搬送チェン133Rと、右スターホイル130R及び右掻込ベルト131Rと、縦搬送チェン134とを駆動するように構成している。また、縦伝動軸140のうち右搬送駆動軸146より後方には後搬送駆動軸147を連結している。縦伝動軸140及び後搬送駆動軸147を介して、補助株元搬送チェン135及び右穂先搬送タイン137Rを駆動するように構成している。
【0036】
また、横伝動軸141の左端側に左搬送駆動軸142を連結している。左搬送駆動軸142を介して、左株元搬送チェン133L及び左穂先搬送タイン137Lと、左スターホイル130L及び左掻込ベルト131Lとを駆動するように構成している。また、横伝動軸141に中央搬送駆動軸148を連結し、中央搬送駆動軸148を介して、中央株元搬送チェン133C及び中央穂先搬送タイン137Cと、中央スターホイル130C及び中央掻込ベルト131Cとを駆動するように構成している。
【0037】
(4).二番還元装置及び枝梗処理装置の構造
次に、図4乃至図11を参照しながら、二番還元装置450及び枝梗処理装置451の構造について説明する。二番還元装置450は、脱穀選別後の二番物を脱穀装置5に戻すためのものである。二番還元装置450の送り終端側に、二番物を枝梗処理する枝梗処理装置451が設けられている。実施形態の二番還元装置450は、前高後低状に傾斜した姿勢で脱穀装置5の右側壁5aに沿って延びる還元筒452と、還元筒452内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された還元コンベヤ236とを備えている。二番コンベヤ232のうち右側壁5aから外向きに突出した送り終端部に、前方斜め上向きに延びる還元コンベヤ236の送り始端側(下端側)が、動力受継部453(傘歯車機構)を介して動力伝達可能に接続されている。
【0038】
図4、図7及び図11に示すように、脱穀装置5における右側壁5aの外面側に、受継ケース454が配置されている。受継ケース454の上向き開口側に、還元筒452の下端側が連結されている。脱穀装置5における右側壁5aの外面に沿わせて還元筒452が前高後低状の傾斜姿勢で支持されている。揚穀コンベヤ233を内蔵する揚穀筒455と還元筒452とは、脱穀装置5と穀物タンク7との間において、側面視で互いに交差している。この場合、還元筒452は、揚穀筒455に対して脱穀装置5の右側壁5aに近い側にオフセットさせて配置されている。つまり、還元筒452が正面視で脱穀装置5の右側壁5aに近い側に位置し、揚穀筒455が穀物タンク7に近い側(右側壁5aから遠い側)に位置している。
【0039】
二番コンベヤ232における二番コンベヤ軸456の右側端側と、還元コンベヤ236における還元コンベヤ軸457の下端側とは、軸受部材を介して受継ケース454にそれぞれ回転可能に軸支されている。そして、二番コンベヤ軸456の右側端側と、還元コンベヤ軸457の下端側とが、動力受継部453(傘歯車機構)を介して動力伝達可能に連結されている。還元コンベヤ軸457の送り終端側(上端側)は、後述する駆動ケース467のケース本体481に回転可能に軸支されている。従って、チャフシーブ239等から二番コンベヤ232に漏下した二番物は、二番コンベヤ232から還元コンベヤ236に受け継がれる。還元コンベヤ236に受け継がれた二番物は、還元コンベヤ軸457の送り終端側に設けられた掻き出し羽根458にて、還元コンベヤ236から枝梗処理ケース460内の枝梗処理胴461に受け継がれる。
【0040】
還元筒452の送り終端側は、枝梗処理装置451を介して脱穀装置5の右側壁5aに連通接続されている。枝梗処理装置451は、前高後低状に傾斜した姿勢で脱穀装置5の右側壁5aに沿わせた枝梗処理ケース460と、枝梗処理ケース460内に前高後低状の軸線回りに回転可能に配置された枝梗処理胴461とを備えている。実施形態の枝梗処理ケース460は、還元筒452における送り終端寄りの傾斜下側(前部下側)に配置されている。図8及び図9に示すように、枝梗処理胴461における前高後低状の枝梗処理回転軸462と、還元コンベヤ236の回転軸である還元コンベヤ軸457とは平行状に延びている。
