説明

自己免疫疾患の治療のためのBLyS阻害剤および抗CD20剤の組合せ

本発明は、自己免疫疾患の治療のためのBLySまたはBLyS/APRIL阻害剤および抗CD20剤を包含する新規の組合せ療法に関する。好ましい一方法は、BLySアンタゴニストが、TACIの細胞外ドメインまたはその機能的断片を含むTACI−Fc融合タンパク質、BAFF−Rの細胞外ドメインまたはその機能的断片を含むBAFF−R−Fc融合タンパク質、あるいはBCMAの細胞外ドメインまたはその機能的断片を含むBCMA−Fc融合タンパク質であり得るFc融合タンパク質である場合である。本発明の方法において、意図される抗CD20剤のいくつかとしては、リツキサン(登録商標)、オクレリズマブ、オファツムマブ(HuMax−CD20(登録商標))、TRU−015およびDXL625が挙げられるが、しかしCD20と結合する任意の作用物質が適切であり得る。本発明の方法は、B細胞レベルの低減を必要とする患者、例えば自己免疫疾患に罹患している患者におけるB細胞レベルを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患の治療のためのBLySまたはBLyS/APRIL阻害剤および抗CD20剤を包含する新規の組合せ療法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球は、白血球のいくつかの集団のうちの1つである;それらは、外来抗原を特異的に認識し、それに応答する。リンパ球の3つの主要クラスは、Bリンパ球(B細胞)、Tリンパ球(T細胞)および天然キラー(NK)細胞である。Bリンパ球は、抗体産生に関与する細胞であり、体液性免疫を提供する。B細胞は骨髄内で成熟し、骨髄を離れてそれらの細胞表面で抗原結合抗体を発現する。ネイティブB細胞は、先ず、その膜結合抗体が特異的である抗原に出会い、細胞は迅速に分裂し始めて、その子孫はメモリーB細胞および形質細胞と呼ばれるエフェクター細胞に分化する。メモリーB細胞は、長寿命を有し、元の親細胞と同一の特異性を有する膜結合抗体を発現し続ける。形質細胞は、膜結合抗体を産生しないが、しかしその代わりに分泌形態の抗体を産生する。分泌抗体は、体液性免疫の主要エフェクター分子である。
【0003】
種々の条件下でB細胞の表面に見出される腫瘍壊死因子(TNF)受容体の一群は、免疫系におけるB細胞機能の細胞性調節因子の1つである。特に、3つのTNF受容体:すなわち、膜貫通性活性化因子およびCAML相互作用因子(TACI)、TNFファミリー受容体に属するB細胞活性化因子(BAFF−R)、ならびにB細胞成熟タンパク質(BCMA)は、TNFリガンド−Bリンパ球刺激因子(BLyS。BAFF、TALL−1、ztnf4およびTHANKとしても知られている)および増殖誘導リガンド(APRIL)の1つまたは両方と結合することが知られている。具体的には、TACIおよびBCMAは、BLySおよびAPRILの両方と結合することが知られており、そしてBAFF−RはBLySのみと結合する。
【0004】
BLySの種々の機能、例えばB細胞同時刺激、形質芽細胞および形質細胞生存、Igクラススイッチ、B細胞抗原提示細胞機能強化、悪性B細胞の生存、B−1細胞機能の発達、T−1段階を過ぎたB細胞発達、ならびに完全胚中心形成(これらに限定されない)を遮断するために、多数のBLySアンタゴニストが開発されてきた。これらの分子のいくつかはさらにまた、APRILと結合し、B細胞および免疫系のその他の構成成分に及ぼすAPRILの作用を遮断し得る(Dillon et al. (2006) Nat. Rev. Drug Dis. 5, 235-246)。BLySおよび/またはAPRIL結合を妨げることによりB細胞機能に影響を及ぼすよう開発されてきた分子としては、BLyS抗体、例えばリンホスタット−B(ベリムマブ)(Baker et al, (2003) Arthritis Rheum, 48, 3253-3265およびWO 02/02641);受容体−細胞外ドメイン/Fcドメイン融合タンパク質、例えばTACI−Ig、例えば特定の一実施形態では、アタシセプト(米国特許出願第20060034852号)、BAFF−R−Fc(WO 05/0000351)、およびBCMA−Ig、または受容体細胞外ドメインを利用するその他の融合タンパク質が挙げられる。BLySアンタゴニストのさらなるクラスとしては、WO 03/035846およびWO 02/16312に開示されたその受容体との結合を遮断するBLyS結合能力に依っている他の分子、例えばAMG 623、受容体抗体およびその他の分子が挙げられる。
【0005】
CD20抗原(ヒトBリンパ球限定分化抗原、Bp35とも呼ばれる)は、プレBおよび成熟Bリンパ球上に位置する約35 kDの分子量を有する疎水性膜貫通タンパク質である(Valentine et al. J. Biol. Chent. 264(19): 11282-11287 (1989);およびEinfeld et al. EMBO J. 7(3): 711-717 (1988))。抗原は、90%より多くのB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)上でも発現される(Anderson et al. Blood 63(6): 1424-1433 (1984))が、しかし造血幹細胞、プロB細胞、正常形質細胞またはその他の正常組織上には見出されない(Tedder et al. J. Immunol. 135(2): 973-979 (1985))。CD20は、細胞周期開始および分化に関する活性化過程における初期段階(単数または複数)(Tedder et al.、上記)ならびにカルシウムイオンチャンネルとしての考え得る機能(Tedder et al. J. Cell. Biochem. 14D: 195 (1990))を調節する。
【0006】
B細胞上のCD20の発現を考えると、この抗原は、自己免疫疾患を治療するためのこれらの細胞の「ターゲッティング」用の候補として役立ち得る。本質的に、このようなターゲッティングは、以下のように概括される:B細胞のCD20表面抗原に特異的な抗体が患者に投与される。これらの抗CD20抗体は、正常抗体および有害自己抗体を産生する(表向きは)両B細胞のCD20抗原と特異的に結合する;CD20表面抗原と結合される抗体は、これらのB細胞の破壊および枯渇をもたらし得る。アプローチに関係なく、主な目的は自己抗体を産生する細胞を破壊することである;具体的アプローチは、利用される特定の抗CD20抗体により確定され、したがってCD20抗原をターゲッティングするために利用可能なアプローチはかなり変化し得る。
【0007】
リツキシマブ(リツキサン(登録商標))抗体は、CD20抗原に対して向けられる遺伝子工学処理キメラネズミ/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは、米国特許第5,736,137号(1998年4月7日発行)(Anderson等)において「C2B8」と呼ばれた抗体である。
【0008】
リツキサン(登録商標)は、再発性または難治性の、低悪性度または濾胞性の、CD20陽性のB細胞非ホジキンリンパ腫を有する患者の治療のために認可されている。作用試験のin vitro機序は、リツキサン(登録商標)がヒト補体と結合し、補体依存性細胞傷害(CDC)によりBリンパ球細胞株を溶解する、ということを実証している(Reff et al. Blood 83(2): 435-445 (1994))。さらに、それは、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)に関する検定において有意の活性を有する。さらに近年、リツキサン(登録商標)は、トリチウムチミジン取り込み検定において抗増殖性作用を有すること、そしてアポトーシスを直接誘導する(他の抗CD19およびCD20抗体はそうではない)ことが示された(Maloney et al. Blood 88(10): 637a (1996))。リツキサンと化学療法および毒素との間の相乗作用も、実験的に観察されている。
【0009】
特に、リツキサン(登録商標)は、薬物耐性ヒトB細胞リンパ腫細胞株をドキソルビシン、CDDP、VP−16、ジフテリア毒素、及びリシンの細胞傷害効果に対して感受化させる(Demidem et al., Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12 (3): 177-186 (1997))。生体内前臨床実験は、リツキサン(登録商標)が、おそらく補体と細胞媒介プロセスを介して、カニクイザルの末梢血、リンパ節及び骨髄からB細胞を激減させることを示している(Reff et al Blood 83 (2): 435-445 (1994))。
【0010】
CD20抗体に関する特許および特許公報としては、米国特許第5,776,456号;第5,736,137号;第6,399,061号および第5,843,439号、ならびに米国特許出願US 2002/0197255A1、US 2003/0021781A1、US 2003/0082172 A1、US 2003/0095963 A1、US 2003/0147885 A1(Anderson等);米国特許第6,455,043B1号およびWO00/09160(Grillo-Lopez, A.);WO00/27428(Grillo-Lopez and White);WO0027433(Grillo-Lopez and Leonard);WO00/44788(Braslawsky等);WO01/10462(Rastetter, W.);WO01/10461(Rastetter and White);WO01/10460(White and Grillo-Lopez);米国特許出願US2002/0006404およびWO02/04021(Hanna and Hariharan);米国特許出願US2002/0012665 A1およびWO01/74388(Hanna N.);米国特許出願US2002/0058029 A1(Hanna, N.);米国特許出願US 2003/0103971 A1(Hariharan and Hanna);米国特許出願US2002/0009444A1およびWO01/80884(Grillo-Lopez, A.);WO01/97858(White, C.);米国特許出願US2002/0128488A1およびWO02/34790(Reff, M.);WO02/060955(Braslawsky et al.);WO02/096948(Braslawsky et al.);WO02/079255(Reff and Davies);米国特許第6,171,586B1号およびWO98/56418(Lam等);WO98/58964(Raju, S.);WO99/22764(Raju, S.);WO99/51642、米国特許第6,194,551B1号、米国特許第6,242,195B1号、米国特許第6,528,624B1号および米国特許第6,538,124号(Idusogie等);WO/42072(Presta, L.);WO00/67796(Curd等);WO01/03734(Grillo-Lopez等);米国特許出願US2002/0004587A1およびWO01/77342(Miller and Presta);米国特許出願2002/0197256(Grewal, I);米国特許出願US2003/0157108 A1(Presta, L.);米国特許第6,090,365B1号、第6,287,537B1号、第6,015,542号、第5,843,398号および第5,595,721号(Kaminski等);米国特許第5,500,362号;第5,677,180号;第5,721,108号および第6,120,767号(Robinson等);米国特許第6,410,391B1号(Raubitschek等);米国特許第6,224,866B1号およびWO00/20864(Barbera-Guillem, E.);WO01/13945(Barbera-Guillem, E.);WO00/67795(Goldenberg);米国特許出願US 2003/01339301A1およびWO00/74718(Goldenberg and Hansen);WO/76542(Golay等);WO01/72333(Wolin and Rosenblatt);米国特許第6,368,596B1号(Ghetie等);米国特許出願US2002/0041847 A1(Goldenberg, D.);米国特許第号出願US2003/0026801A1(Weiner and Hartmann);WO02/102312(Engleman, E.);米国特許出願2003/0068664(Albitar等);WO03/002607(Leung, S.);WO049694(Wolin等);WO03/061694(Sing and Siegall)(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)。米国特許第5,849,898号および欧州特許出願330,191(Seed等);米国特許第4,861,579号およびEP332,865A2(Meyer and Weiss);USP 4,861,579(Meyer等)およびWO95/03770(Bhat等)も参照されたい。
【0011】
リツキシマブを用いた療法に関する出版物としては、以下のものが挙げられる:Perotta and Abuel “Response of chronicrelapsing ITP of 10 years duration to Rituximab” Abstract #3360 Blood 10(1)(part 1-2):p.88B(1998);Stashi et al. “Rituximab chimeric anti-CD20 monoclonal antibody treatment for adults with chronic idiopathic thrombocytopenic purpura” Blood 98(4): 952-957 (2001);Mattews, R. “Medical Heretics” New Scientist (7 April, 2001);Leandro et al. “Clinical outcome in 22 patients with rheumatoid arthritis treated with B lymphocyte depletion” Ann Rheum Dis 61: 833-888 (2002);Leandro et al. “Lymphocyte depletion in rheumatoid arthritis: early evidence for safety, efficacy and dose response. Arthritis and Rheumatism 44(9):S370 (2001);Leandro etal. “An open study of B lymphocyte depletion in systemic lupus erythematosus”, Arthritis & Rheumatism 46(1): 2673-2677 (2002);Edwards and Cambridge “Sustained improvement in rheumatoid arthritis following a protocol designed to deplete B lymphocytes” Rheumatology 40: 205-211 (2001);Edwards et al. “B-lymphocyte depletion therapy in rheumatoid arthritis and other autoimmune disorders” Biochem. Soc. Trans. 30(4): 824-828 (2002);Edwards et al. “Efficacy and safety of Rituximab, a B-cell targeted chimeric monoclonal antibody: A randomized, placebo controlled trial in patients with rheumatoid arthritis. Arthritis and Rheumatism 46(9): S197 (2002);Levine and Pestronk “IgM antibody-related polyneuropathies: B-cell depletion chemotherapy using Rituximab” Neurology 52: 1701-1704 (1999);DeVita et al. “Efficacy of selective B cell blockade in the treatment of rheumatoid arthritis” Arthritis & Rheum 46: 2029-2033 (2002);Hidashida et al. “Treatment of DMARD-Refractory rheumatoid arthritis with rituximab.” Presented at the Anfzual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; New Orleans, LA 2002;Tuscano, J. “Successful treatment of Infliximab-refractory rheumatoid arthritis with rituximab” Presented at the Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; New Orleans, LA 2002。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一態様は、哺乳類におけるB細胞レベルの低減方法であって、BLySアンタゴニストおよび抗CD20剤を投与することを包含する方法である。好ましい一方法は、BLySアンタゴニストが、TACIの細胞外ドメインまたはその機能的断片を含むTACI−Fc融合タンパク質、BAFF−Rの細胞外ドメインまたはその機能的断片を含むBAFF−R−Fc融合タンパク質、あるいはBCMAの細胞外ドメインまたはその機能的断片を含むBCMA−Fc融合タンパク質であり得るFc融合タンパク質である場合である。特に、Fc融合タンパク質は、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25または配列番号26のポリペプチド配列を含む。
【0013】
別の実施形態では、BLySアンタゴニストは、好ましくは、配列番号8のアミノ酸162〜275を含む領域内でBLySを結合するBLyS抗体、またはLymphoStat-Bとして知られているBLyS抗体である。さらなる実施形態では、BLySアンタゴニストは、配列番号2の72〜109または配列番号2の82〜222を含む領域内でTACIを結合するTACI抗体である。
【0014】
本発明の方法において、意図される抗CD20剤のいくつかとしては、リツキサン(登録商標)が挙げられるが、しかしCD20抗原を標的にする任意の薬剤が適切である。本発明の方法により低減されるB細胞レベルは、全B細胞数(例えば循環B細胞数)、メモリーB細胞数および脾臓B細胞数(例えば胚中心B細胞数)の測定値のうちの少なくとも1つであり得る。
【0015】
本発明は、B細胞調節性自己免疫障害の軽減方法であって、治療的有効量の抗CD20剤およびBLySアンタゴニストを前記障害に罹患している患者に投与することを包含する方法も包含する。一実施形態では、自己免疫障害は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、狼瘡性腎炎(LN)、ウェーゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経炎、重症筋無力症、血管炎、真性糖尿病、レーノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群から選択される。このようにして具体的に治療される一疾患は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)である。
【0016】
特に、自己免疫障害が関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡または狼瘡性腎炎である場合、一実施形態では、BLySアンタゴニストおよび抗CD20剤は、免疫抑制薬、例えば非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、糖質コルチコイド、プレドニソンおよび疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を用いた療法とさらに連係して投与され得る。
【0017】
本発明の方法は、自己免疫疾患を治療するのに有効であることが示されている免疫抑制薬も利用し得る。本発明の方法に用いるために意図される免疫抑制薬の例は、シクロホスファミド(CYC)、アザチオプリン(AZA)、シクロスポリンA(CSA)およびミコフェノール酸モフェチル(MMF)である。
【0018】
抗CD20剤およびBLySアンタゴニストが患者に投与される障害の治療または軽減の方法のいずれかにおいて、抗CD20剤およびBLySアンタゴニストは、同時的にまたは逐次的に投与され得る。特定の一実施形態では、抗CD20剤はBLySアンタゴニストの前に投与される。
【0019】
抗CD20剤およびBLySアンタゴニストを含む組成物も提供される。
【0020】
本発明によりさらに提供されるのは、抗CD20剤、BLySアンタゴニストおよびラベルを含む製品であって、上記ラベルが、上記組成物がB細胞調節性自己免疫障害を治療するためである、ということを示す製品である。
【0021】
本発明の方法、組成物および製品の実施形態のいずれかにおいて、BLySアンタゴニストまたは抗CD20剤は、抗体である場合、キメラおよびヒト化抗体を包含する。
【0022】
本発明の方法、組成物および製品の実施形態のいずれかにおいて、BLySアンタゴニストは、一実施形態では、BLySを結合する受容体の細胞外ドメインと免疫グロブリンのFcドメインとの間の融合タンパク質、またはFc融合タンパク質である。特定実施形態では、Fc融合タンパク質は、TACIの細胞外ドメインを含むTACI−Fc融合タンパク質、特にアタシセプト、BAFF−Rの細胞外ドメインを含むBAFF−R−Fc融合タンパク質、特にBR3−Ig、ならびにBCMAの細胞外ドメインを含むBCMA−Fc融合タンパク質からなる群から選択される。他の実施形態では、BLySアンタゴニストは、BLyS抗体、特に、残基162〜275を含むBLySの一領域内でBLySを結合するBLyS抗体、特にリンホスタットBである。別の実施形態では、BLySアンタゴニストは、BAFF−R抗体、例えばヒトBAFF−Rの残基23〜38を含む領域で結合するものである。別の実施形態では、BLySアンタゴニストは、TACI抗体、BCMA抗体、または米国特許出願2003-0012783に記載されたような両分子を結合する抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例3のゲーティング戦略を利用する例示的FACS結果と、その後の細胞集団の、特にカニクイザル脾臓におけるB細胞レベルの分析を示す。この特定例は、対照、例えばリツキサン(登録商標)の代わりにビヒクルで処理された脾臓である。この例は、総脾臓リンパ球(図1A)、CD40+/CD3−Bリンパ球(図1B)、およびCD40+/CD3−/CD21+/CD27+メモリーB細胞(図1C)を示す。実施例4で報告される結果は、ここに示した例と同様の方法で実施されるFACS分析の平均値である。
【0024】
【図2】実施例5に記載される組合せ実験に関する試験日数80日を通してのマウスにおける総B細胞(CD45+/B220+)の絶対数を示すグラフである。
【0025】
【図3】実施例5に記載される組合せ実験に関する試験日数80日を通してのヒトCD20トランスジェニックマウスにおけるヒトCD20+B細胞(B220+/huCD20+)の絶対数を示すグラフである。
【0026】
【図4】細胞集団の、特にマウス末梢血注のB細胞レベルの分析のための実施例5のゲーティング戦略を利用する例示的FACS結果を示す。この特定例は、対照、例えばビヒクルで処理されたヒトCD20トランスジェニックマウスである。この例では、図4Aは、CD45リンパ球に関して選択する総白血球を示し、次に、図4Bでは、CD45+リンパ球集団からCD45+/B220+B細胞を選択する。図4Cは、末梢血からのリンパ球に関する選択を示し、図4Dは、リンパ球集団からのB220プラスおよびCD3+細胞の選択を示すグラフであり、そして図4Eは、B220+リンパ球集団の大多数がhuCD20+であるということを示す。 (好ましい実施形態の詳細な説明)
【0027】
抗CD20剤処理は自己免疫疾患の治療に有用であると思われるが、抗CD20剤とBLySアンタゴニストの組合せの投与は、自己抗原に向けられる抗体の産生に関与すると考えられるB細胞における多数のシグナル経路を遮断し、それにより自己免疫状態の引き金となり、それを永続させる治療方法である、ということが本明細書中の実験から発見された。これは、このような治療を受けている哺乳類において、B細胞数の低減を、順次、循環免疫グロブリンの低減を生じる。理論に縛られずに考えると、このようなものとして、循環免疫グロブリンは、自己免疫疾患の陰性症候の引き金となるのに少なくとも部分的に関与し、したがって、抗CD20剤およびBLyS経路に対して向けられる両方の組合せは、B細胞媒介性疾患、例えばB細胞ベースの自己免疫疾患の新規の治療方法を提供する。抗CD20剤とBLySアンタゴニストとの組合せ療法は、ある疾患、例えばSLEのための現行治療に対するより有効な代替物を提供し得る。
【0028】
「自己免疫疾患」は、本明細書中では、個体自身の(自己)抗原および/または組織に対して向けられて産生される抗体から生じる任意の悪性疾患または障害である。
【0029】
本明細書中で用いる場合、「B細胞枯渇」は、治療前のレベルと比較した場合の、薬剤または抗体治療後の動物またはヒトにおけるB細胞レベルの低減を指す。B細胞レベルは、周知の検定を用いて、例えば完全血球数を得ることにより、既知のB細胞マーカーに関して染色するFACS分析により、そして実験例に記載されるような方法により、測定可能である。B細胞枯渇は、部分的または完全であり得る。B細胞枯渇薬を摂取中の患者では、B細胞は、一般的に、薬剤が患者の身体中で循環している継続時間およびB細胞の回復のための時間に関して枯渇される。
【0030】
「抗CD20剤」という用語は、CD20と結合し、最も好ましい実施形態では、殺害のためにCD20タンパク質と会合される細胞を標的にする任意の分子を包含する。このような分子としては、抗CD20抗体、例えばリツキサン(登録商標)、ならびにその薬の後続バージョン、例えばオクレリズマブ、その抗体のヒト化バージョン、オファツムバブ(HuMax−CD20(登録商標) 完全ヒト抗CD20剤)、DXL625(第二世代抗CD20モノクローナル)、GA101(Fc領域変更を有する第三世代抗CD20剤)、米国特許出願20060121032に記載された抗CD20分子、米国特許出願20070014720に記載された抗CD20分子、米国特許出願20060251652に記載された抗CD20分子、米国特許出願20050069545に記載された抗CD20分子、米国特許出願20040167319に記載された抗CD20分子、TRU−015(CD20を標的にする小分子免疫製剤分子)、ならびにイブリツモマブ(ゼバリン(登録商標))のような共役分子が挙げられる。
【0031】
「免疫抑制薬」は、免疫系を妨害し、そして外来または自己抗原に対するその応答を鈍らせる任意の分子である。シクロホスファミド(CYC)およびミコフェノレートモフェチル(MMF)は、2つのこのような種類の分子である。この用語は、免疫系を下向き調節する場合の治療薬として有用な任意の薬剤または分子を包含するよう意図される。この方法は、特に、自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、狼瘡性腎炎(LN)、ウェーゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経炎、重症筋無力症、血管炎、真性糖尿病、レーノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎を治療するために用いられてきた薬剤を意図する。
【0032】
「BLyS」または「BLySポリペプチド」、「TALL−1」または「TALL−1ポリペプチド」、あるいは「BAFF」または「BAFFポリペプチド」という用語は、本明細書中で用いる場合、「ネイティブ配列BLySポリペプチド」および「BLyS変異体」を包含する。「BLyS」は、ヒトBLyS配列(配列番号7)またはマウスBLyS配列(配列番号9)によりコードされるポリペプチドに対して与えられる呼称である。BLyS生物学的活性を示すポリペプチドは、同様にこの呼称内に包含される。例えば、生物学的に活性なBLySは、in vitroまたはin vivoで、以下の事象のいずれか1つまたはその組合せを強化する:B細胞の生存増大、IgGおよび/またはIgMのレベル増大、形質細胞の数増大、ならびに脾臓B細胞中でのp52NF−KbへのNF−Kb2/100のプロセシング(例えば、Batten, M et al., (2000) J. Exp. Med. 192: 1453-1465;Moore, et al., (1999) Science 285: 260-263;Kayagaki, et al., (2002) 10: 515-524)。BLySアンタゴニストを試験するのに有用ないくつかの検定、例えばとりわけWO 00/40716に記載されたB細胞増殖検定は、当業者によく知られている。
【0033】
要するに、ヒトB細胞は、メーカーの使用説明書に従って、CD19磁気ビーズおよびVarioMacs磁気分離系(Miltenyi Biotec Auburn, CA)を用いて、末梢血単核球から単離される。精製B細胞は、可溶性BLyS(25 ng/ml)および組換えヒトIL−4(10 ng/ml, Pharmingen)と混合され、細胞は、1×105細胞/ウエルで丸底96ウエルプレート上でプレート化される。試験されるべきBLySアンタゴニストは、約5μg/mlから約6 ng/mlに希釈され、B細胞とともに5日間インキュベートされて、4日目に1μCi3H−チミジン/ウエルで一晩パルスする。対照として、BLySアンタゴニストはさらにまた、BLySを伴わずに、B細胞およびIL−4とともにインキュベートされ得る。プレートは、Packardプレート採取器を用いて採取され、Packard読取装置を用いて計数される。
【0034】
「ネイティブ配列」ポリペプチドは、天然由来の対応するポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。このようなネイティブ配列ポリペプチドは、自然界から単離され、組換えおよび/または合成手段により産生され得る。「ネイティブ配列」という用語は、具体的には、ポリペプチドの、天然切頭化可溶性または分泌形態(例えば細胞外ドメイン配列)、天然変異体形態(例えば代替的にはスプライス化形態)、ならびに天然対立遺伝子変異体を包含する。
【0035】
