説明

脱穀装置の開閉操作装置及びコンバイン

【課題】 脱穀経路で穀稈詰まりが生じた場合であっても、上部ケースの作業位置での固定解除を容易に行えるようにして、穀稈詰まりの対処を迅速に行えるようにすること。
【解決手段】 上部ケースの作業位置からの開操作を阻止する固定状態と開操作を許容する解除状態とに切り換え可能に構成された固定手段(58)、上部ケースを開閉駆動する開閉駆動手段(51)、上部ケースの開操作及び閉操作を指令する開閉指令手段(48)、固定手段を切り換え駆動する切換駆動手段(68,70)が設けられ、制御手段(50)が、開操作が指令されると、開閉駆動手段(51)を上部ケースの閉操作側に作動させた状態で固定手段(58)を固定状態から解除状態に切り換え、次に、上部ケースを開操作するべく、切換駆動手段(68,70)及び開閉駆動手段(51)の作動を制御するように構成されている脱穀装置の開閉操作装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受網を備えた下部ケースに、扱胴を備えた上部ケースが、前記扱胴が前記受網に近接する作業位置と前記扱胴が前記受網から離間するメンテナンス位置とにわたって開閉操作可能に連結され、前記上部ケースの前記作業位置からの開操作を阻止する固定状態と前記開操作を許容する解除状態とに切り換え可能に構成された固定手段と、前記上部ケースを開閉駆動する開閉駆動手段と、前記開閉駆動手段の作動を制御する制御手段と、前記上部ケースの開操作及び閉操作を前記制御手段に指令する開閉指令手段とが備えられた脱穀装置の開閉操作装置及びこれを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような脱穀装置の開閉操作構造としては、上部構造体(上部ケース)に揺動自在に装備した一対のロック杆や、主構造体(下部ケース)に固設した一対のロックピンなどから、各ロック杆のフック部が対応するロックピンに係合することで、上部構造体を下降閉じ位置(作業位置)にロックし、各ロック杆のフック部が対応するロックピンとの係合を解除することで、上部構造体の下降閉じ位置でのロックを解除するように構成されたロック機構(固定手段)を備え、そのロック機構のロック解除操作を、一対のロック杆を連結するハンドル杆を利用した人為操作で行うように構成したものがある(例えば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3683148号公報(段落番号0034及び0035並びに図4及び図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成では、受網と扱胴の間に形成される脱穀経路において刈取穀稈の詰まりが発生すると、その詰まりに起因してフック部とロックピンとの係合が強固になる不都合が発生して、それらの係合解除を人為操作で行うことが困難になることから、上部ケースの作業位置での固定解除に手間取るようになる。その結果、上部ケースをメンテナンス位置に開操作した場合に可能となる、脱穀経路での穀稈詰まりに対する対処が遅れることになり、作業効率の低下を招くようになる。
【0004】
本発明の目的は、脱穀経路で穀稈詰まりが生じた場合であっても、上部ケースの作業位置での固定解除を容易に行えるようにして、脱穀経路での穀稈詰まりに対する対処を迅速に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる脱穀装置の開閉操作装置は、受網を備えた下部ケースに、扱胴を備えた上部ケースが、前記扱胴が前記受網に近接する作業位置と前記扱胴が前記受網から離間するメンテナンス位置とにわたって開閉操作可能に連結され、前記上部ケースの前記作業位置からの開操作を阻止する固定状態と前記開操作を許容する解除状態とに切り換え可能に構成された固定手段と、前記上部ケースを開閉駆動する開閉駆動手段と、前記開閉駆動手段の作動を制御する制御手段と、前記上部ケースの開操作及び閉操作を前記制御手段に指令する開閉指令手段とが備えられたものであって、
その第1特徴構成は、前記固定手段を切り換え駆動する切換駆動手段が設けられ、前記制御手段が、前記開閉指令手段にて開操作が指令されると、前記開閉駆動手段を前記上部ケースの閉操作側に作動させた状態で前記固定手段を前記固定状態から前記解除状態に切り換え、次に、前記上部ケースを開操作するべく、前記切換駆動手段及び前記開閉駆動手段の作動を制御するように構成されている点にある。
【0006】
すなわち、開閉指令手段にて開操作が指令されると、制御手段が切換駆動手段を制御することで、切換駆動手段にて固定手段が固定状態から解除状態に切り換えられるので、受網と扱胴の間に形成される脱穀経路において刈取穀稈の詰まりが発生し、その詰まりに起因して、固定手段による上部ケースの作業位置での固定が強固になったとしても、固定手段の固定状態から解除状態への切り換えを切換駆動手段の作動で容易に行えるようになり、上部ケースの作業位置からメンテナンス位置への開操作を速やかに行える。
【0007】
しかも、制御手段は、固定手段を固定状態から解除状態に切り換えるべく切換駆動手段を制御するにあたって、前記開閉駆動手段の作動を制御して開閉駆動手段を前記上部ケースの閉操作側に作動させた状態とするので、脱穀経路における刈取穀稈の詰まりに起因して、上部ケースがメンテナンス位置に向う側に押し上げられて固定手段による上部ケースの作業位置での固定が強固となっている場合であっても、開閉駆動手段にて上部ケースが閉操作側に操作されることで、脱穀経路に詰まった刈取り穀稈が圧縮されて、上部ケースがメンテナンス位置から離れる側に引き下げられることで、上部ケースが的確に作業位置に位置し、上部ケースの作業位置での固定手段による固定を緩めることができる。
【0008】
したがって、固定手段を固定状態から解除状態に切り換えを、上部ケースの作業位置での固定が緩んだ状態で行うことができるので、開閉指令手段にて開操作が指令された場合に、固定手段を確実に解除状態に切り換えることができる。
【0009】
このように、本発明の第1特徴構成によると、上部ケースを開閉操作する際の操作性の向上を図れるとともに、脱穀経路での穀稈詰まりに対する対処を迅速に行えるようになり、結果、作業効率の向上を図ることができる。
【0010】
本発明にかかる脱穀装置の開閉操作装置の第2特徴構成は、第1特徴構成において、前記扱胴への伝動を断続する脱穀クラッチの作動状態を検出する脱穀クラッチセンサが備えられ、前記制御手段が、前記脱穀クラッチセンサの検出情報に基づいて、前記脱穀クラッチが入り状態である場合には、前記開閉指令手段にて開操作が指令されても前記切換駆動手段及び前記開閉駆動手段を作動させないように構成されている点にある。
【0011】
すなわち、脱穀クラッチが入り状態であると、脱穀クラッチセンサがこれを検出し、制御手段は、開閉指令手段にて開操作が指令されても前記切換駆動手段及び前記開閉駆動手段を作動させないので、上部ケースをメンテナンス位置に開操作する場合には、脱穀クラッチを切り状態に切り換える必要が生じることになる。
【0012】
したがって、上部ケースを開操作する際の操作性の向上を図りながらも、上部ケースをメンテナンス位置に開操作して、脱穀装置に対するメンテナンスを行う場合には、万が一、エンジンの停止操作を忘れたとしても、又、開閉駆動手段の構成から、上部ケースを開操作する際にエンジンを作動させる必要が生じたとしても、上部ケースを開操作する前の段階から扱胴が停止した脱穀装置の作動停止状態において、脱穀装置に対するメンテナンスを行えることになり、作業を適切に行い易い状態でメンテナンスが行うことができる。
【0013】
このように、本発明の第2特徴構成によると、脱穀経路で穀稈詰まりが生じた場合であっても、上部ケースの作業位置での固定解除を容易に行えるようにして、脱穀経路での穀稈詰まりに対する対処を迅速に行え、しかも、作業を適切に行い易い状態でメンテナンスが行うことができる。
【0014】
本発明にかかる脱穀装置の開閉操作装置の第3特徴構成は、第2特徴構成において、前記固定手段が固定状態であることを検出する固定状態検出手段が備えられ、前記制御手段が、前記固定状態検出手段の検出情報に基づいて、前記固定手段が固定状態でない場合には、前記脱穀クラッチの作動状態を切り換えるクラッチ切換手段を作動させないように構成されている点にある。
【0015】
すなわち、固定手段が固定状態でない場合には、固定状態検出手段がこれを検出することで、制御手段が、脱穀クラッチの作動状態を切り換えるクラッチ切換手段を作動させないようにするので、開閉指令手段にて開操作が指令されて、固定手段が解除状態に切り換えられた後は、固定手段が解除状態から固定状態に切り換えられるまでは、クラッチ切換手段は作動しないことになる。
【0016】
したがって、開閉指令手段にて開操作が指令されて固定手段が固定状態でなくなってから、開閉指令手段にて閉操作が指令されて上部ケースが閉操作されて固定手段が固定状態に切り換えられるまでの間は、扱胴が停止した脱穀装置の作動停止状態が維持されるので、メンテナンス作業の途中に扱胴が作動を開始してメンテナンス作業が行い難くなることを防止でき、メンテナンス作業を行うための適切な作業状態を維持することができる。
