説明

脱穀装置の上部構造

【課題】連係リンクへの穀稈や長い穀稈片などの絡み付きを防止して送塵弁の揺動操作を良好に行えるようにする。
【解決手段】扱胴21の上部を覆う天板48の内面側に、処理物を扱胴21の回転に伴って脱穀処理方向の下手側に案内する複数の送塵弁57を脱穀処理方向に所定間隔をあけて整列配備し、各送塵弁57を、扱胴21の回転方向で同じ位置に設定した各揺動支点60を中心にした同時揺動操作が可能になるように連係リンク61により連動連結し、天板48に、収容空間S3を有するように天板48の外側に張り出す張出部48Aを形成し、張出部48Aを、天板48における張出部48Aの扱胴21回転方向上手側に形成した内面部分48Bから内面部分48Bによる処理物の案内方向に沿って延出する延長線Lの外側に連係リンク61が位置する状態で連係リンク61を収容するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀処理方向に沿う軸心を中心にして回転する扱胴の上部を覆う天板を備え、前記天板を、その内面が前記扱胴の回転に伴って処理物を前記扱胴の回転方向に流動案内する案内面として機能するように構成し、前記天板の内面側に、前記処理物を前記扱胴の回転に伴って脱穀処理方向の下手側に案内する複数の送塵弁を脱穀処理方向に所定間隔をあけて整列配備し、前記複数の送塵弁を、前記扱胴の回転方向で同じ位置に設定したそれぞれの揺動支点を中心にした同時揺動操作が可能になるように連係リンクを介して連動連結してある脱穀装置の上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような脱穀装置の上部構造では、複数の送塵弁を同時揺動操作可能に連動連結する連係リンクを、処理物を扱胴の回転方向に流動案内する天板の内面に沿って配備するように構成することが考えられていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−308365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、複数の送塵弁が位置する天板の内側に連係リンクを配備することから、連係リンクを天板の外側に配備する場合に比較して、連係リンクによる複数の送塵弁の連動連結を簡単に行うことができる。しかしながら、扱胴の回転に伴って処理物が扱胴の回転方向に流動する処理物の流動領域内に連係リンクが位置することにより、処理物に含まれる穀稈又は長い穀稈片などが連係リンクに絡み付いて送塵弁の揺動操作に支障を来す虞があった。
【0005】
本発明の目的は、連係リンクへの穀稈や長い穀稈片などの絡み付きを防止して、送塵弁の揺動操作を良好に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段では、
脱穀処理方向に沿う軸心を中心にして回転する扱胴の上部を覆う天板を備え、
前記天板を、その内面が前記扱胴の回転に伴って処理物を前記扱胴の回転方向に流動案内する案内面として機能するように構成し、
前記天板の内面側に、処理物を前記扱胴の回転に伴って脱穀処理方向の下手側に案内する複数の送塵弁を脱穀処理方向に所定間隔をあけて整列配備し、
前記複数の送塵弁を、前記扱胴の回転方向で同じ位置に設定したそれぞれの揺動支点を中心にした同時揺動操作が可能になるように連係リンクを介して連動連結してある脱穀装置の上部構造において、
前記天板に、前記連係リンクを収容する収容空間を有するように前記天板の外側に張り出す張出部を形成し、
前記張出部を、前記天板における前記張出部の扱胴回転方向上手側に形成した内面部分から前記内面部分による処理物の案内方向に沿って延出する延長線の外側に前記連係リンクが位置する状態で前記連係リンクを収容するように形成してある。
【0007】
この課題解決手段によると、天板の内側に連係リンクを配備しながらも、扱胴の回転に伴って処理物が天板の内面に沿って扱胴の回転方向に流動するようになる処理物の流動領域から外れた位置に連係リンクを位置させることができる。これにより、処理物に含まれる穀稈や長い穀稈片などの連係リンクへの絡み付きを防止することができる。
【0008】
その結果、各送塵弁の同時揺動操作を良好に行うことができ、各送塵弁の同時揺動操作による収穫する作物の脱粒性などに応じた脱穀処理時間の調整を適正に行うことができる。
【0009】
ちなみに、脱穀処理時間の調整は、例えば長粒米などの脱粒性の良い作物を収穫する場合には、各送塵弁による処理物の脱穀処理方向下手側への送り量を大きくして脱穀処理時間を短くすることにより、脱穀過多による穀粒の損傷を防止することができる。又、例えば晩期稲などの脱粒性の悪い作物を収穫する場合には、各送塵弁による処理物の脱穀処理方向下手側への送り量を小さくして脱穀処理時間を長くすることにより、未脱粒の発生を防止することができる。
【0010】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記複数の送塵弁における扱胴回転方向上手側の端部を前記連係リンクにより連動連結し、
前記張出部を、前記天板における扱胴回転方向上手側の横外側に向けて張り出すように形成してある。
【0011】
この課題解決手段によると、張出部を処理物の流動方向に対して反対向きに張り出させることから、天板の上側や扱胴回転方向下手側の横外側に向けて張り出させる場合に比較して、収納空間(張出部の内部空間)に処理物が流入する虞をより確実に防止することができる。これにより、処理物に含まれる穀稈や長い穀稈片などの連係リンクへの絡み付きをより確実に防止することができる。
【0012】
その結果、各送塵弁の同時揺動操作をより良好に行うことができ、各送塵弁の同時揺動操作による収穫する作物の脱粒性などに応じた脱穀処理時間の調整をより適正に行うことができる。
