説明

脱穀装置の処理物漏下構造

【課題】 受網を大きくすることなく、単粒化穀粒の漏下不良に起因した損傷を防止する。
【解決手段】 支軸21を支点にして回転駆動される扱胴22の外周に沿って湾曲するように形成され、扱胴22の下部側を下方から覆うように配備される受網23を備え、受網23における扱胴22の回転方向下手側に位置する枠部23Aに、扱胴22の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を許容する漏下孔44を形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物を漏下させる脱穀装置の処理物漏下構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような脱穀装置の処理物漏下構造としては、多数の目孔が穿設された鋼板に支持枠や弓金をビス止めして受網を構成し、その受網の網目となる目孔から脱穀処理で得られた処理物を漏下させるようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
又、直線状鋼材として備えた断面視略コの字状の第1鋼材と第2鋼材、及び、断面視円形の棒状鋼材と第1線状鋼材と第2線状鋼材、並びに、円弧状部材として備えた第1部材〜第5部材を、所定の配列で並べて各接合部分を溶接することによって格子状の受網を構成し、その受網の網目から脱穀処理で得られた処理物を漏下させるようにしたものがある(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−92971号公報(段落番号0015〜0016、図1〜5)
【特許文献2】特開2001−61333号公報(段落番号0017〜0019、図1〜12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、作業の高速化によって単位時間当たりの処理量が増大する傾向にある。そのため、受網の漏下面積を大きくして、扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を促進させる必要が生じるのであるが、受網の配置スペースにも制限があることから、受網を大きくして、作業の高速化に対応した大きい漏下面積を確保することが困難になっている。
【0005】
その結果、作業の高速化が進むに連れて、単粒化しながらも受網から漏下せずに、扱胴の回転による脱穀処理を受けることで、穀粒が損傷する不都合が生じ易くなる。
【0006】
本発明の目的は、受網を大きくすることなく、単粒化穀粒の漏下不良に起因した損傷を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、支軸を支点にして回転駆動される扱胴の外周に沿って湾曲するように形成され、前記扱胴の下部側を下方から覆うように配備される受網を備え、前記受網における前記扱胴の回転方向下手側に位置する枠部に、前記扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を許容する漏下孔を形成してあることを特徴とする。
【0008】
この特徴構成によると、扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物が、受網の網目からだけでなく、受網における扱胴の回転方向下手側に位置する枠部に形成した漏下孔からも漏下するようになる。つまり、受網を大きくすることなく漏下面積を大きくすることができ、処理物の漏下を促進させることができる。
【0009】
しかも、漏下孔を、処理物が堆積した状態になり易い受網における扱胴の回転方向上手側に位置する枠部ではなく、扱胴の回転に伴って、処理物が掻き上げられて拡散した状態になり易い受網における扱胴の回転方向下手側に位置する枠部に形成することから、処理物のうちの、切れワラやワラ屑などに比較して質量が大きいことから扱胴との連れ回りによる遠心力の影響を受け易い単粒化穀粒の、漏下孔からの漏下を特に促進させることができる。
【0010】
従って、受網を大きくすることなく、作業の高速化に対応した大きい漏下面積を確保することができ、これによって、作業の高速化に伴う処理量の増大とともに単粒化穀粒の漏下を促進させることができ、単粒化穀粒の漏下不良に起因した損傷などを防止することができ、結果、単粒化穀粒の回収効率とともに穀粒の品質を向上させることができる。
【0011】
特に、受網における扱胴回転方向下手側の枠部に形成した漏下孔からの単粒化穀粒の漏下が促進されることによって、脱穀処理の際に、挟持搬送機構によって刈取穀稈の株元側を挾持搬送する自脱形コンバインにおいては、受網から漏下しなかった単粒化穀粒が、扱胴の回転に伴って刈取穀稈の株元側に向けて流下し、刈取穀稈の株元側に紛れ込んだまま、脱穀処理後の刈取穀稈とともに機外に排出される、といったささり穀粒の発生が抑制されることになり、結果、単粒化穀粒の回収効率をより効果的に向上させることができる。
