説明

自動現像機、及び現像処理方法

【課題】 本発明の目的は、VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版を現像処理する自動現像機であって、現像処理が不均一となることを防止し、優れた網点再現性を達成しうるVioletCTP対応の自動現像機、及び該自動現像機を用いた現像処理方法を提供すること。
【解決手段】 VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版を、現像浴中を搬送しながら現像処理するVioletCTP対応の自動現像機であって、
前記現像浴中に前記平版印刷版を擦るための擦り用部材を備え、
該擦り用部材が前記平版印刷版の搬送方向に並べられた複数本のブラシ部材からなり、該ブラシ部材のブラシ毛径が0.05〜0.09mmであることを特徴とするVioletCTP対応の自動現像機、及び該自動現像機を用いた現像処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオフセット印刷版の作製に関するものであり、詳細には、VioletCTPにより露光された感光性平版印刷版の現像処理に用いられる自動現像機、及び該自動現像機を用いた現像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷物をよりきれいに仕上げたいとの要望に対し、印刷用網点の配列から画質の向上をはかるための取り組みは幅広く行われている。従来は、いわゆるAM(Amplitude Modulation)スクリーンと呼ばれる、均等な間隔で配列された点の大きさを変えることで濃淡を表示するスクリーンが使用されていたが、このAMスクリーンでは、モアレ、ロゼッタという網点配置の角度因子が影響した画質劣化が生じるという問題があった。このような画質劣化を解決する方法として、網点をランダムに配列することでモアレなどの発生を抑制したFM(Frequency Modulation)スクリーンが提案されている。FMスクリーンは、微小な網点を用いて、ランダムに配置された網点の密度を変化させて濃淡を表示するものであるが、一つ一つの網点(ドット)面積が非常に小さいため、印刷版作製時の網点再現性が不安定で、また、印刷時の管理も難しいため、その利点にも拘わらず、一部で利用されるにとどまっているのが現状である。
【0003】
一方、近年におけるレーザー、コンピューターの発展は目覚しく、印刷業界においても、コンピューター上で編集した印刷原稿をレーザー光で直接、印刷版に描画するCTP(Computer to Plate)という形で、技術革新が進められている。特に、青色LEDを利用したバイオレットレーザーの開発に伴って、描画レーザーとしてこのバイオレットレーザーを採用したVioletCTPが注目されている。
このCTPの普及に伴って、印刷版を製版する際の網点再現の安定性が飛躍的に向上し、従来のPS版では難しかったFMスクリーンを用いた平版印刷版の製版(作製)を比較的簡便に行うことができるようになり、これによりFMスクリーンがより広汎に使用されはじめている。
また、CTPの普及に伴って、従来に比べて高精細なAMスクリーン、例えば、240線以上の高精細なAMスクリーンが用いられる機会が増えてきている。
【0004】
ここで、光重合型の平版印刷版の製版に、上記のような、VioletCTPと、高精細なAMスクリーンやFMスクリーンと、を組み合わせて用いると、従来の175線程度のAMスクリーンを用いた場合には発生しなかったような、版上での平網のムラや、網点サイズの面内不均一などが発生し、網点再現性が低下するという問題を有していた。
これは、VioletCTPの光学設計の特徴として、バイオレットレーザービームにすそを有するため、版面において、画像部周囲の非画像部に所望されない不完全に硬化した個所が生じてしまうために発生する問題である。特に、VioletCTPに、高精細なAMスクリーンやFMスクリーンを適用すると、網点周囲長が長くなることから、ビームのすそによるこのような影響を受けやすくなる。
このように非画像部に発生した不完全に硬化した個所を除去する方法として、一般に、現像浴中を搬送中の平版印刷版を、現像ブラシ等の擦り用部材を用いて擦る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この擦り用部材による版面の擦り力を強くし、除去性を高めただけでは、ブラシの当り具合に不均一性が生じ、かえって平網のムラや、網点サイズの面内での不均一性が発生してしまうという懸念があった。
【特許文献1】特開2003−107728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の目的は、VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版を現像処理する自動現像機であって、現像処理が不均一となることを防止し、優れた網点再現性を達成しうるVioletCTP対応の自動現像機、及び該自動現像機を用いた現像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、現像浴内に設置される擦り用部材に特定のブラシ部材を用いることにより、現像処理の不均一性を防止し、優れた網点再現性を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のVioletCTP対応の自動現像機は、VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版を、現像浴中を搬送しながら現像処理するVioletCTP対応の自動現像機であって、
