説明

芯上下式石油燃焼器のガス抜き構造。

【課題】 芯上下式石油燃焼器において芯下げ消火時の油タンクの内圧上昇を逃がすガス抜き機構に関する。
【解決手段】 油タンク1の底板から立設した芯内筒2aの外側に芯3を装着し、油タンク1の上面に設けた開口4には、油タンク1の内圧上昇時に開く弁機構体5と油タンク1内側に延長する筒部6とで構成するガス抜き機構Aを取付ける。前記弁機構体5は弁孔5aの弁座の上に載せて独立して上下する弁7と、弁7を囲む筒状ガード8と、筒状ガード8の上に取付ける弁カバー9とで構成する。芯3の降下による油タンク1の内圧上昇時に油タンク1内のガスは弁孔5aへ流れ、弁7を押上げて筒状ガード8に形成したガス抜きスリット8aから抜けるものであり、独立して上下できる弁7は油タンク1の内圧上昇時に素早く上昇し、弁孔5aが大きく開くので、小さいガス抜き機構Aでも油タンク1内のガスをすぐに外へ逃がすことができ、消火時の立炎を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芯上下式石油燃焼器に関し、消火操作時に芯を降下したことによる油タンク内の圧力変動が燃焼に及ぼさないことを目的とする。
【背景技術】
【0002】
芯上下式石油燃焼器は、油タンクの上面に取付けた芯外筒と、油タンクの底面から立設した芯内筒とで芯収容筒を構成し、該芯収容筒を構成する芯内筒と芯外筒との間隙には上下自在に芯を保持しており、その芯収容筒の上部にはバーナーが載架されている。芯収容筒には、この芯を上下動するための芯上下装置を備えており、該芯上下装置を駆動する芯上下操作つまみを操作すると芯が上昇して、先端をバーナー内に位置させる。そして、図示せざる点火装置によって芯に点火すると、油タンクから芯によって吸上げられた灯油が、芯の上端で燃焼熱により気化して燃焼し、上部のバーナー内で蒸発した燃料と空気とが混合し、最良の燃焼を行う。
【0003】
また、芯上下装置により芯が降下して、油タンク内に芯の大部分が引込まれ、芯の上端がバーナー内から離れることにより、燃焼熱の低下及び燃焼用空気の供給が遮断されて消火する。芯を油タンク内へ下降して消火する時に、降下した芯の体積分の空気を油タンク外へ追い出す必要があり、この油タンク内の空気は芯収容筒の間隙から上部のバーナーヘ石油ガスを含んだ空気となって吹き出しする。この時バーナー内にはまだ炎が残っており、石油ガスを含んだ空気は、この炎によって引火して火災を吹き出すトラブルを発生することがある。
【0004】
この為、油タンクの上面にはガス抜き通路を備えたガス抜き機構を取付け、油タンクの内圧上昇時に、芯収容筒の間隙に代わって、該ガス抜き機構に備え付けたガス抜き通路から、油タンク内の空気が外部へ抜けるようにしたものがある。この時、油タンク内の油面にのぞませて取付けた、ガス抜き機構の下方に伸びる筒部は、芯降下時の衝撃による油タンク内で発生する油の飛沫が外へ飛び散るのを防ぐ働きがある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−139383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス抜き機構によって開閉するガス抜き通路は、芯降下の衝撃が大きい機種によっては芯降下時の油タンク内の内圧上昇が大きく、内圧上昇が大きくなることに対して、小さいガス抜き通路では、油タンク内の空気の抜ける量が十分でなく、ガス抜き機構を備えていても、芯収容筒から上部のバーナーヘ石油ガスを含んだ油タンク内の空気をより多く吹き出し、立炎を発生するトラブルを解決できないことがある。