説明

脱穀装置

【課題】処理物の漏下を促進させつつ、扱ぎ残しを低減することができる脱穀装置を提供する。
【解決手段】外周面に扱歯41a・41a・・・が植設された扱胴41を前後方向に横架し、該扱胴41の下方周囲に受網10を配置した脱穀装置100において、前記受網10の後部10bの抜孔12・12・・・は、前部10aの抜孔11・11・・・よりも開口面積が大きく構成され、前記受網10の前部10aの抜孔11・11・・・を正方形状に形成して、前記受網10の後部10bの抜孔12・12・・・を前後方向を長手方向とする長方形状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に関し、詳細には、脱穀装置における受網の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脱穀装置においては、外周面に多数の扱歯が植設された扱胴と該扱胴の下方周囲に沿って配置された受網を備え、刈り取った穀稈の穂先側を扱胴と受網との間に挿入して、扱胴の軸心方向に移送させながら扱歯により脱穀して、脱粒された籾及び枝梗付着粒や塵等の処理物を受網の抜孔を通して漏下させるように構成される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された脱穀装置によると、受網の前部及び後部の抜孔の大きさを、前記受網の前後中央部分の抜孔の大きさよりも大きく形成して、処理物が受網の前部及び後部で漏下を促進させる構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3846886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す脱穀装置においては、受網の前部では、処理物の漏下を促進させて、抜孔の目詰まりを抑制することができるが、前後中央部で処理物が滞留して、受網の後部で漏下できずに後方から落下する処理物が増加することがあった。
【0006】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、処理物の漏下を従来よりも促進させて、脱穀効率を向上できる脱穀装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、外周面に扱歯が植設された扱胴を前後方向に横架し、該扱胴の下方周囲に受網を配置した脱穀装置において、前記受網の後部の抜孔は、前部の抜孔よりも開口面積が大きく構成され、前記前部の抜孔を正方形状に形成して、前記後部の抜孔を前後方向を長手方向とする長方形状に形成したものである。
【0009】
請求項2においては、前記受網の後部の抜孔を千鳥状に配置したものである。
【0010】
請求項3においては、前記受網は、フィードチェンにより搬送される穀稈の穂先側に配置される穂先側網と、前記穀稈の株元側に配置される株元側網と、に二分割して構成され、前記穂先側網及び前記株元側網の上面には、前後方向と略直交する仕切板が複数平行に設けられ、前記穂先側網上に設けられる仕切板の数は、前記株元側網上に設けられる仕切板の数よりも多く配置したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、受網の後部の抜孔は、前部の抜孔よりも開口面積が大きく構成されるので、受網の前部で脱粒された籾を漏下させ、受網の後部で脱粒された籾及び枝梗付着粒や塵等の処理物の漏下を促進して、目詰まり及び脱穀ロスを低減することができ、脱穀効率を向上できる。また、受網の後部の抜孔は、前後方向を長手方向とする長方形状に形成されるので、穀稈の搬送される方向と略同じ方向なり、穂先がその抜孔に入り難く、藁グズの増加を抑えることができる。
【0013】
請求項2においては、請求項1の効果に加えて、漏下面積を大きくしながら受網の強度を高めることができる。
【0014】
請求項3においては、請求項1、請求項2の効果に加えて、穀稈搬送時に籾が多く付いている穂先が通過する穂先側網上には、仕切板を多く配置して、脱穀処理を促進させて扱ぎ残しを低減し、籾が少ない株元側網上には、仕切板を少なく配置して、穀稈の通過抵抗を小さくして、無駄なエネルギーの消費を抑えるとともに、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】脱穀部及び選別部の構成を示す側面断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る受網の構成を示す斜視図。
【図4】本発明の一実施形態に係る受網の構成を示す左側面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る受網の構成を示す後面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る受網の構成を示す平面図。
