説明

自走式草刈機

【課題】
刈刃を備えた作業部の位置を直感的に把握することができる自走式草刈機を提供することを目的とする。
【解決手段】
刈刃を備えた作業部2と、原動機31等を取り付ける本体3と、該本体に接続されて持ち手となるハンドル部4と、駆動輪5とからなる自走式草刈機6において、前記作業部4、本体3及びハンドル部4は互いに位置固定され、リンク機構により駆動輪5に対して本体3を取り付けることによって、作業部2、本体3及びハンドル部4を駆動輪5に対して一体的に昇降させることを特徴とする自走式草刈機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は刈刃を備えた作業部を上下させて刈高を調整することができる自走式草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
刈刃を備えた作業部を上下動させて刈高を調整する種々の自走式草刈機が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、草刈機10(刈刃を備えた作業部)を車体前方に備えた自走式草刈機が開示されている。図1には、草刈機だけが地面に対して上下動するする様子が実線と破線で記載されている。
【0004】
特許文献1の草刈機は、昇降制御装置によって走行中の刈高を所定の高さに制限し、転倒を防止するものであるとの記載がある([0005]記載)。
【0005】
特許文献1記載の草刈機は、昇降制御装置によって、草刈機を走行させている最中に刈刃を備えた作業部を過度に上昇することがないように制限をかけるものである。したがって、オペレーターが草刈機の操作に習熟していない場合であっても、作業部を上昇させ過ぎて草刈機を転倒させることがない点で優れたものである。しかし、作業部は草刈機の先端付近に設けられているため、作業部が直接見えにくいために作業部の位置を目視で確認するなどして、刈高を直感的に知ることが難しいという問題があった。そのため、特許文献1の草刈機は、リンク機構を利用した高さ検出装置を採用しているが、構造が複雑である。
【0006】
特許文献2においても、草刈機の本体に対して刈刃を備えた作業部だけを上下動させて、刈高を調節する草刈機が開示されている。しかしながら、特許文献2には刈刃を備えた作業部の位置を検出する手段については記載されておらず、特許文献1と同様に刈刃の位置を知るには、センサーなどの高さの検出装置を利用しているものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3886025号公報
【特許文献2】特開2003−116317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
刈刃を備えた作業部の位置を直感的に把握することができる自走式草刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
刈刃を備えた作業部と、原動機等を取り付ける本体と、該本体に接続されて持ち手となるハンドル部と、駆動輪とからなる自走式草刈機において、前記作業部、本体及びハンドル部は互いに固定され、リンク機構により駆動輪に対して本体を取り付けることによって、作業部、本体及びハンドル部を駆動輪に対して一体的に昇降させることを特徴とする自走式草刈機によって、上記の課題を解決する。ここでいう「原動機等を取り付ける本体」とは、草刈機のフレームのみを指すのではなく、フレームにボルト等によって位置固定される原動機や変速機、ギアボックスなど、フレームに位置固定される部材も含む意味である。
【0010】
作業部は本体に位置固定されているので、本体が昇降するに際して本体の姿勢が不安定となると、作業部の姿勢も不安定となり危険である。したがって、本体は地面に対して一定の姿勢(角度)を保ったまま、上下動させる必要がある。本体の姿勢を制御するためには、本体と駆動輪とをリンク機構を利用して接続するとよい。
【0011】
リンク機構としては、本体の姿勢を一定に維持しつつ、本体を駆動輪から上下動させることができるものであればどのようなものを用いても構わない。例えば、任意の点で本体及び駆動輪に対して軸支され昇降のための駆動力を供給する昇降シリンダと、任意の点で本体及び駆動輪に対して軸支されるリンクフレームと、駆動輪に原動機からの動力を伝達する動力伝達装置を納めるケースとからなるリンク機構を使用することができる。すなわち前記ケースと前記のリンクフレームによって平行リンクを形成し、前記の昇降シリンダの駆動力で平行リンクを動かして本体を駆動輪に対して上下動させる構成である。この構成は駆動装置を納めるケースをリンクフレームの一つとして利用するものである。この構成によれば、本体は駆動輪を中心とした円弧軌跡上を移動しながら、駆動輪に対して昇降することとなる。
