説明

脱穀装置

【課題】チャフシーブ開閉用の連動機構を、排塵室の後側を迂回させることによって排稈や選別の邪魔にならないようにして、円滑な連動状態を維持できるものとする。
【解決手段】排稈チェン(43)の下側に設けた挾扼杆(2)と、揺動選別棚(3)の外側部に備えてチャフシーブ(4)のシーブ間隔を変更するシーブ連動杆(5)との間を、排塵室(6)後側部を迂回する連動機構(7)で連動し、吸引排塵機(9)の壁板(57)側に設けたカバー(14)によって、処理室(12)の後部から揺動選別棚(3)上へ排出される藁屑や塵埃が連動機構(7)の一部へ飛散するのを防止する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインの脱穀装置では、脱穀物を選別するために揺動選別棚を備え、脱穀状態に応じてこの揺動選別棚のチャフシーブのシーブ間隔を変更して、選別性能を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願平3−36139号(実開平4−124042号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャフシーブのシーブ間隔を変更するために脱穀済みの排稈を搬送する排稈装置から連動する形態では、排稈装置が穂先側寄りの位置にあり、揺動選別棚のシーブ間隔を変更するシーブ連動杆が株元側部に位置されるために、これらの間の連動構成が難しく、排稈や選別等の邪魔になり易い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、扱胴(29)を備えた脱穀室(25)の後端部に処理胴(32)を備えた処理室(12)の前端部を処理口(41)で連通させ、前記処理室(12)の後端部に形成した処理室出口(13)を揺動選別棚(3)のストローラック(42)上に開口させ、脱穀室(25)後側の排塵室(6)の後端に形成した藁屑排出口(8)側の上部に吸引排塵機(9)を設け、前記排塵室(6)の上部にはフィードチェン(27)から脱穀後の排稈を受継いで後方の排稈カッター(44)へ供給する排稈チェン(43)を設け、該排稈チェン(43)の下側に設けた挾扼杆(2)と、揺動選別棚(3)の外側部に備えてチャフシーブ(4)のシーブ間隔を変更するシーブ連動杆(5)との間を、排塵室(6)後側部を迂回する連動機構(7)で連動し、前記吸引排塵機(9)の壁板(57)側に設けたカバー(14)によって、前記処理室(12)の後部から揺動選別棚(3)上へ排出される藁屑や塵埃が前記連動機構(7)の一部へ飛散するのを防止する構成としたことを特徴とする脱穀装置とした。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記挟扼杆(2)に連動して変更されるチャフシーブ(4)のシーブ間隔の変更域を、レバー(63)の手動操作で規制可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とした。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によると、連動機構(7)を排塵室(6)の後側部を迂回させることによって、排稈や選別の邪魔にならないようにして、円滑な連動を維持することができ、また、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0008】
また、処理室(12)の後部から排出される藁屑や塵埃が連動機構(7)の一部へ付着したり、絡みつくのが防止されて、円滑な連動を行わせることができる。
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、挟扼杆(2)に連動して変更されるチャフシーブ(4)のシーブ間隔の変更域を、レバー(63)の手動操作で規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の第一実施例を示すチャフシーブ間隔の連動機構部の側面図
【図2】その背面図。
【図3】その一部の平面図。
【図4】そのコンバインの脱穀装置部の平面図。