【0017】
このように、本発明の第3特徴構成によると、脱穀経路で穀稈詰まりが生じた場合であっても、上部ケースの作業位置での固定解除を容易に行えるようにして、脱穀経路での穀稈詰まりに対する対処を迅速に行え、しかも、メンテナンス作業を行うための適切な作業状態を維持することができる。
【0018】
本発明にかかる物品処理システムの第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかにおいて、前記脱穀装置にて処理した穀粒を排出するアンローダが前記脱穀装置の上方空間において旋回操作自在にかつ昇降操作自在に備えられ、前記アンローダの旋回位置を検出する旋回位置検出手段及び昇降位置を検出する昇降位置検出手段が備えられ、前記制御手段が、前記旋回位置検出手段及び前記昇降位置検出手段の検出情報に基づいて、前記上部ケースを開操作すると前記アンローダと干渉する位置に前記アンローダが位置していると判別した場合には、前記開閉指令手段にて開操作が指令されても前記切換駆動手段及び前記開閉駆動手段を作動させないように構成されている点にある。
【0019】
すなわち、アンローダの旋回位置及び昇降位置が、上部ケースを開操作すると上部ケースとアンローダとが干渉する位置となっている場合には、制御手段は、旋回位置検出手段及び昇降位置検出手段の検出情報に基づいて、上部ケースを開操作するとアンローダと干渉する位置にアンローダが位置していると判別して、開閉指令手段にて開操作が指令されても切換駆動手段及び開閉駆動手段を作動させない。
【0020】
したがって、上部ケースを開操作するとアンローダと上部ケースとが干渉するような位置にアンローダが位置していることに作業者が気付かないまま、開閉指令手段を指令操作して、開操作が制御手段に対して指令された場合でも、制御手段にて切換駆動手段及び開閉駆動手段が作動して上部ケースが開操作されることはないので、アンローダと上部ケースとが接触することを回避して、上部ケースの開操作によりアンローダや上部ケースが損傷することを防止できる。
【0021】
このように、本発明の第4特徴構成によると、脱穀経路で穀稈詰まりが生じた場合であっても、上部ケースの作業位置での固定解除を容易に行えるようにして、脱穀経路での穀稈詰まりに対する対処を迅速に行え、しかも、上部ケースの開操作によりアンローダや上部ケースが損傷することを防止できるコンバインを得るに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1には自脱型コンバインの全体側面が、図2にはその全体平面が示されており、このコンバインは、角パイプ材などによって枠状に形成した車体フレーム1の下部に左右一対のクローラ式走行装置2を配備し、車体フレーム1の前部に刈取搬送装置3を昇降揺動可能に連結し、車体フレーム1の左半部に脱穀装置4を搭載し、脱穀装置4の後部に排ワラ搬送装置5と排ワラ細断装置6とを連結し、車体フレーム1の右後部に穀粒タンク7を搭載し、穀粒タンク7にスクリュー搬送式のアンローダ8を備え、車体フレーム1の右前部にエンジン9を搭載するとともに搭乗運転部を形成するキャビン10を配備して構成されている。
【0023】
図示は省略するが、左右のクローラ式走行装置2は、エンジン9から主変速装置や副変速装置などを介して伝達される動力で駆動され、搭乗運転部に備えた主変速レバーや副変速レバーの操作に基づいて変速され、その駆動状態では、搭乗運転部に備えた十字揺動式で中立復帰型の操縦レバーの左右方向への揺動操作に基づいて、それらが等速駆動される直進状態と、それらが差動する旋回走行状態とに切り換えられる。
【0024】
刈取搬送装置3は、エンジン9からの動力が主変速装置や刈取クラッチなどを介して伝達され、搭乗運転部に備えた刈取クラッチレバーの操作に基づいて、刈取クラッチが断続操作されることで、作動状態と停止状態とに切り換えられ、その作動状態では、車体の走行に伴って、刈取対象となる所定条数の植立穀稈を分草して引き起こすとともに、それらの株元側を切断し、切断後の植立穀稈(刈取穀稈)を、起立姿勢から横倒れ姿勢に姿勢変更しながら後方の脱穀装置4に向けて搬送する。又、操縦レバーの前後方向への揺動操作に基づいて刈取昇降機構が作動することで昇降する。
【0025】
脱穀装置4は、エンジン9からの動力が脱穀クラッチなどを介して伝達され、搭乗運転部に備えた脱穀クラッチレバーの操作に基づいて、脱穀クラッチ切換モータ(クラッチ切換手段の一例)102の正逆転駆動によりベルトテンション式の脱穀クラッチが断続操作されることで、作動状態と停止状態とに切り換えられ、その作動状態では、刈取搬送装置3から刈取穀稈を受け取り、その刈取穀稈の穂先側に対して脱穀処理を施しながら、後方の排ワラ搬送装置5に向けて搬送し、その脱穀処理で得られた処理物に対して選別処理を施し、その選別処理によって1番物として選別された単粒化穀粒を穀粒タンク6に供給し、2番物として選別された枝梗付き穀粒などの未脱穀粒に対しては再び脱穀処理及び選別処理を施し、3番物として選別された切れワラやワラ屑などの塵埃は車外に排出する。
【0026】
排ワラ搬送装置5は、脱穀装置4からの動力で駆動され、その駆動状態では、脱穀装置4から脱穀処理後の刈取穀稈(排ワラ)を受け取って、排ワラ細断装置6の上方に向けて搬送する。排ワラ細断装置6は、脱穀装置4からの動力で駆動され、排ワラ細断装置6からの排ワラを、そのまま車体後方に案内して車外に放出する長ワラ放出状態と、細断処理を施して車外に放出する細断放出状態とに切り換え可能に構成されている。
【0027】
アンローダ8は、エンジン9からの動力が排出クラッチなどを介して伝達され、搭乗運転部に備えた排出スイッチの操作に基づいて、排出クラッチが断続操作されることで、穀粒タンク7に貯留した単粒化穀粒を車外に排出する作動状態と停止状態とに切り換えられる。又、搭乗運転部に備えた昇降スイッチの操作に基づいて、排出昇降機構が作動することで排出筒8A(図1及び図2参照)が昇降揺動し、搭乗運転部に備えた旋回スイッチの操作に基づいて、排出旋回機構が作動することで排出筒8Aが旋回し、よって、穀粒タンク7に貯留した単粒化穀粒を、トラックの荷台などの所望の排出位置に排出することができる。このように、アンローダ8は、脱穀装置4の上方空間において旋回操作自在にかつ昇降操作自在に備えられている。
【0028】
図3〜11に示すように、脱穀装置4は、車体フレーム1に連結される下部ケース11と、その下部ケース11に開閉操作可能に連結される上部ケース12とで形成される処理空間に、脱穀部13と選別部14と回収部15とを備えて構成されている。
【0029】
脱穀部13は、下部ケース11の左側上部に着脱可能に敷設した受網16と上部ケース12とで扱室17が形成され、上部ケース12に備えた扱胴18と受網16との間に脱穀経路19が形成され、下部ケース11の左端上部に配備したフィードチェーン20と、上部ケース12の左端下部に配備した挟持レール21とで、刈取穀稈の穂先側が脱穀経路19を通るように刈取穀稈の株元側を後方に向けて挾持搬送する挾持搬送機構22が構成されている。
【0030】
受網16は、扱胴18の外周に沿って湾曲する円弧状に形成され、かつ、扱胴18の周方向に2分割可能に構成された格子状のコンケーブ受網であって、その前端部が、下部ケース11の前壁11Aに備えた円弧状の支持フレーム23に、扱胴18の周方向に相対摺動可能に支持され、その後端部が、下部ケース11の補助壁11Bに備えた円弧状の支持フレーム24に、扱胴18の周方向に相対摺動可能に支持され、下部ケース11に対する固定を解除して、前後の支持フレーム23,24に沿って移動させることで、下部ケース11に対してその左端部から着脱することができる。
【0031】
下部ケース11の前壁11Aは、上部ケース12の前壁12Aを受け止め支持する支持部材として機能し、下部ケース11の補助壁11Bは、上部ケース12の後壁12Bを受け止め支持する支持部材として機能するように構成されている。
【0032】
扱胴18は、上部ケース12の前壁12Aと後壁12Bとにわたって前後向きに架設した支軸25に、第1処理胴18Aと第2処理胴18Bとを相対回動可能に支持させて構成した前後2分割構造で、それらの処理胴18A,18Bが支軸25を支点にして回転駆動されることで、それらの外周部に備えた複数の扱歯18a,18bで、脱穀経路19に搬送された刈取穀稈の穂先側に対して脱穀処理を施しながら、その脱穀処理で得られた処理物を受網16から選別部14に向けて漏下させ、受網16から漏下しなかった処理物を、後側の支持フレーム24の底部に形成した送塵口26から選別部14に向けて排出する。
【0033】
第1処理胴18Aは、その前端部に一体装備した入力プーリ27に、脱穀クラッチを介して脱穀装置4に伝達されたエンジン動力が、第1伝動ベルト28などを介して分配供給されることで、支軸25を支点にして、第2処理胴18Bよりも遅い速度で正面視右回りに回転する。
【0034】
