説明

脱穀装置

【課題】扱胴に対して平行に設けられる処理装置を有効に利用できる構成を提供する。
【解決手段】扱胴13は、穀稈搬送機構12で搬送される穀稈22を脱粒する。穂切れ処理装置14は、扱胴13で穀稈22を脱粒して発生した被処理物を処理する。選別装置15は、穂切れ処理装置14の下方に配置され、穂切れ処理装置14で処理された被処理物を、再処理が不要な一番物と、再処理が必要な二番物と、に選別する。還元コンベアは、選別装置15で選別された二番物を穂切れ処理装置14に戻す。穂切れ処理装置14は、扱胴13の軸線と平行な軸線を中心に回転する穂切れ処理胴40と、穂切れ処理胴40の下方に配置された受網41と、備える。そして、還元コンベアは、穀稈22の搬送方向で、穂切れ処理胴40の中央よりも下流側に寄った位置に、二番物を戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として脱穀装置に関する。詳細には、脱穀装置において、扱胴に隣接して設けられる処理装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
略円筒状の扱胴の周囲に扱歯を設け、当該扱胴を回転させることにより脱穀を行う脱穀装置が知られている。当該扱胴により、穀稈の穂先に付いた穀粒を取り外すことができる。
【0003】
しかし上記のような扱胴による脱穀では、穀粒のみが穂先から綺麗に取れるとは限らず、穀粒に枝梗が付いた状態のものなどが多く発生する。そこで、枝梗の付いた穀粒などを処理する処理胴を、扱胴に隣接させ、かつ扱胴と平行に設ける構成が知られている。このような処理胴は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載されたコンバインが備える処理胴(送塵口二番処理胴)は、扱胴で処理しきれなかった穂切れ粒・枝梗付着等を処理し、当該処理胴下方に配置されたクリンプ網により脱粒された穀粒を落下させるように構成されている。
【0004】
また、特許文献1に記載のコンバインは、選別装置で選別された二番物を再処理して枝梗を除去する二番処理装置を備えている。この二番処理装置は、処理胴に取り付けられた桔梗処理羽と、ケースの内側面に突設されたツースバーと、によって二番物を擦るようにして枝梗の除去を行うものである。
【0005】
しかし、この特許文献1のコンバインのように、扱胴で発生した被処理物を処理する装置と、選別装置で選別された二番物を処理する装置と、を別体として備えた構成は、装置が複雑化してコストアップにつながるとともに、装置自体が大型化するという問題がある。
【0006】
一方、特許文献2が開示する脱穀装置は、扱室に連通して処理室を備える構成を開示している。この処理室内には、外周に多数の扱歯を備えて回転する処理胴が、扱胴と略平行に配設されている。そして、扱室内で発生した穀粒を含む藁屑などは、処理胴の回転によって分離処理される。また特許文献2においては、選別機構で選別された二番物も、処理室に送られて、処理胴の回転によって分離処理される。
【0007】
このように、特許文献2に記載の処理室は、扱胴で発生した被処理物と、選別装置で選別された二番物と、を処理している。このように構成することにより、扱胴で発生した被処理物と、選別装置で選別された二番物と、を別々の装置で処理する特許文献1の構成に比べて、コストダウンを図り装置全体もコンパクトに構成することができる。
【0008】
また特許文献2は、V字形の溝(V型溝)が形成された脱穀板を扱胴に設けた構成を開示している。この構成は、従来の扱歯のように叩き落すように脱穀するのではなく、穀稈を挟み込んで穂先に向かって扱くことにより脱穀するものである。特許文献2は、このように構成することにより、確実に脱穀処理を行うことができ、しかも脱穀に際して発生する排塵を従来の脱穀装置に比べて大幅に削減できるので、選別の際の負荷を低減できるとともに、選別精度の向上を達成できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3814210号公報
【特許文献2】特開2002−112618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の脱穀装置においては、扱歯は、線材を折り曲げることで形成されていた。このように線材からなる扱歯は、穀稈との衝突頻度が低いため、脱穀の効率を向上させることが難しい。この点、特許文献2の脱穀装置が備える板状の脱穀板は、線材からなる扱歯に比べて穀稈との衝突頻度が高い。従って、特許文献2が開示する脱穀装置は処理効率が高く、穀稈の穂の部分を速やかに取り外すことができる。
