説明

脱穀機

【課題】構成が簡単で、送風方向の調節が容易に行える脱穀機を提供しようとするものである。
【解決手段】揺動選別装置(14)の下側前部に、後端に開口部を有する筒状に形成した送風胴板(19)と、該送風胴板(19)の後端開口部の上下に接続する上通風案内板(20a)及び下通風案内板(20b)とで選別用送風室(21)を形成し、該選別用送風室(21)内には選別風を発生させる唐箕羽根(22)を回転自在に軸支し、上通風案内板(20a)と下通風案内板(20b)との間には、選別風を主選別風(イ)と補助選別風(ロ)とに分割する風割(23)を設け、上通風案内板(20a)の後端部(C)に風向調節板(24)の後端部を上下回動自在に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に例示するように、刈取り穀稈の供給を受けて、脱穀する扱室の下側に、選別処理物を揺動移送しながら選別する揺動選別装置を設け、該揺動選別装置は、前部に第1ストローラックを設け、該第1ストローラックの下側には、粗選別部である第1グレンパンと、多数個のチャブシーブを設け、該粗選別部の下側の後部には、固定グレンパンと所定間隔で多数本の篩線を設け、該篩線の下側後方部には、グレンパンと、該グレンパンに接続するグレンシーブを設け、該グレンシーブの前側の上方部には、第2ストローラックを設け、第1ストローラックから送り出される排藁屑等を、機外へ排出させるように構成している。
【0003】
又、前部チャブシーブから漏下した処理物を受け止め、揺動移送しながら比重差選別する、揺動選別ケースに位置固定状態の固定グレンパン部分と、この固定グレンパンから移送方向下手側に移送方向に沿って、片持ち状に延びる状態で、該固定グレンパンに並列配設した、複数本の篩い線とから、該中間選別部を構成してある。
【0004】
前記篩い線の配置間隔は、主に穀粒と細かい藁屑だけが、漏下して精選別部での、穀粒選別を能率よく行うために、ピッチを比較して小さく設定している構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−274696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
構成が簡単で、送風方向の調節が容易に行える脱穀機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述のような課題を解決するために、この発明は、次のような技術手段を講じる。
【0008】
即ち、請求項1記載の発明は、刈取り穀稈を脱穀する扱室(9)の下側に、選別処理物を揺動移送しながら粗選別する粗選別部を備え、該粗選別部から漏下した選別処理物を揺動移送しながら穀粒を一番物回収部(25b)に漏下させると共に二番物を移送方向下手側に配置した二番物回収部(26c)上に落下させる揺動選別装置(14)を設け、該揺動選別装置(14)の下側前部には、後端に開口部を有する筒状に形成した送風胴板(19)と、該送風胴板(19)の後端開口部の上下に接続する上通風案内板(20a)及び下通風案内板(20b)とで選別用送風室(21)を形成し、該選別用送風室(21)内には選別風を発生させる唐箕羽根(22)を回転自在に軸支し、前記上通風案内板(20a)と下通風案内板(20b)との間には、選別風を主選別風(イ)と補助選別風(ロ)とに分割する風割(23)を設け、前記上通風案内板(20a)の後端部(C)に風向調節板(24)の後端部を上下回動自在に取り付けたことを特徴とする脱穀機としたものである。
【0009】
脱穀機(1)の扱室(9)内へ刈取り穀稈の供給を受けると、該扱室(9)内で脱穀され、該扱室(9)の下側へ揺動移送しながら、粗選別を行う粗選別部と、該粗選別部から漏下した選別処理物を揺動移送しながら、穀粒を一番物回収部(25b)に選別漏下させ、又、二番物を移送方向下手側下方に配置した二番物回収部(26c)上に落下させる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記下通風案内板(20b)を上下回動自在な構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀機としたものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記風向調節板(24)の前端部(ニ)と前記風割(23)の前端部(ホ)とを連動して上下回動自在な構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀機としたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明においては、風向調節板(24)を上下回動調節することにより、風割(23)の上側の風路から吹き出す選別風の吹き出し角度を調節できる。