第2処理胴18Bは、その後端部に一体装備した入力プーリ29に、第1伝動ベルト28で分配されたエンジン動力が、前後向きの伝動軸30や第2伝動ベルト31などを介して伝達されることで、支軸25を支点にして、第1処理胴18Aよりも速い速度で正面視右回りに回転する。
【0035】
選別部14は、粗選別部32Aと精選別部32Bとを上下に備えた揺動選別機構32、選別風を生起する主唐箕33と第1副唐箕34と第2副唐箕35、送塵口26からの処理物などに作用する拡散胴36、及び、選別風で吹き分けられたワラ屑などの塵埃を吸引して車外に排出する排塵ファン37、などを備えて構成され、それらには、脱穀クラッチを介して脱穀装置4に伝達されたエンジン動力が、図外の伝動ベルトなどを介して分配供給されている。
【0036】
揺動選別機構32は、分配動力で揺動駆動されることで、粗選別部32Aが、脱穀部13の受網16から漏下した処理物や送塵口26から搬出された処理物に対して篩い選別処理を施して、それらの処理物のうちの、単粒化穀粒や未脱穀粒などは漏下させながら、切れワラやワラ屑などを、下部フレーム11の後壁11Cに形成した排塵口11aに向けて移送し、排塵口11aから車外に排出する。又、精選別部32Bが、粗選別部32Aから漏下した単粒化穀粒や未脱穀粒などに篩い選別を施して、単粒化穀粒を漏下させながら未脱穀粒などを後方(選別処理方向下手側)に向けて移送する。
【0037】
主唐箕33は、分配動力で回転駆動されることで、精選別部32Bの前下方から排塵口11aに向けて流動する選別風を生起して、粗選別部32Aからの処理物に含まれたワラ屑などの塵埃を排塵口11aに向けて風力搬送する。
【0038】
第1副唐箕33は、分配動力で回転駆動されることで、粗選別部32Aの前部下方から排塵口11aに向けて流動する選別風を生起して、受網16からの処理物に含まれたワラ屑などの塵埃を排塵口11aに向けて風力搬送する。
【0039】
第2副唐箕35は、分配動力で回転駆動されることで、精選別部32Bの後部下方から排塵口11aに向けて流動する選別風を生起して、粗選別部32Aの後部からの処理物に含まれたワラ屑などの塵埃を排塵口11aに向けて風力搬送する。
【0040】
拡散胴36は、分配動力で回転駆動されることで、送塵口26から粗選別部32Aに排出された処理物などをほぐして、その処理物に含まれる単粒化穀粒や未脱穀粒などの粗選別部32Aからの漏下を促進させる。
【0041】
排塵ファン37は、分配動力で回転駆動されることで、選別風で風力搬送されたワラ屑などの塵埃を吸引して排塵口11aから車外に排出する。
【0042】
これによって、脱穀部13からの処理物を、精選別部32Bから漏下する1番物としての単粒化穀粒、精選別部32Bの後方に供給される2番物としての未脱穀粒などを含む混在物、及び、排塵口11aから車外に排出される3番物としての切れワラやワラ屑などの塵埃、などに精度良く選別することができる。
【0043】
回収部15は、精選別部32Bから漏下した単粒化穀粒を、精選別部32Bの下方に形成した1番回収部38で回収し、精選別部32Bから漏下しなかった未脱穀粒や、粗選別部32Aの後部から漏下した未脱穀粒などを、1番回収部38の後方に形成した2番回収部39で回収する。
【0044】
回収部15には、脱穀クラッチを介して脱穀装置4に伝達されたエンジン動力が、図外の伝動ベルトなどを介して分配供給されており、この動力で、1番回収部38の底部に備えた1番スクリュー40と、その右端部と穀粒タンク7の上端部とにわたって立設した1番縦スクリュー41とが駆動されることで、1番回収部38で回収した単粒化穀粒を穀粒タンク7に向けて供給搬送する。又、2番回収部39の底部に備えた2番スクリュー42と、その右端部と選別部14の上部とにわたって立設した2番還元スクリュー43とが駆動されることで、2番回収部39で回収した混在物を2番還元スクリュー43の上端部に向けて搬送し、その上端部から揺動選別機構32の前部に向けて放出還元する。
【0045】
2番還元スクリュー43には、2番回収部39で回収した混在物に対して再脱穀処理を施す2番処理銅(図示せず)が装備されている。
【0046】
下部ケース11の右上部には、その前壁11Aと補助壁11Bとを連結することで下部ケース11の上部を補強する補強フレーム44が配備されている。補強フレーム44は、伝動軸30を内装する伝動ケースとしての機能と、上部ケース12を上下揺動可能に支持する支軸としての機能とを有するように、丸パイプ材などによって構成されている。
【0047】
上部ケース12は、その前壁12A及び後壁12Bが、補強フレーム44の前後両端部に相対回動可能に支持されたブラケット45,46に連結されており、これによって、補強フレーム44を支点にした下部ケース11に対する上下揺動が許容されている。
【0048】
つまり、上部ケース12は、補強フレーム44を支点にした上下揺動で、下部ケース11に対して開閉操作されるように、下部ケース11に連結されている。
【0049】
上部ケース12は、前後のブラケット45,46にわたって架設した角パイプ材などからなる補強フレーム47によって、その揺動支点部が補強されている。
【0050】
図4〜15に示すように、上部ケース12の開閉操作は、指令手段48からの開操作指令及び閉操作指令と、開閉位置検出手段49によって検出される上部ケース12の開閉位置とに基づいて、マイクロコンピュータなどを備えて構成された制御装置50が、上部ケース12を開閉駆動する開閉駆動手段51の作動を制御することで行われる。
【0051】
指令手段48は、搭乗運転部に備えた自動復帰型の押しボタンスイッチからなる開スイッチ52と閉スイッチ53とで構成されている。開スイッチ52及び閉スイッチ53は、非操作位置から復帰付勢に抗して押圧操作が行われて操作位置に位置すると、接点信号が出力されるモーメンタリスイッチにて構成されており、開スイッチ52は、操作位置に押圧操作されている間、制御装置50に対して開操作指令を出力し、閉スイッチ53は、操作位置に押圧操作されている間、制御装置50に対して閉操作指令を出力する(図12参照)。
【0052】
つまり、指令手段48は、上部ケース12の開操作を指令自在な開操作用指令操作部としての開スイッチ52と上部ケース12の閉操作を指令自在な閉操作用指令操作部としての閉スイッチ53とを備えて構成され、開スイッチ52及び閉スイッチ53の夫々は、非操作位置に復帰付勢させた状態で設けられ、かつ、操作位置に操作されていると上部ケース12についての対応する操作を指令するように構成されている。
【0053】
開閉位置検出手段49は、回転式のポテンショメータからなり、前側のブラケット45に対する上方からの接当状態が維持されるようにバネ付勢された連係アーム54などを介して、補強フレーム44を支点にした前側のブラケット45の揺動角度を上部ケース12の開閉位置として検出するように構成されている(図13〜15参照)。
【0054】
制御装置50は、開スイッチ52又は閉スイッチ53からの指令情報と、開閉位置検出手段49からの検出情報に基づいて、上部ケース12が、予め設定した作業位置と第1メンテナンス位置と第2メンテナンス位置の3位置のうちの指令情報に対応する位置に切り換え保持されるように、開閉駆動手段51の作動を制御するように構成されている(図12参照)。
【0055】
作業位置は、下部ケース11の前壁11A及び補助壁11Bによって、上部ケース12の前壁12A及び後壁12Bが受け止め支持される全閉位置であり、この位置では、挟持搬送機構22による刈取穀稈の挾持搬送が可能となるように挟持レール21がフィードチェーン20に近接し、かつ、扱胴に18よる刈取穀稈に対する脱穀処理が可能となるように扱胴18が受網16に近接する(図5〜9及び図13参照)。
【0056】
第1メンテナンス位置は、開閉駆動手段51の作動で上部ケース12が下部ケース11から最も離れる全開位置であり、この位置では、受網16と扱胴18との間が大きく開放されるように、扱胴18及び挟持レール21が受網16及びフィードチェーン20から離間する(図11及び図15参照)。
【0057】
第2メンテナンス位置は、扱胴18の最下部が、挟持レール21に対向するフィードチェーン20の搬送面側の高さ位置と略同じ高さに位置する開閉途中位置であり、この位置では、扱胴18及び挟持レール21が、受網16及びフィードチェーン20から、それらの間の脱穀経路19に詰まった刈取穀稈の除去を可能にする程度に比較的小さく離間する(図10及び図14参照)。
【0058】
つまり、脱穀作業を行う場合には、上部ケース12を作業位置に位置させることで、刈取穀稈の穂先側が受網16と扱胴18との間を通るように、刈取穀稈の株元側を挟持搬送機構22によって挾持搬送することができ、その穂先側に対して扱胴18による脱穀処理を適切に施すことができる。
【0059】
又、受網16や扱胴18の清掃あるいは受網16の交換などを行う場合には、上部ケース12を第1メンテナンス位置に位置させることで、受網16や扱胴18の清掃、受網16の交換、あるいは、扱歯18a,18bの補修、といった受網16や扱胴18などに対するメンテナンスを容易に行える。
【0060】