前記現像浴中に前記平版印刷版を擦るための擦り用部材を備え、
該擦り用部材が前記平版印刷版の搬送方向に並べられた複数本のブラシ部材からなり、該ブラシ部材のブラシ毛径が0.05〜0.09mmであることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のVioletCTP対応の現像処理方法は、VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版を、現像浴中を搬送しながら現像処理する自動現像機を用いたVioletCTP対応の現像処理方法であって、
前記自動現像機が、前記現像浴中に、ブラシ毛径が0.05〜0.09mmであるブラシ部材を前記平版印刷版の搬送方向に複数本並べてなる擦り用部材を備え、該擦り用部材により前記平版印刷版を擦る工程を有することを特徴とする。
【0008】
本発明において、VioletCTPによる露光には、FMスクリーン又は240線を越えるAMスクリーンが適用されることが好ましい態様である。
【0009】
本発明によれば、VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版に対する現像処理において、現像浴への浸漬に加え、上記範囲のブラシ毛径を有する複数本のブラシ部材による擦りを行うことで、画像部に影響を与えることなく、非画像部に発生した不完全に硬化した個所を除去することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版を現像処理する自動現像機であって、現像処理が不均一となることを防止し、優れた網点再現性を達成しうるVioletCTP対応の自動現像機、及び該自動現像機を用いた現像処理方法を提供することができる。
また、上記の自動現像機及び現像処理方法は、特に、VioletCTPと、高精細なAMスクリーンやFMスクリーンと、を組み合わせて露光した感光性平版印刷版に適用した場合に、より顕著な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の自動現像機及び現像処理方法を詳細に説明する。
本発明のVioletCTP対応の自動現像機は、VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版を、現像浴中を搬送しながら現像処理するVioletCTP対応の自動現像機であって、
前記現像浴中に前記平版印刷版を擦るための擦り用部材を備え、
該擦り用部材が前記平版印刷版の搬送方向に並べられた複数本のブラシ部材からなり、該ブラシ部材のブラシ毛径が0.05〜0.09mmであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のVioletCTP対応の現像処理方法は、VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版を、現像浴中を搬送しながら現像処理する自動現像機を用いたVioletCTP対応の現像処理方法であって、
前記自動現像機が、前記現像浴中に、ブラシ毛径が0.05〜0.09mmであるブラシ部材を前記平版印刷版の搬送方向に複数本並べてなる擦り用部材を備え、該擦り用部材により前記平版印刷版を擦る工程を有することを特徴とする。
つまり、本発明のVioletCTP対応の現像処理方法は、上述の本発明の自動現像機を用いて行うことを特徴とする。このため、以下にまとめて説明する。
【0013】
本発明のVioletCTP対応の自動現像機(以下、単に「自動現像機」と称する場合がある。)について、図1に示される例示的一態様を示して説明する。図1は、本発明のVioletCTP対応の自動現像機100の例示的一態様を示す概略図である。
この態様では、本発明における擦り用部材(ブラシ部材)は、ブラシローラ142a及び142bに相当するものである。
なお、図1において示される平版印刷版102は、光重合型の平版印刷版であって、支持体上に、光重合型の感光層と、オーバーコート層と、がこの順に設けられてなる構成を有するものである。
【0014】
図1に示すように、平版印刷版102は、VioletCTPによる露光処理が終了した後、図1の左端に位置する前加熱部110へ至るようになっている。
【0015】
前加熱部110では、平版印刷版102を水平に保持して搬送するための2個の搬送ローラ対112、114が配設され、その間にヒータユニット116が設けられている。このヒータユニット116に対向して平版印刷版102の搬送路下側にはガイド板118が設けられ、ヒータユニット116のヒータ面と平版印刷版102との距離を一定に保持するようになっている。
このヒータユニット116による加熱によって、平版印刷版102は記録層の露光部(画像部)の重合度が増し、印刷に必要な耐刷性を向上させている。
【0016】
前加熱部110の下流側には、前水洗部120が設けられており、前加熱が終了した平版印刷版102が水平状態で送り込まれるようになっている。