概して、本明細書中に開示されるポリペプチドのいずれかに関する「変異体」ポリペプチドは、1つまたは複数のアミノ酸残基が、全長または「ネイティブ配列」アミノ酸配列のNおよび/またはC末端に、ならびに1つまたは複数の内部ドメイン内に付加されるかまたは欠失されるポリペプチドを包含する。受容体の細胞外ドメインを考察する場合、ネイティブ配列BLySポリペプチドを結合する断片も意図される。逆に、BLyS断片を考察する場合、3つのBLyS受容体のうちのいずれか1つまたは複数を結合する断片が意図される。普通は、変異体ポリペプチドは、当該ポリペプチドまたはその特定断片と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、さらに好ましくは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する。一般的には、変異体ポリペプチドはネイティブポリペプチド配列を包含しない。普通は、変異体ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長、しばしば少なくとも約20アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約30アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約40アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約50アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約60アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約70アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約80アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約90アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約100アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約150アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約200アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約250アミノ酸長、さらにしばしば少なくとも約300アミノ酸長、またはそれ以上である。
【0036】
上記のように、BLySアンタゴニストは、直接または間接的に機能して、in vitroまたはin vivoでBLySを部分的にまたは完全に遮断し、抑制し、または中和し得る。例えばBLySアンタゴニストは、BLySを直接結合し得る。例えば直接結合剤は、TACI、BAFF−RおよびBCMAのようなBLyS受容体の細胞外ドメイン(ECD)を含むポリペプチドである。
【0037】
本発明に関与するBLyS受容体は、以下のように説明され得る。本発明のTACIポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1〜246を含むかまたはそれからなるTACIポリペプチドを包含する。「TACI」という一般用語は、WO 98/39361、WO 00/40716、WO 01/85782、WO 01/87979、WO 01/81417およびWO 02/094852に記載されたTACIポリペプチドを包含する。本発明のTACIポリペプチドは、種々の供給源から、例えばヒト組織型から、または別の供給源から単離されるか、あるいは組換えおよび/または合成方法により調製され得る。本発明のBAFF−Rポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸残基1〜184の連続配列を含むかそれからなるBAFF−Rポリペプチドを包含する。一般用語「BAFF−R」は、WO 02/24909およびWO 03/14294に記載されたBAFF−Rポリペプチドを包含する。本発明のBAFF−Rポリペプチドは、種々の供給源から、例えばヒト組織型から、または別の供給源から単離されるか、あるいは組換えおよび/または合成方法により調製され得る。本発明のBCMAポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸残基1〜184を含むかまたはそれからなるBCMAポリペプチドを包含する。一般用語「BCMA」は、Laabi et al., EMBO J. 11: 3897-3904 (1992);Laabi et al., Nucleic Acids Res., 22: 1147-1154 (1994);Gras et al., Int. Immunology, 7: 1093-1106 (1995);およびMadry et al., Int. Immunology, 10: 1693-1702 (1998)に記載されたBCMAを包含する。本発明のBCMAポリペプチドは、種々の供給源から、例えばヒト組織型から、または別の供給源から単離されるか、あるいは組換えおよび/または合成方法により調製され得る。
【0038】
BLySアンタゴニストとして機能するという目的のために、これらの受容体のECDは、BLySを結合する能力を一般的に保持する膜貫通または細胞質ドメインを本質的に有さないポリペプチドである。具体的には、TACIの細胞外ドメインは、TACIポリペプチド配列(配列番号2)のアミノ酸1〜154を含み得る。さらに、ECDは、この配列の断片または変異体、例えばvon Bulow et al.、上記、WO 98/39361、WO 00/40716、WO 01/85782、WO 01/87979およびWO 01/81417に記載されたようなTACIのECD形態であり得る。特に、これらのECD形態は、配列番号2のアミノ酸1〜106、配列番号2のアミノ酸1〜142、配列番号2のアミノ酸30〜154、配列番号2のアミノ酸30〜106、配列番号2のアミノ酸30〜110、配列番号2のアミノ酸30〜119、配列番号2のアミノ酸1〜166、配列番号2のアミノ酸1〜165、配列番号2のアミノ酸1〜114、配列番号2のアミノ酸1〜119、配列番号2のアミノ酸1〜120および配列番号2のアミノ酸1〜126を含み得る。さらに、TACI ECDは、1つの富システインドメインのみを有する分子を含み得る。
【0039】
BAFF−RのECD形態は、BAFF−Rポリペプチド配列(配列番号4)のアミノ酸1〜71を含むものを包含する。さらに、ECDは、この配列の断片または変異体、例えばWO 02/24909、WO 03/14294およびWO 02/38766に記載されたようなBAFF−RのECD形態であり得る。特に、これらのECD形態は、配列番号4のアミノ酸1〜77、配列番号4のアミノ酸7〜77、配列番号4のアミノ酸1〜69、配列番号4のアミノ酸7〜69、配列番号4のアミノ酸2〜62、配列番号4のアミノ酸2〜71、配列番号4のアミノ酸1〜61および配列番号4のアミノ酸2〜63、配列番号4のアミノ酸1〜45、配列番号4のアミノ酸1〜39、配列番号4のアミノ酸7〜39、配列番号4のアミノ酸1〜17、配列番号4のアミノ酸39〜64、配列番号4のアミノ酸19〜35および配列番号4のアミノ酸17〜42を含み得る。さらに、BAFF−R ECDは、1つの富システインドメインを有する分子を含み得る。
【0040】
BCMAのECD形態は、BCMAポリペプチド配列(配列番号6)のアミノ酸1〜48を含むものを包含する。さらに、ECDは、この配列の断片または変異体、例えばWO 00/40716およびWO 05/075511に記載されたようなBCMAのECD形態であり得る。特に、これらのECD形態は、配列番号6のアミノ酸1〜150、配列番号6のアミノ酸1〜48、配列番号6のアミノ酸1〜41、配列番号6のアミノ酸8〜41、配列番号6のアミノ酸8〜37、配列番号6のアミノ酸8〜88、配列番号6のアミノ酸41〜88、配列番号6のアミノ酸1〜54、配列番号6のアミノ酸4〜55、配列番号6のアミノ酸4〜51および配列番号6のアミノ酸21〜53を含み得る。さらに、BCMA ECDは、部分的富システインドメインのみを有する分子を含み得る。
【0041】
さらなる実施形態では、BLyS受容体のBLyS結合領域(例えば、BAFF−R、BCMAまたはTACIの細胞外ドメインまたはその断片)は、免疫グロブリン分子のFc部分と融合されて、in vivoでのその溶解性を助長し得る。一実施形態によれば、BLySアンタゴニストは、100nMまたはそれ以下の結合親和性でBLySポリペプチドと結合する。別の実施形態によれば、BLySアンタゴニストは、10nMまたはそれ以下の結合親和性でBLySポリペプチドと結合する。さらに別の実施形態によれば、BLySアンタゴニストは、1nMまたはそれ以下の結合親和性でBLySポリペプチドと結合する。
【0042】
別の例では、BLySアンタゴニストは、ネイティブ配列でないBLyS結合ポリペプチドまたはその変異体を包含する。このようなポリペプチドのいくつかの例は、WO 05/000351に記載されたような式I、式II、式IIIの配列を有するものである。特に、いくつかの結合ポリペプチドは、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号13)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号14)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号15)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号16)、ECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号17)またはWO 05/000351の図32に列挙された配列を包含する。
【0043】
代替的には、BLySアンタゴニストは、そのBLyS結合領域でネイティブ配列TACI、BAFF−RまたはBCMAの細胞外ドメインを結合して、in vitro、in situまたはin vivoでBLyS結合を部分的にまたは完全に遮断し、抑制し、または中和し得る。例えばこのような間接的アンタゴニストは、BLySの結合が立体的に妨げられるよう、TACIの一領域で結合するTACI抗体である。例えば、アミノ酸72〜109または隣接領域での結合は、BLyS結合を遮断すると考えられる。この分子とのAPRIL結合を遮断することも有益であり、これは、アミノ酸82〜222の領域で起きると考えられる。別のBLySアンタゴニストは、ヒトBAFF−RとBLySとの結合が立体的に妨げられるよう、BAFF−Rの領域で結合するBAFF−R抗体である。例えばアミノ酸23〜38またはアミノ酸17〜42または隣接領域での結合は、BLyS結合を遮断すると考えられる。最後に、BLySの結合が立体的に妨げられるよう、さらなる間接的アンタゴニストはBCMAの一領域で結合するBCMA抗体である。例えば、アミノ酸5〜43または隣接領域は、BLyS(またはAPRIL)結合を遮断すると考えられる。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明によるBLySアンタゴニストはBLyS抗体を包含する。「抗体」という用語は、言及する場合、最も広い意味で用いられ、具体的には、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多エピトープ特異性を有する抗体、一本鎖抗体、ならびに抗体を網羅する。いくつかの実施形態によれば、抗体がTACI、BAFF−RまたはBCMAと結合し、そしてそれらと結合するBLySを抑制し得るよう、本発明のポリペプチドは、例えば、可変領域で、またはCDRで抗体フレームワークに融合され、あるいはBLySシグナル伝達を抑制する。本発明のポリペプチドを含む抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体であり得る。本発明のポリペプチドを含む抗体は、抗体断片であり得る。代替的には、本発明の抗体は、本発明のポリペプチドで動物を免疫化することにより産生され得る。したがって、本発明のポリペプチドに対して向けられる抗体が意図される。
【0045】
特に、ヒトBLySの162、163、206、211、231、233、264及び265からなる群から選択されるアミノ酸の残基162〜275および/または隣接アミノ酸を含むヒトBLyS(配列番号8)の一領域内で結合するBLySに特異的な抗体が意図される。抗体の結合の結果、抗体は、その受容体のうちの1つまたは複数と結合するBLySを立体的に妨げるようになる。このような抗体は、WO 02/02641およびWO 03/055979に記載されている。特に好ましい抗体は、リンホスタットB(Baker et al. (2003) Arthritis Rheum, 48, 3253-3265)として記載されたものである。
【0046】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書中で用いる場合、実質的に同質の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る可能性がある天然突然変異を除いて、同一である。
【0047】
モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一抗原部位に対して向けられる。さらに、典型的には異なる決定因子(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を包含する慣用的(ポリクローナル)抗体調製物と対比して、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一決定因子に対して向けられる。それらの特異性のほかに、モノクローナル抗体は、それらがハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリンに夾雑されないという点で、有益である。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に同質の集団から得られるものであるという当該抗体の特質を示し、任意の特定方法による抗体の産生を要すると意図されるべきでない。例えば、本発明に従って用いられるべきモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256: 495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ方法により作製され得るし、あるいは組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号参照)により作製され得る。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)に記載された技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーからも単離され得る。
【0048】
本明細書中のモノクローナル抗体としては、具体的には、重および/または軽鎖の一部は特定の種に由来するかあるいは特定抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるかまたは相同であるが、一方、残りの鎖(単数または複数)は別の種に由来するかあるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する後退中の対応する配列と同一であるかまたは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびに、所望の生物学的活性を示す限りはこのような抗体の断片が挙げられる(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 (1984))。キメラ抗体の作製方法は、当該技術分野で知られている。
【0049】
「ヒト化」形態の非ヒト(例えばネズミ)抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合サブ配列)である。
【0050】
最大部分に関しては、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラットまたはウサギのCDRからの残基に取って代わられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に取って代わられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中に、あるいは移入CDRまたはフレームワーク配列中に見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良し、最大にするために成される。概して、ヒト化抗体は、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインのうちの実質的にすべてを含み、この場合、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、そしてFR領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のものであるが、FR領域は、結合親和性を改良する1つまたは複数のアミノ酸置換を包含し得る。FR中のこれらのアミノ酸置換の数は、典型的にはH鎖中で6以下であり、L鎖中では、3以下である。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部も含む。さらなる詳細に関しては、Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986);Reichmann et al., Nature, 332: 323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596 (1992)を参照されたい。ヒト化抗体としては、抗体の抗原結合領域が、例えば糖外抗原でマカクザルを免疫化することにより産生される抗体に由来するPRIMATIZED抗体が挙げられる。ヒト化抗体の製造方法は、当該技術分野で知られている。
【0051】
ヒト抗体も、当該技術分野で知られている種々の技法、例えばファージ表示ライブラリーを用いて産生され得る(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol., 222: 581 (1991))。Cole等およびBoerner等の技法も、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能である(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77 (1985);Boerner et al., J. Immunol., 147(1): 86-95 (1991))。
【0052】
本発明の結合抗体の「機能的断片」は、それらが由来する無傷完全鎖分子と実質的に同一の親和性を有してBLyS、TACI、BAFF−RまたはBCMAとの結合を保持し、そして本明細書中に記載されるようなin vitroまたはin vivo検定により測定した場合にB細胞を枯渇させ得る断片である。
【0053】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(ネイティブ配列Fc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する生物学的活性を指し、抗体アイソタイプに伴って変わる。抗体エフェクター機能の例としては、以下のものが挙げられる:Clq結合及び補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下向き調節;およびB細胞活性化。
【0054】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」は、ある細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合される分泌Igが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を抗原保有標的細胞と特異的に結合させて、その後、標的細胞を細胞毒素で殺害させる細胞傷害の一形態を指す。抗体は、細胞傷害性細胞を「抱き込んで」、このような殺害のためには無条件に必要とされる。ADCCを媒介するための主要細胞であるNK細胞はFcyRIIIのみを発現するが、一方、単球はFcyRI、FcyRIIおよびFcyRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet, Ann. Rev. Immunol 9: 457-92 (1991)の464ページの表3に要約されている。当該分子のADCC活性を査定するために、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されたようなin vitroADCC検定が実施され得る。このような検定のために有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的には、または付加的には、当該分子のADCC活性は、例えばClynes etal. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されたような動物モデルにおいて、in vivoで査定され得る。
【0055】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、それらのコグネイト抗原と結合される(適切なサブクラスの)抗体との、補体系(Clq)の一次構成成分の結合により開始される。補体活性化を査定するために、例えばGazzano-Santoroetal., J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)に記載されるようなCDC検定が実施され得る。
【0056】
「単離」抗体は、同定され、その天然環境の一構成成分から分離および/または回収されたものである。その天然環境の夾雑構成成分は、抗体に関する診断的または治療的使用を妨げる物質であり、例としては、酵素、ホルモン、およびその他のタンパク様または非タンパク様溶質が挙げられる。好ましい実施形態では、抗体は、(1)ローリー法により確定した場合に95重量%より以上に、最も好ましくは99重量%以上に、(2)スピニングカップシーケネーターの使用により少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度にまで、あるいは(3)クーマシーブルーを、または好ましくは銀染色を用いた還元または非還元条件下でのSDS−PAGEにより均質に、精製される。
【0057】
抗体の天然環境のうちの少なくとも1つの構成成分が存在しないため、単離抗体は組換え細胞内のin situでの抗体を包含する。しかしながら、普通は、単離抗体は少なくとも1つの精製段階により調製される。
【0058】
アミノ酸は、それらの側鎖の特性における類似性によってグループ分けされ得る(A.L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp.73-75, Worth Publishers, New York (1975)):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H−)。代替的には、天然残基は、共通の側鎖特性に基づいて群に分けられ得る:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0059】
本発明内で用いられるような「保存的」アミノ酸置換という用語は、機能的に等価のアミノ酸を置換するアミノ酸置換を指すよう意図される。保存的アミノ酸変化は、その結果生じるペプチドのアミノ酸配列におけるサイレント変化を生じる。例えば、類似の極性の1つまたは複数のアミノ酸は機能的等価物として作用して、ペプチドのアミノ酸内でサイレント変化を生じる。概して、一群内の置換は、構造および機能に関して保存的であると考えられ得る。しかしながら、特定残基の役割はそれが生じる分子の三次元構造内でのその状況により確定される、と当業者は認識する。例えばCys残基は、酸化(ジスルフィド)形態で生じ、これは還元(チオール)形態より極性が低い。Arg側鎖の長い脂肪族部分は、その構造的または機能的役割の重要な特徴を構成し得るし、これは、別の塩基性残基というよりむしろ非極性残基の置換により最良に保存され得る。さらに、芳香族基(Trp、TyrおよびPhe)を含有する側鎖は、イオン−芳香族または「陽イオン−pi」相互作用に関与し得る、と認識される。これらの場合、酸性または非荷電極性基の一成員によるこれらの側鎖のうちの1つの置換は、構造および機能に関して保存的であり得る。Pro、GlyおよびCysのような残基(ジスルフィド形態)は、主鎖立体配座に直接的影響を及ぼし得るし、しばしば、構造的歪みを伴わずに置換され得ない。
【0060】
本明細書中で同定されるリガンドまたは受容体ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を一列に並べ、ギャップを導入して、必要な場合は最大%の配列同一性を達成し、配列同一性の一部として如何なる保存的置換も考慮しなかった後の、本明細書中で同定されるこのようなリガンドまたは受容体配列と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性%を確定するという目的のためのアラインメントは、当該技術分野内である種々の方法で、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN、ALIGN−2またはメガリン(DNASTAR)ソフトウェアのような公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて、達成され得る。比較されている配列の全長全体で最大アラインメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを用いて、当業者はアラインメントを測定するための適切なパラメーターを確定し得る。しかしながら本明細書中の目的のためには、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータープログラムALIGN−2を用いることにより、下記のようにして得られるが、この場合、ALIGN−2プログラムに関する完全なソースコードは下記の表中に提示される。ALIGN−2配列比較コンピュータープログラムは、Genentechにより創始されたものであり、下記の表で示されるソースコードは、米国著作権庁(Washington D.C., 20559)でユーザー文書とともにファイルされており、ここでは、それは米国著作権登録番号TXU510087下で登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech, Inc.(South San Francisco, California)を通して公的に入手可能であり、あるいは下記の表中に提示されるソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN−2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0Dで用いるためにコンパイルされるべきである。配列比較パラメーターはすべて、ALIGN−2プログラムにより設定され、変化しない。
【0061】
突然変異誘発のための好ましい位置であるタンパク質中のある残基または領域の同定のための有用な方法は、Cunningham and Wells Science, 244: 1081-1085 (1989)により記載されたように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。一残基または標的残基の群が同定され(例えば荷電残基、例えばarg、asp、his、lysおよびglu)、そして中性または負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)により取って替わられて、アミノ酸と結合標的との相互作用に影響を及ぼす。次に、置換の部位にまたは置換のためにさらなるまたは他の変異体を導入することにより、置換に対する機能的感受性を実証するそのアミノ酸位置が精緻なものにされる。したがって、アミノ酸配列変異を導入するための部位が予め決定される一方で、突然変異の性質それ自体は、予め決められる必要はない。例えば、所定部位での突然変異の成果を分析するために、a laスキャニングまたはランダム突然変異誘発が標的コドンまたは領域で実行され、発現変異体が所望の活性に関してスクリーニングされる。
【0062】
「二面角」という用語は、単結合周囲の回転を指す(例えばCreighton, T.E., (1993) Protein : Structures and Molecular Properties, 2 ed., W.H. Freeman and Company, New York, NY参照)。「ファイ(φ)」という用語は、アミノ酸のN−C結合周囲の回転を意味する二面角である(例えばCreighton, T.E., (1993) Protein : Structures and Molecular Properties, 2 ed., W.H. Freeman and Company, New York, NY参照)。I型β回転は、Hutchinson, E.G. & Thornton, J.M. (1994) A revised set of potentials for beta burn formation in proteins. Protein Science 3, 2207-2216に記載されている。
【0063】
「融合タンパク質」および「融合ポリペプチド」は、一緒に共有結合される2つの部分を有するポリペプチドを指し、この場合、その部分の各々は異なる特性を有するポリペプチドである。特性は、生物学的特性、例えばin vitroまたはin vivoでの活性であり得る。特性は、単純な化学的または物理的特性、例えば標的分子との結合、反応の触媒作用等でもあり得る。2つの部分は、単純ペプチド結合により直接的に、あるいは1つまたは複数のアミノ酸残基を含有するペプチドリンカーを介して連結され得る。一般的には、2つの部分およびリンカーは、互いにリーディングフレーム中である。
【0064】
「接合体」は、任意のハイブリッド分子、例えば融合タンパク質、ならびにアミノ酸またはタンパク質部分および非タンパク質部分の両方を含有する分子を指す。接合体は、当該技術分野で既知の種々の技術により、例えば組換えDNA技術、固相合成、液相合成、有機化学合成技術、またはこれらの技術の組合せにより合成され得る。合成の選択は、生成されるべき特定の分子に依っている。例えば、性質上、完全に「タンパク質」であるというわけではないハイブリッド分子は、組換え技法と液相技法の組合せにより合成され得る。
【0065】
本明細書中で用いる場合、「Fc融合タンパク質」という用語は、異種タンパク質の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組合せる抗体様分子を意味する。構造的には、Fc融合タンパク質は、抗体の抗原認識および結合部位以外である(すなわち、「異種」である)所望の特異性を有するアミノ酸配列堵免疫グロブリン呈上ドメイン配列の融合物を含む。Fc融合タンパク質分子は、典型的には、少なくとも、受容体またはリガンドの結合部位を含む連続アミノ酸配列を包含する。Fc融合タンパク質中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン、例えばIgG−1、IgG−2、IgG−3またはIgG−4サブタイプ、IgA(例えばIgA−1およびIgA−2)、IgE、IgDまたはIgMから得られる。例えば、本発明による有用なFc融合タンパク質は、BLyS受容体の膜貫通または細胞質配列を伴わないBLyS受容体のBLyS結合部分を含むポリペプチドである。一実施形態では、BAFF−R、TACIまたはBCMAの細胞外ドメインは、免疫グロブリン配列の定常ドメインと融合される。
【0066】
「哺乳類」という用語は、哺乳類、例えばヒト、家畜および農場動物、ならびに動物園動物、スポーツ用動物またはペット動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等として分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0067】