そして、脱穀経路19において刈取穀稈の詰まりが生じた場合には、上部ケース12を第2メンテナンス位置に位置させることで、詰まった刈取穀稈を脱穀経路19から取り除いてフィードチェーン20の搬送始端部に載置する、などの詰まり穀稈に対する適切な処置を容易に施すことができる。
【0061】
しかも、その第2メンテナンス位置では、挟持搬送機構22で挾持搬送されていた刈取穀稈が長稈であることや、刈取穀稈の株元側に泥が付着していることで、上部ケース12の第2メンテナンス位置への開操作に伴って、刈取穀稈が、そのフィードチェーン20から外方に延出する株元側の重みで、フィードチェーン20を支点にして、穂先側が浮き上がる外下がり方向に姿勢変更するようになっても、その穂先側が扱胴18によって受け止められて、扱胴18とフィードチェーン20とで支持された状態になることから、穂先側を大きく浮き上がらせた外下がり傾斜姿勢への刈取穀稈の姿勢変更が阻止されるようになり、結果、その姿勢変更に起因した刈取穀稈の車体外方への滑落を未然に回避することができ、滑落した刈取穀稈を拾い集める手間を無くすことができる。
【0062】
図4及び図7〜12に示すように、開閉駆動手段51は、下部ケース11と上部ケース12とにわたって架設した復動型の油圧シリンダ55、油圧シリンダ55に対する作動油の流動を制御する電磁制御弁56、及び、電磁制御弁56に向けて作動油を圧送する油圧ポンプ57、油圧シリンダ55を収縮側に作動させるときの作動油の油圧の上限を規定するリリーフ弁などによって、上部ケース12を油圧で開閉駆動する油圧駆動式に構成されている。
【0063】
油圧シリンダ55は、後側の支持フレーム24と、その右外方に立設した2番還元スクリュー43との間に、支持フレーム24の前後幅内に位置するように配置されている。
【0064】
つまり、油圧シリンダ55は、受網16から揺動選別機構32への処理物の漏下、支持フレーム24の底部に形成した送塵口26から揺動選別機構32への処理物の排出、及び、2番還元スクリュー43の上端部から揺動選別機構32の前部側への混在物の放出還元、などに差し障りのないように配備されている。
【0065】
電磁制御弁56は、3位置切り換え式で、制御装置50の制御作動によって、油圧シリンダ55を伸長させて上部ケース12を上昇揺動させる上昇位置56Uと、油圧シリンダ55を収縮させて上部ケース12を下降揺動させる下降位置56Dと、油圧シリンダ55の伸縮を停止させて上部ケース12の昇降揺動を停止させる停止位置56Nとに切り換わる。電磁制御弁56は、停止位置56Nに復帰付勢されており、ソレノイドコイルを励磁状態にすることにより上昇位置56U及び下降位置56Dに、また、非励磁状態にすることにより停止位置56Nに切り換えられる。
【0066】
油圧ポンプ57は、エンジン9からの動力で駆動されるようにエンジン9に連動連結されている(図12参照)。つまり、上部ケース12は、エンジン動力で駆動される油圧ポンプ57からの作動油で開閉駆動されるように構成されている。
【0067】
図5〜8及び図12に示すように、脱穀装置4には、上部ケース12の作業位置からの開操作を阻止する固定状態と、上部ケース12の作業位置からの開操作を許容する解除状態とに切り換え可能に構成された固定手段58が装備され、固定手段58は、前後一対の固定機構59,60によって構成されている。
【0068】
前側の固定機構59は、下部ケース11の前壁11Aに前後向きの支軸61を介して上下揺動可能に装備した第1フック62と、上部ケース12の前壁12Aから下部ケース11の前壁11Aに向けて延設した延出部材63の延出端に前向きに突設した第1ピン64によって構成されている。後側の固定機構60は、下部ケース11の補助壁11Bに後向きに突設した第2ピン65と、上部ケース12の後壁12Bに前後向きの支軸66を介して上下揺動可能に装備した第2フック67によって構成されている。
【0069】
第1フック62は、下部ケース11の前壁11Aに備えた第1電動モータ(切換駆動手段の一例)68で駆動されるピニオンギヤ69と噛合するセクタギヤ62Aが一体装備され、第1電動モータ68の作動で、第1ピン64に対して上方から係合する係合位置と、第1ピン64との係合を解除する非係合位置とにわたって、支軸61を支点にして揺動駆動される。
【0070】
第2フック67は、上部ケース12の後壁12Bに備えた第2電動モータ(切換駆動手段の一例)70で駆動されるピニオンギヤ71と噛合するセクタギヤ67Aが一体装備され、第2電動モータ70の作動で、第2ピン65に対して下方から係合する係合位置と、第2ピン65との係合を解除する非係合位置とにわたって、支軸66を支点にして揺動駆動される。
【0071】
つまり、固定手段58は、第1電動モータ68及び第2電動モータ70の作動で、第1フック62及び第2フック67が係合位置に向けて揺動駆動されることで固定状態に切り換わり、第1フック62及び第2フック67が非係合位置に向けて揺動駆動されることで解除状態に切り換わるように構成されている。
【0072】
これによって、脱穀経路19において刈取穀稈の詰まりが生じたことで、第1ピン64又は第2ピン65に対する第1フック62又は第2フック67の係合が強固になった場合であっても、第1電動モータ68及び第2電動モータ70の作動で、それらの係合を容易に解除することができ、脱穀経路19での穀稈詰まりに対する対処を迅速に行える。
【0073】
また、刈取穀稈の詰まりにより第1ピン64又は第2ピン65に対する第1フック62又は第2フック67の係合が強固になった場合であっても、第1電動モータ68及び第2電動モータ70を作動させる前に、電磁制御弁56を停止位置56Nから下降位置56Dに切り換えて、開閉駆動手段51にて上部ケース12を作業位置にできるだけ引き下げた状態とすることで、第1ピン64又は第2ピン65に対する第1フック62又は第2フック67の係合を緩めることができるので、第1フック62及び第2フック67を非係合位置に向けて揺動駆動するときの第1電動モータ68及び第2電動モータ70の負荷を低減させて確実にこれらの電動モータを作動させることができる。
【0074】
図5〜8及び図12に示すように、固定手段58の切り換え操作は、開スイッチ52又は閉スイッチ53からの指令情報と、開閉位置検出手段49からの検出情報と、作動検出手段72(固定状態検出手段の一例)によって検出される固定手段58の作動状態とに基づいて、制御装置50が、第1電動モータ68及び第2電動モータ70の作動を制御することで行われる。
【0075】
作動検出手段72は、下部ケース11の前壁11Aに備えた第1位置センサ73と、上部ケース12の後壁12Bに備えた第2位置センサ74とで構成され、第1位置センサ73は、支軸61を支点にした第1フック62の揺動操作位置を、連係リンク75を介して検出する回転式のポテンショメータで構成され、第2位置センサ74は、支軸66を支点にした第2フック67の揺動操作位置を、連係リンク76を介して検出する回転式のポテンショメータで構成されている。
【0076】
つまり、作動検出手段72は、第1位置センサ73が第1フック62の係合位置への到達を検出し、かつ、第2位置センサ74が第2フック67の係合位置への到達を検出することで、固定手段58の固定状態を検出し、又、第1位置センサ73が第1フック62の非係合位置への到達を検出し、かつ、第2位置センサ74が第2フック67の非係合位置への到達を検出することで、固定手段58の解除状態を検出するように構成されている。
【0077】
図1〜3、図7,図8、図16及び図17に示すように、排ワラ搬送装置5は、挟持搬送機構22で搬送された排ワラを受け取るために、その搬送始端部が、挟持搬送機構22の搬送終端部が位置する下部ケース11の後部左上方に配置されている。下部ケース11には、排ワラ搬送装置5の搬送始端部を支持する支持フレーム77が装備されている。支持フレーム77は、下部ケース11の左後端部に立設した後フレーム78の上部から、排ワラ搬送装置5の搬送始端部に向けて、排ワラ搬送装置5の排ワラ搬送経路79を迂回しながら延出するように形成した丸パイプ材からなる前後向きの第1フレーム80、及び、下部ケース11の右上部に前後向きに配備した右上フレーム81から、排ワラ搬送装置5の搬送始端部に向けて延設した丸パイプ材からなる左右向きの第2フレーム82、などで構成されている。第1フレーム80と第2フレーム82は、それらの延出端部が溶接されている。
【0078】
上部ケース12において、その左上部に前後向きに配備した角パイプ材からなる左上フレーム83は、その延出端部(後端部)が第1フレーム80の延出端部(前端部)と重合するように、第1フレーム80の延出端部に向けて延出し、その重合する左上フレーム83の延出端部と第1フレーム80の延出端部との間に、上部ケース12が作業位置に位置する場合に、左上フレーム83を第1フレーム80に着脱可能に連結する連結手段84が装備されている。
【0079】
つまり、連結手段84によって、下部ケース11の支持フレーム77に上部ケース12の左上フレーム83を連結することができ、これによって、排ワラ搬送装置5の搬送始端部を、下部ケース11の支持フレーム77と上部ケース12の左上フレーム83によって、より高い支持強度で、より安定性良く支持することができる。