【0013】
本発明の第3の課題解決手段では、上記第1又は2の課題解決手段において、
前記複数の送塵弁の脱穀処理方向上手側からの手動による揺動操作を可能にする操作レバーを備え、
前記操作レバーを、前記複数の送塵弁のうちの脱穀処理方向上手側から2番目に位置する送塵弁の揺動支点に連結してある。
【0014】
この課題解決手段によると、電動モータや油圧シリンダなどのアクチュエータを用いることのない手動式の簡単かつ安価な構成で各送塵弁を同時に揺動操作することができる。その上、操作レバーを脱穀処理方向最上手側に位置する送塵弁の揺動支点に連結する場合に比較して、揺動支点から脱穀処理方向上手側に向けて延出する操作レバーの長さを長くすることができ、各送塵弁の同時揺動操作に要する操作力を軽減することができる。しかも、前述したように穀稈や長い穀稈片などの連係リンクへの絡み付きを防止できることから、穀稈や長い穀稈片などが連係リンクに絡み付くことに起因した操作荷重の上昇を回避することができる。
【0015】
従って、手動式の簡単かつ安価な構成でありながら各送塵弁の同時揺動操作を操作性良く行うことができる。
【0016】
本発明の第4の課題解決手段では、上記第3の課題解決手段において、
前記操作レバーを操作部付きの固定ボルトで任意の操作位置に固定するように構成してある。
【0017】
この課題解決手段によると、操作レバーを任意の操作位置に簡単かつ強固に固定することができる。つまり、操作レバーにバネ板を採用してバネ板の弾性で操作レバーを任意の操作位置に係合保持するように構成した場合には、脱穀負荷が増大したときに弾性による操作レバーの任意の操作位置での係合保持が不測に解除される不都合を招く虞があるが、この課題解決手段では、操作レバーを任意の操作位置に固定ボルトで強固に固定できることから、脱穀負荷が増大した場合であっても操作レバーを脱穀負荷に抗して任意の操作位置に保持することができる。
【0018】
その結果、操作レバーにより設定した各送塵弁の操作状態を脱穀負荷にかかわらず安定して維持することができ、収穫する作物の脱粒性などに応じて調整した脱穀処理時間による適切な脱穀処理を安定して行うことができる。
【0019】
本発明の第5の課題解決手段では、上記第1〜4の課題解決手段のいずれか一つにおいて、
少なくとも前記天板における脱穀処理方向最上手側に位置する送塵弁と脱穀処理方向上手側から2番目に位置する送塵弁との間に位置する天板部分に接合するように形成した補強用のカバー部材を前記天板に着脱可能に取り付けてある。
【0020】
この課題解決手段によると、脱穀時に、未脱粒穀稈を供給する脱穀処理方向上手側において大量に発生する処理物を、脱穀処理方向最上手側の送塵弁と脱穀処理方向上手側から2番目の送塵弁とがそれらの間に流動案内することにより、脱穀処理方向最上手側の送塵弁と脱穀処理方向上手側から2番目の送塵弁との間に位置する天板部分に大量の処理物が激しく接触して、その天板部分が摩耗するようになったとしても、前記天板部分にはカバー部材を取り付けていることから、前記天板部分に大量の処理物が激しく接触することに起因した前記天板部分での破れの発生を効果的に抑制することができる。
【0021】
そして、長期にわたる使用で前記天板部分に破れが発生した場合には、カバー部材を新しいものに交換することで、天板を交換することなく簡単かつ安価に修復することができる。
【0022】
その結果、脱穀装置の長期にわたる使用を可能にすることができ、特に、収量が多い上に脱粒性が悪くて稈身が長いことなどにより天板の耐久性に悪影響を及ぼし易い晩期稲などを多く収穫する地域での使用に適したものにすることができる。
【0023】
本発明の第6の課題解決手段では、上記第5の課題解決手段において、
前記カバー部材を前記天板の脱穀処理方向上手側部に外側から接合するように形成し、前記カバー部材における前記天板部分との接合箇所を補強する当板を前記カバー部材に接合してある。
【0024】
この課題解決手段によると、脱穀処理方向最上手側の送塵弁と脱穀処理方向上手側から2番目の送塵弁との間に位置する天板部分だけでなく、天板の脱穀処理方向上手側部での大量の処理物が激しく接触することに起因した破れの発生を効果的に抑制することができる。しかも、脱穀処理方向最上手側の送塵弁と脱穀処理方向上手側から2番目の送塵弁との間に位置する天板部分は、天板とカバー部材と当板とによる3重構造になることから、前記天板部分に大量の処理物が激しく接触することに起因した前記天板部分での破れの発生をより効果的に抑制することができる。
【0025】
そして、長期にわたる使用で、天板の脱穀処理方向上手側部に破れが発生した場合には、カバー部材を当板とともに新しいものに交換することで、天板を交換することなく簡単かつ安価に修復することができる。しかも、カバー部材は天板の脱穀処理方向上手側部に外側から接合するものであることから、カバー部材を天板の内側に接合させるように構成した場合にカバー部材の交換時に要するようになる複数の送塵弁を取り外す手間を無くすことができる。
【0026】
その結果、脱穀装置のより長期にわたる使用を可能にすることができ、収量が多い上に脱粒性が悪くて稈身が長いことなどにより天板の耐久性に悪影響を及ぼし易い晩期稲などを多く収穫する地域での使用に更に適したものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】全稈投入型コンバインの左側面図である。
【図2】全稈投入型コンバインの平面図である。
【図3】脱穀装置の縦断左側面図である。
【図4】脱穀装置の平面図である。
【図5】脱穀装置の上部構造を示す縦断正面図である。
【図6】一部を分解した脱穀装置の上部構造を示す縦断正面図である。
【図7】脱穀装置の一部縦断背面図である。
