説明

自動車用内装ボード及びその製造方法

【課題】廃棄物処理に十分対処でき、製造が容易化され、乗員が接触時に違和感を受けることがない自動車用内装ボードを提供する。
【解決手段】 竹繊維より得られた第1の繊維と、綿または麻繊維の第2の繊維と、生分解性樹脂との複合材料よりなる基体層2と、基体層2の少なくとも片面に積層されるPET樹脂繊維または天然由来繊維で形成される不織布または織布の表面層3とを有する自動車用内装ボードであって、第1の繊維と第2の繊維とPBS樹脂繊維の各wt%比が、第1の繊維:第2の繊維:生分解性樹脂=30〜70:10〜60:20〜60である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用内装ボード、特に、竹繊維、天然由来繊維、生分解性繊維とを複合した自動車用内装ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の保全、特に廃棄物処理対策等から、生分解性の物品が注目されている。生分解性の物品は、物品自体の利便性と、廃棄後は細菌、バクテリア等の微生物の作用で水と二酸化炭素等に分解する環境適合性の両特性を有するものであり、自動車用内装ボード、例えば天井基材においても種々の商品開発が盛んに試みられている。
【0003】
ところで、自動車用内装ボードは地球環境の保全、特に廃棄物処理に十分対処でき、製造が容易化され、乗員の接触時に違和感を受けることがなく、特に、天井基材であれば垂れ下がりを防止できる必要があり、自動車用内装ボードとして、例えば<1>〜<5>の各繊維複合樹脂品を利用することが可能と見做される。
<1>:フェノール樹脂のような熱硬化性樹脂を麻、綿などの天然繊維中にバインダーとして分散させて成形型により、加熱加圧して所要の凹凸形状に成形した後、これを不織布、ファブリックなどの表皮材とともに接着型にセットし接着剤を用いて該表皮材を接着させるもの。
<2>:ガラスファイバー充填発泡PP樹脂を不織布・ファブリックなどの表皮材とともに型内発泡成形することにより一体成形するもの。
<3>:スチレン等の発泡板状材の両面に接着剤を用いてフィルム層を設けてなる発泡体サンドイッチ構造の成形天井基材としたもの。
<4>:スラブウレタンをコアとし、その両面にガラスマットを接着剤で接着し、その外側に不織布、ファブリックなどの表皮材を接着剤で接着したもの。
<5>:変性PPOや変性PPEなどのいわゆる剛性の高いエンジニアリングプラスチック発泡体をコアとし、その外側に不織布、ファブリックなどの表皮材を接着剤で接着したもの。
【0004】
なお、従来の繊維複合樹脂品及びその製造方法の一例が、特開2004−284246号公報(特許文献1)に開示される。ここには比較的剛性の繊維によって基体層の強度を得て、表面層の比較的柔軟な繊維によって平滑な表面を得ることができる繊維複合樹脂品が開示され、特に、第1及び第2の繊維が共に植物又は動物性の原料に基づく天然由来繊維であり、且つ、第1及び第2の熱可塑性樹脂が共に天然由来樹脂で、繊維及び樹脂は共に生分解性材料とし、廃棄の際に生分解処理を行うことを可能としている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−284246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述の従来の繊維複合樹脂品を自動車用内装ボードとして利用すると、次のような問題が生じる。
上述の<1>のフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂をバインダーとして用いた繊維複合樹脂品の製造方法では、所要の凹凸形状の基材の成形用の成形型と、不織布、ファブリックなどの表皮材を基材側に接着剤で接着するための接着型との2つの型を必要とし2工程を要するとともに、成形温度を熱硬化性樹脂の熱硬化する200℃以上にしなければならないので成形型の所要温度時間が長くなるなどの理由から加工費・人件費などが高くなるものであった。また、フェノール樹脂を多量に含有するため遊離ホルムアルデヒドやフェノールを含有し、揮発するため環境に優しくない。また、廃棄の際も熱硬化性樹脂のためリサイクルしにくい。