【0041】
枝梗処理ケース460のうち脱穀装置5の右側壁5aと対峙する左側面下部(後述する固定カバー465の下部)には、枝梗処理ケース460から脱穀装置5内に臨む二番物放出部463が突出形成されている。図6及び図10に示すように、脱穀装置5の右側壁5aには、側面視で扱胴226の下面前部に対して上下に跨るように開口する挿入穴464が形成されている。枝梗処理ケース460の二番物放出部463が、右側壁5aの挿入穴464に外側から嵌め込まれている。二番物放出部463は、側面視で扱胴226の下面前部に対して上下に跨るように、受網237の裏面側に向けて開口している(図6参照)。すなわち、枝梗処理ケース460は二番物放出部463を介して脱穀装置5に連通しており、二番物放出部463からフィードパン238の上面前部側に向けて、枝梗処理ケース460内の二番物が放出されることになる。
【0042】
その結果、図6において時計方向に回転する扱胴226の下側で脱穀された脱穀物がフィードパン238上面の左側から右側に向けて飛散するのに対して、二番物放出部463から放出された二番物は、フィードパン238上面の右側から左側に向けて飛散する。つまり、扱胴226からの脱穀物の飛散方向(フィードチェン6側から穀物タンク7側に向かう方向)と、二番物放出部463からの二番物の飛散方向(穀物タンク7側からフィードチェン6側に向かう方向)とは、フィードパン238の左右中央部付近で交差することになる。従って、フィードパン238の左右中央部付近において脱穀物と二番物とを衝突させ、これらを分散させることが可能であり、フィードパン238の右側(二番物放出部463の直下付近)に脱穀物及び二番物が集中して堆積するのを防止できる。そして、フィードパン238からチャフシーブ239に揺動移動する脱穀物及び二番物をチャフシーブ239の左右幅方向に拡散(分散)でき、チャフシーブ239での選別作業性を向上できる。
【0043】
図8〜図10に示すように、枝梗処理ケース460は、脱穀装置5の右側壁5aに取り付けられた固定カバー465と可動カバー466とによって、枝梗処理胴461と還元コンベヤ236上部側との両方を囲うように分割して構成されている。固定カバー465と可動カバー466とを閉じ合わせた状態(図8及び図10参照)で、両ケース465,466の対(枝梗処理ケース460)は上向きに開口した筒型(箱型になっている)。両ケース465,466の上向き開口側は駆動ケース467にて覆われている。固定カバー465は脱穀装置5の右側壁5aにボルト締結されている。固定カバー465の側面下部には、脱穀装置5における右側壁5aの挿入穴464に外側から嵌る二番物放出部463が設けられている。固定カバー465の底板が枝梗処理ケース460の底部を構成している。固定カバー465の底板に、枝梗処理回転軸462の下端側が回転可能に軸支されている。枝梗処理回転軸462の上端側は、駆動ケース467のケース本体481に回転可能に軸支されている。駆動ケース467のケース本体481は、固定カバー465の上端側にボルト締結されている。
【0044】
固定カバー465と可動カバー466とを閉じ合わせた状態で、固定カバー465及び可動カバー466(枝梗処理ケース460)は、還元コンベヤ236の送り終端側(上端側)と枝梗処理胴461との両方を覆っている。固定カバー465の内面側のうち還元コンベヤ236の送り終端側(上端側)と枝梗処理胴461との間には、中仕切壁468が設けられている。固定カバー465と可動カバー466とを閉じ合わせた状態では、枝梗処理ケース460内において還元コンベヤ236側の空間と枝梗処理胴461側の空間とが、中仕切壁468の上方にある連通路を介してつながっている。従って、還元コンベヤ236から枝梗処理ケース460内に送られた二番物は、側面視でUターン状に枝梗処理ケース460内の枝梗処理胴461側に受け継がれることになる。