この為、ガス抜き機構によって開閉するガス抜き通路を大きくしようとすると、ガス抜き機構の全体が大きくなるのに伴い、ガス抜き通路を開閉する弁も大きく重くなり、芯降下時における油タンクのガス圧の上昇によって弁を確実に押し開くことができなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ガス抜き機構が小さくとも、大きな開口面積を作り出すことができる、芯上下式石油燃焼器のガス抜き構造であって、油タンク1の底面から芯収容筒2の芯内筒2aを立設して、この芯内筒2aの外側に芯3を配置し、前記油タンク1の上面に設けた開口4にはガス抜き機構Aを取付け、該ガス抜き機構Aは油タンク1の外側に位置して油タンク1の内圧上昇時に開く弁機構体5と、該弁機構体5から油タンク1の内側に延長する筒部6とで構成し、油タンク1内の内部空間は、ガス抜き機構Aの筒部6内から弁機構体5を介在して油タンク1外と連通する芯上下式石油燃焼器において、前記弁機構体5は弁孔5aの内縁で形成する弁座の上に載せる独立して上下する弁7と、その弁7の外方に位置する筒状ガード8と、その筒状ガード8の上に取付ける弁カバー9とで構成し、かつ、この筒状ガード8にはガス抜きスリット8aを形成し、芯降下時に油タンク1のガスは前記弁孔5aに向けて流れ、独立した弁7を押し上げて、そのガスが筒状ガード8のガス抜きスリット8aから抜けることを特徴とする。
【0008】
また、前記弁7は下方が凸の半球状に形成し、この独立して上下する弁7は半球状の凸面で弁孔5aの弁座に載ってガス抜き通路を塞ぐから、押し上げられた弁7が下降して弁孔5aを塞ぐとき、弁7が傾いても半球状の凸面により傾きに関係なく弁孔5aを塞ぐことができた。
【0009】
また、前記筒状ガード8に誘導されて独立して上下する弁7の中央部には、前記弁孔5aの弁座よりも下方に向けて錘10を取付け、この錘10によって弁7が弁孔5aの内縁で形成する弁座の上に押し付けられているから、押し上げられた弁7が下降するとき、錘10により弁7の降下位置規制することで、弁7の傾きを防ぐことができた。
【0010】
また、前記弁カバー9の中心部より弁孔5aに向かって垂れ下がる軸11を形成し、前記弁7には軸11が挿通する孔7aを設け、該弁7が軸11に規制されて独自に上下動するから、弁7が上下動するときに弁7が傾かなくなり、弁孔5aを確実に塞ぐことができた。
【0011】
また、前記筒状ガード8の内側にはレール状凹部8bを形成し、前記弁7の外周にはレール状凹部8bに嵌め合う係合部7bを設け、前記弁7は係合部7bがレール状凹部8bに規制されて独自に上下動するから、弁7が上下動するときに弁7が傾かなくなり、弁孔5aを確実に塞ぐことができた。
【発明の効果】
【0012】
この発明ではガス抜き機構が小さくとも、ガス抜き通路に大きな開口面積を作り出すことができるようにしたもので、弁孔5aが小さいものであると芯3の降下が素早く行われる機種によっては、芯降下時の油タンク1内の内圧上昇が大きく、バーナーの上部より立炎することがあったが、弁機構体5を構成する筒状ガード8と弁カバー9との内側には、弁孔5aの内縁で形成する弁座の上に載せて独立して上下する弁7を装着したから、弁7が上昇したときには弁孔5aが大きく開き、芯3が素早く降下したときにも油タンク1内のガスをすぐに外へ逃がすことが可能となり、バーナーからの立炎を抑制することができた。
【0013】
また、前記弁7は下方が凸の半球状に形成し、この独立して上下する弁7は半球状の凸面で弁孔5aの内縁で形成する弁座に載せられて、ガス抜き通路を構成する弁孔5aを塞ぐことができる構造であるから、弁7が押し上げられたあとで弁7が下降して弁孔5aを塞ぐとき、弁7が傾いても半球状の凸面により傾きに関係なく弁孔5aを塞ぐために、開いたままの状態にならず、消火したとき火が消えなくなるということがなくなった。
【0014】
また、前記筒状ガード8に誘導されて独立して上下する弁7の中央部には、弁孔5aの内縁で形成する弁座よりも下方に向けて錘10を取付け、この錘10によって弁7が弁孔5aの弁座に押し付けられている構造であるから、弁7が押し上げられたあとで弁7が下降するとき、錘10に引かれて弁7が傾いたまま弁孔5aの弁座に載ることはなく、正しい位置となって確実に弁孔5aを塞ぎ、弁孔5aが開いたままの状態にならず、消火したとき火が消えなくなるということがなくなった。
