説明

脱穀装置

【課題】刈取穀稈の穂先部に付いている穀粒を脱粒させるための脱穀装置において、通常の薄片状の扱歯では、藁屑や切れ藁等のゴミ発生量が多くなると共に、穂切れ粒や枝梗付き穀粒が多くなりがちであるという問題を解消する。
【解決手段】扱室23の下部に、穀粒の通過を許容する網状、格子状又は多孔状の叩打板40を前後揺動可能に配置する。扱室23の上部には、叩打板40と相対向する仕切板50を固定する。前後揺動する叩打板40が扱室23内に搬送された刈取穀稈を下方から叩くことによって、刈取穀稈から穀粒を脱粒するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、刈り取られた穀稈の穂先部に付いている穀粒を脱粒させるための脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバインに搭載された脱穀装置の扱室には、エンジンの動力にて回転駆動する扱胴が内装されている。扱胴の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根が半径方向外向きに突設されており、スクリュー羽根には、多数個の扱歯が、螺旋の方向に沿って飛び飛びの間隔にて取り付けられている。脱穀処理に際しては、扱室内に送り込まれた刈取穀稈に、スクリュー羽根や各扱歯を扱胴の回転にて接触させることにより、刈取穀稈を細かく切断して脱穀している。
【特許文献1】特開2006−254708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来技術の各扱歯は、扱胴の回転軸線方向に沿った方向(刈取穀稈の搬送方向に沿った方向)の厚みが薄い薄片状に形成されており、かかる形状の各扱歯にて刈取穀稈を切断しつつ脱穀しているため、藁屑や切れ藁等のゴミ発生量が多くなると共に、穂切れ粒や枝梗付き穀粒が多くなりがちであり、脱穀性能の向上という観点に鑑みて未だ改善の余地があった。
【0004】
また、前記従来における扱胴式の脱穀装置では、スクリュー羽根や各扱歯にて切断される刈取穀稈が、扱胴の回転に対する抵抗(摩擦抵抗)として働くため、扱胴を回転駆動させるには比較的大きな駆動力を要し、結果的に、扱胴を駆動させるのに必要な燃料消費量が増大して、不経済であるという問題もあった。
【0005】
そこで、本願発明は、上記の問題点を解消して脱穀性能を向上させた脱穀装置を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明に係る脱穀装置は、扱室の下部に、穀粒の通過を許容する網状、格子状又は多孔状の叩打部材が前後揺動可能に配置されており、前後揺動する前記叩打部材が前記扱室内に搬送された刈取穀稈を下方から叩くことによって、前記刈取穀稈から穀粒を脱粒するように構成されているというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した脱穀装置において、前記扱室の上部には、前記叩打部材と相対向する仕切部材が位置固定的に配置されており、前後揺動する前記叩打部材が前記扱室内に搬送された刈取穀稈を下方から叩いて、前記仕切部材に衝突させることによって、前記刈取穀稈から穀粒を脱粒するように構成されているというものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載した脱穀装置において、前記扱室の上部には、前記叩打部材と相対向する仕切部材が前後揺動可能に配置されており、互いに前後揺動する前記叩打部材及び前記仕切部材が前記扱室内に搬送された刈取穀稈を交互に叩くことによって、前記刈取穀稈から穀粒を脱粒するように構成されているというものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載した脱穀装置において、前記仕切部材が、穀粒の通過を許容する網状、格子状又は多孔状に形成されているというものである。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によると、扱室の下部に、穀粒の通過を許容する網状、格子状又は多孔状の叩打部材が前後揺動可能に配置されており、前後揺動する前記叩打部材が前記扱室内に搬送された刈取穀稈を下方から叩くことによって、前記刈取穀稈から穀粒を脱粒するように構成されているから、前記従来における扱胴式の脱穀装置とは異なり、脱穀の際に刈取穀稈を切断しなくて済む。このため、藁屑及び切れ藁等のゴミ発生や、穂切れ粒や枝梗付き穀粒の発生を抑制でき、脱穀性能の向上を図れるという効果を奏する。