【0011】
ところで、特許文献2が開示する脱穀装置は、穀稈の穂の部分を速やかに取り外すことができるので、当該穂の部分は、扱胴の前半部分(穀稈の搬送方向上流側)で殆ど取り外される。即ち、特許文献2のような脱穀装置では、扱胴の前半部分で被処理物が多く発生し、扱胴の後半部分(穀稈の搬送方向下流側)で発生する被処理物は少ない。従って、特許文献2においては、扱胴から処理室に投入される被処理物は、穀稈の搬送方向上流側に偏って分布することになる。被処理物が偏った状態で処理室に導入されると、処理胴の全長を有効に利用して処理を行うことができない。このように、特許文献2の構成では、処理胴の処理能力を十分に発揮させるという点で改良の余地があった。
【0012】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、扱胴に対して平行に設けられる処理胴の全長を有効に利用することで、処理効率を向上させた処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の観点によれば、以下の構成の脱穀装置が提供される。即ち、この脱穀装置は、穀稈搬送機構と、扱胴と、処理装置と、選別装置と、還元機構と、を備える。前記穀稈搬送機構は、前記穀稈を搬送する。前記扱胴は、前記穀稈搬送機構によって搬送される前記穀稈を脱粒する。前記処理装置は、前記扱胴で穀稈を脱粒して発生した被処理物を処理する。前記選別装置は、前記処理装置の下方に配置され、前記処理装置で処理された被処理物を、再処理が不要な一番物と、再処理が必要な二番物と、不要物として機外に排出される三番物と、に選別する。前記還元機構は、前記選別装置で選別された二番物を前記処理装置に戻す。前記扱胴は、当該扱胴の外周面において外側に向けて突出する扱歯を複数有する。前記扱歯は、前記扱胴の軸方向に平行な平面に沿って扁平に形成され、かつ当該軸方向に沿って複数並んでいる。また、前記軸方向で見たときに、前記扱歯は、当該扱歯の先端が前記扱胴の回転方向下流側を向くように配置されている。前記処理装置は、前記扱胴の軸線と平行な軸線を中心に回転する処理胴と、前記処理胴の下方に配置された受網と、を備える。そして、前記還元機構は、前記穀稈の搬送方向で、前記処理胴の中央よりも下流側に寄った位置に、前記二番物を戻す。
【0015】
即ち、扱胴から処理胴へ投入される被処理物は、穀稈の搬送方向上流側に偏っているので、選別装置からの二番物は処理胴の下流側に還元することにより、処理胴に供給される被処理物の分布を当該処理胴の軸方向で均一化することができる。これにより、処理装置の処理能力を十分に発揮させることができる。
【0016】
上記の脱穀装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記処理装置は、前記処理胴から外側に向けて突出する複数の処理歯と、前記処理歯同士の間を通過できるように前記受網側に設けられた複数の切歯と、を備える。そして、前記穀稈の搬送方向で、前記処理胴の中央よりも上流側の部分と下流側の部分とでは、前記処理歯の間隔、又は前記処理歯の長さ、の少なくとも何れか一方を異ならせる。
【0017】
この構成で、処理胴が回転することにより、処理歯と受網による揉み解し作用によって、扱胴からの被処理物及び選別装置からの二番物を単粒化し、受網を通して下方に落下させることができる。また本発明の構成によれば、処理胴の上流側には扱胴からの被処理物が、下流側には選別装置から二番物が、それぞれ供給されるのであり、処理装置は上流側と下流側で異なる内容構成のものを処理することになる。そこで、処理装置のスペックを上流側と下流側で異ならせることにより最適な処理が可能となり、消費動力の増加等の問題を起こすことなく単粒化能力を向上させることができる。
【0018】
上記の脱穀装置は、以下のように構成することが好ましい。即ち、この脱穀装置は、その上面の断面輪郭形状が略鋸波状に形成された板状のフィードパンを、前記扱胴及び前記処理装置と、前記選別装置と、の間に備える。そして、前記扱胴及び前記処理装置から落下してきた単粒及び被処理物を、前記フィードパンによって搬送して前記選別装置に供給する。
【0019】
