説明

脱穀装置

【課題】脱穀装置のコ字型切り刃における切れ味を向上させる。
【解決手段】板体をコ字形状とした切り刃12には左右一対の凹凸刃縁14,14を形成し、切り刃12を扱胴3の軸架されている扱室1内に配設すると共に、扱胴3の軸心方向視において切り刃12の先端部を扱歯2の回転軌跡内に入り込ませて、切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14間を扱歯2が通過するように構成する。そして、切り刃12の凹凸刃縁14,14における最も高い凸部14aから最も低い凹部14bを結ぶ刃縁部において、扱歯2が高い凸部14aから低い凹部14bに向けて回転しながら通過する部分に複数の小凹凸刃縁15をそれぞれ形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやハーベスタ等に搭載する脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
扱胴の扱歯に対向配置する切り刃において、板材をコ字状に折曲して取付部の左右に刃板部を並設し、この左右の刃板部の縁部には基端部から突出先端部にかけて頂部と谷部とが連続した凹凸刃縁を形成し、刃板部の凹凸刃縁を刃板部の板面に沿う方向から見て頂部と谷部とが刃縁形成方向に一直線上に配されるように凹凸刃縁を形成したものは公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−229659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来装置の切り刃は、摩耗が進行すると刃縁部が鋭利でなくなり切れ味が悪化するという不具合があった。そこで、この発明はこのような不具合を解消し、切り刃の切れ味を持続させ、また、切り刃における左右の凹凸刃縁の摩耗を均等化しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記問題点を解決するために、この発明は次のような技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、板体をコ字形状とした切り刃12には左右一対の凹凸刃縁14,14を形成し、この切り刃12を扱胴3の軸架されている扱室1あるいは処理胴8の軸架されている処理室6内に配設すると共に、前記扱胴3あるいは処理胴8の軸心方向視において前記切り刃12の先端部を扱胴3の扱歯2あるいは処理胴8の処理歯7の回転軌跡内に入り込ませて設けて前記切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14の間を扱歯2あるいは処理歯7が通過するように構成し、前記切り刃12の凹凸刃縁14,14における最も高い凸部14aから最も低い凹部14bを結ぶ刃縁部で、且つ、扱歯2あるいは処理歯7が高い凸部14aから低い凹部14bに向けて回転しながら通過する部分に複数の小凹凸刃縁15をそれぞれ形成したことを特徴とする脱穀装置とする。
【0005】
前記構成によると、扱胴3の軸架されている扱室1あるいは処理胴8の軸架されている処理室6内には切り刃12が配設されていて、扱歯2あるいは処理歯7が藁屑類を持ち回りながら切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14の間を通過し藁屑類を細断する。また、切り刃12の凹凸刃縁14,14における最も高い凸部14aから最も低い凹部14bを結ぶ刃縁部で、且つ、扱歯2あるいは処理歯7が高い凸部14aから最も低い凹部14bに向けて回転しながら通過する部分に複数の小凹凸刃縁15,…をそれぞれ形成されていて、凸部14a寄りの小凹凸刃縁15が摩耗すると、次いで、これの凹部14b側に隣接している小凹凸刃縁15が現れて藁屑類を細断する。
【0006】
請求項2の発明は、板体をコ字形状とした切り刃12には左右一対の凹凸刃縁14,14を形成し、前記切り刃12を扱胴3の軸架されている扱室1あるいは処理胴8の軸架されている処理室6内に配設すると共に、前記扱胴3あるいは処理胴8の軸心方向視において前記切り刃12の先端部を扱胴3の扱歯2あるいは処理胴8の処理歯7の回転軌跡内に入り込ませて設けて前記切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14の間を扱歯2あるいは処理歯7が通過するように構成し、前記凹凸刃縁14,14の単位刃縁長さを基部側が短く先端側ほど順次長くなるように形成したことを特徴とする脱穀装置とする。
