説明

芋類の植付機

【課題】従来の芋類の植付機は、ベルトコンベアが機体の左右中央で前後方向に配置されているために、全体の構成は左右幅が狭いものになっているが、ベルトコンベアの側部に設けた操縦ハンドルを操作しながら芋類の植付作業を行うために、作業時には機体と作業者が横に広がった状態になり、狭いハウス内での作業が困難な場合がある。
そこで、本発明では、芋類の植付作業時に作業者が機体上に搭乗することで、従来よりも狭い範囲を軽快に走行しながら植付作業が行える芋類の植付機を提供することを課題とする。
【解決手段】前輪7と後輪6で支持された機体2の後輪7上方に後方の植付体4へ向けて芋類を搬送するコンベアベルト17を配設すると共に、このコンベアベルト17の上側に芋類を供給する作業者が搭乗する座席16を配置した芋類の植付機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ジャガイモ(馬鈴薯)のような芋類を耕作地に植え付ける植付機に関する。
【背景技術】
【0002】
小型でコンパクトな芋類の植付機として、例えば、特開2001−8508号公報に記載の如く、走行装置を具備した機体の後部に機体の前方へ向けて種芋を搬送するベルトコンベアを設け、このベルトコンベアの側部に設ける操縦ハンドルを操作しながら機体の後側を作業者が歩きながら種芋をベルトコンベア上に供給しながら植付作業を行う芋類の植付機がある。
【特許文献1】特開2001−8508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の芋類の植付機は、ベルトコンベアが機体の左右中央で前後方向に配置されているために、全体の構成は左右幅が狭いものになっているが、ベルトコンベアの側部に設けた操縦ハンドルを操作しながら芋類の植付作業を行うために、作業時には機体と作業者が横に広がった状態になり、狭いハウス内での作業が困難な場合がある。
【0004】
そこで、本発明では、芋類の植付作業時に作業者が機体上に搭乗することで、従来よりも狭い範囲を軽快に走行しながら植付作業が行える芋類の植付機を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、前側から後側の植付体(4)へ向けて芋類を搬送するコンベアベルト(17)を配設すると共に、このコンベアベルト(17)の上方に芋類を供給する作業者が搭乗する座席(16)を機体(2)の左右中央に配置し、コンベアベルト(17)が座席(16)の前側に突出する構成とした芋類の植付機とする。
【0006】
この構成で、機体(2)の左右中央に設ける座席(16)に座った作業者が芋類をコンベアベルト(17)の座席(16)の前側に突出する部分に供給して芋類の植付作業を行う。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明では、芋類を搬送するコンベアベルト17を機体2の前後方向に配設し、このコンベアベルト17の上側に設ける座席16に作業者が座って芋類の植付作業を行うために、機体幅以上に作業スペースを必要とせず、狭いハウス内でも軽快に移動しながら芋類の植付作業を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例に説明する。尚、以下の説明で、機体の前又は後というときは、操縦ハンドル2aを配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン5を配置した側を前とする。そして、機体の右又は左というときは、機体後部において機体前部側に向って立つ作業者から見て右手側を右とし、左手側を左とする。
【実施例】
【0009】
本発明の実施例である苗植付機は、走行装置1と操縦ハンドル2aを備えた機体2に、昇降駆動する昇降リンク機構3により昇降動するとともに開閉動作する嘴状の苗植付け体4を備えた構成としている。
【0010】
走行装置1は、図示例では、エンジン5と、該エンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪6,6と、該後輪6,6の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪7,7とを備えたものとしている。左右の前後車輪6,6,7,7の間にエンジン5とミッションケース8を配置した機体2の前部側から、機体2の下部側を後方に向って延びて後部側を後上がり状態に形成した機体フレーム2bを設けて,該機体フレーム2bの後端部に操縦ハンドル2aを装着する。操縦ハンドル2aは、機体フレーム2bの後端部から左右に延びてその後端部を左右で後方へ延ばしてグリップ部2dとしている。この左右のグリップ部2dは、歩行する作業者が手で楽に握れる高さに設定している。操縦ハンドル2aの前側には、走行装置1の駆動断続を行う走行レバー33と苗植付体4の駆動断続を行う作業レバー34を設けている。
