説明

脱穀装置

【課題】揺動選別棚上での脱穀処理物の詰まりを防止して脱穀作業の能率を高める。
【解決手段】扱室(11)からの脱穀処理物を受け入れて揺動選別する揺動選別棚(15)の複数のシーブ(26)に、前後方向に沿う姿勢で、且つ左右方向に所定間隔を置いて配置した縦姿勢の清掃プレート(28)と、各シーブ(26)の上面に摺接して付着物を除去するスクレーパ(29)とからなる複数の清掃具(30)を備え、これら複数の清掃具(30)を一体的に左右方向へ往復移動可能な構成とし、スクレーパ(29)には、移動方向に対して所定角度に傾斜する傾斜刃縁(29a,29a)を清掃プレート(28)から左右方向に突設させて形成し、傾斜刃縁(29a,29a)を各シーブ(26)の上面に摺接させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀処理物を受け入れて揺動選別する揺動選別棚には、シーブに付着した藁屑を除去する清掃装置を設けた構成のものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例では、単なる平板状のプレートを横移動させることによってシーブ上の藁屑を除去すると云うものであり、スクレーパを欠如した構成のものであるため、充分な藁屑の除去作用が期待できないものである。
本発明による課題は、左右横方向に並列させた数個の清掃具を一体的に左右横方向に往復移動させてシーブ上の藁屑を除去するようにし、また、これに加えてスクレーパを付設することによって藁屑除去の確実化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱室(11)からの脱穀処理物を受け入れて揺動選別する揺動選別棚(15)の複数のシーブ(26)に、前後方向に沿う姿勢で、且つ左右方向に所定間隔を置いて配置した縦姿勢の清掃プレート(28)と、各シーブ(26)の上面に摺接して付着物を除去するスクレーパ(29)とからなる複数の清掃具(30)を備え、これら複数の清掃具(30)を一体的に左右方向へ往復移動可能な構成とし、前記スクレーパ(29)には、移動方向に対して所定角度に傾斜する傾斜刃縁(29a,29a)を清掃プレート(28)から左右方向に突設させて形成し、該傾斜刃縁(29a,29a)を各シーブ(26)の上面に摺接させる構成とした脱穀装置とした。
請求項2記載の発明は、前記清掃プレート(28)とスクレーパ(29)を合成樹脂材によって一体成形した請求項1記載の脱穀装置とした。
請求項3記載の発明は、前記清掃具(30)は、駆動モータ(34)の回転駆動により、互い違いに引き操作する一対の操作ケーブル(37a,37b)と、往復回動する天秤アーム(38)と、往復回動する揺動アーム(40)を備えた連動機構を介して左右方向に往復移動すべく連動した請求項1又は請求項2記載の脱穀装置とした。
請求項4記載の発明は、前記駆動モータ(34)の駆動によりクランク回転するクランクピン(36)と、該クランクピン(36)に連結する少なくとも一方側の操作ケーブル(37)との間にスプリング(42)を介在させた請求項3記載の脱穀装置とした。
請求項5記載の発明は、前記駆動モータ(34)を駆動するスイッチが、脱穀クラッチの入り操作によって自動的に入りとなるように連動した請求項3または請求項4記載の脱穀装置とした。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、複数の清掃具(30)が一体的に左右に往復移動するので、狭い移動範囲でもって藁屑の除去作用を効果的に行うことができる。また、スクレーパ(29)の作用によってシーブ(26)の上面に付着する藁屑などの付着物を的確に除去することができ、揺動選別棚(15)上での脱穀処理物の詰まりを防止して脱穀作業の能率を高めることができる。
また、スクレーパ(29)の左右方向への移動に伴い、このスクレーパ(29)の傾斜刃縁(29a)によって各シーブ(26)上の付着物をスムーズに削ぎ落すことができ、シーブ(26)上に付着する藁屑の除去がより確実に行える。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、清掃具(30)を合成樹脂材により一体成形することにより、軽量化が可能で安価に実施することができ、スクレーパ形状の選択自由度が向上する。
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果を奏するものでありながら、清掃具(30)を往復移動させる機構として駆動モータ(34)による回転運動を往復揺動運動に変換する機構を用いることで、螺旋軸のような回転運動による移動構成に比べて振幅の狭い揺動範囲内でもってより速いスピードで往復移動させることができ、付着物の除去作用が高まる。
請求項4記載の発明によれば、上記請求項3記載の発明の効果に加えて、操作ケーブル(37)にかかる操作加重をスプリング(42)によって吸収するので、操作ケーブル(37)に無理な加重がかからず、破損の恐れがなくなり、清掃具(30)の左右移動をスムーズに行うことができる。
請求項5記載の発明によれば、上記請求項3又は請求項4記載の発明の効果を奏するにあたり、脱穀クラッチの入り操作によって、駆動モータ(34)を駆動するスイッチを自動的に入りとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】脱穀部の側断面図
【図4】揺動選別棚の要部の一部破断せる側面図
【図5】同上要部の平面図
【図6】清掃具の平面図
【図7】図6の右側面図
【図8】図6の左側面図
【図9】同上背面図
【図10】清掃具の斜視図
