説明

自励式フライバックコンバータ

【課題】重負荷時のスイッチング損失増大を抑制可能なRCCコンバータを提供する。
【解決手段】バイアス巻線2cの両端間に接続されたドライブ用補助電源72と、主スイッチング素子4の制御端子及びドライブ用補助電源を構成する直列接続されたダイオードとコンデンサとの接続点間に接続されたスイッチ回路17と、バイアス巻線の両端間に第1及び第2端、並びにスイッチ回路の制御端子に第3端が接続された定電流回路71と、一端がスイッチ回路の制御端子、他端がドライブ用補助電源のダイオードとコンデンサとの接続点に接続された時定数回路73からなる発振周波数低下防止回路7を備え、該回路7は時定数回路からスイッチ回路の制御端子に対する信号で制御され、バイアス巻線の両端電圧に拘らず主スイッチング素子がオフしてから所定時間後にスイッチ回路がオンすることで主スイッチング素子を強制的にオンさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重負荷時における発振周波数の低下防止回路を備えた自励式フライバックコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、家庭用電化製品や事務機器をはじめとする電子機器の電源部には、一般的に高効率でありこれらの低消費電力化に対するニーズに応え得るスイッチング電源装置が多用されている。
その中でも、自励式フライバックコンバータ(RCC)は絶縁型コンバータであると共に自励式でその基本動作がシンプルであることから、様々な電化製品の電源部に採用されている。
【0003】
かかる自励式フライバックコンバータを基本としたスイッチング電源装置において、通常、自励式フライバックコンバータは出力負荷が増加するにつれ発振周波数が低下し、入力電圧が低下するにつれ発振周波数が低下する(特許文献2[0009]〜[0011]段落参照)。そのためトランス設計は発振周波数が低下することを考慮した設計が必要であり、制御ICを使用し固定発振周波数で動作させるフライバックコンバータと比較して、トランスが大型になっていた。
【0004】
また、固定発振周波数のフライバックコンバータの場合、主スイッチング素子に流れる電流波形は台形波となるのに対し、自励式フライバックコンバータの場合は構成上、電流波形は三角波となる(特許文献1〜3の各波形図参照)。そのため、自励式フライバックコンバータでは重負荷時に発振周波数が低下するにつれ、主スイッチング素子に流れる電流の波高値が増大し、電流による損失(主スイッチング素子にオン抵抗があることに起因する導通損失およびスイッチング時に生じるスイッチング損失)が大きいという欠点があった。
【0005】
よって重負荷時に発振周波数が低下しないように対策すべく、図2〜4のような回路がこれまでに案出されている(特許文献1〜3参照)。
【0006】
図2は、特許文献1に開示された自励式フライバックコンバータの回路図である(特許文献1の図1参照)。
図2の自励式フライバックコンバータ100’では、自励動作を実現すべく、起動抵抗24と、トランス2に補助巻線として巻回されたトランス一次側補助巻線(以下、「ゲート駆動巻線」または「バイアス巻線」という)2cとを備えている。図2の例では、バイアス巻線2cと一次巻線2aとは同一極性とされている(なおトランス2については、●印の側を一端側、反対側を他端側とする。以下同じ)。バイアス巻線2cの巻数については、バイアス巻線2cの一端側に出力される電圧が、主スイッチング素子4のゲート駆動の閾値電圧より高い電圧を出力することが可能な範囲に予め設定されている。
【0007】
図2の自励式フライバックコンバータ100’について、発振周波数低下防止回路7’が非動作の場合における基本動作を概説すると、既知の通り、まず起動については、起動抵抗24によって一旦主スイッチング素子4がターンオンし、トランス2の一次巻線2aに入力電圧V1が印加されると共にバイアス巻線2cに一次巻線2aとの巻数比に応じた比例電圧が誘起される。その電圧によって、主スイッチング素子4を完全にターンオンする。主スイッチング素子4が完全にターンオンした後のターンオン期間については、図2に示される発振制御回路6および出力電圧検出回路28により決定される。なお、発振制御回路6および出力電圧検出回路28自体は既知であり、その詳細な構成および動作の説明は省略する。
主スイッチング素子4がターンオン状態にあるとき、二次巻線2bに誘導される電圧によって二次側整流ダイオード26に逆バイアスが印加され、二次巻線2bには電流が流れない。主スイッチング素子4がターンオン状態にある間、二次巻線2bは入力電圧V1で励磁され、エネルギーはトランス2に蓄積される。
一方、主スイッチング素子4がターンオフ状態にあるとき、二次巻線2bは出力電圧V2でリセットされ、蓄積されたエネルギーは二次側の出力端に接続された負荷に放出される。
【0008】
次に、発振周波数低下防止回路7’が動作する場合を含めた図2の自励式フライバックコンバータ100’の動作につき説明する。
バイアス巻線2cには、主スイッチング素子4のオン期間中は、図2上に実線で表示する矢印で示すような上向きの電圧V3が発生し、また、主スイッチング素子4のオフ期間中は、上記電圧V3と逆方向の下向きの電圧が発生し、主スイッチング素子4のスイッチング期間中において、コンデンサ13は、抵抗9を介して正逆両方向に繰り返し充電される。
上記の通り、自励式フライバックコンバータは、軽負荷から重負荷状態に変化するに従い、主スイッチング素子4のオン期間およびオフ期間の長さが伸張する特性があるため、コンデンサ13が図2上に実線で表示するような下向きの極性に充電される電圧V7が、次第に大きくなる。
したがって、このスイッチング電源装置の負荷が所定の値以上に大きくなると、主スイッチング素子4のオフ期間中に、上記電圧V7がPNPトランジスタ5のベース−エミッタ間の順方向電圧より大きくなり、PNPトランジスタ5がオンする。
【0009】
PNPトランジスタ5がオンすると、主スイッチング素子4のオフ期間中に、上述の通りバイアス巻線2cに図2上に実線で表示する電圧V3と逆方向の下向きの電圧が発生しているため、バイアス巻線2cの他端からPNPトランジスタ5 、ダイオード3および電流制限抵抗16を経由してバイアス巻線の一端に戻る経路を経由して電流が流れる。
