説明

脱穀装置の風検出装置

【課題】ノズルと流量センサを繋ぐパイプ部材の内部に屑が侵入したとしても、パイプ部材が屑で詰まることを防止し、パイプ部材の詰まりによる検出精度の低下を回避する。
【解決手段】脱穀装置1内の所定箇所における風速、風量及び/又は風圧を、前記所定箇所に配置したノズル72とパイプ部材73を介して連通される流量センサ74で検出する風検出装置71を備えた脱穀装置1において、パイプ部材73の中間部に、ノズル72と流量センサ74を繋ぐパイプ経路から突出して屑溜まりとなる屑溜まり部73aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの脱穀装置の風検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインなどの脱穀装置のなかには、脱穀装置内の所定箇所における風速、風量及び/又は風圧を検出する風検出装置を備えるものがある。例えば、特許文献1〜4に示される脱穀装置は、脱穀装置内の所定箇所における風速を検出するにあたり、風速に基づく風量変化を、前記所定箇所に配置したノズルとパイプ部材を介して連通される流量センサで検出するように構成されている。そして、風検出装置の検出値は、脱穀装置内における穀粒量と所定の関係を示すことから、特許文献1〜4の脱穀装置では、風検出装置の検出値に応じて、チャフシーブのフィン開度を自動的に制御するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−166370号公報
【特許文献2】特開2003−18908号公報
【特許文献3】特開2003−266020号公報
【特許文献4】特開2006−246783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような風検出装置では、ノズル側や流量センサ側(負圧による風量検出の場合)からパイプ部材の内部に屑が侵入する惧れがあるので、パイプ部材の一部が屑で詰まり、正常な検出処理が困難になるという不具合が生じる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、脱穀装置内の所定箇所における風速、風量及び/又は風圧を、前記所定箇所に配置したノズルとパイプ部材を介して連通される流量センサで検出する風検出装置を備えた脱穀装置において、前記パイプ部材の中間部に、ノズルと流量センサを繋ぐパイプ経路から突出して屑溜まりとなる屑溜まり部を設けたことを特徴とする。
また、前記ノズルから屑溜まり部に至るパイプ経路を下り傾斜状又は垂下状に配置したことを特徴とする。
また、前記流量センサから屑溜まり部に至るパイプ経路を下り傾斜状又は垂下状に配置したことを特徴とする。
また、前記屑溜まり部に、屑溜まり部内に溜った屑を取出すための屑取出口を形成すると共に、該屑取出口を開閉自在に覆う蓋部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、ノズルと流量センサを繋ぐパイプ部材の内部に屑が侵入したとしても、侵入した屑が屑溜まり部に溜まるので、パイプ部材が屑で詰まることを防止し、パイプ部材の詰まりによる検出精度の低下を回避できる。
また、請求項2の発明によれば、ノズルから屑溜まり部に至るパイプ経路内の屑を屑溜まり部に積極的に導くことができる。
また、請求項3の発明によれば、流量センサから屑溜まり部に至るパイプ経路内の屑を屑溜まり部に積極的に導くことができる。
また、請求項4の発明によれば、屑溜まり部に溜った屑を屑取出口を介して取出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】脱穀装置の側断面図である。
【図2】脱穀装置の正断面図である。
【図3】風検出装置の側面図である。
【図4】風検出装置の作用説明図である。
【図5】風検出装置の他例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はコンバインなどに搭載される脱穀装置であって、該脱穀装置1は、脱穀部11と、該脱穀部11の下方に配置される選別部31とを備えて構成されている。脱穀部11は、穀稈を挟持搬送するフィードチェーン12の搬送経路に沿って配置された第1扱室13と第2扱室15内に、それぞれ第1扱胴16と第2扱胴17が配置されている。
【0009】