【0011】
機体フレーム2bの前端に搭載したエンジン5の後部には、ミッションケース8を配置し、このミッションケース8の左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分がエンジン5の左側部と連結している。このケース部分にエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構に動力を伝達する構成となっている。ミッションケース8の左右両側部に伝動ケース9,9を回動自在に取り付け、この伝動ケース9,9の回動中心にミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで、ミッションケース8内の走行部系変速伝動部を経た走行用の動力が伝動ケース9,9内の伝動機構に伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース9,9内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端側側方に突出する車軸10,10に伝動し、後輪6,6が駆動回転するようになっている。
【0012】
また、伝動ケース9,9はミッションケース8側を中心にして車軸10側を左右同時に及び左右単独に上下に回動して機体2全体を昇降させ左右水平を維持するがこの機構は公知であるので説明を省略する。
【0013】
ミッションケース8の後部から操縦ハンドル2aに至る機体フレーム2bの前半略水平部に前から前支持台11と中間支持台12と後支持台13を立設している。前支持台11には上部にベルトコンベア17を巻き掛ける駆動ローラ19を設ける前伝動筒14を接続し、ミッションケース8からの動力を前支持台11と伝動筒14を通して駆動ローラ19に伝動している。中間支持台12には座席16の支柱15を上下高さ調整可能に取り付けている。後支持台13には植付け伝動ケース18を取り付け、この植付け伝動ケース18に上方へ向けて後伝動筒21を取り付け、さらに、後伝動筒21に従動ローラ20を装着して、前記駆動ローラ19との間にベルトコンベア17を巻き掛けている。
【0014】
ベルトコンベア17を通じて回転する従動ローラ20の回転が後伝動筒21を介して植付け伝動ケース18に伝えられる。この植付け伝動ケース18に設ける横軸から後上方へ伸ばした上下のリンク27,28に苗植付体4を装着している。
【0015】
苗植付け体4は、上下のリンク27,28による開閉機構によって開閉動する嘴状の苗植付け体4であり、機体を前進走行させながら苗植付け体4を昇降動させて、苗植付け体4の昇降軌跡kの上位側で閉じ状態の苗植付け体4の内側に上方のベルトコンベア17の終端から落下する芋類を受入れ、苗植付け体4の昇降軌跡kの下位側で苗植付け体4を下方に開放するように開いて内側に受入れた芋類を外側に放出して芋類を畝に植付ける構成としたものである。
【0016】
具体的には、左右に二分割した嘴部4a,4bを支持枠35で開閉可能に支持し、苗植付体4を側面視で略楕円形状の昇降軌跡kを描いて動かし、左右に二分割した嘴部4a,4bが軌跡の下端部で前後に開口動作する。支持枠35の上側にはベルトコンベア17の終端を覆うようにカバー22を設けてベルトコンベア17から落下する芋類がこぼれないようにしている。なお、ベルトコンベア17には所定間隔で仕切り板23を立設している。仕切り板23の先端は送り方向に対して後傾部を形成して搬送終端で芋類が飛び出さないようにしている。
【0017】
座席16の前側には機体から立設した支台26にばね29と支軸30で前上がり状態に種芋置き台24を設けている。この種芋置き台24は、載せた種芋が少なくなると傾きを大きくして種芋を座席16側へ滑らせて座席16に座った作業者が取出しやすくなる。なお、この種芋置き台24にはリンク機構25を繋ぎ、機体2を上昇させたり旋回させたりする場合に水平にして種芋が落下しないようにしている。
【0018】