また、主スイッチング素子4のオフ期間中に直流阻止コンデンサ14の充電電圧Vcは起動抵抗24を介して供給される電流により、図2上に実線で表示する極性に充電されているため、PNPトランジスタ5がオンすることによって、直流阻止コンデンサ14は、該充電電圧Vcを直流阻止コンデンサ14から主スイッチング素子4のゲート−ソース間に介在する寄生容量、PNPトランジスタ5およびダイオード3を経由し直流阻止コンデンサ14に戻る経路を介して放電し、主スイッチング素子4のゲート電圧がオンスレッシュレベル以上の値に上昇する。したがって、主スイッチング素子4が強制的にオンされる。
【0010】
主スイッチング素子4がオンすると、上述したようにトランス2のバイアス巻線2 cに電圧V3が発生し、該電圧V3が電流制限抵抗16および直流阻止コンデンサ14 を介して主スイッチング素子4のゲートに伝送され、主スイッチング素子4のオン状態が発振制御回路6の定電圧動作によって定められる所定の期間持続される。上記のような回路構成によって主スイッチング素子4を強制的にオンさせるタイミング、即ち主スイッチング素子4がオフされた後に強制的にオンさせるまでの所定の時間T(特許文献1の図5参照)は、抵抗9とコンデンサ13の時定数を変更することによって調整することができる。
【0011】
上記構成によれば、軽負荷時は、上述したように自励式フライバックコンバータの特性として発振周波数は高くなるので、コンデンサ13にPNPトランジスタ5をオンさせるのに足りるだけの電圧が充電されることはなく、主スイッチング素子4を強制的にオンさせることは起こらない。すなわち、発振制御回路6によって該発振周波数低下防止回路7’が非動作の場合と同様の発振動作が行われる。
一方、重負荷に(すなわち、出力電流I2が大きく)なると、発振制御回路6による制御だけでは、自励式フライバックコンバータの特性として発振周波数が低下してくる。そして主スイッチング素子4のオフ期間が上記期間Tよりも長くなろうとすると、発振周波数低下防止回路7’によって主スイッチング素子4が強制的にオンさせられる。発振周波数低下防止回路7’が動作するときは、このようにして、主スイッチング素子4のオフ期間が短縮される。
【0012】
図3は、特許文献2に開示された自励式フライバックコンバータ(100’’)の回路図である(特許文献2の図1参照)。
この特許文献2に開示された発振周波数低下防止回路1の概略を順次説明すると、トランス2の一次側に、一次巻線2aと逆の巻き方向の、すなわち二次巻線2bと同じ巻き方向の補助巻線2dを更に設けている。したがって、この補助巻線2dには、主スイッチング素子4のオン期間中は図1中に実線で示すような下向きの電圧V4が発生し、オフ期間中は図3中に破線で示すような上向きの電圧V5が発生する。
【0013】
そして、この補助巻線2dの一端側(巻き終わり側)に抵抗34を直列接続し、この抵抗34と補助巻線2dの他端側との間にコンデンサ36を接続している。また、この抵抗34とコンデンサ36の接続部にダイオード38のアノード側を接続している。主スイッチング素子4のスイッチング動作中は、このコンデンサ36には正逆両方向に繰り返し充電されるが、ダイオード38は、このコンデンサ36の両端の電圧であって主スイッチング素子4がオフ期間中の向きの電圧、すなわち図3中で上向きの電圧V6を選択的に取り出す。
【0014】
このダイオード38のカソード側と補助巻線2dの他端側間には、スイッチ回路40が設けられている。このスイッチ回路40は、この例ではダイオード38のカソード側と補助巻線2dの他端側との間に互いに直列に接続されたバイアス用の抵抗42、44および両抵抗42、44の接続部にベースが、ダイオード38のカソードにエミッタがそれぞれ接続されたスイッチ用のトランジスタ46を有しており、ダイオード38のカソード側の電圧が所定値以上になるとトランジスタ46のベースが所定以上にバイアスされてトランジスタ46がオンし、ダイオード38のカソード側の電圧を出力する。このスイッチ回路40から出力される電圧は、この例では逆流防止用のダイオード48を介して主スイッチング素子4のゲートに与えられ、それによって、それまでオフされていた主スイッチング素子4は強制的にオンさせられる。
【0015】
主スイッチング素子4が上記のようにしてオンすると、上述したようにトランス2のバイアス巻線2cに電圧V3が発生し、後は発振制御回路6の働きによって主スイッチング素子4のオン状態が所定期間維持される。
【0016】
上記のような回路構成によって主スイッチング素子4を強制的にオンさせるタイミング、すなわち主スイッチング素子4がオフされた後、強制的にオンされるまでの時間T(特許文献2の図2参照)は、コンデンサ36の両端の電圧V6の立ち上がりの時定数を決める抵抗34およびコンデンサ36の値、ならびに、抵抗42と44の比等によって調整することができる。
【0017】
上記構成によれば、軽負荷時は、上述したように自励式フライバックコンバータの特性として発振周波数は高くなるので、コンデンサ36にスイッチ回路40をオンさせるに足りるだけの電圧が充電されることはなく、補助巻線2d側の上記のような回路によって主スイッチング素子4を強制的にオンさせることは起こらない。すなわち、発振制御回路6により発振周波数低下防止回路1が非動作のときと同様の発振制御が行われる。
【0018】
一方、重負荷に(すなわち、出力電流I2が大きく)なると、発振制御回路6による制御だけでは、自励式フライバックコンバータの特性として発振周波数が低下して来る。そして、主スイッチング素子4のオフ期間が上記時間Tよりも長くなろうとすると、補助巻線2d側の上記のような回路によって主スイッチング素子4が強制的にオンさせられる。従って主スイッチング素子4のオフ期間が短縮される。
【0019】
図4は、特許文献3に開示された自励式フライバックコンバータ(100’’’)の回路図である(特許文献3の図1参照)。
この特許文献3に開示された例においては、図4に示すように、トランス320の一次側に設けた第2補助巻線Np3に接続された整流用ダイオードD3、逆流防止ダイオードD4、充電時定数を決定する抵抗R2およびコンデンサC3とから発振周波数低下防止回路340が形成されている。R3は放電抵抗である。
【0020】
第2補助巻線Np3は、平滑コンデンサC1のマイナス側を基準とした場合、補助巻線Np2の巻線方向と見掛け上反対の巻線方向となるように設けられている。したがって、補助巻線Np2には一次巻線Np1と同極性の電圧が誘起されるが、この第2補助巻線Np3には逆極性の電圧が誘起されることになる。その電圧値は、一次巻線Np1との巻線比に応じた値となる。