【図8】脱穀カバーを開いた状態の脱穀装置の斜視図である。
【図9】脱穀カバーの開閉構造を示す要部の横断平面図である。
【図10】張出部を天板の上方に向けて張り出すように形成した別実施形態を示す要部の縦断正面図である。
【図11】張出部を天板における扱胴回転方向下手側の横外側に向けて張り出すように形成した別実施形態を示す要部の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る脱穀装置の上部構造を、コンバインの一例である全稈投入型のコンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
図1及び図2に示すように、全稈投入型のコンバインは、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して車体フレーム1を構成し、車体フレーム1における前部の右側領域に搭乗運転部2を形成してある。車体フレーム1の下部には左右一対のクローラ式走行装置3を装備してある。車体フレーム1における左側の前端部には、作業走行時に車体の前方に位置する水稲や麦あるいは菜種などの作物の穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送部4を、左右向きの第1軸心P1を支点にした昇降揺動が可能となるように連結してある。車体フレーム1の左半部には、刈取搬送部4が搬送する刈り取り後の穀稈(以下、未脱粒穀稈と称する)を受け入れて脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置5を搭載してある。車体フレーム1の右後部には、揚送スクリュー6により脱穀装置5から搬出した単粒化穀粒を貯留して籾袋への詰め込みを可能にする袋詰装置7を搭載してある。
【0030】
搭乗運転部2は、その前端部位に立設したフロントパネル8に操縦レバー9などを備えている。搭乗運転部2の左端部位に立設したサイドパネル10に主変速レバー11や副変速レバー12などを備えている。搭乗運転部2の後側部位に運転座席13を配備してある。操縦レバー9は、左右方向への揺動操作により車体操向用の操作具として機能し、前後方向への揺動操作により刈取搬送部昇降用の操作具として機能する。
【0031】
左右のクローラ式走行装置3は、操縦レバー9の左右方向への揺動操作に基づいて、それらが等速作動する直進状態と差動する旋回状態とに切り換わるように構成してある。
【0032】
刈取搬送部4は、車体の走行に伴って、その前部の左右両端に配備したデバイダ14によって未刈り穀稈を収穫対象の穀稈と収穫対象外の穀稈とに梳き分ける。又、刈取搬送部4の前部上方に配備した回転リール15によって収穫対象穀稈の穂先側を後方に向けて掻き込み、刈取搬送部4の底部に装備したバリカン型の切断装置16によって収穫対象穀稈の株元側を切断して、収穫対象の穀稈を刈り取る。そして、切断機構16の後方に配備したオーガ17によって未脱粒穀稈を左右方向の所定箇所に寄せ集めて後方に送り出し、その所定箇所から脱穀装置5にわたるように架設した掻き上げ搬送式のフィーダ18によって未脱粒穀稈を脱穀装置5に供給する。
【0033】
刈取搬送部4の昇降揺動は、車体フレーム1とフィーダ18とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ19の伸縮作動で行う。昇降シリンダ19は、操縦レバー9の前後方向への揺動操作に基づいて伸縮作動するように構成してある。つまり、操縦レバー9を前後方向に揺動操作して昇降シリンダ19を伸縮作動させることにより、未刈り穀稈に対する切断機構16の高さ位置を変更する刈り高さ調節などを行うことができる。
【0034】
図1〜3に示すように、脱穀装置5には、フィーダ18が供給する未脱粒穀稈に脱穀処理を施す脱穀部5A、脱穀処理で得た選別対象の処理物に選別処理を施す選別部5B、及び、選別処理で得た回収対象の処理物を回収する回収部5Cを備えてある。この脱穀装置5においては、脱穀部5Aの脱穀処理方向及び選別部5Bの選別処理方向が車体の前後方向と一致し、脱穀処理方向の上手側及び選別処理方向の上手側が車体の前側に位置するように設定してある。
【0035】
脱穀部5Aは、脱穀装置5の上部に形成した扱室20にバータイプの扱胴21を前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転するように配備して構成してある。扱室20の前下部には、フィーダ18が掻き上げ搬送した未脱粒穀稈の扱室20への供給を可能にする供給口22を形成してある。扱室20の後下部には、脱穀処理後の穀稈(以下、脱粒穀稈と称する)の扱室20からの排出を可能にする排稈口23を形成してある。扱室20は、扱胴21を支持する前支持板24と後支持板25、扱胴21の上部を上方から覆う上部カバー26、及び、扱胴21を下方から覆う前後方向視U字状の受網27などによって区画形成してある。
【0036】
選別部5Bは、後端部に備えた偏心カム式の駆動機構28が作動することで前後方向に選別揺動する揺動選別機構29を受網27の下方に配備してある。又、左右向きの第3軸心P3を支点にして左側面視左回りに回転することで選別風を発生させる唐箕30を揺動選別機構29の前下方に配備してある。揺動選別機構29は、選別揺動しながら受網27から漏下した処理物などを受け止めることで、受け止めた処理物を選別対象の処理物として選別処理方向下手側に移送しながら篩い選別する。唐箕30は、その回転で発生させた選別風を受網27から漏下した処理物や揺動選別機構29による選別処理中の処理物に選別処理方向上手側から供給することで、それらの処理物を選別対象の処理物として風力選別する。
【0037】