「治療的有効量」という用語は、被験者または哺乳類における疾患または障害を「軽減する」かまたは「治療する」のに有効な抗体またはアンタゴニスト薬剤の量を指す。癌の場合、治療的有効量の薬剤は、癌細胞の数を低減し、腫瘍サイズを低減し、末梢器官への癌細胞浸潤を抑制し(すなわち、ある程度まで遅くし、好ましくは停止し)、腫瘍転移を抑制し(ある程度まで遅くし、好ましくは停止し)、ある程度まで腫瘍増殖を抑制し、および/または癌に関連した症候のうちの1つまたは複数をある程度まで軽減し得る(下記の「治療される」の定義を参照)。薬剤が増殖を防止し、および/または現存する癌細胞を殺害し得る範囲で、それは細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であり得る。
【0068】
本発明のBLySまたはBLyS受容体抗体は、一時的または安定的トランスフェクション真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞により産生され得る。
【0069】
「担体」は、本明細書中で用いる場合、用いられる投与量およびの独活でそこに曝露されている細胞または哺乳類に対して細胞傷害性である製薬上許容可能な担体、賦形剤または安定剤を包含する。しばしば、生理学的に許容可能な担体は、水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容可能な担体の例としては、緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩およびその他の有機酸;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシン;単糖、二糖および他の炭水化物、例えばグルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート化剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えばトゥイーンポリエチレングリコール(PEG)およびプルロニックスTMが挙げられる。
ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞
【0070】
本明細書中に開示される多数の実施形態によれば、BLySアンタゴニストは、特定のベクター中の特定ポリヌクレオチドを用いて、および特定宿主細胞を持ち家産生される特定ポリペプチドを含み得る。本発明の種々の型のポリペプチドは広範に記載され、受容体ベースの配列、抗体ベースの配列および人工(すなわち、非ネイティブ)結合配列からなる群から選択され得る。受容体ベースの配列の例は、in vivoでBLySを結合する受容体、例えばTACI、BAFF−RまたはBCMAのドメインから単離されたかまたはそれらに由来したBLySを結合する配列である。抗体ベースの配列は、抗体開発技術を用いて産生されるものであり、抗体分子の一般的構造を保持する。抗体ベースのハエの例は、リンホスタットB、またはBLySの受容体に対する抗体である。人工結合配列の例としては、本明細書中に記載される17merペプチド、コア領域として1つまたは複数の17merを混入するポリペプチド、ならびに共有的修飾形態の17merペプチドおよびポリペプチド(例えば、Fc融合タンパク質、標識化ポリペプチド、保護化ポリペプチド、共役ポリペプチド、融合タンパク質等)が挙げられる。これらの形態のポリペプチドを製造するために用いられる種々の技法は、本明細書中に記載されている。ポリペプチドを標識し、分子をポリペプチドに共役させるための方法は、当該技術分野で知られている。
【0071】
本発明の組成物は、当該技術分野で知られている組換え技術を用いて調製され得る。
【0072】
下記は、コード核酸を含有するベクターで形質転換されるかまたはトランスフェクトされる宿主細胞を培養し、細胞培養からポリペプチドを回収することにより、このような特定ポリペプチドを産生する方法に関する(例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New Y: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989);Dieffenbach et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)参照)。
【0073】
所望のポリペプチドをコードする核酸(例えばcDNAまたはゲノムDNA)は、さらなるクローニング(DNAの増幅)のために、または発現のために、複製可能ベクター中に挿入され得る。種々のベクターは、公的に利用可能である。ベクター構成成分としては、一般的には、以下の:シグナル配列、複製の起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサー素子、プロモーター、および転写終結配列(これらの各々は池に記載される)のうちの1つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない。用いられ得る任意のシグナル配列、複製の起点、マーカー遺伝子、エンハンサー素子および転写終結配列は当該技術分野で知られており、WO 97/25428にさらに詳細に記載されている。
【0074】
発現およびクローニングベクターは、通常は、宿主生物体により認識され、コード核酸配列と操作可能的に連結されるプロモーターを含有する。プロモーターは、それらが操作可能的に連結される特定の核酸配列の転写および翻訳を制御する構造遺伝子の開始コドン(一般的に約100〜1000 bp以内)に対して上流(5’)に位置する非翻訳配列である。このようなプロモーターは、典型的には、2つのクラス、すなわち、誘導性および構成性に分かれる。誘導性プロモーターは、培養条件における何らかの変化、例えば栄養素の存在または非存在、あるいは温度の変化に応答してそれらの制御下でDNAからの転写のレベル増大を開始するプロモーターである。この時点で、種々の潜在的宿主細胞により認識される多数のプロモーターがよく知られている。これらのプロモーターは、制限酵素消化により供給源DNAからプロモーターを除去し、単離プロモーター配列をベクター中に挿入することにより、コードDNAと操作可能的に連結される。
【0075】
上記構成成分のうちの1つまたは複数のを含有する適切なベクターの構築は、標準結紮技術を用いる。単離プラスミドまたはDNA断片は、必要とされるプラスミドを生成するよう所望される形態で、切断され、適合され、再結紮される。構築されるプラスミド中の正しい配列を確証するための分析のために、結紮混合物を用いて、大腸菌K12菌株294(ATCC31,446)を形質転換し得るし、上首尾の形質転換体が、適切な場合、アンピシリンまたはテトラサイクリン耐性により選択され得る。形質転換体からのプラスミドが調製され、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析され、および/または当該技術分野で既知の標準技法によりシーケンシングされる[例えばMessing et al., Nucleic Acids Res., 9: 309 (1981);Maxam et al., Methods in Enzymology, 65: 499(1980)参照]。
【0076】
コードDNAの哺乳類細胞中での一過性発現を提供する発現ベクターが用いられ得る。概して、宿主細胞が発現ベクターの多数のコピーを蓄積し、次いで、発現ベクターによりコードされる高レベルの所望のポリペプチドを合成するよう、一過性発現は、宿主細胞中で効率的に複製し得る発現ベクターの使用を包含する[Sambrook et al.、上記]。適切な発現ベクターおよび宿主細胞を含む一過性発現系は、クローン化DNAによりコードされるポリペプチドの便利な陽性同定を、ならびに所望の生物学的または生理学的特性に関するこのようなポリペプチドの迅速なスクリーニングを可能にする。
【0077】
組換え脊椎動物細胞培養中の所望のポリペプチドの合成に適合させるのに適した他の方法、ベクターおよび宿主細胞は、Gething et al., Nature, 293: 620-625 (1981);Mantei et al., Nature, 281: 40-46 (1979);EP 117, 060;およびEP 117,058に記載されている。
【0078】
本明細書中のベクター中でDNAをクローニングし、または発現するための適切な宿主細胞としては、原核生物、酵母または高等真核生物細胞が挙げられる。この目的のための適切な原核生物としては、真正細菌、例えばグラム陰性またはグラム陽性細菌、例えば腸内細菌科、例えば大腸菌、エシェリキア属、例えば大腸菌、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセッセンス、および赤痢菌属、ならびにバシラス属、例えば枯草菌およびバシラス・リケニフォルミス(例えば、DD 266,710(1989年4月12日公開)に開示されたバシラス・リケニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌、およびストレプトミセス属が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきである。
【0079】
原核生物のほかに、真核生物微生物、例えば糸状菌または酵母は、ベクターのための適切なクローニングまたは発現宿主である。グリコシル化ポリペプチドの発現のための適切な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。すべてのこのような宿主細胞の例は、WO 97/25428にさらに記載されている。
【0080】
宿主細胞は、上記の発現またはクローニングベクターでトランスフェクトされ、好ましくは形質転換されて、そして、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切であるように修飾された栄養培地中で培養される。
【0081】
トランスフェクションは、任意のコード配列が実際に発現されようが、そうでなかろうが、いずれにせよ、宿主細胞による発現ベクターの取込みを指す。トランスフェクションの多数の方法、例えばCaPO4および電気穿孔が、当業者に知られている。上首尾のトランスフェクションは、一般的に、このベクターの操作の任意の指示が宿主細胞内で生じる場合に認識される。
【0082】
形質転換は、DNAを生物体中に導入することを意味し、その結果、DNAは、染色体外素子として、または染色体組込み体により、複製可能である。用いられる宿主細胞に依って、このような細胞に適した標準技法を用いて形質転換は実行される。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理(Sambrook et al.(上記)に記載)、または電気穿孔は、実質的細胞壁バリアを含有する原核生物または他の細胞のために一般的に用いられる。アグロバクテリウム・ツメファシエンスによる感染は、ある種の植物細胞の形質転換のために用いられる(Shaw et al., Gene, 23: 315 (1983)およびWO 89/05859(1989年6月29日公開)に記載)。さらに、植物は超音波処理を用いてトランスフェクトされ得る(WO 91/00358(1991年1月10日公開)に記載)。
【0083】
このような細胞壁を有さない哺乳類細胞に関しては、リン酸カルシウム沈殿法(Graham and van der Eb, Virology, 52: 456-457 (1978))が用いられ得る。哺乳類細胞宿主系形質転換の一般的態様は、米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母中での形質転換は、典型的には、Van Solingen et al., J. Bact., 130: 946 (1977)およびHsiao et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 76: 3829 (1979)の方法に従って実行される。しかしながら、細胞中にDNAを導入するための他の方法、例えば核マイクロインジェクション、電気穿孔、無傷細胞との細菌原形質融合、あるいはポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチンも用いられ得る。哺乳類細胞を形質転換するための種々の技法に関しては、Keown et al., Methods in Enzymology, 185: 527-537 (1990)およびMansour et al., Nature, 336: 348-352 (1988)を参照されたい。
【0084】
原核生物細胞は、Sambrook et al.(上記)に一般的に記載されたような適切な培地中で培養され得る。市販培地の例としては、ハムF10培地(Sigma)、最小必須培地(「MEM」、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)およびダルベッコ変法イーグル培地(「DMEM」、Sigma)が挙げられる。任意のこのような培地は、必要な場合、ホルモンおよび/または他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリンまたは表皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオシド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン)、微量元素(マイクロモル範囲での最終濃度で通常は存在する無機化合物と定義される)、ならびにグルコースまたは等価のエネルギー源を補足され得る。任意の他の必要な補足物も、当業者に知られている適切な濃度で包含され得る。培養条件、例えば温度、pH等は、発現のために選択された宿主細胞に関して以前に用いられたものであり、当業者には明らかである。
【0085】
概して、哺乳類細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコールおよび実際技術は、Mammalian Cell Biotechnology: A Practical Approach, M. Butler, ed. (IRL Press, 1991)に見出され得る。
【0086】
発現ポリペプチドは、分泌ポリペプチドとして培地から回収され得るが、しかし分泌シグナルなしで直接的に産生される場合、宿主細胞溶解物からも回収され得る。ポリペプチドが膜結合される場合、それは、適切な洗剤溶液(例えば、トリトンX100)を用いて膜から放出され得るし、あるいはその細胞外領域が酵素切断により放出され得る。
【0087】
ポリペプチドがヒト起源のもの以外の組換え細胞中で産生される場合、それはヒト起源のタンパク質またはポリペプチドを有さない。しかしながら、実質的に均質である調製物を得るためには、組換え細胞タンパク質またはポリペプチドから当該ポリペプチドを回収し、または精製することが通常は必要である。第一段階として、粒状細胞屑を除去するために、培地または溶解物が遠心分離される。以下は、適切な精製手法の手法例である:イオン交換カラム上での分別;エタノール沈降法;逆相HPLC;シリカゲル上または陽イオン交換樹脂、例えばDEAE上でのクロマトグラフィー;等電点クロマトグラフィー;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈降法;例えばセファデックスG−75を用いるゲル濾過;およびIgGのような夾雑物物を除去するためのプロテインAセファロースカラムによる。
ファージ表示
【0088】
いくつかの実施形態によれば、以下の群:式I、式II、式III、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号13)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号14)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号15)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号16)、ECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号17)、およびWO 05/000351の図32に列挙された配列から選択される本発明のポリペプチドが、ファージ表示に利用され得る。
【0089】
ファージ表示の技術の使用は、高親和性で標的分子と結合するその配列に関して迅速に分類され得るタンパク質変異体の大型ライブラリーの生成を可能にする。変異体ポリペプチドをコードする核酸は、ウイルスコートタンパク質、例えば遺伝子IIIタンパク質または遺伝子VIIIタンパク質をコードする核酸配列と融合される。タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列が遺伝子IIIタンパク質の一部をコードする核酸配列と融合される一価ファージ表示系が開発されてきた(Bass, S., Proteins, 8: 309 (1990);Lowman and Wells, Methods: A Companion to Methods in Enzymology, 3: 205 (1991))。一価ファージ表示系において、遺伝子融合は低レベルで発現され、野生型遺伝子IIIタンパク質も発現され、その結果、粒子の感染力が保持される。ペプチドライブラリーを生成し、それらのライブラリーをスクリーニングする方法は、多数の特許に開示されてきた(例えば、米国特許第5,723,286号;米国特許第5,432,018号;米国特許第5,580,717号;米国特許第5,427,908号および米国特許第5,498,530号)。
【0090】
いくつかの実施形態では、式I、式IIまたは式IIIは、ファージ上でペプチドライブラリーとして発現される。式I、式IIまたは式IIIのポリペプチドのライブラリーを発現するファージは、次に、BLyS結合に基づいた選択に付される。いくつかの実施形態では、選択プロセスは、あるファージをビオチニル化BLySと結合させ、これがその後、ニュートラアビジン・プレートに結合されることを包含する。BLyS−ビオチン−ニュートラアビジン結合を介してプレートに結合されたファージは、回収され、増殖される。いくつかの実施形態では、ファージは数回の選択に付される。いくつかの実施形態では、ファージはBLyS−ビオチンとともにインキュベートされ、その後、競合的結合剤として非ビオチニル化BLySを付加される。
【0091】
本発明の状況でのファージ表示の使用についてのさらなる指針は、実施例で提供される。
異種ポリペプチドと融合されるかまたは共役されるポリペプチド
【0092】
本発明のポリペプチドを含むFc融合タンパク質分子は、本明細書中の方法における使用のためにさらに意図される。いくつかの実施形態では、当該分子は、本発明のポリペプチドと免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定領域との融合を含む。二価形態のFc融合タンパク質に関しては、このような融合は、通常は、IgG分子のFc領域を含む。さらなる一実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1分子からである。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン融合は、IgG1分子のヒンジ、CH2およびCH3、あるいはヒンジ、CH1、CH2およびCH3領域を包含する。
【0093】
免疫グロブリン融合の産生に関しては、米国特許第5,428,130号、米国特許第5,843,725号、米国特許第6,018,026号およびChamow et al., TIBTECH, 14: 52-60 (1996)も参照されたい。
【0094】
最も簡単で且つ最も直接的なFc融合タンパク質設計は、しばしば、本発明のアンタゴニストポリペプチドの結合ドメイン(単数または複数)、好ましくはネイティブ配列を、免疫グロブリン重鎖のFc領域と組合せる。別の実施形態では、ポリペプチドは、人工的であり、例えば式I、式II、式III、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号13)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号14)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号15)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号16)、ECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号17)の配列を含むポリペプチドであり得るし、図32に列挙された配列は、免疫グロブリンのFc部分と共有結合され得る。さらに、これらのポリペプチドのうちの1つまたは複数は互いに連結され、免疫グロブリンのFc部分に連結され得る。
【0095】
普通は、本発明のFc融合タンパク質を調製する場合、結合ドメインをコードする核酸は、C末端で、免疫グロブリン定常ドメイン配列のN末端をコードする核酸と融合されるが、しかしながらN末端融合も可能である。
【0096】
典型的には、このような融合において、コード化キメラポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖の定常領域の少なくとも機能的に活性なヒンジ、CH2およびCH3ドメインを保持する。融合は、さらにまた、定常ドメインのFc部分のC末端に対して、あるいは重鎖のCH1または軽鎖の対応する領域に対してN末端に直接的になされる。融合がなされる精確な部位は、重要ではない;特定部位はよく知られており、Fc融合タンパク質の生物学的活性、分泌または結合特質を最適にするために選択され得る。
【0097】
好ましい一実施形態では、結合ドメイン配列は、免疫グロブリンG1(IgG1)のFc領域のN末端に融合される。完全重鎖定常領域を結合ドメイン配列に融合することは可能である。しかしながら、さらに好ましくは、IgG Fcを化学的に限定するパパイン切断部位(すなわち、残基216、重鎖定常領域を114とみなす)または他免疫グロブリンの類似部位の直ぐ上流のヒンジ領域で始まる配列が、融合に用いられる。特に好ましい実施形態では、結合ドメインアミノ酸配列は、IgG重鎖の(a)ヒンジ領域ならびにCH2およびCH3、あるいは(b)CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインと融合される。
【0098】
二特異的Fc融合タンパク質に関しては、Fc融合タンパク質は、多量体として、特にヘテロ二量体またはへテロ四量体として集合される。一般的に、これらの集合免疫グロブリンは既知の単位構造を有する。基本的な4鎖構造単位は、IgG、IgDおよびIgEが存在する形態である。4鎖単位は、高分子量免疫グロブリン中で反復される;IgMは一般的に、ジスルフィド結合により一緒に保持される4基本単位の五量体として存在する。IgAグロブリン、そして時としてIgGグロブリンも、血清中に多量体形態で存在し得る。多量体の場合、4つの単位の各々は、同一であるかまたは異なり得る。
【0099】
本明細書中の範囲内の種々の例示的集合化Fc融合タンパク質は、以下のように系統的に図示される:(a)ACL−ACL;(b)ACH−(ACH、ACL−ACH、ACL−VHCHまたはVLCL−ACH);(c)ACL−ACH−(ACL−ACH、ACL−VHCH、VLCL−ACHまたはVLCL−VHCH);(d)ACL−VHCH−(ACHまたはACL−VHCHまたはVLCL−ACH);(e)VLCL−ACH−(ACL−VHCHまたはVLCL−ACH);ならびに(f)(A−Y)n−(VLCL−VHCH)2であって、この場合、Aは各々、BLyS受容体ドメイン由来の配列、BLySに対するかまたはBLySに対する受容体に対する抗体由来の配列、あるいは人工配列、例えば式I、式II、式III、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号5)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号6)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号7)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号8)、ECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号9)、または図32に列挙された配列、あるいはその組合せのアミノ酸配列を含む同一のまたは異なるポリペプチドを表し;
【0100】
VLは、免疫グロブリン軽鎖可変ドメインであり;VHは、免疫グロブリン長鎖可変ドメインであり;CLは免疫グロブリン軽鎖定常ドメインであり;CHは免疫グロブリン重鎖定常ドメインであり;nは1より大きい整数であり;Yは共有結合架橋剤の残基を意味する。
【0101】
簡潔にするために、前記構造は、唯一、重要な特徴を示す;それらは免疫グロブリンの連結(J)または他のドメインを示さないし、示されるジスルフィド結合でもない。しかしながら、このようなドメインが結合活性のために必要とされる場合、それらは、免疫グロブリン分子中にそれらが占める通常の位置に存在すべく構築される。
【0102】
代替的には、キメラ重鎖を含む免疫グロブリンが得られるよう、Fc配列は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列間に挿入され得る。この実施形態では、Fc配列は、ヒンジおよびCH2ドメイン間、またはCH2およびCH3ドメイン間で、免疫グロブリンの各アーム中の免疫グロブリン重鎖の3’末端に融合される。同様の構築物が、Hoogenboom et al., Mol. Immunol., 28: 1027-1037 (1991)により報告されている。
【0103】
免疫グロブリン軽鎖の存在は本発明のFc融合タンパク質中には必要とされないが、しかし、免疫グロブリン軽鎖は結合ドメイン−免疫グロブリン重鎖融合ポリペプチドと共有的に結合されて存在するか、または結合ドメインに直接融合されて存在し得る。前者の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、典型的には、結合ドメイン−免疫グロブリン重鎖融合タンパク質をコードするDNAと同時発現される。分泌時に、ハイブリッド重鎖および軽鎖は共有結合されて、2つのジスルフィド結合免疫グロブリン重鎖−軽鎖対を含む免疫グロブリン様構造を提供する。このような構造の調製に適した方法は、例えば米国特許第4,816,567号(1989年3月28日発行)に開示されている。
【0104】
Fc融合タンパク質は、読み枠内で結合ドメインをコードするcDNA配列を免疫グロブリンcDNA配列と融合することにより、最も好都合に構築される。しかしながら、ゲノム免疫グロブリン断片との融合も用いられ得る(例えばAruffo et al., Cell, 61: 1303-1313 (1990);およびStamenkovic et al., Cell, 66: 1133-1144 (1991)参照)。後者の型の融合は、発現のためのIg調節配列の存在を要する。IgG重鎖定常領域をコードするcDNAは、ハイブリダイゼーションにより、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法により、脾臓または末梢血リンパ球由来のDNAライブラリーからの公表された配列に基づいて単離され得る。Fc融合タンパク質の結合ドメインおよび免疫グロブリン部分をコードするcDNAは、選択宿主細胞中での効率的発現を指示するプラスミドベクター中に縦に並んで挿入される。
【0105】
本発明に用いるためのBLySアンタゴニストFc融合分子のような融合分子を作製するのに有用なFc配列を産生するために、特定の修飾がなされてきた。具体的には、Fc融合タンパク質を作製するために、修飾ヒトIgG1Fcの6つのバージョンが生成され、Fc−488、ならびにFc4、Fc5、Fc6、Fc7およびFc8と呼ばれる。Fc−488(配列番号39)は、ヒトγ1Fc領域を含有する融合タンパク質の好都合なクローニングのために意図され、それは、鋳型として野生型ヒト免疫グロブリンγ1定常領域を用いて構築された。非対合システイン残基のための潜在的有害作用についての懸念が、通常は免疫グロブリン軽鎖定常領域とジスルフィド結合するシステインをセリン残基と取り替えるという決定をもたらした。将来的なDNA操作を容易にするためにBgIII制限酵素認識部位を導入するために、EUインデックス位置218をコードするコドンにさらなる変化が導入された。これらの変化は、PCRプライマー上にコードされたPCR産物中に導入された。BgIIIの位置のために、そしてFcヒンジ領域を完成するために、EUインデックス位置216および217に関するコドンが融合タンパク質相手配列中に組入れられた。
【0106】
Fc4、Fc5およびFc6は、FcγRI結合および完全C1q結合を低減することにより、Fcにより媒介されるエフェクター機能を低減するための突然変異を含有する。Fc4は、Fc−488中に導入された同一のアミノ酸置換を含有する。潜在的Fc媒介性エフェクター機能を低減するために、さらなるアミノ酸置換が導入された。具体的には、3つのアミノ酸置換が導入されて、FcγRI結合を低減した。これらは、EUインデックス位置234、235および237での置換である。これらの位置での置換は、FcγRIとの結合を低減することが示されている(Duncan et al., Nature 332: 563 (1988))。これらのアミノ酸置換は、FcγRIIa結合、ならびにFcγRIII結合も低減し得る(Sondermann et al., Nature 406: 267 (2000);Wines et al., J. Immunol. 164: 5313 (2000))。
【0107】
いくつかのグループが、補体C1q結合におけるEUインデックス位置330および331(配列番号6のアミノ酸残基134および135)と、その後の補体結合の関連性を記載している(Canfield and Morrison, J. Exp. Med. 173: 1483 (1991);Tao et al., J. Exp. Med. 178: 661 (1993))。これらの位置でのアミノ酸置換は、Fc4中に導入されて、補体結合を低減した。Fc4のCH3ドメインは、対応する野生型ポリペプチド中に見出されるものと同一であるが、但し、停止コドンは、クローン化DNAが大腸菌のdam+菌株中で増殖される場合、潜在的damメチル化部位を排除するために、TGAからTAAに変えられた。
【0108】
Fc5では、この特定のFcを含有する融合タンパク質中でBgIIIクローニングスキームが用いられなかったため、EUインデックス位置218でのアルギニン残基は、リシンに突然変異化し戻された。残りのFc5配列は、Fc4に関する上記の説明同じである。
【0109】
Fc6は、カルボキシル末端リシンコドンが排除されている以外は、Fc5と同一である。成熟免疫グロブリンのC末端リシンは、しばしば、翻訳後に成熟免疫グロブリンから除去された後、B細胞から分泌されるか、あるいは血清循環中に除去される。その結果、C末端リシン残基は、典型的には、循環抗体上に見出されない。上記のFc4およびFc5の場合と同様に、Fc6配列中の停止コドンはTAAに変えられた。
【0110】
Fc7は、CH2ドメイン中に位置するEUインデックス位置297でのアミノ酸置換以外は、野生型γ1Fcと同一である。EUインデックス位置Asn−297は、N結合型炭水化物付着の部位である。N結合型炭水化物は、炭水化物構造中の潜在的バッチ間変動のため、組換え的発現タンパク質中に潜在的な変異可能性源を導入する。この潜在的変異可能性を排除するための試みにおいて、Asn−297はグルタミン残基に突然変異化されて、その残基位置でのN結合型炭水化物の付着を防止した。残基297での炭水化物は、FcRIIIと結合するFcにも関与する(Sondermann et al., Nature 406: 267 (2000))。したがって、炭水化物の除去は、概して、融合タンパク質を含有する組換えFc7のFcγRとの結合を低減するはずである。上記のように、Fc7配列中の停止コドンはTAAに突然変異化された。