座席16の後側には、ベルトコンベア17の駆動に伴って供給口を開閉して種芋に石灰を降りかける石灰タンク31を設けている。座席16の右側部には走行装置1の駆動断続を行うクラッチレバー36とエンジン5の回転制御を行うアクセルレバー40を設けている。座席16の後側で左右に幅広く補助種芋置台38を設けている。この補助種芋置台38は左後隅部を凹まして、作業者が補助種芋置台38に接近して歩きながら補助種芋置台38上の種芋をベルトコンベア17上に供給できるようにいる。さらに、左側の伝動ケース9から内側に階段状のステップ板37を取り付け、作業者が座席16に搭乗する際に使用するようにしている。座席16の背凭れ後部の上方にヘッドレスト39を設けているが、このヘッドレスト39をもって座席16への乗り降りが楽に行える。
【0019】
前記左右前輪7,7は、エンジン5下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム42の左右両側部の下方に延びるアーム部分の下端部側方に固定した車軸43,43に回転自在に取り付けている。従って、左右前輪7,7は、機体の左右中央の前後方向の軸心周りにローリング動自在となっている。そして、前輪支持フレーム42上にはコンテナ置台41を取り付けている。
【0020】
野菜苗の植付作業は、走行レバー33を走行位置にして走行装置1を駆動し、作業レバー34を作業位置にして苗植付体4を駆動する。そして、種芋の植付作業は歩きながらでも座席16に座ってもできるが、作業者が座席16に座ると、前側の種芋置き台24から種芋を取出してベルトコンベア17上に供給する。その後、ベルトコンベア17の進行に伴って、その終端から苗植付体4に種芋が落下し、苗植付体4が降下して畝の土中へ嘴部4a,4bを差し込み、嘴部4a,4bを前後に開き種芋と石灰を土中へ残して苗植付体4が上昇する。このようなサイクルを繰り返して種芋の植付を進行する。
【0021】
図3は、機体2に搭載したエンジン5の上方に左右一対の座席44,44を設けた実施例で、両座席44,44の後側で後方に向かって、それぞれ二つのベルトコンベア45,46,49,50を後方が横に開いた状態に配置している。各ベルトコンベア45,46,49,50の終端下部には、下端に作溝板53,54,55,56を設けたシュータ47,48,51,52を配置する。
【0022】
座席44,44に座った二人の作業者が各自ベルトコンベア45,46及びベルトコンベア49,50に種ラッキョを供給して、二条分の植付を行うのであるが、ベルトコンベア45,46及びベルトコンベア49,50の後方開き角度を変更したり、左右両側のシュータ47,52の左右傾き角度を変更して条間隔の変更が行えるようにしている。
【0023】
図4は、前輪7の駆動とブレーキを行えるようにした実施例で、前輪7の車軸43に固着のプーリ57とミッションケース8の出力軸に固着のプーリ58にベルト59を巻き掛け、クラッチローラ60の入切動作で動力の断続を行い、前輪7の外周に接離するブレーキローラ61の入切でブレーキを作用させる。クラッチローラ60とブレーキローラ61は、操縦ハンドル2aに設ける操作レバー62にワイヤ63,64で連結し、どちらかを作用させるか両方作用させないか切換できるようにしている。なお、この前輪駆動とブレーキの切り換えは、機体の前後傾きを検出するセンサで油圧シリンダを作動させて自動的に行われるようにしても良い。このような構成は、前輪7の駆動は、登り傾斜の畑で使用し、前輪7のブレーキは下り傾斜の畑で使用することで、植付ピッチを一定にすることが出来る。
【0024】
図5と図6は、植付機を後方へ向けて走行させながら後輪6を操向する構造を示している。
ミッションケース8からの動力を伝動する伝動ケース9の取付筒68,68は、ミッションケース8に取り付けた昇降用油圧シリンダ82のピストンロッド先端側に取り付けた天秤杆72の左右両側部と連結している。天秤杆72は左右中央の上下軸心周りに回動自在にされ、その右側連結部はロッド69で右側の取付筒68のアーム71と連結し、左側連結部は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ70で左側の取付筒68のアーム71と連結している。
【0025】
昇降用油圧シリンダ82が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の伝動ケース9,9が下方に回動して、機体フレーム2bが上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ82のピストンロッドが機体前方に引っ込むと、左右の伝動ケース9,9が上方に回動して、機体フレーム2bが下降するのである。また、前記左右水平制御用油圧シリンダ70が伸縮作動すると、前記天秤杆72が、その左右中央部の昇降用油圧シリンダ82のピストンロッド先端と連結する上下軸心周りに回動して左右の伝動ケース9,9を互い違いに上下動させ機体を左右に傾斜させる。
【0026】
ミッションケース8の出力軸から駆動力を伝動する伝動ケース9,9の先端に突出する車軸10は操向アーム65と水平維持アーム66で向きを制御される。操向アーム65の先端には畦の側面に沿って転がるガイドローラ67が設けられ、後輪6を畦の方向へ向かわせ、水平維持アーム66は前記天秤杆72にワイヤ73,74で連結されて、伝動ケース9の上下回動に同期して後輪6を昇降させて地面に対する角度を維持する。
【0027】
左右の操向アーム65,65は、機体フレーム2bに設ける中立マーカ75にワイヤ78,79で連結されている。ワイヤ78,79のアウタワイヤ取付部と操向アーム65との間には後輪6を後方へ向かわせるよう付勢するばね80,81を介在させている。
【0028】
中立マーカ75にはピン76が設けられ、昇降用油圧シリンダ82を伸長させて機体2を上昇させると、天秤杆72に形成したV溝77がピン76に当たって後輪6を強制的に後方へ向かわせる。なお、V溝77にはワイヤ78,79を逃す溝が形成されている。
【0029】
図6の実施例は、図5の実施例に中立マーカ75を操作する方向制御レバー83を追加している。この方向制御レバー83は、機体2上の座席に座った作業者が手で操作可能な位置まで伸ばしている。また、水平維持アーム66に連結するワイヤ73,74は長孔で遊びを持たせて天秤杆72に連結しているが、この実施例では、さらにワイヤ73,74と水平維持アーム66の連結にばね84を介在させている。
【0030】
なお、前輪7,7はキャスター角を持たせて支持して追従性を良くしている。
図7は、前輪7を操向可能にする構造を示している。
前輪7は前輪支持フレーム42の左右端部で支持軸85の下端にその車軸43を回動可能に取付けている。支持軸85は前輪支持フレーム42に例えば60°程度回動可能にししされている。車軸43には支持軸85に設けるベベルギア91と噛み合うベベルギア90を固着している。支持軸85に設けるベベルギア91は軸に対して回動可能で、ピン92をベベルギア91に係合するとベベルギア91の回転が支持軸85に伝わって回動するようにしている。ピン92がベベルギア91に係合すると前輪7の回転による車軸43の回転がベベルギア90からベベルギア91に伝わって支持軸85を回動し、前輪7の向きを変えることになる。左右支持軸85,85の上端に設けるアーム86,86をロッド87で連結し、左右の支持軸85を同じ方向へ回転して左右の前輪7の向けを変える。
【0031】
前記ピン92は、ワイヤ94とばね93でガイドローラ67の支軸88に連結され、ガイドローラ67の動きでベベルギア91に対して係脱する。ガイドローラ67の支軸88は支持部89で左右回動するように取付けられ、ガイドローラ67が畦の側面に当たって外側に逃げるとその支軸88の動きがワイヤ94とばね93でピン92をベベルギア91に係合させて前輪7の向きを内側に向かわせ走行方向を畝の方向へ修正するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明実施例を示す芋類植付機の側面図。
【図2】本発明実施例を示す芋類植付機の平面図。
【図3】別実施例を示す芋類植付機の側面図。
【図4】別実施例を示す芋類植付機の側面図。
【図5】後輪の操向構成を示す一部の斜視図。
【図6】別実施例の後輪操向構成を示す一部の斜視図。
【図7】前輪の操向構成を示す一部の拡大正面図。
【符号の説明】
【0033】
2 機体
4 後輪
7 前輪
16 座席
17 コンベアベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側から後側の植付体(4)へ向けて芋類を搬送するコンベアベルト(17)を配設すると共に、このコンベアベルト(17)の上方に芋類を供給する作業者が搭乗する座席(16)を機体(2)の左右中央に配置し、コンベアベルト(17)が座席(16)の前側に突出する構成とした芋類の植付機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−131153(P2009−131153A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307560(P2007−307560)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】