説明

自動2輪車用足首プロテクタ

【目的】自動2輪車に短靴で乗車した乗員のくるぶしを効果的に保護する。
【構成】足首プロテクタ1は短靴3を着用した状態の足首2における左右のくるぶし5を覆う、内側ガード部及び外側ガード部11を備え、足首2の後ろ側で横側固定部材6,7により連結し、足裏における土踏まず2eの下方を通した足裏側固定部材8により、内側ガード部及び外側ガード部11間を連結し、足首プロテクタ1が使用中に上方へずれないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動2輪車に搭乗する乗員が足首部分へ着脱自在に取付ける自動2輪車用足首プロテクタに係り、特に、くるぶし部分を覆った状態で短靴を着用できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動2輪車の乗員は足首部分を保護するため、長靴状のライダーブーツを着用することが知られている。また、このライダーブーツの甲部分へプロテクタを取付けることも知られている(特許文献1参照)。さらに、すねから甲までの足首前面側を覆うようにバンドで着脱自在に取付ける格闘技用プロテクタも公知である(特許文献2参照)。
【特許文献1】実登3046181号公報
【特許文献2】特開2003−284803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、自動2輪車に搭乗するとき、ライダーブーツの場合は、長靴状をなして足首部分を広く拘束するため、より足首を自由にして変速機やクラッチなどのペダル操作を軽快にしたい場合があり、この場合には、特許文献1のようなライダーブーツではなく、短靴の着用を希望することがある。短靴はくるぶしより上方を覆わない形式のものであり、足首を軽快に動かすことができるためである。しかし、短靴の場合はそのはき口から、くるぶしが外へ出るので、これを効果的に保護する足首プロテクタが求められる。また、単にくるぶしだけを覆うようにすると、使用中にプロテクタが上方へずれ上がってしまうおそれがあるのでこれを防ぐことも望まれる。そこで本願は、このような要望の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本願の自動2輪車用足首プロテクタに係る請求項1は、自動2輪車に搭乗する乗員の足首をガード部で覆い、固定部材で着脱自在に取付けた足首プロテクタにおいて、
前記ガード部は、くるぶしを含む足首の左右を覆うとともに、前記固定部材は足裏の土踏まず部分の下方を通って前記左右のガード部間を連結する足裏側固定部材を備えることを特徴とする。
【0005】
請求項2は上記請求項1において、前記足裏側固定部材が1本の帯状部材であることを特徴とする。
【0006】
請求項3は上記請求項1において、前記ガード部が、硬質の外皮と、その内側へ重なり足首側へ接触するクッション部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項4は上記請求項3において、前記クッション部材と前記外皮が、前記固定部材によって取付一体化されることを特徴とする。
【0008】
請求項5は上記請求項1において、足首に装着した状態で短靴を履くことが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1によれば、ガード部が、くるぶしを含む足首の左右を覆うとともに、足裏における土踏まず部分の下方を通る足裏側固定部材で内外のガード部間を連結するので、くるぶしを効果的に保護できるとともに、ガード部が使用中に上方へずれないようになり、確実に固定できる。
また、短靴を着用した場合も、くるぶしを覆うことができると同時に、短靴により足首を動かしやすくなっているので、軽快にペダル操作をできる。
【0010】
請求項2によれば、足裏側固定部材を1本の帯状部材としたので、接触する土踏まずに対して違和感のないようにすることができる。
【0011】
請求項3によれば、ガード部が硬質の外皮とその内側へ重なり足首側へ接触するクッション部材とを備えるので、くるぶしを確実に保護できるとともに、足首側に対する感触を良好にする。
【0012】
請求項4によれば、固定部材を利用してクッション部材と外皮を取付一体化できるので、取付構造を簡単にでき、特別な取付部材を使用する場合と比較して軽量化できる。
【0013】