【0080】
連結手段84は、第1フレーム80の延出端部に前後向きに備えた固定ピン85と、左上フレーム83に備えた前後向きの回動軸86の後端部に一体装備したフック87によって構成されている。
【0081】
回動軸86は、第2フック67の係合位置への操作に連動してフック87が固定ピン85に係合し、第2フック67の非係合位置への操作に連動してフック87が固定ピン85との係合を解除するように、その前端部が屈曲リンク88を介して第2フック67に連動連結されている。
【0082】
つまり、連結手段84は、第2電動モータ70の作動で、後側の固定機構60が固定状態に切り換わるのに伴って、支持フレーム77に左上フレーム83を連結する連結状態に切り換わり、後側の固定機構60が解除状態に切り換わるのに伴って、支持フレーム77に対する左上フレーム83の連結を解除する解除状態に切り換わるように構成されている。
【0083】
これによって、連結手段84を人為操作式に構成する場合に比較して操作性の向上を図れるようになり、又、連結手段84を切り換え駆動する専用の切換駆動手段を設ける場合に比較して構成の簡素化やコストの削減を図れるようになり、更に、連結手段84の操作を独立して行う場合に招く虞のある連結手段84の操作忘れを未然に回避することができる。
【0084】
又、排ワラ返送経路79の上方に位置する上部ケース12に、固定手段58の第2フック67、第2電動モータ70、及び、連結手段84のフック87を装備したことで、それらの連係を、それらを下部ケース11に装備する場合のように排ワラ返送経路79を迂回しながら行う、といった手間を要することなく行えるようになり、結果、連係構成の簡素化を図ることができる。
【0085】
図4〜6、図12〜15及び図18に示すように、脱穀装置4には、上部ケース12の第1メンテナンス位置及び第2メンテナンス位置からの落下を防止する落下防止機構89が装備されている。落下防止機構89は、前側のブラケット45、そのブラケット45に形成した第1凹部45a及び第2凹部45bに対する前方からの係合が可能となるように下部ケース11の前壁11Aに前後方向に出退可能に装備した係合ピン90、及び、係合ピン90に形成した雌ネジ部90Aに螺合するネジ軸91を介して係合ピン90を出退操作するピン出退用電動モータ92などによって構成されている。
【0086】
第1凹部45aは、前側のブラケット45における、上部ケース12が第1メンテナンス位置まで開操作された場合に係合ピン90と対向する位置に形成され、第2凹部45bは、前側のブラケット45における、上部ケース12が第2メンテナンス位置まで開操作された場合に係合ピン90と対向する位置に形成されている。
【0087】
つまり、落下防止機構89は、係合ピン90を第1凹部45aに係合することで、上部ケース12の第1メンテナンス位置からの落下を防止し、係合ピン90を第2凹部45bに係合することで、上部ケース12の第2メンテナンス位置からの落下を防止する。これによって、上部ケース12を第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置に位置させた場合に作動油のリークが生じても、それらの位置に上部ケース12を確実に維持することができる。
【0088】
係合ピン90の出退操作は、開スイッチ52又は閉スイッチ53からの指令情報と、開閉位置検出手段49からの検出情報と、係合ピン90の出退位置を検出する出退検出手段99からの検出情報とに基づいて、制御装置50が、ピン出退用電動モータ92の作動を制御することで行われる。
【0089】
出退検出手段99は、連係リンク100などを介して係合ピン90の予め設定した突出限界位置及び退避限界位置への到達を検出する回転式のポテンショメータで構成されている。突出限界位置は、係合ピン90がブラケット45の第1凹部45a又は第2凹部45bと確実に係合する位置であり、退避限界位置は、係合ピン90がブラケット45の第1凹部45a又は第2凹部45bとの係合を確実に解除する位置である。
【0090】
制御装置50の制御作動について説明すると、制御装置50が備えるマイクロコンピュータが周期的(例えば、10[μs]毎)に制御プログラムを繰り返し実行することにより、実行タイミング毎の開スイッチ52及び閉スイッチ53並びに開閉位置検出手段49等の各種検出手段の入力情報に基づいて、制御プログラムに従って演算が行われ、演算結果としてのモータや電磁制御弁等の各制御対象についての制御信号を出力するようになっている。
【0091】
具体的には、制御装置50は、開スイッチ52から開操作指令が指令されている間、開閉駆動手段51を上部ケース12の閉操作側に作動させた状態で固定手段58を固定状態から解除状態に切り換え、次に、上部ケース12を開操作(上昇駆動)し、第2メンテナンス位置や第1メンテナンス位置に位置させるべく、第1電動モータ68及び第2電動モータ70、開閉駆動手段51、並びに、ピン出退用電動モータ92の作動を制御するように構成されている。
【0092】
制御装置50は、開スイッチ52から上部ケース12の開操作指令が指令されている間は、上部ケース12の開操作についての一連の制御動作を進行させ、開操作指令が途絶えるとその時点で上部ケース12の開操作についての制御動作を中止する。また、開操作指令が継続して指令されていても、上部ケース12が第2メンテナンス位置に到達して落下防止機構89の係合ピン90が突出限界位置に到達すると、搭乗運転部に備えた第1報知灯93を点灯させて、上部ケース12の第2メンテナンス位置への到達を運転者に報知して、上部ケース12の開操作ついての制御動作を一旦停止させる。
【0093】
その後、当該開操作指令が中断されて改めて開操作指令が指令されると、上部ケース12の開操作についての制御動作を再開させ、上部ケース12が第1メンテナンス位置に到達して落下防止機構89の係合ピン90が突出限界位置に到達すると、第1報知灯93を消灯させ、かつ、搭乗運転部に備えた第2報知灯94を点灯させて、上部ケース12の第1メンテナンス位置への到達を運転者に報知して、上部ケース12の開操作についての制御動作を停止させるようになっている。
【0094】
また、閉スイッチ53から上部ケース12の閉操作指令が指令されると、制御装置50は、当該閉操作指令が指令されている間、上部ケース12の閉操作についての制御動作を進行させ、当該閉操作指令が途絶えるとその時点で上部ケース12の閉操作についての制御動作を中止する。
【0095】
このように、上部ケース12を開操作する場合には、開スイッチ52からの開操作指令に基づく制御装置50の制御作動によって、上部ケース12が一旦第2メンテナンス位置に位置した状態で停止することになる。その結果、上部ケース12の第1メンテナンス位置への開操作を指令する専用のスイッチと、第2メンテナンス位置への開操作を指令する専用のスイッチとを装備した場合に招く虞のある、作業中に発生した脱穀経路19での穀稈詰まりに対する処置を行おうとした際のスイッチの誤操作で、上部ケース12が作業位置から第1メンテナンス位置まで一挙に開操作されて、挟持搬送機構22で挾持搬送されていた刈取穀稈が、その株元側の重みで、フィードチェーン20を支点にして、穂先側を大きく浮き上がらせた外下がり傾斜姿勢に姿勢変更しながら車体外方に滑落する不都合の発生を未然に回避することができる。
【0096】
しかも、開スイッチ52及び閉スイッチ53を搭乗運転部に備えたことで、例えば、脱穀装置4に対するメンテナンスを行う場合には、油圧による上部ケース12の上昇操作を可能にするためのエンジン9の始動操作と、固定手段58の固定状態から解除状態への切り換えと、連結手段84の連結状態から解除状態への切り換えと、上部ケース12の作業位置から第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置への上昇操作と、開操作後のエンジン9の停止操作とを、搭乗運転部に居ながらの一連の操作で行えるようになる。又、脱穀装置4に対するメンテナンスを終了した場合には、油圧による上部ケース12の下降操作を可能にするためのエンジン9の始動操作と、上部ケース12の第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置から作業位置への下降操作と、固定手段58の解除状態から固定状態への切り換えと、連結手段84の解除状態から連結状態への切り換えと、作業位置での固定後のエンジン9の停止操作とを、搭乗運転部に居ながらの一連の操作で行えるようになる。
【0097】
その結果、上部ケース12を開閉操作する際の操作性の向上を図れる上に、受網16や扱胴18の清掃又は受網16の交換、あるいは、詰まった刈取穀稈を脱穀経路19から取り除いてフィードチェーン20の搬送始端部に載置する、などの脱穀装置4に対するメンテナンスを行う際の作業性の向上を図ることができる。
【0098】