【図11】清掃具の往復移動連動機構を示す平面図
【図12】同上要部の側面図
【図13】脱穀部の一部破断せる平面図
【図14】扱胴の平面図
【図15】扱胴の背面図
【図16】コンバインの平面図
【図17】同上正面図
【図18】脱穀部の要部の正面図
【図19】(A)及び(B)は揺動選別部の要部の側断面図
【図20】揺動選別部の要部の背面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2に示すコンバインは、次のような構成になっている。
すなわち、走行車体1には、左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀装置(脱穀部)3の前方部に刈取部4を設置し,刈取部4の横側部には運転席5や操作ボックス6等の運転操作部を備え、更に、その運転操作部6の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンク7を装備している。8はグレンタンク7内の穀粒を機外に排出する排出オーガを示す。
脱穀部3は、図3に示す通り、脱穀フィードチェン10により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室11内で駆動回転する扱胴12により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網13が張設され、扱胴12の上部を覆う扱胴カバー14は、扱室の一側を支点として揺動開閉する構成である。扱室下方の揺動選別装置(揺動選別棚)15は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚16、第1チャフシーブ17、第2チャフシ−ブ18、ストロ−ラック19の順に配置し、且つ、前記第2チャフシ−ブ18の下方にグレンシ−ブ19、1番戻し棚20、2番戻し棚21を配置して設けた構成としている。
また、揺動選別棚7の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕22と、1番螺旋23、2番螺旋24と、その上方に排塵ファン25を設けて排塵選別室を構成している。
前記第1チャフシーブ17は、前後方向に所定間隔を開けて上下方向に傾斜する固定状態の固定シーブ(シーブ)26からなり、第2チャフシーブは傾斜角変更自在な可動シーブ27からなる。
第1チャフシーブ17には、前後方向に沿って且つ左右方向所定間隔置きに配設した清掃プレート28と、各固定シーブ26の上面に接触して付着物を除去するスクレーパ29とからなる複数個の清掃具30,30,30…を備えている。これら清掃具30,30,30…は、前後の連結部材31,31によって一体的に連結保持され、チャフシーブ17に対して左右横方向(シーブ26の長手方向)に往復移動可能に支持されている。
清掃プレート28は、上下方向垂直状に立設してあり、そして、各プレート28には固定シーブ26の断面形状に合わせたガイド穴32を穿設し、各ガイド穴32に各固定シーブ26を挿通してスライド案内する構成としている。
スクレーパ29は、上下方向に傾斜する固定シーブ26の傾斜上面に接触して摺接移動により付着物を除去するものであり、また、このスクレーパには移動方向に対して所定角度に傾斜する傾斜刃縁29aを有し、清掃プレート28を挟んで左右対称に設け、平面視で略ハの字型の刃縁29a,29aを有した形状とすることで、左右の往復移動に対する付着物の除去が無理なく確実に行えるようにしている。
また、前記清掃プレート28とスクレーパ29は一体とし、合成樹脂材で一体成形することにより、軽量化並びにコストダウン化を図っている。
また、各清掃具30は、駆動モータ34の回転駆動により、互い違いに引き操作する一対の操作ケーブル37a,37b、往復回動する天秤アーム38、天秤アーム軸39、往復回動する揺動アーム40等の連動機構を介して左右横方向に往復移動すべく連動構成している。
駆動モータ34を駆動すると、クランクアーム35の回転により、クランクピン36に連結された一対の操作ケーブル37a,37b が互い違いに引き操作され、天秤アーム38の往復回動によって天秤アーム軸39を回動中心として揺動アーム40が左右に往復揺動するようになっている。そして、この揺動アーム40に長孔41を介して連結された清掃具30が左右横方向へ強制的に往復移動されるようになっている。
前記クランクピン36と操作ケーブル37aとの間には、スプリング42及びプレート43を介して連結保持させて、ケーブルに無理な加重が掛からないように構成している。
なお、前記駆動モータ34は、脱穀クラッチを入り操作すると、モータの駆動スイッチが自動的に入りとなるよう連動構成している。
図13に示すように、扱室11は、前側板11aと中側板11b,11cとの間に構成され、排塵処理胴45を有する排塵処理室46への連通口47部は中側板11bと11cとの間に形成されている。そして、扱胴12を前記連通口47より後方に延長して中側板11cと後側板11d との間にささり粒回収室48を構成している。そして、図14及び図15に示すように、ささり粒回収室48内における扱胴12の延長端部には、扱胴回転方向に対して所定角度に傾斜する傾斜扱歯49と扱胴回転方向に並行する並行扱歯50を扱胴円周方向所定間隔置きに且つ交互に配置して設けた構成としている。かかる構成によれば、傾斜扱歯により搬送穀稈を開いて穀稈中にささり込んだ穀粒を取り除き、並行扱歯により穀稈をしごいてささり粒を叩き落すことができ、ささり粒除去性能が向上する。