前水洗部120には、平版印刷版102を水平に保持して搬送するための2個の搬送ローラ対122、124が配設され、その間の搬送路よりも上側にブラシローラ126が配設されている。また、このブラシローラ126よりも若干上流側には、スプレーパイプ128が配置されており、搬送路方向に向けて水が吐出されるようになっている。ここで、スプレーパイプ128から水が吐出され、ブラシローラ126が回転(図1の反時計方向回転)している状態で平版印刷版102が搬送されてくると、平版印刷版102の最上層であるオーバーコート層が湿潤し、ブラシローラ116によって除去される。
すなわち、平版印刷版102は、このオーバーコート層が除去された状態で、次工程の現像部130へ至ることになる。
【0017】
現像部130には、現像液が貯留された現像浴132が設けられており、この現像液に平版印刷版102を浸漬することで、記録層の未露光部(非画像部)を膨潤させ、該未露光部を取り除くようになっている。
現像部130における平版印刷版102の挿入口及び排出口のそれぞれの近傍には、搬送ローラ対134、136が設けられており、搬送ローラ対134は、平版印刷版102を現像浴132へ案内し、搬送ローラ対136は、平版印刷版102を次工程の後水洗部138へ案内する役目を有している。
【0018】
現像浴132には、ガイド板140が設けられ平版印刷版102は、このガイド板140に案内され、大きな円弧を描いて搬送される。この現像浴132には、搬送路よりも上側にブラシローラ142a及び142bが設けられている。また、このブラシローラ142aに対向して搬送路よりも下側には一対の受けローラ144a、146aが、また、ブラシローラ142bに対向して搬送路よりも下側には一対の受けローラ144b、146bが配設されている。これにより、平版印刷版102は、ブラシローラ142aと受けローラ144a、146aとの間と、ブラシローラ142bと受けローラ144b、146bとの間と、挟持されながら搬送される。
このため、平版印刷版102の光重合層には、所定の圧力でブラシローラ142a及び142bが当たっており、このブラシローラ142a及び142bの回転によって光重合層の未露光部(非画像部)が除去される。
また、非画像部に発生した不完全に硬化した個所も、ブラシローラ142a及び142bのブラッシングによって確実に除去される。
【0019】
後水洗部138には、平版印刷版102を水平に保持して搬送するための2個の搬送ローラ対148、150が配設され、その間の搬送路上下方向にそれぞれスプレーパイプ152、154が配設されている。このスプレーパイプ152、154からは水洗水が吐出するようになっている。
ここで、平版印刷版102が現像部130から排出され、後水洗部138へ至ると、スプレーパイプ152、154から水が吐出され、平版印刷版102の表裏面が洗浄される。洗浄された平版印刷版102は、次工程のフィニッシャー部156へと送られる。
【0020】
フィニッシャー部156には、平版印刷版102を水平に保持して搬送するための2個の搬送ローラ対158、160が配設され、その間の搬送路の上側にはスプレーパイプ162が配設されている。このスプレーパイプ162からはフィニッシャー液(不感脂化液)が吐出するようになっている。
ここで、平版印刷版102がフィニッシャー部156を水平搬送されている状態で、スプレーパイプ162からフィニッシャー液が吐出され、画像形成面をコーティングする。
【0021】
以上が、平版印刷版102の現像処理の工程であり、これらの工程が終了した平版印刷版102は、乾燥部(図示省略)へと搬送され、全ての処理が完了する。
【0022】
ここで、自動現像機100では、本発明における擦り用部材(ブラシ部材)としてブラシローラ142a及び142bが適用されている。以下、このブラシローラ142a及び142bの詳細な構成について説明する。なお、本発明におけるブラシ部材として好適なものは、基材の周囲全体に毛材が存在するようなブラシ部材であってもよいし、基材の周囲の一部に毛材が存在するようなブラシ部材であってもよい。
以下、本発明におけるブラシ部材として、円筒形の基材の周囲全体に毛材が存在するようなブラシローラの形態を例にとってより詳細に説明するが、本発明におけるブラシ部材は、このようなブラシローラ以外の形態であってもよい。
【0023】
本発明におけるブラシ部材は、ブラシ毛径が0.05〜0.09mmの範囲であることが必須である。ここで、「ブラシ毛径」とは、ブラシに用いられている毛の直径を指す。
また、このブラシ毛径は、0.07〜0.09mmの範囲であることが好ましい。
このブラシ毛径が、0.05mmよりも細い場合、非画像部に発生した不完全に硬化した個所の除去性が低下する。また、ブラシ毛径が、0.09mmよりも太い場合も、版面を擦る力が強すぎて、露光部(画像部)にも影響を及ぼし、平網のムラが発生する。
【0024】
このブラシ部材を構成する毛材としては、天然繊維、人造繊維材、金属繊維などが用いられる。具体的には、以下のような材質の毛材が用いられる。
・天然繊維:植物性繊維、動物性繊維
・人造繊維:ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6・10、ナイロン11等のポリアミド系;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系;ポリアクリロントリル、ポリアクリル酸アルキル等のポリアクリル系;ポリプロピレン;ポリスチレン等