図12に示すように、制御装置50は、脱穀クラッチレバーのクラッチ接続用操作位置を検出する脱穀クラッチレバーセンサ95(脱穀クラッチセンサの一例)からの検出情報に基づいて、脱穀クラッチの入り状態を検知している場合には、指令手段48の開スイッチ52にて開操作が指令されても固定手段58の第1電動モータ68及び第2電動モータ70並びに開閉駆動手段51を作動させないとともに、搭乗運転部に備えた第3報知灯96を点灯させて、脱穀クラッチが入り状態であることを運転者に報知するように構成されている。
【0099】
これによって、上部ケース12を第1メンテナンス位置や第2メンテナンス位置に開操作する場合には、脱穀クラッチを切り状態に切り換える必要が生じることになり、その結果、上部ケース12を第1メンテナンス位置又は第2メンテナンス位置に開操作して、脱穀装置4に対するメンテナンスを行う場合には、エンジン9にて駆動される油圧ポンプ57を備える開閉駆動手段51の構成から、上部ケース12の開操作を行う際にエンジン9を作動させる必要があっても、又、その開操作後にエンジン9の停止操作を忘れたとしても、上部ケース12を開操作する前の段階から扱胴18やフィードチェーン20などが停止した脱穀装置4の作動停止状態が現出されることになり、脱穀装置4に対するメンテナンスを脱穀装置4の作動停止状態で行えるようになる。
【0100】
脱穀クラッチレバーセンサ95は、脱穀クラッチレバーの切り位置への操作によって押圧操作されるリミットスイッチで構成されている。
【0101】
さらに、制御装置50は、脱穀装置4にて処理した穀粒を排出するアンローダ8の排出筒8Aの操作位置を検出する排出位置検出手段97からの検出情報に基づいて、排出筒8Aが予め設定した上部ケース開操作用の退避位置に位置していないことを検知している場合には、上部ケース12を開操作するとアンローダ8の排出筒8Aと干渉する位置に排出筒8Aが位置しているとして、指令手段48の開スイッチ52にて開操作指令が指令されても、第1電動モータ68及び第2電動モータ70並びに開閉駆動手段51を作動させないとともに、搭乗運転部に備えた第4報知灯98を点灯させて、排出筒8Aが退避位置に操作されていないことを運転者に報知するように構成されている。
【0102】
これによって、上部ケース12を第1メンテナンス位置や第2メンテナンス位置に開操作する際に、上部ケース12と排出筒8Aとが接触して損傷する虞を未然に回避することができる。
【0103】
排出位置検出手段97は、排出筒8Aの旋回角度を検出する回転式のポテンショメータを用いた旋回位置検出手段S1と、排出筒8Aの昇降揺動角度を検出する直動式のポテンショメータを用いた昇降位置検出手段S2とから構成されている。
【0104】
さらにまた、制御装置50は、作動検出手段72の検出情報に基づいて、固定手段58が固定状態でない場合には、脱穀クラッチの作動状態を切り換える脱穀クラッチ切換モータ102を作動させないように構成されている。
【0105】
これによって、指令手段48の開スイッチ52にて開操作指令が指令されて固定手段58が固定状態でなくなってから、メンテナンス作業が終了して、指令手段48の閉スイッチ53にて閉操作指令が指令されて上部ケース12が下降操作されて固定手段58が固定状態に切り換えられるまでの間は、扱胴18が停止した脱穀装置4の作動停止状態が維持されるので、メンテナンス作業の途中に扱胴18が作動を開始してメンテナンス作業が行い難くなることを防止でき、メンテナンス作業を行うための適切な作業状態を維持することができる。
【0106】
以下、上記のような上部ケース12の開閉操作についての制御動作を実現するために制御装置50のマイクロコンピュータが実行タイミングごとに処理する制御プログラムについて図19〜22のフローチャートに基づいて説明する。
【0107】
まず、図19のフローチャートに基づいて、制御装置50が実行するメインルーチンについて説明する。なお、制御装置50は、図19のフローチャートに図示された処理以外の多くの処理を実行するものであるが、説明の簡素化のため図示を省略している。
【0108】
ちなみに、図示を省略した処理としては、例えば、固定手段58や落下防止機構89の動作異常を検出し、ブザー乃至スピーカ等の音声報知手段や液晶表示パネルや報知灯等の表示報知手段を作動させる警報処理や、上部ケース12の作業位置、第1メンテナンス位置、及び第2メンテナンス位置の設定位置、固定手段58の固定状態及び解除状態における固定機構59、60の設定位置、並びに、落下防止機構89の係合ピン90の突出限界位置及び退避限界位置の設定位置等が、適正範囲内であるかどうか判別し、適正範囲外であれば警報出力する自己診断処理等がある。
【0109】
制御装置50は、ステップ#M1で指令手段48の開スイッチ52がオンであるかどうかを判別し、オンであれば、ステップ#M11に移行する。したがって、開スイッチ52が押圧操作されて開操作指令が指令されている間は、各実行タイミングにおいてステップ#M11以下の処理が実行される。
【0110】
ステップ#M11では、脱穀クラッチレバーセンサ95がオンしているかどうかを判別し、オンであれば、脱穀クラッチが入り状態であるとして、上部ケース12の開操作出力は行わず、ステップ#M12へ移行して第3報知灯96の点灯出力を行う。
【0111】
ステップ#M13では、排出位置検出手段97(旋回位置検出手段S1及び昇降位置検出手段S2)の検出情報に基づいて、アンローダ8が退避位置に位置しているかどうか判別する。アンローダ8が退避位置に位置していなければ、上部ケース12の開操作中に接触が予測されるとして、上部ケース12の開操作出力は行わず、ステップ#M12へ移行して第4報知灯98の点灯出力を行う。
【0112】
ステップ#M15では、開操作処理を実行する。詳しくは後述するが、開操作処理では、実行タイミングに応じて、第1電動モータ68及び第2電動モータ70や、開閉駆動手段51の電磁制御弁56や、落下防止機構89のピン出退用電動モータ92に対して必要な制御出力を行う。なお、ステップ#M15の開操作処理は、ステップ#M1とステップ#M11及びステップ#M12との判別結果に基づいて実行されるので、開スイッチ52にて開操作指令が指令された場合であって、脱穀クラッチが切り状態でかつアンローダ8が退避位置であるときに実行されることになる。
【0113】
制御装置50は、ステップ#M1で開スイッチ52がオフであると判別した場合は、ステップ#M16で、開操作処理における目標値をリセットする。詳しくは後述するが、この目標値は、開操作処理において実行される目標値設定処理にて設定されるものであり、具体的には、実行タイミングにおける上部ケース12の開閉位置に基づいて、第2メンテナンス位置か第1メンテナンス位置のいずれかが設定される。そして、開操作処理では、上部ケース12の開閉位置が、この目標値に対応した位置になるように開操作される。
【0114】
ステップ#M16の処理は、開スイッチ52がオフの場合に実行されるので、開スイッチ52がオンである間は実行されない。したがって、開スイッチ52が操作位置に押圧操作されて一旦開操作指令の指令が開始されると、開スイッチ52の押圧操作が解かれて非操作位置に復帰するまで、つまり、当該開操作指令が途絶えるまでは、目標値設定処理にて設定された目標値が維持されることになる。
【0115】
これにより、開操作指令により上部ケース12が第2メンテナンス位置に位置した後に、開スイッチ52の押圧操作が継続されて開操作指令が継続して指令されても、上部ケース12は、油圧シリンダ55により目標値に対応した位置である第2メンテナンス位置で位置保持された状態で停止し、その後、開スイッチ52の押圧操作が解放されると目標値がリセットされる。
【0116】
なお、その後、改めて開操作指令が指令されることで、開操作処理における目標値設定処理が実行され、その実行タイミングでの上部ケース12の開閉位置に応じた目標値として第1メンテナンス位置に対応した値が設定されることになる。
【0117】
制御装置50は、ステップ#M2で指令手段48の閉スイッチ53がオンであるかどうかを判別し、オンであれば、ステップ#M21に移行する。したがって、閉スイッチ53が押圧操作されて閉操作指令が指令されている間は、各実行タイミングにおいてステップ#M21の閉操作処理が実行される。
【0118】
制御装置50は、ステップ#M3で脱穀クラッチレバーセンサ95がオンしているかどうかを判別し、オンであれば、ステップ#M31へ移行する。ステップ#M31では、作動検出手段72(第1位置センサ73及び第2位置センサ74)の検出情報に基づいて、固定手段58が固定状態であるかどうか判別され、固定状態でなければ、脱穀装置4を停止状態で維持すべきであるとして、脱穀クラッチの入り状態への切り換え作動についての制御出力は行われず、ステップ#M32へ移行し、ステップ#M32で第5報知灯を点灯作動させる。
【0119】
固定手段58が固定状態であれば、脱穀装置4を作動状態に切り換えるべく、ステップ#M32へ移行してクラッチ接続処理が実行される。クラッチ接続処理では、脱穀クラッチ切換モータ102にて作動するクラッチ断続用のアクチュエータの作動位置を検出するクラッチ断続状態検出手段の検出情報に基づいて、予め設定されたクラッチ接続用の操作位置まで作動させ、その後、クラッチ接続用の操作位置に維持させるべく、脱穀クラッチ切換モータ102の作動を制御する処理である。