【0015】
また、弁カバー9の中心部より弁孔5aに向かって垂れ下がる軸11を形成し、前記弁7には軸11が挿通する孔7aを設け、芯3が降下したとき、弁7が軸11に規制されて独自に上下動する構成としたから、弁7が傾くことなく、確実に弁7により弁孔5aを塞ぐことができたもので、弁孔5aが開いたままの状態にならず、消火したとき火が消えなくなるということがなくなった。
【0016】
また、前記筒状ガード8の内側にはレール状凹部8b形成し、前記弁7の外周にはこのレール状凹部8bに嵌め合う係合部7bを設け、前記弁7の係合部7bがレール状凹部8bに規制されて独自に上下動するから、この構造によっても弁7が傾くことなく、確実に弁孔5aを塞ぐことができ、弁孔5aが傾いて開いたままの状態は起こり得ず、消火したとき火が消えなくなるということがなくなった。また、上記の実施例のような弁カバー9の軸を必要とせず、なおかつ弁7を弁カバーの軸に通す必要がない為、構造簡単で、ガス抜き機構の組み付けが容易になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、実施例を示す図により構成を説明すると、1は石油燃焼器の油タンク、3は下端を油タンク1の油中に伸ばした石油燃焼器の芯、2は芯3を収容するための芯収容筒、2aは油タンク1の底面から立設した芯内筒、2bは油タンク1の上面板から連続する芯外筒であり、前記芯収容筒2は芯内筒2aと芯外筒2bとで構成し、その間隙に芯3を装着している。12は芯収容筒2の外側から芯3に向けて取付けた芯上下つまみ、13は芯収容筒2の上部に設けたバーナーであり、芯上下つまみ12を回転すると図示せざる芯上下装置は芯3を上昇し、この芯3が芯収容筒2からバーナー13の下部に突出し、図示しない点火装置によって芯3に着火すると、油タンク1の燃料は芯3によって吸い上げられながらバーナー13内で燃焼する。
【0018】
4は油タンク1の上面板に設けた開口、Aはこの開口4に装着するガス抜き機構、5はガス抜き機構Aの油タンク1の外側部分を構成する弁機構体、6はこの弁機構体5から下方に伸ばされてガス抜き機構Aの油タンク1の内側部部分で構成する筒部であり、この筒部6は油タンク1内の油面に向かって伸ばしてあり、筒部6の先端は芯下げ時の油面と小間隙を形成している。
【0019】
5aはガス抜き機構Aを構成する弁機構体5と筒部6との間に形成した弁孔、7は弁孔5aの内縁で形成する弁座と密着してその弁孔5aを開閉する弁であり、通常時において弁7は弁孔5aを塞いでおり、外気が油タンク1内の空間に入ることはない。石油燃焼器の消火時に芯上下装置によって急速に芯3が降下して油タンク1内に引き下げられた時に、油タンク1の内圧が上昇するものの、この弁孔5aと弁7はガス抜き機構Aの筒部6から弁機構体5を経て外部に抜けるガス抜き通路を構成しており、油タンク1の内圧が上昇してもこの圧力は弁7を上動して開かれたガス抜き通路によって抜くことができ、芯収容筒2の芯3を挿入した間隙からバーナー13へ抜けないようになっている。
【0020】
このようにガス抜き機構Aを装着することで、芯3の降下時に芯収容筒2の間隙内から石油ガスを含んだ空気が吹き出してバーナー13に発生する立炎を防止できたが、芯3の降下を芯上下つまみ12などでゆっくり操作する時にはガス抜き機構Aが良好に作動しても、消火時間を短縮するために素早く芯上下つまみ12を回転したり、バネ力などで芯上下装置を駆動するときには、油タンク1の内圧が急速に上昇して、従来のガス抜き機構Aでは立炎現象を防止できないときがある。
【0021】
この発明は油タンク1の内圧を素早く逃がすことができるガス抜き機構Aを提案しており、8はガス抜き機構Aの弁機構体5の部分で弁孔5aの外周を囲んで設けた筒状ガード、8aは筒状ガード8の壁側面に等間隔に4ケ所あけられたガス抜きスリットであり、前記弁7は筒状ガード8内の弁孔5aの内縁で形成する弁座の上に配置され、弁7は筒状ガード8に案内されて、独立して上下できるように載架されている。