回収部5Cは、揺動選別機構29の選別処理方向上手側の下方に1番回収部31を形成してある。又、揺動選別機構29の選別処理方向下手側の下方に2番回収部32を形成してある。1番回収部31は、側面視底窄まり形状に形成してあり、揺動選別機構29の選別処理方向上手側から流下した単粒化穀粒を1番物として底部に流下案内する。1番回収部31の底部には、1番物搬出用の1番スクリュー33を左右向きに配備してある。1番スクリュー33は、1番回収部31の底部に流下した1番物を、1番スクリュー33の右端部に連通接続した揚送スクリュー6に搬送する。2番回収部32は、側面視底窄まり形状に形成してあり、揺動選別機構29の選別処理方向下手側から流下した枝梗付き穀粒などを2番物として底部に流下案内する。2番回収部32の底部には、2番物搬出用の2番スクリュー34を左右向きに配備してある。2番スクリュー34は、2番回収部32の底部に流下した2番物を、2番スクリュー34の右端部に連通接続した2番還元機構35に搬送する。
【0038】
2番還元機構35は、2番スクリュー34が搬送した2番物に再び脱穀処理を施す再処理部(図示せず)を備え、この再処理部による脱穀処理後の2番物を揚送して揺動選別機構29に還元する。
【0039】
図3に示すように、扱胴21は、その中心軸36に掻込部37と扱き処理部38とを中心軸36の軸心である第2軸心P2を中心にして一体回転するように備えて構成してある。中心軸36は、前支持板24と後支持板25とにわたって第2軸心P2を中心にして回転するように架設してある。
【0040】
掻込部37は、円錐台状に形成した胴部分39を備えており、この胴部分39の外周面に2枚の螺旋歯40を溶接してある。これにより、掻込部37は、前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転することにより、フィーダ18が搬送した未脱粒穀稈の全体を、2枚の螺旋歯40により供給口22から扱室20の内部に掻き入れて扱き処理部38と受網27との間の扱き処理空間S1に供給するように構成してある。胴部分39における短径側の端部には、円盤状の前壁部材41を中心が一致するように溶接してある。
【0041】
扱き処理部38は、円盤状に形成した第1中壁部材42と第2中壁部材43と後壁部材44とを備えている。これらの壁部材42〜44は、第2軸心P2を中心にして前後方向に設定間隔をあけて並べた状態で中心軸36に溶接してある。これらの壁部材42〜44の外周部には、複数(例えば6本)の扱歯支持部材45を、中心軸36に沿う前後向きの姿勢で、かつ、中心軸36からの距離が等距離になる状態で、扱胴21の周方向に一定間隔をあけて並ぶように連結してある。各扱歯支持部材45には、複数の扱歯46を、扱歯支持部材45から扱胴21の外方に向けて突出する姿勢で、前後方向に設定間隔をあけて並ぶように配備してある。扱歯支持部材45には、丸棒鋼材、角棒鋼材、角パイプ鋼材、アングル材、又はチャンネル材などの棒状部材を採用することができる。各扱歯46には、丸棒鋼材、角棒鋼材、丸パイプ材、又は角パイプ材などの棒状部材を採用することができる。
【0042】
つまり、扱き処理部38は、受網27との間の扱き処理空間S1に連通する内部空間S2を備えた籠状で、かつ、外方に向けて突出する複数の扱歯46を扱き処理部38の周方向と前後方向とに設定間隔をあけて整列した状態で装備するように構成してある。
【0043】
これにより、扱き処理部38は、前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視左回りに回転することにより、受網27との間の扱き処理空間S1に位置する未脱粒穀稈に扱歯支持部材45及び扱歯46の打撃や扱歯46の梳き込みなどによる脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物の内部空間S2への入り込みを許容し、扱き処理空間S1の処理物と内部空間S2の処理物とを攪拌しながら、これらの処理物に扱歯支持部材45及び扱歯46の打撃や扱歯46の梳き込みなどによる脱穀処理を施すようになる。
【0044】
そして、内部空間S2を備えることにより、大量の未脱粒穀稈を扱室20に供給した場合であっても、その内部空間S2を脱穀処理用の処理空間に使用できることから、処理空間での処理物の滞留や処理空間の飽和を回避することができる。これにより、処理物の滞留や処理空間の飽和に起因して十分な脱穀処理が行われないまま処理物が受網27から漏下する、あるいは、脱穀処理に要する負荷が増大して扱胴21に対する伝動系が損傷する、などの不都合の発生を未然に回避することができる。
【0045】
又、複数の扱歯46だけでなく複数の扱歯支持部材45までもが、扱室内の処理物に作用する扱き処理部材として機能することから、脱穀性能や脱穀効率の向上を図ることができる。
【0046】
第1中壁部材42は、扱き処理部38の前端に位置するように中心軸36に溶接してあり、第1中壁部材42の外周部に、各扱歯支持部材45の一端部とともに掻込部37の後端をボルト連結してある。第2中壁部材43は、扱き処理部38の前後中間部に位置するように中心軸36に溶接してあり、第2中壁部材43の外周部に各扱歯支持部材45の前後中間部をボルト連結してある。後壁部材44は、扱き処理部38の後端に位置するように中心軸36に溶接してあり、第2中壁部材43の外周部に各扱歯支持部材45の他端部をボルト連結してある。
【0047】
各扱歯支持部材45は、その前後方向を扱胴21の前後方向と一致させた通常姿勢と、その前後方向を扱胴21の前後方向と逆にした反転姿勢とに向き変更可能に構成してある。そして、隣り合う扱歯支持部材45の前後向きが逆になるように、第1及び第2中壁部材42,43並びに後壁部材44にボルト連結してある。
【0048】