【0120】
なお、図19のフローチャートでは、省略しているが、脱穀クラッチレバーセンサ95のオンが検出されない場合(脱穀クラッチレバーが切り位置に位置する場合や、入り位置から離間して切り位置側に位置する場合)は、クラッチ断続状態検出手段の検出情報に基づいて、予め設定されたクラッチ切断用の操作位置まで作動させ、その後、クラッチ切断用の操作位置に維持させるべく、脱穀クラッチ断続用の脱穀クラッチ切換モータ102の作動を制御するクラッチ切断処理が実行される。
【0121】
これにより、脱穀クラッチレバーが入り操作されると、固定手段38が固定状態である場合にだけ脱穀装置4が停止状態から作動状態に切り換わり、固定手段38が固定状態でない場合には、脱穀装置4が停止状態に維持され、第5報知灯が点灯する。
【0122】
次に、図20のフローチャートに基づいて、開操作処理について説明する。
【0123】
ステップ#F1で、上部ケース12の開操作についての目標値が設定されているかどうか判別する。具体的には、制御装置50が備える記憶手段に、後述する目標値設定処理にて変更設定される変数の値を参照し、第1作業位置又は第2作業位置に対応する値が設定していれば、目標値が設定されていると判別する。開操作の目標値が設定されていなければ、ステップ#F11へ移行し、目標値設定処理を実行して開操作の目標値を設定する。
【0124】
目標値設定処理では、開閉位置検出手段49の検出情報に基づいて、当該実行タイミングにおける上部ケース12の開閉位置が、第2メンテナンス位置より低ければ、つまり、上部ケース12が第2メンテナンス位置より作業位置側にある場合(例えば、作業位置(全閉位置)にある場合や、作業位置と第2メンテナンス位置の中間位置にある場合)は、開操作の目標値として第2メンテナンス位置に対応する値が設定され、当該実行タイミングにおける上部ケース12の開閉位置が、第2メンテナンス位置より低くなければ、つまり、上部ケース12が第2メンテナンス位置より第1メンテナンス位置側にある場合(例えば、第2メンテナンス位置にある場合や、第2メンテナンス位置と第1メンテナンス位置(全開位置)の中間位置にある場合)は、開操作の目標値として第1メンテナンス位置に対応する値が設定される(図22参照)。
【0125】
ステップ#F2では、固定手段58が解除状態であるかどうかを、作動検出手段72の検出情報に基づいて判別する。解除状態でなければ、ステップ#F21及びステップ#F22の処理が実行される。ステップ#F21では、開閉駆動手段51の電磁制御弁56に対して下降位置56Dへの切り換え信号を出力する。ステップ#F22では、固定手段58の第1電動モータ68及び第2電動モータ70に対して逆転駆動を出力する。これにより、固定手段58が解除状態に至るまで、第1電動モータ68及び第2電動モータ70に対して逆転駆動が出力される。
【0126】
これにより、開操作指令が指令されてから固定手段58が解除状態になるまで、電磁制御弁56を下降位置56Dに維持して、上部ケース12を閉操作側に作動させた状態とするので、脱穀経路における刈取穀稈の詰まりに起因して、上部ケース12が第2メンテナンス位置に向う側に押し上げられて固定手段58による上部ケース12の作業位置での固定が強固となっている場合であっても、開閉駆動手段51にて上部ケース12が閉操作側に操作されることで、脱穀経路に詰まった刈取り穀稈が圧縮されて、上部ケース12が第2メンテナンス位置から離れる側に引き下げられることで、上部ケース12の作業位置での固定手段58による固定を緩めることができる。
【0127】
ステップ#F3では、上部ケース12が目標値に対応した開閉位置まで上昇操作されたかどうかを、開閉位置検出手段49の検出情報に基づいて判別する。上部ケース12の開閉位置が目標値に至っていなければ、ステップ#F31の処理が実行される。ステップ#F31では、開閉駆動手段51の電磁制御弁56に対して上昇位置56Uへの切り換え信号を出力する。
【0128】
これにより、作業位置にある上部ケース12を開操作する場合に、開操作指令が継続していれば、油圧シリンダ55を伸長作動させて上部ケース12を第2メンテナンス位置まで上昇作動させた後に、油圧シリンダ55の伸縮作動を停止させて上部ケース12を第2メンテナンス位置で一旦停止させることができ、また、第2メンテナンス位置にある上部ケース12を開操作する場合に、油圧シリンダ55を伸長作動させて上部ケース12を第1メンテナンス位置まで上昇作動させた後に、油圧シリンダ55の伸縮作動を停止させて上部ケース12を第1メンテナンス位置で停止させることができる。
【0129】
ステップ#F4では、落下防止機構89の係合ピン90が突出限界位置であるかどうかを、出退検出手段99の検出情報に基づいて判別する。係合ピン90が突出限界位置でなければ、ステップ#F41の処理が実行される。ステップ#F41では、落下防止機構89のピン出退用電動モータ92に対して正転駆動を出力する。
【0130】
これにより、第2メンテナンス位置(又は第1メンテナンス位置)に上部ケース12が位置している状態で、前側のブラケット45の第2凹部45b(又は第1凹部45a)に、係合させることができ、上部ケース12の第2メンテナンス位置(又は第1メンテナンス位置)からの落下を防止する。
【0131】
ステップ#F5では、上部ケース12の開閉位置が第1メンテナンス位置であるか第2メンテナンス位置であるかを、開閉位置検出手段49の検出情報に基づいて判別する。第2メンテナンス位置であれば、ステップ#F51で第1報知灯93を点灯状態に切り換え、第1メンテナンス位置であれば、ステップ#F52で第1報知灯93を消灯状態に切り換え、第2報知灯94を点灯状態に切り換える。
【0132】
これにより、第2メンテナンス位置への開操作が完了すれば第1報知灯93が点灯し、第1メンテナンス位置への開操作が完了すれば第1報知灯93に代えて第2報知灯94が点灯するので、作業者は、操縦部に居ながらにして上部ケース12の開操作の完了を認識できる。
【0133】
次に、図21のフローチャートに基づいて、閉操作処理について説明する。
【0134】
ステップ#R1では、落下防止機構89の係合ピン90が引退限界位置かどうかを、出退検出手段99の検出情報に基づいて判別する。引退限界位置でなければ、ステップ#R11の処理が実行される。ステップ#R11では、ピン出退用電動モータ92に対して逆転駆動を出力する。
【0135】
これにより、落下防止機構89の係合ピン90を引退限界位置まで引退させて、上部ケース12の下降を許容する。
【0136】
ステップ#R2では、上部ケース12が作業位置まで上昇操作されたかどうかを、開閉位置検出手段49の検出情報に基づいて判別する。上部ケース12の開閉位置が作業位置に至っていなければ、ステップ#R21の処理が実行される。ステップ#R21では、開閉駆動手段51の電磁制御弁56に対して下降位置56Dへの切り換え信号を出力する。
【0137】
これにより、第2メンテナンス位置(又は第1メンテナンス位置)にある上部ケース12を閉操作する場合に、閉操作指令が継続していれば、油圧シリンダ55を継続して収縮作動させて上部ケース12を作業位置まで下降作動させた後に、上部ケース12を停止させることができる。
【0138】
ステップ#R3では、固定手段58が固定状態であるかどうかを、作動検出手段72の検出情報に基づいて判別する。固定状態でなければ、ステップ#R31の処理が実行される。ステップ#R31では、固定手段58の第1電動モータ68及び第2電動モータ70に対して正転駆動を出力する。これにより、固定手段58が固定状態に至るまで、第1電動モータ68及び第2電動モータ70に対して正転駆動が出力される。
【0139】
ステップ#R4で、第1報知灯(又は第2報知灯)を消灯状態に切り換える。これにより、第2メンテナンス位置に位置する上部ケース12を閉操作した場合は、第1報知灯が消灯し、第1メンテナンス位置に位置する上部ケース12を閉操作した場合は、第2報知灯が消灯する。
【0140】
〔別実施形態〕以下、別実施形態を列記する。
【0141】
(1)上部ケース12としては、下部ケース11に対する上下摺動によって開閉操作されるように構成したものであってもよい。
【0142】
(2)受網16として樹脂網やクリンプ網などを採用してもよい。
【0143】
(3)扱胴18として、単一の処理胴から構成されたものを採用してもよく、又、螺旋歯を備えたものを採用してもよい。
【0144】
(4)指令手段48としては、単一の押しボタンスイッチによって、その押圧操作ごとに、固定手段58の固定状態から解除状態への切り換え操作、上部ケース12の作業位置から第2メンテナンス位置への上昇操作、上部ケース12の第2メンテナンス位置から第1メンテナンス位置への上昇操作、上部ケース12の第1メンテナンスから作業位置への下降操作、及び、固定手段58の解除状態から固定状態への切り換え操作を、その順に指令するように構成したものであってもよい。
【0145】