【0012】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、支軸を支点にして回転駆動される扱胴の外周に沿って湾曲するように形成され、前記扱胴の下部側を下方から覆うように配備される受網を備え、前記受網に対する前記扱胴の回転方向下手側に配備された扱室形成部材に、前記扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を許容する漏下孔を形成してあることを特徴とする。
【0013】
この特徴構成によると、扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物が、受網の網目からだけでなく、扱室形成部材に形成した漏下孔からも漏下するようになる。又、受網の枠部に漏下孔を形成する場合に招く虞のある受網の強度の低下を回避することができる。つまり、受網を大きくすることなく、又、受網の強度の低下を招くことなく、漏下面積を大きくすることができ、処理物の漏下を促進させることができる。
【0014】
しかも、漏下孔を、扱胴の回転に伴って、処理物が掻き上げられて拡散した状態になり易い受網に対する扱胴の回転方向下手側に位置する扱室形成部材に形成することから、請求項1に記載の発明の場合と同様に、処理物のうちの、切れワラやワラ屑などに比較して質量が大きいことから扱胴との連れ回りによる遠心力の影響を受け易い単粒化穀粒の、漏下孔からの漏下を特に促進させることができる。
【0015】
従って、受網を大きくすることなく、又、受網の強度の低下を招くことなく、作業の高速化に対応した大きい漏下面積を確保することができ、これによって、作業の高速化に伴う処理量の増大とともに単粒化穀粒の漏下を促進させることができ、単粒化穀粒の漏下不良に起因した損傷などを防止することができ、結果、単粒化穀粒の回収効率とともに穀粒の品質を向上させることができる。
【0016】
そして、扱室形成部材に形成した漏下孔からの単粒化穀粒の漏下が促進されることによって、請求項1に記載の発明の場合と同様に、自脱形コンバインにおいてはささり穀粒の発生が抑制されることになり、結果、単粒化穀粒の回収効率をより効果的に向上させることができる。
【0017】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、支軸を支点にして回転駆動される扱胴の外周に沿って湾曲するように形成され、前記扱胴の下部側を下方から覆うように配備される受網を備え、前記受網における前記扱胴の回転方向下手側に位置する枠部と、前記受網に対する前記扱胴の回転方向下手側に配備された扱室形成部材とに、前記扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を許容する漏下孔を形成してあることを特徴とする。
【0018】
この特徴構成によると、扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物が、受網の網目からだけでなく、受網における扱胴の回転方向下手側に位置する枠部に形成した漏下孔や、扱室形成部材に形成した漏下孔からも漏下するようになる。つまり、受網を大きくすることなく漏下面積をより大きくすることができ、処理物の漏下をより効果的に促進させることができる。
【0019】
しかも、漏下孔を、処理物が堆積した状態になり易い受網における扱胴の回転方向上手側に位置する枠部ではなく、扱胴の回転に伴って、処理物が掻き上げられて拡散した状態になり易い受網における扱胴の回転方向下手側に位置する枠部と、受網に対する扱胴の回転方向下手側に位置する扱室形成部材とに形成することから、処理物のうちの、切れワラやワラ屑などに比較して質量が大きいことから扱胴との連れ回りによる遠心力の影響を受け易い単粒化穀粒の、漏下孔からの漏下を特に促進させることができる。
【0020】
従って、受網を大きくすることなく、作業の高速化に対応したより大きい漏下面積を確保することができ、これによって、作業の高速化に伴う処理量の増大とともに単粒化穀粒の漏下をより効果的に促進させることができ、単粒化穀粒の漏下不良に起因した損傷などをより確実に防止することができ、結果、単粒化穀粒の回収効率とともに穀粒の品質を更に向上させることができる。
【0021】