・金属繊維:ステンレススチール、真鍮等
【0025】
また、本発明におけるブラシ部材の毛材の長さ(ブラシ毛長)は、特に限定されないが、通常、3mm〜50mmの範囲のものが用いられる。毛長が3mmより短いと、平版印刷版へのあたりが不均一になって、版面にこすり傷をつけやすくなる場合がある。また、毛長が50mmより長い場合には、長くすることによる現像処理上のメリットがなく、経済的に不利である。
なお、ここで、「ブラシ毛長」とは、図2に示される如く、基材の表面から突出した毛材の長さLを指す。
【0026】
また、本発明におけるブラシ部材の毛材の密度、すなわち、ブラシ部材の植毛密度に関しては、用いる毛材の太さ(毛径)に応じて変化するが、一般的には、50本〜20万本/cm2の範囲であることが好ましく、100本〜5万本/cm2の範囲であることが更に好ましい。毛材の密度が50本/cm2未満であると、擦り部材としての効果が不十分となる場合がある。また、毛材の密度の上限値はブラシ毛径によって決定されるものであり、例えば、毛材の密度が20万本/cm2より大きくとなる、ブラシ毛径の選択肢が狭くなる。
【0027】
更に、本発明におけるブラシ部材がブラシローラである場合、そのローラ径としては、1〜12cmの範囲であることが好ましく、2〜7cmの範囲であることが更に好ましい。このローラ径とは、ローラ状の基材の直径を示す。ローラ径が1cm未満であると、擦りが不均一となりやすい。また、ローラ径が12cmより大きいと、ローラの回転用モータの負荷の点で不利である。
【0028】
本発明の自動現像機においては、上記のようなブラシ部材が、平版印刷版の搬送方向に複数本並んでいることを必須する。このようにブラシ部材を複数本することで、個々のブラシ部材の擦り力を小さくしても、非画像部に発生した不完全に硬化した個所の除去性が高めることができ、網点再現性を向上させること可能となる。
なお、本発明においては、現像処理効率及び装置設計の観点から、図1に示すように、2本のブラシ部材が並べられていることが好ましい態様である。
このブラシ部材が1本であると、ブラシ毛径が0.05〜0.09mmの範囲にあっても、非画像部に発生した不完全に硬化した個所の除去が不十分となり、平網のムラが生じやすい。
また、これらのブラシ部材は、それぞれ同じものを用いてもよいし、異なるものを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
次に、本発明において用いられるVioletCTPについて説明する。VioletCTPとは、青色LEDを利用したバイオレットレーザーの開発にともなって、描画レーザーにバイオレットレーザーを採用したタイプのCTPである。
ここで、バイオレットレーザーは、波長390〜420nmのレーザーであり、DVDなどの民生用機器として大量生産されているので、低価格で信頼性が高いという。
VioletCTPの特徴は、
1.サーマルCTPに比べ内面ドラム方式が作りやすく高速化しやすいこと
2.レーザーなどイメージングユニットが安く、内面ドラムのほうがモーターなども小型化できコストも安くなること
3.また、サーマルに比べ発熱量が少なく、温度変化による版の伸び(見当精度)の問題も少ないこと
4.黄色の安全光のもとで作業が可能であること
などが挙げられる。
【0030】
このようなVioletCTPとしては、富士写真フイルム(株)製Vx9600CTP,Vx6000CTP、ECRM社製MAKO4等が挙げられる。
【0031】
また、このようなVioletCTPと組み合わせて、網点の状態を制御して階調表現を行う、各スクリーンについて説明する。
従来より用いられている、いわゆるAMスクリーンは、ドット(網点)のサイズを変更して諧調表現を行うものであるが、同じサイズの網点が均一な間隔で配置されているため、多色印刷などで複数の網点画像を重ね合わせると、もとの原稿画像との干渉により、モアレといわれるムラを生じたり、ロゼッタと呼ばれる六角形上の模様を生じたりしてしまう問題があった。
また、近年、よりきれいな印刷物の要請が高まり、従来よりも高精細な印刷物を作成する方法が求められていた。
【0032】
より高精細な印刷物を得る方法の1つとしては、より高線数(より細かな)網点を用いる方法がある。例えば、240線や300線のAMスクリーンを用いることで、よりきれいな印刷物を得ることができる。
また、もう1つの方法としては、いわゆるFMスクリーンを用いる方法である。FMスクリーンは、網点サイズを変化させるのではなく、網点の配置間隔を変化させることで諧調表現を行うものであるが、網配置をランダムに行うことで、角度の影響を排除しており、先述のモアレ、ロゼッタなどの問題は理論的に発生しない。更に、微細な網点を用いることで、高精細な印刷物を得ることができる。
【0033】
近年では、コンピューターの進歩の結果、従来障害とされていたFMスクリーンにおける網配置パターンの演算も容易に行えるようになったため、網の配列に関しても詳細な計算による最適化がはかられ、使いやすさの向上が達成されている。
FMスクリーンは、市販品としても入手容易であり、例えば、富士写真フイルム(株)製「TAFFETA」、クレオ(Creo)(株)製「Staccato」、ハイデルベルグ(株)製「ダイアモンドスクリーン」、同「サテンスクリーン」、大日本スクリーン(株)製「ランドット」、同「ランドットX」(いずれも商品名)等が知られている。