【0007】
前記構成によると、扱胴3の軸架されている扱室1あるいは処理胴8の軸架されている処理室6内には切り刃12が配設されていて、扱歯2あるいは処理歯7が藁屑類を持ち回りながら切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14の間を通過し藁屑類を細断する。また、扱歯2あるいは処理歯7には歯元部から刃先部にかけて藁屑類の持ち回り量が順次多くなりながら細断されるが、凹凸刃縁14,14の基部側の短い刃縁部では少量の藁屑類が細断され、凹凸刃縁14,14の先端側の長い刃縁部により大量の藁屑類が細断される。
【0008】
請求項3の発明は、板体をコ字形状とした切り刃12には左右一対の凹凸刃縁14,14を形成し、前記切り刃12を扱胴3の軸架されている扱室1あるいは処理胴8の軸架されている処理室6内に配設すると共に、前記扱胴3あるいは処理胴8の軸心方向視において前記切り刃12の先端部を扱胴3の扱歯2あるいは処理胴8の処理歯7の回転軌跡内に入り込ませて設けて前記切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14の間を扱歯2あるいは処理歯7が通過するように構成し、前記左右の凹凸刃縁14,14の一方の単位刃縁を長く、他方の単位刃縁を短くなるように左右非対称形状に形成し、この凹凸刃縁14,14の長く形成した単位刃縁を扱室1あるいは処理室6の穀稈移送方向始端側に、短く形成した単位刃縁を移送方向終端側に配置したことを特徴とする脱穀装置とする。
【0009】
前記構成によると、扱胴3の軸架されている扱室1あるいは処理胴8の軸架されている処理室6内には切り刃12が配設されていて、扱歯2あるいは処理歯7が藁屑類を持ち回りながら切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14の間を通過し藁屑類を細断する。また、扱歯2あるいは処理歯7の藁屑類の持ち回り量が扱室1あるいは処理室6の穀稈移送
方向始端側が多く終端側にかけて順次少なくなりながら細断されるが、扱室1あるいは処理室6の始端側に配置されている長く形成されている単位刃縁の凹凸刃縁14により多くの藁屑類が細断され、また、終端側に配置されている短い単位刃縁の凹凸刃縁14により少ない藁屑類が細断さる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明は、切り刃12の凹凸刃縁14,14の最も高い凸部14aから最も低い凹部14bを結ぶ刃縁部で、且つ、扱歯2あるいは処理歯7が高い凸部14aから低い凹部14bに向けて回転しながら通過する部分に複数の小凹凸刃縁15,…をそれぞれ形成したので、凹凸刃縁14,14の先端側の小凹凸刃縁15が摩耗しても次の小凹凸刃縁15が現れて切れ味を維持することができ、また、この小凹凸刃縁15,…は上手側の凹凸刃縁14により隠れるようになり摩耗しにくく耐久性を高めることができる。
【0011】
請求項2の発明は、扱歯2等により持ち回りする藁屑類は扱歯2の歯元部から歯先部にかけて順次多くなるが、凹凸刃縁14,14の基部側の短い刃縁部により少量の藁屑類を分担して細断し、凹凸刃縁14,14の先端側の長い刃縁部により大量の藁屑類を分担して細断するので、凹凸刃縁14,14の基部から先端部にかけての摩耗比率を均等化することができる。
【0012】
請求項3の発明は、扱室1あるいは処理室6の穀稈移送方向始端側に配置されている凹凸刃縁14,14の長い単位刃縁により多くの藁屑類を細断し、移送終端側に配置されている短い単位刃縁により少ない藁屑類を細断するので、左右の凹凸刃縁14,14の摩耗比率を均等化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の一実施例を図1〜図6に基づき説明する。図1はこの発明を具備する脱穀装置の切断平面図、図2は切断正面図、図3は切り刃の切断側面図、図4は切り刃の切断正面図、図5は切り刃の斜視図、図6は処理室と切り刃の平面図である。
【0014】
この脱穀装置は、扱室1内に軸架されている扱歯2,…付きの扱胴3と、扱胴3の下部外周を覆うように設けている受網4と、扱室1の側方に設けられている処理室6と、処理室6内に軸架されている処理歯7付きの処理胴8と、フィードチエン9と、排藁チエン11等により構成されている。
