説明

自動取引装置

【課題】複数種の媒体を用いて取引を行う現金自動支払機、現金自動預払機等の自動取引装置1において、スムーズな返却処理を行い、顧客の待ち時間を少なくする。
【解決手段】顧客の画像を取得するカメラ8aと、当該カメラ8aにより取得した画像に基づき顧客が見ている媒体排出口を検出する画像解析手段12と、当該画像解析部12にて解析した顧客が期待する媒体排出順を格納するメモリ部28を設け、すでに媒体排出順が格納されているときは、当該媒体排出順に基づいて順に媒体を排出するようにし、すでに媒体排出順が格納されていないときは、前記解析結果に基づいて順に媒体を排出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動支払機、現金自動預払機等の自動取引装置における媒体取扱い技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、従来の自動取引装置では、媒体排出時に、各媒体排出口近くのランプによる誘導や、所定の時間監視による取り忘れ注意の音声誘導、LCD等の表示部への画像表示による誘導などは行っているが、顧客が所望とする順序とは無関係に一定の順序で、各種媒体を排出し返却処理を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−30840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の自動取引装置では、すでに他の媒体が排出されていることに気づかず、顧客が期待している別の媒体排出口を見て、返却処理に時間を要してしまう場合があり、特に、来客の多い自動取引装置においては、次の顧客の待ち時間が長くなってしまうといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述の課題を解決するため次の構成を採用する。すなわち、複数種の媒体を用いて取引を行う自動取引装置において、顧客の画像を取得する画像取得手段と、当該画像取得手段により取得した画像に基づき顧客が見ている媒体排出口を検出する画像解析手段と、を設け、当該画像解析部にて解析した顧客が期待する媒体を順に排出するようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明の自動取引装置によれば、複数種の媒体を用いて取引を行う自動取引装置において、顧客の画像を取得する画像取得手段と、当該画像取得手段により取得した画像に基づき顧客が見ている媒体排出口を検出する画像解析手段と、を設け、当該画像解析部にて解析した顧客が期待する媒体を順に排出するようにしたので、媒体の受取りがスムーズに行われ、顧客の待ち時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の自動取引装置の概観斜視図である。
【図2】実施例1の自動取引装置の制御系ブロック図である。
【図3】実施例1の自動取引装置の動作フローチャートである。
【図4】実施例1の自動取引装置の動作説明図である。
【図5】実施例1の自動取引装置の動作説明図である。
【図6】実施例2の自動取引装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0009】
(構成)
実施例1の自動取引装置は、図1のような外観をしており、硬貨入出金口2、紙幣入出金口3、操作部4、通帳挿入口5、カード挿入口6を備えている。そして、自動取引装置の前面側に、カメラ8aが備えられている。
【0010】
硬貨挿入口2および紙幣入出金口3は、それぞれ硬貨および紙幣が投入されるとともに、これらが排出される開口部である。硬貨挿入口2および紙幣入出金口3には、それぞれシャッタが設けられ、シャッタが駆動されることにより硬貨挿入口2および紙幣入出金口3がそれぞれ開閉される。これらの奥部には、後述する硬貨および紙幣の入出金処理を行う硬貨処理部および紙幣処理部が設けられている。
【0011】
通帳挿入口5は、取引で使用される通帳がここから挿入され、取引が終了すると通帳が排出される部分で、その奥部には、後述する通帳処理部が設けられている。カード挿入口6は、カードが挿入または排出される部分で、その奥部には、後述するカード処理部が設けられている。
【0012】
操作部4は、取引に際して操作画面を表示するLCDと、取引選択、暗証番号や取引金額などを入力するタッチパネルが一体化されて構成される。
【0013】
そして、操作部4近傍にカメラ8aが配置されている。このカメラ8aは、顧客撮影用のカメラで、操作部4の顧客操作画面に顧客が顔を近づけた際に顧客の顔を撮影できる範囲にレンズの画角を調整したものとなっている。
【0014】
(制御系の構成)
実施例1の自動取引装置の制御系は、図2の制御系ブロック図に示したように、後述の各部の制御を行う主制御部20と、カメラ8aからの画像データを受信し画像を解析し後述の顔写真範囲に顧客の顔画像があるかどうかを解析し解析結果を主制御部20に送信する画像解析部12と、画像解析部12の解析結果の情報に基づいて媒体排出順を変えてガイダンス表示する操作部4が設けられている。
【0015】
さらに、実施例1の自動取引装置の制御系には、キャッシュカード等に記録された情報のリードライトを行うカード処理部21、操作ガイダンス等を音声出力する音声案内部22、通帳の磁気ストライプのリードライトおよび通帳への印字制御を行う通帳処理部23、取引明細を印字出力する明細票処理部24、硬貨の入出金制御を行う硬貨処理部25、紙幣の入出金制御を行う紙幣処理部26が設けられている。