【0034】
本発明の方法においては、高品質画像の形成性の観点から、用いられるFMスクリーンのドット径は50μm以下のものを用いた場合に本発明の効果が著しく、より好ましくは、20〜30μmの範囲である。
【0035】
上記のような240線以上の高精細なAMスクリーンやFMスクリーンは、主に各々のメーカーのVioletCTPセッターとの組み合わせて用いることができる。この組み合わせにすることにより、平版印刷版を作成する際の網点再現の安定性が飛躍的に向上したため、高精細画像を形成しうる印刷用原版の作成が比較的簡便に行うことができるという利点を有する。
【0036】
<光重合型の平版印刷版>
次に、本発明において用いられる光重合型の平版印刷版について説明する。
本発明では、上記VioletCTP対応による露光により画像形成が可能である光重合型の平版印刷版であれば、制限なく用いることができる。その光重合型の平版印刷版としては、例えば、いわゆる、フォトポリマー型の平版印刷版が挙げられる。
以下、本発明に好適なフォトポリマー型の平版印刷版について簡単に説明する。
【0037】
フォトポリマー型の平版印刷版は、アルミニウム板に代表される親水性支持体上に、少なくとも、バイオレットレーザーに感光する感光層を有してなる。
この感光層を構成する光重合性組成物は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
このような光重合性組成物は、バイオレットレーザーの照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用によりエチレン性不飽和結合含有化合物が付加重合し、硬化するものである。
【0038】
このエチレン性不飽和結合含有化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体及びオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。またウレタン系付加重合性化合物も好適である。
【0039】
また、光重合性組成物に含有される光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、種々の光重合開始剤、又は2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができ、例えば、特開2001-22079号公報の段落番号[0021]〜[0023]で示されている開始系を用いることが好ましい。
【0040】
更に、光重合性組成物に含有される高分子結合剤は、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、感光層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性又は膨潤性である有機高分子重合体が使用される。このような高分子結合剤としては、特開2001-22079号公報の段落番号[0036]〜[0063]で示されているものが有用である。
【0041】
その他、光重合性組成物には、特開2001-22079号公報の段落番号[0079]〜[0088]で示されている添加剤(例えば、塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
【0042】
また、上記感光層上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性のオーバーコート層を設けることが好ましい。オーバーコート層に含有される重合体としては、ポリビニルアルコールその共重合体が挙げられる。
更に、感光層と親水性支持体との間には、特開2001-228608号公報の段落番号[0124]〜[0165]で示されているような中間層若しくは接着層を設けることも好ましい態様である。
【0043】
上記のような光重合型の平版印刷版を現像処理する際に用いられる現像液又は補充液としては、従来公知のアルカリ水溶液を適宜選択して使用できる。アルカリ水溶液に使用しうるアルカリ剤としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウムなどの無機アルカリ塩やモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンイミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明の自動現像機により現像処理された後の平版印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理され、印刷胴にセットして印刷に用いられる。
【0045】
本発明によれば、VioletCTPにより露光された平版印刷版を、上述の本発明の自動現像機により現像処理することで、VioletCTPに起因して発生する非画像部における不完全に硬化した個所を、画像部に影響を及ぼすことなく除去することができる。その結果、本発明によれば、網点再現性の向上させることができる。
特に、VioletCTPと240線以上の高精細なAMスクリーンやFMスクリーンとを組み合わせた場合に、上記のような本発明の効果は顕著に表れるものである。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