【0111】
Fc8は、EUインデックス位置220でのシステイン残基がセリン残基と取り替えられたことを除いては、配列番号6で示される野生型免疫グロブリンγ1領域と同一である。この突然変異は、通常は免疫グロブリン軽鎖定常領域とジスルフィド結合するシステイン残基を排除した。BLySアンタゴニストの形成のためのこれらの特定のFcドメインのいずれかの使用は、本発明の範囲内である。
【0112】
ロイシンジッパー形態のこれらの分子も、本発明により意図される。「ロイシンジッパー」は、その融合相手(例えば、ロイシンジッパーが融合されるかまたは連結される配列または分子)の二量体化または三量体化を増強し、促進し、または駆動する富ロイシン配列を指すために用いられる当該技術分野での用語である。種々のロイシンジッパーポリペプチドが、当該技術分野で記載されている。例えば、Landschulz et al., Science, 240: 1759 (1988);米国特許第5,716,805号;WO 94/10308;Hoppe et al., FEBS Letters, 344: 1991 (1994);Maniatis et al., Nature, 341: 24 (1989)を参照されたい。ロイシンジッパー配列は本発明のポリペプチドの5’または3’末端で融合され得る、と当業者は理解する。
【0113】
本発明のポリペプチドは、さらにまた、当該ポリペプチドを、別の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列と融合することにより、キメラ分子を形成するように修飾され得る。
【0114】
いくつかの実施形態によれば、このような異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列は、キメラ分子をオリゴマー化するよう作用するものである。いくつかの実施形態では、このようなキメラ分子は、当該ポリペプチドと、タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供するタグポリペプチドとの融合を包含する。エピトープタグは、一般的には、当該ポリペプチドのアミノまたはカルボキシル末端に配置される。
【0115】
このようなエピトープタグ化形態のポリペプチドの存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出され得る。さらにまた、エピトープタグの提供は、エピトープタグと結合するタグ抗体または別の型の親和性マトリックスを用いてアフィニティー精製により、ポリペプチドを容易に精製させる。
【0116】
種々のタグポリペプチドおよびそれらのそれぞれの抗体が、当該技術分野でよく知られている。例としては、ポリ−ヒスチジン(ポリ−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(ポリ−his−gly)タグ;flu HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5[Field et al., Mol. Cell. Biol., 8: 2159-2165 (1988)];c−mycタグおよびそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5: 3610-3616 (1985)];および単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体[Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6): 547-553 (1990)]が挙げられる。その他のタグポリペプチドとしては、Flagペプチド[Hopp et al., BioTechnology, 6: 1204-1210 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin et al., Science, 255: 192-194 (1992)];an”−チューブリンエピトープペプチド[Skinner et al., J. Biol. Chem., 266: 15163-15166 (1991)];およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci: USA, 87: 6393-6397 (1990)]が挙げられる。
ペプチド−ポリマー共役体の構築
【0117】
いくつかの実施形態では、合成ペプチドのポリマーの共役のための戦略(例えば、PEG化)は、溶液中で共役結合を形成することにより、他方に対して互いに反応性である特別の機能性を各々が保有するペプチドおよびPEG部分を組合せることからなる。ペプチドは、慣用的固相合成で容易に調製され得る。ペプチドは、特定部位で適切な官能基で「前活性化」される。前駆体は、精製され、完全に特性化された後、PEG部分と反応する。PEGとのペプチドの結紮は、通常は、水性相中で起こり、逆相分析的HPLCにより容易にモニタリングされ得る。PEG化ペプチドは、分取HPLCにより用意に精製され、分析用HPLC、アミノ酸解析およびレーザー脱離質量分析により特性化され得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、主に反応条件、ポリマーの分子量等によって、ペプチドのアミノ酸残基のうちの1つまたは複数を介して、ポリマー上の末端反応性基と共有結合される。反応性基(単数または複数)を有するポリマーは、活性化ポリマーとして本明細書中では意図される。反応性基は、遊離アミノまたはペプチド上の他の反応性基と選択的に反応する。潜在的反応性部位としては、以下のものが挙げられる:N末端アミノ基、リシン残基上のεアミノ基、ならびに他のアミノ、イミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、ヒドロキシルおよび他の親水性基。しかしながら、最適結果を得るために選択される反応性基の型および量、ならびに用いられるポリマーの型は、ペプチド上の多すぎる特に活性な基と反応する反応性基を有することを回避するために用いられる特定のペプチドに依っている、と理解される。いくつかの実施形態では、反応性残基(例えば、リシン(K)、修飾非天然アミノ酸、または他の小分子)は、共役に適した位置で置換され得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、式I、式II、式III、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号5)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号6)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号7)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号8)、ECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号9)の配列を含み、あるいはWO 05/000351の図32に列挙された配列は末端反応性基を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、式I、式II、式III、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号5)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号6)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号7)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号8)、ECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号9)の配列、またはWO 05/000351の図32に列挙された配列を含むポリペプチドのうちの少なくとも1つまたは複数、好ましくは1つより多くを含む。一緒に連結されるポリペプチドは、同一配列を有し得るし、あるいは異なる配列および末端反応性基を有し得る。いくつかの実施形態では、これらのポリペプチドは、任意にリンカーの使用を介して、互いにつなぎ合わされ得る。
【0121】
共役はポリペプチド上の任意の反応性アミノ酸で起こり得るが、いくつかの実施形態では、反応性アミノ酸はリシン(これはその遊離εアミノ基を介して活性化ポリマーの反応性基と連結される)、あるいはグルタミン酸またはアスパラギン酸(これはアミド結合を介してポリマーと連結される)である。いくつかの実施形態では、ペプチドの反応性アミノ酸は、位置X2およびX1zのシステイン残基ではない。
【0122】
各ペプチドとのポリマー共役の程度は、ポリペプチド上の反応性部位の数、ポリマーの分子量、親水性およびその他の特質、ならびに選択される特定のペプチド誘導体化部位によっている。いくつかの実施形態では、共役体は、ペプチド分子当たり1〜10のポリマー分子の最終モル比を有するが、しかし本発明のペプチドに付着されるより多数のポリマー分子も意図される。いくつかの実施形態では、各共役体は、1つのポリマー分子を含有する。置換の程度を代えるために時間、温度および他の反応条件が変更され、その後、サイズ排除クロマトグラフィーまたは当該技術分野で既知の他の手段により共役体のポリマー置換のレベルが確定される実験的マトリックスを用いることにより、所望量の誘導体化が容易に達成される。
【0123】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、反応性である単一基のみを含有する。これは、タンパク質分子の架橋を回避するのに役立つ。しかしながら、架橋を低減するために、あるいはゲル濾過またはイオン交換クロマトグラフィーにより反応産物を精製して実質的に均質な誘導体を回収するために反応条件を最大にすることは、本明細書中の範囲内である。他の実施形態では、ポリマーは、多数のペプチドをポリマー主鎖に連結する目的のために、2またはそれより多くの反応性基を含有する。
【0124】
さらにまた、ゲル濾過またはイオン交換クロマトグラフィーは、実質的に均質な形態で所望の誘導体を回収するために用いられ得る。いくつかの実施形態では、ポリマーは、多機能性(通常は二機能性)架橋剤の使用を伴わずに、ペプチドと直接的に共有結合される。いくつかの実施形態では、ペプチド鎖対ペプチドのモル比は1:1である。
【0125】
共有結合修飾反応は、ペプチド上の反応性基がリシン基である場合、好ましくは約pH5〜9、さらに好ましくは7〜9で、生物学的に活性な物質を不活性ポリマーと反応させるために一般的に用いられる任意の適切な方法により起こり得る。一般的には、当該プロセスは、活性化ポリマー(ポリマーは、典型的には少なくとも1つの活性化されるべき末端ヒドロキシル基を有する)を調製すること、このポリマーから活性基質を調製すること、そしてその後、ペプチドを活性基質と反応させて、処方物に適したペプチドを産生することを包含する。上記の修飾反応は、1つまたは複数の段階を包含し得るいくつかの方法により実施され得る。一段階反応で活性化ポリマーを産生するために用いられ得る修飾剤の例としては、シアヌル酸クロリド(2,4,6−トリクロロ−S−トリアジン)およびシアヌル酸フルオリドが挙げられる。
【0126】
いくつかの実施形態では、修飾反応は二段階で起こり、この場合、ポリマーは、先ず酸無水物、例えば無水コハク酸または無水グルタル酸と反応してカルボン酸を生成し、次に、カルボン酸は、カルボン酸と反応し得る化合物と反応して、ペプチドと反応し得る反応性エステル基を有する活性化ポリマーを生成する。このような化合物の例としては、N−ヒドロキシスクシンイミド、4−ヒドロキシ−3−ニト炉ベンゼンスルホン酸等が挙げられ、好ましくはN−ヒドロキシスクシンイミドまたは4−ヒドロキシ−3−ニトロベンゼンスルホン酸が用いられる。例えば、モノメチル置換PEGは、高温で、好ましくは約100〜110℃で、4時間、無水グルタル酸と反応され得る。このように産生されたものメチルPEG−グルタル酸は、次に、カルボジイミド試薬、例えば時シクロヘキシルまたはイソプロピルカルボジイミドの存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドと反応して、活性化ポリマー メトキシポリエチレングリコリル−N−スクシニミジルグルタレートを生じ、これは次にGHと反応し得る。この方法は、Abuchowski et al., Cancer Biochem. Biophys., 7: 175-186 (1984)に詳細に記載されている。別の例では、モノメチル置換PEGは、無水グルタル酸と反応し、その後、ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で4−ヒドロキシ−3−ニトロベンゼンスルホン酸(HNSA)と反応して、活性化ポリマーを生成する。HNSAは、Bhatnagar et al., Peptides: Synthesis-Structure-Func-tion. Proceedings of the Seventh American Peptide Symposium, Rich et al.(eds.)(Pierce Chemical Co., Rockford III., 1981), p.97-100により、そしてNitecki et al., High-Technology Route to Virus Vaccines (American Society for Microbiology: 1986) entitled ”Novel Agent for Coupling Synthetic Peptides to Carriers and Its Applications”に記載されている。
【0127】
いくつかの実施形態では、アミノ基との共有結合は、シアヌル酸クロリド、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド反応性基に基づいて、既知の化学作用により成し遂げられる(PEGアルコキシド+ブロモアセトアルデヒドのジエチルアセタル;PEG+DMSOおよび無水酢酸、またはPEG塩化物+4−ヒドロキシベンズアルデヒドのフェノキシド、活性化スクシニミジルエステル、活性化ジチオカルボネートPEG、2,4,5−トリクロロフェニルクロロホルメートまたはP−ニトロフェニルクロロホルメート活性化PEG)。カルボキシル基は、カルボジイミドを用いて、PEG−アミンをカップリングすることにより誘導体化される。スルフヒドリル基は、マレイミド置換PEG(例えば、アルコキシ−PEGアミン+スルホスクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(WO97/10847(1997年3月27日公開)に記載))、またはPEG−マレイミド(Nektar Technologies, San Carlos, CA(旧Shearwater Polymers, Inc.)から市販)とカップリングすることにより誘導体化される。代替的には、ペプチド上の遊離アミノ基(例えば、リシン残基上のεアミノ基)は、N−ヒドロキシスクシニミジル置換PEG(Nektar Technologiesから入手可能なPEG−NHS)とカップリングされ得るか、または2−イミノ−チオラン(トラウト試薬)でチオール化され、次に、Pedley et al., Br. J. Cancer, 70: 1126-1130 (1994)に記載されたようなPEGのマレイミド含有誘導体とカップリングされ得る。
【0128】
多数の不活性ポリマー、例えばPEG(これに限定されない)は、製薬に用いるのに適している(例えばDavis et al., Biomedical Polymers: Polymeric Materials and Pharmaceuticals for Biomedical Use, pp.441-451 (1980)参照)。本発明のいくつかの実施形態では、非タンパク質様ポリマーが用いられる。非タンパク質様ポリマーは、典型的には、親水性合成ポリマー、すなわち、そうでなければ自然界では見いだされないポリマーである。しかしながら、自然界には存在する、そして組換えまたはin vitro方法により産生されるポリマーも、ネイティブ供給源から単離されるポリマーと同様に、有用である。親水性ポリビニルポリマー、例えばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンは、本発明の範囲内である。特に有用なのは、ポリアルキレンエーテル、例えばポリエチレングリコール(PEG);ポリオキシアルキレン、例えばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ならびにポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(プルロニック);ポリメタクリレート;カルボマー;糖単量体D−マンノース、D−およびL−ガラクトース、フコース、不ラクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−グルコースおよびノイラミン酸、例えばホモ多糖およびヘテロ多糖、例えばラクトース、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、硫酸デキストラン、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、あるいは酸ムコ多糖の多糖サブユニット、例えばヒアルロン酸;糖アルコールのポリマー、例えばポリソルビトールおよびポリマンニトール;ヘパリンまたはヘパロンである。
【0129】
ポリマーは、共役前は、水溶性である必要はないが、しかし好ましくは水溶性であり、最終共役体は、好ましくは水溶性である。好ましくは共役体は、少なくとも約0.01 mg/ml、さらに好ましくは少なくとも約0.1 mg/ml、さらに好ましくは少なくとも約1 mg/mlの水溶解度を示す。
【0130】
さらに、ポリマーは共役体形態では高免疫原性であるべきでないし、あるいは共役体が静脈内または吸入のような経路で投与されるよう意図される場合に、静脈内注入、注射または吸入に不適合である粘度を保有すべきでもない。
【0131】
ポリマーの分子量は、約100,000 Dまでの範囲であり得るし、好ましくは少なくとも約500 D、または少なくとも約1,000 D、または少なくとも約5,000 Dである。いくつかの実施形態では、PEGまたは他のポリマーは、5000〜20,000 Dの範囲の分子量を有する。選択される分子量は、達成されるべき共役体の有効サイズ、ポリマーの性質(例えば、構造、例えば線状または分枝鎖)、および誘導体化の程度、すなわち、ペプチド当たりのポリマー分子数、ならびにポリペプチド上のポリマー付着部位(単数または複数)に依り得る。いくつかの実施形態では、分枝鎖PEGは、ペプチドの有効サイズでの大増大を誘導するために用いられ得る。PEGまたは他のポリマー共役体は、半減期を増大し、溶解度を増大し、タンパク質分解性攻撃に対して安定化し、そして免疫原性を低減するために利用され得る。
【0132】
本発明のペプチドを修飾するための官能化PEGポリマーは、Nektar Technologies, San Carlos, CA(旧Shearwater Polymers, Inc.)から入手可能である。このような市販PEG誘導体としては、アミノ−PEG、PEGアミノ酸エステル、PEG−N−ヒドロキシスクシンアミド化学(NHS)、PEG−ヒドラジド、PEG−チオール、PEG−スクシネート、カルボキシメチル化PEG、PEG−プロピオン酸、PEGアミノ酸、PEGスクシニミジルスクシネート、PEGスクシニミジルプロピオネート、カルボキシメチル化PEGのスクシニミジルエステル、PEGのスクシニミジルカルボネート、アミノ酸PEGのスクシニミジルエステル、PEG−オキシカルボニルイミダゾール、PEG−ニトロフェニルカルボネート、PEGトレシレート、PEG−グリシジルエーテル、PEG−無水物、PEGビニルスルホン、PEG−マレイミド、PEG−オルソピリジル−ジスルフィド、ヘテロ官能性PEG、PEGビニル誘導体、PEGシラン、およびPEGホスホリドが挙げられるが、これらに限定されない。これらのPEG誘導体をカップリングするための反応条件は、タンパク質、所望のPEG化度、および利用されるPEG誘導体によって変化する。PEG誘導体の選択に関与するいくつかの因子としては、以下のものが挙げられる:所望の付着点(例えばリシンまたはシステインR−基)、誘導体の加水分解安定性および反応性、連結の安定性、毒性および抗原性、分析に関する適合性等。任意の特定誘導体の使用のための具体的な使用説明書は、メーカーから入手可能である。
【0133】
共役体は、SDS−PAGE、ゲル濾過、NMR、トリプシンマッピング、液体クロマトグラフィー−質量分光分析、およびin vitro生物検定により特性化され得る。例えば、PEG共役の程度は、SDS−PAGEおよびゲル濾過により示され、次に、NMRにより分析され得るが、これは、PEGのメチレン水素に関する特定の共鳴ピークを有する。各分子上のPEG基の数は、NMRスペクトルまたは質量分光分析から算定され得る。10%SDS中でのポリアクリルアミドゲル電気泳動は、溶離緩衝液として10 mMトリス−HCl、pH8.0、100 mMNaCl中で適切に実行される。どの残基がPEG化されるかを実証するために、トリプシンマッピングが実施され得る。したがって、PEG化ペプチドは、100 mM酢酸ナトリウム、10 mMトリス−HCl、1 mM塩化カルシウム、pH8.3中で、37℃で4時間、(mgで)100対1のタンパク質/酵素比でトリプシンで消化され、pH<4に酸化して消化を停止した後、HPLC NucleosilC-18(4.6 mm.時.150 mm、5. mu、100A)上で分離される。そのクトマトグラムが、非PEG化出発物質のクロマトグラムと比較される。次に、ピークにおけるフラグメントのサイズを立証するために、質量分光分析により各ピークが分析され得る。PEG基を有するフラグメント(単数または複数)は、通常は、注入後にHPLCカム上に保持されず、クロマトグラムから消失する。クロマトグラムからのこのような消失は、少なくとも1つのリシン残基を含有すべき特定フラグメントに関するPEG化の指標である。PEG化ペプチドは、次に、慣用的方法によりBLySと結合する能力に関して検定され得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、共役体は、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、イオン交換HPLC)により精製される。親電子的活性化PEGの多くの化学作用は、PEG化産物のアミノ基電荷の低減を引き起こす。したがって、高分解能イオン交換クロマトグラフィーを用いて、遊離および共役タンパク質を分離し、異なるレベルのPEG化を示す種を分割し得る。
【0135】
実際、異なる種(例えば1または2つのPEG残基を含有する)の分割も、非反応アミノ酸のイオン特性の差のため、可能である。一実施形態では、異なるレベルのPEG化を示す種は、WO 96/34015(国際出願PCT/US96/05550(1996年10月31日公開))に記載された方法に従って分割される。異種の共役体は、同一方式で互いから精製される。
【0136】
いくつかの実施形態では、PEG−N−ヒドロキシスクシンアミド(NHS)は、第一級アミン(例えば、リシンおよびN末端)と反応する。いくつかの実施形態では、PEG−NHSは、ポリペプチドのC末端リシン(K)と反応する。いくつかの実施形態では、リシン残基は17-merポリペプチドのC末端に付加されるが、一方、他の実施形態では、Xiはリシンと置換される。いくつかの実施形態では、ポリマーは、N末端と反応する。好ましい実施形態では、共役体は、以下の実施例に記載される誘導体化および精製方法を利用して生成される。
【0137】
一実施形態において、本発明は、共役体の共有結合分子構造中に如何なる外来物質も伴わずに、その構成成分部分により形成される上記の共役体のいずれか、すなわち、1つまたは複数のポリマー分子(単数または複数)と共有結合される1つまたは複数のペプチド(単数または複数)を提供する。
【0138】
本発明の製造方法および製品は、BLySあるいはその3つの受容体のうちの1つまたは複数と結合する抗体を使用するかまたは組入れる。したがって、このような抗体の生成方法は本明細書で記載される。
【0139】
抗体の産生のために、または抗体に関してスクリーニングするために用いられるべきBLySまたはBLyS受容体は、例えば所望のエピトープを含有する可溶性形態の抗原またはその一部であり得る。上記のように、BLyS配列およびBLyS受容体の配列は、これらのポリペプチドの種々のドメインの境界として知られている。細胞外ドメイン(ECD)のペプチド断片は、免疫原として用いられ得る。これらの既知の配列およびドメインの概要説明に基づいて、当業者は、抗体を産生するために用いるためのBLySまたはBLyS受容体ポリペプチドおよびその断片を表現し得る。
【0140】
BLySまたはその受容体に対する抗体を生成するために、全長ポリペプチド、あるいは6またはそれより大きい残基長のペプチド断片が免疫原として用いられて、齧歯類、例えばマウス、ハムスターおよびラットにおいて、ウサギ、ヤギまたは他の適切な動物において抗体を産生し得る。か陽性BLySまたはBLyS受容体ポリペプチドあるいはその免疫原性断片は、適切な宿主細胞中で、例えば細菌または真核生物細胞中で発現され得る。一実施形態では、ヒトおよびネズミ洗剤可溶化全長BLySは大腸菌中で産生されて、BLyS抗体を産生するハイブリドーマを免疫化し、それに関してスクリーニングするために用いられる。
【0141】
代替的には、または付加的には、それらの細胞表面でBLySまたはBLyS受容体を発現するB細胞または細胞株は、抗体を生成し、および/またはそれに関してスクリーニングするために用いられ得る。抗体を生成するために有用なBLySの他の形態は当業者に明らかであり、ファージ表示法もBLyS結合抗体を産生するために用いられ得る。BLySまたはBLyS受容体を結合する抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体であり得る。このような抗体およびそれらの生成方法は、以下でさらに詳細に記載される。
【0142】
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原およびアジュバントの多数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により、動物中で産生される。二官能化または誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した共役)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOC12またはR1N=C=NR(ここで、RおよびR’は異なるアルキル基である)を用いて、免疫化されるべき種において免疫原性であるタンパク質、例えばカギアナカサガイヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンまたは大豆トリプシン阻害剤と、関連抗原を共役することは有用であり得る。
【0143】
例えば100wuまたは5gのタンパク質または共役体(それぞれウサギまたはマウス用)を、3容積のフロイント完全アジュバントと組合せて、多数の部位に当該溶液を皮下注射することにより、動物は、抗原、免疫原性共役体または誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、多数の部位での皮下注射により、元の量の1/5〜1/10量のフロイント完全アジュバント中のペプチドまたは共役体を動物は追加免疫される。7〜14日後、動物は血を抜き取られ、抗体力価に関して血清が検定される。力価がプラトーに達するまで、動物は追加免疫される。好ましくは、動物は同一抗原であるが、しかし異なるタンパク質と共役されるかおよび/または異なる架橋剤を介した共役体を追加免疫される。共役体は、タンパク質融合として、組換え細胞培養中でも作製され得る。さらにまた、凝集剤、例えば明礬は、免疫応答を増強するために適切に用いられる。
【0144】
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の一集団から得られる。すなわち、当該集団を含む個々の抗体は同一であるが、但し、考え得る天然突然変異は少量で存在し得る。したがって、修飾語「モノクローナル」は、異なる抗体の混合物でない場合の抗体の特質を指す。
【0145】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256: 495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製され得るし、あるいは組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)により作製され得る。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターは、本明細書中で上記されたように免疫化されて、免疫化のために用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生し得るリンパ球を引き出す。代替的には、リンパ球はin vitroで免疫化され得る。次にリンパ球は、適切な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて骨髄腫細胞と融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp.59-103 (Academic Press, 1986))。
【0146】
このように調製されたハイブリドーマ細胞は、非融合化親骨髄腫細胞の増殖または生存を抑制する1つまたは複数の物質を好ましくは含有する適切な培地中に植えつけられ、増殖される。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシル・トランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマ用の培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
【0147】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定高レベル産生を支持し、そしてHAT培地のような培地に感受性である。
【0148】
これらの中で、好ましい骨髄腫細胞株は、ネズミ骨髄腫株、例えばMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍由来のもの(Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAから入手可能)、ならびにSP−2またはX63−Ag8−653細胞(American Type Culture Collection, Rockville, Maryland USAから入手可能)由来のものである。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトへテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0149】
ハイブリドーマ細胞が増殖中である培地は、抗原に対して向けられるモノクローナル抗体の産生に関して検定される。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法により、またはin vitro結合検定、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着検定(ELISA)により確定される。例えば、モノクローナル抗体の結合親和性は、Munson et al., Anal. Biochem., 107: 220 (1980)のスカッチャード分析により確定され得る。