【0007】
上述の<2>による成形天井基材の場合、所要の剛性を得るために厚くて重いものになる他、熱成形後の寸法収縮が大であるなどの問題がある。また、ガラスファイバーを含むので廃棄する際、燃焼すると焼却炉の壁にくっつき、焼却炉に損傷を与え、また粉砕溶融してリサイクルを試みてもガラスファイバーが切断してしまい、リサイクルに不適である。
【0008】
上述の<3>による成形天井基材の場合、シートが熱可塑性樹脂発泡体であるために中心部までの均一な加熱が困難であることと、加熱による昇温に連れてシートがドローダウンするなど加熱条件が非常に厳しく、例えばインフラスタインヒーターなど高精度な温度制御装置のような高価な加熱設備を必要とするので、イニシャルコストが高く、また製品の成形後の寸法収縮が大きい等の問題がある。また、発泡剤として有機溶剤を含んでいるため、成形後も微量残存し、自動車室内のVOC(揮発性物質)を増加させ、環境に優しくない。
【0009】
上述の<4>による繊維複合樹脂品では、熱硬化性樹脂であるウレタンを用い、しかも、ガラスマットも使用しているため、リサイクルが事実上不可能である。廃棄燃焼では焼却炉の壁にガラスがくっつき、焼却炉に損傷を与える。また触媒のアミンなどの有害VOCが発生し、環境に優しくない。
上述の<5>による繊維複合樹脂品では、高価なエンジニアリングプラスチック発泡体を使うため、部品が高価となる。
【0010】
上述のところにおいて、<1>、<3>、<4>、<5>による繊維複合樹脂品ではその成形時に接着剤を用いた接着工程を伴うので工程が煩雑である。また、<1>〜<5>による繊維複合樹脂品では、いずれの構造でも石油由来に依存する材料を用いており、廃却埋め立てしても分解せず、焼却しても地球上の二酸化炭素を増加させる環境問題を招くこととなる。
【0011】
従って、本発明の目的は、自動車用内装ボードとして、地球環境の保全、特に廃棄物処理に十分対処でき、製造が容易化され、乗員が接触時に違和感を受けることがなく、特に、天井基材であれば垂れ下がりを防止できる自動車用内装ボード及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するために、請求項1記載の自動車用内装ボードの発明は、竹繊維より得られた第1の繊維と、綿または麻または綿と麻との混合繊維である第2の繊維と、生分解性樹脂との複合材料よりなる基体層と、上記基体層の少なくとも片面に積層されるPET樹脂繊維または天然由来繊維で形成された不織布または織布の表面層と、を有する自動車用内装ボードであって、上記第1の繊維と第2の繊維と生分解性樹脂の各wt%比が、第1の繊維:第2の繊維:生分解性樹脂=30〜70:10〜60:20〜60であることを特徴とする。
好ましくは、生分解性樹脂を使用するに当たり、その末端封鎖処理して使うのが良く、この場合、生分解・加水分解を抑制し、経時劣化を抑制でき、自動車用内装ボードの耐久性を確保できる。
好ましくは、天然由来繊維は羊毛、絹、竹レーヨン等でよく、このような場合も、自動車用内装ボードの耐久性を確保できる。
【0013】
請求項2記載の自動車用内装ボードの発明は、請求項1記載の自動車用内装ボードにおいて、上記生分解性樹脂はポリブチレンサクシネート系樹脂であることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の自動車用内装ボードの発明は、請求項1または請求項2記載の自動車用内装ボードにおいて、上記自動車用内装ボードは自動車用天井基材であることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の自動車用内装ボードの製造方法の