これにより、揺動選別装置(14)上の選別処理物量が少ない場合に、選別風の吹き出し角度を急傾斜状態とすれば、選別風を揺動選別装置(14)の前部下側から吹き上げさせることで、選別処理物中の穀粒が藁屑と共に揺動選別装置(14)の後部から外部へ排出されて損失となる不具合を少なくすることができる。また、揺動選別装置(14)上の選別処理物量が多い場合には、選別風の吹き出し方向を緩傾斜状態とすれば、選別風を揺動選別装置(14)の中間部ないし後部下側から吹き上げさせることで、選別処理物中の藁屑を揺動選別装置(14)の後部から外部へ円滑に排出でき、揺動選別装置(14)上での選別処理物の停滞を防いで選別能率を高めることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明においては、上記請求項1に記載の発明の効果を奏するうえに、下通風案内板(20b)を上下回動調節することにより、風割(23)の下側の風路から吹き出す選別風の吹き出し角度を調節できる。これにより、風向調節板(24)の上下回動調節と共に、選別風全体の吹き出し角度を調節でき、選別処理物中の穀粒の損失防止と選別能率の向上とを達成することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によると、上記請求項2記載の発明の効果を奏するうえに、選別風全体の吹き出し角度を連動して調節できることで、選別処理物中の穀粒の損失防止と選別能率の向上とを共に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】脱穀機の正断面図
【図2】脱穀機の風割部の正断面図
【図3】脱穀機の風割部の正断面図
【図4】脱穀機の風割部と風向調節板部との正断面図
【図5】脱穀機の下通風案内板部の正断面図
【図6】脱穀機の下通風案内板部と風割部との正断面図
【図7】脱穀機の吸引装置部の上下調節の正断面図
【図8】吸引装置の吸気口調節板の下調節正断面図
【図9】吸引装置の吸気口調節板の上下調節正断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0017】
刈取り穀稈の供給を受けて脱穀する脱穀機1は、図1で示すように、前・後側板2、3と、及び左・右側板4、5で略箱形状に形成し、上端部には、扱胴カバー6を設けると共に、上端後部側には、上カバー7を設けた構成である。
【0018】
前記脱穀機1の上部の穀稈供給口の外側上下には、挟持杆8aとフィードチェン8bとを設け、該脱穀機1の上部に設けた、扱室9内を穀稈を挟持移送して脱穀する構成である。この扱室9内には、多種類で多数本の扱歯11等を外径部に植設した、扱胴10を、扱胴軸10aで回転自在に、前側板2と排出口板2a等との間に軸支して設けた構成である。
【0019】
前記扱胴10の該扱歯11の回転外周の外側部で、該前側板2の内側面(A)から排出口12を形成する内側部(B)位置までは、脱穀処理物を漏下させるべく、漏下網13を張設している。該漏下網13の終端部(B)から、該排出口板2aまでの間は、未漏下物を排出する排出口12とした構成である。
【0020】
前記漏下網13、及び該排出口12の下側に、該漏下網13から漏下した脱穀物である穀粒、及び藁屑等と、該排出口12から排出される穀粒の一部、及び藁屑等とを受けて、揺動移送選別する揺動選別装置14を設けている。
【0021】
前記揺動選別装置14は、図1で示すように、上部より、順に、山形多数個を所定間隔で設けた分離板15と、該分離板15の下側で左部より、三角形状が複数個接続した移送板16と、該移送板16の下手側には、多数個の各選別板17が所定間隔に上下回動自在で、移送物の移送量を変更可能に設け、該各選別板17の下側には、選別用網18を設け、選別済み穀粒を下部へ漏下させる構成である。
【0022】
前記揺動選別装置14の下側左部には、図1で示すように、該揺動選別装置14より、落下する脱穀済み穀粒と、藁屑等とに風選別する円形状の送風胴板19と、該送風胴板19の先端上下部ら接続する上・下通風案内板20a、20bとで、選別送風室21を形成し、該選別送風室21内には、起風を発生させる4枚の唐箕羽根22を装着する、4個の羽根受メタル22aを、十文字形状に形成して唐箕軸22bで軸支して設けた構成である。