【0015】
扱室1の扱口1a側のフィードチエン9の上方部位、及び、扱室1の扱室奥1b側の受網4の上方部位には、回転する扱歯2,…の左右両側に位置するようにコ字形状の切り刃12,…を配設している。この切り刃12,…における扱歯2の回転方向に対向する縁部には、基部から先端部にかけて左右一対の凹凸刃縁14,14を形成している。
【0016】
そして、切り刃12の板体の外側面に沿う方向の正面視で、切り刃12の外側面に沿って左右一対の凹凸刃縁14,14の多数の凸部14aの最も高い部分と凹部14bの最も低い部分を交互に繰り返しながら直線状になるように形成し、また、切り刃12の板体に直交する方向の側面視で、多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら直線状になるように形成し、コ字形状の切り刃12の内側面に凹凸刃縁14,14を構成し、切り刃12基部の取付部13には取付用のボルトを設けている。
【0017】
なお、切り刃12の板体に直交する方向の側面視で、多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら内側にへこむ円弧状、あるいは、外側に膨らむ円弧状になるように形成してもよい。
【0018】
そして、この凹凸刃縁14,14の最も高い凸部14aから最も低い凹部14bを結ぶ直線刃縁部における扱歯2あるいは処理歯7が高い側から低い側に向けて通過する部分に複数の小凹凸刃縁15,…をそれぞれ形成している。なお、最も高い凸部14aから最も低い凹部14bを結ぶ直線刃縁部において、扱歯2あるいは処理歯7が低い側から高い側に向けて通過する部分に複数の小凹凸刃縁15,…をそれぞれ形成してもよい。
【0019】
そして、扱胴3の軸心方向視において切り刃12の先端部を扱歯2の回転軌跡内に入り込ませて設けて、切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14の間を扱歯2が通過するように構成し、回転軌跡を描く扱歯2と切り刃12の前記直線状の凹凸刃縁14,14とによって扱室1内の扱口1a側と扱室奥1b側とで脱穀物を切断処理するように構成している。
【0020】
また、扱口1a側上部及び扱室奥1b側上部の切り刃12,…を平面視で扱胴3の軸心方向に千鳥足状に配置し、扱胴3の扱歯2,…は何れか一方の切り刃12の凹凸刃縁14,14間を通過するように構成して、藁屑類の切断性能の向上及び馬力ロスの減少を図っている。
【0021】
なお、扱口1a側上部及び扱室奥1b側上部の切り刃12,…を平面視で扱胴3の軸心方向に同位相に配置し、同一の扱歯2が扱口1a側上部及び扱室奥1b側上部の切り刃12,…の凹凸刃縁14,14間を通過するように構成してもよい。このように構成することにより、藁屑類の切断性能の向上及び馬力ロスの減少を図ることができる。
【0022】
しかして、回転する扱胴3の扱歯2が扱室1内における扱口1a側と扱室奥1b側とに設置されているコ字形状の切り刃12における左右一対の凹凸刃縁14,14間を通過すると、切り刃12における多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら直線状に形成されている左右一対の凹凸刃縁14,14と扱歯2とによって、扱室1内の扱口
1a側と扱室奥1b側とで脱穀物が良好に切断処理される。また、凹凸刃縁14,14の切断作用部を短くしたので耐久性を向上させることができる。また、コ字形状の切り刃12,12の内側面に凹凸刃縁14を形成したので、扱歯2を左右の凹凸刃縁14,14で挟みながら藁屑類を切断するので、切断性能が向上する。
【0023】
また、この凹凸刃縁14,14の最も高い凸部14aから最も低い凹部14bを結ぶ直線刃縁部における扱歯2あるいは処理歯7が高い側から低い側に向けて通過する部分に複数の小凹凸刃縁15,…をそれぞれ形成したので、凹凸刃縁14,14の先端側(凸部14a側)の小凹凸刃縁15が摩耗しても次の隣接している小凹凸刃縁15が現れ切れ味を維持することができる。また、この小凹凸刃縁15,…は上手側の凹凸刃縁14の下手側に隠れるように位置しているので摩耗しにくく耐久性を高めることができる。
【0024】
次に、図7及び図8に基づき切り刃12の他の実施例について説明する。図7は切り刃12の切断側面図、図8は切断正面図である。なお、この実施例は切り刃12の構成が図3〜図5に示す実施例と相違し、その他の構成は同じであるので、切り刃12の相違点についてのみ説明する。