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の自動車用内装ボードの製造方法において、上記第1の繊維と、上記第2の繊維と、生分解性樹脂とを乾式の繊維積層法によって所定厚さの嵩高フェルト状の基体層に成形し、上記基体層の少なくとも片面に上記表面層を積層し、上記基体層と表面層とを熱プレスすることで上記生分解性樹脂が加熱により生じる接着力とプレス圧力とによって、上記基体層及び表面層の各繊維を相互に接着し、所定形状の複合ボード化してなることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の自動車用内装ボードの製造方法の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の自動車用内装ボードの製造方法において、上記第1の繊維と、上記第2の繊維と、生分解性樹脂とを乾式の繊維積層法によって所定厚さの嵩高フェルト状の基体層に成形し、上記嵩高フェルト状の基体層を第1熱プレスすることで基体層ボードを形成し、上記基体層ボードの少なくとも片面にPET樹脂繊維または天然由来繊維で形成された不織布または織布の表面層を積層し、上記基体層ボードと表面層とを上記第1熱プレスよりも加熱温度または加圧力の少なくとも一方を低く設定した第2熱プレスすることで上記生分解性樹脂が加熱により生じる接着力とプレス圧力とによって、上記基体層及び表面層の各繊維を相互に接着し、所定形状の複合ボード化してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、生分解性樹脂の接着力のみによって竹繊維、綿または麻または綿と麻との混合繊維、及びPET樹脂繊維または羊毛、絹、竹レーヨン等の天然由来繊維で形成された不織布または織布とを複合ボード化でき、別途に接着剤を使用する必要がない。また、不織布または織布に使用するPET樹脂繊維をPETリサイクル材繊維とした場合には、古着から取れる綿繊維や麻繊維、竹繊維等の天然繊維、PETリサイクル材繊維、生分解性樹脂を使用するため、すべてリサイクル材と天然由来材料からなり、石油由来の材料の使用がなく、環境にたいへんやさしく、バインダーを別途用意する必要がなく、装置のコスト低減を図れる。
【0018】
更に、竹繊維に綿または麻または綿と麻との混合繊維が適した配合比でブレンドされることで加工時の嵩高マットのハンドリング性がよく、作業性が向上する。また、成形後の剛性も十分に確保できる。更に、生分解性樹脂はPET樹脂繊維や竹レーヨン、羊毛、絹等の天然由来繊維と強固に接着し剥離しないので、保形性を十分に保持し、深絞りの三次元形状の自動車用内装ボードが得られる。更に、溶剤やフェノール、ホルムアルデヒド、などの有害物質を含有しないので、環境にやさしい。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、比較的融点の低い生分解性樹脂であるポリブチレンサクシネート系樹脂を使用することによって、ボード成形する際に熱プレスの加熱温度を低くできるので、表面層の損傷、例えば不織布または織布のつぶれなどを防止することができ、内装ボードの表面品質を向上させることができる。また熱プレスの省エネルギーも図れる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、30〜70wt%の竹繊維が基体層に含まれるので、垂れ下がりがなく、生分解性樹脂がPET樹脂繊維や竹レーヨン、羊毛、絹等の天然由来繊維と強固に接着し剥離しないことにより、保形性を十分に保持でき、深絞りの三次元形状を容易に成形でき、天井材としての耐久性を確保できる。
【0021】
