説明

舗装用即脱ブロック

【課題】フラットパネルディスプレイのガラス基板の廃材を骨材として用いた舗装用ブロックを提供する。
【解決手段】舗装用即脱ブロックの舗装面形成層1は、透水性を有する多孔質モルタル硬化体からなる。該多孔質モルタル硬化体は、フラットパネルディスプレイのガラス基板の廃材を破砕してなる厚さ1.2mm以下のガラス片2からなる細骨材と、他の細骨材である砂4と、セメント等からなるモルタルマトリックス3からなる。一部のガラス片2の平面部2aは、舗装面1aに表出している。平面部2aで光Aを鏡面反射することによって、「きらきら感」が出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロッキングブロック等の舗装用即脱ブロックに関し、特に、透水性を有しかつ表面が光の反射により「きらきら感」を有する舗装用即脱ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリートの骨材として、各種の廃材を利用することが行われている。
例えば、自動車のウィンドウガラスに使用されていた強化ガラス等を破砕して得られるガラスカレットを骨材として混入したコンクリート製品であって、前記ガラスカレットは平面部を備え、同平面部を表面に露出させ光の反射により視認性を良くしたコンクリート製品が提案されている(特許文献1)。このコンクリート製品は、主に光が当たる平板、点字ブロック、車止め、縁石などでの視認性を高めることができるとともに、強化ウィンドウガラスとして使用されていた自動車の廃ガラスを再利用することにより、廃棄物の再資源化と原料費の節減が可能となるものである。
一方、近年、家電製品のリサイクルが義務付けられ、廃棄されたテレビ等の家電製品やパソコン等の情報機器を構成する各部品のリサイクルが進められている。
例えば、薄型テレビ等の部品である廃液晶パネルからガラス基板を回収するための、複数の特定の工程を含む方法が提案されている(特許文献2)。得られたガラス基板は、破砕した後に、ガラスカレット(ガラス片)として、再生ガラス、珪石代替材料、タイル材料等に再利用することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−261407号公報
【特許文献2】特開2008−216566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、コンクリートの骨材として、ガラスカレットが利用されているものの、廃材として増えつつあるフラットパネルディスプレイのガラス基板を破砕して得られるガラス片については、上述のとおり、再生ガラス、珪石代替材料、タイル材料等としての再利用が示されているだけであり、モルタルやコンクリートの骨材として土木分野への適用を具体的に示したものもなく、十分リサイクルが進んでいない。
本発明は、該フラットパネルディスプレイのガラス基板を破砕して得られるガラス片が、表裏に平面部を有しかつ薄厚であることに着目し、この形態を利用した舗装用ブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、テレビ、パソコン、携帯電話等の情報機器の画面に用いられている液晶ガラスやプラズマガラスからなるフラットパネルディスプレイの薄厚ガラス基板の廃材を破砕して、表裏に平面部を有しかつ薄厚のガラス片を得た後、このガラス片を、即脱ブロックの製造技術を生かして、透水性の舗装用即脱ブロックの多孔質の舗装面形成層中に骨材として特定の形態で含ませることによって、外部からの光の照射によってブロック表面に「きらきら感」を出すことができ、視認性及び意匠性を向上させ得ることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、ガラス片の形態と即脱ブロックの製造技術を組み合わせて創出されたものであり、以下の[1]〜[7](請求項1〜7に対応)を提供するものである。
[1] 本発明の一つは、透水性を有する多孔質モルタル硬化体からなる舗装面形成層を少なくとも含む舗装用即脱ブロックであって、前記多孔質モルタル硬化体が、表裏に平面部を有する厚さ1.2mm以下のガラス片からなる細骨材を含み、かつ、一部の前記ガラス片の平面部が、前記即脱ブロックの舗装面に表出しており、前記平面部で光を鏡面反射することによる「きらきら感」が出ることを特徴とする舗装用即脱ブロックである。