【0021】
上記構成からなる発振周波数低下防止回路340の概略動作につき説明すると、まず、フィードバック信号Vfに基づく制御信号発生回路332からのオン/オフ制御信号CNTによって制御用素子Q2がオフとなると、主スイッチング素子Q1がオフとなる。すると、第2補助巻線Np3から整流ダイオードD3、充電用抵抗R2を通して電流が流れ充電用コンデンサC3に流れ込む。
そして、この充電用コンデンサC3の電圧が、主スイッチング素子Q1のオン電圧を越えると、スイッチング素子Q1は強制的にオンされる。
【0022】
すなわち、主スイッチング素子Q1が制御信号発生回路332からのオン/オフ制御信号CNTによってオフされてから、この発振周波数低下防止回路340によって強制的にオンされるまでの時間(特許文献3の図2(B)に示す時間(tb〜t0)参照)は、抵抗R2とコンデンサC3との充電時定数で決まる。したがって、この特許文献3に開示された例においては、最大負荷時における発振周波数を設定時定数で決まる発振周波数に規制することができる。
【0023】
一方、最小負荷の場合は、発振周波数が高くなる。つまり、主スイッチング素子Q1のオン−オフサイクル時間は最小となる。この場合、充電用コンデンサC3の電圧が、主スイッチング素子Q1のオン電圧を越えることはなく、発振周波数低下防止回路340が動作しないので、電圧制御回路313による通常の発振周波数で運転される。
【0024】
このように、図2〜4いずれの回路も、主スイッチング素子がオフしている時に、バイアス巻線に発生する電圧を利用し、抵抗とコンデンサを用いて時定数を設定して一定時間主スイッチング素子をオフさせたのち、強制的に主スイッチング素子をオンさせることによって、発振周波数の低下を防止している。なお、i)図2の時定数を決定している抵抗とコンデンサは、抵抗9とコンデンサ13であり、ii)図3の時定数を決定している抵抗とコンデンサは、抵抗34とコンデンサ36であり、iii)図4の時定数を決定している抵抗とコンデンサは、抵抗R2とコンデンサC3である。
【0025】
ところで、図2〜4に示す発振周波数低下防止の回路に利用しているバイアス巻線の電圧は、主スイッチング素子がオフしている時の電圧であり、二次巻線の電圧を整流平滑して負荷へ電力を供給している期間中に、発生している。
【0026】
ここで、二次側出力については、図2〜4いずれの回路においても、二次側出力電圧を一定にするためのフィードバック制御がなされており、出力負荷が増加するにつれ、二次巻線の電圧が上昇する構成となっている。したがって、バイアス巻線の電圧についても、二次巻線の電圧と同様に、出力負荷が増加するにつれ電圧が上昇する。
【0027】
そうなると、これまで案出されている図2〜4の回路については、出力負荷が増加し発振周波数低下防止回路が動作するポイントから、さらに出力負荷が増加した時には、バイアス巻線に発生する電圧が上昇するため、(抵抗とコンデンサを用いて時定数を設定して一定時間主スイッチング素子をオフさせたのち)強制的に主スイッチング素子をオンさせるタイミングが早くなり、その結果、発振周波数低下防止回路が動作した時点の発振周波数から発振周波数が上昇することとなる。
【0028】
したがって、これまで案出されている図2〜4の回路については、出力負荷が増加し続けて行くと、発振周波数低下防止回路が動作した時点の発振周波数から発振周波数が上昇することとなり、重負荷時のスイッチング損失の増大が問題となっていた。
【0029】
その他、出力負荷が過負荷状態となった結果、当該自励式フライバックコンバータ内に別途設けられた過電流保護回路が動作した場合には、主スイッチング素子のオン期間を減少させオフ期間を長くし、結果的に発振周波数を低下させる必要があるところ、このとき発振周波数低下防止の回路が動作していると、お互いに反対の制御を行うことになり、二次側出力を十分に絞ることが困難となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2006−115593号公報
【特許文献2】特開平6−189545号公報
【特許文献3】特開平6−133543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
したがって本発明は、出力負荷が増加し発振周波数低下防止回路が動作後、出力負荷がさらに増加しても、発振周波数の低下が停止した時点の発振周波数から発振周波数が上昇しないようにし、重負荷時の発振周波数上昇によるスイッチング損失の増大を抑制することができる自励式フライバックコンバータを提供することを課題とする。
【0032】
また本発明は、出力負荷が過負荷状態となった結果、当該自励式フライバックコンバータ内に別途設けられた過電流保護回路が動作した場合は、発振周波数低下防止回路を動作停止させ、過電流保護回路の動作に影響を与えないようにすることができる自励式フライバックコンバータを提供することを課題とする。
【0033】
その他本発明は、トランスに発振周波数低下防止のための巻線を別途追加しなくとも、出力負荷が増加した際における発振周波数の低下を防止することができると共に、上記の各課題を解決することが可能な構成を備えた自励式フライバックコンバータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記課題を解決可能な本発明の自励式フライバックコンバータは、(1)一次巻線、二次巻線およびバイアス巻線を有するトランスと、
前記一次巻線に直列接続され、前記バイアス巻線に誘起された電圧によって駆動される主スイッチング素子と、
前記二次巻線からの出力をフィードバックして前記主スイッチング素子のスイッチングを制御する発振制御回路と、
前記主スイッチング素子に接続され、オンすることで前記主スイッチング素子をオフ状態からオン状態にするスイッチ回路と、
第1のコンデンサと第1の抵抗とからなる時定数回路を有し、前記主スイッチング素子がオフ状態のときに前記バイアス巻線からの出力電圧を用いて前記第1のコンデンサを閾値電圧以上に充電することで、前記スイッチ回路を強制的にオンさせる発振周波数低下防止回路と
を備え、
前記発振周波数低下防止回路は、前記主スイッチング素子がオフすると、前記第1のコンデンサを一定電流で充電する定電流回路をさらに有することを特徴とするものである。
【0035】
また本発明は、好ましくは、(2)前記バイアス巻線の一端が、電流制限抵抗、直流阻止コンデンサを介して前記主スイッチング素子の制御端子に接続された(1)記載の自励式フライバックコンバータであって、