【0011】
しかも、前記叩打部材は穀粒の通過を許容する網状、格子状又は多孔状のものであるため、前記叩打部材にて刈取穀稈を下方から叩く際は、穂先部に付いた穀粒を網目等の穴に落ち込ませながら、刈取穀稈の枝梗のうち穀粒に近い部分を、前記穴を画成する外周部分に衝突させ、刈取穀稈から穀粒を効率よく分断(切断)することが可能になる。従って、単なる平板にて叩く場合に比べて、脱粒効果が高いのである。
【0012】
また、前記叩打部材の前後揺動運動によって、刈取穀稈を叩いて脱粒するという構成であるため、前記従来のような大きな摩擦抵抗が前記叩打部材に作用することはなく、前記叩打部材を前後揺動させる駆動力も小さくて済む。従って、前記叩打部材を前後揺動させるのに必要な燃料消費量を前記従来の場合よりも節減することが可能になり、非常に経済的であるという効果も奏する。
【0013】
請求項2の発明によると、前記扱室の上部には、前記叩打部材と相対向する仕切部材が位置固定的に配置されており、前後揺動する前記叩打部材が前記扱室内に搬送された刈取穀稈を下方から叩いて、前記仕切部材に衝突させることによって、前記刈取穀稈から穀粒を脱粒するように構成されているから、前記叩打部材の叩打作用と前記仕切部材への衝突作用とによって、脱粒効果を向上できるという効果を奏する。
【0014】
請求項3の発明によると、前記扱室の上部には、前記叩打部材と相対向する仕切部材が前後揺動可能に配置されており、互いに前後揺動する前記叩打部材及び前記仕切部材が前記扱室内に搬送された刈取穀稈を交互に叩くことによって、前記刈取穀稈から穀粒を脱粒するように構成されているから、前記叩打部材と前記仕切部材との相互叩打作用によって脱粒効果を促進できる。その結果、より一層の脱穀性能の向上を達成できるという効果を奏する。
【0015】
請求項4の発明によると、前記叩打部材だけでなく前記仕切部材も、穀粒の通過を許容する網状、格子状又は多孔状に形成されているから、前記叩打部材と前記仕切部材との双方において、網目等の穴を画成する外周部分を利用して、刈取穀稈から穀粒を効率よく分断(切断)することが可能になる。従って、脱粒効果の更なる向上に寄与できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、普通型コンバインに適用した図面(図1〜図5)に基づいて説明する。図1はコンバインの側面図、図2は第1実施形態における脱穀装置の側面断面図、図3は第2実施形態における脱穀装置の側面断面図、図4は第3実施形態における脱穀装置の側面断面図である。
【0017】
(1).コンバインの概略構造
まず、主に図1及び図2を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。
【0018】
実施形態における普通型コンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、稲、麦、大豆等の植立穀稈を刈り取りながら取り込む刈取前処理装置3が単動式の油圧シリンダ(図示せず)にて昇降調節可能に装着されている。
【0019】
走行機体1の前部一側(実施形態では前部右側)には、キャビンタイプの操縦部5が搭載されている。操縦部5の後方には、脱穀後の穀粒を貯留するためのグレンタンク6が配置されている。グレンタンク6の後方には、動力源としてのエンジン(図示せず)が配置されている。走行機体1の後部のうちエンジンの後方には、排出オーガ8が旋回可能に立設されている。グレンタンク6内の穀粒は、排出オーガ8の先端籾投げ口から例えばトラックの荷台やコンテナ等に搬出される。走行機体1の他側(実施形態では左側)には、刈取前処理装置3から送られてきた刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀装置9が搭載されている。脱穀装置9の下方には、揺動選別及び風選別を行うための選別装置10が配置されている。