なお、本発明で言う「舗装用即脱ブロック」とは、インターロッキングブロック、カラー平板等の歩道、車道、公園等に敷設されている即時脱型(即脱)成型されるものをいう。また、「きらきら感」とは、光の反射によりダイヤモンドや雲母のように光り輝いている感をいう。
[2] 本発明の一つは、上記ガラス片が、情報機器の画面に用いられていたガラス薄板を破砕した廃ガラス片である上記[1]に記載の舗装用即脱ブロックである。
なお、本発明で言う「情報機器」とは、テレビ、パソコン、携帯電話、ゲーム機器等の薄厚ガラス基板からなる画面を有する機器をいう。
【0007】
[3] 本発明の一つは、上記廃ガラス片が、フラットパネルディスプレイの液晶ガラスもしくはプラズマガラスからなる上記[2]に記載の舗装用即脱ブロックである。
[4] 本発明の一つは、上記ガラス片が、粒径1〜5mm、板厚0.3〜1.2mmである上記[1]〜[3]のいずれかに記載の舗装用即脱ブロックである。
[5] 本発明の一つは、上記多孔質モルタル硬化体の透水係数が、0.01cm/秒以上である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の舗装用即脱ブロックである。
[6] 本発明の一つは、上記多孔質モルタル硬化体が、上記ガラス片からなる細骨材の他に無機質材からなる細骨材(本明細書中、「無機質骨材」ともいう。)を含んでおり、これら細骨材全体中の前記ガラス片からなる細骨材の割合が10〜40質量%であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の舗装用即脱ブロックである。
無機質骨材としては、従来からモルタルやコンクリートの細骨材として用いられているものであればよく、珪砂、山砂、海砂、砕砂、再生細骨材、ガラスビン廃材のカレット、フライアッシュやパーライト等の軽量骨材が挙げられる。強度の向上を目的とする場合は、珪砂等の強度・耐久性のある骨材を用いることが好ましい。
[7] 本発明の一つは、上記舗装用即脱ブロックが、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の多孔質モルタル硬化体からなる舗装面形成層と、前記舗装面形成層よりも大きな透水係数を有する多孔質モルタル硬化体もしくは多孔質コンクリート硬化体からなる基層とが積層されたものである舗装用即脱ブロックである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の舗装用即脱ブロックは、該ブロックの舗装面に、表裏に平面部を有しかつ薄厚であるガラス片を特定の形態で含むため、街灯等の光の照射によって、「きらきら感」を出すことができ、歩行者等による舗装面の視認性、及び、意匠性に優れる。
また、本発明の舗装用即脱ブロックは、透水性を有する多孔質(ポーラス)のモルタル硬化体からなる舗装面形成層を含むため、降雨後の水はけが良く、しかも多孔質モルタル硬化体の中に水分が残存している場合は、舗装面の温度上昇の抑制に寄与する等、環境に優しい。
更に、十分有効利用されていなかった情報機器からのガラス廃材を大量処理することができ、廃棄物の低減に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の舗装用即脱ブロックの一例における舗装面形成層を示す断面図である。
【図2】本発明の舗装用即脱ブロック全体の例(単層、二層の2種)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の舗装用即脱ブロックを説明する。
図1は、多孔質モルタル硬化体からなる舗装面形成層と多孔質コンクリート硬化体からなる基層とが積層してなる本発明の舗装用即脱ブロックの一例における舗装面形成層の一部を示す。
図1中、舗装面形成層1は、透水性を有する多孔質モルタル硬化体からなる。
この多孔質モルタル硬化体は、表裏に平面部を有しかつ薄厚であるガラス片からなる細骨材2、及び補強用の珪砂等の無機質骨材4を含み、これらがモルタルマトリックス3中に散在している。また、雨水等の水が下方向に浸透するための種々の形態の連続空隙(透水孔、空隙、毛細管)5を有する。
舗装面1a及びその近傍領域において、ガラス片からなる細骨材2の平面部2aは、成型時の振動と加圧によって、略横になる傾向がある。特に、舗装面1aにおいて、ガラス片からなる細骨材2は、略横(水平)に配向した形で表面に表出(露出)しており、光源からの入光Aを平面部2aで鏡面反射させ、反射光Bによる「きらきら感」を出している。
【0011】