このように、扱胴と選別装置との間にフィードパンを設けることで、扁平状の扱歯による風が選別風に影響しにくくなり、選別装置の選別性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る脱穀装置の構成を示す側面断面図。
【図2】扱胴の前端部近傍における脱穀装置の正面断面図。
【図3】扱歯の外観斜視図。
【図4】穂切れ処理装置の外観斜視図。
【図5】扱室内の様子を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態の脱穀装置10は、ケーシング11と、穀稈搬送機構12と、扱胴13と、穂切れ処理装置(処理装置)14と、選別装置15と、を主に備えている。
【0022】
ケーシング11内には、脱穀を行うための空間である扱室16が形成されている。扱室16の内部には、扱胴13と、穂切れ処理装置14と、が配置されている。
【0023】
ケーシング11は、扱室カバー18を有する。扱室カバー18は、扱胴13及び穂切れ処理装置14の上方を覆い、扱室16の天井部分を構成している。
【0024】
扱胴13は、金属板にて略八角形柱状の中空状筒体として構成されており、その軸線が装置前後方向に沿うようにして略水平に配置されている。扱胴13の外周には、複数の扱歯17が外向きに突出するように設けられている。扱胴13は、図略の駆動源によって、その軸線を中心として回転駆動されるように構成されている。
【0025】
図3に示すように、扱歯17は扁平状に形成され、かつその扁平な面の延長面内で一方向に並んで複数形成されている。扱歯17は、その扁平な面が、扱胴13の軸線に対して平行になるように、当該扱胴13に取り付けられている。これにより、複数の扱歯17が、扱胴13の軸線と平行な方向に並べて配置されている。図3に示すように、扱歯17の先端部は、先端に向かって幅が狭まる略V字状に構成されている。従って、隣接する扱歯17同士の間は、先端に向かって幅が広がるV型溝19が形成されている。また、V型溝19の奥には、丸型(又は多角形)の抜き孔20が、前記V型溝19に連通するように形成されている。
【0026】
図1に示すように、扱室16の前側端部には、穀稈導入口21が形成されている。この穀稈導入口21から扱室16内に穀稈が導入されて、脱穀が行われる。
【0027】
穀稈搬送機構12は、図2に示すように、ケーシング11の側方に設けられている。この穀稈搬送機構12は、無端チェーンからなるフィードチェーン23と、フィードチェーン23の上面に対して押圧されるように設けられた押圧部材24とから構成される。図2に示すようにフィードチェーン23と押圧部材24との間に穀稈を挟み込んだ状態で、図略の駆動源によってフィードチェーン23を回転駆動することにより、穀稈22を装置後方に向かって搬送する構成である。
【0028】
穀稈搬送機構12によって搬送されることにより扱室16に導入された穀稈22は、扱歯17と扱歯17の間の部分(V型溝19及び抜き孔20)に嵌まり込み、この状態で扱胴13が回転することにより、穂先22aに向けて扱かれる。これにより、穀稈22から穂の部分のみが取られる。なお、このように穀稈22から取られた穂の部分を、穂切れと称する。
【0029】
ここで図2に示すように、扱胴13の軸線方向で見たときに、扱歯17は、当該扱歯17の先端が、扱胴13の回転方向下流側を向くように、扱胴13の法線に対して斜めに配置されている。これにより、穂先22aを、扱胴13に向けて引き寄せるようにして扱くことができるので、より確実に穀稈22から穂切れを取ることができる。
【0030】
扱胴13において、穂切れの他、穀粒や藁屑等が発生する。これらの混合物は、扱胴13の回転方向下流側に向けて放出され、落下する。穂切れ等の落下位置には、穂切れ処理装置14が配置されている。穂切れ処理装置14に投入される穂切れ、穀粒、藁屑等の混合物を、被処理物と称する。被処理物は、穂切れ処理装置14で処理され、単粒化(穀粒を枝梗から外すこと)される。
【0031】
穂切れ処理装置14は、図4に示すように、穂切れ処理胴(処理胴)40と、受網41と、を備えている。
【0032】
穂切れ処理胴40は、略四角筒状に形成されるとともに、その軸線が扱胴13の軸線と平行になるように配置されている。穂切れ処理胴40は、その軸中心の位置が、扱胴13の軸中心の位置よりも低くなるように配置されている。これにより、扱胴13から落下する被処理物を確実に受けとめることができる。穂切れ処理胴40は、その軸線を中心として、図略の駆動源により回転駆動される。また、穂切れ処理胴40は、外向きに突出する複数の処理歯42を有している。図4に示すように、各処理歯42は扁平棒状の部材として形成されている。また、複数の処理歯42は、穂切れ処理胴40の軸線方向に沿って並んで配置されている。また、図2に示すように、処理歯42は、後退角を有するように配置されている(即ち、処理歯42の先端が、穂切れ処理胴40の回転方向上流側を向いて傾くように配置されている)。