請求項5によれば、足首に装着した状態で短靴を履くことができるので、足首プロテクタの使用と短靴の着用を両立できる。また、足首プロテクタの下端部を短靴のはきくちから内側へ挿入して収納させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1は、足首プロテクタ1を着用した状態における足首部分の側面図、図2はこの装着状態を爪先側から示す断面図である。これらの図において、足首プロテクタ1は、乗員の足首2部分へ直接着脱自在に取付けられ、この状態で短靴3を履くことができる。このとき短靴3のはき口4から上方に出ているくるぶし5を外側から覆っている。
くるぶし5は内側くるぶし及び外側くるぶしが一対で足首2の左右に存在している(図2)。
【0015】
足首プロテクタ1は装着時にその下部を短靴3のはき口4から内方へ収納できる。符号2aはアキレス腱部分、2bは踵、2cは甲、2dは爪先、2eは足裏の土踏まずである。また、3aは踵収容部、3bはヒール、3cは甲部、3dは爪先部、3eは靴底である。
【0016】
図3は足首プロテクタ1の展開形状を表側(装着時の外側)から示す。なお、左右の足首に装着する足首プロテクタ1は、それぞれ左右対称形をなすが、以下の説明では右足用の足首プロテクタ1について説明する。左足用の足首プロテクタ1は対称構造となる。また、左右別々の専用形状とせず、一方側を左右共用にすることもできる。
【0017】
足首プロテクタ1は、この状態で左右となる内側ガード部10及び外側ガード部11を中央部12で連結一体化したものである。中央部12の下部は上方へ湾曲して足のアキレス腱2a部分を通すための逃げ凹部12aをなしている。内側ガード部10及び外側ガード部11は向かい合わせにしたとき略同形をなし、くるぶし5を含む足首2の内外側面を覆うようになっている。
【0018】
また、内側ガード部10,外側ガード部11の各下端部10a及び11aは、それぞれ若干下方へ突出する山形形状部をなし、短靴3を着用したとき、はき口4よりも下方部分へ達し、はき口4から短靴3の内側へ収納され、くるぶし5の下方とはき口4の間を覆うようになっている(図1及び2参照)。
【0019】
内側ガード部10及び外側ガード部11は、内側クッション部材13と外側クッション部材14及び外側の外皮15を備える。本実施例の場合は、内側クッション部材13と外側クッション部材14は中央部12で連続一体に連結された一枚ものとして構成され、中央部12で折り曲げたとき向かい合わせに重なるようになっており、それぞれは逃げ凹部12aを挟んで下方へ略山形に突出し、この部分は前記下端部10a及び11aに相当する。
【0020】
外皮15は、適当な硬質樹脂や金属等で形成された硬質材料からなるカバー部材であり、比較的剛性が高く、かつある程度の弾性変形を可能にする程度の弾性を有する、剛性のある帯弾性部材である。それぞれは略逆三角形をなし、内側クッション部材13と外側クッション部材14に対してそれぞれ左右対称に設けられる。外皮15の上部側前後の縁部分には貫通孔16,17が設けられ、下半部側には縦長の通気孔18が複数前後方向へ配置され、下端には貫通孔19が設けられている。
【0021】
また、装着時の上下方向並びに前後方向にて中央側が外側方へ湾曲突出する曲面をなしている。また、外周は内側クッション部材13及び外側クッション部材14よりも若干小さく、これらに取付けたとき、内側クッション部材13及び外側クッション部材14の各縁部が外皮15の外周よりも若干外側へ出るようになっている。
【0022】
内側クッション部材13の外側に設けられる外皮15において、貫通孔16,17にバンド状をなす横側固定部材6を通し、その一端6aを内側クッション部材13の縁部へ縫合してある。横側固定部材6のうち貫通孔16,17の間となる部分は外皮15の上部側表面を通過して露出し、この露出部に雌雄いずれか側の面ファスナー20が設けられている。
【0023】
外皮15の下半部側では、バンド状をなす横側固定部材7が外皮15の表面を横切って通され、一端7aを内側ガード部10の縁部へ縫合し、他方側は外側クッション部材14寄りの通気孔18から裏側へ抜けて中央部12の上を外側クッション部材14へ延出している。横側固定部材7のうち外皮15の上を横切る部分に雌雄いずれか側の面ファスナー21が設けられている。
【0024】
外皮15の下端部では、貫通孔19に足裏側固定部材8の一端8aを通して外皮15の下端に巻き付け、さらに内側クッション部材13の下端部10aへ縫合してある。他端側は下方へ長く延出し、その先端部雌雄いずれか側の面ファスナー22が設けられている。