ガラス片からなる細骨材2は、天然の骨材ではなく、表裏に平面部を有しかつ厚さが1.2mm以下と薄厚の人工骨材である。
この人工骨材は、テレビやパソコン等の画面に使用されている薄厚ガラス基板の廃材を破砕して得ることができる。中でも、フラットパネルディスプレイの液晶ガラス(液晶ディスプレイ中のガラス基板)もしくはプラズマガラス(プラズマディスプレイ中のガラス基板)は、これら廃材の処理技術がある程度確立していることと、容易かつ大量に上記ガラス片が得られることから好ましい。
ガラス片からなる細骨材2は、例えば液晶ガラスからは次のようにして得られる。
まず、ガラス基板のガラス表面に付着した液晶を、アセトン等の有機溶剤洗浄によって回収する。次いで、ガラス基板にプラズマを照射し、ガラス基板から金属、有機物等のガラス以外の物質を分離させる。その後、ガラス基板を破砕装置などで破砕すれば、鋭利な輪郭を有するガラス片が得られる。この鋭利な輪郭を有するガラス片を篩装置等で分級し、さらにエッジ処理を行なえば、モルタルの調製時に作業者が素手で取り扱うことも可能な、ガラス片からなる細骨材2が得られる。
【0012】
ガラス片からなる細骨材2の粒径範囲は、好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.2〜2.5mmである。なお、ここでいう粒径範囲は、各粒子の平面部2aの最長寸法のうち、80%以上がこの範囲内に含まれることをいう。粒径範囲が前記数値範囲よりも小さいと、「きらきら感」を十分に出し難い。粒径範囲が前記数値範囲よりも大きいと、舗装面1aに表出しているガラス片からなる細骨材2が、モルタルマトリックス3から剥離し易くなるので好ましくない。この剥離を防ぐために、「きらきら感」の効果を阻害しない限り、ポリマーを舗装面1aに混入させてもよい。
ガラス片からなる細骨材2の板厚は、好ましくは0.3〜1.2mm、より好ましくは0.6〜1.2mmである。ここで、板厚とは、ガラス片の表裏の平面部2a間の距離をいう。該板厚が0.3mm未満では、壊れ易く、かつ取り扱い難くなる。該板厚が1.2mmを超えると、光を反射することによる視認性は得られるものの、「きらきら感」による意匠性が得難くなる。
【0013】
舗装面形成層1では、舗装面1aにおいて、ガラス片からなる細骨材2が、平面部2aが略横(水平)になった形態で配向して多数表面に表出(露出)していることが重要である。このような形態は、舗装面形成層を、振動加圧成型による低水セメント比の即脱成形体とすることによって得られる。前記配向及びガラス片からなる細骨材2の舗装面1aへの表出は、成型時の振動と加圧により得られる。該表出は、多数の配向したガラス片からなる細骨材2が、その平面部2aを略横(水平)にした状態で起こるため、例えば、街灯の光が舗装面1aに照射されると、舗装面1a付近のガラス片からなる細骨材2の多くの平面部2aで、光の鏡面反射が起こり、それが多数重なることによって「きらきら感」が出ると推される。この「きらきら感」は、歩行者等にとって舗装部分の視認性を高めるとともに舗装の意匠性を高めるものである。
【0014】
前記多孔質モルタル硬化体は、ガラス片からなる細骨材2以外に、補強のための珪砂等の無機質骨材4を含むことが好ましい。この無機質骨材としては、川砂、陸砂、天然珪砂等の天然細骨材の他、人造珪砂、セラミック細骨材、原料造粒物を焼成してなる焼成細骨材、廃コンクリートからの再生細骨材等の人工細骨材といった従来からコンクリートやモルタルに使用されている無機質骨材の1種以上が挙げられる。
中でも、「きらきら感」の観点から、粒径が1〜3mmの砂を用いることが好ましい。ここで、砂の「粒径」とは、85%重量累積粒径を意味する。
多孔質モルタル硬化体に含まれる細骨材全体中のガラス片からなる細骨材2の割合は、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%である。該割合が10質量%未満では、「きらきら感」を十分に出すことが困難となる。該割合が40質量%を超えると、モルタル硬化体の機械的強度(例えば、曲げ強度)が低下する可能性がある。
細骨材全体の量は、セメント100質量部に対して、好ましくは350〜550質量部であり、より好ましくは400〜500質量部である。該量が350質量部未満では、「きらきら感」を十分に出すことが困難となる。該量が550質量部を超えると、多孔質モルタル硬化体の機械的強度(例えば、曲げ強度)が低下する。
【0015】
舗装用即脱ブロック1の材料としては、細骨材以外にセメント、減水剤、混練水等が用いられる。また、必要に応じて、セメント以外の混和材を用いてもよい。
