説明

芯出し装置および芯出し方法

【課題】装置全体の簡素化を図ることができ、しかも、ワークに対して安定して芯出しを行うことが可能な芯出し装置および芯出し方法を提供する。
【解決手段】回転テーブル1を介して回転しているワークWの偏芯量を検出する。ハンマー手段25にてワークWへ衝撃力を付与して偏芯量を修正する芯出し動作を行う。偏芯量が予め設定された収束目標値になるまで芯出し動作を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯出し装置および芯出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受の内輪や外輪等のリング状体の構造物(輪状工作物)を製造する場合、輪状工作物に対して、旋盤工程や研削工程を行う。そして、このような工程においては、芯出し装置によって、輪状工作物(ワーク)に対して芯出しを行う必要がある。
【0003】
従来、大型軸受等の輪状工作物の研削を行う場合は、研削盤の上にワークを仮置きし、熟練した作業者が芯ずれを計測するためのゲージを加工物の外周に当て、加工物を回転させながら1周する間の振れ量を計測する。そして、ハンマーを使って振れの最大位置付近を叩くことで所定の芯出しを行っている。すなわち、このような作業者の人手による芯出し作業では、熟練した作業者がダイヤルゲージの偏芯量を測定し、測定した結果が許容範囲外である場合は、ハンマーなどを用いて加工物をたたき、測定とたたきを繰り返し、許容範囲内になるまでこの作業を行うものである。しかしながら、この作業は、完全に人作業であるため、たたく位置と打力との関係を定量化するのが困難であった。
【0004】
そこで、近年では、熟練した作業者による芯出しによらず、機械的な自動芯出し装置が 提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
【0005】
特許文献1に記載の芯出し装置は、回転テーブルの回転角度位置を検知する回転角度位置検知器と、被加工物の径方向偏位を検出する径方向偏位検出器と、検知器の検知結果及び検出器の検出結果に基づき偏位すべき被加工物の回転角度及びその修正量を演算する演算制御回路と、修正ヘッドにより、回転中心側に向けて被加工物を押圧する修正機とを備えたものである。
【0006】
また、特許文献2に記載の芯出し装置は、第1計測手段と、第1位置調整手段と、第2計測手段と、第2位置調整手段と、位置固定手段と、制御手段等を備えるものである。
【特許文献1】特開昭60−238258号公報
【特許文献2】特開2004−345029公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載のものでは、修正ヘッドの機構の中に偏芯量を測定するためのデジタルスケールを有するものである。このため、装置全体の構造が複雑でコスト高となっていた。しかも、このような装置で大型加工物の芯出しを行う場合、修正ヘッドに大きな荷重がかかる。このため、このヘッドを支えている部材はこの荷重の反力を受ける。したがって、このような部材に偏芯量を測定するケージを取り付けることが精度的に困難であった。
【0008】
また、特許文献2に記載のものでは、第1計測手段と、第1位置調整手段と、第2計測手段と、第2位置調整手段と、位置固定手段と、制御手段とを備えるものであるので、装置としては、前記特許文献1に記載のものと同等乃至それ以上に構造が複雑となっている。
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みて、装置全体の簡素化を図ることができ、しかも、ワークに対して安定して芯出しを行うことが可能な芯出し装置および芯出し方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の芯出し装置は、ワークを回転させるための回転テーブルと、この回転テーブルを介して回転しているワークの偏芯量を検出する変位検出手段と、この変位検出手段にて検出された偏芯量をワークへの衝撃にて修正するハンマー手段とを備えたものである。
【0011】
本発明の芯出し装置によれば、変位検出手段にてワークの偏芯量を検出することができる。ハンマー手段にて、ワークに対して衝撃力を付与することによって、また、検出された偏芯量を修正することができる。