請求項4記載の方法発明によれば、生分解性樹脂の接着力のみによって竹繊維、綿または麻または綿と麻との混合繊維、及びPET樹脂繊維、羊毛、絹等の天然由来繊維で形成された不織布または織布とを複合ボード化でき、生分解性樹脂はPET樹脂繊維や竹繊維、羊毛、絹等の天然由来繊維と強固に接着し剥離しない。このように、接着剤を別途使用する必要がなく、製品のコスト低減を図れる。更に、溶剤やフェノール、ホルムアルデヒド、などの有害物質を含有しないので、環境にやさしい。更に、竹繊維に綿または麻または綿と麻との混合繊維がブレンドされることで加工時の嵩高マットのハンドリング性がよく、生産性が向上する。
好ましくは、生分解性樹脂を使用するに当たり、その末端封鎖処理して使うのが良く、この場合、生分解・加水分解を抑制し、経時劣化を抑制でき、自動車用内装ボードの耐久性を確保できる。
【0022】
請求項5記載の方法発明によれば、表面層に負荷される加熱温度や加圧力を低くすることができるので、表面層の損傷、例えば不織布または織布のつぶれなどを防止することができ、内装ボードの表面品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1にはこの発明の自動車用内装ボードが適用された天井基材1を示し、図2(a)にはこの天井基材1の断面構造を示した。
天井基材1は車室上方を覆うルーフ1の内壁面に上面が重合され、接着され、周縁部が前後左右の各ルーフレールL1とルーフLの内壁面とによって挟持されている。
この天井基材1は、図2(a)に示すように、ルーフLの内壁面に上面が接着される基体層2と、基体層2の片面である下面に表面層3が積層され、ボード状に一体化されている。なお、場合により、図2(b)に示すように、基体層2の両面に表面層3が配設されても良い。
【0024】
図2(a)に示す基体層2は、竹糸状繊維(以後単に竹繊維と記す)より得られた第1の繊維と、綿または麻または綿と麻との混合繊維(以下綿または麻繊維と記す)である第2の繊維と、生分解性樹脂との複合材料で嵩高フェルト状に成形される。
第1の繊維である竹繊維は、竹を解繊機で繊維化する。または蒸煮または爆砕処理を施した竹から取り出した繊維を使用する。または弱アルカリに潰け込んで竹の肉質を溶解してから取り出した繊維を使用することもできる。
【0025】
第2の繊維である綿または麻繊維は、綿や麻からできた古着を解繊機で繊維化する。
生分解性樹脂としてはポリブチレンサクシネート系樹脂(以下PBS樹脂と記す)繊維を使用する。なお、これに代えて、ポリ乳酸樹脂を使用しても良い。
基体層2は第1の繊維である竹繊維30wt%以上と、第2の繊維である綿または麻繊維10wt%以上と、PBS樹脂繊維20wt%以上とを含む必要があり、これにより、天井基板としての剛性を確保できる。
【0026】
基体層2の成形に先立ち、上記の“綿または麻繊維またはその混合繊維”と“竹繊維”と“PBS樹脂繊維”はエアレイ、カード(図5にその一例を示した)、フリース、ブレンダー、レイヤー等を用い、乾式の繊維積層法により一定厚さの嵩高フェルト(図3(a)参照)F1としてブレンド成形される。
嵩高フェルトF1の混合比としては、竹繊維を30wt%以上、PBS樹脂繊維を20wt%以上、綿または麻またはその混合繊維を10wt%以上含む必要があり、次の(1)式の混合比(wt%比)の範囲に設定される。
【0027】
第1の繊維:第2の繊維:PBS樹脂繊維=30〜70:10〜60:20〜60・・・・・・(1)
このような混合比(wt%比)を設定した根拠を説明する。
まず、竹繊維が30wt%以上必要なのは、天井基材1として垂れ下がらないようにするので、600MPa以上の弾性率を確保する必要がある。また、PBS樹脂繊維を20wt%以上必要なのは、竹、綿、麻繊維を互いに接着させ、しかも、ボード表面を滑らかにさせるのに必要である。
【0028】
更に、綿または麻またはその混合繊維を10wt%以上含む必要があるのは、嵩高フェルトF1の成形時のハンドリング性を確保するためである。即ち、竹繊維のみであると、嵩高フェルトのハンドリング性は著しく劣り、手で持とうとしてもばらばらになり、作業性の低下を招く。しかも、加熱プレス時の深絞り成形性を確保するためである。竹繊維は繊維径が50〜500μmと綿や麻繊維に比較して太く、加熱して深絞り成形をした場合、表面に竹繊維が突き出して、ざらつく場合があり、乗員が天井表面に触れた場合における違和感を排除させるため、綿や麻繊維を混入するとそのざらつきを防止する効果がある。
