説明

脱穀装置

【課題】 搬送方向下手側に搬送されて残された処理物を、拡散胴の長手方向中央側に向けて移動させながら、処理物を充分に叩きほぐすことが可能な脱穀装置を提供する点にある。
【解決手段】 脱穀部Aからの処理物を搬送方向下手側に向けて搬送しながら、選別部Bで処理物の選別処理と、回収部Cで選別された処理物の回収処理が実施され、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物に対して拡散胴6が設けられ、この拡散胴6の長手方向一端側に、処理物の搬送方向に対して回転位相が遅れる側ほど長手方向中央に向けて傾斜する拡散体6Aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に関し、詳しくは、拡散胴の長手方向一端側に、処理物の搬送方向に対して回転位相が遅れる側ほど長手方向中央に向けて傾斜する拡散体が設けられている脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脱穀処理を施す脱穀部からの処理物を搬送方向下手側に向けて搬送しながら、選別部で処理物の選別処理と、回収部で選別された処理物の回収処理が実施されるとともに、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物に対して、搬送方向に直交して配置され、且つ、長手方向と周方向に沿って設けられた拡散体を回転によって叩きつけて処理物をほぐす拡散胴が設けられている脱穀装置が存在している。
この種の脱穀装置の拡散胴には、複数の拡散体が、処理物の搬送方向に直交する方向及び処理物の搬送方向に沿う周方向に沿って設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−117575号公報(第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、脱穀装置においては、脱穀処理された処理物が搬送方向と直交する一端部又は両端部に、偏り気味に搬送される傾向があり、その偏りの度合いが大きい場合、偏り部分の搬送物を拡散胴によって充分に叩きほぐすことができない問題がある。
【0005】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物を、拡散胴の長手方向中央側に向けて移動させながら、処理物を充分に叩きほぐすことが可能な脱穀装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の請求項1による脱穀装置の特徴構成は、脱穀処理を施す脱穀部からの処理物を搬送方向下手側に向けて搬送しながら、選別部で処理物の選別処理と、回収部で選別された処理物の回収処理が実施されるとともに、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物に対して、搬送方向に直交して配置され、且つ、長手方向と周方向に沿って設けられた拡散体を回転によって叩きつけて処理物をほぐす拡散胴が設けられている構成において、前記拡散胴の長手方向一端側に、処理物の搬送方向に対して回転位相が遅れる側ほど長手方向中央に向けて傾斜する拡散体が設けられている点にある。
【0007】
(作用)
上記特徴構成によれば、選別部における搬送方向に直交する一端側に処理物が偏った状態で搬送された状態においても、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物に対して、傾斜した拡散胴の回転が進むに伴って拡散体によって処理物を長手方向中央側に向けて順次に移動させることができるので、搬送方向と直交する一端側における処理物の偏り度合いが大きい場合であっても、処理物の偏りを解消しながら、処理物を叩きほぐすことが可能となる。
【0008】
(発明の効果)
そのため、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物の全体を、均等に叩きほぐすことが可能となり、処理物の処理品質の向上を図ることができる。
【0009】
[II]
(構成)
本発明の請求項2による脱穀装置の特徴構成は、前記拡散胴の長手方向他端側に、処理物の搬送方向に対して回転位相が遅れる側ほど長手方向中央に向けて傾斜する拡散体が設けられている点にある。
【0010】
(作用)
選別部における搬送方向に直交する一端側に加えて他端側にも処理物が偏った状態で搬送された状態においても、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物に対して、傾斜した拡散胴の回転が進むに伴って拡散体によって処理物を長手方向中央側に向けて順次に移動させることができるので、搬送方向と直交する一端側に加えて他端側における処理物の偏り度合いが大きい場合であっても、それらの処理物の偏りを解消しながら、処理物を叩きほぐすことが可能となる。