【0150】
所望の特異性、親和性および/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは、限界希釈手法によりサブクローニングされ、標準方法により増殖され得る(Goding, Monoclonal Antibodies Principles and Practice, pp.59-103 (Academic Press, 1986))。この目的のための適切な培地としては、例えばD−MEMまたはRPMI−1640培地が挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物中で腹水腫瘍としてin vivoで増殖され得る。
【0151】
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、慣用的免疫グロブリン生成手法、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーにより、培地、腹水または血清から適切に分離される。モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用的手法を用いて(例えば、ネズミ抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離され、シーケンシングされる。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一端単離されると、DNAは発現ベクター中に置かれ、これは次に、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞中にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞中でのモノクローナル抗体の合成をなし得る。当該抗体をコードするDNAの細菌中での組換え体発現に関する再検討文献としては、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol., 5: 256-262 (1993)およびPluckthun, Immunol Revs., 130: 151-188 (1992)が挙げられる。
【0152】
さらなる実施形態では、抗体または抗体断片は、McCafferty et al., Nature, 348: 552-554 (1990)に記載された技法を用いて生成される抗体ファージライブラリーから単離され得る。
【0153】
Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)およびMarks etal., J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)は、ファージライブラリーを用いたネズミおよびヒトのそれぞれの抗体の単離を記載する。その後の出版物は、鎖シャッフリング法による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生(Marks et al., BiolZ’echraology, 10: 779-783 (1992))を、ならびにきわめて大きいファージライブラリーを構築するための戦略としての組合せ感染およびin vivo組換え(Waterhouse et al., Nuc. Acids. Res., 21: 2265-2266 (1993))を記載している。したがって、これらの技法は、モノクローナル抗体の単離のために伝統的モノクローナル抗体ハイブリドーマ技法に代えて実行可能である。
【0154】
DNAは、例えば相同ネズミ配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインに関するコード配列を置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrison, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851 (1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドに関するコード配列の全部または一部を免疫グロブリンコード配列と共有結合することによっても修飾され得る。
【0155】
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは抗体の定常ドメインに代えて置換されるか、あるいはそれらは、抗体の一抗原結合部位の可変ドメインに代えて置換されて、抗原に対する特異性を有する一抗原下都合部位と異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
【0156】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野で記載されている。好ましくはヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入される1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「移入」残基と呼ばれ、これは典型的には「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的には、Winterとその共同研究者の方法(Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986);Riechmann et al., Nature, 332: 323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988))に従って、超可変領域配列をヒト抗体の対応する配列に代えて置換することにより、実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体は、実質的には無傷と言えないヒト可変ドメインが非ヒト種からの対応する配列により置換されているキメラ抗体である(米国特許第号4,816,567)。実際、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかの超可変領域残基およびおそらくはいくつかのFR残基が齧歯類抗体中の類似部位からの残基により置換されるヒト抗体である。
【0157】
ヒト化抗体の作製に用いられるべきヒト可変ドメイン(軽鎖および重鎖の両方)の選択は、抗原性を低減するために非常に重要である。いわゆる「ベスト・フィット」法に従って、齧歯類抗体の可変ドメインの配列は既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次に、齧歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体に関するヒトフレームワーク領域(FR)として受容される(Sims et al., J. Immunol., 151: 2296 (1993);Chothia et al., J. Mol. Biol., 196: 901 (1987))。別の方法は、軽鎖および重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワーク領域を用いる。同一フレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体のために用いられ得る(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4285 (1992);Presta et al., J. Immunol., 15-1: 2623 (1993))。
【0158】
さらに、抗体が、抗原に対する高親和性の保持およびその他の好ましい生物学的特性を有しながらヒト化される、ということは重要である。この目標を達成するために、好ましい方法に従って、親およびヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列および種々の概念的ヒト化産物の分析プロセスにより、ヒト化抗体が調製される。
【0159】
三次元免疫グロブリンモデルは市販されており、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される三次元立体配座構造を説明し、表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の役割の解析が可能になり、すなわち、その抗原を結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の分析を可能にする。このようにして、FR残基が選択され、レシピエントおよび移入配列から組合せされて、したがって、所望の抗体特質、例えば標的抗原(単数または複数)に対する親和性増大が達成される。概して、超可変領域残基は、直接的に且つ最も実質的に、抗原結合に及ぼす影響に関与する。
【0160】
ヒト化に代わるものとして、ヒト抗体が生成され得る。例えば、免疫化時に、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の全レパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えばマウス)を作り出すことが、ここでは可能である。例えば、キメラおよび生殖系列突然変異化マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子の同型接合的欠失は内因性抗体産生の完全抑制を生じる、ということが記載されている。
【0161】
このような生殖系列突然変異体マウス中のヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子の移入は、抗原攻撃時にヒト抗体の産生を引き起こす。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 2551 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362: 255-258 (1993);Bruggermann et al., Year in Immuno., 7: 33 (1993);および米国特許第5,591,669号、第5,589,369号および第5,545,807号を参照されたい。
【0162】
代替的には、ファージ表示技法(McCafferty et al., Nature 348: 552-553 (1990))を用いて、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、in vitroでヒト抗体および抗体断片を産生し得る。この技法に従って、抗体Vドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージ、例えばM13またはfdの大または小被覆タンパク質遺伝子中で読み枠内でクローン化され、ファージ粒子の表面で機能的抗体断片として表示される。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能特性に基づいて選択することはその特性を示す抗体をコードする遺伝子を選択することにもなる。したがって、ファージは、B細胞の特性のうちのいくつかを模倣する。
【0163】
ファージ表示は、種々のフォーマットで実施され得る:それらの再検討に関しては、例えば、Johnson, Kevin S. and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3: 564-571 (1993)を参照されたい。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源は、ファージ表示のために用いられ得る。Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)は、免疫化マウスの脾臓由来のV遺伝子の小無作為組合せライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様性アレイを単離した。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーが構築され、抗原(例えば自己抗原)の多様性アレイに対する抗体が、本質的にはMarks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1991)またはGriffith et al., EMBO J. 12: 725-734 (1993)により記載された技法に従って単離され得る。米国特許第5,565,332号および第5,573,905号も参照されたい。ヒト抗体は、in vitro活性化B細胞によっても生成され得る(米国特許第5,567,610号および第5,229,275号参照)。
【0164】
抗体断片の産生のために、種々の技法が開発されてきた。伝統的には、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解的消化により得られた(例えばMorimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24: 107-117 (1992)およびBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)参照)。しかしながら、これらの断片は、目下、組換え宿主細胞により直接的に産生され得る。例えば抗体断片は、上記の抗体ファージライブラリーから単離され得る。代替的には、Fab’−SH断片は、大腸菌から直接回収され、化学的に結合されて、F(ab’)2断片を形成し得る(Carter et al., Bio/Technology 10: 163-167 (1992))。別のアプローチによれば、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離され得る。抗体断片の産生のための他の技法は、熟練開業医には明らかである。他の実施形態では、特に選択される抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である(WO 93/16185;米国特許第5,571,894号および米国特許第5,587,458号参照)。抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載されたような「線状抗体」でもあり得る。このような線状抗体断片は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0165】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに関する結合特異性を有する抗体である。例示的二重特異性抗体は、B細胞表面マーカーの2つの異なるエピトープと結合し得る。その他のこのような抗体は、第一B細胞マーカーを結合し、さらに、第二B細胞表面マーカーを結合し得る。代替的には、抗B細胞マーカー結合アームは、B細胞に対する細胞防御機序に集中するために、白血球上のトリガリング分子、例えばT細胞受容体分子(例えばCD2またはCD3)、あるいはIgGに対するFc受容体(FcyR)、例えばFcyRI(CD64)、FcyRII(CD32)およびFcyRIII(CD16)と結合するアームと組合され得る。二重特異性抗体は、B細胞に対する細胞傷害剤を局在化するためにも用いられ得る。
【0166】
これらの抗体は、B細胞マーカー結合アームを保有し、そのアームは細胞傷害剤(例えば、サポリン、抗インターフェロン、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセートまたは放射性同位体ハプテン)と結合する。
【0167】
二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)として調製され得る。二重特異性抗体の製造方法は、当該技術分野で知られている。全長二重特異性抗体の伝統的産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現を基礎にしており、この場合、2つの鎖は異なる特異性を有する(Millstein et al., Nature, 305: 537-539 (1983))。
【0168】
免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為取り合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10の異なる抗体分子の考え得る混合物を産生し、このうち1つのみが正確な二重特異性構造を有する。正確な分子の精製(通常はアフィニティークロマトグラフィー工程により実施される)は、かなり厄介であり、生成物収率は低い。同様の手法は、WO 93/08829に、ならびにTraunecker et al., EMBO J., 10: 3655-3659 (1991)に開示されている。
【0169】
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとなされる。軽鎖結合に必要な部位を含有する第一重鎖定常領域(CH1)は融合のうちの少なくとも1つに存在することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合を、所望により、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別個の発現ベクター中に挿入され、適切な宿主生物体中に同時トランスフェクトされる。これは、構築に用いられる不等比率の3つのポリペプチド鎖が最適収率を提供する実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互比率を調整するに際して多大な柔軟性を提供する。しかしながら、等しい比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率を生じる場合、またはその比率が特別な意味を有さない場合、一発現ベクター中の2つのまたは3つすべてのポリペプチド鎖に関するコード配列を挿入することが可能である。
【0170】
このアプローチの好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにおける第一結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二結合特異性を提供する)からなる。二重特異性分子の半分のみにおける免疫グロブリン軽鎖の存在が分離の容易な方法を提供するので、不斉構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を助長する、ということが見出された。このアプローチは、WO 94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成についてのさらなる詳細に関しては、例えばSuresh et al., Methods in Enzymology, 121: 210 (1986)を参照されたい。米国特許第5,731,168号に記載された別のアプローチによれば、一対の抗体分子間の界面は、組換え細胞培地から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にするよう工学処理され得る。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第一抗体分子の界面からの1つまたは複数の小アミノ酸側鎖は、より大きな側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)に取り替えられる。大型側鎖(単数または複数)と同一のまたは類似のサイズの代償性「キャビティ」が、大型アミノ酸側鎖をより小さなもの(例えばアラニンまたはトレオニン)に取り替えることにより、第二抗体分子の界面上に作製される。これは、ホモ二量体のような他の望ましくない最終産物を上回るヘテロ二量体の収率を増大するための機序を提供する。
【0171】
二特異性抗体としては、架橋または「異種接合」抗体が挙げられる。例えば、異種接合体での抗体の一方はアビジンと結合され、他方はビオチンと結合され得る。このような抗体は、例えば望ましくない細胞に対して(米国特許第4,676,980号)そしてHIV感染の治療のために(WO 91/00360、WO 92/200373およびEP 03089)、免疫系細胞を標的にするために提案されてきた。異種接合抗体は、任意の好都合な架橋法を用いて作製され得る。適切な架橋剤は当該技術分野で周知であり、多数の架橋技法とともに米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0172】
抗体断片からの二重特異性抗体の生成のための技法も、文献に記載されている。例えば二重特異性抗体は、化学的連結を用いて調製され得る。Brennan et al., Science, 229: 81 (1985)は、無傷抗体がタンパク質分解的に切断されて、F(ab’)2断片を生成する手法を記載する。これらの断片は、ジチオール錯形成剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、近接ジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防止する。生成されたFab’断片は、次に、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に転化される。Fab’−TNB誘導体のうちの1つは、次に、メルカプトエチルアミンで還元することによりFab’−チオールに再転化され、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための作用物質として用いられ得る。
【0173】
近年の進歩は、化学的に結合されて二重特異性抗体を形成し得る大腸菌からのFab’−SH断片の直接回収を助長した。Shalaby et al., J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の産生を記載する。各Fab’断片は、大腸菌から別個に分泌され、in vitroで指向性化学的結合に付されて、二重特異性抗体を形成した。このように形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞および正常ヒトT細胞と結合し、ならびにヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発した。
【0174】
組換え細胞培養から直接、二重特異性抗体断片を作製し、単離するための種々の技法も記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生されてきた(Kostelny et al., J. Immunol., 148(5): 1547-1553 (1992))。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。
【0175】
抗体ホモ二量体は、ヒンジ領域で還元されて、モノマーを形成し、次に、再酸化されて抗体へテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の産生のためにも利用され得る。
【0176】
Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により記載された「ダイアボディ」技法は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機序を提供した。断片は、短すぎて同一鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にしないリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に連結される重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つの断片のVHおよびVLドメインは別の断片の相補的VLおよびVHドメインと強いて対合指せて、それにより2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略も報告されている(Gruber et al., J. Immunol., 152: 5368 (1994)参照)。
【0177】
2より大きい力価を有する抗体が意図される。例えば三重特異性抗体が調製され得る(Tutt et al., J. Immunol. 147: 60 (1991))。
【0178】
本明細書中に記載されるタンパク質またはペプチドアンタゴニストおよび抗体のアミノ酸配列修飾(単数または複数)が意図される。例えば、BLyS結合抗体またはアンタゴニストの結合親和性および/またはその他の生物学的特性を改良することが望ましい。適切なヌクレオチド変化をアンタゴニスト核酸中に導入することにより、あるいはペプチド合成により、アンタゴニストのアミノ酸配列変異体が調製される。このような修飾としては、例えばアンタゴニストのアミノ酸配列からの残基の欠失、および/またはアミノ酸配列内の残基の挿入、および/または置換が挙げられる。欠失、挿入および置換を任意に組合せて最終構築物に到達するが、但し、最終構築物は所望の特質を保有する。アミノ酸変化は、例えばグリコシル化部位の数または位置の変化といったように、アンタゴニストの翻訳後プロセスも変更し得る。
【0179】
突然変異誘発のための好ましい位置であるアンタゴニストのある残基または領域の同定のための有用な方法は、Cunninghham and Wells Science, 244: 1081-1085 (1989)に記載されたように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、残基または標的残基の群が同定され(例えば荷電残基、例えばarg、asp、his、lysおよびglu)、中性または負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)により取って代わられて、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次に、さらなるまたは他の変異体を、置換の部位に、または置換の部位のために導入することにより、置換に対する機能的感受性を実証するアミノ酸位置が改良される。したがって、アミノ酸配列変異を導入するための部位が予め決定されるが、一方、突然変異の性質それ自体は予め決定される必要はない。例えば所定部位での突然変異の達成を分析するために、talaスキャニングまたは無作為突然変異誘発が標的コドンまたは領域で実行され、発現アンタゴニスト変異体が所望の活性に関してスクリーニングされる。
【0180】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100またはそれより多くの残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ−および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または多数のアミノ酸残基の配列内挿入を包含する。末端挿入の例としては、N末端芽チオニル残基を有するアンタゴニスト、または細胞傷害性ポリペプチドと融合されたアンタゴニストが挙げられる。アンタゴニスト分子の他の挿入変異体としては、酵素のアンタゴニストのN−またはC末端との融合物、あるいはアンタゴニスト血清半減期を増大するポリペプチドが挙げられる。
【0181】
別の型の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基により取って代わられるアンタゴニスト分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。抗体アンタゴニストの置換的突然変異誘発のために最大の利益を有する部位としては超可変領域が挙げられるが、しかしFR変更も意図される。保存的置換は、「好ましい置換」の見出しの下で表1に示されている。このような置換が生物学的活性の変化を生じる場合には、表1で「例示的置換」と呼ばれ、あるいはアミノ酸クラスについて以下でさらに記載されるようなより実質的な変化が導入され、生成物がスクリーニングされる。
【0182】
アンタゴニストの生物学的特性における実質的修飾は、(a)シートまたはらせん立体配座としての置換の領域におけるポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性、あるいは(c)大部分の側鎖を保持するのに及ぼすそれらの作用が有意に異なる置換を選択することにより成し遂げられる。天然残基は、共通の側鎖特性に基づいて群に分けられる:(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;(2)中性親水性:cys、ser、thr;(3)酸性:asp、glu;(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:gly、pro;および(6)芳香族:trp、tyr、phe。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つの成員を別のクラスのものに交換することを伴う。
【0183】
アンタゴニストの適正立体配座の保持に関与しない任意のシステイン残基も、一般的にはセリンで置換されて、分子の酸化的安定性を改良し、異所性架橋を防止し得る。逆に、システイン結合(単数または複数)は、アンタゴニストに付加されて、その安定性を改良し得る(特に、アンタゴニストが抗体断片、例えばFv断片である場合)。
【0184】
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体の1つまたは複数の超可変領域残基を置換することを包含する。一般的には、さらなる開発のために選択された結果的に生じる変異体(単数または複数)は、それらが生成される親抗体に比して改良された生物学的特性を有する。このような置換変異体を生成するための便利な方法は、ファージ表示を用いる親和性成熟である。要するに、いくつかの超可変領域部位(例えば6〜7部位)は、突然変異化されて、各部位でのすべての考え得るアミノ置換を生じる。このように生成された抗体変異体は、各粒子内に包装されたM13の遺伝子III産物との融合物として糸状ファージ粒子から一価様式で表示される。ファージ表示変異体は、次に、本明細書中に開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングされる。修飾のための候補超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発が実施されて、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定し得る。代替的には、または付加的には、抗原−抗体複合体の結晶構造を解析して、抗体および抗原間の接触点を同定することが有益であり得る。このような接触残基および近隣残基は、本明細書中で詳述される技法による置換のための候補である。このような変異体が一旦生成されれば、変異体のパネルは本明細書中に記載されるようなスクリーニングに付されて、1つまたは複数の関連検定において優れた特性を有する抗体がさらなる開発のために選択され得る。
【0185】
アンタゴニストの別の型のアミノ酸変異体は、アンタゴニストの元のグリコシル化パターンを変更する。変更するとは、アンタゴニスト中に見出される1つまたは複数の炭水化物部分を欠失すること、および/またはアンタゴニスト中に存在しない1つまたは複数のグリコシル化部位を付加することを意味する。
