説明

自動車用スライドドア構造

【課題】スライドドアのがたつきを抑制することができる自動車用スライドドア構造を提供する。
【解決手段】スライドドアに取り付けられるドア側ブラケット2と、ローラ3を支持するローラ側ブラケット5と、これらのドア側ブラケット2およびローラ側ブラケット5を鍔付きブッシュ6を介して連結するピン7とを有し、ドア側ブラケット2に、鍔付きブッシュ6の鍔部6aとドア側ブラケット2との間に差し込み可能な傾斜面23を有する調整板8を設け、ドア側ブラケット2とローラ側ブラケット5とを鍔付きブッシュ6を介してピン7で連結し、調整板8を移動させて傾斜面23を鍔付きブッシュ6の鍔部6aとドア側ブラケット2との間に差し込んで調整板8の位置調整を行なうことで、ローラ側ブラケット5とドア側ブラケット2との軸方向の隙間をなくすようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用スライドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用スライドドア構造として、ガイドレールに移動可能に嵌合するローラを回転可能に設けたローラベースが、スライドドアに設けられたベースプレートに取り付けられた構造が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
この特許文献1では、ローラを備えたブラケットとローラベースとをピンを介して回転可能に取り付けることで、ローラがローラベースに取り付けられている。
【特許文献1】特開2006−2383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の構造では、ローラ側のブラケットとローラベースとをピンを介して回転可能に取り付ける際に、ローラ側のブラケットとローラベースとの間に隙間が生じるおそれがあった。そして、かかる隙間が生じると、ローラ側のブラケットががたつき、ひいては、スライドドアががたついてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、自動車用スライドドアのがたつきを抑制することのできる自動車用スライドドア構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にあっては、ガイドレールに沿って移動可能なスライドドアに取り付けられるドア側ブラケットと、前記ガイドレールに係合するローラを回転可能に支持するローラ側ブラケットと、これらドア側ブラケットおよびローラ側ブラケットを鍔付きブッシュを介して連結するピンと、を有し、前記ドア側ブラケットおよび前記ローラ側ブラケットが回動可能かつ位置調整可能に連結された自動車用スライドドア構造であって、前記ドア側ブラケットに、調整板を位置調整可能に取り付けるとともに、この調整板に、前記鍔付きブッシュの鍔部と前記ドア側ブラケットとの間に差し込み可能な傾斜面を形成したことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明にあっては、請求項1に係る発明において、前記鍔部に、前記傾斜面に合致する面取り部を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、鍔付きブッシュを介してピンによりドア側ブラケットおよびローラ側ブラケットとを連結した後、ドア側ブラケットに設けた調整板を移動させて傾斜面を鍔付きブッシュの鍔部とドア側ブラケットとの間に差し込み、鍔付きブッシュの鍔部とドア側ブラケットとの軸方向の隙間がなくなるように調整板の位置調整を行なう。これにより、ローラ側ブラケットとドア側ブラケットとの軸方向の隙間がなくなりローラ側ブラケットががたつくことを防止できるので、スライドドアのがたつきを抑制することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、調整板の傾斜面に合致する面取り部が鍔付きブッシュの鍔部に形成されているので、調整板の傾斜面を鍔付きブッシュの鍔部に円滑に係合させることができ、これにより、調整板の傾斜面を鍔付きブッシュの鍔部とドア側ブラケットとの間に容易に差し込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態にかかる自動車用スライドドア構造を示す断面図、図2は、本実施形態の要部断面を示す斜視図、図3は本実施形態に設けられる調整板および鍔付きブッシュの部分を示す平面図である。
【0012】
本実施形態にかかる自動車用スライドドア構造は、図1に示すように、ガイドレール1に沿って移動可能なスライドドア(図示せず)の前側下端に取り付けられるドア側ブラケット2と、ガイドレール1に係合するローラ3を支持軸4を介して回転可能に支持するローラ側ブラケット5と、これらドア側ブラケット2およびローラ側ブラケット5を円筒状の鍔付きブッシュ6を介して連結するピン7と、ドア側ブラケット2の上部に位置調整可能に取り付けられる調整板8と、を有している。上記の支持軸4の軸線は水平方向に延び、一方、鍔付きブッシュ6およびピン7の軸線はそれぞれ上下方向に延びている。
【0013】
ドア側ブラケット2の先端には、車幅方向(図1および図3の左右方向)へ延びて鍔付きブッシュ6が挿通されるU溝9が形成されており、このU溝9の一端が車体側(図1および図3の左側)に開放されている。ドア側ブラケット2の下部にはボルト10を介してリンク11が車幅方向へ移動可能に締結されており、このリンク11の先端に、鍔付きブッシュ6に嵌め込まれる円孔12が形成され、リンク11の後端に、車幅方向に延びてボルト10が挿通される長孔13がドア側ブラケット2に形成されている。例えば、図示しない車体とスライドドアとの距離を調整する場合には、ボルト10を緩めた状態で、ドア側ブラケット2に対してリンク11を車幅方向へ所定位置まで移動させた後、ボルト10を再び閉め込むようになっている。
【0014】
ローラ側ブラケット5は、コの字形状の断面を有し、ガイドレール1の方向に突出する支持軸4が設けられる基板部14と、この基板部14よりスライドドアの方向にそれぞれ折り曲げられ、鍔付きブッシュ6を挟む上下一対の折り曲げ部15,16とから一体に形成されており、これらの折り曲げ部15,16にはそれぞれピン7が挿通される円孔17,18が設けられている。