【図7】(a)前部の抜孔の構成を示す図。(b)後部の抜孔の構成を示す図。
【図8】受網及び再処理装置の位置関係を示す平面図。
【図9】本発明の一実施形態に係る受網の株元側網の構成を示す平面図。
【図10】本発明の一実施形態に係る受網の穂先側網の構成を示す平面図。
【図11】(a)左右方向を長手方向とする抜孔の構成を示す図。(b)他の抜孔と前後左右に平行に配置される抜孔の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、コンバイン1においては、走行部2が機体の下部に設けられ、刈取部3が機体の前部に昇降可能に設けられる。また、脱穀部4が機体の左上側に配置され、選別部5が機体の左下側で脱穀部4の下方に配置される。さらに、穀粒貯溜部6が機体の右後側に配置され、排藁処理部7が機体の後側で脱穀部4及び選別部5の後方に配置される。そして、操縦部8が機体の右前側に配置される。
【0018】
そして、コンバイン1は、操縦部8における各種操作に応じて、動力をエンジン9から各部に適宜に伝達し、機体を走行部2により走行させながら、圃場の穀稈を刈取部3により刈り取って、刈取後の穀稈を脱穀部4により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5により選別して、選別後の穀粒を機体外部へ排出可能に穀粒貯溜部6に貯溜する一方、脱穀後の排藁を排藁処理部7により処理して機体外部へ排出することができるように構成される。
【0019】
次に、脱穀部4及び選別部5で構成される脱穀装置100の構成について、図2を用いて説明する。
【0020】
脱穀部4は、扱胴41、フィードチェン43等を備える。選別部5は、揺動選別装置51、唐箕ファン52、吸引ファン53、一番搬送装置54、二番搬送装置55、一番揚穀装置56、二番還元装置57等を備える。
【0021】
扱胴41は、前端部を面取りした円筒状に形成され、軸心方向を前後方向として扱室42に配置される。扱胴41の外周面には、扱歯41a・41a・・・が植設される。扱胴41は、扱室42でその前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に取り付けられ、この回転支軸にエンジン9からの動力が伝達されることで当該回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りで回転駆動される。扱胴41の下方周囲には、後述する受網10が配置される。
【0022】
フィードチェン43は、扱胴41の左側方で刈取部3と排藁処理部7との間にわたって配置される。フィードチェン43の上方には、藁押板が対向して配置され、該藁押板は、フィードチェン43側に弾性付勢される。刈取り後の穀稈の株元は、これらフィードチェン43及び藁押板で挟持搬送されて、徐々に上方へ引き上げながら後方へ向けて搬送される。
【0023】
揺動選別装置51は、揺動選別装置本体60、フィードパン61、チャフシーブ62、グレンシーブ63及びストローラック64を有する。揺動選別装置51は、脱穀部4の受網10の下方に配置される。
【0024】
揺動選別装置本体60は、その長手方向を前後方向として脱穀部4の扱胴41および受網10の下方に配置され、機体フレーム58に揺動可能かつ着脱可能に支持される。この揺動選別装置本体60は、揺動機構の揺動軸にエンジン9からの動力が伝達されることによって、機体フレーム58に対して揺動される。
【0025】
フィードパン61は、前フィードパン65および後フィードパン66により構成される。前フィードパン65は、揺動選別装置本体60内の前部で脱穀部4の扱胴41および受網10の下方に配置される。後フィードパン66は、揺動選別装置本体60内の前部で前フィードパン65の後下方に当該前フィードパン65と所定間隔をとって配置される。
【0026】
チャフシーブ62は、揺動選別装置本体60内の前後中途部に設けられ、脱穀部4の扱胴41および受網10の前後中途部下方であって、前フィードパン65の後方に配置される。グレンシーブ63は、揺動選別装置本体60内の前後中途部に設けられ、チャフシーブ62の下方に配置される。ストローラック64は、揺動選別装置本体60内の後部に設けられ、チャフシーブ62の後上方に配置される。
【0027】
唐箕ファン52は、機体フレーム58の前部に左右方向に横設され、前フィードパン65の下方に配置される。吸引ファン53は機体フレーム58の後上方で左右方向に横設され、ストローラック64の上方に配置される。そして、唐箕ファン52及び吸引ファン53は、その回転軸にエンジン9からの動力が伝達されることで回転し、選別風を発生させるように構成される。