各扱歯46は、隣り合う扱歯支持部材45の前後向きを逆にした場合に、隣り合う扱歯支持部材45の扱歯46と前後方向に半ピッチ分だけ位置ずれした状態で位置するように配置設定してある。
【0049】
扱室20の前下部には、供給口22に供給された未脱粒穀稈を受け止めて、掻込部37による未脱粒穀稈の扱き処理空間S1への掻き入れ供給を補助する補助板47を配備してある。
【0050】
受網27は、格子状に形成したコンケーブ受網であり、扱胴21との間の扱き処理空間S1に供給された未脱粒穀稈を受け止めて扱胴21の回転による脱穀処理を補助し、この脱穀処理で得た単粒化穀粒や枝梗付き穀粒、あるいは、脱穀処理で発生した稈屑などを下方の揺動選別機構29に向けて漏下させる一方で、脱粒穀稈などの揺動選別機構29への漏下を防止する。
【0051】
図3〜6に示すように、上部カバー26は、扱歯46の先端が描く回転軌跡Kに略沿うように屈曲形成した天板48などにより構成した板金製である。天板48の前端には前側板49を溶接してある。天板48の後端には後側板50を溶接してある。天板48の左右両端部には、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して構成した脱穀装置5の固定フレーム51に連結する連結板52を溶接してある。そして、左側の連結板52を、前後方向に一定間隔をあけて配備した3つのヒンジ53を介して固定フレーム51に連結してある。これにより、各ヒンジ53の共通軸心である前後向きの第4軸心P4を支点にした開閉操作が可能となるように構成してある。右側の連結板52には、固定フレーム51に螺合する3本のバーハンドル付きの固定ボルト54を前後方向に一定間隔をあけて装備してある。つまり、各固定ボルト54を固定フレーム51に螺合することで上部カバー26を閉じ姿勢で固定することができる。
【0052】
左右の連結板52には、天板48の内面と受網27の内面とに連なる案内面を有するように形成した板金製の継目部材55を着脱可能にボルト連結してある。左右の継目部材55は、前後方向に4等分した4分割構造である。つまり、受網27と天板48との継ぎ目に位置することで処理物との接触が激しく摩耗し易い継目部材55を4等分の分割構造で着脱可能に構成したことにより、継目部材55の摩耗に対する処置を簡単かつ経済的に行うことができる。
【0053】
天板48は、扱胴21の上部を覆う状態では、その内面が扱胴21の回転に伴って処理物を扱胴21の回転方向に流動案内する案内面として機能するように形成してある。そして、天板48の内面側には、扱胴21の回転に伴って扱胴21の回転方向に流動する処理物を脱穀処理方向の下手側に案内する案内板56と複数の送塵弁57とを装備してある。案内板56は、天板48の前端部に所定の案内姿勢で固定してある。
【0054】
天板48における扱胴回転方向下手側の所定位置には、天板48の前後両端にわたる前後長さで天板48に外側から接合する補強用の帯板58を溶接してある。そして、送塵弁57と同数のボス59を前後方向に一定間隔をあけた状態で整列配備してある。各ボス59には、送塵弁57に一体装備した縦向きの支軸60を相対回動可能に挿通して抜け止め固定してある。各送塵弁57は、それらの揺動支点となる支軸60を中心にした同時揺動操作が可能になるように、それらの扱胴回転方向上手側の端部を連係リンク61を介して連動連結してある。各支軸60のうち、脱穀処理方向上手側から2番目に位置する支軸60には、この支軸60を介して送塵弁57と一体揺動する操作レバー62を、支軸60から脱穀処理方向上手側に位置する搭乗運転部2に向けて延出するように取り付けてある。天板48の前端側には、操作レバー62の遊端側を左右揺動可能に受け止め支持する台座63を配備してある。台座63は、バーハンドル付きの固定ボルト64を備えている。そして、この固定ボルト64により、操作レバー62を3つの操作位置のうちの任意の操作位置に固定できるように構成してある。
【0055】
この構成により、搭乗運転部2から操作レバー62及び固定ボルト64を操作することができ、操作レバー62を操作することで、天板48の内面側に脱穀処理方向に一定間隔をあけて整列配備した複数の送塵弁57を、扱胴21の回転方向で同じ位置に位置するように設定したそれぞれの支軸60を中心にして同時に揺動操作することができ、この揺動操作により、脱穀処理中の処理物の各送塵弁57による脱穀処理方向下手側への送り量を調節することができる。そして、固定ボルト64で操作レバー62をいずれかの操作位置に固定することにより、各送塵弁57を操作レバー62の操作位置に応じた所定の案内姿勢に固定保持することができる。
【0056】
その結果、例えば長粒米などの脱粒性の良い作物を収穫する場合には、各送塵弁57による処理物の脱穀処理方向下手側への送り量が大きくなるように操作レバー62及び固定ボルト64を操作することにより、脱粒性の良い処理物に対する脱穀処理時間を短くすることができ、脱穀過多による穀粒の損傷などを防止することができる。逆に、例えば晩期稲などの脱粒性の悪い作物を収穫する場合には、各送塵弁57による処理物の脱穀処理方向下手側への送り量が小さくなるように操作レバー62及び固定ボルト64を操作することにより、脱粒性の悪い処理物に対する脱穀処理時間を長くすることができ、未脱粒の発生などを防止することができる。
【0057】
そして、操作レバー62を脱穀処理方向上手側から2番目の支軸60に取り付けたことにより、操作レバー62を脱穀処理方向最上手側の支軸60に取り付ける場合に比較して、操作レバー62の支軸60からの延出長さを長くすることができ、各送塵弁57の同時揺動操作に要する操作力を軽減することができる。又、操作レバー62の固定を固定ボルト64で強固に行えることから、脱穀処理量が多くなって脱穀負荷が増大した場合であっても、脱穀負荷に抗して操作レバー62を任意の操作位置に保持することができ、各送塵弁57を操作レバー62で設定した所定の案内姿勢に安定して維持することができ、収穫する作物の脱粒性などに応じて調整した脱穀処理時間による適切な脱穀処理を安定して行うことができる。