以上の観点から、基体層2成形前の嵩高フェルトF1の混合比は(1)の範囲に設定される。なお、弾性率を補助的に向上させるため、タルク入りPBS樹脂を使用し、その分、竹繊維を小径化してもよい。
【0029】
次に、図3(a)に示すように、基体層2の下面に積層される表面層3を説明する。
基体層2を成す前の基体層嵩高フェルトF1の下面には、PET樹脂繊維または竹繊維、竹レーヨン繊維、羊毛、絹等の天然由来繊維で形成された不織布または織布(以下不織布または織布と記す)からなる表面層3成形前の表面不織布または織布層F2が積層される。PET樹脂繊維は、PETリサイクル材繊維を使用してもよい。
【0030】
このように基体層2の下面に表面層3が積層されてから、図3(b)に示すように、これらは加熱プレス型に投入され、同時に加圧・加熱し、冷却して、図3(c)、(d)に示すように,天井基材1として成形される。
ここで加熱の際、PBS樹脂繊維は溶融し、接着力を示し、冷却する工程で基体層2及び表面層3内の繊維との加圧接着が進み、ボード化される。
この際、PBS樹脂繊維が溶融し、接着力を示すことで、古着の綿繊維や麻繊維や竹繊維とPBS樹脂繊維がボード化すると共に不織布または織布と接着する。
【0031】
なお、ここで用いるPBS樹脂繊維には生分解性・加水分解性がある。このため、製品の経時的劣化による、強度低下を抑制するという観点からは好ましくなく、PBS樹脂の末端を封鎖するなどして、生分解性・加水分解性を極カ止めたものを使用することが好ましい。この処理によって、自動車内装部品である天井基材1として、70℃、95%RHで900時間で引っ張り強度が50%以上を保持することが可能である。
【0032】
このような天井基材1は、30〜70wt%の竹繊維が基体層2に含まれるので、垂れ下がりが確実に抑制され、PBS樹脂繊維がPET樹脂繊維や竹繊維、竹レーヨン繊維、羊毛、絹等の天然由来繊維と強固に接着し剥離しないことにより、保形性を十分に保持でき、深絞りの三次元形状を容易に成形でき、天井材としての耐久性を確保できる。
【0033】
天井基材1はPBS樹脂の接着力により不織布または織布とを複合ボード化でき、その際、PBS樹脂の接着力をもちいるので、別途接着材を必要としない。しかも、PBS樹脂はPET樹脂繊維や竹繊維、竹レーヨン繊維、羊毛、絹等の天然由来繊維と強固に接着し、剥離する憂いがない。
【0034】
天井基材1は石油由来の材料の使用を無くすことができ、環境にやさしい。即ち、古着からとれる綿繊維や麻繊維、竹繊維等の天然繊維、PET樹脂繊維を使用すれば、すべてリサイクル材と天然由来繊維材料からなり、しかも、溶剤やフェノール、ホルムアルデヒドなどの有害物質を含有しないので環境にやさしい。
末端封鎖のPBS樹脂やポリ乳酸樹脂である生分解性樹脂繊維を使うため、生分解、加水分解を抑制でき、自動車の天井基材1として少なくとも使用される期間における劣化を抑え、垂れ下がりがなく天井材として安定して利用できる。
【0035】
上述のところにおいて、加熱プレス型による熱プレス成形では、基体層2の下面に表面層3が積層され、即ち、嵩高フェルトF1の下に表面不織布または織布層F2が重ねられ、これらは同時に加圧・加熱し、冷却してボード状に成形されたが、これに代えて、図4に示すように熱プレス成形されても良い。
【0036】
この場合、加熱プレス型による熱プレス成形では、図4(b)に示す第1熱プレス工程で高圧力で基体層2用の嵩高フェルトF1がボード状(基体層ボードF1’)に成形され、途中で、図4(c)に示すように、加圧を解除し、型開きする。ついで、加熱温度を低温側に変更し、基体層ボードF1’上に不織布または織布F2を積層し、図4(d)に示すように、第1熱プレスよりも加熱温度または加圧力の少なくとも一方を低く設定した第2プレス工程で基体層ボードF1’に重ねられた表面不織布または織布F2を熱プレスすることで、PBS樹脂繊維の接着力を用い基体層2と表面層3を接合し、特に、表面層3である不織布または織布のつぶれを防止することができる。