【0028】
一番搬送装置54は、機体フレーム58の前後中途部に左右方向に横設され、唐箕ファン52の後方に配置される。二番搬送装置55は、機体フレーム58の後部に左右方向に横設され、一番搬送装置54の後方に配置される。一番揚穀装置56及び二番還元装置57は、機体の右側方に配置される。そして、一番搬送装置54、二番搬送装置55、一番揚穀装置56及び二番還元装置57は、その回転軸にエンジン9からの動力が伝達されることで回転し、穀粒等を搬送させるように構成される。
【0029】
また、一番揚穀装置56と二番還元装置57との間であって、二番還元装置57の搬送終端側には、再処理装置59が該二番還元装置57と平行に設けられる。そして、再処理装置59は、再処理胴59aを備え、該再処理胴59aにエンジン9からの動力が伝達されることで回転し、二番還元装置57から搬送された処理物を再処理(再脱穀)させるように構成される。
【0030】
このような構成において、脱穀及び選別作業が行われる際、脱穀部4では、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈が、その株元でフィードチェン43により受け継がれ、排藁処理部7に向かって後方へ搬送される。この搬送中に、穀稈の穂先部が扱胴41により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が受網10より漏下し、選別部5へ落下する。
【0031】
選別部5では、揺動選別装置本体60が揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網10から落下した処理物の層が前後フィードパン65・66により均平化されて、処理物が比重選別される。前フィードパン65による選別後の処理物が、チャフシーブ62により粗選別される。後フィードパン66による選別後の処理物が、グレンシーブ63により選別される。また、脱穀部4の受網10から落下した処理物が、チャフシーブ62により粗選別される。チャフシーブ62による選別後の処理物が、グレンシーブ63と唐箕ファン52からの選別風により精選別される。
【0032】
そして、チャフシーブ62及びグレンシーブ63から落下する穀粒や藁屑等が、唐箕ファン52からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置54に収容される。これよりも比重が小さく軽い処理物は、唐箕ファン52からの選別風により、二番搬送装置55の上方へ向けて飛ばされる。
【0033】
この飛ばされた処理物の中でも比較的重い処理物、例えば枝梗付穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置55に収容される。これを除いた処理物は、唐箕ファン52からの選別風によりストローラック64へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑は、ストローラック64によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置55に収容される。他の塵埃等は、吸引ファン53により吸引されて排出される。藁屑等は、三番口から外部に排出される。
【0034】
一番物は、一番搬送装置54により一番揚穀装置56に搬送され、つづいて一番揚穀装置56により穀粒貯溜部6のグレンタンクに搬送されて、グレンタンクに貯溜される。二番物は、二番搬送装置55により二番還元装置57に搬送され、つづいて二番還元装置57から再処理装置59に搬送されて、再処理装置59で再処理された後に、扱室42の右側面に穿設された二番物放出口42aを介して、脱穀部4の扱室42又は揺動選別装置51の上方空間へ搬送され、脱穀されて、又は脱穀されずに、揺動選別装置51及び唐箕ファン52により再選別される。
【0035】
次に、本発明の一実施形態に係る受網10の構成について、図3から図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、矢印Fを前方向、矢印Bを後方向、矢印Lを左方向、矢印Rを右方向、矢印Uを上方向、矢印Dを下方向として規定する。また、左方は株元側、右方は穂先側となる。
【0036】
図3から図6に示すように、受網10は、前記扱胴41の前後長さより短い前後長さ(図2参照)で、前面視において、略半円弧状に形成されて、その半径は前記扱胴41(扱歯41a先端)の半径よりも大きく形成される。受網10の前部10aには、複数の抜孔11・11・・・が穿設される。受網10の後部10bには、複数の抜孔12・12・・・が穿設される。抜孔11・11・・・と、抜孔12・12・・・との境には、後述する仕切板23B・33Aが設けられる。