【図5】その側面図。
【図6】そのコンバインの側面図。
【図7】第二実施例を示す揺動選別棚部の側面図。
【図8】第三実施例を示す揺動選別棚部の側面図。
【図9】その作用を示す同側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、コンバインの脱穀装置に有効に実施することができる。コンバインでは、脱穀装置は、扱胴を内装の脱穀室の一側の穀稈移送口に沿うフィードチェンと挾扼杆との間に、刈取装置から刈取搬送される穀稈の株元部を挾持させて、このフィードチェンで後方へ搬送させながら脱穀させる。この脱穀室の後側には、排塵室が配置されて、上側部には、該フィードチェンで搬送される脱穀済み排稈を受け継いで後方穂先側へ斜め方向へ搬送する排稈装置が設けられ、また、後部には横断流ファン形態の吸引排塵機を設け、さらに、これら脱穀室や排塵室の下方の選別室にはチャフシーブやストローラック等を有する揺動選別棚を設ける形態として実施できる。
【0011】
ここに、脱穀済排稈を後方穂先側へ搬送する排稈装置の挾扼杆の後部と、揺動選別棚の株元側に位置してチャフシーブのシーブ間隔を変更するシーブ連動杆との間を、排塵室後側部を迂回の連動機構で連動することを特徴とする脱穀揺動選別装置の構成として、排稈や選別の邪魔にならない円滑なシーブ間隔の連動を行わせる。
【0012】
また、前記連動機構の一部を、排塵室後端下端の藁屑排出口と、この上部の吸引排塵機の排塵口との間の排塵分離板の下側に沿わせて設けることを特徴とするもので、排塵分離板で連動構成の一部を覆って、円滑な連動を行わせると共に、連動構成の配置構成を簡単化する。
【0013】
さらに、前記連動機構の一部を、吸引排塵機と、この穂先側に位置する処理室の処理室出口との間の排塵室内に位置させて、カバーで被覆することを特徴とするもので、連動機構の設定を行いやすくし、藁屑等の巻き付きを防止して、円滑な連動を行わせる。
【0014】
つぎに、前記揺動選別棚のチャフシーブは、シーブ間隔を変更自在の可動シーブの後端に、一定開度に設定の固定シーブを配置することを特徴とする脱穀揺動選別装置の構成とするもので、可動シーブのシーブ間隔が狭すぎるときでも、この後端の固定シーブ部では開度を広く維持して、穀粒の漏下選別を行わせて、機外への排出等の選別損失を少なくする。
【0015】
さらに、揺動選別棚のチャフシーブは、脱穀部からの連動によって自動的にシーブ間隔を変更すると共に、このシーブ間隔の変更域を手動連動で規制可能に設けることを特徴とする脱穀揺動選別装置の構成とするもので、可動シーブのシーブ間隔が自動変更によって狭過ぎや、広過ぎになったときは、後端の可変シーブのシーブ間隔を手動で変更することによって、刈取や、脱穀状態等に適応させることができ、選別性能を高める。
【0016】
この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第一実施例を図1〜図6に基づいて説明する。コンバインの構成の概略構成は、左右一対のクローラ17を有した車体18上に、刈取装置19を昇降可能に支架し、脱穀装置20、操縦席21や操縦台等を内装のキャビン22、グレンタンク23、排穀オーガ24等を搭載して、操縦席21下部に搭載のエンジンによって各部を伝動させる。脱穀装置20は、脱穀室25の穀稈移送口26に沿って設けられるフィードチェン27や挾扼杆28を外側に沿わせるように配置され、この脱穀装置20の脱穀穀稈の穂先側にキャビン22やグレンタンク23等を搭載している。
【0017】
脱穀装置20は、上部に扱胴29を軸装の脱穀室25、二番処理胴30を軸装の二番処理室31、処理胴32を軸装の処理室12、排塵室6、および横断流ファンからなる吸引排塵機9等を配置し、これらの下部の選別室29には、揺動選別棚3を設け、唐箕33から吹き出す選別風を選別風路34を経て吸引排塵機9側へ通すように構成している。この選別風路34の底部に一番粒を取出す一番樋35、この一番流穀板36、二番粒を取出す二番樋37等を配置している。
【0018】