【0012】
前記変位検出手段は、ワークの偏芯大きさを検出する変位センサと、前記テーブルの回転角位相を検出する位相検出センサとを備え、変位センサにて検出した偏芯大きさと位相検出センサにて検出した回転角位相とに基づいて、予め設定された条件から最適打力を選択するものである。
【0013】
検出した検出値に基づいて最適打力を予め設定された条件から選択するものであるので、最適な芯出しを行うことができる。
【0014】
ハンマー手段は、基端側の支点を中心とした旋回運動が可能なレバーと、このレバーの先端に付設される錘とを備え、錘とレバーの旋回角の大きさと旋回速度とで決まる角速度によって錘にてワークへ衝撃力を付与するのが好ましい。このように設定することによって、レバーは基端側の支点を中心として揺動自在となっており、ワークへの衝撃によるハンマー手段への衝撃反力を緩和することができる。
【0015】
ワークが縦型旋盤及び横型旋盤における加工物であっても、縦型研削盤及び横型研削盤における加工物であってもよい。また、ワークの偏芯量を検出後に、ワーク回転を停止させた状態でも偏芯量を修正することができる。
【0016】
本発明の芯出し方法は、芯出し回転テーブルを介して回転しているワークの偏芯量を検出し、ハンマー手段にてワークへ衝撃力を付与して前記偏芯量を修正する芯出し動作を行い、偏芯量が予め設定された収束目標値になるまで前記芯出し動作を繰り返すものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、検出された偏芯量に応じて、ハンマー手段にてワークに対して衝撃力を付与すればよく、簡単に芯出しを行うことができる。
【0018】
検出した検出値に基づいて最適打力を予め設定された条件から選択するものであるので、最適な芯出しを行うことができ、比較的高精度の芯出しを行うことができる。
【0019】
錘とレバーの旋回角の大きさと旋回速度とで決まる角速度によってワークへ衝撃力を付与するものでは、支点を中心とした錘の旋回運動による衝突エネルギー(衝撃力)を付与することになる。このため、水平方向に物体を移動させる押圧力に比べて小さい力で物体を動かすことが可能である。しかも、ハンマー手段への衝撃反力を緩和することができ、装置としての耐久性の向上を図ることができ、長期にわたって安定した芯出しを行うことができる。また、ハンマー手段自体が反力吸収構造を構成するので、反力吸収構造を別途構成する必要がなく、装置全体としての省スペース化及びコスト低減を図ることができる。
【0020】
芯出し装置が縦型旋盤及び横型旋盤に用いられたり、縦型研削盤及び横型研削盤に用いられたりすることができ、旋盤や研削盤による加工精度の向上を図ることができる。
【0021】
本発明の方法によれば、収束目標値になるまで芯出しすることができ、高精度の芯出しを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
【0023】
図1〜図3は本発明に係る芯出し装置を示し、この芯出し装置は、ワークWが載置される回転テーブル1と、この回転テーブル1をその軸心廻りに回転させる駆動機構2と、回転テーブル1上のワークW(ベアリングの内輪や外輪等の輪状加工物)へ衝撃力を付与する衝撃力付与構造3とを備える。
【0024】
駆動機構2は、回転テーブル1の中心軸5をその軸心を中心に回転自在に支持する軸受構造体6と、駆動用モータ7と、この駆動用モータ7の出力軸8と前記中心軸5とを連動連結する連動部材9とを備える。連動部材9は、回転テーブル1の中心軸5に装着されたスプロケット11と、駆動用モータ7の出力軸8に装着されたスプロケット12と、これらスプロケット11,12に掛け回されるチェーン(図示省略)とを備える。軸受構造体6と駆動用モータ7とは基台10に支持されている。基台10は、基板14と、この基板14を支持する脚体15とを備える。また、脚体15のコーナ部下端にアジャスタ19が付設されている。
【0025】