【0037】
更に、基体層2のみをボード化した後で、基体層2ボードの表面のみを熱風や遠赤外線で加熱し、PBS樹脂繊維の接着力を用い、表面層3である不織布または織布を軽く圧締し、貼り合せるという製造工程を用いてもよい。
以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
本発明の自動車用内装ボードと比較例の自動車用内装ボードとを製造し、ボードの機械的特性を比較した。
〔実施例1〕
上述の図3(a)〜(d)の工程を用いて、本発明の繊維複合樹脂品を以下の(1)から(6)の条件で製造した。
(1)綿や麻からできた古着を解繊機で繊維化する。
(2)竹を解繊機で繊維化する。
(3)上記の繊維とPBS樹脂繊維をブレンダーとカードとレイヤーを使い、一定厚さの嵩高フェルトをブレンド、形成する。
PBS樹脂繊維:三菱化学 GS P1a、グレード:AZ71T、繊維径:5.5dtex、繊維長:2インチ
竹繊維長さ20〜130mm、繊維径:50〜500μm
竹繊維:綿と麻繊維:PBS樹脂繊維=30:20:50(Wt%)。
【0039】
(4)該嵩高フェルトの片面にPETリサイクル材繊維不織布と積層させて加熱プレスで加圧・加熱し、冷却した。プレス条件:130℃×2分×圧力3MPa。
(5)PBS樹脂には生分解性・加水分解性があるが、製品としては好ましくなく、末端を封鎖するなどして生分解性・加水分解性を極力止めたものを使用した。70℃、95%RHで900時間で引っ張り強度が50%以上を保持していたもの。
(6)古着の綿繊維や麻繊維や竹繊維とPBS樹脂繊維がボード化すると共に、PETリサイクル材繊維不織布と接着する。
〔実施例2〕
上述の図3(a)〜(d)の工程を用いて、本発明の繊維複合樹脂品を以下の(1)から(6)の条件で製造した。
(1)綿や麻からできた古着を解繊機で繊維化する。
(2)竹を解繊機で繊維化する。
(3)上記の繊維とPBS樹脂繊維をブレンダーとカードとレイヤーを使い一定厚さの嵩高フェルトをブレンド、形成する。
PBS樹脂繊維:三菱化学 GS Pla、グレード:GZ95T(フィラーとしてタルク入り)、繊維径:5.5dtex、繊維長:2インチ
竹繊維長さ20〜130mm、繊維径:50〜500μm
竹繊維:綿と麻繊維:PBS樹脂繊維=50:10:40(Wt%)。
【0040】
(4)該嵩高フェルトの片面に麻織物と積層させて加熱プレスで加圧・加熱し、冷却した。プレス条件:130℃×2分×圧力3MPa。
(5)PBS樹脂には生分解性・加水分解性があるが、製品としては好ましくなく、末端を封鎖するなどして生分解性・加水分解性を極力止めたものを使用した。70℃、95%RHで900時間で引っ張り強度が50%以上を保持していたもの。
(6)古着の綿繊維や麻繊維や竹繊維とPBS樹脂繊維がボード化すると共に、布織物と接着する。
〔比較例1〕
比較例1の繊維複合樹脂品を以下の(1)〜(5)の条件で、周知製法で製造した。
(1)綿や麻からできた古着を解繊機で繊維化する。
(2)上記の繊維とフェノール樹脂粉末をブレンダーとカードとレイヤーを使い一定厚さの嵩高フェルトをブレンド、形成する。
フェノール樹脂粉末:ノボラック型フェノール樹脂(旭有機材工業製)
綿と麻繊維:フェノール樹脂粉末=70:30(Wt%)。
【0041】
(3)上記の混合物を加熱プレスで加圧・加熱し、冷却した。プレス条件:230℃×40秒×圧カ15MPa。
(4)古着の綿繊維や麻繊維とフェノール樹脂粉末がボード化した。
(5)作製されたボードにPE系ホットメルト接着剤を塗布し、PETリサイクル材繊維不織布と貼り合せた。
〔比較例2〕
比較例2の繊維複合樹脂品を以下の(1)〜(5)の条件で、周知製法で製造した。