前記バイアス巻線の一端および他端間に直列接続された第1のダイオードおよび第2のコンデンサからなるドライブ用補助電源をさらに備え、
前記スイッチ回路は、前記直流阻止コンデンサと前記主スイッチング素子の制御端子との接続点および前記ドライブ用補助電源の前記第1のダイオードと前記第2のコンデンサとの接続点間に接続され、
前記スイッチ回路がオンしたときに、前記第2のコンデンサに充電された電荷を前記スイッチ回路に送出し、前記主スイッチング素子の制御端子に該主スイッチング素子をオンさせるためのドライブ電流を流すことを特徴とするものである。
【0036】
上記(2)の自励式フライバックコンバータにおいては、(3)前記定電流回路と前記バイアス巻線の他端との間に前記定電流回路による前記第1のコンデンサの充電動作を停止させる定電流回路動作停止手段をさらに備えることが好ましい。
【0037】
上記(3)の自励式フライバックコンバータについては、(4)カソードが前記バイアス巻線の他端にアノードが前記定電流回路に接続された第1のツェナーダイオードが前記定電流回路動作停止手段として機能し、
前記第1のツェナーダイオードが導通することで、前記定電流回路による前記第1のコンデンサの充電動作を停止させることが好ましい。
【0038】
さらに、上記(4)の自励式フライバックコンバータについては、(5)前記定電流回路は、3つの端子を有し、前記バイアス巻線の一端に第1端が接続され、前記第1のツェナーダイオードのアノードに第2端が、並びに前記スイッチ回路の制御端子に第3端が接続され、
前記時定数回路は、前記第1のコンデンサと、前記第1の抵抗とが並列に接続された並列回路からなり、前記並列回路の一端が前記スイッチ回路の制御端子と前記定電流回路の第3端との接続点に、他端が前記ドライブ用補助電源の前記第1のダイオードと前記第2のコンデンサとの接続点に接続されることが好ましい。
【0039】
上記(3)の自励式フライバックコンバータにおいては、(6)前記スイッチ回路は、PNPトランジスタを含み、
前記定電流回路は、NPNトランジスタからなる定電流制御トランジスタ、第2のツェナーダイオード、第2のダイオード並びに第2の抵抗および第3の抵抗から構成されており、
前記第1端となる前記定電流回路の前記第2のダイオードのカソードが前記バイアス巻線の一端と前記電流制限抵抗との接続点に、該第2のダイオードのアノードが前記第2の抵抗を介して前記定電流制御トランジスタのエミッタに、前記定電流制御トランジスタのコレクタが前記スイッチ回路のPNPトランジスタのベースに、該定電流制御トランジスタのベースが前記第2端となる前記第3の抵抗を介して前記第1のツェナーダイオードのアノードに、さらに、
前記第2のツェナーダイオードのアノードが前記定電流回路の前記第2のダイオードのアノードと前記第2の抵抗との接続点に、該第2のツェナーダイオードのカソードが前記定電流制御トランジスタのベースと前記第3の抵抗との接続点に各々接続されていることが好ましい。
【0040】
なお、本明細書で主スイッチング素子4に関連して「ゲート」、「ドレイン」または「ソース」と表現されているのは、主スイッチング素子4として一応、電界効果トランジスタが想定されていることの表れであり、便宜上そう表現されたに過ぎないものである。したがって、当該表現を根拠として主スイッチング素子4が電界効果トランジスタに限定されるものでは決してない。主スイッチング素子4としては、同等の機能を果たすものであれば特に限定されず、その場合、電界効果トランジスタとは異なる三端子表現が用いられるものに対しては当然、相当する表現が該当するであろうことは明白である。
【発明の効果】
【0041】
i)本発明によれば、(出力負荷が増加し)発振周波数低下防止回路が動作後、さらに出力負荷が増加しても、発振周波数の低下が停止した時点の発振周波数より発振周波数が上昇しないようにし、重負荷時における発振周波数上昇によるスイッチング損失の増大を抑制可能な自励式フライバックコンバータを提供することができる。
【0042】
ii)また本発明によれば、出力負荷が過負荷状態となった結果、当該自励式フライバックコンバータ内に別途設けられた過電流保護回路が動作した場合は、発振周波数低下防止回路を動作停止させ、二次側出力を十分に絞ることが可能な自励式フライバックコンバータを提供することができる。
【0043】
iii)さらに本発明によれば、トランスに発振周波数低下防止のための巻線を別途追加しなくとも、出力負荷が増加した際における発振周波数の低下を防止することができると共に、上記i)およびii)の各機能を実現することが可能な自励式フライバックコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る自励式フライバックコンバータの一実施例を示す回路図である。
【図2】従来例に係る自励式フライバックコンバータの一例を示す回路図である。
【図3】従来例に係る自励式フライバックコンバータの他の一例を示す回路図である。
【図4】従来例に係る自励式フライバックコンバータの他の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の自励式フライバックコンバータの詳細に付き、一実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0046】
[基本構成]
図1に、本実施例に係る自励式フライバックコンバータ100の回路図を示す。なお、図1の構成の説明に関し、図2〜4の説明で使用した箇所と同一箇所については同一の参照符を用いるものとする。
【0047】
はじめに、本実施例に係る自励式フライバックコンバータ100の基本構成および動作につき説明すると、本実施例に係る自励式フライバックコンバータ100は、トランス2の一次巻線2aに主スイッチング素子4を直列接続し、同トランス2のバイアス巻線2cの出力を自励式の発振制御回路6を介してこの主スイッチング素子4のゲートに帰還させて発振させ、主スイッチング素子4のオフ時にトランス2内の蓄積エネルギーを二次巻線2bから整流ダイオード26を介して直流出力として取り出すよう構成されている。本実施例では、主スイッチング素子4の一例としてNチャネルMOSFETを使用している。
なお、本実施例に係る自励式フライバックコンバータ100においても、一次巻線2aの一端側と主スイッチング素子4のゲートとの間に起動抵抗24が備えられている点は従来例と同様である。