(実施例1〜2、比較例1〜3)
光重合型の平版印刷版として、富士写真フイルム社製PV−Nを用い、これを以下のようなVioletCTPにより60%全面平網を露光した。その後、下記の自動現像機にて現像処理した。
【0047】
[VioletCTP]
富士写真フイルム(株)製CTPセッター LuxelV9600CTP
・使用スクリーン:富士写真フイルム(株)製FMスクリーン TAFFETA20
[自動現像機]
G&J(株)製RaptorFLV85の改造機(下記表1に記載の、ブラシ毛径、ブラシローラ径、ブラシ毛長、及び毛材の密度を有するブラシローラを設置したもの)
・現像液/補充液:富士写真フイルム(株)製現像液DV−2/補充液DV−2R
・フィニッシャー液:富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFP−2W
【0048】
現像処理後の平版印刷版における平網のムラを目視にて評価した。
また、現像処理後の平版印刷版における網点サイズの面内差を、GRETAGMACBETH社製iCPlateIIを用いて測定した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に明らかなように、本発明の自動現像機により現像処理された平版印刷版は、平網のムラが若干見られたが実用上問題のないレベルであり、また、網点サイズの面内差については良好であることが判明した。これにより、実施例1及び実施例2では、網点再現性に優れることが分かった。
一方、比較例のように、ブラシ部材が本発明の範囲外である自動現像機を用いた場合、平網のムラ及び/又は網点サイズの面内差が悪化することが分かった。
【0051】
(実施例3、比較例4〜6)
光重合型の平版印刷版として、富士写真フイルム社製PV−Nを用い、これを以下のようなVioletCTPにより60%全面平網を露光した。その後、下記の自動現像機にて現像処理した。
【0052】
[VioletCTP]
富士写真フイルム(株)製CTPセッター LuxelV9600CTP
・使用スクリーン:富士写真フイルム(株)製CoRe300
[自動現像機]
G&J(株)製RaptorFLV85の改造機(下記表1のような、ブラシ毛径、ブラシローラ径、ブラシ毛長、及び毛材の密度を有するブラシローラを設置したもの)
・現像液/補充液:富士写真フイルム(株)製現像液DV−2/補充液DV−2R
・フィニッシャー液:富士写真フイルム(株)製フィニッシャーFP−2W
【0053】
現像処理後の平版印刷版における平網のムラ及び網点サイズの面内差について、実施例1と同様の方法で評価した。これらの結果を下記表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に明らかなように、本発明の自動現像機により現像処理された平版印刷版は、平網のムラと網点サイズの面内差との両方に優れることが判明し、網点再現性に優れることが分かった。
一方、比較例のように、ブラシ部材が本発明の範囲外である自動現像機を用いた場合、平網のムラ及び/又は網点サイズの面内差が悪化することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のVioletCTP対応の自動現像機の例示的一態様を示す概略図である。
【図2】ブラシ毛長を特定するためのブラシ部材の断面図である。
【符号の説明】
【0057】
100 自動現像機
102 平版印刷版
110 前加熱部
112、114 搬送ローラ対
116 ヒータユニット
118 ガイド板
120 前水洗部
122 搬送ローラ対
126 ブラシローラ
128 スプレーパイプ
130 現像部
132 現像浴
134、136 搬送ローラ対
138 後水洗部
140 ガイド板
142a、142b ブラシローラ(擦り用部材、ブラシ部材)
144a、144b、146a、146b 受けローラ
156 フィニッシャー部
148、150 搬送ローラ対
152 スプレーパイプ
156 フィニッシャー部
158、160 搬送ローラ対
162 スプレーパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版を、現像浴中を搬送しながら現像処理するVioletCTP対応の自動現像機であって、
前記現像浴中に前記平版印刷版を擦るための擦り用部材を備え、
該擦り用部材が前記平版印刷版の搬送方向に並べられた複数本のブラシ部材からなり、該ブラシ部材のブラシ毛径が0.05〜0.09mmであることを特徴とするVioletCTP対応の自動現像機。
【請求項2】
VioletCTPにより露光された光重合型の平版印刷版を、現像浴中を搬送しながら現像処理する自動現像機を用いたVioletCTP対応の現像処理方法であって、
前記自動現像機が、前記現像浴中に、ブラシ毛径が0.05〜0.09mmであるブラシ部材を前記平版印刷版の搬送方向に複数本並べてなる擦り用部材を備え、該擦り用部材により前記平版印刷版を擦る工程を有することを特徴とするVioletCTP対応の現像処理方法。

【図1】
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【図2】
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