(1)綿や麻からできた古着を解繊機で繊維化する。
(2)上記の繊維とPBS樹脂繊維をブレンダーとカードとレイヤーを使い一定厚さの嵩高フェルトをブレンド、形成する。
PBS樹脂繊維:三菱化学 GS Pla、グレード:AZ71T、 繊維径:5.5dtex、繊維長:2インチ
綿と麻繊維:PBS樹脂繊維=50:50(Wt%)。
【0042】
(3)該嵩高フェルトの片面にPETリサイクル材繊維不織布と積層させて加熱プレスで加圧・加熱し、冷却した。プレス条件:130℃×2分×圧力3MPa。
(4)PBS樹脂には生分解性・加水分解性があるが、製品としては好ましくなく、末端を封鎖するなどして生分解性・加水分解性を極力止めたものを使用した。70℃、95%RHで900時間で引っ張り強度が50%以上を保持していたもの。
(5)古着の綿繊維や麻繊維とPBS樹脂繊維がボード化すると共に、PETリサイクル材繊維不織布と接着する。
〔比較例3〕
比較例1の繊維複合樹脂品を以下の(1)〜(5)の条件で、周知製法で製造した。
(1)竹を解繊機で繊維化する。
(2)上記の繊維とPBS樹脂繊維をブレンダーとカードとレイヤーを使い一定厚さの嵩高フェルトをブレンド、形成する。
PBS樹脂繊維:三菱化学 GS Pla、グレード:AZ71T、 繊維径:5.5dtex、繊維長:2インチ
竹繊維長さ20〜130mm、繊維径:50〜500μm
竹繊維:PBS樹脂繊維=50:50(Wt%)。
(3)該嵩高フェルトの片面にPETリサイクル材繊維不織布と積層させて加熱プレスで加圧・加熱し、冷却した。プレス条件:130℃×2分×圧力3MPa。
【0043】
(4)PBS樹脂には生分解性・加水分解性があるが、製品としては好ましくなく、末端を封鎖するなどして生分解性・加水分解性を極力止めたものを使用した。70℃、95%RHで900時間で引っ張り強度が50%以上を保持していたもの。
(5)古着の綿繊維や麻繊維とPBS樹脂繊維がボード化すると共に、PETリサイクル材繊維不織布と接着する。
次に、以上の実施例1,2、比較例1,2,3の各データを比較すべく、「表1」として示した。
【0044】
【表1】

【0045】
結果として、実施例1,2では、竹繊維が基体層2に含まれるので保形性を十分に保持でき、このため、曲げ強さ、曲げ弾性率、垂れ下がり、等の機械的強度は天井基材1として十分の値を得ることができた。更に、天井基材1として深絞り性に問題はなく、更に、成形作業時における竹繊維のハンドリング性が古着の綿繊維や麻繊維により改善され、更に、天井基材1として臭気に問題はなく、天井の表面粗さに問題はなく、触れた場合に乗員が受ける違和感もなく、特に、生分解性樹脂繊維であるPBS樹脂繊維をバインダーとして用いる上に、リサイクル材と天然由来繊維を用いるので環境にもやさしいという利点がある。
【0046】
これに対して、比較例1の場合、ホルムアルデヒドと総VOCの発生が比較的多く、フェノール樹脂(熱硬化性樹脂)からなるバインダーが採用されるため、このフェノール樹脂バインダーがセルロース系繊維(古着の綿繊維や麻繊維)が本来有する生分解性という特性を阻害してしまい、繊維系ボードを非生分解性とし、リサイクル性に問題を生じてしまうし、基体層に表面層を接着するのに接着剤を必要とし、作業コスト増を招く。
【0047】
更に、比較例2の場合、竹繊維が欠如しており、曲げ弾性率、垂れ下がり、等の機械的強度が低下し、天井基材1として使用するには不向きなものとなっている。
更に、比較例3の場合、綿や麻が竹繊維に混入せず、成形時に竹繊維のみを嵩高フェルト状に成形するにあたり、ハンドリング性が悪く、作業に手間取り、成形コスト増を招く上に、天井の表面粗さが比較的大きく、触れた場合にごつごつ感等の違和感を受けるという問題がある。
【0048】