【0022】
そして、石油燃焼器の消火操作による油タンク1の内圧上昇時に、油タンク1内のガスがガス抜き機構Aの筒部6から弁機構体5を経て外部に抜ける時、独立して上下できる弁7は、その押し開きがスムーズに行われ、該弁7はこの油タンク1内のガスの圧力で押し上げられ、弁7が受ける油タンク1内の圧力は筒状ガード8のガス抜きスリット8aを経て外部に逃がすことができた。また、このガスに細かい油滴が交じっていても、この油滴は筒状ガード8の内面に触れると液化するので、弁機構体5の外へ灯油の飛び散りを少なくなった。
【0023】
9は筒状ガード8の上に取付ける抜け止め用の弁カバー、9aは筒状ガード8の上端部の壁面外側に設けた凹部と嵌め合う弁カバー固定爪、9bは筒状ガード8の該弁カバー9の上面に開口を形成する弁カバースリットであり、前記弁カバー9は筒状ガード8の凹部と弁カバー9の弁カバー固定爪9aとが嵌め合い固定され、筒状ガード8の上端から外れないように固定されている。このため、前記弁7が筒状ガード8内の弁孔5aの上に載せられた状態で、前記筒状ガード8の上端に弁カバー9が固定されており、この弁7が油タンク1の内圧上昇時に押し上げられても、弁カバー9によって弁機構体5の外部へ飛び出しを防止できる。そして、油タンク1の内圧の上昇によって弁7が上動するとき、この弁7より上部の筒状ガード8内の空気はガス抜きスリット8aだけでなく前記弁カバースリット9bからも抜けるから、弁7は素早く弁カバー9付近まで上動することができる。
【0024】
図3に示す実施例において、前記弁7は下方が凸の半球状に形成しており、この独立して上下する弁7は半球状の凸部面で弁孔5aの弁座の上に載って筒部6から弁機構体5を経て外部に抜けるガス抜き通路を塞いでおり、この時、弁7が傾いて弁座の上に乗っても半球状の凸面により、この傾きに関係なく弁孔5aを塞ぐことができた。
【0025】
図4に示す実施例において、10は前記弁7の中央部付近から弁孔5aの弁座よりも下方に伸ばして取付けられた錘であり、前記油タンク1の内圧の上昇により押し上げられた弁7が下降するときに、弁7の重心は弁孔5aの弁座よりも下方に位置しているから、この錘10によって弁7は弁孔5aの内縁で形成する弁座の上に載るように押し付けられ、弁7の片側が筒状ガード8に引っかかって傾いたまま停止することはなくなり、弁7は傾きなく確実に弁孔5aを封鎖することができた。
【0026】
また、図5に示す実施例において、11は弁カバー9の中心部から弁孔5aより下方に垂れ下がる軸、7aは円盤状の前記弁7の中央部に軸11が挿通するように設けられた孔であり、弁7は弁孔5aの周縁の弁座部分から弁カバー9の間で軸11に規制されて独自に上下動する構成となっている。このため、芯3が降下したときに油タンク1の内圧が上昇すると弁7は軸11に沿って上動し、油タンク1の内圧が下がって弁7が降下するときにも、弁7は軸11に沿って筒状ガード8に触れることなく下降し、弁7が弁機構体5内で傾いても弁孔5aの上の正確な位置に載り、確実に弁孔5aを塞ぐことができたもので、消火したとき油タンク1内に空気が供給されてバーナー13の火が消えなくなるというトラブルは発生しない。
【0027】
また、9cは弁カバー9の中央から弁7の方向に形成した盛上部であり、前記軸11はこの盛上部9cから下方に向けて設けられ、弁カバー9と軸11との間の取付け強度が増すと共に、上動した弁7はこの盛上部9cによって弁カバー9に密着しなくなるから、たとえ弁7に油の飛沫が付着して濡れた状態であっても、弁7が弁カバー9に貼りついて離れなくなるといったトラブルは発生しなくなった。
【0028】