(5)指令手段48を、単一の押しボタンスイッチによって、その押圧操作ごとに、上部ケース12の作業位置から第2メンテナンス位置への上昇操作、第2メンテナンス位置から第1メンテナンス位置への上昇操作、及び、第1メンテナンスから作業位置への下降操作を、その順に指令するように構成してもよい。又、上部ケース12の作業位置、第1メンテナンス位置、又は、第2メンテナンス位置への操作を指令するそれぞれ専用の3つのスイッチを備えて構成してもよい。更に、操作位置に応じて、上部ケース12の作業位置、第1メンテナンス位置、又は、第2メンテナンス位置への操作を指令する3位置切り換え式の切換スイッチで構成してもよい。
【0146】
(6)制御手段として、開閉駆動手段51の作動を制御する開閉制御用の制御装置と、切換駆動手段68,70の作動を制御する切換制御用の制御装置とを格別に設けるようにしてもよい。この場合、開閉制御用の制御装置と切換制御用の制御装置とを連携して制御を行うように構成することで、切換制御用の制御装置にて固定手段を固定状態から解除状態に切り換える場合に、切換制御用の制御装置から開閉制御用の制御装置に対して閉操作要求を送信して、開閉制御用の制御装置にて開閉駆動手段51を上部ケース12の閉操作側に作動させた状態とすることができる。
【0147】
(7)制御手段としては、開閉駆動手段51の作動時間から上部ケース12の作業位置、第1メンテナンス位置、及び、第2メンテナンス位置への到達を検知するように構成したものであってもよい。
【0148】
(8)制御手段としては、指令手段48からの開操作指令に基づいて、脱穀クラッチの入り状態から切り状態への切り換え操作を行ってから、上部ケース12の開操作を行うように構成したものであってもよい。
【0149】
(9)開閉駆動手段51としては、単動型の油圧シリンダ、油圧モータ、電動シリンダ、又は電動モータ、などの作動で上部ケース12を開閉駆動するように構成したものであってもよい。
【0150】
(10)油圧ポンプ57としては、電動モータなどの専用の駆動装置で駆動されるように構成したものであってもよい。
【0151】
(11)固定手段58を、前側の固定機構59又は後側の固定機構60のみで構成するようにしてもよい。
【0152】
(12)固定手段58としては、前側の固定機構59における第1フック62を上部ケース12の前壁12Aに装備し、かつ、第1ピン64を下部ケース11の前壁11Aに突設したものであってもよい。又、後側の固定機構60における第2ピン65を上部ケース12の後壁12Bに突設し、第2フック67を下部ケース11の補助壁11Bに装備したものであってもよい。
【0153】
(13)固定手段58としては、下部ケース11と上部ケース12のいずれか一方に出退操作可能に装備した挿通ピンと、下部ケース11と上部ケース12のいずれか他方に形成した挿通孔とから、挿通ピンの挿通孔への挿通で上部ケース12を作業位置からの開操作を阻止し、挿通ピンの挿通孔への挿通解除で上部ケース12を作業位置からの開操作を許容するように構成したものであってもよい。
【0154】
(14)切換駆動手段68,70として、電動シリンダなどを採用するようにしてもよく、又、切換駆動手段68,70を、油圧シリンダ又は油圧モータなどの油圧アクチュエータや、その油圧アクチュエータに対する作動油の流動を切り換える切換弁などを備える油圧式に構成してもよい。
【0155】
(15)単一の切換駆動手段68(又は切換駆動手段70)で、固定手段58における前後の固定機構59,60を固定状態と解除状態とに切り換えるように構成してもよい。
【0156】
(16)脱穀クラッチセンサとしては、脱穀クラッチレバーの操作位置を検出する回転式のポテンショメータで構成したものであってもよく、又、脱穀クラッチの作動状態を直接検出するように構成したものであってもよい。
【0157】
(17)旋回位置検出手段及び昇降位置検出手段としては、ポテンショメータで構成されたものでなくてもよく、例えば、ロータリエンコーダで構成されたもの等、旋回位置検出手段及び昇降位置検出手段の具体構成は適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】自脱型コンバインの全体側面図
【図2】自脱型コンバインの全体平面図
【図3】脱穀装置の縦断側面図
【図4】脱穀部の横断平面図
【図5】固定手段で上部ケースを作業位置に固定した状態を示す脱穀装置の正面図
【図6】固定手段による上部ケースの作業位置での固定を解除した状態を示す脱穀装置の正面図
【図7】固定手段で上部ケースを作業位置に固定した状態を示す脱穀装置の縦断背面図
【図8】固定手段による上部ケースの作業位置での固定を解除した状態を示す脱穀装置の縦断背面図
【図9】上部ケースが作業位置に位置する状態を示す脱穀装置の縦断正面図
【図10】上部ケースが第2メンテナンス位置に位置する状態を示す脱穀装置の縦断正面図
【図11】上部ケースが第1メンテナンス位置に位置する状態を示す脱穀装置の縦断正面図
【図12】上部ケースの開閉操作に関する制御構成を示すブロック図
【図13】上部ケースの作業位置での開閉検出手段と落下防止機構の状態を示す要部の縦断正面図
【図14】上部ケースの第2メンテナンス位置での開閉検出手段と落下防止機構の状態を示す要部の縦断正面図
【図15】上部ケースの第1メンテナンス位置での開閉検出手段と落下防止機構の状態を示す要部の縦断正面図
【図16】連結手段の構成及び操作構造を示す要部の縦断側面図
【図17】連結手段の連結状態と連結解除状態とを示す要部の縦断背面図
【図18】落下防止機構の構成を示す要部の縦断側面図
【図19】制御装置が実行する制御プログラムのメインルーチンのフローチャート
【図20】開操作処理のフローチャート
【図21】閉操作処理のフローチャート
【図22】目標値設定処理のフローチャート
【符号の説明】
【0159】
8 アンローダ
11 下部ケース
12 上部ケース
16 受網
18 扱胴
48 開閉指令手段
50 制御手段
51 開閉駆動手段
58 固定手段
68 切換駆動手段
70 切換駆動手段
72 固定状態検出手段
95 脱穀クラッチセンサ
102 クラッチ切換手段
S1 旋回位置検出手段
S2 昇降位置検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受網を備えた下部ケースに、扱胴を備えた上部ケースが、前記扱胴が前記受網に近接する作業位置と前記扱胴が前記受網から離間するメンテナンス位置とにわたって開閉操作可能に連結され、
前記上部ケースの前記作業位置からの開操作を阻止する固定状態と前記開操作を許容する解除状態とに切り換え可能に構成された固定手段と、
前記上部ケースを開閉駆動する開閉駆動手段と、
前記開閉駆動手段の作動を制御する制御手段と、
前記上部ケースの開操作及び閉操作を前記制御手段に指令する開閉指令手段とが備えられた脱穀装置の開閉操作装置であって、
前記固定手段を切り換え駆動する切換駆動手段が設けられ、
前記制御手段が、前記開閉指令手段にて開操作が指令されると、前記開閉駆動手段を前記上部ケースの閉操作側に作動させた状態で前記固定手段を前記固定状態から前記解除状態に切り換え、次に、前記上部ケースを開操作するべく、前記切換駆動手段及び前記開閉駆動手段の作動を制御するように構成されている脱穀装置の開閉操作装置。
【請求項2】
前記扱胴への伝動を断続する脱穀クラッチの作動状態を検出する脱穀クラッチセンサが備えられ、
前記制御手段が、前記脱穀クラッチセンサの検出情報に基づいて、前記脱穀クラッチが入り状態である場合には、前記開閉指令手段にて開操作が指令されても前記切換駆動手段及び前記開閉駆動手段を作動させないように構成されている請求項1記載の脱穀装置の開閉操作装置。
【請求項3】
前記固定手段が固定状態であることを検出する固定状態検出手段が備えられ、
前記制御手段が、前記固定状態検出手段の検出情報に基づいて、前記固定手段が固定状態でない場合には、前記脱穀クラッチの作動状態を切り換えるクラッチ切換手段を作動させないように構成されている請求項2記載の脱穀装置の開閉操作装置。
【請求項4】
前記脱穀装置にて処理した穀粒を排出するアンローダが前記脱穀装置の上方空間において旋回操作自在にかつ昇降操作自在に備えられ、
前記アンローダの旋回位置を検出する旋回位置検出手段及び昇降位置を検出する昇降位置検出手段が備えられ、
前記制御手段が、前記旋回位置検出手段及び前記昇降位置検出手段の検出情報に基づいて、前記上部ケースを開操作すると前記アンローダと干渉する位置に前記アンローダが位置していると判別した場合には、前記開閉指令手段にて開操作が指令されても前記切換駆動手段及び前記開閉駆動手段を作動させないように構成されている請求項1〜3のいずれか1項記載の脱穀装置の開閉操作装置が備えられたコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−77692(P2009−77692A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251143(P2007−251143)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】