【0186】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合型またはO結合型である。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖との炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニン(ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖との炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在が、潜在的グリコシル化部位を作製する。O結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的ニアhセリンまたはトレオニンとの糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうちの1つの結合を指すが、しかし5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンも用いられ得る。
【0187】
アンタゴニストへのグリコシル化部位の付加は、それが(N結合型グリコシル化部位に関する)上記のトリペプチド配列のうちの1つまたは複数を含有するよう、アミノ酸配列を変更することにより好都合に成し遂げられる。変更は、(O結合型グリコシル化部位に関して)もとのアンタゴニストの配列への1つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基の付加により、またはそれらによる置換によってもなされ得る。
【0188】
アンタゴニストのアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該技術分野で既知の種々の方法により調製される。これらの方法としては、天然供給源からの単離(天然アミノ酸配列変異体の場合)、あるいはオリゴヌクレオチド媒介性(または部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発およびアンタゴニストの早期調製変異体または非変異体バージョンのカセット突然変異誘発による調製が挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
例えば、アンタゴニストの抗原依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を増強するために、エフェクター機能に関して本発明のアンタゴニストを修飾することが望ましい。これは、抗体アンタゴニストのFc領域中に1つまたは複数のアミノ酸置換を導入することにより達成され得る。代替的には、または付加的には、システイン残基(単数または複数)がFc領域中に導入され、それによりこの領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にし得る。
【0190】
このように生成されるホモ二量体抗体は、改良されたインターナライゼーション能力、および/または増大された補体媒介性細胞殺害および抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を有し得る(Caron et al., J. Exp Med. 176: 1191-1195 (1992)およびShopes, B.J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照)。Wolff et al., Cancer Research 53: 2560-2565 (1993)に記載されたようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて、抗腫瘍活性増強を示すホモ二量体抗体も調製され得る。代替的には、二重Fc領域を有する抗体が工学処理されて、それにより増強された補体溶解およびADCC能力を有し得る(Stevenson et al., Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照)。
【0191】
アンタゴニストの血清半減期を増大するために、例えば米国特許第5,739,277号に記載されたように、アンタゴニスト(特に抗体断片)中にサルベージ受容体結合エピトープを組入れ得る。本明細書中で用いる場合、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のin vivo血清半減期を増大するのに関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
検定
【0192】
末梢B細胞濃度は、CD3−/CD40+細胞を計数するFACS法により確定される。
【0193】
試料中の総リンパ球のうちのCD3−CD40+B細胞のパーセントは、以下のゲーティング戦略により得られる。リンパ球集団は、領域1(Ri)を限定するために、前方散乱/側方散乱スキャタグラム上で印をつけられる。RIにおける事象を用いて、蛍光強度ドットプロットがCD40およびCD3マーカーに関して表示される。蛍光標識されたアイソタイプ対照を用いて、CD40およびCD3陽性に関してそれぞれのカットオフ点を確定する。
FACS分析
【0194】
50万個の細胞を洗浄し、100 lのFACS緩衝液(5 ulの染色または対照抗体を含有する1%BSAを有するリン酸塩緩衝生理食塩水)中に再懸濁する。染色抗体はアイソタイプ対照を含めてすべて、PharMingen, San Diego, CAから入手する。ヒトBLYS発現は、FITC接合抗ヒトIgG1二次抗体とともに、Rituxan & commatで染色することにより、査定される。
【0195】
FACS分析は、FACScanおよびCell Quest(Becton Dickinson Immunocytometry Systems, San Jose, CA)を用いて実行される。リンパ球はすべて、前方および側方光散乱において限定されるが、一方、Bリンパ球はすべて、細胞表面でのB220の発現で限定される。
【0196】
末梢B細胞数を分析することにより、そして注射後の第1週に関しては日ベースで、その後は週ベースで、脾臓、リンパ節および骨髄におけるFACSによるhBLYS+B細胞の分析により、B細胞枯渇および回復が査定される。注入2H7変異体抗体の血清レベルがモニタリングされる。
製剤処方物
【0197】
本発明に従って用いられるBLyS結合抗体のようなBLySアンタゴニストの治療用処方物は、凍結乾燥処方物または水溶液の形態で、所望度の純度を有する抗体を、任意の製薬上許容可能な担体、賦形剤または安定剤と混合することにより調製される(Remitgtorz’s Pharmamaceutical Science 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容可能な担体、賦形剤または安定剤は、用いられる投与量およびの独活でレシピエントに対して非毒性であり、そして緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩およびその他の有機酸;酸化防止剤、アスコルビン酸およびメチオニン;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンズアルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン;単糖、二糖およびその他の炭水化物、例えばグルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート化剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、例えばトゥイーン、プルロニックTMまたはポリエチレングリコール(PEG)を包含する。
【0198】
本明細書中の処方物は、治療されている特定の適応症に必要な場合、1つより多くの活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。例えば、それは、細胞傷害薬、化学療法薬、サイトカインまたは免疫抑制薬(例えば、T細胞に作用するもの、例えばシクロスポリンまたはT細胞を結合する抗体、例えばLFA−1を結合するもの)を提供することが望ましい。このような他の作用物質の有効量は、処方物中に存在する抗体の量、疾患または障害あるいは治療の種類、ならびに上記の他の因子に依っている。これらは、一般的に、本明細書中に記載されるものと同一投与量および投与経路で、あるいは今まで用いられた投与量の約1〜99%で用いられる。
【0199】
活性成分は、例えばコアセルベーション技法により、あるいは界面重合により調製されるマイクロカプセル中に、例えばヒドロキシメチルセルロースまたはコロイド薬剤送達系(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中の、あるいはマクロエマルジョン中の、それぞれゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中にも封入され得る。このような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
【0200】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の適切な例としては、アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス(このマトリックスは造形品、例えば皮膜またはマイクロカプセルの形態である)が挙げられる。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−ビニルアセテート、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射用マイクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0201】
in vivo投与のために用いられるべき処方物は、滅菌性でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に成し遂げられる。
疾患治療
疾患
【0202】
本発明の抗CD20剤およびBLySアンタゴニストは、B細胞調節自己免疫障害を治療するために有用である。B細胞調節自己免疫疾患としては、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎)、乾癬、皮膚炎、例えばアトピー性皮膚炎、慢性自己免疫性蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、全身性強皮症および硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(クローン病、潰瘍性結腸炎)に関連した応答、呼吸窮迫症候群、成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、アレルギー性鼻炎、脳炎、ブドウ膜炎、結腸炎、糸球体腎炎、アレルギー性症状、湿疹、喘息、T細胞の浸潤を伴う症状および慢性炎症性応答、アテローム硬化症、自己免疫性心筋炎、白血球粘着不全症、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、狼瘡(例えば、腎炎、非腎性、円板状、脱毛症)、若年発症性糖尿病、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカインおよびTリンパ球により媒介される急性および遅延性過敏症に関連した免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例えばウェーゲナー肉芽腫症、顆粒球減少症、血管炎(例えば、ANCA)、再生不良性貧血、クームズ陽性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、免疫性溶血性貧血、例えば自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血、赤芽球形成不全(PRCA)、VIII因子欠損、A型血友病、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、多臓器傷害症候群、重症筋無力症、抗原抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランバート・イートン筋無力症症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブン・ジョンソン症候群、固形臓器移植片拒絶(例えば、高パネル反応性抗体力価、組織中のIgA沈着等)、移植片対宿主病(GVHD)、水疱性類天疱瘡、天疱瘡(尋常性、落葉状をすべて含む)、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病、スティッフマン症候群、巨細胞性動脈炎、免疫複合体性腎炎、IgA腎症、IgM多発性神経障害またはIgM媒介性神経障害、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、精巣および卵巣の自己免疫疾患、例えば自己免疫性睾丸炎および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症;自己免疫性内分泌疾患、例えば自己免疫性甲状腺炎、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、アジソン病、グレーブス病、自己免疫性多腺症候群(または多腺性内分泌障害症候群)、I型糖尿病(インスリン依存性真性糖尿病(IDDM)とも呼ばれる)およびシーハン症候群;自己免疫性肝炎、リンパ性間質性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植片)対NSIP、ギラン・バレー症候群、大型血管性血管炎(例えば川崎病および結節性多発性動脈炎)、強直性脊椎炎、ベルジェ病(IgA腎症)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、小児脂肪便症(グルテン性腸症)、寒冷グロブリン血症、ALS、冠動脈疾患が挙げられる。
【0203】
B細胞枯渇の所望レベルは、疾患に依っている。好ましくは、B細胞枯渇は、少なくとも2ヶ月、さらに好ましくは3ヶ月、さらに好ましくは4ヶ月、さらに好ましくは5ヶ月、さらに好ましくは6ヶ月またはそれ以上の間の疾患の進行を防止するのに十分である。さらに好ましい実施形態では、B細胞枯渇は、少なくとも6ヶ月、さらに好ましくは9ヶ月、さらに好ましくは1年、さらに好ましくは2年、さらに好ましくは3年、さらに好ましくは5年またはそれ以上、寛解の時間を増大するのに十分である。最も好ましい実施形態では、B細胞枯渇は疾患を治癒するのに十分である。好ましい実施形態では、自己免疫疾患患者におけるB細胞は、治療前の基線レベルの少なくとも一時的には約75%、さらに好ましくは80%、85%、90%、95%、99%であり、100%でさえある。
【0204】
自己免疫疾患の治療のためには、免疫抑制薬またはBLySアンタゴニストの投与量を調整することにより、個々の患者における疾患および/または症状の重症度によってB細胞枯渇の程度を加減することが望ましい。したがって、B細胞枯渇は、完全であり得るが、しかし完全でなければならないというわけではない。あるいは、総B細胞枯渇は、初期治療においては所望され得るが、しかしその後の治療では、投与量は、部分的枯渇のみを達成するために調整され得る。一実施形態では、B細胞枯渇は少なくとも20%、すなわち、治療前の基線レベルと比較した場合、80%またはそれ未満のB細胞が残存する。他の実施形態では、B細胞枯渇は、25%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上である。
【0205】
好ましくは、B細胞枯渇は、疾患の進行を停止するのに、差兄好ましくは、治療中の特定疾患の徴候および症候を軽減するのに、さらに好ましくは、疾患を治癒するのに十分である。
【0206】
治療的適用のためには、本発明の免疫抑制薬およびBLySアンタゴニスト組成物は、付加的薬剤、例えば抗炎症薬、例えばDMARDSおよびその他の生物学的製剤との組合せ療法で用いられ得る。慣用的療法の前または後と連続して、自己免疫疾患のための他の形態の慣用的療法と併用して先行治療法が投与され得る。
【0207】
治療前と比較して、本発明の組成物の投与後に、症候の測定可能な改善または他の適用可能な判定基準が存在する場合、本発明の方法によりB細胞調節自己免疫疾患の患者は疾患を軽減され、首尾よく治療される。治療の効果は、本発明の組成物の投与後3〜10週間以内に明らかになり得る。各疾患に関して適用可能な判定基準は、適切な技術分野の熟練医によく知られている。例えば、疾患の臨床的または血清学的証拠、例えば疾患の血清学的マーカー、完全血球数、例えばB細胞数、ならびに血清免疫グロブリンレベルに関して、処置患者を、医者は監視し得る。IgGおよびIgMの血清レベルは、BLySアンタゴニスト、例えばアタシセプト処置マウスにおいて低減される。アタシセプト処置に対して応答するヒト患者は、同様に、血清IgGおよびIgMレベルの低減を示す。
【0208】
自己免疫または自己免疫関連疾患の治療の効能および成功を査定するためのパラメーターは、適合疾患における熟練医に既知である。一般的には、熟練医は、特定疾患の徴候および症候の低減を調べる。以下に例を示す。
【0209】
関節リウマチ(RA)は、病因が未知である自己免疫障害である。大半のRA患者が、治療を用いている場合でさえ、進行性関節破壊、変形、能力障害を生じ得るし、死を早めることさえある疾患の慢性的経過を蒙る。RA両方の目標は、関節損傷を防止するかまたは制御し、機能の損失を防止し、疼痛を低減することである(”Guidelines for the management of rheumatoid arthritis” Arthritis & Rhemmatism 46(2): 328-346 (February, 2002)参照)。新たに診断されたRAを有する患者の大多数は、診断の3ヶ月以内に疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)療法を用いて開始される。
【0210】
RAに一般に用いられるDMARDは、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキセート、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ(+経口および皮下メトトレキセート)、アザチオプリン、D−ペニシラミン、金(経口)、金(筋肉内)、ミノシクリン、シクロスポリン、ブドウ球菌プロテインA免疫吸着である。
【0211】
身体はRA中に腫瘍壊死因子α(TNFa)を産生するため、TNFa阻害剤はその疾患の治療のために用いられてきた。エタネルセプト(ENBREL)は、活性RAの治療のために米国で認可された注射用薬剤である。エタネルセプトはTNFaと結合して、関節および血液からほとんどのTNFaを除去し、それによりTNFaが炎症および関節リウマチの他の症候を促進しないようにする。
【0212】
エタネルセプトは、ヒトIgG1のFc部分に連結されるヒト75kD(p75)腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外リガンド結合部分からなる「Fc融合タンパク質」融合タンパク質である。
【0213】
インフリキシマブ(レミケードの商標名で販売されている)は、RAおよびクローン病を治療するために処方される免疫抑制薬である。インフリキシマブは、TNFと結合し、炎症を生じるTNFαを標的にし、それと結合することにより身体における炎症を低減するキメラモノクローナル抗体である。
【0214】
従来D2E7として知られているアダリムマブ(ヒュミラTM、Abbott Laboratories)は、TNFaと結合し、1つまたは複数の伝統的疾患修飾性DMARDに対する不十分な応答を有していた中等度〜重症活性RAを有する成人における徴候および症候を低減し、構造的損傷の進行を抑制するために認可されている。
【0215】
免疫抑制薬およびBLySアンタゴニストを投与することによる関節リウマチの治療は、RAのための前記薬剤のうちの1つまたは複数のを用いた治療と連係して実施され得る。例えば、関節リウマチに関しては、治療の進行に関する測定は、腫脹および圧痛関節の数、ならびに朝のこわばりの長さを包含し得る。患者は、X線およびシャープ・スコアとして知られている採点システムを用いて、手および足のどれだけ多くの関節が蝕まれているかを検査され得る。別の採点システムは、療法に対する応答を査定するためのアメリカリウマチ学会判定基準に基づいている。
【0216】
RAにおける治療効能を評価する一方法は、アメリカリウマチ学会(ACR)判定基準に基づいており、これは、とりわけ、圧痛および腫脹関節の改善パーセンテージを測定する。RA患者は、例えば、抗体治療を伴わない場合(例えば、治療前の基線)またはプラセボによる治療と比較した場合、ACR20(20%改善)でスコアされ得る。抗体治療の効能を評価する別の方法としては、X線スコアリング、例えば、構造的損傷、例えば骨糜爛および関節間隙狭小化をスコアリングするために用いられるシャープX線スコアが挙げられる。患者は、治療中または治療後の期間の健康状態質問票[HAQ]スコア、AIMスコア、SF配布36に基づいた能力障害の防止または改善に関しても評価され得る。ACR20判定基準は、圧痛(疼痛性)関節数および腫脹関節数の両方における20%改善+以下の5つの付加的測定値のうちの少なくとも3つの20%改善を包含し得る:
1.視覚的アナログスケール(VAS)による患者の疼痛査定、
2.疾患活動性(VAS)についての患者の全体的評価、
3.疾患活動性(VAS)についての医者の全体的評価、
4.健康状態質問票により測定される患者の自己評価能力障害、
5.急性期反応物質、CRPまたはESR。
【0217】
ACR50および70は、同様に定義される。好ましくは患者は、少なくともACR20のスコア、好ましくは少なくともACR30、さらに好ましくは少なくともACR50、さらに好ましくは少なくともACR70、最も好ましくは少なくともACR75およびそれ以上を達成するのに有効な量の本発明のBLyS結合抗体を投与される。
【0218】
乾癬性関節炎は、独特の且つ異なるX線写真特徴を有する。乾癬性関節炎に関しては、関節糜爛および関節間隙狭小化が、同様にシャープ・スコアにより評価され得る。本明細書中に開示されるヒト化BLYS結合抗体は、関節損傷を防止し、ならびに当該障害の疾患徴候および症候を低減するために用いられ得る。
【0219】
本発明のさらに別の態様は、治療的有効量のBLySアンタゴニストを本発明の免疫抑制薬と組合せてSLEに罹患している患者に投与することにより、狼瘡またはSLEを治療する方法である。SLEDAIスコアは、疾患活動性の数的定量化を提供する。SLEDAIは、0〜103の数的範囲で疾患活動性と相関することが知られている24の臨床的および実験室パラメーターの計量指数である(Bryan Gescuk & John Davis, ”Novel therapeutic agent for systemic lupus erythematosus” in Current Opinion in Rheumatology 2002, 14: 515-521参照)。二本鎖DNAに対する抗体は、狼瘡の腎発赤およびその他の症状発現を引き起こすと考えられる。抗体治療を受けている患者は、血清クレアチニン、尿タンパク質または血尿の有意の再現可能な増大と定義される腎発赤までの時間の間監視され得る。代替的には、またはさらに、患者は、抗核抗体および二本鎖DNAに対する抗体のレベルに関して監視され得る。SLEのための治療としては、高用量コルチコステロイドおよび/またはシクロホスファミド(HDCC)が挙げられる。全身性紅斑性狼瘡に関しては、患者は、抗核抗体および二本鎖DNAに対する抗体のレベルに関して監視され得る。
【0220】
本発明の特定の態様は、免疫抑制薬とBLySアンタゴニスト、例えばアタシセプトの組合せを用いる狼瘡性腎炎の治療である。
【0221】
脊椎関節症は、一群の関節の障害、例えば強直性脊椎炎、乾癬性関節炎およびクローン病である。治療の成功は、有効患者および医者全体評価測定ツールにより確定され得る。
【0222】
本発明の方法を用いて治療され得るさらなる自己免疫疾患は、乾癬である。種々の医薬品が乾癬を治療するために目下用いられている;治療は、疾患重症度に直接関連して、異なる。より軽症形態の乾癬を有する患者は、典型的には、局所的治療、例えば局所的ステロイド、アントラリン、カルシポトリエン、クロベタゾールおよびタザロテンを利用して、疾患を管理するが、一方、中等度および重症乾癬を有する患者は全身性(メトトレキセート、レチノイド、シクロスポリン、PLTVAおよびUVB)療法を用いると思われる。タールも用いられる。これらの療法は、安全性問題、時間を要するレジメンまたは面倒な治療プロセスの組合せを有する。さらに、高価な設備およびオフィス設定での専用の空間を要するものもある。全身投薬剤は、重篤な副作用、例えば抗血圧、高脂血症、骨髄抑制、肝疾患、腎疾患および消化管不調を生じ得る。さらにまた、光線療法の使用は、皮膚癌の発生率を増大し得る。局所療法の使用に関連した不便性および不快性のほかに、光線療法および全身治療は、患者に周期的にオンおよびオフ療法を施して、それらの副作用のために生涯曝露を監視する必要がある。
【0223】
乾癬に関する治療効能は、基線症状と比較した場合の医者の全体的評価(PGA)変化、ならびに乾癬領域重症度指数(PASI)スコア、乾癬症候評価(PSA)を含めて、疾患の臨床的徴候および症候の変化を監視することにより査定される。患者は、特定時点で経験される掻痒の程度を示すために用いられる視覚的アナログスケールに関して治療を通して定期的に測定され得る。
用量投与
【0224】
治療されるべき適応症ならびに当該技術分野の熟練医が周知である用量投与に関連した因子によって、本発明のBLySアンタゴニストおよび免疫抑制薬は、毒性および副作用を最小限にしながら、その適応症の治療に有効である投与量で投与される。一般的には、本発明のBLySアンタゴニストは、約0.25 mg/体重1kg〜約25 mg/kg、好ましくは約1 mg/kg〜約10 mg/kgの投与量範囲でヒト患者に投与される。言い換えれば、BLySアンタゴニストに関する投与量の好ましい範囲は、約75〜約190 mg/用量投与である。好ましい一実施形態では、投与量は、BLySアンタゴニストに関して約150 mg/用量投与である。
【0225】
本発明の治療方法は、抗CD20剤およびBLySアンタゴニスト(ともに、本明細書中では治療部分と呼ばれる)を同時的におよび順次的に投与する組合せからなる。順次投与では、治療部分は、いずれかの順で、すなわち先ず抗CD20、その後BLySアンタゴニストが投与され得る。患者は、ある薬剤で処置されて、効能に関して監視された後に、その薬剤で治療され得る。例えば、抗CD20剤が部分的応答を生じる場合、治療はBLySアンタゴニストに引き継がれて、完全応答を達成する(その逆もある)。代替的には、患者は最初に両薬剤を投与されて、その後、一方または他方の薬剤のみが投与され得る。
【0226】
薬剤に耐容させるか、および/または、治療用化合物の最初のおよびその後の投与から生じる注入関連症候のような副作用の発生を低減するために患者を状態調節するために、それを必要とする哺乳類は、初回または初期状態調節用量の一方または両方の薬剤を投与され、次に、薬剤の2回目の治療的有効用量の一方または両方の薬剤を投与されるが、この場合、2回目およびその後の用量は初回用量より高い。初回用量は、哺乳類を状態調節して、より高い第2回治療用量を耐容するのに役立つ。このようにして、哺乳類は、初期に投与され得るより高い用量の治療用化合物に耐容し得る。「状態調節用量」は、治療用化合物の投与に関連した初回用量副作用の頻度または重症度を弱めるかまたは低減する用量である。状態調節用量は、治療用量、亜治療用量、症候用量または亜症候用量であり得る。治療用量は、患者に及ぼす治療効果を示す用量であり、亜治療用量は、処置される患者に及ぼす治療効果を示さない用量である。症候用量は、投与に及ぼす少なくとも1つの副作用を誘発する用量であり、亜症候用量は、副作用を誘発しない用量である。いくつかの副作用は、発熱、頭痛、悪心、嘔吐、呼吸困難、筋肉痛および悪寒である。
【0227】
状態調節用量レジメン以外に、本発明の疾患軽減を達成するために後に続き得る多数の他のレジメンが存在する。このような一アプローチは、免疫抑制薬の短期治療コースと、その後の漸減、その後の抗CD20剤とBLySアンタゴニストとの組合せによる治療である。例えば、コルチコステロイドは、4週間、1日2回、経口的に1000〜1500 mgを、その後、10週間の経過中に5 mg/週から10 mg/日に漸減して投与され得る。一旦BLySアンタゴニストおよび/または抗CD剤が開始された場合は、負荷投与量レジメンが適切であり得る。特にアタシセプトは、4週間、2回/週で投与され、その後、長期間、例えば48週間、毎週投与され得る。患者の白血球数が許容可能レベル(すなわち、約3.0×109/Lまたは3000/mm2)を保持する場合は、投与量を毎週増大して、3回/日で1000 mgの最大用量までにし得る。
投与経路
【0228】
BLySアンタゴニストおよび抗CD剤は、既知の方法に従って、例えば静脈内投与により、例えばボーラス剤として、あるいは一定時間に亘る連続注入により、皮下、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、関節内、滑液包内、くも膜下腔内または吸入経路により、ヒト患者に投与される。適切な処方物を伴うBLySアンタゴニストも、経口的にまたは局所的に投与され得る。BLySアンタゴニストおよび抗CD20剤は、一般的に、静脈内または皮下投与により投与される。異なる治療部分は、同一のまたは異なる経路により投与され得る。
製品およびキット
【0229】
本発明の別の実施形態は、上記のようなB細胞調節自己免疫障害を治療するためのBLySアンタゴニストおよび抗CD20剤を含む製品である。具体的一例では、製品は、SLEの治療のためのアクタシセプトおよびリツキサン(登録商標)を含有する。
【0230】
製品は、少なくとも1つの容器ならびに容器上のまたは容器に関連したラベルまたは包装挿入物を含む。適切な容器としては、例えば瓶、バイアル、注射器等が挙げられる。容器は、種々の物質、例えばガラスまたはプラスチックから形成され得る。容器は、症状を治療するために有効である本発明の組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有する(例えば、容器は、皮下注射針により貫通可能な栓を有する静脈内溶液袋またはバイアルであり得る)。ラベルまたは包装挿入物は、特定の症状、例えば狼瘡性腎炎または関節リウマチを治療するために組成物が用いられる、ということを示す。ラベルまたは包装挿入物は、患者に組成物を投与するための器具をさらに含む。付加的には、製品は、製薬上許容可能な緩衝剤、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸塩緩衝生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液を含む第二容器をさらに含み得る。それはさらに、商業的なおよびユーザーの見地から望ましい他の物質、例えば他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針および注射器を包含し得る。
【0231】
種々の目的のために、例えばB細胞殺害検定のために有用であるキットも提供される。当該製品を用いる場合、キットは、容器、ならびに容器上のまたは容器に関連したラベルまたは包装挿入物を含む。容器は、本発明の少なくとも1つの免疫抑制薬および1つのBLySアンタゴニストを含む組成物を保持する。例えば希釈剤および緩衝剤、対照抗体を含有する付加的容器が包含され得る。ラベルまたは包装挿入物は、組成物の記述、ならびに意図されたin vitroまたは診断的使用のための使用説明書を提供し得る。
【実施例】
【0232】
実施例1
BLySアンタゴニストの製造
TACI−Fcの4つのアミノ末端切頭化バージョンが生成される。4つすべてが、配列番号2のアミノ酸残基30と融合されたWO 02/094852に開示されたような修飾されたヒト組織プラスミノーゲン活性因子シグナル配列(配列番号4)を有する。しかしながら、4つのタンパク質は、Fc5が配列番号2のTACIアミノ酸配列と融合された点の位置が異なった。表1は、4つの融合タンパク質の構造を略記する。
【表1】