このため、駆動用モータ7が駆動すれば、その出力軸8の回転が連動部材9を介して中心軸5に伝達され、回転テーブル1がその軸心廻りに回転する。なお、スプロケット11,12間には、チェーンに張力を付与する張力付与機構23が設けられている。すなわち、張力付与機構23は回転盤24を有し、この回転盤24にてチェーンを外側から押圧する。これによって、チェーンに張力を付与する。
【0026】
回転テーブル1には、複数のワーク受け13が周方向に沿って所定ピッチで配設されている。このワーク受け13は、回転テーブル1に固定される水平部16と、この水平部16の外径側から立設される鉛直部17とからなり、この鉛直部17の上端面17aにてワークWを受けることになる。
【0027】
また、ワーク受け13の外周側に、周方向に沿って所定ピッチに複数個のラフガイド18が設けられている。ワークWの下端面と、外径面とのコーナ部を案内する案内面20を有する。すなわち、ラフガイド18は、回転テーブル1に固定される水平部21と、この水平部21の内径側から立設される鉛直部22とを備え、この鉛直部22の上部内径側にテーパ面が設けられ、このテーパ面が前記案内面20を形成する。ワークWを回転テーブル1に載置したときに、ワークWの芯ずれ量(偏芯量)が過大にならないように、平面的に見て、ワークWの外径面よりも、数ミリ程度に大きい円弧上にラフガイド18の案内面20を配置する。
【0028】
衝撃力付与構造3は基台10の基板14から立設される支持柱56に設置される。この衝撃力付与構造3は、図5に示すように、ワークWに衝撃力を付与するハンマー手段25を備える。ハンマー手段25は、正面視において倒立L字状のレバー26と、このレバー26の下端に付設される錘27とを備える。レバー26は、上下方向に延びる長片部26aと、この長片部26aの上端から略直角に折れ曲がる短片26bとからなり、その下端、つまり長片部26aの下端に錘27が連設されている。なお、図1に示すように、支持柱56は、支柱部56aと、この支柱部56aの上端に連設される受け盤56bとを備える。
【0029】
レバー26は、その上端部(長片部26aと短片26bとコーナ部)に、揺動の支点Aとなる枢支部28が支持板30(前記支持柱56の受け盤56bに固定されている)に枢着され、この支点Aを中心に矢印B、Cのように揺動する。すなわち、図6に示すように、レバー26に軸受(枢支部)28を嵌着し、この軸受28に支持板30から突設される軸部材34を挿入固定される。これによって、レバー26は軸部材廻りにレバー26が揺動することになる。なお、軸部材34は、そのねじ軸部34aが支持板30に挿通され、ナット部材44が螺着されてこの支持板30に固着される。
【0030】
レバー26の短片26bには小径ローラ31が設けられ、この小径ローラ31は押し上げ用シリンダ機構32にて押し上げられる。すなわち、押し上げ用シリンダ機構32は、シリンダ本体32aが支持板30側に固定され、ピストンロッド32bの先端に小径ローラ31を押圧する押圧体33が付設されている。このため、押し上げ用シリンダ機構32のピストンロッド32bが伸びれば、押圧体33を介して小径ローラ31が押し上げられ、レバー26が支点Aを中心に矢印B方向に揺動する。
【0031】
レバー26は、引っ張り機構35にてその短片26bが下方に引っ張られる。すなわち、引っ張り機構35は、アーム36と、このアーム36に固着される弾性材支持ロッド37と、レバー26の短片26bに固着される弾性材支持体38と、弾性材支持ロッド37と弾性材支持体38とに支持されるコイルスプリングからなる弾性材39とを備える。弾性材支持ロッド37は、その先端に引っ掛け孔を有するねじ軸部材からなり、アーム36に設けられるナット部材42に螺合している。また、弾性材支持体38は、図6に示すように、レバー26の短片26bから突設される支持ピン40を備え、支持ピン40に係止溝41が設けられている。したがって、弾性材39は、その一端部が弾性材支持体38の支持ピン40の係止溝41に係止し、その他端部が弾性材支持ロッド37の引っ掛け孔に係止している。これによって、レバー26の短片26bが下方へ弾発付勢されている。
【0032】
この場合、図6に示すように、このレバー26の振り下ろし角度を決定する角度決定機構45を備える。角度決定機構45は、例えば1軸アクチュエータから構成される上下動機構46と、この上下動機構46の可動テーブル47に付設される連結構造部48とを備える。