【0048】
発振制御回路6としては種々の構成を採り得る。本実施例に係る自励式フライバックコンバータ100は、バイアス巻線2cの一端側と主スイッチング素子4のゲート間に直列に挿入された電流制限抵抗16、直流阻止コンデンサ14および主スイッチング素子4のゲートをグラウンドにバイパスするように接続された制御トランジスタ18を備えている。また、互いに直列接続された抵抗10およびコンデンサ12から成る時定数回路8をバイアス巻線2cの両端に接続し、このコンデンサ12の電圧が制御トランジスタ18のベースに印加されるようにしている。
さらに、二次側の出力電圧V2の定電圧制御用に、バイアス巻線2cの一端側とコンデンサ12との間にダイオード20およびフォトカプラ22(より具体的にはそのフォトトランジスタ側)を接続している。
【0049】
トランスの二次巻線2bには、整流ダイオード26および出力電圧検出回路28が接続されている。出力電圧検出回路28は、シャントレギュレータ30、出力電圧V2を分圧してそれをシャントレギュレータ30の参照電圧端子へ供給する分圧抵抗32およびフォトカプラ22を備えており、このシャントレギュレータ30で出力電圧V2を基準電圧と比較してその差に応じてフォトカプラ22のフォトダイオードを発光させ、これによって一次側の発振制御回路6へフィードバックを掛けるようにしている。
【0050】
さらに、本実施例では、自励式フライバックコンバータ100内に別途、以下の構成からなる過電流保護回路74が設けられている。
すなわち、本実施例の過電流保護回路74は、上記制御トランジスタ18と、一端が主スイッチング素子4のソースに、他端がグラウンドに接続された電流検出抵抗31と、該電流検出抵抗31と主スイッチング素子4のソースとの接続点および制御トランジスタ18のベース間に接続された、(制御トランジスタ18の)ベース電流制限抵抗33から構成されている。この過電流保護回路74の詳細な動作については、後段において別途説明する。
【0051】
ここで、本実施例に係る自励式フライバックコンバータ100の基本発振動作、すなわち後述する発振周波数低下防止回路7が非動作時における自励式フライバックコンバータ100の動作について説明すると、従来例と同様、入力電圧V1が印加されると、それが起動抵抗24を通して主スイッチング素子4のゲートに印加され、主スイッチング素子4が導通状態になる。その結果、トランス2の一次巻線2aに電圧が加わり、同時にバイアス巻線2cに電圧V3が発生する。これが電流制限抵抗16および直流阻止コンデンサ14を介して主スイッチング素子4のゲートに印加され、主スイッチング素子4は急速にオンする。
このとき、トランス2の二次巻線2bの電圧は整流ダイオード26に対して逆方向に加わるので、二次巻線2bには電流が流れず、トランス2にエネルギーが蓄積される。これと共に、時定数回路8を構成するコンデンサ12に抵抗10を通して充電電流が流れ、制御トランジスタ18のベース電位が徐々に上昇する。
【0052】
コンデンサ12の電圧が所定値に達して制御トランジスタ18が導通し始めると、それによって主スイッチング素子4のゲートがグラウンドにバイパスされて主スイッチング素子4がオン状態を保てなくなり、一次巻線2aの電圧が低下し、バイアス巻線2cの電圧V3も低下する。これは正帰還であるため、主スイッチング素子4は急速にオフする。主スイッチング素子4がオフすることにより、トランス2の蓄積エネルギーが二次巻線2bから整流ダイオード26を通して出力側へ供給される。
【0053】
その後、蓄積エネルギーが放出し終わると、二次巻線2bにわずかに残された残留エネルギーによって、バイアス巻線2cに電圧V3が発生し、再び主スイッチング素子4がオン状態となり、上記のような動作が繰り返される。
【0054】
また、出力電圧V2の定電圧制御について説明すると、出力電圧V2が規定値以上に上昇すると、シャントレギュレータ30およびフォトカプラ22のフォトダイオードに流れる電流が大きくなり、それに応じて同フォトカプラ22のフォトトランジスタに流れる電流も大きくなり、これによって発振制御回路6内のコンデンサ12が早く充電されるので制御トランジスタ18が早く導通して主スイッチング素子4のゲートをグラウンドへバイパスさせ、その結果、主スイッチング素子4のオン期間が短くなって出力電圧V2が低下し、このようにして出力電圧V2の定電圧制御が行われる。
【0055】
また、本実施例の過電流保護回路74の動作につき説明すると、まず、本実施例に係る過電流保護回路74は、自励式フライバックコンバータ100の二次側出力電流I2が増加するに比例して主スイッチング素子4に流れる電流Idも増加することを利用している。すなわち、二次側出力電流I2の多寡に比例した主スイッチング素子4に流れる電流Idの多寡は、電流検出抵抗31で電圧に変換され、得られた電圧信号はベース電流制限抵抗33を通じて制御トランジスタ18のベースに印加される。
本実施例では、二次側出力電流I2が過負荷状態になったとき、電流検出抵抗31の両端電圧が制御トランジスタ18をオンさせる電圧まで上昇する構成となっており、実際に電流検出抵抗31の両端電圧が制御トランジスタ18をオンさせる電圧まで上昇すると、制御トランジスタ18はオンとなり、主スイッチング素子4のゲート電圧が引き抜かれる。これにより、主スイッチング素子4はオフとなり、自励式フライバックコンバータ100は過電流に対して保護される(過電流保護動作)。
なお、2次側出力電流I2が過負荷状態を脱した後は、自励式フライバックコンバータ100は過電流保護回路74の影響を受けず、上で説明した基本動作の通り動作するほか、必要に応じて以下で説明する発振周波数低下防止回路7が作動する。
【0056】
[発振周波数低下防止回路について]
次に、発振周波数低下防止回路7につき説明する。本実施例において発振周波数低下防止回路7は、バイアス巻線2cの一端および他端間に接続された、ダイオード37(本発明の「第1のダイオード」に相当)とコンデンサ39(本発明の「第2のコンデンサ」に相当)とからなるドライブ用補助電源72と、ダイオード3とPNPトランジスタ5とを含み、直流阻止コンデンサ14と主スイッチング素子4のゲートとの接続点およびドライブ用補助電源72のダイオード37とコンデンサ39との接続点間に接続されたスイッチ回路17と、バイアス巻線2cの一端および他端間に第1端および第2端が、並びにスイッチ回路17のPNPトランジスタ5のベースに第3端が接続された定電流回路71と、一端がスイッチ回路17(PNPトランジスタ5)の制御端子と定電流回路71の第3端との接続点に、他端がドライブ用補助電源72のダイオード37とコンデンサ39との接続点に接続された時定数回路73と、からなっている。