【0012】
前記の昇降シリンダは、本体を上昇させ得るだけの圧力を発生させるものであれば、特に限定されない。例えば、油圧シリンダ、水圧シリンダ、気圧シリンダ等を使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の草刈機の作業部を上下動させるとそれに伴って、本体及びそれに位置固定された部材やハンドル部が一緒に上下動する。これによりオペレーターは本体の位置変動を目視で確認したり、ハンドル部の位置変動を体感することにより、刈刃を備えた作業部の位置変動を直感的に知ることができる。
【0014】
本発明の自走式草刈機の駆動輪に本体を昇降可能に接続するには、本体と駆動輪に軸支されるリンクフレームと本体側から駆動輪へと動力伝達装置を収納するケースを利用した平行リンクを使用することが好ましい。ケースを平行リンクのフレームとして利用するので、別途のリンクフレームを設ける必要がない。これにより装置の軽量化し、コンパクトにすることができる。また、平行リンクを構成するフレームの一つをケースと兼用すれば、駆動輪に対して本体が上下動しても、常に駆動輪と本体を結ぶ動力伝達経路の長さは一定に保たれる。したがって、ケース内部の動力伝達装置としてチェンやベルトを使用したとしても、それらが撓むおそれがなく、確実な動力の伝達が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る草刈機の左側面図である。動力伝達経路等の内部機構を示すために左側の駆動輪(クローラ)を取り外した状態とした。また、動力伝達経路を示すためにチェンケースの手前側を取り外した状態とした。本体の一部も省略し内部のプーリー等を露出した状態とした。刈刃は破線で示した。
【図2】図1に示した草刈機の本体を上昇させた状態を示した左側面図である。図1と同様に、左側の駆動輪、チェンケースは取り外した状態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照しながら本発明の実施例を説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0017】
本発明は、刈刃21を備えた作業部2と、原動機31を取り付ける本体3と、該本体3に接続されて持ち手となるハンドル部4と、駆動輪5とからなる自走式草刈機6において、
前記作業部2、本体3及びハンドル部4は互いに固定され、リンク機構により駆動輪5に対して本体3を取り付けることによって、作業部2、本体3及びハンドル部4を駆動輪5に対して一体的に昇降させることを特徴とする自走式草刈機6である。
【0018】
作業部2は草刈機の前方に配される部分であって、ハウジング22内部に回転可能に軸支される刈刃21を備える。ハウジング22は樹脂製の天井の側面にゴムシートのスカートを両側面に取り付けたものである。
【0019】
本体3には原動機31、変速機32、油圧ポンプ314が組みつけられる。本体3には原動機31の出力軸313を刺し通すための貫通孔が設けられており、出力軸313の先端には2つのプーリー33、34が取り付けられる。上側のプーリー33はベルト35を介して、変速機32へと動力を伝達する。下側のプーリー34のベルト36を介して、刈刃21の回転軸に取り付けられたプーリー(図示略)へと動力を伝達する。
【0020】
変速機32に入力された動力は、変速機32の側面に配置された動力伝達装置(チェン37、変速機38、チェン39)を介して駆動輪5の駆動軸51へと伝達される。
【0021】
本実施例の自走式草刈機6は駆動輪5に動力を伝達するチェン39を収納するケース391と、リンクフレーム51と、油圧シリンダ52とで駆動輪(クロウラ)5に対して本体3を昇降可能に接続している。油圧シリンダ52の下端は、左右の駆動輪5を繋ぐステイ53に固定されるフランジに軸支される。一方、油圧シリンダ52の上端は、フレーム311に架け渡されるステイ312に軸支される。フレーム311は本体の草刈機の左側と右側に配された井桁状に加工されたパイプからなる部材であって、ハンドル部4と一体の部材である。油圧シリンダ52は左右の駆動輪5の中ほどに位置し、本実施例では配置数は1つとした。