図16、図17に示すように、未刈地側の穀稈を外側方へ分草案内するナローガイド51を機体内外に出し入れ操作するナローガイド操作レバー52を、脱穀部3の扱胴カバー14の上面に配置した構成のものにおいて、この図例におけるナローガイド操作レバー52は、運転席5と扱室内の排塵量を調節する排塵量調節レバー53との間で、且つ、扱胴カバー14の前部側に配置している。これにより、運転席側及び機体左側方からの操作性が向上し、走行系操作レバー関係から離して設けることで操作の煩わしさがなくなる。また、ナローガイド操作レバー52は、図18に示すように、扱胴カバー14を開けた時、該レバー52のナローガイド張り出し操作位置(イ)と、ナローガイド収納操作位置(ロ)とでオーガ受け9上の排出オーガ8を挟むように操作位置を設定することによって排出オーガとの干渉を回避するようにしている。
図19(A)は揺動選別棚15が最前方位置に揺動した時であり、図19(B)は揺動選別棚15が最後方位置に揺動した時である。上下方向に傾斜する2番戻し棚21の傾斜下端からゴムのような弾性体からなる2番シール55を2番螺旋底54に向けて垂下させて設け、2番シール55の押さえプレート56位置が、揺動棚15(2番戻し棚21)の最後方位置時(図19(B))に2番螺旋底54の後方上り傾斜面54a 終端位置よりも前側に位置するよう配置構成している。2番シールは、棚前方位置のときは浮き上がり、棚後方位置のときは折れて浮き上がり、そこから籾が漏れることがあるが、上記配置構成によりシールの捲れをなくし籾漏れを防ぐことができる。2番シールの押さえプレート56位置が、揺動棚最前方位置時(図19(A))に2番螺旋24の外周後端位置よりも後側にくるよう配置構成することで、螺旋や2番物によるシールの捲れ上がりを防止することができる。また、くの字型に曲げた抑えプレート56による2番シール55の押さえ角度θを2番螺旋底54の後方上り傾斜面54a に対して45°以上とすることで、シールの押し付けを良くし、籾漏れを防ぐことができる。更に、2番シール55を揺動棚最前方位置時(図19(A))に2番螺旋底54の後方上り傾斜面54aに押し当てられるような長さに構成することによっても同様の効果を奏する。
また、前記2番シール55は、図20に示すように、揺動選別棚15の左右横幅よりも選別室の左右側板57,57まで幅広く延出することで、隙間からの籾漏れを防ぐように構成している。
2番シール55には、この下端側両隅部をカットして斜めのカット面58を形成することで、螺旋や2番物によるシールの捲れ上りを防ぐようにしている。シールの両端側に切れ目や切欠き溝59,59を設けることによってもシールの捲れ上りを防ぐことができる。
なお、かかる実施例における2番シールは、揺動棚が前後のいかなる揺動位置にあって2番螺旋に当たらないような長さとし、また、シールの下端が2番螺旋軸中心よりも下側に位置する長さに構成している。
【符号の説明】
【0009】
15 揺動選別棚
17 チャフシーブ
26 固定シーブ(シーブ)
28 清掃プレート
29 スクレーパ
29a 傾斜刃縁
30 清掃具
34 駆動モータ
35 クランクアーム
36 クランクピン
37 操作ケーブル
38 天秤アーム
39 天秤アーム軸
40 揺動アーム
42 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(11)からの脱穀処理物を受け入れて揺動選別する揺動選別棚(15)の複数のシーブ(26)に、前後方向に沿う姿勢で、且つ左右方向に所定間隔を置いて配置した縦姿勢の清掃プレート(28)と、各シーブ(26)の上面に摺接して付着物を除去するスクレーパ(29)とからなる複数の清掃具(30)を備え、これら複数の清掃具(30)を一体的に左右方向へ往復移動可能な構成とし、前記スクレーパ(29)には、移動方向に対して所定角度に傾斜する傾斜刃縁(29a,29a)を清掃プレート(28)から左右方向に突設させて形成し、該傾斜刃縁(29a,29a)を各シーブ(26)の上面に摺接させる構成とした脱穀装置。
【請求項2】
前記清掃プレート(28)とスクレーパ(29)を合成樹脂材によって一体成形した請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記清掃具(30)は、駆動モータ(34)の回転駆動により、互い違いに引き操作する一対の操作ケーブル(37a,37b)と、往復回動する天秤アーム(38)と、往復回動する揺動アーム(40)を備えた連動機構を介して左右方向に往復移動すべく連動した請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記駆動モータ(34)の駆動によりクランク回転するクランクピン(36)と、該クランクピン(36)に連結する少なくとも一方側の操作ケーブル(37)との間にスプリング(42)を介在させた請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記駆動モータ(34)を駆動するスイッチが、脱穀クラッチの入り操作によって自動的に入りとなるように連動した請求項3または請求項4記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−175986(P2012−175986A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139206(P2012−139206)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【分割の表示】特願2009−295144(P2009−295144)の分割
【原出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】