【0011】
(発明の効果)
そのため、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物の全体を、均等に叩きほぐすことが可能となり、処理物の処理品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に、コンバインの脱穀装置を示しており、Aは脱穀部、Bは選別部、Cは回収部であり、脱穀部Aからの処理物を搬送方向下手側に向けて搬送しながら、選別部Bで処理物の選別処理と、回収部Cで選別された処理物の回収処理が実施される構成になっている。
【0013】
脱穀部Aは、扱胴1、扱室2、受網3、フィードチェーン4等から構成され、図3に示すように、フィードチェーン4で株元挟持状態の穀稈の穂先箇所を扱室2内に臨ませて、回転駆動する扱胴1の扱歯1C,1Dにより扱き処理されることで脱粒処理され、単流化された処理物を受網3から漏下した処理物は、選別部Bの前部側に落下供給され、一方、受網3から漏下できなかった枝付き籾やワラ屑などの処理物は扱室2終端の送塵口5から選別部Bの後部側に落下供給される。
【0014】
また、送塵口5から選別部B上に搬出された処理物の搬送方向下手側には、搬送されて残された処理物に対して拡散作用を与えるための拡散胴6が配置され、この拡散胴6の下手側には、小さなワラ屑や塵を機外へ吸引排出するための排塵ファン7が配置されている。
【0015】
選別部Bは、揺動選別装置8、及び風選別用の唐箕9から構成されている。この実施形態においては、送塵口5から搬出された処理物は、図1、図2に示すように、主に、送塵口5の直下に配置された、揺動選別装置8の後部グレンパン8a上に排出される。
【0016】
回収部Cは、揺動選別装置8による揺動作用及び唐箕9からの選別風により、充分に選別され単粒化した穀粒が1番回収部10に回収され、選別不充分なワラ屑等に混ざった穀粒が2番回収部11に回収されて、還元装置12によって揺動選別装置8の前部に戻される構成になっている。
【0017】
前記拡散胴6は、図1、図2に示すように、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物に対して、搬送方向に直交して配置され、且つ、長手方向と周方向に沿って、例えば、120°角度毎に拡散体6A,6Bを設けて構成され、回転によって処理物を叩きつけてほぐすことが可能になっている。
【0018】
拡散胴6の長手方向一端側には、処理物の搬送方向に対して回転位相が遅れる側ほど長手方向中央に向けて傾斜する板体からなる拡散体6Aが設けられ、その他の部分には、処理物の搬送方向に沿う拡散板6Bが設けられている。両拡散体は、拡径方向に向うほど、板幅が減少する三角形状のものが採用されている。
【0019】
前記扱胴1は、図1に示すように、扱室2に前後向き軸芯P周りで回転駆動自在に架設され、受網3上に対応位置する円筒状の大径部1Aに、送塵口5上に対応位置し大径部1Aより小径な円筒状の小径部1Bを連続形成してあり、大径部1A及び小径部1Bの、扱胴長手方向及び扱胴周方向に複数の扱歯1C,1Dを付設してある。
【0020】
前記小径部1Bの扱歯1Dは、大径部1Aの扱歯1Cに比べて、背の高いものが用いられており、全扱歯1C,1Dの先端回動半径が略同一となるように構成されている。
【0021】
また、扱歯1C,1Dは、一本の棒鋼を折り曲げ両端部を扱胴1に植設されている。
大径部1Aの扱歯1Cには、折り曲げ頂き部hを中心に屈曲姿勢の前後端部h1,h2が対称形状となる一般的な形状のものが採用されているが、小径部1Bの扱歯1Dには、図3に示すように、折り曲げ頂き部hを中心に前端部h3を後倒れの傾斜姿勢に形成し、後端部h4を屈曲姿勢に形成して、折り曲げ頂き部hを中心に両端部h1,h2が非対称となるものが採用されて、傾斜姿勢の前端部h3によって摩擦ワラ等の余計な穀稈のからみ付きを防止し、小径部1Bでの藁発生を抑制することができる構成になっている。
【0022】
前記脱穀部Aには、扱室2の側面に、脱穀フィードチェーン4に挟持された穀稈の移動を許す側面開口2Aが設けてあり、この側面開口2Aより内側下向きに穀稈の穂先側を受網3上に案内しながら脱穀フィードチェーン4とともに移動する穀稈を案内する傾斜状の下唇板13を設けてある。
【0023】
扱胴1の小径部1Bに対応位置する下唇板13の後方部分13Aには、図3〜図5に示すように、複数の弓金14が小径部1Bの隣り合う扱歯1D間に対応して皿止めネジbを用いて取付けられている。
【0024】
これら弓金14は、下唇板13に対して扱歯1Dの回転方向に沿う縦向きに設けられ、各弓金14の上部部分には、図5に示すように、下方に向うほど、突出長さが順次に長くなる先端鋭角状の複数の鉤爪14Aが、フィードチェーン4による穀稈の挟持搬送方向とは反対方向に先端部を突出する状態に形成されており、フィードチェーン4によって挟持搬送される穀稈の穂先を鉤爪14Aで引掛けながら、小径部1Bの扱歯1Dのよる扱き作用を付与することができる構成になっており、株元側の扱き残しの解消を図ることができる。