【0037】
図7(a)に示すように、前部10aの抜孔11は、略正方形状に形成されて、隣接する前後左右の抜孔11・11・・・が平行となる格子状に配置される。図7(b)に示すように後部10bの抜孔12は、前後方向を長手方向とする略長方形状に形成されて、隣接する左右の抜孔12・12・・・が前後方向にずらせた千鳥状に配置される。但し、抜孔11・11・・・を千鳥状に配置することも可能であり、抜孔12・12・・・を格子状に配置することも可能である。
【0038】
本実施形態においては、抜孔11の左右幅をα1、前後長さをβ1、隣接する他の抜孔11との間隔をγ1として、抜孔12の左右幅をα2、前後長さをβ2、隣接する他の抜孔12との間隔をγ2とすると、α1=β1、α2=α1、β2=(2×β1+γ2)、γ2=γ1、の関係を有する。つまり、抜孔12の左右幅α2が、抜孔11の左右幅α1と等しく、抜孔12の前後長さβ2が、抜孔11の前後長さβ1よりも大きくて、抜孔12の開口面積(漏下面積)は、抜孔11の開口面積よりも大きく構成される。
【0039】
このように、前部10aの抜孔11・11・・・の開口面積を、後部10bの抜孔12・12・・・の開口面積よりも小さく構成し、受網10の前部10aにおける処理物の滞留時間を長くして、籾の漏下を促進している。他方、後部10bの抜孔12・12・・・の開口面積を、前部10aの抜孔11・11・・・の開口面積よりも大きく構成し、受網10の後部10bにおける処理物の漏下を促進して、目詰まりやササリ粒を機外へ排出する脱穀ロスを低減している。
【0040】
また、前記後部10bの抜孔12・12・・・と、図11(a)に示すように、同程度の開口面積で、左右方向を長手方向とする長方形状に形成した抜孔112・112・・・とを比較すると、後者は、搬送経路13で搬送中の穀稈14の長手方向と抜孔112・112・・・の長手方向とが平行となり、抜孔112・112・・・内に穂先14aが挿入され易くなり、穂切れが発生し易く、藁グズも増加してしまう。
【0041】
さらに、前記後部10bの抜孔12・12・・・が、千鳥状に配置されるので、図11(b)に示すように、各抜孔212が格子状に配置される場合と比較すると、長方形状の各抜孔12が、その長手方向の中途部で他の抜孔12を形成する非穿設部12a・12aに支持される構成とされるため、開口面積を大きくしながら受網10の強度を高めることができる。このように、受網10の強度を高めることができるので、抜孔12・12・・・の抜き孔加工が容易となる。
【0042】
くわえて、前部10aの抜孔11・11・・・と、後部の抜孔12・12・・・とが、前後方向に対して平行な略正方形状及び略長方形状に形成されるので、抜孔11・12の抜き孔加工が容易となり、さらに、同じ左右幅α1・α2を有して、前後方向に一直線状に配置されるので、抜孔11・12の抜き孔加工がより容易となる。
【0043】
なお、図6に示すように、前部10aの抜孔11・11・・・の下方には、前フィードパン65の前部から前後中途部が位置して、後部10bの抜孔12・12・・・の下方には、前フィードパン65の後部からチャフシーブ62の前部が位置する。つまり、従来のように受網10の前部10aで漏下を促進させる場合と比較すると、前部10aで適宜な量が漏下するので、前フィードパン65の前部に処理物が偏ることがなく、処理物を前後方向に分散させ易くなる。
【0044】
そして、前フィードパン65の上面には、リード板67A・67Bが傾斜状に順次配置され(図2参照)、該リード板67A・67Bは、前フィードパン65に対して垂直な平板状の傾斜面を有しており、この傾斜面により前フィードパン65上の処理物を左右方向に略均等に案内して分散させ易くしている。さらに、リード板67A・67Bの後部には、下方に延出する延出板68A・68Bが固設され、該延出板68A・68Bによりチャフシーブ62上の処理物を左右方向に略均等に案内して分散させ易くしている。また、リード板67A・67Bの後方であって、チャフシーブ62を支持する支持フレームには、リード板67Cが傾斜状に配置され、同様に、チャフシーブ62上の処理物を左右方向に略均等に案内して分散させ易くしている。
【0045】
また、図8に示すように、扱室42は、二番物放出口42a(図4参照)と、該二番物放出口42aを外側から覆う二番物案内ケース70と、を介して、再処理装置59と連通され、再処理胴59aで再処理(再脱穀)された二番物が、後部10bの抜孔12・12・・・の下方であって、前フィードパン65の後部及びチャフシーブ62の前部の上方に搬送される。
【0046】