【0033】
連結構造部48は、水平方向に沿って配設される連結用ピン49と、この連結用ピン49を水平方向に往復動させる往復動機構50とを備える。往復動機構50は、シリンダ機構51と、このシリンダ機構51のピストンロッド51bの先端に付設されるピン受け体52とを備える。ピン受け体52は有底短筒体からなり、その底壁52aにピストンロッド51bの先端が螺着されている。また、ピン受け体52の開口部には、内鍔部52bが設けられ、この開口部に連結用ピン49の一端部(基端部)が挿入されている。この場合、上下動機構46の可動テーブル47の上下動によって、往復動機構50および連結用ピン49が上下動する。
【0034】
連結用ピン49は軸受53で支持され、この軸受53とピン受け体52との間にコイルスプリングからなる弾性材54が介在されている。このため、シリンダ機構51のピストンロッド51bが図6に示すように延びた状態では、レバー26の短片26bの裏面の先端部に設けられている嵌合孔55に連結用ピン49の他端部(先端部)が嵌合する。また、図6に示す状態からシリンダ機構51のピストンロッド51bが縮んだ状態では、ピストンロッド51bの先端部の嵌合孔55の嵌合が解除される。
【0035】
前記引っ張り機構35は調整機構60にて張力が調整される。調整機構60は、前記アーム36を上下動させる上下動機構61を備える。図7に示すように、上下動機構61は、シリンダ機構62と、このシリンダ機構62のピストンロッド62bの先端部が連結されるブロック体63と、このブロック体63の上下動を案内するリニアガイド機構64とを備える。リニアガイド機構64は、ブロック体63に固定される上下動体66と、この上下動体66の上下動をガイドするガイドレール67とを備える。なお、ピストンロッド62bとブロック体63とは連結部材65を介して連結されている。
【0036】
したがって、シリンダ機構62のピストンロッド62bを延ばせば、アーム36が下降し、弾性材39の弾性引っ張り力が大きくなり、シリンダ機構62のピストンロッド62bを縮めれば、弾性材39の弾性引っ張り力が小さくなる。
【0037】
ところで、レバー26の短片26bを押し上げた状態において、シリンダ機構32のピストンロッド32bを縮めて、ピストンロッド51bの先端部の嵌合孔55の嵌合が解除されれば、錘27及び引っ張り機構35の弾性力によって、レバー26が支点Aを中心に矢印C方向に揺動して、ワークWを打撃することになる。この際、レバー26は支点Aを中心に自由に揺動するので、ハンマー手段25による衝撃の反力を吸収することができる。このため、レバー26は反力吸収機構(枢支部28)にて支持されているといえる。
【0038】
なお、前記小径ローラ31の近傍には、ハンマー手段25のレバーの高さ位置を検出する近接センサ43が配置されている。位置検出センサとしては、変位センサを用いることもできる。この近接センサは、レバー短片26bの下降端を検出する目的と、錘が所定の振り上げ角から下降端に達するまでの所要時間の計測に用いる。所要時間の計測を行う方法としては、近接センサ以外の場合は、非接触式のフォトセンサや差動トランスなどの接触式センサであってもよい。
【0039】
この装置は、打撃位置及び打撃力が自動的に設定されて、芯出し動作が行われる。このため、図1に示すように制御部81が設けられる。すなわち、前記回転テーブル1等はケーシング80内に収納され、このケーシング80に制御部81が付設されている。
【0040】
制御部81としては、図8に示すように、ワークWの偏芯量の収束値を設定する設定手段75と、ワークWの偏芯量を検出する変位検出手段70と、データテーブル収容手段76と、制御手段77とを備える。
【0041】
設定手段75にて設定される収束値は、許容できるワークWの芯ずれの収束値であって、本発明では、この収束値以内になるまで芯出し動作が行われる。変位検出手段70は、図4に示すように、ワークWの偏芯大きさを検出する変位センサ71と、前記テーブル1の回転角位相を検出する位相検出センサ72とを備える。なお、変位センサ71は、基台10の基板14から立設される支持柱79に設置されている。支持柱79は、支柱部79aと、この支柱部79aの上端に連設される受け盤79bとを備える。