【0033】
受網41は、穂切れ処理胴40の下半分を覆うように設けられている。図2に示すように、受網41は、穂切れ処理胴40の軸線方向で見たときに、回転する処理歯42の先端の軌跡に沿って形成されている。また、受網41は、処理歯42の間を通過する切歯43を有している。
【0034】
この構成で、穂切れ処理装置14に導入された穂切れ等は、処理歯42と、受網41と、の間で揉み解し作用を受け、単粒化が促進される。脱粒された穀粒は、受網41を通って、選別装置15に落下する。また、脱粒された残りの枝梗、藁屑などは、処理歯42と切歯43との間を通過することにより分離処理され、細かく細断されて受網41から選別装置15に落下する。このように、穀粒、藁屑等は次々と受網から落下するので、穂切れ処理装置14に藁屑等が大量に滞留することがなく、高い処理効率を維持することができる。
【0035】
なお、図2に示すように、受網41の扱胴13側の端部には、その先端が扱胴13の方向を向くように配置された受歯45が取り付けられている。図5に示すように、受歯45は、その先端が略V字形になるように形成された板状部材であり、かつ扱胴13の軸線方向に沿って複数形成されている。図5に示すように、受歯45は、扱歯17同士の間(V型溝19)に入り込むように配置されている。
【0036】
このような受歯45を設けたことにより、扱胴13で発生した穂切れが、穂切れ処理装置14によって処理されないまま、扱胴13と穂切れ処理装置14との間を通って選別装置15に落下しにくくなっている。これにより、扱胴13で発生した穂切れの大部分を穂切れ処理装置14で処理することができる。なお、一部の穂切れ等は、穂切れ処理装置14で処理されないまま、扱胴13と穂切れ処理装置14との間を通って落下してしまうが、その場合であっても、当該穂切れ等は扱歯17と受歯45との間を通過する際に揉み解し作用を受けて単粒化が促進される。以上のように、扱胴13で発生する穂切れ等を確実に処理したうえで選別装置15に供給することができるので、単粒化の効率が優れ、選別装置15における負荷も低減することができる。
【0037】
ここで、線材からなる扱歯を備えた従来の脱穀装置と比較し、本実施形態のように扁平状に形成された扱歯を備えた脱穀装置の優れた点を説明すると、以下のとおりである。
【0038】
即ち、線材からなる扱歯を備えた従来の脱穀装置は、扱歯が穂先に衝突する衝撃によって脱穀するものであったので、当該衝突によって藁屑が大量に発生する。このため、藁屑の多い環境で単粒化を行わなければならず、動力消費が多かった。
【0039】
本実施形態の扱胴13は、扱歯17で穀稈22を挟み込んで扱ぐ構成であるから、扱歯を衝突させた衝撃で脱穀する従来の扱胴に比べて、藁屑の発生が少ない。そして本実施形態の脱穀装置10は、穀稈22から穂切れを取る装置(扱胴13)と、穂切れを処理して単粒化する装置(穂切れ処理装置14)と、を別にすることにより、藁屑の少ない環境で単粒化を実施できるので、省動力となる。
【0040】
なお、本実施形態において扱歯17は扁平状に形成されているので、扱胴13が回転することにより風が発生する。扱歯17によって発生した風は、扱室16内を、図略の藁出口に向かって流れる。これにより、細かい塵が排出されることで選別装置15に落ちる塵が少なくなる。更に、本実施形態では、図2に示すように、フィードチェーン23の下方において、扱室16に開口するエア吸入口50を、ケーシング11に形成している。このエア吸入口50から空気を吸入させることにより、扱歯17の回転により発生する風を扱室16内で強力に流すことができるので、扱室16内の塵を効率良く藁出口から排出することができる。これにより、選別装置15に落ちる塵が更に減るので、選別装置15の選別効率を向上させることができる。
【0041】