【0022】
リンクフレーム51は左右一対であり、左右の駆動輪5に1本ずつリンクフレームが接続される。リンクフレーム51の下端は駆動輪5のベース54の後寄り下方の位置に軸支される。一方、リンクフレーム51の上端は、油圧ポンプ314の下方に配されるフランジに軸支される。油圧ポンプ314は本体3に位置固定されるので、本体3の一部とみなすことができる。
【0023】
ケース391は駆動輪5の駆動軸51のスプロケットと、変速機38の回転軸381のスプロケットにかけ回されるチェン39を収納する。ケース391は前述のリンクフレーム51と平行となる角度で取り付ける。ケース391はリンクフレーム51とともに平行リンクを構成する。本実施例の変速機32は本体3に位置固定されるので、本体3の一部とみなすことができる。ケース391は左右の駆動輪5のほぼ中ほどに位置し、油圧シリンダ52を左右から挟むように、2つ配置される。
【0024】
ハンドル部4には変速レバー、スロットルレバー、ブレーキレバー、油圧シリンダ52の油圧リリース用のレバーが配されており、草刈機の制御はハンドル部4で行われる。草刈機の本体3を上昇させる際には、油圧ポンプ314のペダル315を踏み込むことで、油圧経路332から油圧シリンダ52へと油を送り込み、本体3を上昇させる(図2)。逆に、本体を下降させる際には、ハンドル部4の油圧リリース用のレバーを引くことで、油圧が解放され本体は下降する。
【0025】
本実施例の草刈機はケース391が平行リンクのリンクフレームの一つとして機能する。油圧シリンダ52へ油を送り込むと、図2に示したように本体3は左側面からみた場合、左斜め上に上昇することとなる。ハンドル部4及び作業部2は、本体3に対して位置固定されているため、オペレーターはハンドルの高さや本体3の位置を目視で確認することにより、刈高を直感的に知ることができる。本発明において油圧は平行リンクを動作させるための駆動力として作用し、本体3の昇降姿勢はケース391とリンクフレーム51とからなる平行リンクによって規制される。本発明の草刈機は刈高を変更中も本体の姿勢(角度)は変化しないので、刈刃21を地面1に対して意図した角度で上下させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 地面
2 作業部
22 ハウジング
21 刈刃
3 本体
31 原動機
32 減速機
33 プーリー(上側)
34 プーリー(下側)
35 ベルト(上側)
36 ベルト(下側)
37 チェン
38 変速機
381 回転軸
39 チェン
311 フレーム
312 ステイ
313 出力軸
314 油圧ポンプ
315 ペダル
4 ハンドル部
5 駆動輪
51 駆動軸
52 油圧シリンダ
53 ステイ
54 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈刃を備えた作業部と、原動機等を取り付ける本体と、該本体に接続されて持ち手となるハンドル部と、駆動輪とからなる自走式草刈機において、
前記作業部、本体及びハンドル部は互いに位置固定され、リンク機構により駆動輪に対して本体を取り付けることによって、作業部、本体及びハンドル部を駆動輪に対して一体的に昇降させることを特徴とする自走式草刈機。
【請求項2】
リンク機構は、任意の点で本体及び駆動輪に対して軸支され駆動力を供給する昇降シリンダと、任意の点で本体及び駆動輪に対して軸支されるリンクフレームと、駆動輪に原動機からの動力を伝達する動力伝達装置を納めるケースとからなり、
前記ケースと前記のリンクフレームによって平行リンクを形成し、前記の昇降シリンダの駆動力で平行リンクを動かして本体を駆動輪に対して上下動させる請求項1に記載の自走式草刈機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−206012(P2011−206012A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79271(P2010−79271)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000104065)カーツ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】