上述のところにおいて、自動車用内装ボードである天井基材1を説明したが、その他の自動車用トランクリッド等の内装ボードとしても本発明を適用することができ、この場合も図1の自動車用内装ボードと同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態としての自動車用内装ボードが適用された天井基材1を車両に装着した状態の切欠斜視図である。
【図2】図1の天井基材の拡大切欠断面図で(a)はその要部切欠拡大断面図、(b)は変形例の要部切欠拡大断面図である。
【図3】図1の天井基材の第1の成形工程説明図である。
【図4】図1の天井基材の第2の成形工程説明図である。
【図5】図1の天井基材の成形工程中で乾式の繊維積層法を実施するのに用いるカード装置の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 天井基材(自動車用内装ボード)
2 基体層
3 表面層
F1 嵩高フェルト
F2 表面不織布または織布
L ルーフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹繊維より得られた第1の繊維と、
綿または麻または綿と麻との混合繊維である第2の繊維と、
生分解性樹脂との複合材料よりなる基体層と、
上記基体層の少なくとも片面に積層されるPET樹脂繊維または天然由来繊維で形成された不織布または織布の表面層と、
を有する自動車用内装ボードであって、
上記第1の繊維と第2の繊維と生分解性樹脂の各wt%比が、第1の繊維:第2の繊維:生分解性樹脂=30〜70:10〜60:20〜60であることを特徴とする自動車用内装ボード。
【請求項2】
請求項1記載の自動車用内装ボードにおいて、上記生分解性樹脂はポリブチレンサクシネート系樹脂であることを特徴とする自動車用内装ボード。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の自動車用内装ボードにおいて、上記自動車用内装ボードは自動車用天井基材であることを特徴とする自動車用内装ボード。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の自動車用内装ボードの製造方法において、
上記第1の繊維と、上記第2の繊維と、生分解性樹脂とを乾式の繊維積層法によって所定厚さの嵩高フェルト状の基体層に成形し、
上記基体層の少なくとも片面に上記表面層を積層し、
上記基体層と表面層とを熱プレスすることで上記生分解性樹脂が加熱により生じる接着力とプレス圧力とによって、上記基体層及び表面層の各繊維を相互に接着し、所定形状の複合ボード化してなる自動車用内装ボードの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の自動車用内装ボードの製造方法において、
上記第1の繊維と、上記第2の繊維と、生分解性樹脂とを乾式の繊維積層法によって所定厚さの嵩高フェルト状の基体層に成形し、
上記嵩高フェルト状の基体層を第1熱プレスすることで基体層ボードを形成し、
上記基体層ボードの少なくとも片面にリサイクルPET樹脂繊維または天然由来繊維で形成された不織布または織布の表面層を積層し、
上記基体層ボードと表面層とを上記第1熱プレスよりも加熱温度または加圧力の少なくとも一方を低く設定した第2熱プレスすることで上記生分解性樹脂が加熱により生じる接着力とプレス圧力とによって、上記基体層及び表面層の各繊維を相互に接着し、所定形状の複合ボード化してなる自動車用内装ボードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−160742(P2007−160742A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360731(P2005−360731)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(594073554)三乗工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】