次に、フィードパン35について説明する。フィードパン35は、扱胴13及び穂切れ処理装置14と、選別装置15と、の間に配置されている。扱胴13及び穂切れ処理装置14から落下してきた穀粒、藁屑、穂切れ等の混合物(以下、被選別物と称する)は、このフィードパン35の上にいったん落下する。フィードパン35は略水平に配置された板状部材である。また、装置左右方向に直交する平面で切断したときの断面図(図1)において、フィードパン35の上面の断面輪郭は略鋸歯状に形成されている。この鋸歯状の上面は、前側を向く面の傾きが、後側を向く面の傾きよりも急になっている。この構成で、フィードパン35を前後揺動させることにより、フィードパン35の上方に落ちた被選別物は、装置前側に向けて搬送される。また、このようにフィードパン35によって搬送されている間に、被処理物は装置左右方向で分散される。これにより、選別装置15に対して装置左右方向で均一に被処理物を供給することができる。
【0042】
次に、選別装置15について説明する。選別装置15は、揺動選別部32と、風選別部33とを備えている。穂切れ処理装置14の受網41から落下した被選別物は、揺動選別部32及び風選別部33によって選別される。
【0043】
揺動選別部32について説明する。この揺動選別部32は、前後揺動することにより、被選別物を選別するものである。揺動選別部32は、上から順に、チャフシーブ36と、山形板37と、を上下方向に並べて設けた構成である。
【0044】
前記フィードパン35によって装置前側に送られた被選別物は、当該フィードパン35の前側端部から、チャフシーブ36の上に落ちる。チャフシーブ36は、装置の略左右方向に横架された複数のチャフフィン46を、装置の略前後方向に複数並べて備えている。チャフシーブ36は、フィードパン35から送られた被選別物の粗選別を行うためのものである。即ち、チャフシーブ36を前後揺動させることで、穀粒等の重くて小さい被選別物はチャフフィン46の間を通って下に落ち、藁屑などの軽くて大きい被選別物はチャフフィン46に引っ掛かって残る。
【0045】
各チャフフィン46は、その上面が斜め前方を向くようにして配置されている。これにより、チャフシーブ36全体を前後揺動させることで、被選別物は揺動選別されながら装置後側に向けて搬送されていく。チャフシーブ36の後端に達するまでの間に大部分の穀粒は落下し、チャフシーブ36の上には、穂切れや藁屑のみが残る。
【0046】
しかしながら、チャフフィン46の間を通って落下する穂切れや藁屑も少なからず存在する。チャフシーブ36から穂切れや藁屑が大量に落下すると、グレンシーブ39の上に引っ掛かって風選別部33の選別能力が低下してしまうという問題がある。そこで本実施形態の脱穀装置10では、チャフシーブ36とグレンシーブ39との間に、複数の山形板37を配置している。
【0047】
この山形板37は板状に形成されており、装置の略左右方向に直交するように配置されている。また、複数の山形板37は、装置の略左右方向で並んで配置されている。ここで前述のように、チャフフィン46は装置の略左右方向に配置されているので、チャフフィン46の間を通って落ちてくる穂切れ、藁屑などは、その長手方向が略左右方向を向いていることが多い。そこで、装置左右方向に直交するように配置された山形板37を複数設けることにより、チャフフィン46の間から落ちてきた穂切れ、藁屑などを、山形板37に引っ掛けるようにして受けとめることができる。これにより、穂切れ、藁屑などがグレンシーブの上に大量に落ちてしまうことを防止できる。なお、チャフシーブ36で選別されて落ちてきた穀粒は、山形板37の間を通ってグレンシーブ39まで落ちていくことができる。
【0048】
この山形板37の上端面は略鋸歯状に形成されている。この鋸歯状の上端面は、後方を向く面の傾きが、前方を向く面の傾きよりも急になっている。これにより、山形板37を前後揺動させることで、当該山形板37の上に引っ掛かっている穂切れ、藁屑などを、装置後側に向けて搬送することができる。
【0049】
次に風選別部33について説明する。この風選別部33は、唐箕ファン38と、グレンシーブ39と、を備えている。
【0050】
グレンシーブ39は網目状のプレス、又はクリンプ網として構成されており、山形板37の下方に配置される。前記グレンシーブ39の下方には、スクリューコンベアとして構成された一番コンベア47が配置されている。
【0051】
唐箕ファン38は、斜め後方上向きの選別風を発生させ、当該選別風をグレンシーブ39に対して下側から当てるように構成されている。
【0052】
以上の構成で、グレンシーブ39上に落下した被選別物に対して、唐箕ファン38が生起する選別風が当てられる。そして、この選別風にかかわらず略垂直に落下する比重の重い物、即ち穀粒は一番物と呼ばれる。一番物は一番コンベア47に導入され、それ以外の比重の軽いものは後方に向けて吹き飛ばされる。