前記第1扱室13の下部には、第1扱胴16により穀稈から扱ぎ落とされた被処理物を漏下させる受網18が配置され、第2扱室15の四番口20の下方には、第2扱胴17によって穀稈から扱ぎ落とされた被処理物を漏下させる受網21が配置されている。
【0010】
なお、フィードチェーン12の搬送終端部には、排藁チェーン22が配置され、脱穀後の排藁を排藁処理装置23へ搬送するようになっている。本実施形態の排藁処理装置23は、カッター装置で構成されており、排藁を適宜長さに切断して排出口25から排出する。
【0011】
選別部31は、ベース32と、該ベース32に立設された側板33と、該側板33や脱穀部11によって囲まれた選別室35とを備え、該選別室35内に揺動選別手段41と風選別手段51が配置されている。
【0012】
揺動選別手段41は、所定の周期で往復揺動する一対の揺動側板42と、該揺動側板42の間で受網18の下方に位置するように、揺動側板42の上流側に固定された揺動流板43と、揺動側板42の間で受網18の後端部から受網21の下方に位置するように、揺動側板42の中流域から下流側にかけて支持され、複数のフィン45が揺動自在に配置されたチャフシーブ46と、揺動側板42の下流側に支持されたストロラック47と、チャフシーブ46を漏下した被選別物から穀粒を漏下させるグレンシーブ48とを備えている。
【0013】
風選別手段51は、揺動流板43の下方に配置された唐箕ファン52で構成され、その送風口53には整流板55が配置されている。唐箕ファン52から吹き出される選別風は、グレンシーブ48及びチャフシーブ46のフィン45の間を通過して、被選別物に含まれる夾雑物を排除する。
【0014】
選別室35には、唐箕ファン52の他に、選別された穀流を搬送する一番ラセン61と、ストロラック47上に落下した被選別物の夾雑物を排除する二番選別ファン62と、ストロラック47を漏下した被選別物を揺動流板43上に還流させる二番ラセン63とが配置されている。また、選別室35の後端には、排塵口65が形成され、排塵ファン66が配置されている。
【0015】
選別室35を構成する側板33の外側には、風検出装置71が構成されている。風検出装置71は、脱穀装置1内の所定箇所における風速、風量及び/又は風圧を検出するためのものであり、たとえば、選別室35内の風速に基づく風量変化を、所定箇所に配置したノズル72とパイプ部材73を介して連通される流量センサ74で検出するように構成されている。
【0016】
図3及び図4に示すように、流量センサ74としては、周囲温度を検出する周囲温度センサと、吸込口74aから吐出口74bに至る検出風路中に、吸込口74aから吸い込まれた空気の温度を検出する風上側温度センサと、吸込口74aから吸込まれた空気が周囲温度より所定温度だけ高くなるように加熱するヒータと、該ヒータの下流側に配置された風下側温度センサとが組込まれた検出チップを内蔵し、風上側温度センサと風下側温度センサで検出した温度差に基づいて風量の検出を行うものを用いることができる。なお、負圧による風量検出の場合は、吸込口74aと吐出口74bの関係が逆になるようにパイプ部材73の接続を行う。
【0017】
上記のように構成された脱穀装置1おいて、脱穀部11と選別部31を作動させ、フィードチェーン12で搬送される穀稈を供給すると、第1扱胴16で脱穀されて受網18を漏下した被選別物は、揺動流板43上に落下し、該揺動流板43上で略均等な厚さの層状に均された状態でチャフシーブ46のフィン45上に送り込まれる。チャフシーブ46のフィン45上に送り込まれた被選別物は、唐箕ファン52から送風され、グレンシーブ48を介してチャフシーブ46のフィン45の間を通る選別風により、被選別物内の夾雑物が吹き飛ばされて、該フィン45の間から穀粒がグレンシーブ48上に落下し、ここから漏下する。このときも、唐箕ファン52からの選別風により被選別物中の夾雑物が吹き飛ばされて穀粒が一番ラセン61に集められる。
【0018】
2番扱胴17で扱ぎ落とされた被選別物は、四番口20から受網21上に落下し、受け網21を漏下した被選別物は、チャフシーブ46の下流側に落下する。チャフシーブ46で選別し切れなかった被選別物は、チャフシーブ46の後端からストロラック47上に落下して、二番選別ファン62からの選別風により被選別物中の夾雑物が吹き飛ばされ、残りの被選別物が2番ラセン63に集められ、該二番ラセン63により揺動流板43又はチャフシーブ46上に還流される。