特に、受網における扱胴回転方向下手側の枠部と、扱室形成部材とのそれぞれに形成した漏下孔からの単粒化穀粒の漏下が促進されることによって、脱穀処理の際に、挟持搬送機構によって刈取穀稈の株元側を挾持搬送する自脱形コンバインにおいては、受網から漏下しなかった単粒化穀粒が、扱胴の回転に伴って刈取穀稈の株元側に向けて流下し、刈取穀稈の株元側に紛れ込んだまま、脱穀処理後の刈取穀稈とともに機外に排出される、といったささり穀粒の発生がより効果的に抑制されることになり、結果、単粒化穀粒の回収効率をより効果的に向上させることができる。
【0022】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項2又は3に記載の発明において、前記扱室形成部材を着脱可能に構成してあることを特徴とする。
【0023】
この特徴構成によると、扱室形成部材が処理物との接触などによって摩耗した場合には、扱室形成部材を新しいものに容易に交換することができる。
【0024】
従って、扱室形成部材の交換を容易に行えるメンテナンス性に優れたものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1には自脱形コンバインの全体側面が、図2にはその全体背面がそれぞれ示されており、このコンバインは、角パイプ材などによって枠状に形成された機体フレーム1、機体フレーム1の下部に装備された左右一対のクローラ式走行装置2、機体フレーム1の左前部に昇降揺動可能に連結された刈取搬送部3、機体フレーム1の左半部に搭載された脱穀装置4、機体フレーム1の右後部に搭載された袋詰め装置5、機体フレーム1の右前部に形成された搭乗運転部6、及び、機体フレーム1の右前部に搭載されたエンジン7、などによって構成されている。
【0026】
左右のクローラ式走行装置2は、エンジン7から主変速装置(図示せず)や副変速装置(図示せず)などを介して伝達される動力で駆動され、搭乗運転部6に備えた主変速レバー8や副変速レバー9の操作に基づいて変速され、その駆動状態では、搭乗運転部6に備えた十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー10の左右方向への揺動操作に基づいて、それらが等速駆動される直進状態と、それらが差動する旋回走行状態とに切り換えられる。
【0027】
刈取搬送部3は、エンジン7からの動力が主変速装置や刈取クラッチ(図示せず)などを介して伝達され、その作動状態では、機体の走行に伴って、先端に備えた複数のデバイダ11が収穫対象の植立穀稈を植え付け条ごとに梳き分けながら梳き起こし、条分けされた植立穀稈を複数の引起装置12が所定の刈取姿勢に引き起こし、引き起こされた植立穀稈の株元側をバリカン型の刈取装置13が切断し、切断後の植立穀稈である刈取穀稈を穀稈搬送装置14が刈取用の起立姿勢から脱穀用の横倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置4に向けて搬送するように構成されている。
【0028】
又、操縦レバー10の前後方向への揺動操作に基づいて、機体フレーム1と刈取搬送部3とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ(図示せず)が伸縮作動することで、左右向きの支点(図示せず)周りに昇降揺動する。
【0029】
図3及び図4に示すように、脱穀装置4は、機体フレーム1に連結した下部ケース15と、その下部ケース15に開閉揺動可能に連結した上部ケース16とで形成される処理空間に、刈取穀稈を後方に向けて搬送しながら刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す脱穀部17、その脱穀処理で得た処理物に選別処理を施す選別部18、及び、その選別処理で得た1番物と2番物とを回収する回収部19、などを備えて構成されている。
【0030】
脱穀部17は、刈取穀稈の株元側を挟持して刈取穀稈を左右向きの姿勢で搬送する挟持搬送機構20、前後向きの支軸21を支点にして正面視右回りに回転駆動されることで刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す扱胴22、及び、この脱穀処理で得られた処理物を下方の選別部18に向けて漏下させる受網23、などを備えて構成されている。受網23の後方には、受網23から漏下しなかった処理物を下方の選別部18に向けて流下させる送塵口24が形成されている。
【0031】
つまり、この脱穀部17での脱穀処理によって、単粒化穀粒や枝梗付きの穀粒などの含有量の多い処理物が受網23から選別部18の選別方向上手側(前部側)に向けて漏下し、又、切れワラやワラ屑などの含有量の多い処理物が送塵口24から選別部18の選別方向下手側(後部側)に向けて流下する。
【0032】