【0020】
刈取前処理装置3は、脱穀装置9の前部開口に連通した角筒状のフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状のプラットホーム12とを備えている。フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが、前述した単動式の油圧シリンダ(図示せず)を介して連結されている。プラットホーム12内には横送りオーガ13が回転可能に軸支されている。横送りオーガ13の前部上方にはタインバー付きの掻き込みリール14が配置されている。プラットホーム12の下面側には横長バリカン状の刈刃15が配置されている。プラットホーム12の前部には左右一対の分草体16が突設されている。
【0021】
フィーダハウス11の後端部と、脱穀装置9における扱室23の供給口23aとの間に形成されたビータ室18内には、エンジン(図示せず)からの動力にて回転駆動する円筒状の搬送ビータ19が、その回転軸線を左右横向きに延出するようにして回転可能に設けられている。搬送ビータ19は、図2の側面視において反時計方向に回転するように構成されている。
【0022】
掻き込みリール14にて後方に引き倒された植立穀稈は刈刃15にて刈り取られ、横送りオーガ13の回転駆動にてプラットホーム12の左右中央部付近に集められる。これら集積された刈取穀稈は、フィーダハウス11内のチェンコンベヤ17を介してビータ室18に送られる。そして、刈取穀稈は、搬送ビータ19の回転駆動に伴い、ビータ室18から脱穀装置9の扱室23内に全量投入される。
【0023】
脱穀装置9における扱室23内の詳細構造については後述する。脱穀装置9の下部には、扱室23の底面を形成するクリンプ網24が配置されている。脱穀装置9にて脱穀された脱穀物のうちクリンプ網24の網目よりも細かい穀粒等は、クリンプ網24から零れ落ちる。クリンプ網24から漏下しなかった排稈は、扱室23の後部に形成された排塵口23bから、脱穀装置9の後部下側に配置されたスプレッダ33の箇所に排出される。
【0024】
脱穀装置9の下方に配置された選別装置10は、チャフシーブ28やグレンパン等を有する揺動選別機構26と、唐箕ファン29等を有する風選別機構27とを備えている。扱胴21にて脱穀されてクリンプ網24から漏下した脱穀物は、揺動選別機構26と風選別機構27との作用により、精粒等の一番物、枝梗付き穀粒等の二番物、及び藁屑等に選別される。
【0025】
揺動選別機構26及び風選別機構27での選別を経て、走行機体1の下部にある一番受け樋に集められた精粒等の一番物は、一番コンベヤ機構30及び揚穀コンベヤ機構(図示せず)を介してグレンタンク6に集積される。枝梗付き穀粒等の二番物は、二番コンベヤ機構31及び還元コンベヤ機構32等を介して扱室23に戻され、扱胴21にて再脱穀される。再脱穀後の二番物は選別装置10にて再選別される。藁屑等は、脱穀装置9の後部下側に配置されたスプレッダ33にて細かく切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0026】
(2).脱穀装置における扱室内の詳細構造
次に、図2を参照しながら、脱穀装置9における扱室23内の詳細構造について説明する。
【0027】
脱穀装置9における扱室23内の下部には、叩打部材としての叩打板40がクリンプ網24の上面に臨ませて配置されている。叩打板40は、穀粒の通過を許容する大きさの網目(穴)を有する略矩形状の金属網板からなるものであり、その配置姿勢は、広幅面が横方向に広がり(横置きの姿勢で)、且つ、側面視では前側が高く後ろ側に行くに連れて低くなるように傾斜している。なお、叩打板40は網状のものに限らず、穀粒の通過を許容する穴が空いていれば、格子状又は多孔状に形成されたものであっても差し支えない。
【0028】
図2に示すように、叩打板40は、脱穀装置9の扱室23内に、下クランク機構42と前後一対のガイドレール46,47とを介して、前後揺動可能(より詳しくは前方斜め下向きと後方斜め上向きとに往復揺動可能)に配置されている。