【0023】
図1で示すように、前記上・下通風案内板20a、20b間には、下側の主選別風(イ)と、上側の補助選別風(ロ)とに、分割する略三角形状の風割23を設けている。又、該上通風案内板20aの上端部回動中心として、下端部を、上下方向に回動移動自在な風向調節板24を風向回動軸24aで回動自在に軸支して設け、脱穀する穀稈を前記脱穀機1内へ供給する穀稈の供給量により、その都度変更することができる構成としている。
【0024】
これにより、前記脱穀機1内へ供給する穀稈の供給量により、風向調節板24の調節が可能となり、良好な風量調節ができることにより、良好な選別性能を得ることができると共に、脱穀性能の安定を計ることができる。
【0025】
前記選別送風室21の下手側には、一番選別物を機外へ移送する、下通風案内板20bに連通する、一番移送螺旋25aを軸支内装した一番戸樋25を設け、該一番戸樋25の下手側は、前記下通風案内板20bと連接させている。又、該一番戸樋25の上手側と、二番戸樋27の下手側とは、選別棚26を設けて接続させた構成である。該一番戸樋25の一方側の外側には、選別済み穀粒を機外へ排出する一番排出筒28を設けている。
【0026】
前記一番移送螺旋25aの上手側には、二番物を再度該扱室9へ還元する二番移送螺旋26aを軸支内装した二番戸樋27を設け、該二番戸樋27の一方側の外側には、二番還元筒28aを設けて、二番物を再度前記扱室9へ還元して、この扱室9で再脱穀する構成である。
【0027】
前記扱室9の後方部で、前記揺動選別装置14の先端上部には、前記扱室9から排出される藁屑、及び稈切、又、該揺動選別装置14の上側部を移送される藁屑、及び稈切等を吸引して機外へ排出する吸引装置29を設けた構成としている。
【0028】
図2で示すように、前記選別送風室21の前方部に設けた風割23を、前後方向、及び上下方向にモータ30によって、移動可能構成している。
【0029】
上記により、風向、及び風量を調節して脱穀精度の条件適応性の向上を図る。
【0030】
図3で示すように、前記選別送風室21の前方部に設けた風割23には、モータ30を設け、風割23を上下に移動できる構成である。
【0031】
上記により、風向が変更できることにより、選別性能の向上を図ることができる。
【0032】
図4で示す前記風向調節板24と、風割23との両者が、同時に回動すべくロット等により、連接した構成である。
【0033】
これにより、風向、及び風量を調節して脱穀精度の条件適応性の向上を図る。
【0034】
図4で示すように、下通風案内板20bの下側部の円部分と、直線部分との結合部で分割し、直線部の上端部に折曲部20cを設け、この折曲部20c部が一番戸樋25の上端部に重合する構成にして、該直線部分を上下回動自在に設けた構成である。この上下回動は、モータ等によって、掻移動させる構成である。
【0035】
これにより、風向、及び風量を調節して、脱穀精度の条件適応性を向上させることができる。
【0036】
図5で示すように、前記下通風案内板20bと、前記風割23とは、ロット等により連接され、連動して同時に、回動移動する構成である。又、シーブの開度と連動して可動する構成である。
【0037】
これにより、風向、及び風量を調節して、脱穀精度の条件適応性を向上させることができる。
【0038】
図6で示す構成において、二番還元量を検出する二番還元量検知センサ26bを設け、還元量に連動して可動する構成である。
【0039】
これにより、二番の流量に応じて自動的に調節ができて便利である。
【0040】
前記脱穀機1で脱穀された穀粒を受けるグレンタンクの底部には、重量センサを設け、穀粒の溜まる速度と連動して、前記下通風案内版20bと、前記風割23とは、ロット等により連接され、連動して同時に、回動移動する構成である。
【0041】
前記脱穀機1の扱室9内に設けている排塵調節板に連動して、風向、風量を調節する構成である。又、該脱穀機1を駆動するエンジンの回転数に連動して可動する構成である。
【0042】
これにより、風向、及び風量を調節して、脱穀精度の条件適応性を向上させる。又、収量に応じて自動的に調節できる。
【0043】
前記脱穀機1の脱穀選別の構成において、前記唐箕羽根22の回転数(風量)に連動して可動する構成である。
【0044】
これにより、上記と同じように風割、及び風量を調節して、脱穀精度の条件適応性を向上させる。又、該唐箕羽根22の回転数と連動させることで自動的に調節できる。
【0045】