選別部18は、脱穀部17からの処理物を揺動選別する揺動選別機構25、及び、脱穀部17からの処理物を風力選別する選別風を生起する唐箕26、などを備えて構成されている。そして、処理物に対する揺動選別及び風力選別によって、脱穀部17からの処理物を、1番物としての単粒化穀粒、2番物としての枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物、及び、3番物としての切れワラやワラ屑などの塵埃に選別する。
【0033】
回収部19は、揺動選別機構25の選別方向上手側の下方に形成した1番回収部27、及び、揺動選別機構25の選別方向下手側の下方に形成した2番回収部28、などによって構成されている。
【0034】
1番回収部27は、選別部18で選別された1番物を回収するとともに、回収した1番物を、その底部に左右向きに配備した1番スクリュー29によって、その右端に連通接続した揚送スクリュー31(図2参照)に向けて搬送する。
【0035】
2番回収部28は、選別部18で選別された2番物を回収するとともに、回収した2番物を、その底部に左右向きに配備した2番スクリュー30によって、その右端に連通接続した2番還元スクリュー32に向けて搬送する。
【0036】
図2及び図3に示すように、揚送スクリュー31は、1番スクリュー29によって搬送された1番物を揚送し、脱穀装置1の右側方に並設した袋詰め装置5の穀粒貯留部33に供給する。2番還元スクリュー32は、2番スクリュー30によって搬送された2番物に再脱穀処理を施した後、揚送して揺動選別機構25に還元する。
【0037】
図3及び図4に示すように、扱胴22は、円筒状に形成された扱胴本体34の外周部に、略V字状に屈曲形成された複数の扱歯35などを備えて構成されている。
【0038】
図3〜8に示すように、受網23は、扱胴22の外周に沿って湾曲するように形成され、扱胴22における回転方向下手側の下部側を下方から覆うように配備される第1受網部36と、扱胴22における回転方向上手側の下部側を下方から覆うように配備される第2受網部37とに分割可能な2分割構造に構成されている。
【0039】
各受網部36,37は、扱胴22の支軸21と直交する姿勢で支軸21に沿う方向に並設される複数で複数種の湾曲鋼板38,39と、扱胴22の支軸21に沿う姿勢で扱胴22の外周に沿って並設される複数で複数種の直線鋼材40,41とから格子状に形成されている。
【0040】
各受網部36,37において、所定の湾曲部材38A,38B,39A,39Bは、それらの両端部が、各受網部36,37における扱胴回転方向の両端に位置する断面視略コの字状の直線鋼材40A,40B,41A,41Bを補強する補強リブとして機能するように、他の湾曲部材よりも大型に形成されている。
【0041】
第1受網部36において、第2受網部37との接合端に位置する直線鋼材40Bには、第2受網部37における第1受網部36との接合端に位置する直線鋼材41Aから第1受網部36に向けて突設した2本の係合突起42が係入される係合孔43が穿設されている。
【0042】
受網23における扱胴22の回転方向下手側に位置する枠部23Aである第1受網部36の直線鋼材40Aには、扱胴22の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を許容する複数の略矩形状の漏下孔44が、直線鋼材40Aの長手方向に、所定の湾曲部材38A,38B,39A,39Bの端部から外れた状態で、所定ピッチで並ぶように形成されている。
【0043】
図4及び図9に示すように、脱穀部17において、受網23に対する扱胴22の回転方向下手側には、複数の稈切り刃45が、扱胴22の支軸21に沿う方向に所定ピッチで並ぶように配備されている。
【0044】
各稈切り刃45は、三角形状の一対の刃部45Aを備えるコの字状に形成され、脱穀部17の前後壁46,47にわたる板金製の支持部材48に着脱可能にボルト連結されている。
【0045】
支持部材48は、扱室を形成する前後壁46,47に着脱可能にボルト連結され、その下部には、受網23、前後壁46,47、及び、支持部材48などとともに扱室を形成する板金製の扱室形成部材49が着脱可能にボルト連結されている。
【0046】
扱室形成部材49は、支持部材48から受網23にわたるように形成されており、これによって、受網23から漏下しなかった処理物を複数の稈切り刃45に向けて案内することができ、その処理物中に含まれる長い切れワラを複数の稈切り刃45で細断することができる。
【0047】
扱室形成部材49の下端部には、受網23における扱胴22の回転方向下手側に位置する枠部23Aを受け止め支持する板金製の受け部材50が溶接されている。又、扱室形成部材49において処理物を案内する案内面(扱胴22と対向する面)には、扱胴22の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を許容する複数の略矩形状の漏下孔51が、扱室形成部材49の長手方向に所定ピッチで並ぶように形成されている。