【0053】
一番コンベア47に導入された一番物(穀粒)は、当該一番コンベア47によって搬送され、例えば図略のグレンタンクに貯蔵される。以上により、被選別物から穀粒を選別して取り出すことができる。
【0054】
なお、本実施形態の脱穀装置10は、グレンシーブ39が穂切れや藁屑等で詰まることを防止するために、クリーニングブラシ51を有している。このクリーニングブラシは、装置左右方向に沿って配置された円筒状のブラシであり、その軸線を中心に回転駆動されるように構成されている。そしてこのクリーニングブラシ51は、歯付きベルトやラック&ピニオンなどの適宜の機構により、グレンシーブ39の上を装置前後方向に往復移動することができるように構成されている。クリーニングブラシ51の前後移動と回転により、グレンシーブ39に引っ掛かった穂切れや藁屑を落とし、選別能力の低下を防ぐことができる。なお、クリーニングブラシ51の回転及び前後移動は、常時行っても良いし間欠的に行っても良い。
【0055】
チャフシーブ36、山形板37、及びグレンシーブ39の後側端部下方には、スクリューコンベアとして構成された二番コンベア48が配置されている。
【0056】
チャフシーブ36や山形板37の上に残った穂切れ、藁屑等は、装置後側に搬送されて二番コンベア48に落下する。また、グレンシーブ39に落下した被処理物のうち、唐箕ファン38の選別風により吹き飛ばされた穂切れ、藁屑等も、二番コンベア48に落下する。風選別部33は、二番コンベア48に落下する被選別物に対して後方上向きの風を当てる送風ファン49を有している。
【0057】
二番コンベア48に落下する被選別物のうち、穀粒の付いた穂切れ等は比較的重いので、送風ファン49の風にもかかわらず落下して二番コンベア48に導入される。一方、穀粒の付いていない藁屑等の不要物(三番物)は、送風ファン49の風によって吹き飛ばされ、図略の藁出口から装置の外に排出される。
【0058】
穀粒の付いた穂切れ等は、単粒化の処理を再度施すことにより穀粒を取り出すことができるので、回収する価値のあるものである。このように再度単粒化の対象とするものを、二番物と称する。風選別部33で選別されて二番コンベア48に導入された二番物は、当該二番コンベア48によって搬送され、還元コンベア(還元機構)52の端部に供給される。還元コンベア52はスクリューコンベアとして構成されており、二番物を、穂切れ処理装置14に還元するように構成されている。穂切れ処理装置14に還元された二番物は、当該穂切れ処理装置14において再処理され、穀粒が取り出される。
【0059】
なお、従来の脱穀装置は、扱胴で発生した穂切れを処理する装置と、二番物を処理する装置と、を別々に備える構成とされていた。この点、本実施形態の脱穀装置10が備える穂切れ処理装置14は、扱胴13で発生した穂切れを処理する役割と、二番物を処理する役割と、を兼ねている。このように1つの装置によって穂切れと二番物を処理するので、脱穀装置10のコストを削減することができる。
【0060】
次に、本発明の特徴的構成について詳しく説明する。
【0061】
扱室16に導入された穀稈22は、穀稈搬送機構12によって搬送されるに従って穂の部分が取られていくので、搬送方向上流側(装置前側)で発生する被処理物の量は多く、下流側(装置後側)で発生する被処理物の量は少なくなる。このため、穂切れ処理装置14に投入される被処理物の量は、穀稈22の搬送方向上流側で多く、下流側で少ない。つまり、扱胴13から穂切れ処理装置14に導入される被処理物は、穀稈22の搬送方向上流側(装置前側)に偏っている。
【0062】
このように、扱胴13からの被処理物が前側に偏っているので、このままでは、穂切れ処理装置14の後側を有効利用することができない。
【0063】
そこで本実施形態の脱穀装置10においては、穀稈22の搬送方向で穂切れ処理胴40の中央位置よりも下流側に寄った位置(即ち、穂切れ処理胴40の後側)に二番物を還元するように、還元コンベア52が配置されている。
【0064】
このように、扱胴13からの被処理物の供給量が少ない箇所(即ち、穂切れ処理胴40の後側)に二番物を還元することで、穂切れ処理装置14で処理される穂切れ等の分布を、穂切れ処理胴40の軸線方向で均一化することができる。これにより、穂切れ処理装置14を、その全長にわたって有効利用することができるので、穂切れ処理装置14の性能を十分に発揮させて、高い処理効率を実現することができる。