【0025】
このような構成であれば、選別部Bにおける搬送方向に直交する一端側に処理物が偏った状態で搬送された状態においても、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物に対して、拡散胴6の傾斜する拡散体6Aによって処理物を叩きつけながら、処理物を長手方向中央側に向けて順次に移動させることができるので、搬送方向と直交する一端側における処理物の偏り度合いが大きい場合であっても、回転によって順次に叩きつける拡散体6A,6Bによって処理物の偏りを解消しながら、枝付き籾やワラ屑などの処理物を叩きほぐすことが可能となる。
そのため、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物の全体を、均等に叩きほぐすことが可能となる。
【0026】
[第2実施形態]
この実施形態は上記第1実施形態と異なる点を説明し、同様構成部分には同符号を付してその説明は省略する。
【0027】
この実施形態の脱穀装置は、図6に示すように、拡散胴6の長手方向一端側に、処理物の搬送方向に対して回転位相が遅れる側ほど長手方向中央に向けて傾斜する拡散体6Aが設けられていることに加えて、拡散胴6の長手方向他端側に、処理物の搬送方向に対して回転位相が遅れる側ほど長手方向中央に向けて傾斜する拡散体6Cが設けられ、その他の部分には、処理物の搬送方向に沿う拡散板6Bが設けられて構成されている。
【0028】
このように構成であれば、選別部Bにおける搬送方向に直交する一端側に加えて他端側にも処理物が偏った状態で搬送された状態においても、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物に対して、傾斜した拡散胴6の回転が進むに伴って両端部の拡散体6A,6Cによって処理物を長手方向中央側に向けて移動させることができるので、搬送方向と直交する一端側に加えて他端側における処理物の偏り度合いが大きい場合であっても、回転によって順次に叩きつける拡散体6A,6B,6Cによって処理物の偏りを解消しながら、枝付き籾やワラ屑などの処理物を叩きほぐすことが可能となる。
それらの処理物の偏りを解消しながら、処理物を叩きほぐすことが可能となる。
そのため、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物の全体を、均等に叩きほぐすことが可能となる。
【0029】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態の拡散体6は板体から形成されているものについて説明したが、これに限らず、棒鋼を折り曲げ形成したものなどであってもよい。
【0030】
(2) 上記実施形態では自脱型コンバインの脱穀装置に本発明を適用した例を説明したが、本発明はこれに限らず、全稈投入型コンバインやハーベスター等の脱穀装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】脱穀装置を模式的に示す縦断側面図
【図2】第1実施形態の拡散胴と処理物との関係を要部のみ示す平面図
【図3】脱穀装置の縦断面図
【図4】弓金と扱歯とフィードチェーンの要部のみを示す平面図
【図5】弓金の取付け構成を示す斜視図
【図6】第2実施形態の拡散胴と処理物との関係を要部のみ示す平面図
【符号の説明】
【0032】
A 脱穀部
B 選別部
C 回収部
6 拡散胴
6A 拡散体
6B 拡散体
6C 拡散体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀処理を施す脱穀部からの処理物を搬送方向下手側に向けて搬送しながら、選別部で処理物の選別処理と、回収部で選別された処理物の回収処理が実施されるとともに、搬送方向下手側に搬送されて残された処理物に対して、搬送方向に直交して配置され、且つ、長手方向と周方向に沿って設けられた拡散体を回転によって叩きつけて処理物をほぐす拡散胴が設けられている脱穀装置であって、
前記拡散胴の長手方向一端側に、処理物の搬送方向に対して回転位相が遅れる側ほど長手方向中央に向けて傾斜する拡散体が設けられている脱穀装置。
【請求項2】
前記拡散胴の長手方向他端側に、処理物の搬送方向に対して回転位相が遅れる側ほど長手方向中央に向けて傾斜する拡散体が設けられている請求項1記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−262867(P2006−262867A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89871(P2005−89871)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】