【0233】
標準技法を用いて重複PCRにより、タンパク質コード発現カセットを生成した(例えばHorton et al., Gene 77: 61 (1989)参照)。TACIをコードする核酸分子およびFc5をコードする核酸分子を、PCR鋳型として用いた。オリゴヌクレオチドプライマーは、表2および3で同定される。
【表2】

【表3】

【0234】
初回のPCR増幅は、4つのアミノ末端切頭化バージョンのうちの各々に関して2つの反応で構成された。各バージョンに関して、1つの反応では5’および3’TACIオリゴヌクレオチドを、別の反応では5’および3’Fc5オリゴヌクレオチドを用いて、2つの反応を別々に実施した。初回PCR増幅の条件を以下に示す。25 μlの最終容積に、約200 ngの鋳型DNA、2.5 μlの10×Pfu反応緩衝液(Stratagene)、2 μlの2.5 mMdNTP、0.5 μlの20 μM各5’オリゴヌクレオチドおよび3’オリゴヌクレオチド、ならびに0.5 μlのPfuポリメラーゼ(2.5単位、Stratagene)を付加した。増幅温度プロフィールは、94℃で3分;94℃で15秒、50℃で15秒、72℃で2分を35サイクル;その後、72℃で2分の伸長で構成された。反応産物をアガロースゲル電気泳動により分別し、予測サイズに対応する帯域をゲルから切り出して、メーカーの使用説明書に従って、Qiagen QIAQUICKゲル抽出キット(Qiagen)を用いて回収した。
【0235】
DNA鋳型として初回PCRからのゲル精製断片を用いて、第2回のPCR増幅または重複PCR増幅反応を実施した。第2回PCR増幅の条件を以下に示す。25 μlの最終容積に、約10 ngの鋳型DNA(TACI断片およびFc5断片の各々)、2.5 μlの10×Pfu反応緩衝液(Stratagene)、2 μlの2.5 mMdNTP、0.5 μlの20 μM各ZC24,903(配列番号27)およびZC24,946(配列番号30)、ならびに0.5 μlのPfuポリメラーゼ(2.5単位、Stratagene)を付加した。増幅温度プロフィールは、94℃で1分;94℃で15秒、55℃で15秒、72℃で2分を35サイクル;その後、72℃で2分の伸長で構成された。反応産物をアガロースゲル電気泳動により分別し、予測サイズに対応する帯域をゲルから切り出して、メーカーの使用説明書に従って、Qiagen QIAQUICKゲル抽出キット(Qiagen)を用いて回収した。
【0236】
メーカーの推奨プロトコールに従って、InvitrogenのZEROBLUNT TOPO PCRクローニングキットを用いて、アミノ末端切頭化TACI−FcPCR産物の4つのバージョンの各々を別々にクローン化した。表4は、これらのTACI−Fc構築物のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を同定する。
【表4】

【0237】
ヌクレオチド配列を立証後、アミノ末端切頭化TACI−Fc融合物の4つのバージョンの各々をFseIおよびAscIで消化して、アミノ酸コードセグメントを放出した。FseI−AscI断片を、CMVプロモーターおよびSV40ポリAセグメントを含有する哺乳類発現ベクターに結紮した。発現ベクターを、下記のようなチャイニーズハムスター卵巣細胞中に導入した。
【0238】
実施例2
チャイニーズハムスター卵巣細胞によるTACI−Fcタンパク質の産生
TACI−Fc発現構築物を用いて、電気穿孔により、動物タンパク質無含有培地中で増殖させた懸濁液適応チャイニーズハムスター卵巣(CHO)DG44細胞をトランスフェクトした(Urlaub et al., Som. Cell. Molec. Genet. 12: 555 (1986))。CHO DG44細胞は、両方のジヒドロフォレートレダクターゼ染色体位置での欠失のため、機能性ジヒドロフォレートレダクターゼ遺伝子を欠く。増大された濃度のメトトレキセートの存在下での細胞の増殖は、発現構築物上でのジヒドロフォレートレダクターゼ遺伝子ならびに連結組換えタンパク質コード遺伝子の増幅を生じる。
【0239】
PFCHO場位置(JRH Biosciences, Lenexa, KS)、4 mMのL−グルタミン(JRH Biosciences)および1×ヒポキサンチン−チミジン補足物(Life Technologies)中で、CHO DG44細胞を継代培養し、回転振盪台上の120 RPMでのCorning振盪フラスコ中で、37℃、5%CO2で細胞をインキュベートした。細胞を、線状化発現プラスミドを用いて別々にトランスフェクトした。滅菌性を保証するために、エッペンドルフ管中のプラスミドDNA200 μgを、20 μlの剪断サケ精子キャリアDNA(5’→3’ Inc. Boulder, CO、10 mg/ml)、22 μlの3 MNaOAc(pH5.2)および484 μlの100%エタノール(Gold Shield Chemical Co., Hayward, CA)と組合せる琴により、氷上で25分間、単一エタノール沈殿ステップを実施した。インキュベーション後、管を4℃冷却室中に置いた微量遠心機中で14,000 RPMで遠心分離して、上清を除去し、ペレットを0.5 mlの70%エタノールで2回洗浄して、風乾させた。
【0240】
900 RPMで5分間、25 ml円錐遠心管中で106個の総細胞(16.5 ml)を遠心分離することにより、DNAペレットを乾燥しながら、CHO DG44細胞を調製した。CHO DG44細胞を総容積300 μlのPFCHO増殖培地中に再懸濁し、0.4 cm電極ギャップを有するGene-Pulserキュベット(Bio-Rad)中に入れた。約50分の乾燥時間後に、DNAを、500 μlのPFCHO増殖培地中に再懸濁し、総容積が800 μlを越えないようにキュベット中の細胞に付加し、室温で5分間放置して、泡形成を減少させた。0.296 kV(キロボルト)および0.950 HC(高電気容量)に設定したBio-Rad Gene Pulser IIユニット中にキュベットを入れて、直ちに電気穿孔した。
【0241】
細胞を室温で5分間インキュベート後、CoStarT−75フラスコ中の総容積20 mlのPFCHO培地中に入れた。フラスコを37℃で5%CO2で48時間置いて、次にトリパンブルー排除を利用して血球計で細胞を計数したら、ヒポキサンチン−チミジン補足物を含有せず、200 mMメトトレキセート(Cal Biochem)を含有するPFCHO選択培地中に入れた。
【0242】
メトトレキセート選択プロセスの回収時に、分泌TACI−Fcタンパク質を含有する条件調節培地をウエスタンブロット分析により検査した。
【0243】
実施例3
カニクイザル末梢血および脾臓細胞中のB細胞サブセットの免疫表現型分類
マーカーの以下の組合せを用いて、細胞集団を検出した:
【表5】