【0045】
固定カバー465の傾斜下側に当たる前側縁部と、可動カバー466の傾斜下側に当たる前側縁部とは、一対の蝶番469を介して開閉回動可能に連結されている。すなわち、可動カバー466の回動支点(蝶番469)が枝梗処理ケース460の傾斜下側に位置している。固定カバー465の傾斜上側に当たる後側縁部と、可動カバー466の傾斜上側に当たる後側縁部とには、還元コンベヤ軸457や枝梗処理回転軸462と平行状に延びる止めフランジ471,472がそれぞれ設けられている。両止めフランジ471,472を重ね合わせてボルト締結すると共に、可動カバー466の中央部を中仕切壁468にボルト締結することによって、固定カバー465と可動カバー466とが閉じ合わされ、両ケース465,466の上向き開口側が駆動ケース467にて覆われる。その結果、密閉状の枝梗処理ケース460が構成されることになる。
【0046】
図8及び図9に示すように、還元筒452の送り終端側には、還元コンベヤ軸457を貫通させた筒フランジ473が配置されている。筒フランジ473の上周縁部と固定カバー465の底板周縁とには、縁取り補強片474が可動カバー466側から被せ付けられている。縁取り補強片474の前部下側は、固定カバー465における前側縁部の下端側に固定され、縁取り補強片474の後部上側は、固定カバー465における後側縁部の下端側に固定されている。従って、固定カバー465の下周縁部と縁取り補強片474とは、可動カバー466の開閉状態に拘らず、筒フランジ473の上周縁部を挟持している。このため、固定カバー465は、脱穀装置5の右側壁5aに対するボルト締結を解除すれば、可動カバー466及び駆動ケース467と共に、還元筒452回り(還元コンベヤ軸457を中心)に回動することが可能になっている。
【0047】
図8及び図9に示すように、二番物を再処理する枝梗処理胴461は、還元コンベヤ軸457と平行状に延びる前高後低状の枝梗処理回転軸462を備えている。前述の通り、枝梗処理回転軸462の下端側は、固定カバー465の底板に回転可能に軸支され、枝梗処理回転軸462の上端側は、駆動ケース467のケース本体481に回転可能に軸支されている。つまり、枝梗処理胴461は固定カバー465側に配置されていて、可動カバー466を固定カバー465から離す方向に回動させた状態(開いた状態、図9参照)では、枝梗処理胴461が固定カバー465側において露出する。また、この場合は、還元コンベヤ236の送り終端側(掻き出し羽根458を含む)も固定カバー465側において露出することになる。枝梗処理胴461の回転方向は扱胴226の回転方向と逆向きに設定されている。この場合、枝梗処理胴461は、図5及び図6において反時計方向に回転するように構成され、扱胴226にて脱穀された脱穀物の飛散方向(フィードチェン6側から穀物タンク7側に向かう方向)と二番物放出部463からの二番物の飛散方向(穀物タンク7側からフィードチェン6側に向かう方向)とを向かい合わせにしている。
【0048】
枝梗処理回転軸462上には、枝梗処理ケース460内の還元コンベヤ236側から送り込まれた二番物を撹拌する複数本の二番処理歯477と、二番物放出部463からフィードパン238の上面に向けて二番物を飛散させる複数枚の放出羽根478とを備えている。この場合、枝梗処理回転軸462に2条の放出オーガ体479が被嵌されている。枝梗処理回転軸462の中途部に複数本の二番処理歯477が軸方向から見て放射状に配置されている。枝梗処理ケース460の内部(固定カバー465及び可動カバー466の内部)に位置する受歯480は、2本1組の二番処理歯477の間を通過するように設けられている。すなわち、枝梗処理ケース460内の枝梗処理胴461側には、複数本の二本処理歯477と、枝梗処理ケース460外側からの脱着が困難な複数本の受歯480と、2枚の放出羽根478と、2条の放出オーガ体479とが配置されている。2枚の放出羽根478は、放出オーガ体479の下端側に、放射状で且つ一体的に設けられている。