セメントは、従来からインターロッキングブロックや舗装平板等の舗装ブロックに用いられているものであれば特に限定されない。普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントの他、高炉セメント等の混合セメント、白色セメント、エコセメント等が挙げられる。
セメント以外の混和材としては、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石粉末、珪石粉末等の1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。混和材は、セメントに対し、従来からの混和量(例えば、セメント100質量部に対して30質量部以内)で混和して用いることができる。また、舗装用即脱ブロック1の意匠性を高めるべく、インターロッキングブロックやカラー平板に使用されている各種顔料を、「きらきら感」を阻害しない範囲で添加することができる。
【0016】
減水剤は、必要に応じて、カルボン酸系高性能減水剤等の従来から用いられているものを必要な添加量(例えば、セメント100質量部に対して固形分換算で0.5〜2質量部)添加して用いればよい。
混練水としては、水道水、工業用水、回収水等が使用される。混練水の量は、透水性インターロッキングブロック等のセメント系透水性即脱ブロックやセメント系透水性即脱平板に使用される量と同じであり、セメント100質量部に対して、好ましくは25〜35質量部である。この範囲を外れると良好な透水性を有する即脱ブロックが得難くなる。
本発明の多孔質モルタル硬化体を得るための好ましいモルタル配合は、例えば、(a)セメント100質量部、(b)混和材0〜30質量部、(c)ガラス片からなる細骨材40〜200質量部、(d)砂250〜450質量部、(e)減水剤0.5〜2質量部(固形分換算)、(f)混練水20〜30質量部であって、前記(c)と(d)の合計量中の(c)の割合が10〜40質量%であるものである。
【0017】
次に、本発明の舗装用即脱ブロックの製造方法について説明する。
製造方法は、従来からのインターロッキングブロック、即脱ブロックの製造方法を準用できる。モルタルやコンクリートの混練に用いるミキサー等の従来からの製造装置を用いて、従来からの混練方法、成型方法で行えばよい。
多孔質モルタル組成物からなる舗装面形成層のみの単層の即脱ブロックを形成するには、例えば、本発明のモルタル硬化体を形成するためのモルタル組成物を型枠内に投入した後、外部振動を加えつつ上面を加圧し、その後、養生すればよい。ただし、実用上、単層の即脱ブロックは特殊な用途向けであり、汎用の即脱ブロックとしては、舗装面形成層と基層との二層の積層体である即脱ブロックが用いられる。
【0018】
二層の積層体である即脱ブロックを形成するには、例えば、基層用の多孔質コンクリート(ポーラスコンクリート)を型枠内に投入した後、前記の単層の場合と同じモルタル組成物を、舗装面形成層(表層)の材料として型枠内に投入し、その後、外部振動を加えつつ上面を加圧し、その後、養生すればよい。
なお、養生は、気中養生、蒸気養生、炭酸化養生等のいずれでもよい。
本発明では、上記即脱ブロックの製造技術を用いることは重要である。すなわち、本発明は、モルタルとして超硬練りの多孔質モルタルを用いることによって、セメントノロとガラス片との濡れ性能が悪くなり、そのため、加圧振動成型することによって、成形体の表面付近においてガラス片が略横に配向するとともに、ガラス片からなる細骨材2の平面部2aが容易に成形体の表面に表出(露出)することに着目して、完成されたものである。加圧力、加圧時間、振動機、振動数、振動手段、振動時間等は特に限定されず、従来の即脱ブロックの成型条件の範囲内で、ガラス片が成形体の表面に表出し易い条件を適宜選定すればよい。
【0019】
次に、舗装面形成層1を形成する多孔質モルタル硬化体の物性を示す。
該多孔質モルタル硬化体は、透水性を有するとともに、舗装用ブロックとしての実用上の機械的強度(例えば、曲げ強度)及び耐久性を有し、光照射により「きらきら感」を出すものであれば、特に限定されない。この「きらきら感」が持続するために、表面が耐摩耗性を有すること、すなわち、表面に表出しているガラス片からなる細骨材2が、モルタルマトリックス3から剥離し難いものであることが、好ましい。
また、舗装面形成層1は、JIS A 5371に規定する透水性インターロッキングブロックの品質規格を満たすことが好ましい。