この発振周波数低下防止回路7の各構成要素の詳細構成および発振周波数低下防止回路7の詳細な動作については、後段において別途説明する。
【0057】
なお、本実施例では、バイアス巻線2cの他端と定電流回路71との間には、定電流回路動作停止手段としてツェナーダイオード25(本発明の「第1のツェナーダイオード」に相当)が接続されている。このツェナーダイオード25は、アノードが定電流回路71に、そしてカソードがバイアス巻線2cの他端に各々接続されている。定電流回路動作停止手段としてのツェナーダイオード25の働きの詳細についても、後段にて詳細に説明する。
【0058】
ドライブ用補助電源72は、ダイオード37のアノードがバイアス巻線2cの一端と電流制限抵抗16との接続点に、該ダイオード37のカソードがコンデンサ39を介してバイアス巻線2cの他端に各々接続されることにより構成されている。
【0059】
スイッチ回路17は、PNPトランジスタ5、ダイオード3および抵抗29から構成されており、ダイオード3のカソードが直流阻止コンデンサ14と主スイッチング素子4のゲートとの接続点に、該ダイオード3のアノードが抵抗29を介してPNPトランジスタ5のコレクタに、該PNPトランジスタ5のエミッタがドライブ用補助電源72のダイオード37とコンデンサ39との接続点間に各々接続されることにより構成されている。
【0060】
定電流回路71は、NPNトランジスタからなる定電流制御トランジスタ19、ツェナーダイオード23(本発明の「第2のツェナーダイオード」に相当)、ダイオード21(本発明の「第2のダイオード」に相当)並びに抵抗9(本発明の「第2の抵抗」に相当)および抵抗27(本発明の「第3の抵抗」に相当)から構成されており、その第1端に相当するダイオード21のカソードがバイアス巻線2cの一端と電流制限抵抗16との接続点に、該ダイオード21のアノードが抵抗9を介して定電流制御トランジスタ19のエミッタに、第3端に相当する該定電流制御トランジスタ19のコレクタがスイッチ回路17の制御端子に相当するPNPトランジスタ5のベースに、そして該定電流制御トランジスタ19のベースに一端が繋がる抵抗27の他端(第2端に相当)がツェナーダイオード25のアノードに、さらに、ツェナーダイオード23のアノードがダイオード21のアノードと抵抗9との接続点に、該ツェナーダイオード23のカソードが定電流制御トランジスタ19のベースと抵抗27との接続点に各々接続されることにより構成されている。
【0061】
なお、定電流トランジスタ19、ツェナーダイオード23、ダイオード21並びに抵抗9および27を上記の通り組み合わせてなる本実施例の定電流回路71では、抵抗9の両端に印加される電圧が、ツェナーダイオード23のツェナー電圧から定電流トランジスタ19のベース−エミッタ間電圧VBEを引き算した一定電圧となるため、抵抗9の抵抗値が一定であることを前提とすると、抵抗9に流れる電流は定電流となる。本実施例の定電流回路71では、このようにして定電流動作が行われる。
【0062】
時定数回路73は、一端がスイッチ回路17のPNPトランジスタ5のベースと定電流回路71の定電流制御トランジスタ19のコレクタとの接続点に、他端がドライブ用補助電源72のダイオード37とコンデンサ39との接続点(PNPトランジスタ5のエミッタ)に接続された、定電流回路71によって一定の電流で充電され得るコンデンサ13(本発明の「第1のコンデンサ」に相当)および該コンデンサ13に充電された電荷を放電するための放電抵抗35(本発明の「第1の抵抗」に相当)の並列接続回路により構成されている。
この時定数回路73は、その一端からスイッチ回路17のPNPトランジスタ5のベースに信号を送出することによって、スイッチ回路17のスイッチング動作を制御している。
【0063】
すなわち、本実施例では、発振周波数低下防止回路7において、主スイッチング素子4がオフ時のバイアス巻線2cの電圧を直接使用するのではなく、上記の通りトランジスタ19、ツェナーダイオード23、ダイオード21並びに抵抗9および27から定電流回路71を構成し、時定数回路73のコンデンサ13を一定の電流で充電することにより、バイアス巻線2cの電圧が変化しても影響されないように構成している。
ただし、本実施例の自励式フライバックコンバータ100では、定電流回路動作停止手段が別途備えられており、出力負荷が過負荷状態となった結果、自励式フライバックコンバータ100内に別途設けられた過電流保護回路74が動作した場合には、定電流回路動作停止手段が動作して定電流回路71の動作を停止させ、発振周波数低下防止回路7が動作停止となるよう構成されている。
【0064】
また本実施例では、主スイッチング素子4を十分にドライブするために、ダイオード37とコンデンサ39でドライブ用補助電源72を作ってトランジスタ5のエミッタに接続し、発振周波数低下防止のため主スイッチング素子4を強制的にオンさせるときのドライブ電流を、トランジスタ5から抵抗29とダイオード3を通じて主スイッチング素子4のゲートに直接加える回路構成としている。
【0065】
さらに、本実施例では、バイアス巻線2cの他端と定電流回路71の第2端に相当する抵抗27との間に定電流回路動作停止手段としてツェナーダイオード25が追加されている。
これにより、出力負荷が過負荷状態となった結果、当該自励式フライバックコンバータ100内に別途設けられた過電流保護回路74が動作し、二次側出力電圧V2の低下に比例して主スイッチング素子4がオフ時のバイアス巻線2cの電圧がツェナーダイオード25のツェナー電圧よりも低下すると、発振周波数低下防止回路7が動作停止となるよう構成されている。すなわち、本実施例の構成によれば、当該自励式フライバックコンバータ100内に別途設けられた過電流保護回路74と発振周波数低下防止回路7とが互いに反対の制御を行うことは無く、過電流保護回路74は二次側出力を十分に絞ることが可能となっている。
【0066】
なお、定電流制御トランジスタ19のベース閾値電圧、ツェナーダイオード23のツェナー電圧およびツェナーダイオード25のツェナー電圧それぞれの大小関係につき補足すると、本実施例では、定電流制御トランジスタ19のベース閾値電圧は、一般的な値である0.5〜0.6Vとされる。