【0049】
還元コンベヤ236の掻き出し羽根458にて枝梗処理ケース460内の枝梗処理胴461側に移送された二番物は、放出オーガ体479にて上流側から下流側に送られながら、二番処理歯477と受歯480とによって再処理(刺さり粒の脱粒又は藁屑の揉み解し等)される。放出オーガ体479にて枝梗処理ケース460における枝梗処理胴461の下流側に送られた処理済みの二番物は、放出羽根478にて二番物放出部463から揺動選別盤227の上面に向けて排出されることになる(図6参照)。
【0050】
図7〜図10に示すように、枝梗処理ケース460の上端側(固定カバー465の上端側)には駆動ケース467が連結されている。駆動ケース467は、板状のケース本体481と、これを着脱可能に覆うケース蓋482とを備えている。実施形態では、ケース本体481が固定カバー465の上端側にボルト締結されていて、固定カバー465と可動カバー466とを閉じ合わせた状態では、両ケース465,466の上向き開口側がケース本体481にて塞がれることになる。ケース本体481を貫通する還元コンベヤ軸457の先端突出側には、ケース本体481に回転可能に軸支された駆動スプロケット483が被嵌されている。この場合、駆動スプロケット483の回転中心部に形成されたスプライン穴に、還元コンベヤ軸457の先端突出側に形成されたスプライン部を差し込んでスプライン嵌合させている。一方、ケース本体481に軸支された枝梗処理回転軸462の先端突出側には、従動スプロケット484が固着されている。両スプロケット483,484には、無端帯としてのチェン485が巻き掛けられている。従って、二番コンベヤ軸456から還元コンベヤ軸457を介して枝梗処理回転軸462に回転動力を伝達することにより、二番コンベヤ232に連動して、還元コンベヤ236及び枝梗処理胴461が回転駆動することになる。ケース蓋482は、両スプロケット483,484及びチェン485を上方から覆った状態でケース本体481にボルト締結されている。ボルトを緩めてケース蓋482を取り外せば、ケース本体481上に両スプロケット483,484及びチェン485が露出する。
【0051】
実施形態では、枝梗処理回転軸462の下端側にスプライン部が形成されている一方、固定カバー465の底板に設けられた軸受部材486にはスプライン穴が設けられている。固定カバー465側にある軸受部材486のスプライン穴に、枝梗処理回転軸462のスプライン部をスプライン嵌合させている。このため、固定カバー465に対するケース本体481のボルト締結を解除して、還元コンベヤ軸457や枝梗処理回転軸462の延長方向に駆動ケース467を引き上げれば、駆動ケース467を枝梗処理胴461と共に取り外すことが可能である(図10参照)。この場合、脱穀装置5の右側壁5aに対する固定カバー465のボルト締結を解除し、枝梗処理ケース460を駆動ケース467ごと、還元筒452回りに回動させておけば、枝梗処理ケース467を脱穀装置5の右側壁5aから少し離しておけるので、その後のボルト締結解除作業や駆動ケース467取り外し作業がし易くなる。
【0052】
図7に示すように、還元筒452の中途部、すなわち、揚穀筒455との交差部と筒フランジ473との間の部分は、還元コンベヤ236を半周ずつ囲う一対の半割筒体491,492に分割して構成されている。穀物タンク7に近い方の可動側半割筒体492が、脱穀装置5の右側壁5aに近い方の固定側半割筒体491に、それぞれの傾斜下側にある一対の蝶番493を介して開閉回動可能に連結されている。可動側半割筒体492を固定側半割筒体491から離す方向に回動させた状態では、還元コンベヤ236の中途部が固定側半割筒体492側において露出することになる。固定側半割筒体491及び可動側半割筒体492の長手一側縁部に形成された取付フランジ494,495同士を重ね合わせてボルト締結することによって、両半割筒体491,492が閉じ合わされ、還元コンベヤ236の中途部が両半割筒体491,492にて囲われることになる。