すなわち、舗装面形成層1の透水係数は0.01cm/秒以上である。本発明では、このように高い透水係数を有するモルタル硬化体を多孔質モルタル硬化体という。該透水係数は、JIS A 5371に規定する測定方法によるものである。透水係数を高くすることによって「きらきら感」が得られ易くなる。また、路面の排水性も良くなる。
【0020】
透水係数の好ましい数値範囲は、0.01〜0.1cm/秒である。この範囲内であれば、透水性と機械的強度(例えば、曲げ強度)のバランスを特に良好にすることができる。また、加圧振動成型した際、ガラス片からなる細骨材2の略横への配向が容易となり、「きらきら感」が得易くなる。
該透水係数の制御は、多孔質モルタル硬化体のモルタルを構成する各材料の粒度、混練水量、成型時の振動数や加圧力等によって行えばよい。
例えば、細骨材として、ガラス片からなる細骨材2と共に粒径1〜3mmの砂を用い、かつ、水セメント比(質量比)を20〜30%とすれば、透水係数が0.01cm/秒以上の多孔質モルタル硬化体が得られ、透水係数が0.01cm/秒以上の舗装用即脱ブロックとなる。なお、二層の積層体では、排水性を考慮して、通常、路面形成層(表層)よりも基層のほうが透水係数が大きいので、路面形成層(表層)の透水係数が0.01cm/秒以上であれば、舗装用即脱ブロック全体の透水係数も0.01cm/秒以上となる。
【0021】
舗装用即脱ブロックの曲げ強度は、JIS A 5371に規定する測定方法で測定された値として、歩道に適用する場合は3.0MPa以上である。したがって、該曲げ強度は、少なくとも3.0MPa以上である必要がある。該曲げ強度が高ければ、舗装面からガラス片からなる細骨材が剥離し難くなるので、「きらきら感」を持続することができる。前記の好ましいモルタル配合によって舗装面形成層(表層)を形成し、かつ、従来から知られている舗装用即脱ブロック用のポーラスコンクリートを用いて基層を形成すれば、前記の曲げ強度の値を得ることができる。
【0022】
舗装用即脱ブロックは、図2の(a)に示すように、一層打ちの多孔質モルタル硬化体からなる単層ブロック10としてもよいが、通常、図2の(b)に示すように、二層打ちの積層ブロック20として作製される。後者の場合、ガラス片からなる細骨材を含む多孔質モルタル硬化体は、舗装面形成層(表層)21に適用される。基層22は、多孔質モルタル硬化体と多孔質コンクリート硬化体のいずれでもよいが、表層21に比べ透水係数が大きく、曲げ強度等の機械的強度も同等以上であることが好ましい。多孔質コンクリート硬化体における「多孔質」と多孔質モルタル硬化体における「多孔質」は同じであり、いずれも透水係数が0.01cm/秒以上の高い透水係数を有するものであることを示す。基層22の骨材は、天然骨材の他、砕石、砕砂、ガラスカレット等の廃材を再利用した骨材を使用することもできる。表層21と基層22の層厚の割合は特に限定されないが、従来のインターロッキングブロックに準ずることが好ましい。例えば、表層21の層厚が4〜10mm、基層22の層厚が50〜70mmである。単層ブロックと積層ブロックのいずれの場合も、舗装用即脱ブロックは、前記インターロッキングブロックの品質規格を満たしていることが好ましい。なお、図2中、符号11,23は地面を表す。
積層ブロックを製造する場合、製造方法は従来のインターロッキングブロックの製造方法に準ずる。
【実施例】
【0023】
[実施例及び比較例]
本発明の舗装用即脱ブロックの舗装面形成層に相当する多孔質モルタル試験体を作製し、その性能確認を行なった。
1.使用材料及び配合割合
(1)セメント;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(2)ガラス片からなる細骨材
A1 液晶ガラス片;粒径1.2〜2.5mm、板厚0.7mm
A2 液晶ガラス片;粒径1.2〜2.5mm、板厚1.0mm
B1 プラズマガラス片;粒径1.2〜2.5mm、板厚0.9mm
B2 プラズマガラス片;粒径1.2〜2.5mm、板厚1.2mm
C ビンガラス片;粒径1.2〜2.5mm(比較用;表裏に平面部を有しない)
D ガラス片;粒径5〜10mm、板厚3mm(比較用;表裏に平面部を有するが、板厚が大きい)
(3)無機質骨材;3号珪砂(平均粒径2mm;天然珪砂)
(4)水;水道水
(5)減水剤;高性能減水剤(配合量:セメント100質量部に対して1質量部)
【0024】
【表1】

【0025】
2.モルタル試験体の作製