【0065】
なお、上記のように、本実施形態の穂切れ処理装置14では、穀稈22の搬送方向の上流側では扱胴13からの被処理物を、下流側では選別装置15からの二番物を、主に処理することになる。ここで、扱胴13から投入される被処理物と、選別装置15からの二番物は、その内容構成が異なる。例えば、選別装置15からの二番物は、穂切れ処理装置14によっていったん処理されたものであるから、扱胴13から投入される被処理物よりも細かく細断されている。
【0066】
そこで本実施形態の脱穀装置10においては、穂切れ処理装置14のスペックを、前半部分と後半部分とで変えることにより、適切な処理を行うことができるように構成している。
【0067】
より具体的には、図4及び図5に示すように、穀稈22の搬送方向で、穂切れ処理胴40の中央よりも下流側の部分(即ち穂切れ処理胴40の後半部分、符号40bで示す部分)は、上流側の部分(即ち穂切れ処理胴40の前半部分、符号40aで示す部分)よりも、処理歯42及び切歯43の間隔を狭くしている。このように構成することにより、扱胴13からの被処理物と、選別装置15からの二番物と、をその内容構成に応じて適切に処理することができるので、穂切れ処理装置14の処理効率を向上させることができる。
【0068】
なお前述のように、本実施形態の脱穀装置10は、扱胴13と選別装置15との間にフィードパン35を配置している。扱胴13の外周に配置された扱歯17は扁平状に形成されているので、扱胴13が回転することにより強力な風が発生する。従って、この扱歯17によって発生する風が、風選別部33における選別風に悪影響を及ぼす可能性がある。この点、本実施形態の脱穀装置10においては、扱胴13の下にフィードパン35を配置することにより、当該フィードパン35が風避けの役割を果たす。これにより、扱胴13の回転によって発生する風が、風選別部33における選別風に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0069】
以上で説明したように、本実施形態の脱穀装置10は、穀稈搬送機構12と、扱胴13と、穂切れ処理装置14と、選別装置15と、還元コンベア52と、を備える。穀稈搬送機構12は、穀稈22を搬送する。扱胴13は、穀稈搬送機構12で搬送される穀稈22を脱粒する。穂切れ処理装置14は、扱胴13で穀稈22を脱粒して発生した被処理物を処理する。選別装置15は、穂切れ処理装置14の下方に配置され、穂切れ処理装置14で処理された被処理物を、再処理が不要な一番物と、再処理が必要な二番物と、不要物として機外に排出される三番物と、に選別する。還元コンベア52は、選別装置15で選別された二番物を穂切れ処理装置14に戻す。扱胴13は、扱胴13の外周面において外側に向けて突出する扱歯17を複数有する。扱歯17は、扱胴13の軸方向に平行な平面に沿って扁平に形成され、かつ当該軸方向に沿って複数並んでいる。また、前記軸方向で見たときに、扱歯17は、当該扱歯17の先端が扱胴13の回転方向下流側を向くように配置されている。穂切れ処理装置14は、扱胴13の軸線と平行な軸線を中心に回転する穂切れ処理胴40と、穂切れ処理胴40の下方に配置された受網41と、備える。そして、還元コンベア52は、穀稈22の搬送方向で、穂切れ処理胴40の中央よりも下流側に寄った位置に、二番物を戻す。
【0070】
即ち、扱胴13から穂切れ処理胴40へ投入される被処理物は、穀稈22の搬送方向上流側に偏っているので、選別装置15からの二番物は穂切れ処理胴40の下流側に還元することにより、穂切れ処理胴40に供給される被処理物の分布を当該穂切れ処理胴40の軸方向で均一化することができる。これにより、穂切れ処理装置14の処理能力を十分に発揮させることができる。
【0071】
また本実施形態の脱穀装置10は、以下のように構成されている。即ち、穂切れ処理装置14は、穂切れ処理胴40から外側に向けて突出する複数の処理歯42と、処理歯42同士の間を通過できるように受網41側に設けられた複数の切歯43と、を備える。そして、穀稈22の搬送方向で、穂切れ処理胴40の中央よりも上流側の部分と下流側の部分とでは、処理歯42の間隔を異ならせている。
【0072】