【0053】
各半割筒体491,492の上縁部及び下縁部は、半径外向きに張り出した段付き形状に形成されている。両半割筒体491,492を閉じ合わせた状態では、それぞれの上縁部が筒フランジ473に外側から重なる。そして、段付きの部分に筒フランジ473の下端が位置することによって、筒フランジ473の下向き抜けが防止される。また、両半割筒体491,492の下縁部は、還元筒452における本体筒部496の上縁部に外側から重なる。そして、段付きの部分が本体筒部496の上端に載ることによって、両半割筒体491,492の下向き抜けが防止される。
【0054】
図11に示すように、脱穀装置5における右側壁5aの外面側に配置された受継ケース454は、その内部にある二番コンベヤ軸456の送り終端側、動力受継部453及び還元コンベヤ軸457の送り始端側を半周ずつ囲う一対の半割ケース501,502に分割して構成されている。この場合、各半割ケース501,502は正面視又は背面視でL字状の形態になっており、後方側に位置する可動側半割ケース502が、前方側にある固定側半割ケース501に、穀物タンク7寄りの長手側縁部同士をつなぐ一対の蝶番503を介して開閉回動可能に連結されている。可動側半割ケース502を固定側半割ケース501から離す方向に回動させた状態では、二番コンベヤ軸456の送り終端側、動力受継部453及び還元コンベヤ軸457の送り始端側が後方に向けて露出する。
【0055】
各半割ケース501,502のうち脱穀装置5寄りの長手側縁部に形成された取付フランジ504,505同士を重ねてボルト締結すると共に、各半割ケース501,502の下側縁部に形成された下端フランジ506,507同士を重ねてボルト締結することによって、両半割ケース501,502が閉じ合わされ、二番コンベヤ軸456の送り終端側、動力受継部453及び還元コンベヤ軸457の送り始端側が、両半割ケース501,502にて囲われることになる。
【0056】
各半割ケース501,502の上縁部は、半径外向きに張り出した段付き形状に形成されている。両半割ケース501,502を閉じ合わせた状態では、それぞれの上縁部が還元筒452における本体筒部496の下縁部に外側から重なる。そして、段付きの部分に本体筒部496の下端が位置することによって、本体筒部496の下向き抜けが防止される。
【0057】
上記の構成により、刈取装置3にて圃場の未刈り穀稈が刈り取られ、刈取装置3から供給された刈取り穀稈が脱穀装置5にて脱穀された場合、脱穀装置5から落下した脱穀物は、揺動選別盤227にて選別される。揺動選別盤227にて選別された一番物としての精粒は、一番コンベヤ231を介して穀物タンク7に収集される。また、揺動選別盤227にて選別された二番物としての穀粒及び藁屑の混合物が二番コンベヤ232に落下した場合、当該二番物は二番コンベヤ232から還元コンベヤ236に受け継がれ、還元コンベヤ236から枝梗処理ケース460内に搬送される。掻き出し羽根458にて、還元コンベヤ236の送り終端側(上端側)から枝梗処理胴461側に送り込まれた二番物は、二番処理歯477及び受歯480にて再処理(刺さり粒の脱粒又は藁屑の揉み解し等)されたのち、放出羽根478にて二番物放出部463からフィードパン238の上面に排出され、揺動選別盤227にて再び選別される。従って、二番物中の穀粒は、一番コンベヤ231から穀物タンク7に搬入される。また、二番物中の藁屑は、チャフシーブ239の上面を経て、排塵ファン230又は三番口240から機外に排出される。
【0058】
二番コンベヤ232と還元コンベヤ236と枝梗処理胴461とは常に連動して回転することになるが、それぞれの回転数は異なっている。実施形態では、二番コンベヤ232より還元コンベヤ236が高速で回転し、還元コンベヤ236より枝梗処理胴461が高速で回転するように設定されている。すなわち、二番コンベヤ232の単位時間当たりの搬送量より還元コンベヤ236の単位時間当たりの搬送量を多くし、還元コンベヤ236の単位時間当たりの搬送量よりも枝梗処理胴461の単位時間当たりの搬送量を多くすることによって、還元コンベヤ236や枝梗処理胴461の搬送途中で二番物が詰るのを防止している。
