説明

腕時計

【課題】半導体集積回路で構成されるマイクロコンピュータを腕時計に内蔵する場合であっても、機能を低下させることなく、実装面積を低減でき、小型化を容易とする。
【解決手段】腕時計は、処理回路を構成する各種電子部品および配線用パターンが実装された回路基板50と、各部に電源を供給する二次電池38と、を備え、電子部品は、処理回路の一部を構成するマイクロコンピュータ56を構成するベアチップを含み、ベアチップと二次電池38とを、回路基板50の同一面側に対向配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計に係り、特に半導体集積回路として構成されているマイクロコンピュータを内蔵し、電池駆動される腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケース内部にアンテナを内蔵する腕時計が販売されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、近年では、無線機能付の腕時計として太陽電池内蔵の電波修正時計、いわゆる、ソーラー電波修正時計が販売されている。
このソーラー電波修正時計の構成部品、とりわけ、回路部品は一般的なアナログ電子時計と比較して多くの素子を使用するため、実装面積や配線面積が多く必要となり、男性用の大型のものが主流であった。
【特許文献1】特開2001−33571(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ソーラー電波修正時計の普及および需要の増加に伴い、女性用のソーラー電波修正時計のニーズが高まっている。この場合において、電波修正時計は情報処理量が多いため、半導体集積回路で構成されるマイクロコンピュータを内蔵している。
一方、女性用の小型ソーラー電波修正時計は、男性用のものと比較して小型化が必要であり、構成部品を収納する容積も小さいため、機能を削減することなく小型化を図るのは困難であるという問題点があった。
そこで、本発明の目的は、半導体集積回路で構成されるマイクロコンピュータを腕時計に内蔵する場合であっても、機能を低下させることなく、実装面積を低減でき、小型化を容易とすることができる腕時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、処理回路を構成する各種電子部品および配線用パターンが実装された回路基板と、各部に電源を供給する電池と、を備え、前記電子部品は、前記処理回路の一部を構成するベアチップを含み、前記ベアチップと前記電池とを、前記回路基板の同一面側に対向配置することを特徴としている。
上記構成によれば、ベアチップと電池とを対向配置させているため、実装面積を低減でき、腕時計の小型化を容易に図ることができる。
【0005】
この場合において、前記ベアチップは、実装前にウェーハの非能動面側を研磨することにより厚みを低減させるようにしてもよい。
また、前記腕時計は、ムーブメントを有するアナログ時計として構成されており、前記回路基板は、前記ムーブメントを構成する輪列が配置された輪列配置領域および被駆動部を駆動するためのモータのコイルが配置されるコイル配置領域を除き、前記ムーブメントの一方の面を覆うように配置されているようにしてもよい。
【0006】
さらに、太陽電池を備え、前記電池は、前記太陽電池により発電された電力を蓄える二次電池として構成されているようにしてもよい。
さらにまた、所定の電波を受信するためのアンテナを備え、前記処理回路は、受信した前記電波に基づいて各種処理を行うようにしてもよい。
また、前記電波は、時刻標準電波であり、前記処理回路は、受信した前記時刻標準電波に基づいて時刻修正を行うための時刻修正回路を含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体集積回路で構成されるマイクロコンピュータを腕時計に内蔵する場合であっても、実装面積を低減でき、腕時計の小型化(薄型化を含む)を容易に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る無線機能付腕時計としてのソーラー充電式電波時計(以下、腕時計という)の外観構成を示す図である。
また、図2は図1の腕時計の断面構造の概要を示す図である。
腕時計1は、大別すると、時計ケース2と、この時計ケース2に連結された一対のバンド(帯状体)3とを備えている。
時計ケース2は、ステンレス、チタン等の金属材またはプラスチック等の樹脂材で形成され、その内部に、図2に示すように、貫通孔2Aを有している。