【0048】
以上の構成によって、扱胴22の回転による脱穀処理で得られた処理物は、受網23の網目からだけでなく各漏下孔44,51からも漏下することになる。つまり、受網23を大きくすることなく漏下面積を大きくすることができ、処理物の漏下を促進させることができる。
【0049】
しかも、各漏下孔44,51を、処理物が堆積した状態になり易い受網23における扱胴22の回転方向上手側に位置する枠部23B(第2受網部37の各直線鋼材41A,41Bや第1受網部36の直線鋼材40B)などではなく、扱胴22の回転に伴って処理物が掻き上げられて拡散した状態になり易い受網23における扱胴回転方向下手側に位置する枠部23A(第1受網部36の直線鋼材40A)や、受網23における扱胴回転方向下手側に位置する扱室形成部材49に形成することから、処理物のうちの、切れワラやワラ屑などに比較して質量が大きいことから扱胴22との連れ回りによる遠心力の影響を受け易い単粒化穀粒の、各漏下孔44,51からの漏下を特に促進させることができる。
【0050】
その結果、単粒化穀粒の漏下不良に起因した損傷穀粒の発生を効果的に防止することができ、穀粒の品質を向上させることができる。
【0051】
又、受網23から漏下しなかった単粒化穀粒が、扱胴22の回転に伴って刈取穀稈の株元側に向けて流下し、刈取穀稈の株元側に紛れ込んだまま脱穀処理後の刈取穀稈とともに機外に排出される、といったささり穀粒の発生を効果的に抑制することができる。
【0052】
しかも、扱室形成部材49が処理物との接触などによって摩耗した場合には、扱室形成部材49のみを新しいものに容易に交換することができる。
【0053】
図1〜図3及び図10に示すように、揺動選別機構25は、カム式の駆動機構52によって前後方向に揺動駆動されるシーブケース53の上部に、粗選別用のグレンパン54、チャフシーブ55、第1ストローラック56、及び、第2ストローラック57を配備し、シーブケース53の下部に、精選別用のグレンパン58、及び、グレンシーブ59を配備して構成されている。そして、受網23から漏下した単粒化穀粒やワラ屑などが混在する選別処理物を、上部のグレンパン54やチャフシーブ55などで受け止めて、篩い選別による粗選別処理を施し、かつ、チャフシーブ55から漏下した単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などが混在する選別処理物を、下部のグレンパン58やグレンシーブ59で受け止めて、篩い選別による精選別処理を施して、選別処理物を、1番物としての単粒化穀粒、2番物としての枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物、及び、3番物としての切れワラやワラ屑などの塵埃に選別する。
【0054】
チャフシーブ55は、シーブケース53における上部の前後中央に、複数の可動式のチャフリップ板60と固定式のチャフリップ板61とを前後方向に一定ピッチで整列配備して構成されている。可動式の各チャフリップ板60は、それらの上端部を支点にした前後方向への一体揺動操作が可能となるように、それぞれの上端部がシーブケース53に枢支され、それぞれの下端部が連結部材62によって連動連結されている。
【0055】
複数の可動式のチャフリップ板60のうち、それらの前後中央に配置された可動式のチャフリップ板60には、その上端部を支点にして一体揺動する連係アーム63が装備されている。そして、この連係アーム63の遊端部とシーブケース53とにわたって、連係アーム63や連結部材62を介して、可動式の各チャフリップ板60を、それらの間に形成される処理物の流下経路が狭くなる閉じ方向に揺動付勢する引っ張りバネ64が架設されている。又、連係アーム63の遊端部には、引っ張りバネ64の付勢に抗した可動式の各チャフリップ板60の開き方向への揺動操作を可能にする操作レバー65が、連係ワイヤ66を介して連係されている。
【0056】
操作レバー65は、ガイド板67とともに袋詰め装置5の後方に配備されており、上下方向への揺動操作が可能で、ガイド板67との係合によって所望の操作位置に係合保持できるように構成されている。
【0057】
つまり、操作レバー65を上下方向に揺動操作することで、チャフシーブ55における複数の可動式のチャフリップ板60からなる可動部55Aの開度を調節することができ、所望の開度が得られる操作位置において操作レバー65をガイド板67に係合させることで、チャフシーブ55における可動部55Aの開度を所望の開度に設定保持することができる。