【0015】
調整板8は、先端に鍔付きブッシュ6が遊嵌される長孔状の大径孔19が形成され、これよりスライドドア側にボルト20が遊嵌される小径孔21が形成されている。これらの大径孔19および小径孔21間には、上方に隆起する隆起部22が設けられ、この隆起部22の鍔付きブッシュ6を臨む側には、鍔付きブッシュ6の鍔部6aとドア側ブラケット2との間に差し込み可能な傾斜面23が設けられており、その先端は直線状に形成されている。また、調整板8の後端には、上方へ突出する折り曲げ部24が設けられている。
【0016】
鍔付きブッシュ6の上端は、ローラ側ブラケット5の折り曲げ部15と対面する鍔部6aを有し、この鍔部6aに、前記傾斜面23に合致する面取り部25が形成されている。
【0017】
この実施形態にあっては、ドア側ブラケット2とローラ側ブラケット5とを連結する場合、ドア側ブラケット2上に調整板8を設けて、ローラ側ブラケット5の折り曲げ部15,16間に鍔付きブッシュ6を介設した後、ピン7をローラ側ブラケット5の円孔17,18および鍔付きブッシュ6に挿通しその下端をカシメ止めする。次いで、ドア側ブラケット2の上部に設けた調整板8の折り曲げ部24を把持して調整板8を移動させて、隆起部22の傾斜面23を鍔付きブッシュ6の鍔部6aとドア側ブラケット2との間に差し込んで鍔部6aの面取り部25に合致させることにより、鍔付きブッシュ6の鍔部6aとドア側ブラケット2との軸方向の隙間がなくなるように調整板8の位置調整を行なう。このようにしてドア側ブラケット2とローラ側ブラケット5とを連結して調整板8の位置調整を行なった後、ボルト20により調整板8をドア側ブラケット2に締結する。
【0018】
これにより、ローラ側ブラケット5は、鍔付きブッシュ6を介してピン7でドア側ブラケット2に連結され、ピン7を中心として水平面内で回動可能である。このとき、スライドドアはピン7にて揺動可能に支持されるととも、スライドドアの移動方向(車両前後方向)の動きがドア側ブラケット2のU溝9にて拘束されている。また、スライドドアの車幅方向への荷重は、リンク11により支持され、下方への荷重は、ドア側ブラケット2およびリンク11により支持されている。
【0019】
このように構成した実施形態では、調整板8の傾斜面23を鍔付きブッシュ6の鍔部6aとドア側ブラケット2との間に差し込むことにより、鍔付きブッシュ6の鍔部6aとドア側ブラケット2との軸方向の隙間がなくなるので、スライドドアのがたつきを抑制することができる。また、前記鍔部6aには、前記傾斜面23に合致する面取り部25が形成されているので、調整板8の傾斜面23を鍔付きブッシュ6の鍔部6aに円滑に係合させることができ、調整板8の傾斜面23を鍔付きブッシュ6の鍔部6aとドア側ブラケット2との間に容易に差し込むことができる。さらに、折り曲げ部24を把持して調整板8を移動させることができるので、この点でも調整板8の傾斜面23を鍔付きブッシュ6の鍔部6aとドア側ブラケット2との間に容易に差し込むことができる。
【0020】
以上、本発明にかかる自動車用スライドドア構造の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限ることなく要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用することができる。
【0021】
例えば、上記実施形態にあっては、ドア側ブラケットの先端に、車幅方向へ延びて一端が車体側に開放されるU溝を形成した場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、U溝の代わりに、ドア側ブラケットの先端に車幅方向へ延びる長孔を形成してもよい。さらに、鍔付きブッシュに鍔部を一体に設けた場合を例示したが、ブッシュおよび鍔部(フランジ部)を別体に設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態にかかる自動車用スライドドア構造を示す断面図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる要部断面を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施形態にかかる調整板および鍔付きブッシュの部分を示す平面図。
【符号の説明】
【0023】
1 ガイドレール
2 ドア側ブラケット
3 ローラ
5 ローラ側ブラケット
6 鍔付きブッシュ
6a 鍔部
7 ピン
8 調整板
23 傾斜面
25 面取り部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールに沿って移動可能なスライドドアに取り付けられるドア側ブラケットと、前記ガイドレールに係合するローラを回転可能に支持するローラ側ブラケットと、これらドア側ブラケットおよびローラ側ブラケットを鍔付きブッシュを介して連結するピンと、を有し、前記ドア側ブラケットおよび前記ローラ側ブラケットが回動可能かつ位置調整可能に連結された自動車用スライドドア構造であって、
前記ドア側ブラケットに、調整板を位置調整可能に取り付けるとともに、この調整板に、前記鍔付きブッシュの鍔部と前記ドア側ブラケットとの間に差し込み可能な傾斜面を形成したことを特徴とする自動車用スライドドア構造。
【請求項2】
前記鍔付きブッシュの鍔部に、前記傾斜面に合致する面取り部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用スライドドア構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−56130(P2008−56130A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236303(P2006−236303)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】