表1に示す配合に基づき、インターロッキングブロックの製造方法に準じて、種々のモルタル試験体を作製した。
透水係数の制御は、成型時の振動数を3,500〜4,500vpm、加圧力を60〜80kgf/cm2の範囲で変えることにより行なった。
なお、モルタル試験体の寸法は、98mm(長さ)×198mm(幅)×60mm(厚さ)の直方体とした。
【0026】
3.モルタル試験体の性能試験
(1)試験項目及び試験方法
(a)透水試験
各モルタル試験体につき、JIS A 5371に定められる方法により測定した。
(b)曲げ強度試験
各モルタル試験体につき、JIS A 5371に定められる方法により測定した。
(c)「きらきら感」の評価試験
写真撮影用のライトを光源とし、薄暗くした室内において、モルタル試験体の表面から略3m離れた斜め30度の方向から光を照射し、種々の角度、方向からモルタル試験体の表面を眺めて、「きらきら感」が出ているか否かの官能試験を行なった。
非常に出ている場合は◎、出ている場合は○、視認性はあるものの「きらきら感」(意匠性)がない場合は△、視認性も「きらきら感」もない場合は×とした。評価者は3人とした。
(d)剥離抵抗性の評価試験
ワイヤーブラシにより各モルタル試験体の表面を強く擦り、表面に表出しているガラス片が容易に剥離するか否かの確認試験を行なった。剥離しなければ○、剥離し易ければ×とした。
(2)測定結果
上記(a)〜(d)の各試験結果を表2に示す。
【0027】
【表2】

【符号の説明】
【0028】
1 舗装面形成層
1a 舗装面
2 ガラス片からなる細骨材
2a 平面部
3 モルタルマトリックス
4 無機質骨材(砂)
5 連続空隙(透水孔、空隙、毛細管)
10 舗装用即脱ブロック
11 地面
20 舗装用即脱ブロック
21 舗装面形成層(表層)
22 基層
23 地面
A 入光
B 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性を有する多孔質モルタル硬化体からなる舗装面形成層を少なくとも含む舗装用即脱ブロックであって、前記多孔質モルタル硬化体が、表裏に平面部を有する厚さ1.2mm以下のガラス片からなる細骨材を含み、かつ、一部の前記ガラス片の平面部が、前記即脱ブロックの舗装面に表出しており、前記平面部で光を鏡面反射することによる「きらきら感」が出ることを特徴とする舗装用即脱ブロック。
【請求項2】
上記ガラス片は、情報機器の画面に用いられていたガラス薄板を破砕した廃ガラス片である請求項1に記載の舗装用即脱ブロック。
【請求項3】
上記廃ガラス片は、フラットパネルディスプレイの液晶ガラスもしくはプラズマガラスからなる請求項2に記載の舗装用即脱ブロック。
【請求項4】
上記ガラス片は、粒径1〜5mm、板厚0.3〜1.2mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の舗装用即脱ブロック。
【請求項5】
上記多孔質モルタル硬化体の透水係数が、0.01cm/秒以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の舗装用即脱ブロック。
【請求項6】
上記多孔質モルタル硬化体は、上記ガラス片からなる細骨材の他に無機質材からなる細骨材を含んでおり、これら細骨材全体中の前記ガラス片からなる細骨材の割合が10〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の舗装用即脱ブロック。
【請求項7】
上記舗装用即脱ブロックは、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多孔質モルタル硬化体からなる舗装面形成層と、前記舗装面形成層よりも大きな透水係数を有する多孔質モルタル硬化体もしくは多孔質コンクリート硬化体からなる基層とが積層されたものである舗装用即脱ブロック。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−236309(P2010−236309A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87005(P2009−87005)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(300082335)太平洋プレコン工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】