【0025】
この切り刃12,12における扱歯2の回転方向に対向する縁部には、基部から先端部にかけて左右一対の凹凸刃縁14,14を形成している。そして、切り刃12の板体の外側面に沿う方向の正面視で、切り刃12の両外側面に沿って左右一対の凹凸刃縁14,14の多数の凸部14aの最も高い部分と凹部14bの最も低い部分を交互に繰り返しながら直線状になるように形成し、また、切り刃12の板体に直交する方向の側面視で、左右一対の凹凸刃縁14,14の多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら直線状になるように形成し、且つ、この凹凸刃縁14,14を基部側が小ピッチで短く先端側ほど大ピッチにして順次長くなるように形成し、コ字形状の切り刃12の内側面に左右の凹凸刃縁14,14を形成している。
【0026】
なお、切り刃12の板体に直交する方向の側面視で、多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら内側にへこむ円弧状、あるいは、外側に膨らむ円弧状になるように形成してもよい。
【0027】
そして、扱胴3の軸心方向視において切り刃12の先端部を扱歯2の回転軌跡内に入り込ませて設け、切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14の間を扱歯2が通過するように構成し、回転軌跡を描く扱歯2と切り刃12の前記直線状の凹凸刃縁14,14とによって扱室1内の扱口1a側と扱室奥1b側とで脱穀物を切断処理するように構成している。
【0028】
しかして、回転する扱歯2が扱室1内における扱口1a側と扱室奥1b側とに設置されているコ字形状の切り刃12における左右一対の凹凸刃縁14,14間を通過すると、切り刃12における多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら直線状に形成されている左右一対の凹凸刃縁14,14と扱歯2とによって、扱室1内の扱口1a側と扱室奥1b側とで脱穀物が良好に切断処理される。
【0029】
また、凹凸刃縁14,14の切断作用部を形成するにあたり、切り刃12の板体に直交する方向の側面視で凹凸刃縁14,14の多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら直線状になるように短く形成したので、耐久性を向上させることができる。また、コ字形状の切り刃12,12の内側に凹凸刃縁14を形成したので、左右の凹凸刃縁14,14と扱歯2とにより藁屑類を良好に切断できる。
【0030】
また、扱歯2により持ち回りする藁屑類は扱歯2元部から扱歯2先端にかけて順次多くなるが、凹凸刃縁14,14を基部側の刃縁を短く先端側ほど長くなるように形成したので、切り刃12の先端部の摩耗を抑制し基部側と先端側の摩耗を均等化することができる。また、切り刃12の基部の取付部に対して先端部をオーバーハング状に形成しているため、異物等が噛み込んでも切損しにくく耐久性を高めることができる。
【0031】
次に、図9〜図11に基づき他の実施例について説明する。図9は切り刃の切断正面図、図10は切り刃の切断右側面図、図11は切り刃の切断左側面図である。なお、この実施例は切り刃12の構成が図3〜図5に示す実施例と相違し、その他の構成は同じであるので、切り刃12の相違点について説明する。
【0032】
この切り刃12,12における扱歯2の回転方向に対向する縁部には、基部から先端部にかけて左右一対の凹凸刃縁14,14を形成している。そして、切り刃12の板体の外側面に沿う方向の正面視で、切り刃12の両外側面に沿って左右一対の凹凸刃縁14,14の多数の凸部14aの最も高い部分と凹部14bの最も低い部分を交互に繰り返しながら直線状になるように形成し、また、切り刃12の板体に直交する方向の側面視で、左右一対の凹凸刃縁14,14の多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら直線状になるように形成し、且つ、この左右の凹凸刃縁14,14を形成するにあたり、一方の凹凸刃縁14のピッチを小さく、他方のピッチを大きくなるように左右非対称形状に形成し、コ字形状の切り刃12の内側面に凹凸刃縁14,14を構成している。
【0033】