【0059】
(5).まとめ
上記の記載並びに図7〜図9から明らかなように、脱穀選別後の二番物を脱穀装置5内に戻す還元コンベヤ236を内蔵した還元筒452の上端側に、前記二番物を枝梗処理する枝梗処理胴461を内蔵した枝梗処理ケース460を備えており、前記還元筒452は、前記脱穀装置5の一側壁5aに沿わせ且つ斜め上向きに傾斜した姿勢で配置されている脱穀機であって、前記枝梗処理ケース460は、前記脱穀装置5の一側壁5aに取り付けられた固定カバー465と可動カバー466とによって、前記枝梗処理胴461と前記還元コンベヤ236の上部側との両方を囲うように分割して構成されており、前記可動カバー466が前記固定カバー465に対して開閉回動可能に連結されており、前記可動カバー466の回動支点469が前記枝梗処理ケース460の傾斜下側に位置しているから、前記可動カバー466の開放によって、前記還元コンベヤ236の上部側と前記枝梗処理胴461との両方を露出でき、前記還元コンベヤ236の上部側や前記枝梗処理胴461周辺に詰まった藁屑・枝梗等を手早く除去できる。特にこの場合は、前記可動カバー466の回動支点469が前記枝梗処理ケース460の傾斜下側に位置しているから、前記可動カバー466を常時握っていなくても、重力の作用によって前記可動カバー466を開いた状態に維持できる。従って、前記枝梗処理ケース460に対するメンテナンス作業に要する手数を少なくでき、メンテナンス作業性を向上できる。
【0060】
上記の記載並びに図7〜図10から明らかなように、前記還元コンベヤ236の回転軸457と前記枝梗処理胴461の回転軸462とが平行状に延びており、前記還元コンベヤ236から前記枝梗処理胴461に動力伝達する駆動ケース467が前記固定カバー465の上端側に着脱可能に取り付けられており、前記枝梗処理ケース460は、前記脱穀装置5の一側壁5aと前記固定カバー465との連結を解除した状態で、前記駆動ケース467と共に前記還元筒452回りに回動可能になっており、前記枝梗処理胴461は、前記駆動ケース467と共に取り外し可能な状態で、前記枝梗処理ケース460に回転可能に軸支されているから、前記脱穀装置5の一側壁5aに対する前記固定カバー465の連結を解除し、前記枝梗処理ケース460を前記駆動ケース467ごと、前記還元筒452回りに回動させておけば、前記枝梗処理ケース467を前記脱穀装置5の一側壁5aから少し離しておける。この状態で前記固定カバー465に対する前記駆動ケース467の連結を解除すれば、前記駆動ケース467と共に前記枝梗処理胴461を、前記枝梗処理ケース460から簡単に取り外せることになる。従って、前記枝梗処理ケース460内の詰まり除去作業をより一層簡単に行える。
【0061】
上記の記載並びに図7から明らかなように、前記還元筒452の中途部は、前記還元コンベヤ236を囲う一対の半割筒体491,492に分割して構成されており、前記一方の半割筒体492が前記他方の半割筒体491に対して開閉回動可能に連結されており、前記一方の半割筒体492の回動支点が前記還元筒452の傾斜下側に位置しているから、前記一方の半割筒体492の開放によって、前記還元コンベヤ236の中途部を露出できると共に、重力の作用によって前記一方の半割筒体492を開いた状態に維持できる。従って、前記還元コンベヤ236に対するメンテナンス作業性を向上できる。
【0062】
上記の記載並びに図11から明らかなように、前記還元筒452の下端側と前記脱穀装置5の一側壁5aとをつなぐ受継ケース454は、その内部にある動力受継部453を囲う一対の半割ケース501,502に分割して構成されており、前記一方の半割ケース502が前記他方の半割ケース501に対して開閉回動可能に連結されているから、前記枝梗処理ケース460や前記還元筒452の場合と同様に、前記一方の半割ケース502の開放によって前記動力受継部453を露出でき、前記動力受継部453に対するメンテナンス作業性が向上するのである。