次に、ツェナーダイオード23および25のツェナー電圧については、バイアス巻線2cの一端側がマイナスに反転(他端側がプラスになる)したときに発生する電圧と、ツェナーダイオード23のツェナー電圧+ツェナーダイオード25のツェナー電圧+ダイオード21においてドロップする電圧+抵抗27両端電圧の和とが相等しくなる必要がある。
したがって、ツェナーダイオード23のツェナー電圧+ツェナーダイオード25のツェナー電圧は、バイアス巻線2cの一端側がマイナスに反転したときに発生する電圧よりも小さい値となる。
ここで、ツェナーダイオード25のツェナー電圧は、出力負荷が過負荷状態となった結果、本実施例に係る自励式フライバックコンバータ100の過電流保護回路74が動作してバイアス巻線2cの一端側がマイナスに反転したときに発生する電圧が減少を開始した際、どの程度まで減少した時点で定電流トランジスタ19をオフして定電流回路71をオフさせたいかを決定する電圧であり、その値についてはケースに応じ設計され得るものである。
他方、ツェナーダイオード23のツェナー電圧は、定電流回路71における定電流値を決定するための電圧であり、ツェナーダイオード25のツェナー電圧に対して相当程度低い値とされる。
【0067】
[動作]
以下、上記構成からなる発振周波数低下防止回路7が動作状態にあるときの自励式フライバックコンバータ100の詳細な動作につき説明する。
まず、主スイッチング素子4がオンになったとき、トランス2の一次巻線2aに電流が流れ、バイアス巻線2cの一端側にプラスの電圧が発生する。これにより、バイアス巻線2cは、その一端側から電流制限抵抗16および直流阻止コンデンサ14を通じて主スイッチング素子4のオン状態が維持されるよう主スイッチング素子4をドライブする。
またこのとき、バイアス巻線2cの一端側からダイオード37を通じてコンデンサ39が充電される。
【0068】
その後、出力電圧検出回路28のシャントレギュレータ30で検出される二次側出力電圧V2が所定の電圧に達すると、フォトカプラ22の発光ダイオードに電流が流れる。
そうなると、フォトカプラ22のフォトトランジスタがオンとなるため、バイアス巻線2cの一端側からダイオード20、フォトカプラ22のフォトトランジスタを通じてトランジスタ18のベースに電圧が印加され、最終的にトランジスタ18はオンとなる。
トランジスタ18がオンとなると、主スイッチング素子4のゲート電圧がトランジスタ18によって引き抜かれ、これにより、主スイッチング素子4はオフとなる。
【0069】
主スイッチング素子4がオフとなることで、バイアス巻線2cの一端側がマイナスに反転(他端側がプラスになる)する。
ここで、バイアス巻線2cの電圧がツェナーダイオード25のツェナー電圧を超えると、抵抗27を通じてツェナーダイオード23と定電流制御トランジスタ19のベースに電流が流れ、定電流制御トランジスタ19がオンとなる。定電流制御トランジスタ19がオンとなると、コンデンサ39に充電されていた電荷が、時定数回路73を構成する放電抵抗35およびコンデンサ13を通じて、定電流にて定電流トランジスタ19に流れる。またこのとき、コンデンサ13は定電流にて充電され、コンデンサ13の両端電圧が、スイッチ回路17のPNPトランジスタ5がオンするために必要なベース−エミッタ間電圧に達すると、該PNPトランジスタ5がオンとなり、コンデンサ39に充電されていた電荷が、該トランジスタ5と抵抗29とダイオード3を通じて主スイッチング素子4のゲートに印加され、主スイッチング素子4は強制的にオンされる。この後は、上記の主スイッチング素子4のオン/オフ動作が繰り返し行われる。
【0070】
次に、定電流回路動作停止手段の動作について順に説明する。本実施例では、出力負荷が過負荷状態となった結果、自励式フライバックコンバータ100内に別途設けられた過電流保護回路74が動作し、二次側出力電圧V2の低下に比例して主スイッチング素子4がオフ時のバイアス巻線2cの電圧がツェナーダイオード25のツェナー電圧よりも低下すると、発振周波数低下防止回路7が動作停止となるよう構成されている。すなわち、本実施例の構成によれば、当該自励式フライバックコンバータ100内に別途設けられた過電流保護回路74と発振周波数低下防止回路7とが互いに反対の制御を行うことは無く、過電流保護回路74は二次側出力を十分に絞ることが可能となっている。
【0071】
上記の通り、本実施例では、発振周波数低下防止回路7には定電流回路71が備えられており、コンデンサ13を一定の電流で充電することにより、バイアス巻線2cの電圧が変化しても発振周波数低下防止回路7の動作に影響が現れないように構成されている。
したがって、本実施例によれば、(出力負荷が増加し)発振周波数低下防止回路7が動作後、さらに出力負荷が増加しても、発振周波数の低下が停止した時点の発振周波数より発振周波数が上昇せず、ゆえに重負荷時における発振周波数上昇による主スイッチング損失の増大が抑制された自励式フライバックコンバータを提供することができる。
【0072】
また本実施例では、バイアス巻線2cの他端と定電流回路71の第2端に相当する抵抗27との間に定電流回路動作停止手段としてツェナーダイオード25が接続されている。
したがって、本実施例によれば、出力負荷が過負荷状態となった結果、当該自励式フライバックコンバータ100内に別途設けられた過電流保護回路74が動作した場合は、発振周波数低下防止回路7を動作停止させ、二次側出力を十分に絞ることが可能な自励式フライバックコンバータを提供することができる。
【0073】
さらに、本実施例では、トランス2に発振周波数低下防止のための巻線を別途追加しなくとも、出力負荷が増加した際における発振周波数の低下を防止することができると共に、上記重負荷時におけるスイッチング損失増大の抑制および過電流保護回路74が動作した場合における発振周波数低下防止回路7の動作停止、の各機能を実現することが可能な自励式フライバックコンバータを提供することができる。
【0074】
[変形例]
以上、一実施例に基づき本発明の自励式フライバックコンバータに付き説明してきたが、本発明は上記実施例記載の構成に限定されず、種々変形実施することが可能である。
【0075】
例えば、本実施例では、過電流保護回路74は主スイッチング素子4のゲート電圧を引き抜くための制御トランジスタ18を利用して構成しているところ、過電流保護回路の構成は本実施例記載の構成に限定されず、例えば、部品点数は増加するものの、制御トランジスタ18と並列に過電流保護用トランジスタを別途追加し、該過電流保護用トランジスタのベースにベース電流制限抵抗33を接続する構成としても構わない。かかる構成であっても、制御トランジスタ18を利用する本実施例の過電流保護回路と同様の動作が得られる。