【0019】
唐箕ファン52及び二番選別ファン62からの選別風により吹き飛ばされた夾雑物は、排塵ファン66に吸引され、排塵口65から排出される。
【0020】
唐箕ファン52からの送風は、揺動選別手段41のチャフシーブ46上で流動する被選別物の層の厚さでその流速が変化する。たとえば、チャフシーブ46上の被選別物の量が多くなれば風量が減少し、該チャフシーブ46上の被選別物の量が少なくなれば風量が増加する。
【0021】
したがって、唐箕ファン52の送風口53に配置された整流板55の下方にノズル72を配置すれば、唐箕ファン52から送風される選別風の風量変化(又は風速変化)を流量センサ74で検出することができる。そして、唐箕ファン52からの風量が一定となるように、チャフシーブ46のフィン45の開度を自動制御することにより、安定した選別作業を行うことが可能になる。
【0022】
次に、本発明の要部である風検出装置71について、図3〜図5を参照して説明する。
【0023】
前述のように、風検出装置71は、ノズル72と、パイプ部材73と、流量センサ74とを備えて構成されている。ノズル72は、選別室35の側板33を貫通するように設けられ、一端の吸込口72aが選別室35内の所定箇所(風検出箇所)に配置される。ノズル72の他端は、側板33の外面側でパイプ部材73に接続される。なお、本実施形態では、ノズル72の他端側を長くし、パイプ部材73の一部として兼用している。つまり、特許請求の範囲におけるパイプ部材には、ノズルの他端側が含まれる。
【0024】
流量センサ74としては、前述した流量検出方式の他、任意の流量検出方式のものを適用することができる。本実施形態の流量センサ74は、センサ用カバー体75に覆われた状態で側板33の外面側に固定されている。
【0025】
パイプ部材73は、ノズル72の他端側と流量センサ74の吸込口74a(背圧検出の場合は吐出口74b)とを繋ぎ、脱穀装置1内の所定箇所における風速、風量及び/又は風圧を流量センサ74に検出させる。パイプ部材73としては、任意の材料で形成されたものを用いることが可能であるが、ビニールチューブなどの透明な可撓性パイプを用いることが好ましい。このようにすると、パイプ部材73の配管が容易になるだけでなく、パイプ内部の状態を目視で確認することが可能になる。
【0026】
パイプ部材73の中間部には、ノズル72と流量センサ74を繋ぐパイプ経路から突出して屑溜まりとなる屑溜まり部73aが設けられている。たとえば、ノズル72と流量センサ74を繋ぐパイプ経路を中間部で2本のパイプ73b、73bに分割すると共に、各パイプ73b、73bを三又継手73cの接続口に接続し、該三又継手73cの余った接続口に、他端開口が蓋部材73dで覆われたパイプ73eを接続して屑溜まり部73aとする。このようにすると、ノズル72と流量センサ74を繋ぐパイプ部材73の内部に屑が侵入したとしても、侵入した屑が屑溜まり部73aに溜まるので、パイプ部材73が屑で詰まることを防止し、パイプ部材73の詰まりによる検出精度の低下を回避できる。
【0027】
屑溜まり部73aを構成するパイプ73eの他端開口は、屑溜まり部73a内に溜った屑を取出すための屑取出口73fとして使用することができる。この場合、パイプ73aの他端開口を塞ぐ蓋部材73dは、屑取出口73fを開閉自在に覆うように構成される。たとえば、パイプ73eの他端部に着脱自在に嵌合するキャップ部材で蓋部材73dを構成する。このようにすると、屑溜まり部73aに溜った屑を屑取出口73fを介して取出すことができるので、メンテナンスが容易になる。
【0028】
上記のようにパイプ部材73の中間部に屑溜まり部73aを設ける場合、ノズル72から屑溜まり部73aに至るパイプ経路は、下り傾斜状又は垂下状に配置することが好ましい。このようにすると、ノズル72から屑溜まり部73aに至るパイプ経路内の屑を屑溜まり部73aに積極的に導くことができるからである。
【0029】
また、流量センサ74から屑溜まり部73aに至るパイプ経路も、下り傾斜状又は垂下状に配置することが好ましい。このようにすると、流量センサ74から屑溜まり部73aに至るパイプ経路内の屑を屑溜まり部73aに積極的に導くことができるからである。
【0030】