方法
試料
【0244】
種/系統および供給元は、Novaprim Group, Mauritiusにより供給されたカニクイザルであった。用いられたマトリックスは末梢全血(新たに採取された脾臓組織を伴う抗凝血剤としての8%EDTA溶液中)であった。
モノクローナル抗体
【0245】
関連論文に報告されたような、カニクイザル抗原と交差反応する市販のヒトモノクローナル抗体を用いた(以下の表1)。
検定手順
血液
【0246】
適量の抗体カクテルに全血100 μLを付加することにより、細胞の染色を実施した(表1)。抗体/血液混合物を十分に混合し、次に4℃で15〜20分間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、1 mLのBD FACLyse溶解溶液(1:10希釈で)を付加し、低/中等度速度で数秒間、渦巻き撹拌で試料を十分に混合し、次に、暗所で室温で約12分間インキュベートした。終了時に、2 mLの染色緩衝液(PBS;2%FBSおよび10 mMNaN3)をこの混合物に付加した。試験管を元のキャップで再び蓋をして、逆さにして混合し、次に揺りバケツ中に入れて、室温で6〜7分間、250×gで遠心分離した。上清をデカントし、2回目の洗浄を実施した。2回目の洗浄段階の終了時に、100 μLのサイトフィックス緩衝液(BD)を細胞ペレットに付加し、低/中等度速度で渦巻き撹拌で十分に混合した。データ獲得まで、試料を暗所で4℃で保持した。FACSCalibur血球計算器での獲得直前に、試料を染色緩衝液中に再懸濁した。
【0247】
表面免疫グロブリン染色のために、血液試料(100 μL)を1 mLの染色緩衝液で2回洗浄した。上清を吸引し、10 μg/μLのウサギまたはヤギ免疫グロブリン(それぞれ、IgDおよびIgM染色用)を付加し、37℃で30分インキュベートした。遮断段階の終了時に、試料染色および溶解を前記と同様に実施した。
脾細胞
【0248】
脾臓組織を、冷却培地(DMEM、2%FCS、2 mMEDTA)を含入するペトリ皿中に入れて、細胞懸濁液を得るためにメスで丁寧に切り刻んだ。注射器で上下にピペッティングすることにより細胞をばらばらにして、70 μmナイロンメッシュを通して濾過し、洗浄して、DMEM中に107/mLに調整した。マウスIgG(5〜10 μg/106細胞)を細胞懸濁液に付加し、氷上で5〜10分間インキュベートして、非特異的結合部位を遮断した。
【0249】
次に、適量の抗体に100 μLのカニクイザル脾細胞を付加することにより、脾細胞を染色した。抗体/細胞混合物を混合し、次に4℃で15〜20分間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、1 mLの塩化アンモニウム溶解溶液を付加した。試料を低/中等度速度で数秒間、渦巻き撹拌で十分に混合して、暗所で室温で約7分間インキュベートした。次に、2 mLの染色緩衝液(PBS;2%FBS、10 mMNaN3)を付加した。試験管を元のキャップで再び蓋をして、逆さにして混合し、次に揺りバケツ中に入れて、室温で6〜7分間、250×gで遠心分離した。上清をデカントし、洗浄手順を反復した。2回目の洗浄段階の終了時に、100 μLのサイトフィックス緩衝液(BD)を細胞ペレットに付加し、低/中等度速度の渦巻き撹拌器で渦巻き撹拌で十分に混合した。データ獲得まで、試料を暗所で4℃で保持した。FACSCalibur血球計算器での獲得直前に、試料を染色緩衝液中に再懸濁した。
フローサイトメトリー分析
【0250】
488 nmおよび633 nmレーザー線を装備したFACSCaliburフローサイトメトリー(BD Biosciences)およびCellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を、全試料の獲得および分析のために用いた。初めに、適正な計器機能および検出器直線性を調べるために、CaliBriteBeads(BD Biosciences)を動かした。補正対照を動かして、計器設定を確証した。
【0251】
リンパ球獲得ゲートを前方/側方散乱パラメーターで設定し、リンパ球を優勢に含むことを立証した。各試料に関して、リンパ球ゲート内の最低20000事象を獲得した。
結果
血液染色
【0252】
文献(Vugmeyster Y. et al., 2004、Yoshino N. et al., 2000)中で報告されるようなカニクイザル細胞と交差反応するヒト抗体を、メーカーに推奨された濃度で用いた(表5)。
【表6】

【0253】
最良の適用可能希釈を調べるために、いくつかの抗体を予備試験した。さらに、非特異的蛍光の存在を調べ、各試料に関して、四分円を設定するために、アイソタイプ対照の組合せを動かした。すべてのマーカーに関して、許容可能な結果を得た。
【0254】
ナイーブ(CD40+CD21+CD27−)およびメモリー(CD40+CD21+CD27+)B細胞を同定するためには、接合されたCD27−PEを用いることが不可欠であり、そうでなければ、二重陽性集団CD21+CD27+を観察できなかった。抗体のFITC修飾は、時折、サル細胞と結合する抗体を抑制し得る(Reimann et al., 1994)。データを分析するためにその後に実行されるゲーティング戦略を、以下に示す(図1)。染色の質を調べるために、血液試料をADVIA120Hematology System(Bayer Diagnostics)で予め実験して、得られたリンパ球パーセンテージ(%)をリンパ球ゲートパーセンテージの比較のために用いた。
脾細胞
【0255】
血液染色のために用いられたモノクローナル抗体を、脾細胞の染色のためにも採用した。濃度を最適化するために、異なる希釈液を最初に試験した。抗体および選択濃度の要約を以下に示す:
【表7】

細胞集団の分析のためにその後に実行されるゲーティング戦略を、図1A、1Bおよび1Cに例示する。
参考文献
【0256】
Vugmeyster Y., Howell K., Bakshi A., Flores C, Hwang O., McKeever K., (2004);
B-cells subsets in blood and lymphoid organs in Macaca facsicularis , Cytometry, Part A 6 IA: 69-75.
【0257】
Yoshino N., Ami Y., Terao K., Tashiro F., Honda M., (2000); Upgrading of flow cytometric analysis for absolute counts, cytokines and other antigenic molecules of Cynomolgus Monkeys (Macaca fascicularis) by using anti-human cross-reactive antibodies, Exp.Anim. 49 (2): 97- 110.
【0258】
Reimann K.A., Waite B., Lee-Parritz D.E., Lin W., Uchanska-Ziegler B., O'Connell MJ., Letvin N.L., (1994); Use of human leucocyte-specific monoclonal antibodies for clinically immunophenotyping lymphocytes of Rhesus Monkeys, Cytometry, 17: 102-108.
【0259】
実施例4
カニクイザルにおけるアタシセプトとリツキサンの組合せ
アタシセプトおよび抗CD20モノクローナル抗体(リツキサン(登録商標))同時投与を、カニクイザルにおける31週試験で試験した。
【0260】
2 mL/kgの容積中に20 mg/kgの用量で、4週間、1回/週で、尾静脈を介して緩徐静脈内注入(200 mg/時)としてリツキシマブを投与した。リツキシマブに関する対照群には、リツキシマブに代わるビヒクル(0.9%塩化ナトリウム溶液)を投与した。
【0261】
1 mL/kgの容積中に20 mg/kgの用量で、13週間、大腿四頭筋(交互部位を用いて)に週2回皮下注射としてアタシセプトを投与した。アタシセプトに関する対照群には、アタシセプトに代わるビヒクル(PBS1×pH7.2)を投与した。
【0262】
薬理学的作用、総体的病変および組織病理学的検査の評価のために、試験中の異なる時点で動物を屠殺した。選択動物に関する処置期間の後には、14週の回復期間を置いた。2つの化合物の異なる組合せ、群当たりの動物数および予定屠殺動物を含めた実験計画を、以下の表に示す(表7)。
【0263】
上記の実施例2に記載したような脾細胞に関して、FACS分析を実行した。5週目(いくつかの群のみに関して)および18週目(全群に関して)に脾臓に関して分析を実行し、そうして18週目のみに分析を限定した。それらの18週目データを、以下の表8として添付した。
【0264】
18週目の総脾細胞のうち、群1(ビヒクル)および2(リツキシマブ単独)の動物で、約41%がCD40+B細胞である。これに対比して、18週目にアタシセプトでの処置(群3)後は、脾細胞の15%のみがCD40+B細胞である。動物が、リツキシマブで、次にアタシセプトで順に処置される場合(群4)、18週目では脾細胞の6%のみがCD40+B細胞である。群4動物におけるこの35%減は、アタシセプト単独(−27%)およびリツキシマブ単独(−1%)より大きな付加的作用である。同様のより大きな付加的減少は、メモリーB細胞に関して観察される(CD21+/CD27+であるCD40+脾細胞の%)。
表8:脾臓中の総Bリンパ球(CD40+リンパ球%として)およびメモリーBリンパ球(CD21+/CD27+であるCD40+脾細胞の%)のフローサイトメトリー免疫表現型分類
【表8】

【表9】

結論
【0265】
本明細書中の実験は、抗CD20剤およびBLySアンタゴニスト、例えばリツキサン(登録商標)およびアタシセプトの組合せが、リツキサン(登録商標)およびBLySアンタゴニスト単独による低減のレベルと比較して、B細胞レベルの相乗的枯渇を生じる、という点で意外な結果を実証した。
【0266】
ヒトCD20トランスジェニックマウスにおけるアタシセプトおよびリツキシマブによる組合せ治療の効果
実施例5
リツキシマブはマウスCD20と結合せず、したがって正常マウスにおいてB細胞を枯渇するために用いられ得ない。さらにまた、in vivoB細胞枯渇のために有効な市販の抗マウスCD20mAbは存在しない。Gong等(J. Immunol 174: 817-826; 2005)は、彼等が抗ヒトCD20mAb(リツキシマブおよびオクレリズマブ)を用いて処置し、これらのmAbで処置されたヒトで観察されるものと同様にB細胞枯渇を誘導するヒトCD20トランスジェニックマウス(細菌人工染色体/BAC技術を用いて生成)の系統を利用した。その論文で、抗CD20mAb療法とBR3−Fc(BAFFR−Ig、BLyS単独阻害薬)とを組合せると、脾臓B細胞の枯渇を有意に増強する、ということも彼等は示した。この実施例は、エール大学のMark Shlomchik(Ahuja et al., J. Immunol 179: 3351-3361; 2007)から認可を得て入手したhCD20 Tgマウスの系統を利用する。
【0267】
一般的アプローチ:最適用量の各治療薬を用い、次に、各順序で2つを組合せ(最初にリツキシマブ、または最初にアタシセプト)、そしてB細胞枯渇を評価する。最適時点(3週)でB細胞枯渇を査定するが、しかし治療停止後(〜20週)のB細胞回復を評価するための付加的群を包含する。
材料および方法
【表10】

用量調製
【0268】
アタシセプト処置群に関する日程および経路に倣って、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS;Gibco)を、0.2 ml/動物で週3回、皮下投与した。アタシセプトを室温で解凍し、穏やかにしかし十分に混合し、次に、0.2 mL以下/マウスの皮下注射のために室温PBS中に希釈した。リツキシマブは希釈せず、10 mg/mLで供給されたままで用いた。
動物の管理、順化および収容
【0269】
室温を70〜74°Fに保持し、湿度を30%〜70%に保持した。12時間の明/暗周期を用いたが、但し、試験関連活動に対応するために室内光が暗周期中に点灯されることがある。各動物には、齧歯類用餌(照射5056、Pico Lab, Richmoud, IN)と水を自由に摂取させた。この試験に用いた手法は、動物に対する不快、苦悩または疼痛を回避するかまたは最小限にするよう意図される。試験動物の処置は、実験動物の管理および使用に関する指針(ILAR publication, 1996, National Academy Press)に明記された条件に従っている。表10に詳述したように、動物を無作為に種々の処置群に割り当てた。
【表11】

【0270】
処置群:用量投与期間は、用量投与期と呼ばれる。投与初日は、「1日目」と呼ばれる。1日目の前日は、「−1日目」である。用量投与期最終屠殺後の日は、回復期の初日である。
【表12】

【0271】
リツキシマブを腹腔内(IP)投与した。アタシセプトおよびビヒクル(PBS)は、週3回(合計9用量投与)、肩甲骨下領域内に皮下(SC)注射により投与した。初回用量は、1日目(D1)に投与される。組合せ処置群では、そして関連する場合、全動物に先ずIP注射を施した後、60分の期間内にSC注射を投与した。群4:最初にリツキシマブ、次にアタシセプト;群5:最初にアタシセプト、次にリツキシマブ。個々の動物体重によって、用量投与容積を毎週調整した。
試験終点の要約:
・全血(150 μL;EDTA)を採取し、TおよびB細胞サブセットに関してフローサイトメトリー分析を実施した(表16参照)。
・血清(〜100 μL全血を血清分離試験管中に入れる)を種々の時点で採取して、その後、Luminex検定により総IgG1、IgG2a、IgM、IgEおよびIgAを分析する。
・現時点で、約半数の動物が屠殺されている。残りは、試験の約20週目に屠殺される。
・屠殺時に、脾臓を採取し、フロー分析とその後のIHC/組織学のために加工処理した。採血前に、イソフルラン麻酔下で脾臓摘出を実施した。全脾臓を計量し、記録した後、切片にした。
・屠殺時に、主要末梢リンパ節(鼠径部、腋窩、上腕、頚部および腸間膜)を、考え得る将来的IHCおよび組織学のために採取した。リンパ節を、ホルマリンまたは亜鉛トリス緩衝液で固定し、考え得る将来的使用のために70%アルコール中に保存した。
・組織学的検査用:1/3の脾臓および1つのLLN(左LN)を亜鉛トリス中に入れて、同一組織(右LN)を10%NBF中に採取した。
【0272】
群1〜5(n=53)の全動物は、後眼窩静脈を介して、−5日目に採取した血清(100 μL血を血清分離管中に)および全血(150 μL、EDTA管中)を有した。
血清採取:最少で100 μLの全血を血清分離管中に入れて、最低15分間、凝固させた。次に血液を4000 rpmで10分間回転させた。最少で50 μLの血清を、第二容器中に分取した。結成のアリコートを≦60℃で保存した。
【0273】
EDTA収集物中の全血:最少で150 μLの血液を、EDTAを含入する微量採血管中に入れた。管を、最低20回、穏やかに逆さにした。EDTA試料中の全血を、フローサイトメトリーのために加工処理するまで、室温で保存した。
【0274】
屠殺された動物はすべて、イソフルランで麻酔した。全屠殺動物は、血液血清、脾臓および主要末梢リンパ節を採取された。脾臓をイソフルラン麻酔科で採取した後、血液試料を採取して、脾細胞サブセットが変化するのを回避した。全脾臓を計量した。脾臓を3つのセクション(頭部、中間部、尾部)に切断して、表12に示す表に加工処理した。
【表13】

【0275】
リンパ節採取:主要末梢リンパ節(鼠径部、腋窩、上腕、頚部および腸間膜)を、カセット中に組織学/IHCのために採取した(表13参照)。
a.IHCのための左リンパ節(腸間膜LNを除いて)を含有するカセットを、亜鉛トリス緩衝液中に入れる。
b.組織学のための右リンパ節(腸間膜LNを除いて)を含有するカセットを、10%NBF中に入れる。
c.全腸管(胃から直腸の真上まで)全体を洗浄せずに採取することにより、腸間膜リンパ節を含有するカセットを、10%NBF中に採取する。
試料はすべて、室温で保存した。
【表14】

【0276】
全血免疫表現型分類:要するに、全血を、K2EDTA抗凝血剤を含入するBDMicrotainerTM管中に採取した。全血の50 μLアリコートを、適切な作業抗体カクテル(表14参照)とともにインキュベートして、赤血球を溶解した。フローサイトメトリーでの試料獲得前に、Flow CountTM蛍光マイクロスフェアを、絶対細胞濃度を算定するために各試料管に付加する。15 mW空冷アルゴンイオンレーザー(488 nm放射)および赤色ダイオードレーザー(635 nm放射)を装備したBD FACSCaliburフローサイトメーターで、データ獲得を実行した。計器較正を試料獲得日毎に実施し、適切な対照を用いて、蛍光補正および集団ゲーティングを立証する。一般に、本発明の試験では、2以上の採血時点が存在する。
【表15】

1 表現型[B220+/CD19+/huCD20−]は、B220およびネズミCD19表面抗原をともに発現するが、ヒトCD20導入遺伝子を発現しないB細胞の集団を説明する。
2 表現型[B220+/CD19+/huCD20+]は、B220およびネズミCD19表面抗原を、ヒトCD20導入遺伝子を含めて発現するB細胞の集団を説明する。
【0277】
脾臓免疫表現型分類:要するに、単一細胞を単離し、適切な抗体カクテル(表15参照)とともにインキュベートした。全血免疫表現型分類の場合と同様に、計器較正およびデータ獲得を実行した。
【表16】

IHC分析
【0278】
組織:試験組織は、脾臓およびリンパ節の両方からの試料を包含する。脾臓試料に関しては、各動物からの脾臓(頭部および尾部片)の横断切片が含まれる。脾頭部切片(亜鉛トリス固定)を、CD45R/B220、CD138またはCD5単独に対するラットモノクローナル抗体で染色する。組織切片のサブセットは、陰性対照としてラットアイソタイプIgGで染色する。脾尾部切片(ホルマリン固定)は、ビオチニル化PNA(GCを可視化する必要がある場合;H&Eで十分である)およびH&Eで染色する。組織切片のサブセットは、陰性対照としてビオチニル化上皮小体ホルモン関連タンパク質(PTHrP)でも染色される。
【0279】
各動物からの検査リンパ節としては、鼠径部、腋窩、上腕、頚部および腸間膜リンパ節が挙げられる。リンパ節をホルマリンまたは亜鉛トリスで固定して、考え得る将来の使用のために70%アルコール中に保持する。
【0280】
抗体:用いられる抗体としては、マウスCD45R/B220(クローンRA3−6B2、アイソタイプ:ラットIgG2a、k;0.5 mg/mL、#557390、BD Biosciences, San Jose, CA)、CD5(Ly−1、クローン53−7.3、0.5 mg/mL、#553017、BD Biosciences)、およびCD138(クローンSyndecan-1、0.5 mg/mL、#553712、BD Biosciences)に対する3つのラットモノクローナル抗体が挙げられる。
【0281】
統計学的分析:臓器重量、B細胞数および免疫グロブリンレベルの群差の統計学的分析を、分散分析(ANOVA)を用いて実行した。
結果
【0282】
表16は、標準処置群に関する種々の時点でのマウス末梢血試料中のB細胞の絶対濃度の変化%を表す。
【表17】

* 太字数字/影付セルは、この薬剤組合せに関して付加的作用より大きいものを示す。
【0283】
表17は、具体的には、陽性リンパ球またはB220プラス細胞の存在下での変化と同一データを表現する代替的方法である。これは、実施例4のカニクイザル実験の結果を報告した方法と同様に包含される(末梢血よりむしろ脾臓から単離された細胞の使用のために必要)。
【表18】

* 太字数字/影付セルは、この薬剤組合せに関して付加的作用より大きいものを示す。
結論
【0284】
本明細書中の実験は、抗CD20剤およびBLySアンタゴニスト、例えばリツキサン(登録商標)およびアタシセプトの組合せが、多数の時点で、リツキサン(登録商標)およびBLySアンタゴニスト単独による低減のレベルと比較して、B細胞レベルの相乗的枯渇を生じる、という点で意外な結果を実証した。
参考文献
【0285】
本出願内で引用される参考文献は、特許、公開出願および他の出版物を含めて、参照により本明細書中で援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類におけるB細胞数の低減方法であって、配列番号26の配列を含むポリペプチドを含むBLySアンタゴニストおよび抗CD20剤を投与することを包含する方法。
【請求項2】
BLySアンタゴニストおよび抗CD20剤が相乗的に作用してB細胞レベルを低減する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
低減されるB細胞レベルがメモリーB細胞の数である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記抗CD20剤が、リツキサン(登録商標)、オクレリズマブ、オファツムマブ、TRU−015およびDXL625からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
B細胞調節性自己免疫障害の軽減方法であって、治療的有効量の、配列番号26の配列を含むポリペプチドを含むBLySアンタゴニストおよび抗CD20剤を、前記障害に罹患している患者に投与することを包含する方法。
【請求項6】
前記抗CD20剤が、リツキサン(登録商標)、オクレリズマブ、オファツムマブ、TRU−015およびDXL625からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記抗CD20剤がリツキサン(登録商標)である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
BLySアンタゴニストおよび抗CD20剤が相乗的に作用してB細胞レベルを低減する、請求項5記載の方法。
【請求項9】
低減されるB細胞レベルがメモリーB細胞の数である請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記自己免疫疾患が関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、狼瘡性腎炎(LN)、ウェーゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経炎、重症筋無力症、血管炎、真性糖尿病、レーノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項11】
前記自己免疫疾患が全身性紅斑性狼瘡(SLE)である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記抗CD20剤がリツキサン(登録商標)である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
BLySアンタゴニストが約1〜約25 mg/kgの投与量で投与され、抗CD20が約1〜約25 mg/kgの投与量で投与される、請求項6記載の方法。
【請求項14】
BLySアンタゴニストが約20 mg/kgの投与量で投与され、抗CD20が約20 mg/kgの投与量で投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
シクロホスファミド(CYC)、アザチオプリン(AZA)、シクロスポリンA(CSA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、糖質コルチコイド、プレドニソンおよび疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)からなる群から選択される免疫抑制薬を用いる療法と併用してBLySアンタゴニストおよび抗CD20剤が投与される、請求項6記載の方法。
【請求項16】
配列番号26の配列を含むポリペプチドを含むBLySアンタゴニストおよび抗CD20剤を含む、組成物。
【請求項17】
前記抗CD20剤がリツキサン(登録商標)である、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
配列番号26の配列を含むポリペプチドを含むBLySアンタゴニストおよび抗CD20剤、ならびにラベルを含む製品であって、ここで該ラベルは、該組成物がB細胞調節性自己免疫障害の治療用であることを示す、製品。
【請求項19】
前記抗CD20剤がリツキサン(登録商標)である、請求項18記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−500715(P2011−500715A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530114(P2010−530114)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/080177
【国際公開番号】WO2009/052293
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】