【0016】
さらに、各部に電源を供給する電源部27、主制御部20の記憶部としてのメモリ部28、図示しないホストコンピュータとのインタフェイスを制御するインタフェイス部29が設けられている。
【0017】
(動作)
以上の構成により、実施例1の自動取引装置は以下のように動作する。この動作を図3の動作フローチャート、図4および図5の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0018】
まず、顧客が自動取引装置1に近づき、図示しない顧客センサにより顧客を検知すると、操作部4に取引選択画面を表示し、顧客は所望する取引を選択し(ステップS01)、各取引ごとの処理を実施する(ステップS02)。このとき、後述するnレジスタの初期化、すなわちn=0とし、選択された取引種別において排出することになる媒体排出回数Nxを、例えばあらかじめ取引種別と回数を対応付けて記憶したテーブルから求める。
【0019】
そして、今回の取引以前に、同じ顧客が同種の取引を行い、期待する媒体排出順としてすでに媒体排出順期待データが格納されているかどうかを確認する(ステップS03)。
【0020】
すでに媒体排出順期待データが格納されている場合は、当該媒体排出順期待データによる排出順序により、順次、媒体を排出し、取引を終了する(ステップS04)。
【0021】
一方、すでに媒体排出順期待データが格納されていないときは、nレジスタ値により選択された取引において行うべき媒体排出回数Nx回目かどうかを確認し、媒体排出回数Nx回目前、すなわちNxと一致しないときは(ステップS05)、図4に示したように、自動取引装置1の前面に配置したカメラ8aにより顧客を撮影し、撮影した画像データを画像解析部12へ送信し、図5のように顔写真範囲31のデータを切り出し、当該切り出したカメラ画像データの解析を行い、顧客がどの媒体の排出口を見ているかを解析し、当該順序を媒体排出順期待データとして記憶する(ステップS06)。この記憶は主制御部20に接続されたメモリ部28に記憶すればよい。
【0022】
そして、解析結果により、顧客が所望とする媒体を排出すると(ステップS07)、顧客がそれを受け取る(ステップS08)。
【0023】
なお、この顔の向きの解析方法としては、特開2007−179338号公報等に開示された技術を用いればよい。
【0024】
そして、nレジスタを1加算し、ステップS05に戻り、同様の処理を行い、選択された取引種別の媒体種類数Nx回行い、本取引を終了する。
【0025】
以上の動作により、例えば、カードを用いて出金取引を顧客が選択した場合で、当該顧客が紙幣を最初に取り、その後、カードを取ると所望していれば、最初に紙幣入出金口3を見つめ、その次にカード挿入口6を見つめることになるので、この順序が媒体排出順期待データとして記憶され、次回の同一顧客で同種の取引の場合に、この媒体排出順期待データが期待される媒体排出順序として用いられる。
【0026】
或いは、通帳を用いて硬貨の出金を行う場合では、最初に硬貨入手金口2を見つめ、その次に通帳挿入口5を見つめることになるので、この順序が媒体排出順期待データとして記憶され、次回の同一顧客で同種の取引の場合に、この媒体排出順期待データが期待される媒体排出順序として用いられる。
【0027】
なお、以上の説明では、操作部4へのガイダンス表示、音声案内部22による音声案内については説明しなかったが、ステップS07にて媒体を排出する際に、当該媒体を取るようにガイダンス順を変更する。
【0028】
また、以上の説明では、ステップS04にて前回の媒体排出順期待データに基づいて媒体を排出するように説明したが、媒体排出順期待データを用いることなく、都度、カメラ画像データの解析により顧客が期待する媒体を順に排出するようにしてもよい。
【0029】
(実施例1の効果)
以上詳細に述べたように実施例1の自動取引装置によれば、顧客を撮影するカメラと当該カメラにより取得した画像データに基づき顧客が次に排出される媒体として期待する媒体を抽出する画像解析部を設け、当該抽出した媒体を排出するようにしたので、媒体の受取りがスムーズに行われ、顧客の待ち時間を短くすることができる。
【実施例2】
【0030】
(構成)
実施例2の自動取引装置の構成および制御系の構成は、図1および図2の実施例1の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0031】
(動作)
以上の構成により、実施例2の自動取引装置は以下のように動作する。この動作を図6の動作フローチャート、前述の図4および図5の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0032】
まず、顧客が自動取引装置1に近づき、図示しない顧客センサにより顧客を検知すると、操作部4に取引選択画面を表示し、顧客は所望する取引を選択し(ステップS21)、各取引ごとの処理を開始する(ステップS22)。このとき、後述するnレジスタの初期化、すなわちn=0とし、選択された取引種別において排出することになる媒体排出回数Nxを例えばあらかじめ取引種別と回数を対応付けて記憶したテーブルから求める。
【0033】
そして、今回の取引以前に、同じ顧客が同種の取引を行い、期待する媒体排出順としてすでに媒体排出順期待データが格納されているかどうかを確認する(ステップS23)。
【0034】