【0009】
時計ケース2の貫通孔2Aには、時計表側から順に、文字板10、ソーラーパネル20、ムーブメント30が積層配置されており、文字板10上には、ムーブメント30の秒車31、2番車32、筒車33に各々連結された秒針5、分針6及び時針7からなる3つの表示指針が配置され、この貫通孔2Aの時計表側がカバーガラス40で封止され、裏側が裏蓋41で封止されている。このカバーガラス40と時計ケース2との間、及び、裏蓋41と時計ケース2との間には各々パッキン42、43が配置されて時計ケース2内の密封性が確保されている。また、時計ケース2の外側には、竜頭8と操作ボタン9とが設けられている。
この腕時計1の文字板10は、光透過性を有する材料で形成されており、カバーガラス40及び文字板10を通過した太陽光等の光がソーラーパネル20に照射される。この光を受けてソーラーパネル20が発電し、発電電力がムーブメント30に取り付けられた二次電池38(図3参照)に充電される。そして、この二次電池38の電力によりムーブメント30が駆動して現在時刻を表示する。
【0010】
図3は、ムーブメントを裏蓋側から見た平面図である。
図4は、ムーブメントから回路基板及び回路押さえ板を外した状態を示す平面図である。
ムーブメント30は、基材となる略円板形状の地板81を備えている。この地板81には、複数の表示指針5〜7を回転駆動するための、秒車31、2番車32および筒車33を含む輪列機構35と、2つのモータ36A、36Bと、時刻標準電波としての長波標準電波(例えば、日本JJY:40kHz/60kHz、アメリカWWVB:60kHz、ドイツDCF77:77.5kHz)を受信するアンテナユニット37と、電源として機能する二次電池38などが配置されている。なお、図3及び図4において、腕時計1は、ムーブメント30の3時位置から延びてその先端に竜頭8が連結される巻き真8Aを備えている。
【0011】
図4に示すように、地板81の中央領域には、輪列機構35が配置され、この輪列機構35を取り囲む外側の環状の領域には、2つのモータ36A、36B、アンテナユニット37及び二次電池38等が配置される。
ここで、輪列機構35を取り囲む外側の環状の領域は、図3および図4に示すように、一方のモータ36Aが配置された第一領域(略0時−3時領域)AR1と、他方のモータ36Bが配置された第二領域(略3時−6時領域)AR2と、アンテナユニット37が配置された第三領域(略6時−9時領域)AR3と、二次電池38が配置された第四領域(略9時−12時(0時)領域)AR4との4つに区分することができる。
このように腕時計1においては、地板81の限られた平面スペースに比較的大型の4部品(二個のモータ36A、36B、アンテナユニット37、二次電池38)を上下に重ねることなくバランスよく配置している。
【0012】
輪列機構35の各歯車の軸は、一端が地板81に支持されるとともに、他端が地板81の裏蓋41側に設けられた輪列受け45に支持されている。この輪列機構35は、大別すると、時針7及び分針6用の輪列機構と、秒針5用の輪列機構とに分けられ、時針7及び分針6用の輪列機構がモータ36Aによって駆動されるとともに、秒針5用の輪列機構がモータ36Bによって駆動される。すなわち、モータ36Aが時針7及び分針6を駆動する時分モータとして機能し、モータ36Bが秒針5を駆動する秒針モータとして機能するように構成されている。
本実施形態の腕時計1では、時針7及び分針6と、秒針5とを独立駆動可能な2モータ式を採用することにより、アンテナユニット37により受信した長波標準電波に含まれるタイムコードに従って時刻を調整する場合に、秒針5、分針6及び時針7を一つのモータで駆動する場合に比して時刻調整時のモータ駆動量を減らすことができ、時刻調整の短時間化及び時刻調整に伴う電力消費量の低減を図ることができる。
【0013】
アンテナユニット37は、長波標準電波(詳細には、長波標準電波の磁界成分)の時間変動に応じて、電磁誘導により、アンテナコイル37Bに誘導起電力(誘導起電圧)が発生する。そして、誘導起電力によるコイル両端の電位の変動が受信信号として検出される。
図5は、ムーブメント近傍の断面概念図である。
また、このムーブメント30には、図3および図5に示すように、地板81の裏蓋41側に輪列受け45との間に間隔を空けて回路基板50が配置され、この回路基板50は、回路押さえ板51によって地板81に固定されている。
【0014】
図6は、回路基板を時計表側(=地板側)から見た場合の平面図である。
図7は、回路基板を裏蓋側から見た場合の平面図である。