【0029】
すなわち、叩打板40の前部両側は、扱室23を区画する左右側板に設けられた前ガイドレール46に、前方斜め下向きと後方斜め上向きとに往復動可能に支持されている。叩打板40の後部下側には、エンジン(図示せず)からの動力にて回転する左右横長の下回転軸41が、扱室23の左右側板に軸支されている。
【0030】
叩打板40の後部は、回転リンク43と昇降アーム44とからなる下クランク機構42を介して下回転軸41に連結されている。下クランク機構42を構成する回転リンク43の基端部は下回転軸41に固定されており、回転リンク43は下回転軸41と交差する方向に延びている。回転リンク43の先端部は、昇降アーム44の一端部に、左右横向きのピンにて回動可能に枢着されている。昇降アーム44の他端部は、叩打板40の後部下面側に固定されたステー部材45に、左右横向きのピンにて回動可能に枢着されている。そして、昇降アーム44とステー部材45とを枢着するピンが、扱室23の左右側板に設けられた後ろガイドレール47に、前方斜め下向きと後方斜め上向きとに往復動可能に支持されている。
【0031】
エンジン(図示省略)からの動力にて下回転軸41が長手軸線回りに回転すると、回転リンク43が下回転軸41と共に一体回転して昇降アーム44が往復動する。その結果、叩打板40は、所定のストロークで前後揺動(より詳しくは前方斜め下向きと後方斜め上向きとに往復揺動)することになる。
【0032】
他方、扱室23内の上部には、仕切部材としての仕切板50が、叩打板40と向かい合わせで配置されている。この場合、仕切板50の左右側部が扱室23の左右側板に固定されている(位置固定的に配置されている)。仕切板50の配置姿勢は、広幅面が横方向に広がっており(横置きの姿勢で)、且つ、側面視では前側が低く後ろ側に行くに連れて高くなるように傾斜している。仕切板50と叩打板40との間は、ビータ室18から刈取穀稈が送り込まれる領域になっている。
【0033】
第1実施形態では、仕切板50と叩打板40とが、後方に行くに従って互いの間隔が広がるように側面視で傾斜している。換言すると、仕切板50と叩打板40との配置関係は、排塵口23bに向けて拡大するように側面視で後ろ広がりに設定されている。なお、言うまでもないが、仕切板50の前端部は、ビータ室18から投入される刈取穀稈を仕切板50上に送り込まないようにするため、扱室23における供給口23aの上縁部とほぼ同じ高さ位置か又はそれより高い高さ位置になっている。
【0034】
(3).作用効果
以上の構成において、ビータ室18から仕切板50と叩打板40との間に送り込まれた刈取穀稈は、下クランク機構42の作用により前後揺動する叩打板40によって、下方から叩かれ(突き上げられ)、かかる突き上げの衝撃にて穂先部に付いた穀粒を分離(脱粒)しながら、後ろ斜め上向きに跳ね飛ばされる。
【0035】
ここで、叩打板40は金属網板からなるものであるため、叩打板40にて刈取穀稈を下方から叩く際は、穂先部に付いた穀粒を網目(穴)に落ち込ませながら、刈取穀稈の枝梗のうち穀粒に近い部分を、網目を画成する線材部分(外周部分)に衝突させ、刈取穀稈から穀粒を効率よく分断(切断)することが可能になる。従って、単なる平板にて叩く場合に比べて、脱粒効果が高い。刈取穀稈から分離された穀粒は、叩打板40の網目とクリンプ網24とを通り抜けて次の選別工程に移行する。
【0036】
後ろ斜め上向きに跳ね飛ばされた刈取穀稈Pは、叩打板40と相対向して配置された仕切板50に衝突したのち、重力の作用にて叩打板40に向けて落下する。仕切板50への衝突時も、刈取穀稈の穂先部に穀粒が付いていれば脱粒する。すなわち、第1実施形態では、刈取穀稈を叩打板40や仕切板50に衝突させることにより、刈取穀稈から穀粒を分離(脱粒)しているのである。その後、刈取穀稈は再び叩打板40にて下方から叩かれ、後ろ斜め上向きに跳ね飛ばされる。
【0037】
かかる一連の動作を複数回繰り返すことにより、ビータ室18から送り込まれた刈取穀稈は、穂先部に付いた穀粒を脱粒しながら、扱室23の後部(走行機体1の進行方向後方)に向けて搬送される。そして、穀粒が取り除かれた(脱穀後の)排稈は、叩打板40の網目から漏下せずに、扱室23後部にある排塵口23bからスプレッダ33の箇所に排出されるのである。