屑溜まり部73aは、ノズル72と流量センサ74を繋ぐパイプ経路から下方に突出するように設けられる。たとえば、図3及び図4に示す風検出装置71の屑溜まり部73aは、ノズル72から屑溜まり部73aに至るパイプ経路を直線的に延長して構成されるが、図5に示す風検出装置71Bの屑溜まり部73aのように、流量センサ74から屑溜まり部73aに至るパイプ経路を直線的に延長して構成してもよい。なお、図3〜図5において、76はパイプ部材73を側板33に固定するためのバンド部材である。
【0031】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、脱穀装置1内の所定箇所における風速、風量及び/又は風圧を、前記所定箇所に配置したノズル72とパイプ部材73を介して連通される流量センサ74で検出する風検出装置71を備えた脱穀装置1において、パイプ部材73の中間部に、ノズル72と流量センサ74を繋ぐパイプ経路から突出して屑溜まりとなる屑溜まり部73aを設けたので、ノズル72と流量センサ74を繋ぐパイプ部材73の内部に屑が侵入したとしても、侵入した屑が屑溜まり部73aに溜まることになり、その結果、パイプ部材73が屑で詰まることを防止し、パイプ部材73の詰まりによる検出精度の低下を回避できる。
【0032】
また、ノズル72から屑溜まり部73aに至るパイプ経路を下り傾斜状又は垂下状に配置したので、ノズル72から屑溜まり部73aに至るパイプ経路内の屑を屑溜まり部73aに積極的に導くことができる。
【0033】
また、流量センサ74から屑溜まり部73aに至るパイプ経路を下り傾斜状又は垂下状に配置したので、流量センサ74から屑溜まり部73aに至るパイプ経路内の屑を屑溜まり部73aに積極的に導くことができる。
【0034】
また、屑溜まり部73aに、屑溜まり部73a内に溜った屑を取出すための屑取出口73fを形成すると共に、該屑取出口73fを開閉自在に覆う蓋部材73dを設けたので、屑溜まり部73aに溜った屑を屑取出口73fを介して取出すことができる。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、たとえば、前記実施形態では、唐箕ファンの下流近傍にノズルを配置しているが、ノズルの配置箇所は任意であり、たとえば排塵室などに設けるようにしてもよい。また、前記実施形態では、流量センサのセンサ値に応じて、チャフシーブのフィン開度を自動制御しているが、センサ値の使用目的は任意であり、他の自動制御やモニタリングに使用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 脱穀装置
11 脱穀部
31 選別部
41 揺動選別手段
51 風選別手段
71 風検出装置
72 ノズル
73 パイプ部材
73a 屑溜まり部
73d 蓋部材
73f 屑取出口
74 流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀装置内の所定箇所における風速、風量及び/又は風圧を、前記所定箇所に配置したノズルとパイプ部材を介して連通される流量センサで検出する風検出装置を備えた脱穀装置において、
前記パイプ部材の中間部に、ノズルと流量センサを繋ぐパイプ経路から突出して屑溜まりとなる屑溜まり部を設けたことを特徴とする脱穀装置の風検出装置。
【請求項2】
前記ノズルから屑溜まり部に至るパイプ経路を下り傾斜状又は垂下状に配置したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の風検出装置。
【請求項3】
前記流量センサから屑溜まり部に至るパイプ経路を下り傾斜状又は垂下状に配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の脱穀装置の風検出装置。
【請求項4】
前記屑溜まり部に、屑溜まり部内に溜った屑を取出すための屑取出口を形成すると共に、該屑取出口を開閉自在に覆う蓋部材を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱穀装置の風検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200192(P2012−200192A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67075(P2011−67075)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】