この回路基板50は、地板81(ムーブメント30)の略全面を覆う略円板形状に形成されている。また、この回路基板50には、モータ36Aのコイル部分に対応する領域に窓部50Aが設けられ、モータ36Bのコイル部分に対応する領域に窓部50Bが設けられ、輪列機構35の裏蓋41側に飛び出る部分(秒車31、2番車32、筒車33の軸部分)に対応する領域に設けられた窓部50Cが設けられている。そして、これらの窓部50A、50B、50Cとの干渉を避けつつ、回路基板50を地板81側に近接配置させてムーブメント厚の増加を防いでいる。
さらにこの回路基板50には、時計表側(地板81側)の面に、受信IC55、マイクロコンピュータ56及び水晶振動子57等の電子部品が実装部品として実装されており、これら実装部品が、アンテナユニット37、ソーラーパネル20、モータ36A、36B及び二次電池38に電気的に接続されることによって、この回路基板50は、この腕時計1全体を制御する回路部を構成する。
【0015】
受信IC55は、マイクロコンピュータ56に接続され、マイクロコンピュータ56の制御の下、アンテナユニット37を介して長波標準電波を受信し、受信した長波標準電波から現在時刻情報を示すタイムコードを復号する。周知の通り、タイムコードには、現在時刻の分を示す分情報と、現在時刻の時を示す時情報と、現在日を表す日情報(その年の1月1日からの通算日)とが含まれ、これらの情報が受信IC55からマイクロコンピュータ56へ出力される。
マイクロコンピュータ56は、その厚さを低減するため、ベアチップとして構成されている。ベアチップとは、パッケージに入っていない、ウェーハから切り出したばかりの裸の半導体チップのことであり、パッケージに封入する場合と比較して厚さが薄くなっている。
さらに本実施形態においては、ベアチップであるマイクロコンピュータ56の厚さを低減するため、ウェーハの非回路形成面側、すなわち、ウェーハの非能動面側を研磨(バックグラインド)し、厚みを低減し、本来のウェーハの厚さ0.3mm〜0.6mmのところをおよそ0.15mmとしている。
この腕時計1の各部を中枢的に制御するものあり、CPU、ROM、RAM及び水晶振動子57を発振させる発振回路等の各種回路を有し、モータ36A、36Bの駆動制御、長波標準電波の受信制御及び時刻修正、ソーラーパネル20の発電電力を二次電池38に充電する制御及び二次電池38に蓄電された電力を各部に供給する電源制御といった各種処理を行う。
本構成では、回路基板50が、アンテナユニット37も含めて地板81(ムーブメント30)の略全面を覆うため、回路基板50の面積を広く確保でき、実装部品(電子部品)や配線の配置領域を広く確保することができる。
【0016】
図8は、二次電池を配置した部分の回路基板の部分断面図である。
図8に示すように、二次電池38は、正側端子38Pが非導電性の地板81に支持され、正側端子38Pの側面には、腕時計1の正極端子板85が導通可能に接触されている。
また、二次電池38の負側端子38Mの上面には、腕時計1の負極端子板86が導通可能に接触されている。
そして、二次電池38の負側端子38Mの対向する位置の回路基板50には(図4参照)、ベアチップとして構成されたマイクロコンピュータ56が実装されている。すなわち、上述したように、ベアチップとして構成されたマイクロコンピュータ56は、ウェーハが研磨(バックグラインド)されて薄型化されているため、容易に回路基板50と二次電池38の負側端子38Mとの間の間隙に収まることとなっている。
このとき、マイクロコンピュータ56の接地側電位は、対向している二次電池38の負側電位と同じとされ、電気的に安定な状態に保持されている。
したがって、マイクロコンピュータ56を電源である二次電池38の近傍に配置しているにも拘わらず、その影響を受けず、安定して動作させることが可能となっている。
【0017】
以上の説明のように、本実施形態によれば、半導体集積回路で構成されるマイクロコンピュータを腕時計に内蔵する場合であっても、実装面積、ひいては、回路基板の面積を低減でき、腕時計の小型化(薄型化を含む)を容易に図ることができる。この結果、腕時計という大きさが制限される状態で、時計ケース内における電池の実装面積の確保および機能削減の回避に伴うマイクロコンピュータ実装面積の確保という相反する目的を達成し、女性用の小型ソーラー電波修正時計を構成する場合でも、男性用のソーラー電波修正時計と比較して機能を必要以上に削減することがない。
【0018】