なお、切り刃12の板体に直交する方向の側面視で、多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら内側にへこむ円弧状、あるいは、外側に膨らむ円弧状になるように形成してもよい。
【0034】
そして、扱胴3の軸心方向視において切り刃12の先端部を扱歯2の回転軌跡内に入り込ませて設けて、切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14の間を扱歯2が通過するように構成し、切り刃12の左右一方のピッチの大きい凹凸刃縁14を穀稈移送方向上手側にピッチの小さい凹凸刃縁14を移送方向下手側に配置し、回転軌跡を描く扱歯2と切り刃12の前記直線状の凹凸刃縁14,14とによって扱室1内の扱口1a側と扱室奥1b側とで脱穀物を切断処理するように構成している。
【0035】
しかして、回転する扱歯2が扱室1内における扱口1a側と扱室奥1b側とに設置されているコ字形状の切り刃12における左右一対の凹凸刃縁14,14間を通過すると、切り刃12における多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら直線状に形成されている左右一対の凹凸刃縁14,14と扱歯2とによって、扱室1内の扱口1a側と扱室奥1b側とで脱穀物が良好に切断処理される。
【0036】
また、凹凸刃縁14,14の切断作用部を形成するにあたり、切り刃12の板体に直交する方向の側面視で凹凸刃縁14,14の多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら直線状になるように短く形成したので、耐久性を向上させることができる。また、コ字形状の切り刃12,12の内側に凹凸刃縁14を形成したので、左右の凹凸刃縁14,14と扱歯2とにより藁屑類を良好に切断できる。
【0037】
また、左右の凹凸刃縁14,14を形成するにあたり、一方の凹凸刃縁14のピッチを小さく他方のピッチを大きくなるように左右非対称形状に形成し、ピッチの大きい凹凸刃縁14を穀稈移送方向上手側にピッチの小さい凹凸刃縁14を移送方向下手側に配置したので、上手側の凹凸刃縁14で多量の藁屑類を粗切断し下手側の凹凸刃縁14で少量の藁屑類を細切断しながら脱穀処理し、左右の凹凸刃縁14,14の摩耗を均等化し耐久性を高めることができる。
【0038】
次に、図12及び図13に基づき切り刃12の他の実施例について説明する。
切り刃12における扱歯2の回転方向に対向する縁部には、基部から先端部にかけて左右一対の凹凸刃縁14,14を形成している。そして、切り刃12の板体の外側面に沿う方向の正面視で、切り刃12の両外側面に沿って左右一対の凹凸刃縁14,14の多数の凸部14aの最も高い部分と凹部14bの最も低い部分を交互に繰り返しながら直線状になるように形成し、また、切り刃12の板体に直交する方向の側面視で、左右一対の凹凸刃縁14,14の多数の凸部14aと凹部14bとを交互に繰り返しながら直線状になるように形成している。そして、各凹凸刃縁14の先端側から基底側(図12のS−S線の方向)において複数の分割刃体14c,…に分割構成し、これらの分割刃体14c,…の凸部14a寄り部分を接触剤14dあるいは摩耗しやすい異質の鉄材で接合して多層の分割刃体14c,…に構成し、コ字形状の切り刃12の内側面に凹凸刃縁14,14を構成している。
【0039】
前記のように構成することにより、凹凸刃縁14,…の先端側が所定量摩耗すると、第1の分割刃体14cに代わって第2の分割刃体14cが現れ、摩耗限界まで一定の切れ味を保ちながら細断することができる。
【0040】
次に、図14〜図17に基づき扱室1における切り刃12と仕切板21との関連構成について説明する。
扱室1の下部には扱胴3の下部外周を覆うように受網4を設け、この受網4上には扱歯2の回転方向に沿うように受網仕切板21,…を複数組載置してボルト・ナットでフレーム部に固着し、扱胴3の軸心方向正面視において、扱歯2,…の先端部と受網仕切板21をオーバーラップするように構成している。
【0041】
また、扱室奥1b側に設置する奥側の受網仕切板21,…をコ字形状の切り刃12の下側に接近して配置し、且つ、穀稈挿入口22より上方に位置し、この奥側の受網仕切板21にだけ、その先端部全縁に凹凸刃縁21aを形成している。そして、凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21よりも切り刃12の先端部を扱歯2に大きくオーバーラップするように構成している。また、オーバーラップ代の大きな切り刃12,…を扱室1の前板23と後板24とを連結するフレーム26に取り付け、取付強度のアップを図っている。