更に、図6に示す実施例において、8bは前記筒状ガード8の内壁面に形成したレール状凹部、7bは前記弁7の外周にこのレール状凹部8bに嵌め合うように設けられた係合部であり、前記レール状凹部8bは垂直方向に向けて形成されており、このレール状凹部8bには前記弁7の係合部7bが嵌め合って、弁7は係合部7bがレール状凹部8bに規制された状態で独自に上下動するようになり、降下する弁7が筒状ガード8の側壁に引っかかって弁孔5aを開いたままになってしまうトラブルは解消でき、確実に弁孔5aを塞ぐことができた。また、図5の実施例のように弁カバー9の軸11を必要とせず、この軸11に弁7を通す必要がないために、構造簡単でガス抜き機構の組み付けが容易になった。
【0029】
また、弁7が油タンク1の内圧の上昇によって上動するときには、この圧力は弁7の中心点に係るから大きく傾くことはなく、短い係合部7bや浅いレール状凹部8bでもこの嵌め合いが外れることはない。しかし、ガス抜き機構Aの筒部6の形状によっては、油タンク1の内圧が弁7の中心から離れた位置に強く係ることがあり、この時には弁7が大きく傾いて持ち上がり、係合部7bとレール状凹部8bとの嵌め合いが外れてしまうことになる。図6に示す実施例の係合部7bでは、その端が上方に向けられてレール状凹部8bに沿わせてあるから、実施例のように係合部7bが2箇所のときに、他方の係合部7bの方向が高くなるように弁7が傾こうとすると、上方に向けられた係合部7bによって高くなった他方の係合部7bの方向に弁7を移動する力が働いて、傾いて高くなった係合部7bとレール状凹部8bとの嵌め合いが外れにくくなっており、弁7の係合部7bとレール状凹部8bとの働きで、常に弁7を弁孔5aの周縁の弁座の上に正しく載せることができた。
【0030】
実施例である図に示すガス抜き機構Aの弁機構体5において、5bは弁孔5aの上部端部の弁7と対向する部分に弁7の密着を防ぐ為に設けた複数個の凸部であり、弁孔5aから弁7を押し開いて流出するガスに油の飛沫が交じっていると、弁7が油に濡れて弁孔5aの上部端面に密着することがあり、この時は油の表面張力に打ち勝つ大きな圧力を掛けないと弁7が開かないことがあったが、凸部5bを設けることによって弁7は弁孔5aの上部端面と密着しなくなり、少しの圧力差で弁7が開くようになった。また、凸部5bは複数個設けてあり、この凸部5bに油が付着することがあっても凸部5b毎の付着量に差があるから、少量の油が付着した部分から弁7が持ち上げられて、やがて弁7が上動することができる。また、この凸部5bの高さを低くすることによって、微小間隙があっても実質的には密着状態を作り出して空気の流通がほとんどないから、石油燃焼器の燃焼状態には何等問題はない。
【0031】
実施例である図2に示すガス抜き機構Aの筒部6において、6aは芯3に対向する側面以外の筒部6の壁の一部で形成する可動片、6bはこの可動片6aを可動可能状態にするために筒部6を根元まで切り裂いた縦状のスリットであり、前記可動片6aは縦状のスリット6bによって芯3に対向する側の筒部6は可動できないが可動片6aだけは動くことができる。6cはこの可動片6aに設けた係合突起であり、前記油タンク1の開口4にガス抜き機構Aを装着するときに、この可動片6aの係合突起6cが押されて内側に変形しながらガス抜き機構Aが開口4に押し込まれ、やがて開口4の油タンク1内側の端に係合突起6cが至ると変形していた可動片6aは復帰し、係合突起6cが開口4の端が係合してガス抜き機構Aの抜け止となっている。
【0032】
ところで、芯3は芯収容筒2を構成する芯内筒2aの外側に配置してあり、芯降下時に発生する油の飛沫は芯3の付近から油タンク1内に飛び散るが、芯3に対向する筒部6には縦状のスリット6bが形成されていないから、この飛沫は縦状のスリット6bのない筒部6によって防ぐことができる。また、筒部6から弁機構体5を経て外部へ抜ける油タンク1内の上昇した圧力は、油タンク1の油面と筒部6の下端で形成した間隙だけでなく、この縦状のスリット6bからも筒部6内へ入ることができるようになったから、芯降下時の油面と筒部6の下端で形成する間隙を狭くしても充分な量のガスを筒部6内に流入させることができ、油タンク1の油面の波立ちによる飛沫が筒部6内へ入りにくくなった。
【0033】