以上の説明においては、ムーブメント30は、婦人用時計を目的として従来のソーラー充電式電波時計用ムーブメントよりもさらに小型化を図ったムーブメントとして構成し、2モータ式を採用する場合を示したが、これに限らず、全ての表示針を一個のモータで駆動する1モータ式を採用してもよい。
【0019】
また、ムーブメント30を男性用時計用とした場合、あるいはデザインの観点から比較的大型のものにした場合には、地板81が大きくなる分、3個あるいは4個以上のモータを容易に配置することが可能である。
以上の説明においては、腕時計としてアナログ時計を説明したが、デジタル時計であっても同様に適用が可能である。
以上の説明においては、電池として、二次電池を用いる場合について説明したが、一次電池であっても同様に適用が可能である。
【0020】
以上の説明においては、腕時計として、電波修正時計を例として説明したが、近距離無線通信など他の無線機能を有する腕時計や、各種情報処理を行うためにマイクロコンピュータを内蔵した腕時計についても本発明の適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る腕時計としてのソーラー充電式電波時計の外観構成を示す図である。
【図2】図1の腕時計の断面構造の概要を示す図である。
【図3】ムーブメントを裏蓋側から見た平面図である。
【図4】ムーブメントから回路基板及び回路押さえ板を外した状態を示す平面図である。
【図5】ムーブメント近傍の断面概念図である。
【図6】回路基板を時計表側(=地板側)から見た場合の平面図である。
【図7】回路基板を裏蓋側から見た場合の平面図である。
【図8】二次電池を配置した部分の回路基板の部分断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…腕時計、2…時計ケース、2A…貫通孔、5…秒針、5…表示指針、6…分針、7…時針、8…竜頭、8A…真、9…操作ボタン、10…文字板、20…ソーラーパネル、30…ムーブメント、31…秒車、32…2番車、33…筒車、35…輪列機構、36A…モータ、36B…モータ、37…アンテナユニット、37B…アンテナコイル、38…二次電池、38M…負側端子、38P…正側端子、40…カバーガラス、41…裏蓋、42…パッキン、50…回路基板、55…受信IC、56…マイクロコンピュータ、57…水晶振動子、60…操作検出用接点、70…プラス側電源用接点、81…地板、85…正極端子板、86…負極端子板、CA…コイル領域、P…配線用パターン。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理回路を構成する各種電子部品および配線用パターンが実装された回路基板と、
各部に電源を供給する電池と、を備え、
前記電子部品は、前記処理回路の一部を構成するベアチップを含み、
前記ベアチップと前記電池とを、前記回路基板の同一面側に対向配置することを特徴とする腕時計。
【請求項2】
請求項1記載の腕時計において、
前記ベアチップは、実装前にウェーハの非能動面側を研磨することにより厚みを低減させていることを特徴とする腕時計。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の腕時計において、
前記腕時計は、ムーブメントを有するアナログ時計として構成されており、
前記回路基板は、前記ムーブメントを構成する輪列が配置された輪列配置領域および被駆動部を駆動するためのモータのコイルが配置されるコイル配置領域を除き、前記ムーブメントの一方の面を覆うように配置されていることを特徴とする腕時計。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の腕時計において、
太陽電池を備え、
前記電池は、前記太陽電池により発電された電力を蓄える二次電池として構成されていることを特徴とする腕時計。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の腕時計において、
所定の電波を受信するためのアンテナを備え、
前記処理回路は、受信した前記電波に基づいて各種処理を行うことを特徴とする腕時計。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の腕時計において、
前記電波は、時刻標準電波であり、
前記処理回路は、受信した前記時刻標準電波に基づいて時刻修正を行うための時刻修正回路を含むことを特徴とする腕時計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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