脱穀室25は下周部に脱穀網38を有し、処理室12の下周には処理網39を有して、脱穀物や処理物の一部を揺動選別棚3上面に漏下させることができる。脱穀室25の終端部はフィードチェン27で挾持搬送される脱穀済排稈を排塵室6へ送り出す排稈口40が形成されると共に、処理室12の前端部が処理口41で連通される。この処理室12は排塵室6の穂先側部に前後方向に渡って構成されて、後端部を揺動選別棚3後端のストローラック42部上において開口させて処理室出口13を形成している。
【0019】
排塵室6は、後端に藁屑排出口8を形成して、ストローラック42から排出される藁屑等を機外へ排出案内する。この藁屑排出口8部上に吸引排塵機9を設けて、排塵室6の排塵物を吸引して後側の排塵口10から機外へ排出できる。また、この排塵室6の上部には排稈装置1を構成する排稈チェン43が、後方穂先側へ斜め方向に設けられ、フィードチェン27から排出される排稈を受継いで後方の排稈カッター44へ供給する構成としている。
【0020】
前記二番処理室31は、脱穀室25の穂先側部にあって、後端には二番樋37との間に二番揚穀機45が連通され、前端には排出口46が形成されて、処理物をこの排出口46から揺動選別棚3の移送板47上に落下させることができる。一番樋35の穂先側とグレンタンク23との間には一番揚穀機(図面省略)が設けられて、穀粒をグレンタンク23に収容できる。
【0021】
前記揺動選別棚3は、脱穀室25部の下側に移送板47が設けられ、この脱穀室25の後部から排塵室6の下側にわたってチャフシーブ4を配置し、この後端の吸引排塵機9の下部にストローラック42を設けている。また、チャフシーブ4の下側にはグレンシーブ48が設けられる。
【0022】
前記排塵室6上部の排稈チェン43の下側には排稈装置1を構成する挾扼杆2が設けられて、脱穀済の排稈を挾持して後方穂先側へ向けて斜め方向へ搬送できる。この排稈挾扼杆2は、排稈の搬送量に応じてばね49に抗して上下動する。シーブ連動機構7は、この挾扼杆2とチャフシーブ4のシーブ連動杆5との間にわたって、排塵室6の後側を迂回するような形態にして連動構成されるもので、この挾扼杆2の後端部のロッド50にリンク51が連結され、このリンク51の下端が横方向の連動軸52の一端の軸アーム部に連結されて、挾扼杆2の上下動で連動軸52を回動するように連動する。
【0023】
この連動軸52は吸引排塵機9の排塵口10の下側に形成される排塵分離板11の下側に沿って横方向に軸装されたもので、株元側の機壁外側には軸アーム部53を有し、ばね54を介してワイヤー55を連結して、このワイヤー55を介して、前記チャフシーブ4のシーブ角を変更するためのシーブ連動杆5のシーブアーム56に連結している。排稈量が少くて、排稈挾扼杆2が排稈チェン43に上動接近された状態では、シーブ角度は緩傾斜としてチャフシーブ4の選別間隔を狭くし、排稈量が多くて、排稈挾扼杆2が下動されるとチャフシーブ4の選別間隔を広くするように連動する。
【0024】
前記連動機構7の一部であるリンク51は、挾扼杆2の後端部の下側に位置する吸引排塵機9と、この穂先側の処理室出口13との間の、排塵室6内の狭い間隔部に位置して、吸引排塵機9の穂先側の壁板57に沿って支持されて、カバー14で覆われる。このため処理室12の後端部の処理室出口13から下側のストローラック42へ排出されようとする藁屑や塵埃等が飛散しても、このカバー14によってリンク51部への付着や、絡みつきを防止されて、連動機構の円滑な連動を行わせることができる。
【0025】
第二実施例を図7に基づいて上例と異なる点を説明する。揺動選別棚3のチャフシーブ4を、前部のシーブ間隔の変更調節できる可動シーブ15部と、後端部のシーブ間隔の常時開かれたままの固定シーブ16とによって構成し、可動シーブ15は、前記のようにシーブ連動杆5を有してワイヤー55等によって排稈装置1の挾扼杆2に連動させるが、固定シーブ16は、適宜の間隔に開かれているために、可動シーブ15のシーブ間隔が狭くなって選別が行われなくなったときでも、後端部の固定シーブ16部では漏下選別が行われて、未選別の穀粒をそのままストローラック42上から藁屑排出口8へ排出させないようにする。
【0026】