【0042】
しかして、扱室1内に発生した藁屑類や切れ穂やカギ又類は扱歯2と共に循環しこなされて受網4から漏下する。また、受網4上の受網仕切板21,…により藁屑類の漏下が促進され、受網仕切板21,…を乗り越えて藁屑類は後側に移送されるが、凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21を乗り越える際に藁屑類が細断され脱穀処理能力を向上させることができる。また、凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21は穀稈挿入口22より上方に配置しているので、扱室1内を移送中の穀稈には接触することがなく、余分の藁屑類の発生を抑え穀稈の損傷を抑制することができる。
【0043】
また、凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21よりも切り刃12の方を扱歯2とのオーバーラップ代を大きく構成したので、扱歯2の先端側の藁屑類が先ず受網仕切板21の凹凸刃縁21aにより細断処理され、次いで、扱歯2先端部の藁屑類が切り刃12の凹凸刃縁14,14で細断され、藁屑類を円滑に細断することができる。また、オーバーラップ代の大きな切り刃12,…を扱室1の前板23と後板24とを連結する受網4取付用のフレーム26に強固に取り付けているので、切り刃12のオーバーラップ代が大きくても安全である。
【0044】
また、凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21と他の受網仕切板21は扱胴3を軸心とする同じ円弧状になるように構成しているので、受網仕切板21部分で特に大きな抵抗を与えるようなこともなく、藁屑類は下側の受網仕切板21から凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21に乗り移りながら円滑に切断することができる。また、脱穀穀稈がフィードチエン9からはずれても、凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21部分で詰まるようなこともない。また、凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21の回転方向上手側縁部をθ角となるように先端ほどと後退角を持つように傾斜部21bに形成したので、穀粒や藁屑類の乗り移りが円滑になり脱ぷ米の発生を抑制することができる。
【0045】
また、この実施例では、穀稈搬送方向の上手側と下手側に2組の受網仕切板21,…を配置し、その上手側の受網仕切板21,…を図16に示すように平面視で、切り刃12の下手側の凹凸刃縁14に揃え、また、下手側の受網仕切板21,…を切り刃12の上手側の凹凸刃縁14に揃えて配置している。しかして、上手側の受網仕切板21,…では藁屑類の詰まりを抑制し、下手側の受網仕切板21,…では藁屑類を極力捕捉しながら円滑に細断することができる。
【0046】
また、凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21は受網4にボルト・ナットで取り付けているので、メンテナンスや摩耗時の交換作業が容易となる。
また、図14及び図16に示すように扱室1の受網4の目合いを大小に構成してもよい。即ち、扱室1下側の受網仕切板21に対向する部分を小さな目合いの受網4aとし、扱室1上側の受網仕切板21及び凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21に対向する部分を大きな目合いの受網4bとする。しかして、上側の凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21でかぎ又や藁屑類を細断処理しながら、大きな目合いの受網4bから細断物を処理室6に円滑に漏下分離することができ、脱穀処理を円滑に行なうことができる。
【0047】