【0063】
(6).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、本願発明は、前述のような自脱型コンバインに搭載の脱穀機に限らず、普通型コンバインに搭載の脱穀機や定置式の脱穀機にも適用できる。また、図12の別例に示すように、脱穀装置5と穀物タンク7との間において、還元筒452と揚穀筒455とを前後平行状に並べて縦向きに配置した場合であっても、本願発明を適用できることは言うまでもない。図12においても、還元筒452は脱穀装置5の一側壁5aに沿わせ且つ斜め上向きに傾斜した姿勢になっている。この場合、還元筒452には前述のような本体筒部496がなく、縦長で一対の半割筒体491,492にて還元コンベヤ236の長手中途部を囲っている。なお、当該別例の二番物放出部83の外形形状は、前方斜め下向きに広がる漏斗状に形成され、前方及び下方に行くに従って脱穀装置5の右側壁5aに近付くように傾斜している。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 走行機体
5 脱穀装置
5a 右側壁
236 還元コンベヤ
452 還元筒
460 枝梗処理ケース
461 枝梗処理胴
465 固定カバー
466 可動カバー
469 蝶番(回動支点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀選別後の二番物を脱穀装置内に戻す還元コンベヤを内蔵した還元筒の上端側に、前記二番物を枝梗処理する枝梗処理胴を内蔵した枝梗処理ケースを備えており、前記還元筒は、前記脱穀装置の一側壁に沿わせ且つ斜め上向きに傾斜した姿勢で配置されている脱穀機であって、
前記枝梗処理ケースは、前記脱穀装置の一側壁に取り付けられた固定カバーと可動カバーとによって、前記枝梗処理胴と前記還元コンベヤの上部側との両方を囲うように分割して構成されており、前記可動カバーが前記固定カバーに対して開閉回動可能に連結されており、前記可動カバーの回動支点が前記枝梗処理ケースの傾斜下側に位置している、
脱穀機。
【請求項2】
前記還元コンベヤの回転軸と前記枝梗処理胴の回転軸とが平行状に延びており、前記還元コンベヤから前記枝梗処理胴に動力伝達する駆動ケースが前記固定カバーの上端側に着脱可能に取り付けられており、
前記枝梗処理ケースは、前記脱穀装置の一側壁と前記固定カバーとの連結を解除した状態で、前記駆動ケースと共に前記還元筒回りに回動可能になっており、前記枝梗処理胴は、前記駆動ケースと共に取り外し可能な状態で、前記枝梗処理ケースに回転可能に軸支されている、
請求項1に記載した脱穀機。
【請求項3】
前記還元筒の中途部は、前記還元コンベヤを囲う一対の半割筒体に分割して構成されており、前記一方の半割筒体が前記他方の半割筒体に対して開閉回動可能に連結されており、前記一方の半割筒体の回動支点が前記還元筒の傾斜下側に位置している、
請求項1又は2に記載した脱穀機。
【請求項4】
前記還元筒の下端側と前記脱穀装置の一側壁とをつなぐ受継ケースは、その内部にある動力受継部を囲う一対の半割ケースに分割して構成されており、前記一方の半割ケースが前記他方の半割ケースに対して開閉回動可能に連結されている、
請求項1〜3のうちいずれかに記載した脱穀機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−193785(P2011−193785A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63613(P2010−63613)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】