【0058】
図4〜6に示すように、天板48には、連係リンク61を収容する収容空間S3を確保するために、天板48での扱胴回転方向上手側となる左側の横外側に向けて張り出す張出部48Aを形成してある。張出部48Aは、縦板部分48aと底面部分48bとを備えて、連係リンク61の各送塵弁57の姿勢変更に伴う左右方向への変位にかかわらず、天板48における張出部48Aの扱胴回転方向上手側に形成した内面部分48Bからこの内面部分48Bによる処理物の案内方向に沿って延出する延長線Lの外側に連係リンク61が位置する状態で連係リンク61を収容するように形成してある。
【0059】
これにより、各送塵弁57に直接的に連結することができる天板48の内側に連係リンク61を配備しながらも、扱胴21の回転に伴って処理物が天板48の内面に沿って扱胴の回転方向に流動するようになる処理物の流動領域(延長線Lの内側の領域)Rから外れた位置に連係リンク61を位置させることができ、処理物に含まれる穀稈や長い穀稈片などが連係リンク61に絡み付くことを防止することができる。その結果、操作レバー62による各送塵弁57の同時揺動操作を良好に行うことができ、各送塵弁57の同時揺動操作による収穫する作物の脱粒性などに応じた脱穀処理時間の調整を適正に行うことができる。
【0060】
又、張出部48Aの底面部分48bは、底面部分48bと前述した内面部分48Bとで、処理物の流動領域Rと収容空間S3とを仕切る横向きV字状の仕切壁部分を構成するように形成してある。これにより、扱胴21の回転に伴って流動する処理物が流動領域Rから収容空間S3に流入する虞を生じ難くすることができ、処理物に含まれる穀稈や長い穀稈片などが連係リンク61に絡み付くことをより確実に防止することができる。
【0061】
図1、図2及び図4〜6に示すように、天板48の前半部には、前半部の全域を外側から覆うように前半部に接合する板金製のカバー部材65を着脱可能にボルト連結してある。カバー部材65は、天板48の前半部における張出部48Aから扱胴回転方向下手側(左側)の外面に接合するように屈曲形成した第1カバー体66と、天板48の前半部における張出部48Aから扱胴回転方向上手側(右側)の外面に接合するように屈曲形成した第2カバー体67とからなる左右2分割構造に構成してある。第1カバー体66は、その左側の端縁部66Lを左側の継目部材55とともに天板48に共締め連結してある。第2カバー体67は、その右側の端縁部67Rを右側の継目部材55とともに天板48に共締め連結してある。そして、張出部48Aに接合する第1カバー体66の右側の端縁部66Rと第2カバー体67の左側の端縁部67Lとを、張出部48Aの縦板部分48aに共締め連結してある。尚、第1カバー体66の右側の端縁部66Rと第2カバー体67の左側の端縁部67Lとの前後中間側の共締め連結箇所は、連係リンク61を摺動可能に受け止め支持するように天板48の前後2箇所に装備した左右向きの支持部材68のうちの前側の支持部材68の右端部とともに張出部48Aの縦板部分48aに共締め連結してある。第1カバー体66の左右中央箇所には、補強用の帯板58を接合した天板48との密接を可能にするために上向きに膨出する膨出部66Aを形成してある。そして、膨出部66Aにおける各ボス59との対応箇所には、各ボス59の挿通を許容する丸孔66aを穿設してある。
【0062】
第1カバー体66の左側の外面には、板金製の第1当板69を、第1カバー体66の左側の端縁部66Lと膨出部66Aとの間に位置するように溶接してある。第1当板69は、その脱穀処理方向の長さLx1を、各送塵弁57による処理物の脱穀処理方向下手側への案内量を最大にした状態での脱穀処理方向最上手側に位置する送塵弁57の扱胴回転方向上手側の端部と脱穀処理方向上手側から2番目に位置する送塵弁57の扱胴回転方向下手側の端部とにわたる長さLxaよりも長い長さに設定してある。又、その扱胴回転方向の長さLy1を、左側の端縁部66Lと第1カバー体66の膨出部66Aとにわたる長さLyaに設定してある。
【0063】
第1カバー体66の右側の外面には、板金製の第2当板70を、第1カバー体66の膨出部66Aと右側の端縁部66Rとの間に位置するように溶接してある。第2当板70は、その脱穀処理方向の長さLx2を第1当板69の脱穀処理方向の長さLx1と同じ長さに設定してある。又、その扱胴回転方向の長さLy2を、第1カバー体66の膨出部66Aと右側の端縁部66Rとにわたる長さLybに設定してある。
【0064】
第2カバー体67の外面には、板金製の第3当板71を、第2カバー体67の左側の端縁部67Lと右側の端縁部67Rとの間に位置するように溶接してある。第3当板71は、その脱穀処理方向の長さLx3を第1当板69の脱穀処理方向の長さLx1及び第2当板70の脱穀処理方向の長さLx2と同じ長さに設定してある。又、その扱胴回転方向の長さLy3を、第2カバー体67の左側の端縁部67Lと右側の端縁部67Rとにわたる長さLycに設定してある。
【0065】
この構成により、脱穀処理中に、未脱粒穀稈を供給する脱穀部5Aの脱穀処理方向上手側において大量に発生する処理物が、扱胴21の回転に伴って天板48の前半部に激しく接触して、その天板48の前半部が摩耗するようになったとしても、天板48の前半部にはカバー部材65を取り付けていることから、天板48の前半部に大量の処理物が激しく接触することに起因した天板48の前半部での破れの発生を効果的に抑制することができる。
【0066】