また、図16に示すように、扱歯2の左右両側近傍に凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21,21を位置するように構成してもよい。このように構成することにより、扱歯2と凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21,21によりかぎ又、穂切れ、藁屑類の細断化が促進される。また、下側の受網仕切板21、上側の受網仕切板21及び凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21を扱歯2の回転方向に沿う一列状に配置したことにより、受網仕切板21,…に寄せられた藁屑類を凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21で効率的に細断処理することができる。
【0048】
また、図16及び図17に示すように、扱室1の前板23と後板24とを連結するフレーム26に、凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21と受網4とをボルト・ナットで取り付ける構成としてもよい。このようにすることにより、受網4及び凹凸刃縁21a付きの受網仕切板21の取付が強固となり、受網4のねじれや歪みを防止し、凹凸刃縁21aの耐久性を向上させることができる。
【0049】
次に、図18〜図24に基づき処理室6の脱穀処理構成について説明する。
扱室1の後部から藁屑類の送り込まれる排塵処理用の処理室6内に処理胴8を回転自在に軸架し、処理室6内上側部に複数のコ字形状の切り刃12,…を配置している。処理胴8の軸心方向視において切り刃12,…の先端部を処理胴8の処理歯7の回転軌跡内に入り込ませて、切り刃12の左右一対の凹凸刃縁14,14の間を処理歯7が通過するように構成し、回転軌跡を描く処理歯7と切り刃12の前記直線状の凹凸刃縁14,14とによって処理室6内の上側で脱穀物を切断処理するように構成している。
【0050】
また、処理室6内上側部における切り刃12,…の処理歯7回転方向上手側に藁屑類を始端側から終端側に向けて案内する送塵案内板27,…を複数個設けている。そして、扱室1の終端側部と処理室6の始端側部とを連通する送塵口32に対向している送塵案内板27には凹凸刃縁27aを形成しないが、それ以外の終端側の切り刃12,…に対向する送塵案内板37,…には凹凸刃縁27aを処理歯7に対向させてそれぞれ形成している。
【0051】
また、図23及び図24に示すように、送塵案内板27,…の下部をボルト28,…により枢支し、送塵案内板27,…の中途部を連動調節板29に調節ボルト31,…により取り付け、連動調節板29を処理室6のフレーム部に前後方向に調節して取り付けることにより、送塵案内板27,…の送り速さを調節できる構成としている。
【0052】
前記構成によると、扱室1の終端側部と処理室6の始端側部とを連通する送塵口32に対向している送塵案内板27には凹凸刃縁27aを形成しないが、それ以外の終端側の切り刃12,…に対向する送塵案内板37,…には凹凸刃縁27a,…を形成しているので、扱室1からの藁屑類を凹凸刃縁27aの形成されていない送塵案内板27により円滑に引継ぎながら、後続する送塵案内板27,…の凹凸刃縁27aにより藁屑類を細断しながら切り刃12,…に送り込み、切り刃12,…の細断作用とあいまって藁屑類を効率的に細断処理することができる。また、送塵案内板27,…の送塵角度を同じにしながら角度調節できるので、藁屑類の送塵途中での停滞を防止し円滑に送塵することができる。
【0053】
また、送塵案内板27は、図23に示すように、処理歯7の回転方向上手側に対応する送塵案内面部27bと、下手側の凹凸刃縁27aの形成されている送塵刃縁部27cとで構成されている。そして、この送塵案内面部27b及び送塵刃縁部27cを処理歯7の先端から所定間隙離れるように同一円弧状に構成している。しかして、処理歯7により持ち回る藁屑類は送塵案内面部27bに沿って案内されながら送塵刃縁部27cに案内供給されて、切断抵抗を弱めながら凹凸刃縁27aにより円滑に細断することができる。
【0054】
また、送塵案内板27の送塵刃縁部27cの回転方向下手側に接近して切り刃12の凹凸刃縁14を設けているので、送塵刃縁部27cで切断された藁屑類が下手側の切り刃12の凹凸刃縁14で更に切断されることとなり、切り刃12の左右の凹凸刃縁14,14間を処理歯7が通過するものでありながら、切り刃12への藁屑類の巻付を抑制し藁屑類と穀粒の分離を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】脱穀装置の切断平面図。