6dは可動片6aと縦状のスリット6bの内側で可動片6aとは間隙を介して両側の筒部6同士を連続させる仕切壁であり、この仕切壁6dは上部が弁孔5aの外周の一部に連接すると共に、該仕切壁6dの下端は係合突起6cよりも低い位置で筒部6の下端よりも上部に位置しており、可動片6aの動きには何等抵抗とならないように構成されている。このため、油タンク1の油面が波立って、油の飛沫が縦状のスリット6bから筒部6の中へ飛び込もうとしても、この飛沫は直接弁孔5aに向かうことができなくなり、仕切壁6aに付着して油滴となって油タンク1の油面に滴下し、仕切壁6dの内部から弁孔5aに向けて流れないようになった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施例を示す石油燃焼器の一部を切り欠いた正面図である。
【図2】この発明の実施例を示す部品の断面図と底面図である。
【図3】他の実施例を示す要部断面図である。
【図4】他の実施例を示す要部断面図である。
【図5】他の実施例を示す要部断面図である。
【図6】他の実施例を示す要部断面図とその部品の一部切り欠き平断面図である。
【符号の説明】
【0035】
A ガス抜き機構
1 油タンク
2 芯収容筒
2a 芯内筒
3 芯
4 開口
5 弁機構体
5a 弁孔
6 筒部
7 弁
7a 孔
7b 係合部
8 筒状ガード
8a ガス抜きスリット
8b レール状凹部
9 弁カバー
10 錘
11 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油タンク1の底面から芯収容筒2の芯内筒2aを立設して、この芯内筒2aの外側に芯3を配置し、
前記油タンク1の上面に設けた開口4にはガス抜き機構Aを取付け、
該ガス抜き機構Aは油タンク1の外側に位置して油タンク1の内圧上昇時に開く弁機構体5と、該弁機構体5から油タンク1の内側に延長する筒部6とで構成し、
油タンク1内の内部空間は、ガス抜き機構Aの筒部6内から弁機構体5を介在して油タンク1外と連通する芯上下式石油燃焼器において、
前記弁機構体5は弁孔5aの内縁で形成する弁座の上に載せる独立して上下する弁7と、その弁7の外方に位置する筒状ガード8と、その筒状ガード8の上に取付ける弁カバー9とで構成し、かつ、この筒状ガード8にはガス抜きスリット8aを形成し、
芯降下時に油タンク1のガスは前記弁孔5aに向けて流れ、独立した弁7を押し上げて、そのガスが筒状ガード8のガス抜きスリット8aから抜けることを特徴とする芯上下式石油燃焼器のガス抜き構造。
【請求項2】
前記弁7は下方が凸の半球状に形成し、この独立して上下する弁7は半球状の凸面で弁孔5aの弁座に載ってガス抜き通路を塞ぐことを特徴とする請求項1に記載の芯上下式石油燃焼器のガス抜き構造。
【請求項3】
前記筒状ガード8に誘導されて独立して上下する弁7の中央部には、前記弁孔5aの弁座よりも下方に向けて錘10を取付け、この錘10によって弁7が弁孔5aの内縁で形成する弁座の上に押し付けられている請求項2に記載の芯上下式石油燃焼器のガス抜き構造。
【請求項4】
前記弁カバー9の中心部より弁孔5aに向かって垂れ下がる軸11を形成し、前記弁7には軸11が挿通する孔7aを設け、該弁7が軸11に規制されて独自に上下動することを特徴とする請求項1に記載の芯上下式石油燃焼器のガス抜き構造。
【請求項5】
前記筒状ガード8の内側にはレール状凹部8bを形成し、前記弁7の外周にはレール状凹部8bに嵌め合う係合部7bを設け、前記弁7は係合部7bがレール状凹部8bに規制されて独自に上下動することを特徴とする請求項1に記載の芯上下式石油燃焼器のガス抜き構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−153386(P2006−153386A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347393(P2004−347393)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)