【0058】
シーブケース53には、連係アーム63の引っ張りバネ64による引っ張り方向への揺動を、連係アーム63の遊端部との接当で規制することで、引っ張りバネ64の付勢によってチャフシーブ55の可動部55Aが全閉状態になることを阻止するストッパ68が装備されている。
【0059】
これによって、連係ワイヤ66の切断などによって操作レバー65と連係アーム63との連係が解除された場合であっても、チャフシーブ55における可動部55Aの開度が全閉状態になることを阻止することができ、チャフシーブ55の可動部55Aから単粒化穀粒などを漏下させることができ、結果、揺動選別機能を発揮させることができる。
【0060】
〔別実施形態〕
【0061】
〔1〕本発明の脱穀装置の処理物漏下構造を、刈取穀稈の全稈に脱穀処理を施すように構成された普通形コンバインの脱穀装置に適用するようにしてもよい。
【0062】
〔2〕受網23として、クリンプ網や樹脂網を採用してもよく、又、パンチングメタルなどによって構成されたものを採用してもよい。
【0063】
〔3〕受網23として、分割不能に構成されたものであってもよく、又、脱穀処理方向あるいは扱胴22の回転方向と脱穀処理方向との双方に分割可能に構成されたものであってもよい。
【0064】
〔4〕図11に示すように、支持部材48の下部に、複数の漏下孔51が形成された板金製の扱室形成部材49を、支持部材48から受網23にわたるように溶接して、扱室形成部材49が処理物との接触などによって摩耗した場合には、支持部材48とともに扱室形成部材49を新しいものに交換するように構成してもよい。
【0065】
〔5〕漏下孔44,51の数量及び形状などは種々の変更が可能である。
【0066】
〔6〕受網23には漏下孔44を形成せずに、扱室形成部材49のみに漏下孔51を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】自脱形コンバインの全体側面図
【図2】自脱形コンバインの全体背面図
【図3】脱穀装置の縦断側面図
【図4】脱穀装置の縦断正面図
【図5】第1受網部の構成を示す展開平面図
【図6】第2受網部の構成を示す展開平面図
【図7】第1受網部の構成を示す縦断正面図
【図8】第1受網部の構成を示す要部の背面図
【図9】扱室形成部材の構成を示す要部の縦断側面図
【図10】チャフシーブにおける可動部の開度調節構造を示す図
【図11】別実施形態における扱室形成部材の構成を示す要部の縦断側面図
【符号の説明】
【0068】
21 支軸
22 扱胴
23 受網
23A 枠部
44 漏下孔
45 稈切り刃
48 支持部材
49 扱室形成部材
51 漏下孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支軸を支点にして回転駆動される扱胴の外周に沿って湾曲するように形成され、前記扱胴の下部側を下方から覆うように配備される受網を備え、
前記受網における前記扱胴の回転方向下手側に位置する枠部に、前記扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を許容する漏下孔を形成してあることを特徴とする脱穀装置の処理物漏下構造。
【請求項2】
支軸を支点にして回転駆動される扱胴の外周に沿って湾曲するように形成され、前記扱胴の下部側を下方から覆うように配備される受網を備え、
前記受網に対する前記扱胴の回転方向下手側に配備された扱室形成部材に、前記扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を許容する漏下孔を形成してあることを特徴とする脱穀装置の処理物漏下構造。
【請求項3】
支軸を支点にして回転駆動される扱胴の外周に沿って湾曲するように形成され、前記扱胴の下部側を下方から覆うように配備される受網を備え、
前記受網における前記扱胴の回転方向下手側に位置する枠部と、前記受網に対する前記扱胴の回転方向下手側に配備された扱室形成部材とに、前記扱胴の回転による脱穀処理で得られた処理物の漏下を許容する漏下孔を形成してあることを特徴とする脱穀装置の処理物漏下構造。
【請求項4】
前記扱室形成部材を着脱可能に構成してあることを特徴とする請求項2又は3に記載の脱穀装置の処理物漏下構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−193910(P2008−193910A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29605(P2007−29605)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】