【0038】
第1実施形態の構成によると、前後揺動する叩打板40にて刈取穀稈を下方から叩くことにより刈取穀稈から穀粒を分離(脱粒)するから、前記従来における扱胴式の脱穀装置とは異なり、刈取穀稈を切断しなくて済む。このため、藁屑及び切れ藁等のゴミ発生や、穂切れ粒や枝梗付き穀粒の発生を抑制でき、脱穀性能の向上を図れる。特に第1実施形態では、刈取穀稈を叩打板40にて下方から叩いて仕切板50に衝突させるので、叩打板40の叩打作用と仕切板50への衝突作用とによって、単に叩打板40にて叩く場合よりも脱粒効果を向上できるのである。
【0039】
また、藁屑及び切れ藁等のゴミ発生や、穂切れ粒や枝梗付き穀粒の発生が抑制されるので、次工程の選別装置10での負担が減ることになる。その結果、選別性能の向上にも寄与できるのである。
【0040】
ところで、前記従来における扱胴式の脱穀装置では、スクリュー羽根や各扱歯にて切断される刈取穀稈が、扱胴の回転に対する抵抗(摩擦抵抗)として働くため、扱胴を回転駆動させるには比較的大きな駆動力を要し、結果的に、扱胴を駆動させるのに必要な燃料消費量が増大して、不経済であるという問題もあった。
【0041】
これに対して第1実施形態では、後ろ斜め下向きに傾斜した叩打板40の前後揺動運動によって、刈取穀稈を脱粒しながら後方の排塵口23bに向けて搬送するという構成であるため、前記従来のような大きな摩擦抵抗が叩打板40に作用することはなく、叩打板40を前後揺動させる駆動力も小さくて済む。従って、叩打板40を前後揺動させるのに必要な燃料消費量を前記従来の場合よりも節減することが可能になり、非常に経済的なのである。
【0042】
(4).扱室の内部構造についての他の実施形態
図3及び図4は、仕切部材としての仕切板の別例を示した他の実施形態である。図3に示す第2実施形態では、叩打板40と相対向する仕切板60を前後揺動可能に構成した点において、第1実施形態のものと相違している。その他は第1実施形態と同様の構成であり、そのまま第1実施形態のものと同じ符号を付している。
【0043】
第2実施形態における仕切板60の配置姿勢や叩打板40との配置関係は、第1実施形態のものと同様である。すなわち、仕切板60の前部両側は、扱室23の左右側板に設けられた前上部ガイドレール66に、前方斜め上向きと後方斜め下向きとに往復動可能に支持されている。仕切板60の後部上側には、エンジン(図示せず)からの動力にて回転する左右横長の回転軸61が、扱室23の左右側板に軸支されている。仕切板60の後部は、回転リンク63と昇降アーム64とからなる上クランク機構62を介して上回転軸61に連結されている。仕切板60に対する上クランク機構62の機能は、叩打板40に対する下クランク機構42のそれと同じである。
【0044】
すなわち、回転リンク63の基端部は上回転軸61に固定されている。回転リンク63の先端部は、昇降アーム64の一端部に、左右横向きのピンにて回動可能に枢着されている。昇降アーム64の他端部は、仕切板60の後部上面側に固定されたステー部材65に、左右横向きのピンにて回動可能に枢着されている。そして、昇降アーム64とステー部材65とを枢着するピンが、扱室23の左右側板に設けられた後ろ上部ガイドレール67に、前方斜め上向きと後方斜め下向きとに往復動可能に支持されている。
【0045】
従って、エンジンからの動力にて上回転軸61が長手軸線回りに回転すると、回転リンク63が上回転軸61と共に一体回転して、昇降アーム64が往復動する。その結果、仕切板60は、所定のストロークで前後揺動(より詳しくは前方斜め上向きと後方斜め下向きとに往復揺動)することになる。この場合、叩打板40が前方移動すれば仕切板60も前方移動し、叩打板40が後方移動すれば仕切板60も後方移動するように、叩打板40及び仕切板60における前後揺動のタイミングが調節されている。
【0046】
また、仕切板60が下限位置(図3の一点鎖線状態参照)にある状態において、仕切板60の前端部は、ビータ室18から投入される刈取穀稈を仕切板60上に送り込まないようにするため、扱室23における供給口23aの上縁部とほぼ同じ高さ位置か又はそれより高い高さ位置になっている。