図9及び図10に示すように、受網10は、フィードチェン43により搬送される穀稈の穂先側(右側)に配置される穂先側網20と、前記穀稈の株元側(左側)に配置される株元側網30と、に二分割可能に構成される。
【0047】
図9に示すように、穂先側網20は、穂先側枠体21と、該穂先側枠体21の上部に固設される穂先側平板22と、で主に構成される。穂先側枠体21は、前後方向と直交する前面視略円弧状に湾曲された前板21aと、該前板21aと同形状であり、前板21aの後方に平行に設けられる後板21bと(図3参照)、前板21a及び後板21bと直交してこれらの左右中途部同士を連結する中板21cと、前板21a及び後板21bの右端同士を連結する右板21dと(図6参照)、で構成される。穂先側平板22は、金属製の平板形状であり、全体が前記穂先側枠体21に沿うよう湾曲されて、その左端及び右端が湾曲方向と反対側に屈曲されて穂先側枠体21に固設される。
【0048】
穂先側網20の左端には、二つの穿設孔20a・20aが前後方向に適宜な間隔を開けて穿設され、該穿設孔20a・20aが後述する株元側網30の右端に突設された二つのピン30a・30aと嵌合される。穂先側網20の右端には、二つの突起20b・20bが前後方向に適宜な間隔を開けて突設され、穂先側網20の右端が機体側に設けられたステーと当接して、前記突起20b・20bが前記ステーに穿設された穿設孔と嵌合するように構成される。
【0049】
穂先側網20の右端のやや左側には、前後一対の長孔20c・20cが四つ前後方向に所定の間隔を開けて並設され、各長孔20c・20cに不図示の切刃がそれぞれ挿入されて、塊となった藁グズを切断するように構成される。
【0050】
穂先側網20の上面には、前後方向と略直交する仕切板が複数平行に設けられ、本実施形態においては、同形状の四つの仕切板23A・23B・23C・23Dが、前後方向に適宜な間隔を空けて平行に順次設けられる。このうち、前から二番目に設けられた仕切板23Cは、穂先側網20の前後中途部よりやや前側に設けられ、該仕切版23Cを境として、その前側に前記抜孔11・11・・・が配置され、その後側に前記抜孔12・12・・・が配置される。
【0051】
仕切板23A・23B・23C・23Dは、それぞれ所定の高さを有し(図2及び図5参照)、扱歯41a・41a・・・と平行に扱歯41a・41a間に位置するように設けられて、搬送中の穀稈に抵抗を与えて左右方向に整列させるようにして、同時に扱歯41aで梳くことで脱穀処理を促進させて、扱ぎ残しを低減している。穀稈搬送時に籾が多く付いている穂先が通過する穂先側網20上には、仕切板を多く配置して、脱穀処理を促進させて扱ぎ残しを低減している。
【0052】
図10に示すように、株元側網30は、株元側枠体31と、該株元側枠体31の上部に固設される株元側平板32と、で主に構成される。株元側枠体31は、前後方向と直交する前面視略円弧状に湾曲された前板31aと、該前板31aと同形状であり、前板31aの後方に平行に設けられる後板31bと(図3参照)、前板31a及び後板31bと直交してこれらの左右中途部同士を連結する中板31cと、前板31a及び後板31bの左端同士を連結する左板と、で構成される。株元側平板32は、金属製の平板形状であり、全体が前記株元側枠体31に沿うよう湾曲されて、その左端及び右端が湾曲方向と反対側に屈曲されて株元側枠体31に固設される。
【0053】
株元側網30の右端には、二つのピン30a・30aが前後方向に適宜な間隔を開けて突設され、該ピン30a・30aが前記穂先側網20の左端に穿設された二つの穿設孔20a・20aと嵌合されて、穂先側網20と、株元側網30と、が連結される。株元側網30の左端には、前後方向に適宜な間隔を空けて二つのブラケット34・34(図3参照)が固設され、各ブラケット34の下面には、不図示の挟持体が当接されてボルトナットで締結される。前記挟持体により、機体側から延出された支持パイプが挟持されて、株元側網30の左端が機体に支持される。
【0054】
なお、前記穂先側網20及び前記株元側網30は、機体側方から容易に着脱できるによう構成される。つまり、機体側方に対して開閉可能に構成されたフィードチェン43を開放して、前記支持パイプから前記挟持体を取り外すことで、前記穂先側網20及び前記株元側網30を機体側に設けられたレールに沿って円弧状に引き出したり挿入したりして着脱可能としている。
【0055】
株元側網30の上面には、前後方向と略直交する仕切板が複数平行に設けられ、本実施形態においては、同形状の二つの仕切板33A・33Bが、前後方向に適宜な間隔を空けて平行に設けられる。このうち、前から一番目に設けられた仕切板33Aは、株元側網30の前後中途部よりやや前側に設けられ、該仕切版33Aを境として、その前側に前記抜孔11・11・・・が配置され、その後側に前記抜孔12・12・・・が配置される。仕切板33Aの右側に、前記仕切板23Bが配置され、仕切板33Bの右側に、前記仕切板23Dが配置される(図3参照)。