この構成で、穂切れ処理胴40が回転することにより、処理歯42と受網41による揉み解し作用によって、扱胴13からの被処理物及び選別装置15からの二番物を単粒化し、受網41を通して下方に落下させることができる。また本発明の構成によれば、穂切れ処理胴40の上流側には扱胴13からの被処理物が、下流側には選別装置15から二番物が、それぞれ供給されるのであり、穂切れ処理装置14は上流側と下流側で異なる内容構成のものを処理することになる。そこで、穂切れ処理装置14のスペックを上流側と下流側で異ならせることにより最適な処理が可能となり、消費動力の増加等の問題を起こすことなく単粒化能力を向上させることができる。
【0073】
また本実施形態の脱穀装置10は、以下のように構成されている。即ち、この脱穀装置10は、その上面の断面輪郭形状が略鋸波状に形成された板状のフィードパン35を、扱胴13及び穂切れ処理装置14と、選別装置15と、の間に備える。そして、扱胴13及び穂切れ処理装置14から落下してきた単粒及び被処理物を、フィードパン35によって搬送して選別装置15に供給する。
【0074】
このように、扱胴13と選別装置15との間にフィードパン35を設けることで、扁平状の扱歯17による風が選別風に影響しにくくなり、選別装置15の選別性能が向上する。
【0075】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0076】
本発明の脱穀装置は、据え置きの脱穀装置、ハーベスタ内蔵の脱穀装置、コンバイン内蔵の脱穀装置など、様々な脱穀装置に適用することができる。
【0077】
扱胴13は、装置前側の径が小さく、装置後方の径が大きくなるように径が連続的に変化する円錐台形に形成されても良い。この場合、扱胴13の装置前側においては、当該扱胴13と扱室カバー18との間にスペースを十分に確保できるので、穀稈の取り込み性を向上させることができる。
【0078】
上記実施形態では、穀稈22の搬送方向の上流側と下流側で、処理歯42の間隔を変更する構成としたが、これに代え、或いはこれに加えて、上流側と下流側で処理歯42の長さを変更するようにしても良い。
【符号の説明】
【0079】
10 脱穀装置
13 扱胴
14 穂切れ処理装置(処理装置)
15 選別装置
17 扱歯
40 穂切れ処理胴(処理胴)
41 受網
42 処理歯
43 切歯
45 受歯
52 還元コンベア(還元機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を搬送する穀稈搬送機構と、
前記穀稈搬送機構によって搬送される前記穀稈を脱粒する扱胴と、
前記扱胴で穀稈を脱粒して発生した被処理物を処理する処理装置と、
前記処理装置の下方に配置され、前記処理装置で処理された被処理物を、再処理が不要な一番物と、再処理が必要な二番物と、に選別する選別装置と、
前記選別装置で選別された二番物を前記処理装置に戻す還元機構と、
を備え、
前記扱胴は、当該扱胴の外周面において外側に向けて突出する扱歯を複数有し、
前記扱歯は、前記扱胴の軸方向に平行な平面に沿って扁平に形成され、かつ当該軸方向に沿って複数並んでおり、
前記軸方向で見たときに、前記扱歯は、当該扱歯の先端が前記扱胴の回転方向下流側を向くように配置されており、
前記処理装置は、前記扱胴の軸線と平行な軸線を中心に回転する処理胴と、前記処理胴の下方に配置された受網と、を備え、
前記還元機構は、前記穀稈の搬送方向で、前記処理胴の中央よりも下流側に寄った位置に、前記二番物を戻すことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱穀装置であって、
前記処理装置は、前記処理胴から外側に向けて突出する複数の処理歯と、前記処理歯同士の間を通過できるように前記受網側に設けられた複数の切歯と、を備え、
前記穀稈の搬送方向で、前記処理胴の中央よりも上流側の部分と下流側の部分とでは、前記処理歯の間隔、又は前記処理歯の長さ、の少なくとも何れか一方を異ならせていることを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脱穀装置であって、
その上面の断面輪郭形状が略鋸波状に形成された板状のフィードパンを、前記扱胴及び前記処理装置と、前記選別装置と、の間に備え、
前記扱胴及び前記処理装置から落下してきた単粒及び被処理物を、前記フィードパンによって搬送して前記選別装置に供給することを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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