又、脱穀処理方向上手側において大量に発生する処理物を、脱穀処理方向最上手側の送塵弁57と脱穀処理方向上手側から2番目の送塵弁57とがそれらの間に流動案内することにより、脱穀処理方向最上手側の送塵弁57と脱穀処理方向上手側から2番目の送塵弁57との間に位置する脱穀処理方向上手側の天板部分48Cに大量の処理物がより激しく接触して、その天板部分48Cがより激しく摩耗するようになったとしても、その天板部分48Cは、天板48とカバー部材65と各当板69〜71あるいは補強用の帯板58とによる3重構造であることから、その天板部分48Cに大量の処理物が激しく接触することに起因した天板部分48Cでの破れの発生を効果的に抑制することができる。
【0067】
そして、長期にわたる使用で天板48の前半部において破れが発生した場合には、操作レバー62を取り外し、カバー部材65のボルト連結箇所を連結解除して、カバー部材65を各当板69〜71及び台座63とともに新しいものに交換することで、天板48を簡単かつ安価に修復することができる。
【0068】
図1及び図7に示すように、後支持板25と上部カバー26の後側板50とにわたって、上部カバー26の開き操作をアシストするガスダンパ72を架設してある。ガスダンパ72は、上部カバー26の開度を最大にする最大伸長状態であっても、後側板50との連結点Paが上部カバー26の開閉揺動支点である第4軸心P4よりも脱穀装置5の左右中心側に位置するように後側板50との連結位置を設定してある。
【0069】
図1、図2、図4及び図7〜9に示すように、固定フレーム51の左後端上部には、脱穀部5Aの左側板として機能する内側板73Aを備えた脱穀カバー73を、上下の支点ピン74を介して、各支点ピン74の共通軸心である上下向きの第5軸心P5を支点にした開閉操作が可能となるように連結してある。固定フレーム51には、コの字状に屈曲形成したロッド75を固定フレーム51に載置した状態での係止保持を可能にする前後2つの貫通孔51a,51bを穿設してある。脱穀カバー73には、ロッド75の挿通を許容する貫通孔76aを穿設した係止片76を溶接してある。そして、脱穀カバー73を開き操作した場合には、ロッド75の両端を固定フレーム後側の貫通孔51bと脱穀カバー側の貫通孔76aとに挿通してロッド75を固定フレーム51と脱穀カバー73とに渡し掛けることにより、脱穀カバー73を所定の開き姿勢で固定することができる。
【0070】
図2及び図7に示すように、脱穀装置5の右側板77には、2番還元機構35が揚送した2番物を受け入れる2番還元口77aを形成した2番還元部77Aを右側板77から右外方に張り出すように形成してある。2番還元部77Aは、2番還元口77aが扱胴21の回転中心である第2軸心P2よりも下側に位置するように形成してある。
【0071】
つまり、例えば2番還元口77aを第2軸心P2よりも上側に形成する場合には、2番還元機構35が揚送した2番物を、受網27の起立部分と脱穀装置5の右側板77との間の比較的狭い空間から揺動選別機構29に還元することになる。そのため、揺動選別機構29に還元する2番物が受網27の起立部分と脱穀装置5の右側板77との間で詰まる、あるいは、2番還元機構35が揚送した2番物を左右方向に分散した状態で揺動選別機構29に還元することができないなどの不都合を招く虞が高くなる。
【0072】
これに対し、この脱穀装置5では、2番還元口77aを第2軸心P2よりも下側に形成することから、2番還元機構35が揚送した2番物を、受網27の湾曲部分と脱穀装置5の右側板77との間の比較的広い空間から揺動選別機構29に還元することができる。これにより、揺動選別機構29に還元する2番物を受網27と脱穀装置5の右側板77との間に詰まり難くすることができる。又、2番還元機構35が揚送した2番物を左右方向に分散した状態で揺動選別機構29に還元することができる。
【0073】
図3に示すように、揺動選別機構29は、その上部に粗選別用のグレンパン78とチャフシーブ79とストローラック80とをその順に選別処理方向の上手側から配備して粗選別部29Aを形成してある。又、その下部に精選別用のグレンパン81とグレンシーブ82とをその順に選別処理方向の上手側から配備して精選別部29Bを形成してある。
【0074】
チャフシーブ79には、揺動選別機構29の左側部に備えた操作具(図示せず)を揺動操作することにより、その操作に連動して前後方向に一定間隔をあけて整列配備した複数のチャフリップ板83が、それらの各上部に備えた支軸84を支点にして同時に上下揺動して、前後に隣接するチャフリップ板83が形成する処理物流下経路79aの開度を一律に変更するように構成した開度調節式のものを採用してある。そして、チャフシーブ79は、処理物流下経路79aからの穀粒の流下を促進させるために、前後に隣接するチャフリップ板83の間隔Gが、駆動機構28の作動で揺動選別機構29が前後方向に移動する距離Laよりも大きくになるように構成してある。
【0075】
図3及び図7に示すように、受網27の後端部を支持する板状の後支持部材85には、受網27から漏下した穀粒や揺動選別機構29が移送する穀粒が揺動選別機構29の後端から撥ね出すことによる3番ロスの発生を防止する撥出防止板86を、後支持部材85の下部から後下方に向けて延出する支持板87を介して取り付けてある。撥出防止板86には、後支持部材85の左右両端にわたる長さで可撓性を有するゴム板などを採用してある。そして、撥出防止板86は、揺動選別機構29の後端から稈屑などが流出する際の邪魔にならないように、揺動選別機構29が最後方まで揺動変位したときに揺動選別機構29の後端に接するように配置設定してある。
【0076】
図1〜3に示すように、脱穀装置5の後端下部には、板金製の排稈カバー88を排稈口23を後方から覆うように配備してある。排稈カバー88は、排稈口23から流出した脱粒穀稈などを、篩い選別及び風力選別により揺動選別機構29の後方に搬出した稈屑などとともに下方に案内し、下部に形成した排出口89から外部に排出するように形成してある。