前記一番粒穀板36の上端は、これら可動シーブ15と固定シーブ16との境界部の下側に位置させるが、この揺動選別棚3の下側部にゴム板等からなる補助板58を設けて、該一番流穀板36上にのぞませて、固定シーブ16から漏下した穀粒を一番樋35へ収集することができ、整粒が二番樋37へ流下すのを少なくすることができる。この補助板58を前後に移動調節できるように構成することもできる。
【0027】
第三実施例を図8、図9に基づいて上例と異なる点を説明する。前記チャフシーブ4のシーブ間隔を変更するためのシーブ連動杆5のシーブアーム56には、挾扼杆2と連動のワイヤー55の先端のワイヤーピン59を係合させるピン穴60を長穴形態として、ばね54はこのワイヤーピン59を引っ張るように設けられている。このシーブアーム56の先端にワイヤー61を連結し、操縦席21近くの操縦台62のレバー63で操作して、該ワイヤー55によるシーブ間隔の連動調節を規制することができる。レバー63を前側Aに操作するとワイヤー61がばね64に抗して引かれて、シーブアーム56を回動Bしてチャフシーブ4のシーブ間隔を狭くするように調節する(図8)。また、レバー63を反矢印A方向へ操作するとシーブアーム56がばね64で反矢印B方向へ引き戻されてシーブ角度が急になってシーブ間隔が開かれる。
【0028】
このようにして、レバー63によってシーブ間隔の開閉を規制するが、このときの挾扼杆2側からの連動によるワイヤーピン59は、シーブアーム56のピン穴60によって吸収されて、手動操作によるシーブ間隔の連動開閉を規制する。このため、挾扼杆2からの連動開閉を自由に行わせるときは、レバー63によるシーブアーム56を反矢印B方向へ位置させておけばよい。
【符号の説明】
【0029】
2 挟扼杆
3 揺動選別棚
4 チャフシーブ
5 シーブ連動杆
6 排塵室
7 連動機構
8 藁屑排出口
9 吸引排塵機
12 処理室
13 処理室出口
14 カバー
25 脱穀室
27 フィードチェン
29 扱胴
32 処理胴
41 処理口
42 ストローラック
43 排稈チェン
44 排稈カッター
57 壁板
63 レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(29)を備えた脱穀室(25)の後端部に処理胴(32)を備えた処理室(12)の前端部を処理口(41)で連通させ、前記処理室(12)の後端部に形成した処理室出口(13)を揺動選別棚(3)のストローラック(42)上に開口させ、脱穀室(25)後側の排塵室(6)の後端に形成した藁屑排出口(8)側の上部に吸引排塵機(9)を設け、前記排塵室(6)の上部にはフィードチェン(27)から脱穀後の排稈を受継いで後方の排稈カッター(44)へ供給する排稈チェン(43)を設け、該排稈チェン(43)の下側に設けた挾扼杆(2)と、揺動選別棚(3)の外側部に備えてチャフシーブ(4)のシーブ間隔を変更するシーブ連動杆(5)との間を、排塵室(6)後側部を迂回する連動機構(7)で連動し、前記吸引排塵機(9)の壁板(57)側に設けたカバー(14)によって、前記処理室(12)の後部から揺動選別棚(3)上へ排出される藁屑や塵埃が前記連動機構(7)の一部へ飛散するのを防止する構成としたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記挟扼杆(2)に連動して変更されるチャフシーブ(4)のシーブ間隔の変更域を、レバー(63)の手動操作で規制可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−200761(P2010−200761A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117482(P2010−117482)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【分割の表示】特願2000−33251(P2000−33251)の分割
【原出願日】平成12年2月10日(2000.2.10)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】