【0025】
外側クッション部材14の外側に設けられる外皮15側も同様であり、対応部には同一の符号を付して示す。内側クッション部材13から延びる横側固定部材6は貫通孔17から外皮15の上へ出て表面を横切り、貫通孔17から裏側へ抜けてさらに延出し、その延出端に、外皮15側の面ファスナー20と係合する他側の面ファスナー23が設けられている。
【0026】
内側クッション部材13から延びる横側固定部材7は、内側クッション部材13寄りの通気孔18から上へ出て外皮15の表面を横切り、前端側の通気孔18を通って裏側へ抜けてさらに延出し、その延出端に、外皮15側の面ファスナー21と係合する他側の面ファスナー24が設けられている。但し、横側固定部材6、7の外皮15の上を通過する部分には面ファスナーが設けられていない。
【0027】
外皮15の下端部に設けられた貫通孔19には、外皮15の表面中央部を上下に通された上下バン25の下端部25aが通されて、外側ガード部11の下端部11aへ縫合される。上下バンド25の上端部25bも外側クッション部材14の上端へ縫合されている。上下バンド25の中間部は、横側固定部材6、7の上を交差して通っており、その表面には足裏側固定部材8の面ファスナー22と係合する他側の面ファスナー26が設けられている。
【0028】
足裏側固定部材8の外皮15から延出する長さは、土踏まず2eの下方を通って反対側の外皮15に設けられた上下バンド25へ重なることができ、かつ足の大きさに応じて長さ調整ができるように、十分な長さになっている。また、上下バンド25の長さ方向ほぼ全長に長く面ファスナー26を設けることによっても、長さ調整を可能にしている。
【0029】
これらの横側固定部材6,7及び足裏側固定部材8並びに上下バンド25を表面へ通すことにより、外皮15は、内側クッション部13及び外側クッション部14へ直接固定されずにこれらのバンド状部材を介して取付けられ、内側クッション部13及び外側クッション部14に対してそれぞれがある程度の相対移動を許容されている。
【0030】
図4は、足首プロテクタ1を図3の反対側から示した裏面図である。内側クッション部13及び外側クッション部14の各上部後側にはくるぶしパッド27,27が設けられ、足首プロテクタ1を足首2へ装着したとき、くるぶし5の上に重なるようになっている。くるぶしパッド27は柔軟なスポンジ材料を用いて十分な厚さを確保し、肌当たりと緩衝性能の両立を図っている。また表面をメッシュ状の布で覆うことにより通気性も確保している。
【0031】
内側クッション部13及び外側クッション部14並びに中央部12は、くるぶしパッド27を除く部分全体が、くるぶしパッド27よりも薄く柔らでかつ通気性の良いスポンジ材料で構成され、その表面をメッシュ状の布で覆った一般部パッド28で構成され、通気性と緩衝性能を確保し、軽量化も実現している。
【0032】
次に、作用を説明する。図1及び2に示すように、自動2輪車へ乗るに際して足首プロテクタ1を足首2へ装着する。このとき、内側ガード部10及び外側ガード部11を中央部12から曲げて向かい合わせにし、足首2の後ろ側からその内外へくるぶし5を覆うように当て、中央部12を足首2の後ろ側へ当てる。
【0033】
続いて、外側ガード部11から延出する横側固定部材6,7を内側へ回して各端部を内側ガード部10の各横側固定部材6,7に重ね、双方の面ファスナー20、21と23、24を係合する。これにより、足首プロテクタ1は足首2の周囲へ固定される。
【0034】
さらに、足裏側固定部材8を土踏まず2eの下方へ通して反対側へ出し、外側ガード部11の上下バンド25に重ね、面ファスナー22と26で係合へ係合させる。これにより、足首プロテクタ1は上下方向も固定される。
【0035】
この状態で短靴3を履くと、内側ガード部10及び外側ガード部11の各下端部10a及び11aが、はき口4から短靴3内へ収納される。図2はこの装着状態を断面にして、爪先2d側から示す図である。この図に示すように、内側クッション部13及び外側クッション部14の各くるぶしパッド27、27が、足首2における左右のくるぶし5、5を各外側から覆うので、短靴3のはき口4から外へ出て露出しているくるぶし5は、足首プロテクタ1により効果的に保護される。
【0036】
このとき、くるぶし5,5には、最も厚いくるぶしパッド27,27が接触して肌当たりを良好にするとともに、足首2の全体はより薄い一般部パッド28によって覆うので、感触及び通気性が良好でかつ軽量になる。