【0077】
〔別実施形態〕
【0078】
〔1〕図10に示すように、張出部48Aを天板48の上方に向けて張り出すように形成してもよい。又、図11に示すように、張出部48Aを天板48における扱胴回転方向下手側の横外側に向けて張り出すように形成してもよい。そして、これらの構成においても、張出部48Aは、連係リンク61の各送塵弁57の姿勢変更に伴う左右方向への変位にかかわらず、天板48における張出部48Aの扱胴回転方向上手側に形成した内面部分48Bからこの内面部分48Bによる処理物の案内方向に沿って延出する延長線Lの外側に連係リンク61が位置する状態で連係リンク61を収容する。
【0079】
〔2〕扱胴21としては、円筒状に形成した胴体部材の外周に螺旋歯や扱歯などを装備して構成したドラムタイプのものであってもよい。又、扱胴21の後端部に配備する扱歯46が、その突出端側ほど扱胴回転方向下手側に位置する後退角を有するように構成したものであってもよい。更に、前後向きの第2軸心P2を支点にして背面視右回りに回転するように構成したものであってもよい。
【0080】
〔3〕天板48を、扱歯46の先端が描く回転軌跡Kに沿って又は略沿って湾曲するように形成してもよい。
【0081】
〔4〕各送塵弁57の揺動操作を電動モータや油圧シリンダなどのアクチュエータで行うように構成してもよい。
【0082】
〔5〕操作部付きの固定ボルト64としてノブ付きボルトや蝶ボルトなどを採用してもよい。
【0083】
〔6〕カバー部材65の厚み、大きさ、形状、構成などは種々の変更が可能である。例えば、カバー部材65を、天板48における脱穀処理方向最上手側に位置する送塵弁57と脱穀処理方向上手側から2番目に位置する送塵弁57との間に位置する天板部分48Cのみに接合するように形成してもよい。又、カバー部材65を、脱穀処理方向上手側から2番目に位置する送塵弁57の脱穀処理方向下手側の端部から脱穀処理方向上手側に位置する天板部分に接合するように形成してもよい。更に、カバー部材65を、1枚の板金材で形成してもよく、又、3分割以上の分割構造に構成してもよい。
【0084】
〔7〕当板69〜71の厚み、大きさ、形状、枚数などは種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る脱穀装置の上部構造は、全稈投入型のコンバインや自脱型のコンバインあるいはハーベスタなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
21 扱胴
48 天板
48A 張出部
48B 内面部分
48C 天板部分
57 送塵弁
60 揺動支点
61 連係リンク
62 操作レバー
64 操作部付きの固定ボルト
65 カバー部材
69 当板
70 当板
71 当板
L 延長線
S3 収容空間
P2 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀処理方向に沿う軸心を中心にして回転する扱胴の上部を覆う天板を備え、
前記天板を、その内面が前記扱胴の回転に伴って処理物を前記扱胴の回転方向に流動案内する案内面として機能するように構成し、
前記天板の内面側に、処理物を前記扱胴の回転に伴って脱穀処理方向の下手側に案内する複数の送塵弁を脱穀処理方向に所定間隔をあけて整列配備し、
前記複数の送塵弁を、前記扱胴の回転方向で同じ位置に設定したそれぞれの揺動支点を中心にした同時揺動操作が可能になるように連係リンクを介して連動連結してある脱穀装置の上部構造であって、
前記天板に、前記連係リンクを収容する収容空間を有するように前記天板の外側に張り出す張出部を形成し、
前記張出部を、前記天板における前記張出部の扱胴回転方向上手側に形成した内面部分から前記内面部分による処理物の案内方向に沿って延出する延長線の外側に前記連係リンクが位置する状態で前記連係リンクを収容するように形成してある脱穀装置の上部構造。
【請求項2】
前記複数の送塵弁における扱胴回転方向上手側の端部を前記連係リンクにより連動連結し、
前記張出部を、前記天板における扱胴回転方向上手側の横外側に向けて張り出すように形成してある請求項1に記載の脱穀装置の上部構造。
【請求項3】
前記複数の送塵弁の脱穀処理方向上手側からの手動による同時揺動操作を可能にする操作レバーを備え、
前記操作レバーを、前記複数の送塵弁のうちの脱穀処理方向上手側から2番目に位置する送塵弁の揺動支点に連結してある請求項1又は2に記載の脱穀装置の上部構造。
【請求項4】
前記操作レバーを操作部付きの固定ボルトで任意の操作位置に固定するように構成してある請求項3に記載の脱穀装置の上部構造。
【請求項5】
少なくとも前記天板における脱穀処理方向最上手側に位置する送塵弁と脱穀処理方向上手側から2番目に位置する送塵弁との間に位置する天板部分に接合するように形成した補強用のカバー部材を前記天板に着脱可能に取り付けてある請求項1〜4のいずれか一つに記載の脱穀装置の上部構造。
【請求項6】
前記カバー部材を前記天板の脱穀処理方向上手側部に外側から接合するように形成し、前記カバー部材における前記天板部分との接合箇所を補強する当板を前記カバー部材に接合してある請求項5に記載の脱穀装置の上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−177084(P2011−177084A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43305(P2010−43305)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】