【0076】
以上の通り、本発明はi)重負荷時の発振周波数上昇によるスイッチング損失の増大を抑制することができるほか、さらに、ii)過電流保護回路が動作した場合は、発振周波数低下防止回路を動作停止させ、過電流保護回路の動作に影響を与えないようにすることができる自励式フライバックコンバータを提供する新規かつ有用なるものであることが明らかである。
【符号の説明】
【0077】
2 トランス
2a 一次巻線
2b 二次巻線
2c バイアス巻線
3 ダイオード
4 主スイッチング素子
5 トランジスタ
6 発振制御回路
7 発振周波数低下防止回路
8 時定数回路
9 抵抗(第2の抵抗)
10 抵抗
12 コンデンサ
13 コンデンサ(第1のコンデンサ)
14 直流阻止コンデンサ
16 電流制限抵抗
17 スイッチ回路
18 制御トランジスタ
19 定電流制御トランジスタ
20 ダイオード
21 ダイオード(第2のダイオード)
22 フォトカプラ
23 ツェナーダイオード(第2のツェナーダイオード)
24 起動抵抗
25 ツェナーダイオード(第1のツェナーダイオード)
26 整流ダイオード
27 抵抗(第3の抵抗)
28 出力電圧検出回路
29 抵抗
30 シャントレギュレータ
31 電流検出抵抗
32 分圧抵抗
33 ベース電流制限抵抗
35 放電抵抗(第1の抵抗)
37 ダイオード(第1のダイオード)
39 コンデンサ(第2のコンデンサ)
71 定電流回路
72 ドライブ用補助電源
73 時定数回路
74 過電流保護回路
100、100’、100’’、100’’’ 自励式フライバックコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線、二次巻線およびバイアス巻線を有するトランスと、
前記一次巻線に直列接続され、前記バイアス巻線に誘起された電圧によって駆動される主スイッチング素子と、
前記二次巻線からの出力をフィードバックして前記主スイッチング素子のスイッチングを制御する発振制御回路と、
前記主スイッチング素子に接続され、オンすることで前記主スイッチング素子をオフ状態からオン状態にするスイッチ回路と、
第1のコンデンサと第1の抵抗とからなる時定数回路を有し、前記主スイッチング素子がオフ状態のときに前記バイアス巻線からの出力電圧を用いて前記第1のコンデンサを閾値電圧以上に充電することで、前記スイッチ回路を強制的にオンさせる発振周波数低下防止回路と
を備え、
前記発振周波数低下防止回路は、前記主スイッチング素子がオフすると、前記第1のコンデンサを一定電流で充電する定電流回路をさらに有することを特徴とする自励式フライバックコンバータ。
【請求項2】
前記バイアス巻線の一端が、電流制限抵抗、直流阻止コンデンサを介して前記主スイッチング素子の制御端子に接続された請求項1記載の自励式フライバックコンバータであって、
前記バイアス巻線の一端および他端間に直列接続された第1のダイオードおよび第2のコンデンサからなるドライブ用補助電源をさらに備え、
前記スイッチ回路は、前記直流阻止コンデンサと前記主スイッチング素子の制御端子との接続点および前記ドライブ用補助電源の前記第1のダイオードと前記第2のコンデンサとの接続点間に接続され、
前記スイッチ回路がオンしたときに、前記第2のコンデンサに充電された電荷を前記スイッチ回路に送出し、前記主スイッチング素子の制御端子に該主スイッチング素子をオンさせるためのドライブ電流を流すことを特徴とする自励式フライバックコンバータ。
【請求項3】
前記定電流回路と前記バイアス巻線の他端との間に前記定電流回路による前記第1のコンデンサの充電動作を停止させる定電流回路動作停止手段をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の自励式フライバックコンバータ。
【請求項4】
カソードが前記バイアス巻線の他端にアノードが前記定電流回路に接続された第1のツェナーダイオードが前記定電流回路動作停止手段として機能し、
前記第1のツェナーダイオードが導通することで、前記定電流回路による前記第1のコンデンサの充電動作を停止させる請求項3記載の自励式フライバックコンバータ。
【請求項5】
前記定電流回路は、3つの端子を有し、前記バイアス巻線の一端に第1端が接続され、前記第1のツェナーダイオードのアノードに第2端が、並びに前記スイッチ回路の制御端子に第3端が接続され、
前記時定数回路は、前記第1のコンデンサと、前記第1の抵抗とが並列に接続された並列回路からなり、前記並列回路の一端が前記スイッチ回路の制御端子と前記定電流回路の第3端との接続点に、他端が前記ドライブ用補助電源の前記第1のダイオードと前記第2のコンデンサとの接続点に接続されたことを特徴とする請求項4に記載の自励式フライバックコンバータ。
【請求項6】
前記スイッチ回路は、PNPトランジスタを含み、
前記定電流回路は、NPNトランジスタからなる定電流制御トランジスタ、第2のツェナーダイオード、第2のダイオード並びに第2の抵抗および第3の抵抗から構成されており、
前記第1端となる前記定電流回路の前記第2のダイオードのカソードが前記バイアス巻線の一端と前記電流制限抵抗との接続点に、該第2のダイオードのアノードが前記第2の抵抗を介して前記定電流制御トランジスタのエミッタに、前記定電流制御トランジスタのコレクタが前記スイッチ回路のPNPトランジスタのベースに、該定電流制御トランジスタのベースが前記第2端となる前記第3の抵抗を介して前記第1のツェナーダイオードのアノードに、さらに、
前記第2のツェナーダイオードのアノードが前記定電流回路の前記第2のダイオードのアノードと前記第2の抵抗との接続点に、該第2のツェナーダイオードのカソードが前記定電流制御トランジスタのベースと前記第3の抵抗との接続点に各々接続されていることを特徴とする請求項3に記載の自励式フライバックコンバータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−147637(P2012−147637A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6087(P2011−6087)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】