図7で示すように、脱穀機1の前記扱室9内の前記扱胴10の後方部で、又、揺動選別装置14の後端部の上方には、吸引装置29を設けた構成においては、該吸引装置29全体をモータ等により、上下移動可能に設けた構成である。
【0046】
これにより、前記吸引装置29を上下移動させることにより、二番還元量の減少、及び三番口ロスの低減を図る。
【0047】
例えば、本発明の脱穀機1をコンバイン等に乗載した時には、圃場でコーナー等で旋回時には、風割23が回動して、直立状態になる構成である。
【0048】
これにより、コンバイン等に本発明の脱穀機1を乗載した時であっても、後方への風量を落として、コーナーロスの減少を図る。
【0049】
前記吸引装置29のケーシング29aの吸気口29b部には、図8で示すように、開閉板29cを設け、開閉式とし、コーナー部では閉状態に操作出来る構成であり、この操作は手動、又は自動操作とする。
【0050】
これにより、三番飛散粒、及び二番還元量の大巾減少を図ることができる。
【0051】
前記吸引装置29のケーシング29aの吸気口29bを、図9で示すように、上方部上下方向の開閉式とし、下方部をスライド式の開閉式とした構成である。この開閉をモータ等により、自動開閉とした構成である。又、コーナーでの旋回時は閉じる。更に、シーブの開度に連動して可動する構成である。
【0052】
これにより、前記吸気口29b部の面積を変更可能としたことにより、二番還元量、及び三番ロスの低減を図ることができる。
【0053】
上記の発明の開閉は、唐箕回転数(風量)に連動して可動する構成である。
【0054】
これにより、前記吸引装置29を調整して、二番還元量を減少し、三番ロスの低減を図る構成である。
【0055】
前記二番還元筒28に、図1で示すように、二番還元量検出センサ28bを設け、二番還元量を検出させ、還元量に連動して可動する構成である。
【0056】
前述の構成において、排塵量を調節する排塵量調節板31において、該排塵量調節板31と連動して可動する構成である。
【0057】
これにより、前記吸引装置29のケーシング29aの回転数を調節して二番還元量の減少、及び三番口のロスの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 脱穀機
9 扱室
14 揺動選別装置
19 送風胴板
20a 上通風案内板
20b 下通風案内板
21 選別送風室
22 唐箕羽根
23 風割
24 風向調節板
25b 一番物回収部
26c 二番口回収部
C 後端部
イ 主選別風
ロ 補助選別風
ハ 先端部(下通風案内板)
ニ 下端部(風向調節板)
ホ 下端部(風割)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取り穀稈を脱穀する脱穀室(9)の下側に、選別処理物を揺動移送しながら粗選別する粗選別部を備え、該粗選別部から漏下した選別処理物を揺動移送しながら穀粒を一番物回収部(25b)に漏下させると共に二番物を移送方向下手側に配置した二番物回収部(26c)上に落下させる揺動選別装置(14)を設け、該揺動選別装置(14)の下側前部には、後端に開口部を有する筒状に形成した送風胴板(19)と、該送風胴板(19)の後端開口部の上下に接続する上通風案内板(20a)及び下通風案内板(20b)とで選別用送風室(21)を形成し、該選別用送風室(21)内には選別風を発生させる唐箕羽根(22)を回転自在に軸支し、前記上通風案内板(20a)と下通風案内板(20b)との間には、選別風を主選別風(イ)と補助選別風(ロ)とに分割する風割(23)を設け、前記上通風案内板(20a)の後端部(C)に風向調節板(24)の後端部を上下回動自在に取り付けたことを特徴とする脱穀機。
【請求項2】
前記下通風案内板(20b)を上下回動自在な構成としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀機。
【請求項3】
前記風向調節板(24)の前端部(ニ)と前記風割(23)の前端部(ホ)とを連動して上下回動自在な構成としたことを特徴とする請求項2記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−200175(P2011−200175A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71181(P2010−71181)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】