【0056】
仕切板33A・33Bは、それぞれ所定の高さを有し(図2及び図5参照)、扱歯41a・41a・・・と平行に扱歯41a・41a間に位置するように設けられて、搬送中の穀稈に抵抗を与えて左右方向に整列させるようにして、同時に扱歯で梳くことで脱穀処理を促進させて、扱ぎ残しを低減している。籾が少ない株元側網30上には、仕切板を少なく配置して、穀稈の通過抵抗を小さくして、無駄なエネルギーの消費を抑えるとともに、部品点数を削減している。
【0057】
なお、仕切板23A・23B・23C・23Dは穂先側網20の上面に固定し、仕切板33A・33Bは、株元側網30の上面に固定することで、穂先側網20及び株元側網30の強度を高めるようにしている。
【0058】
以上のように、本発明の一実施形態に係る脱穀装置100においては、外周面に扱歯41a・41a・・・が植設された扱胴41を前後方向に横架し、該扱胴41の下方周囲に受網10を配置した脱穀装置100において、前記受網10の後部10bの抜孔12・12・・・は、前部10aの抜孔11・11・・・よりも開口面積が大きく構成され、前記受網10の前部10aの抜孔11・11・・・を正方形状に形成して、前記受網10の後部10bの抜孔12・12・・・を前後方向を長手方向とする長方形状に形成したものである。これにより、受網10の後部10bの抜孔12・12・・・は、前部10aの抜孔11・11・・・よりも開口面積が大きく構成されるので、受網10の前部10aで脱粒された籾を漏下させ、受網10の後部10bで脱粒された籾及び枝梗付着粒や塵等の処理物の漏下を促進して、目詰まり及び脱穀ロスを低減することができ、脱穀効率を向上できる。また、受網10の後部10bの抜孔12・12・・・は、前後方向を長手方向とする長方形状に形成されるので、穀稈の搬送される方向と略同じ方向なり、穂先14aがその抜孔12・12・・・に入り難く、藁グズの増加を抑えることができる。
【0059】
また、前記受網10の後部10bの抜孔12・12・・・を千鳥状に配置したものである。これにより、漏下面積を大きくしながら受網10の強度を高めることができる。
【0060】
また、前記受網10は、フィードチェン43により搬送される穀稈の穂先側に配置される穂先側網20と、前記穀稈の株元側に配置される株元側網30と、に二分割して構成され、前記穂先側網20及び前記株元側網30の上面には、前後方向と略直交する方向に仕切板23A・23B・23C・23D・33A・33Bが複数平行に設けられ、前記穂先側網20上に設けられる仕切板23A・23B・23C・23Dの数は、前記株元側網30上に設けられる仕切板33A・33Bの数よりも多く配置したものである。これにより、穀稈搬送時に籾が多く付いている穂先が通過する穂先側網20上には、仕切板を多く配置して、脱穀処理を促進させて扱ぎ残しを低減し、籾が少ない株元側網30上には、仕切板を少なく配置して、穀稈の通過抵抗を小さくして、無駄なエネルギーの消費を抑えるとともに、部品点数を削減することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 コンバイン
4 脱穀部
5 選別部
10 受網
10a 前部
10b 後部
11 抜孔
12 抜孔
20 穂先側網
30 株元側網
23A・23B・23C・23D 仕切板
33A・33B 仕切板
41 扱胴
41a 扱歯
100 脱穀装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に扱歯が植設された扱胴を前後方向に横架し、該扱胴の下方周囲に受網を配置した脱穀装置において、
前記受網の後部の抜孔は、前部の抜孔よりも開口面積が大きく構成され、
前記前部の抜孔を正方形状に形成して、前記後部の抜孔を前後方向を長手方向とする長方形状に形成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記受網の後部の抜孔を千鳥状に配置したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記受網は、
フィードチェンにより搬送される穀稈の穂先側に配置される穂先側網と、
前記穀稈の株元側に配置される株元側網と、に二分割して構成され、
前記穂先側網及び前記株元側網の上面には、前後方向と略直交する仕切板が複数平行に設けられ、
前記穂先側網上に設けられる仕切板の数は、前記株元側網上に設けられる仕切板の数よりも多く配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate