説明

芝刈機

【課題】芝刈時に石等を巻き込んだときに回転刃が破損するのを抑制する。
【解決手段】駆動源からの動力を回転刃に伝達する動力伝達機構は、回転刃の回転軸と一体に回転する伝達歯車と、この伝達歯車と係合する出力歯車54とを有する。出力歯車54は、駆動源の出力軸39が挿入されて出力軸39の軸方向に沿って移動可能であり、出力歯車54の係合部56と、出力軸39の凸部39aとが係合する。回転刃と駆動源とに大きな負荷が作用したときには、出力軸39の凸部39aと出力歯車54の係合部56との係合が解除され、駆動源から回転刃への動力の伝達が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転刃を回転させて芝や草を刈り取る芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、本体に駆動源を搭載し、駆動源からの動力によって回転刃を回転させて芝や草を切断する芝刈機が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された芝刈機では、駆動源としてモータを備え、モータからの動力によって本体の下部に設けられた回転刃を回転駆動し、回転する回転刃と本体に設けられた固定刃とによって芝草を挟んで切断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−59113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の芝刈機では、回転刃と固定刃とによって芝草を挟んで切断する際に、芝草と共に固い異物(例えば小石や木枝など)を巻き込むと、回転刃と固定刃とで固い異物が挟まれてモータに過負荷が作用したり回転刃や固定刃が損傷するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、芝刈時に石などを巻き込んだときに回転刃が破損するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る芝刈機は、
動力を出力する駆動源と、
前記駆動源からの動力により回転駆動される回転刃と、
前記駆動源から前記回転刃に動力を伝達する第1の軸と、軸係合部が設けられ、前記駆動源から前記回転刃に動力を伝達する第2の軸と、前記第1の軸に取付けられた第1の歯車と、前記第1の歯車と係合し、前記軸係合部と係合する歯車係合部が設けられた第2の歯車と、を有し、前記第1の歯車と前記第2の歯車とに所定の負荷より大きい負荷が作用したときには、前記軸係合部と前記歯車係合部との係合が解除される動力伝達機構と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記動力伝達機構は、前記第1の歯車と前記第2の歯車とに所定の負荷より大きい負荷が作用したときには、前記第2の歯車が前記第2の軸の軸方向に移動して、前記軸係合部と前記歯車係合部との係合が解除されてもよい。
【0008】
さらに、前記第2の歯車は、中空に形成されて前記第2の軸が挿入されてもよい。
【0009】
また、前記第1の軸は、前記駆動源の出力軸と前記回転刃の回転軸との一方の軸であり、
前記第2の軸は、前記出力軸と前記回転軸との他方の軸であってもよい。
【0010】
さらに、前記軸係合部と前記歯車係合部との少なくとも一方は、前記第2の軸の回転方向に対して傾いた斜面を有し、前記斜面において前記軸係合部と前記歯車係合部との他方と係合してもよい。
【0011】
また、前記第2の歯車は、前記第2の軸の軸方向に付勢されてもよい。
【0012】
前記軸係合部は、前記第2の軸から略垂直に凸となる凸状に形成され、
前記歯車係合部は、前記第2の歯車における側面が凹凸状に形成された歯車部から前記第2の軸の軸方向に延出し、上面の少なくとも一部が前記第2の軸の回転方向に向かうほど高くなる螺旋状に形成され、前記回転方向の端部に上面が上に凸となる刳り抜きが形成され、前記刳り抜きの上面において前記軸係合部と係合してもよい。
【0013】
前記動力伝達機構は、操作者の操作に伴って、前記第2の歯車が付勢される方向と反対の方向に前記第2の歯車を移動させる移動機構を更に備えてもよい。
【0014】
前記第2の歯車の位置を検出する位置検出手段と、
前記検出された前記第2の歯車の位置に基づいて前記軸係合部と前記歯車係合部との係合の解除を操作者に報知する報知手段と、
を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、芝刈時に石などを巻き込んだときに回転刃が破損するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る芝刈機を横から見た様子を示す図である。
【図2】芝刈機を下から見た様子を示す図である。
【図3】本体のケースカバーを外して芝刈機を上から見た様子を示す図である。
【図4】本体を図3中IV−IV方向から見た図である。
【図5】駆動源と回転刃とで動力が伝達される際の図3中V−V方向から見た図である。
【図6】駆動源と回転刃との動力の伝達が解除された際の図3中V−V方向から見た図である。
【図7】出力歯車と出力軸とが係合しているときの出力軸周辺の様子を示す図である。
【図8】出力歯車と出力軸との係合が解除されているときの出力軸周辺の様子を示す図である。
【図9】リセットスイッチが押されているときの出力軸周辺の様子を示す図である。
【図10】リセットスイッチが押し込まれたときの出力軸周辺の様子を示す図である。
【図11】報知パネルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る芝刈機20を横から見た様子を模式的に示す図であり、図2は、芝刈機20を下から見た様子を示す図である。実施形態に係る芝刈機20は、芝草を刈り取る作業機として構成され、図示するように、操作者が把持するハンドル22と、複数の車輪が取付けられた本体30と、本体30の後方に取付けられた集草バック26と、を備える。
【0018】
ハンドル22は、本体30の後方上面に所定の範囲内で回動可能に取り付けられている。ハンドル22には、操作者が把持する把持部23の近傍に、操作者が芝刈機20を操作するための操作スイッチ24が設けられている。
【0019】
図3に、本体30のケースカバー32bを外して上から見た様子を模式的に示し、図4に、本体30を図3中IV−IV方向から見た様子を示す。本体30は、本体30の外縁をなすケーシング32と、空気の流れを生成して芝草を案内するファン34と、芝草を刈り取る刈取部40と、芝草の刈り取る高さを調整する高さ調整機構36と、動力を出力する駆動源38と、駆動源38からの動力をファン34や刈取部40に伝達する動力伝達機構50と、動力伝達機構50の状態を操作者に報知する報知機構(図示せず)と、を備える。
【0020】
ケーシング32は、図4に示すように、底が開口となる筺状に形成された下方ケーシング32aと、下方ケーシング32aを上から覆うケースカバー32bとからなり、ファン34や刈取部40,駆動源38,動力伝達機構50を収納する。ケーシング32の上方後側には、ハンドル22が取付けられ、ケーシング32の後側には、刈り取った芝を補集する集草バック26が着脱自在に取付けられている。
【0021】
ファン34は、ケーシング32の前側に設けられ、ケーシング32の底部に設けられた送風口33aから後方に空気の流れを発生させる。ファン34は、その回転軸34aが略鉛直となるようにケーシング32に配置され、駆動源38からの動力により回転する。ファン34が回転すると、ケーシング32の側面に設けられた隙間やケーシング32上方の図示しない空気取込口から外気が取り込まれ、取り込まれた外気がファン34の回転に伴ってケーシング32のボリュート部33b壁面に沿って回転し(図3では、反時計回りに回転する)、下方ケーシング32aの開口及びファンガイド33cを介してケーシング32底部中央の送風口33aから放出され、進行方向後方に向けて流れる。
【0022】
刈取部40は、ケーシング32に固定された2つの固定刃41,42と、駆動源38からの動力によって回転する2つの回転刃43,44とからなり、第1の切断部を構成する第1の回転刃43および第1の固定刃41と、第2の切断部を構成する第2の回転刃44および第2の固定刃42とが、横に並ぶよう配置されている。2つの固定刃41,42は、ケーシング32から鉛直下方に伸びる固定軸41a,42aにそれぞれ固定され、この固定刃41,42の上面に接するように2つの回転刃43,44が設けられている。2つの固定刃41,42は、外周に複数の刃部41b,42bが形成されている。2つの回転刃43,44は、複数の刃部43b,44bを有し、筒状に構成され、固定軸41a、42aが内部に挿通すると共に固定軸41a、42aに対して回転可能に支持されている回転軸43a,44aと一体に回転する。2つの回転刃43,44は、駆動源38からの動力によって互いに逆方向に回転し、芝刈機20の中央に刈り残しが生じないようその外周端(刃部43b,44b)が中央でオーバーラップするように形成されている。また、2つの回転刃43,44は、バネなどの付勢機構46によって固定刃41,42側にそれぞれ付勢されている。
【0023】
高さ調整機構36は、操作者がケーシング32上面に設けられた高さ調整レバー36aを操作することで、高さ調整レバー36aに連動するリンク機構36bによって車輪31a、31bの高さ(車輪31a、31bとケーシング32との距離)が変更され、芝草を刈る高さを任意に調整することができるように構成されている。尚、前側の車輪31aと後側の車輪31bは、それぞれリンク機構36bに接続されて同様に作動することで、回転刃43、44が地面に対して平行を維持したまま刈り取り高さを調整することが可能となっている。
【0024】
駆動源38は、実施形態では誘導電動機や同期電動機などの周期のモータを用いている。駆動源38は、ケーシング32の略中央後方に、その出力軸39が鉛直方向となるように配置され、操作者の操作スイッチ24の操作に応じて動力を出力する。
【0025】
動力伝達機構50は、駆動源38から出力される動力をファン34や回転刃43,44に伝達する。図5及び図6に、本体30内部を図3中V−V方向から見た様子を示す。なお、図5では、動力伝達機構50によって駆動源38からの動力が回転刃43,44に伝達されるときの様子を示しており、図6では、動力伝達機構50による駆動源38からの動力の伝達が解除されたときの様子を示している。動力伝達機構50は、図3から図6に示すように、第1の回転刃43の回転軸43aに取付けられた第1の伝達歯車51と、第2の回転刃の回転刃44の回転軸44aに取付けられた第2の伝達歯車52と、ファン34の回転軸34aに取付けられたファン歯車53と、駆動源38の出力軸39と係合する出力歯車54と、出力歯車54を鉛直下方に付勢する付勢機構58と、出力歯車54の位置をリセットするリセットスイッチ59とを備える。
【0026】
第1の伝達歯車51や第2の伝達歯車52,ファン歯車53は、第1の回転刃43や第2の回転刃44,ファン34の回転軸43a,44a,34aにそれぞれ直接に固定されている。図3に示すように、第1の伝達歯車51は、出力歯車54と係合すると共に第2の伝達歯車52と係合し、第2の伝達歯車52は、第1の伝達歯車51と係合すると共にファン歯車53と係合する。こうした構成により、第1の伝達歯車51,第2の伝達歯車52,ファン歯車53,出力歯車54は、何れかが回転することによってそれぞれが連動して回転する。実施形態では、第1の伝達歯車51や第2の伝達歯車52は、その歯数がファン歯車53や出力歯車54より多く設計されており、駆動源38からの動力が伝達されるときには、第1の回転刃43や第2の回転刃44には、その動力が減速して伝達され、第1の回転刃43や第2の回転刃44からファン34には、動力が増速されて伝達される。
【0027】
出力歯車54は、中心に挿入孔が形成されており、この挿入孔に駆動源38の出力軸39が挿入されている。出力歯車54は、駆動源38の出力軸39の軸方向に移動可能であり、出力歯車54の出力軸39に対する位置に拘わらず、出力歯車54は第1の伝達歯車51と係合される。出力歯車54は、駆動源38の出力軸39に設けられた2つの凸部(軸係合部)39aと係合する。尚、2つの凸部39aは、出力軸39に圧入されたピンによって構成されている。図7に、出力歯車54周辺を拡大した様子を示す。なお、図7では、出力軸39と出力歯車54とが係合しているときの様子を示している。また、実施形態では、駆動源38から動力が出力されると、出力軸39は、上から見て時計回りに回転する(図7の矢印方向)。出力歯車54は、図示するように、外周面に歯車が形成された歯車部55と、歯車部55から出力軸39の軸方向(出力軸39の凸部39a側)に延出する係合部(歯車係合部)56を有し、係合部56が、出力軸39の側面に凸となる円柱状の凸部39aと係合する。
【0028】
係合部56は、実施形態では、出力歯車54の回転中心に点対称な2つの部分からなり、係合部56の上面(以下、上方斜面部という)56bは、出力歯車54の歯車部55から最も離れた頭頂部56aまで、上から見て時計回りに徐々に高くなる螺旋状の斜面に形成され、頭頂部56aを超えると、上から見て時計回りに徐々に低くなるように形成される。係合部56は、上から見て時計回りの端(駆動源38の出力軸39の回転方向の端)に横から見てその上面(以下、下方斜面部という)56cが上に凸となる刳り抜きがなされ、この刳り抜きの下方斜面部56cに出力軸39の凸部39aが位置して係合部56と出力軸39の凸部39aとが係合する。出力歯車54は、付勢機構58によって鉛直下方に付勢されているから、出力軸39の凸部39aと出力歯車54の係合部56の下方斜面部56cとは、所定の負荷以下の負荷が作用するときには、その係合が維持されて出力軸39と出力歯車54とは一体に回転し、所定の負荷より大きい負荷が作用したときには、出力軸39の凸部39aが下方斜面部56cを超えて時計回り(回転方向)に移動して出力軸39と出力歯車54との係合が解除される。出力軸39の凸部39aが下方斜面部56cを超えて時計回りに移動すると、出力歯車54は付勢機構58によって鉛直下方に付勢されているから、図8に示すように、出力歯車54は鉛直下方に移動して、その後、出力軸39が回転しても、出力軸39と出力歯車54とは係合せず、駆動源38から2つの回転刃43,44やファン34に動力が伝達されない。なお、ここで、出力歯車54の係合部56は、例えば実験などにより、通常の芝刈作業が行われているとき(異物が回転刃と固定刃とに噛み混まれないとき)に想定される負荷より若干大きい負荷が作用したときに、出力軸39の凸部39aとの係合が解除されるように設計すればよい。
【0029】
リセットスイッチ59は、ケーシング32の駆動源38の出力軸39の先端に当たる位置に設けられている。リセットスイッチ59は、出力軸39の軸方向(鉛直方向上向き)に押すことができるよう設計されており、出力軸39と出力歯車54との係合が解除されているとき、つまり、出力歯車54が出力軸39の先端方向に移動しているときに、リセットスイッチ59を押すことで、出力歯車54が鉛直方向上向きに移動する。図9および図10に、リセットスイッチ59が押されるときの出力歯車54周辺を拡大した様子を示す。出力軸39と出力歯車54との係合が解除されているときに(図8参照)、操作者がリセットスイッチ54を押すと、出力歯車54が鉛直方向上向きに移動して、出力軸39の凸部39aが出力歯車54の係合部56の上方斜面部56bに当接し、出力軸39の凸部39aが上方斜面部56bに沿って移動する(図9参照)。そして、出力軸39の凸部39aは、出力歯車54の係合部56の下方斜面部56cの下まで移動し(図10参照)、この状態で、操作者がリセットスイッチ59を離すことで、付勢機構58によって出力歯車54が鉛直下向きに移動して出力歯車54の係合部56と出力軸39の凸部39aとが係合する(図7参照)。このように、出力軸39と出力歯車54との係合が解除されているときに、操作者がリセットスイッチ59を操作することで、出力歯車54の位置がリセットされて出力軸39と出力歯車54とが再び係合する。
【0030】
報知機構は、出力歯車54の位置を検出する位置検出センサ62と、操作者に動力伝達機構50による動力の伝達がなされているか否かを示す報知パネル64とを有する。位置検出センサ62は、図5や図6に示すように、出力軸39の側面でケーシング32に固定されており、出力歯車54が出力軸39と係合する位置にあるか否かに関する信号を報知パネル64に出力する。報知パネル64は、動力伝達機構50による動力の伝達がなされているか否か、つまり、出力軸39と出力歯車54とが係合しているか否かに応じた情報を操作者に報知する。報知パネル64は、例えば、図11に示すようなパネルが、操作者が芝刈作業中に目視できるようケーシング32の上面に設けられ、位置検出センサ62からの情報に基づいて、出力軸39と出力歯車54とが係合しているときには点灯し、出力軸39と出力歯車54との係合が解除されているときには消灯するものなどとすることができる。
【0031】
次に、こうして構成された実施形態の芝刈機20の動作について説明する。作業者が図示しない電源ケーブルを外部電源に接続し、操作スイッチ24を操作することで駆動源38から動力が出力され、出力された動力が動力伝達機構50を介して伝達されて2つの回転刃43,44やファン34が回転する。これにより、芝や草が2つの回転刃43,44と固定刃41,42とで挟み込まれて刈り取られると共に、ケーシング32前方底部の送風口33aから後方に空気が流れ、刈り取られた芝草が集草バック28に回収される。そして、作業者がハンドル22を押して芝刈機20を移動させることで、芝刈機20が移動した部位の芝草が刈り取られる。実施形態の芝刈機20では、刈取部40として回転刃43,44と固定刃41,42を設けているため、回転刃43,44が低い回転数であっても芝生の切断を行うことができ、歩行の速度に合わせて芝刈機20を押すだけで芝生の刈込みを効率よく行うことができる。また、芝刈機20は2つの回転刃43,44が横に並べられているから、一つの回転刃を大きくすることなく広い刈込み面積を得ることができる。さらに、2つの回転刃43,44は中央で刃部43b,44bがオーバーラップするように設けられているため、刈残しのない綺麗な仕上がり面を得ることができる。
【0032】
そして、芝刈機20による刈り取り作業を行っている際に、固定刃41,42と回転刃43,44との間に小石や枝などの固い異物が噛み込まれ、駆動源38と回転刃43,44との間に大きな負荷が作用したときには、駆動源38の出力軸39出力歯車54ととの係合が解除され、出力歯車54は、付勢機構58からの付勢力によって鉛直方向下側に移動し、駆動源38から回転刃43,44やファン34への動力の伝達が停止される。これにより、回転刃43,44や固定刃41,42が損傷してしまうのを抑制することができると共に、駆動源38に過大な負荷が作用してしまうのを防止することができる。また、このように動力伝達機構50による動力の伝達が解除されたときには、報知パネル64によって操作者にその旨が報知される。これにより、操作者は、動力伝達機構50による動力の伝達が解除されたことを、容易に且つ即座に認知することができ、例えば電源ケーブルを外部電源から外して固定刃41,42と回転刃43,44とに噛み込まれた異物を除去するなどの対応を取ることができる。
【0033】
さらに、再び芝刈作業をする場合には、操作者がリセットスイッチ59押すことで、付勢機構58の付勢力に抗して出力歯車54が駆動源38側(鉛直上側)に移動し、上述した図8から図10と図7に示すように、駆動源38の出力軸39と出力歯車54とが再び係合するから、操作者は、容易に動力伝達機構50の状態をリセットさせ、つまり、駆動源38からの動力が2つの回転刃43,44やファン34に伝達される状態にして、芝刈作業を行うことができる。
【0034】
以上説明した実施形態の芝刈機20は、2つの回転刃43,44に接続された伝達歯車51,52に係合する出力歯車54が、駆動源38の出力軸39に設けられた凸部39aと係合し、回転刃43,44の伝達歯車51,52と出力軸39の出力歯車54とに大きな負荷が作用したときには、出力軸39の凸部39aと出力歯車54の係合が解除されるから、芝刈機20に異物が巻き込まれたときに、回転刃43,44が損傷してしまうのを抑制することができると共に駆動源38に過大な負荷が作用するのを防止することができる。
【0035】
上述した芝刈機20では、出力軸39に凸部39aが形成され、出力軸39が挿入されて凸部39aと係合する係合部56を有する出力歯車54が設けられるものとしたが、出力歯車54は出力軸39に一体に形成され、第1の回転刃43の回転軸43aに凸部が形成されると共に回転軸43aの凸部と係合する係合部を有するように伝達歯車51が形成されてもよい。この場合、第1の回転刃43と駆動源38とに大きな負荷が作用したときには、伝達歯車51と回転刃43の回転軸43aとの係合が解除されて駆動源38と2つの回転刃43,44やファン38との動力の伝達が解除され、実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0036】
上述した芝刈機20では、駆動源38の出力軸39に出力歯車54が取付けられて回転刃43の回転軸43aに伝達歯車51が取付けられるものとしたが、駆動源38から回転刃43に動力を伝達する第1の軸や第2の軸に、伝達歯車51や出力歯車54に相当する歯車が取付けられればよく、駆動源38の出力軸39と回転刃43の回転軸43aとの動力の伝達に他の軸が介在する場合には、当該他の軸に伝達歯車51や出力歯車54に相当する歯車が取付けられてもよい。
【0037】
上述した芝刈機20では、出力軸39の側面に円柱状に凸となる凸部39aが形成され、この凸部39aと出力歯車54の係合部56の下方斜面部56bとが係合するものとしたが、出力軸39の凸部39aと係合部56とはいずれか一方だけが他方に対して斜面で当接して係合すればよく、例えば、出力軸39の凸部39aが四角柱状に形成されてもよい。
【0038】
上述した芝刈機20では、出力歯車54の係合部56は、上方斜面部56bが、頭頂部56aまで駆動源38の出力軸39の回転方向に向かうほど高くなる螺旋状に形成されると共に頭頂部56aを超えると出力軸39の回転方向に向かうほど低くなるよう形成されるものとしたが、上方斜面部56bの全てが出力軸39の回転方向に向かうほど高くなるように形成されてもよい。
【0039】
上述した芝刈機20では、出力歯車54の係合部56は、回転中心に点対称な2つの部部分からなるものとしたが、1つの部分からなるものでもよいし、回転中心に点対称な3つ以上の部分からなるものでもよい。なお、出力軸39の凸部39aは、出力歯車54の係合部56を構成する部分の数だけ形成されればよい。
【0040】
上述した芝刈機20では、出力歯車54を鉛直下方に付勢する付勢機構58を備えると共に動力伝達機構50の状態をリセットするリセットスイッチ59を設けるものとしたが、こうした付勢機構58やリセットスイッチ59を設けなくてもよい。
【0041】
上述した芝刈機20では、位置検出センサ62で検出された出力歯車54の位置に基づいて操作者に動力伝達機構50の状態を報知する報知機構を備えるものとしたが、報知機構は動力伝達機構50の状態を報知するものであればよく、出力歯車54の位置以外の情報に基づいて報知をするものでもよい。例えば、出力歯車54が出力軸39と係合する位置にあるときには、機械的に報知パネル64に電力を供給する電力ラインが接続され、出力歯車54が出力軸39と係合しない位置にあるときには、機械的に報知パネル64に電力を供給する電力ラインの接続が解除されてもよい。また、報知機構は例えば駆動源38の負荷状況に関連した情報から動力伝達機構50の状態を間接的に検知するものであってもよく、例えば駆動源38を駆動させた際に所定より小さい負荷が出力された場合、出力歯車54と出力軸39の係合が外れていると判断することが可能である。また、こうした報知機構を備えなくてもよい。
【0042】
上述した芝刈機20では、駆動源38としてモータを用いたが、これに代えてまたは加えて、ガソリンなどの炭化水素を燃料として動力を出力するエンジンなどの内燃機関を用いてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、2つの回転刃や2つの固定刃を備え、ケーシング前方底部から後方に向けてファンによる送風がなされる芝刈機20に適用して本発明を説明したが、本発明は、如何なるタイプの芝刈機にも適用することができ、実施形態で説明したタイプの芝刈機に限定されるものではない。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0045】
20 芝刈機
22 ハンドル
23 把持部
24 操作スイッチ
26 集草バック
30 本体
31a,31b 車輪
32 ケーシング
32a 下方ケーシング
32b ケースカバー
33 送風口
34 ファン
36 高さ調整機構
38 駆動源
40 刈取部
41,42 固定刃
43,44 回転刃
43a,44a 回転軸
50 動力伝達機構
51,52 伝達歯車
53 ファン歯車
54 出力歯車
55 歯車部
56 係合部
56a 頭頂部
56b 上方斜面部
56c 下方斜面部
62 位置検出センサ
64 報知パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を出力する駆動源と、
前記駆動源からの動力により回転駆動される回転刃と、
前記駆動源から前記回転刃に動力を伝達する第1の軸と、軸係合部が設けられ、前記駆動源から前記回転刃に動力を伝達する第2の軸と、前記第1の軸に取付けられた第1の歯車と、前記第1の歯車と係合し、前記軸係合部と係合する歯車係合部が設けられた第2の歯車と、を有し、前記第1の歯車と前記第2の歯車とに所定の負荷より大きい負荷が作用したときには、前記軸係合部と前記歯車係合部との係合が解除される動力伝達機構と、
を備えることを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
前記動力伝達機構は、前記第1の歯車と前記第2の歯車とに所定の負荷より大きい負荷が作用したときには、前記第2の歯車が前記第2の軸の軸方向に移動して、前記軸係合部と前記歯車係合部との係合が解除される、
ことを特徴とする請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記第2の歯車は、中空に形成されて前記第2の軸が挿入される、
ことを特徴とする請求項2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記第1の軸は、前記駆動源の出力軸と前記回転刃の回転軸との一方の軸であり、
前記第2の軸は、前記出力軸と前記回転軸との他方の軸である、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記軸係合部と前記歯車係合部との少なくとも一方は、前記第2の軸の回転方向に対して傾いた斜面を有し、前記斜面において前記軸係合部と前記歯車係合部との他方と係合する、
ことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記第2の歯車は、前記第2の軸の軸方向に付勢される、
ことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の芝刈機。
【請求項7】
前記軸係合部は、前記第2の軸から略垂直に凸となる凸状に形成され、
前記歯車係合部は、前記第2の歯車における側面が凹凸状に形成された歯車部から前記第2の軸の軸方向に延出し、上面の少なくとも一部が前記第2の軸の回転方向に向かうほど高くなる螺旋状に形成され、前記回転方向の端部に上面が上に凸となる刳り抜きが形成され、前記刳り抜きの上面において前記軸係合部と係合する、
ことを特徴とする請求項6に記載の芝刈機。
【請求項8】
前記動力伝達機構は、操作者の操作に伴って、前記第2の歯車が付勢される方向と反対の方向に前記第2の歯車を移動させる移動機構を更に備える、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の芝刈機。
【請求項9】
前記第2の歯車の位置を検出する位置検出手段と、
前記検出された前記第2の歯車の位置に基づいて前記軸係合部と前記歯車係合部との係合の解除を操作者に報知する報知手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項2乃至8の何れか1項に記載の芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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