【0037】
また、足首に比較的大きな外力がかかる場合は、外皮15にて外力を遮断することができるので、内側のクッション部と一緒になって、広範囲な大きさの外力に対応できるとともに、感触を良好に保つことができる。
【0038】
さらに、足首プロテクタ1は短靴3上へ固定されたものではなく、足首2側へ直接固定されているため、短靴3の自由な動きを許容する。このため、足首2の動きが自由になり、足首を覆うにもかかわらず短靴3によるペダル操作において軽快な操作性を維持できる。
【0039】
しかも、足首2の前側を分離し、開き具合を調節しながら上下の横側固定部材6、7で連結するようにしたから、足首2の甲2c(図1)側の自由な動きを確保している。内側ガード部10及び外側ガード部11の各下端部10a及び11aをはき口4より下方へ延ばしたことも、足首2の側方保護と短靴3の自由な動きを確保している(図2)。さらに、中央部12の下方へ逃げ凹部12aを設けることによってもアキレス腱2a部分の自由な動きを確保している。
【0040】
また、足裏における土踏まず2e部分の下方を通る足裏側固定部材8で内側ガード部10及び外側ガード部11間を連結するので、足首プロテクタ1が使用中に上方へずれないようになり、確実にかつ安定して固定できる。
しかも、足裏側固定部材8を1本の帯状部材としたので、接触する土踏まず2eに対する感触を違和感のないものにすることができる。
【0041】
さらに、内側クッション部13及び外側クッション部14と、外皮15を横側固定部材6、7及び足裏固定部材8を利用して取付一体化できるので、取付構造を簡単にでき、特別な取付部材を使用する場合と比較して軽量化できる。
【0042】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、内側クッション部13及び外側クッション部14と、固定部材の取付関係を逆にしてもよい。また、内側クッション部13及び外側クッション部14を別体にして後から分離可能に連結してもよい。またクッション部材は、各種のスポンジ材料を用いることができるが、必ずしもスポンジ材料によらず、他の軽量な緩衝部材を利用することもできる。さらに、外皮とクッション部を別体にせず一体化したものや単一材料で一体に形成したっものでもよい。固定部材もバンド状のみならず紐状等種々可能であり、係合構造も面ファスナーに限らず公知の種々な構造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】使用状態の側面図
【図2】同上の正面側か示す断面図
【図3】展開図
【図4】同上の反対側を示す図
【符号の説明】
【0044】
1:足首プロテクタ、2:足首、3:短靴、5:くるぶし、6:横側固定部材、7:横側固定部材、8:足裏側固定部材、10:内側ガード部、11:外側ガード部、13:内側クッション部、14:外側クッション部、15:外皮、20、21、22,23,24,26:面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動2輪車に搭乗する乗員の足首をガード部で覆い、固定部材で着脱自在に取付けた足首プロテクタにおいて、
前記ガード部は、くるぶしを含む足首の左右を覆うとともに、前記固定部材は足裏の土踏まず部分の下方を通って前記左右のガード部間を連結する足裏側固定部材を備えることを特徴とする自動2輪車用足首プロテクタ。
【請求項2】
前記足裏側固定部材は1本の帯状部材であることを特徴とする請求項1に記載した自動2輪車用足首プロテクタ。
【請求項3】
前記ガード部は、硬質の外皮と、その内側へ重なり足首側へ接触するクッション部材とを備えることを特徴とする請求項1に記載した自動2輪車用足首プロテクタ。
【請求項4】
前記クッション部材と前記外皮は、前記固定部材によって取付一体化されることを特徴とする請求項3に記載した自動2輪車用足首プロテクタ。
【請求項5】
足首に装着した状態で短靴を履くことが可能であることを特徴とする請求項1に記載した自動2輪車用足首プロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−191968(P2006−191968A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4078(P2005−4078)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】