すでに媒体排出順期待データが格納されている場合は、選択された取引にて行うべき媒体排出回数Nx回目かどうかをnレジスタ値により確認し、媒体排出回数Nx回目前、すなわちNxと一致しないときは(ステップS24)、図4に示したように、操作部4の付近に配置したカメラ8aにより顧客を撮影し、撮影した画像データを画像解析部12へ送信し、図5のように顔写真範囲31のデータを切り出し、当該切り出したカメラ画像データの解析を行い、顧客がどの排出口を見ているかの解析を行い、当該順序を媒体排出順期待データとして記憶する(ステップS25)。
【0035】
なお、この顔検出の方法としては、特開2007−179338号公報等に開示された技術を用いればよいことは実施例1と同様である。
【0036】
そして、以前の媒体排出順期待データに基づいて顧客が所望とする媒体を排出すると(ステップS26)、顧客がそれを受け取る(ステップS27)。
【0037】
そして、nレジスタを1加算し、ステップS24に戻り、同様の処理を行い、選択された取引種別の媒体種類数Nx回行った後、前記媒体排出順期待データを統計し新たな期待データとして更新し(ステップS29)、本取引を終了する。
【0038】
なお、前記統計の方法としては、顧客ごとに同種類の取引で、顧客が所望とした順位番号を媒体ごとに累積して格納しておき、当該累積された順位番号の低いものより順に排出するようにすればよい。或いは、媒体を見ている時間の長さも考慮し重み付けした順位番号を累積して格納するようにしてもよい。これらの格納は主制御部20に接続されたメモリ部28に格納すればよい。
【0039】
一方、すでに媒体排出順期待データが格納されていないときは、選択された取引にて行う媒体排出回数Nx回目かどうかをnレジスタ値により確認し、媒体排出回数Nx回目前、すなわちNxと一致しないときは(ステップS30)、図4に示したように、操作部4の付近に配置したカメラ8aにより顧客を撮影し、撮影した画像データを画像解析部12へ送信し、図5のように顔写真範囲31のデータを切り出し、当該切り出したカメラ画像データの解析を行い、顧客がどの排出口を見ているかの解析を行い、当該順序を媒体排出順期待データとして記憶する(ステップS31)。
【0040】
そして、解析結果により、顧客が所望とする媒体を排出すると(ステップS32)、顧客がそれを受け取る(ステップS33)。
【0041】
そして、nレジスタを1加算し(ステップS34)、ステップS30に戻り、同様の処理を行い、選択された取引種別の媒体種類数Nx回行った後、本取引を終了する。
【0042】
なお、以上の説明では、操作部4へのガイダンス表示、音声案内部22による音声案内については説明しなかったが、ステップS26、S32にて媒体を排出する際に、当該媒体を取るようにガイダンス順も変更する。
【0043】
(実施例2の効果)
以上詳細に述べたように実施例2の自動取引装置によれば、顧客の画像を取得する画像取得手段と、当該取得した画像に基づき顧客が排出を期待している媒体を解析する画像解析手段と、前記解析結果に基づき顧客ごとに期待する媒体排出順を統計して記憶する媒体排出順格納手段を設け、前記媒体排出順格納手段の格納情報に基づき、順に媒体を排出するようにしたので、実施例1の効果に加え、顧客が所望とする媒体排出順を統計化することができる。
【0044】
《その他の変形例》
以上の実施例の説明では、自動取引装置に備えたカメラにより顧客が見ている媒体排出口を検出するように説明したが、自動取引装置を多数設置してあるコーナの場合では、その設置コーナの天井等にカメラを設け、それぞれの自動取引装置に対して顧客を撮影し、いずれの媒体排出口を見ているかを検出して、排出する媒体の順序を決定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上述べたように、本発明は、複数種の媒体を用いて取引を行う現金自動支払機、現金自動預払機等の自動取引装置に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 自動取引装置
2 硬貨入出金口
3 カード入出口
4 操作部
5 通帳挿入口
6 カード挿入口
8a カメラ
12 画像解析部
20 主制御部
29 インタフェイス部
30 カメラの撮影範囲
31 顔検出範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の媒体を用いて取引を行う自動取引装置において、
顧客の画像を取得する画像取得手段と、
当該画像取得手段により取得した画像に基づき顧客が見ている媒体排出口を検出する画像解析手段と、を設け、
当該画像解析部にて解析した顧客が期待する媒体を順に排出するようにしたことを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記顧客が期待する媒体排出順を格納する媒体排出順期待情報記憶手段を設け、
すでに媒体排出順が格納されているときは、当該媒体排出順に基づき媒体を排出するようにしたことを特徴とする請求項1記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記媒体排出順期待情報記憶手段は、顧客ごとに期待順を統計して記憶するようにしたことを特徴とする請求項2記載の自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−267027(P2010−267027A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116978(P2009−116978)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】