【図2】脱穀装置の切断正面図。
【図3】切り刃の切断側面図。
【図4】切り刃の切断正面図。
【図5】切り刃の凹凸刃縁を拡大した斜視図。
【図6】切り刃、処理胴の平面図。
【図7】切り刃の切断側面図。
【図8】切り刃の切断正面図。
【図9】切り刃の切断正面図。
【図10】切り刃の切断側面図。
【図11】切り刃の切断側面図。
【図12】切り刃の切断側面図。
【図13】凹凸刃縁の正面図。
【図14】脱穀装置の切断正面図。
【図15】受網、受網仕切板、切り刃の正面図。
【図16】扱室の展開した平面図。
【図17】扱室の平面図。
【図18】脱穀装置の切断背面図。
【図19】脱穀装置の切断正面図。
【図20】脱穀装置の切断正面図。
【図21】脱穀装置の切断側面図。
【図22】脱穀装置の切断平面図。
【図23】処理室の切断正面図。
【図24】脱穀装置の切断側面図。
【符号の説明】
【0056】
1 扱室
2 扱歯
3 扱胴
4 受網
6 処理室
7 処理歯
8 処理胴
9 フィードチエン
11 排藁チエン
12 切り刃
13 取付部
14 凹凸刃縁
14a 凸部
14b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板体をコ字形状とした切り刃(12)には左右一対の凹凸刃縁(14),(14)を形成し、この切り刃(12)を扱胴(3)の軸架されている扱室(1)あるいは処理胴(8)の軸架されている処理室(6)内に配設すると共に、前記扱胴(3)あるいは処理胴(8)の軸心方向視において前記切り刃(12)の先端部を扱胴(3)の扱歯(2)あるいは処理胴(8)の処理歯(7)の回転軌跡内に入り込ませて設けて前記切り刃(12)の左右一対の凹凸刃縁(14),(14)の間を扱歯(2)あるいは処理歯(7)が通過するように構成し、前記切り刃(12)の凹凸刃縁(14),(14)における最も高い凸部(14a)から最も低い凹部(14b)を結ぶ刃縁部で、且つ、扱歯(2)あるいは処理歯(7)が高い凸部(14a)から低い凹部(14b)に向けて回転しながら通過する部分に複数の小凹凸刃縁(15)をそれぞれ形成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
板体をコ字形状とした切り刃(12)には左右一対の凹凸刃縁(14),(14)を形成し、前記切り刃(12)を扱胴(3)の軸架されている扱室(1)あるいは処理胴(8)の軸架されている処理室(6)内に配設すると共に、前記扱胴(3)あるいは処理胴(8)の軸心方向視において前記切り刃(12)の先端部を扱胴(3)の扱歯(2)あるいは処理胴(8)の処理歯(7)の回転軌跡内に入り込ませて設けて前記切り刃(12)の左右一対の凹凸刃縁(14),(14)の間を扱歯(2)あるいは処理歯(7)が通過するように構成し、前記凹凸刃縁(14),(14)の単位刃縁長さを基部側が短く先端側ほど順次長くなるように形成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
板体をコ字形状とした切り刃(12)には左右一対の凹凸刃縁(14),(14)を形成し、前記切り刃(12)を扱胴(3)の軸架されている扱室(1)あるいは処理胴(8)の軸架されている処理室(6)内に配設すると共に、前記扱胴(3)あるいは処理胴(8)の軸心方向視において前記切り刃(12)の先端部を扱胴(3)の扱歯(2)あるいは処理胴(8)の処理歯(7)の回転軌跡内に入り込ませて設けて前記切り刃(12)の左右一対の凹凸刃縁(14),(14)の間を扱歯(2)あるいは処理歯(7)が通過するように構成し、前記左右の凹凸刃縁(14),(14)の一方の単位刃縁を長く、他方の単位刃縁を短くなるように左右非対称形状に形成し、この凹凸刃縁(14),(14)の長く形成した単位刃縁を扱室(1)あるいは処理室(6)の穀稈移送方向始端側に、短く形成した単位刃縁を移送方向終端側に配置したことを特徴とする脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2006−271263(P2006−271263A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95753(P2005−95753)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】