【0047】
第2実施形態の構成によると、ビータ室18から仕切板60と叩打板40との間に送り込まれた刈取穀稈は、叩打板40と仕切板60との両方から交互に叩かれて穀粒を分離(脱粒)するから、叩打板40と仕切板60との相互叩打作用によって脱粒効果を促進でき、より一層の脱穀性能の向上を達成できるのである。
【0048】
図4に示す第3実施形態は、仕切板70が略矩形状の金属網板からなるものである点において、第2実施形態のものと相違している。その他は第2実施形態と同様の構成であり、そのまま第2実施形態のものと同じ符号を付している。この場合の仕切板70は穀粒の通過を許容する大きさの網目を有している。刈取穀稈から分離された穀粒は仕切板70の網目を上向きに通り抜けできるが、通常、上向きに通り抜けた穀粒は再び仕切板70の網目を下向きに通過して、更に、叩打板40の網目とクリンプ網24とを通り抜けて次の選別工程に移行する。なお、仕切板70に関しても、網状のものに限らず、格子状又は多孔状に形成されたものであってもよい。
【0049】
第3実施形態の構成によると、叩打板40だけでなく仕切板70も金属網板からなるものであるため、叩打板40と仕切板70との双方において、網目を画成する線材部分を利用して刈取穀稈から穀粒を効率よく分断(切断)することが可能になり、脱粒効果の更なる向上に寄与できるのである。
【0050】
(5).その他
本願発明は、前述のような普通型コンバインの脱穀装置に限らず、自走自脱型コンバインの脱穀装置や定置式の脱穀装置といった様々な脱穀装置に対して広く適用できる。また、叩打板40や第2実施形態以降の仕切板60,70を前後揺動させるための機構は、前述のクランク機構42,62に限らず、例えば偏心カムを利用したカム機構であってもよい。前後揺動をスムーズに行うために前述のような機構が複数あってもよい。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】第1実施形態における脱穀装置の側面断面図である。
【図3】第2実施形態における脱穀装置の側面断面図である。
【図4】第3実施形態における脱穀装置の側面断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 走行機体
9 脱穀装置
10 選別装置
18 ビータ室
19 搬送ビータ
23 扱室
23a 供給口
23b 排塵口
40 叩打部材としての叩打板
42,62 クランク機構
50,60,70 仕切部材としての仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室の下部に、穀粒の通過を許容する網状、格子状又は多孔状の叩打部材が前後揺動可能に配置されており、前後揺動する前記叩打部材が前記扱室内に搬送された刈取穀稈を下方から叩くことによって、前記刈取穀稈から穀粒を脱粒するように構成されている、
脱穀装置。
【請求項2】
前記扱室の上部には、前記叩打部材と相対向する仕切部材が位置固定的に配置されており、前後揺動する前記叩打部材が前記扱室内に搬送された刈取穀稈を下方から叩いて、前記仕切部材に衝突させることによって、前記刈取穀稈から穀粒を脱粒するように構成されている、
請求項1に記載した脱穀装置。
【請求項3】
前記扱室の上部には、前記叩打部材と相対向する仕切部材が前後揺動可能に配置されており、互いに前後揺動する前記叩打部材及び前記仕切部材が前記扱室内に搬送された刈取穀稈を交互に叩くことによって、前記刈取穀稈から穀粒を脱粒するように構成されている、
請求項1に記載した脱穀装置。
【請求項4】
前記仕切部材が、穀粒の通過を許容する網状、格子状又は多孔状に形成されている、
請求項2又は3に記載した脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−60833(P2009−60833A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231014(P2007−231014)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】