【0042】
変位センサ71は衝撃力付与構造3に近接して配置される。変位センサ71は、ワークの偏芯大きさを検出することができればよいので、非接触式であっても、接触式であってもよく種々のタイプのものを使用することができる。
【0043】
位相検出センサ72は、この場合、近接センサ73を使用している。近接センサとは、リミットスイッチやマイクロスイッチなどの機械式スイッチにかわるもので非接触で検出物体が近づいたことを検出するセンサである。おもな近接センサは動作原理の違いにより、次の3つのタイプに大別される。電磁誘導を利用した高周波発振型、磁石を用いた磁気型、静電容量の変化を利用した静電容量型の3つである。なお、この近接センサ73も、図示省略するが、基台10の基板14から立設される支持柱に設置される。
【0044】
この実施形態では、回転テーブル1の外周面1aに周方向に沿って所定ピッチ(定ピッチ)に複数の凹部(ドグ)74を設け、この凹部(ドグ)74を近接センサ73にて検出するようにしている。すなわち、凹部(ドグ)74を近接センサ73にて検出することによって、テーブル1が1周する時のパルス数をカウントするようにしている。
【0045】
制御手段77は、変位センサ71で得られた偏芯量とテーブル1の回転角位相を検出する近接センサ73との情報から、偏芯の最大位置(回転角位相)を演算する。また、どの位置をどのデータテーブル(前記データテーブル収容手段にて収容されているデータテーブル)の条件(打力)で叩けば良いかを決定して、ハンマー手段25に指令を出す。また、予め設定した収束値以内に偏芯量が収まるまで芯出し指令を出す。変位検出手段70と制御手段77の制御は,PLC(Programable Logic controller)を用いて行われる。
【0046】
打角(打力または衝撃力)を選択する前記データテーブルは、ハンマー手段25のレバー26を振り下ろす角度を決めるための1軸アクチュエータである上下動機構46による連結用ピン49の位置決め高さと、振り下ろし角(レバーのなす角度)の状態から振り下ろされて錘27がワークWに衝突するまでの時間(角速度)の2種類を作成する。このデータテーブルは例えば5段階程度用意しておく。
【0047】
この際、ワーク外周のハンマー手段25の近傍にダイヤルゲージを当てて、手動操作により10回程度の叩き動作を行い、その時のワークWの移動量(芯ずれ補正量)のサンプリング(ダイヤルゲージによる測定)を行って、移動量の平均値を求める。これらの作業を5段階行う。この場合、上下動機構46の位置決め(データテーブルで設定する位置決め高さ)後にシリンダ機構32にてレバー26を持ち上げ、連結用ピン49を前進させてレバー26の嵌合孔55に連結用ピン49の先端部を嵌合させ、レバー26を振り下ろし高さに位置決めし、シリンダ機構32のピストンロッド32bを下降させる。その後、レバー26の嵌合孔55から連結用ピン49の嵌合を解除する。これによって、レバー26がその支点Aを中心に矢印Cのように揺動して、錘27にてワークWの外周面を打撃することができる。
【0048】
次に、前記のように構成された芯出し装置を使用した芯出し方法を図9等を用いて説明する。まず、ステップS1に示すように、このワークWに対する芯出し収束値を設定する。次に、ステップS2に示すように、ワーク(被加工物)Wを回転テーブル1に搭載する。すなわち、ワーク受け13上に載置する。この際、ステップS3に示すように、ラフガイド18に大まかな芯出しを行う(実施する)。以上が準備工程である。
【0049】
次にステップS4に示すように、自動スタートを指令する。これによって、ステップS5に示すように、位相検出センサ72(変位計測用センサ)をワーク(被加工物)Wに接触させる。その状態で、ステップS6に示すように、回転テーブル1の回転駆動が開始される。この回転にともなって、ステップS7に示すように、ワーク(被加工物)Wの偏芯量を変位センサ71にて計測する。
【0050】
ステップS8に示すように、芯ずれの最大値と回転テーブル1の回転角度位相を演算して、ステップS9に示すように、データテーブルから最適な打力を選定する。そして、ステップS10に示すように、ハンマー手段25に芯出し指令を指示する。
【0051】
偏芯量を検出する変位センサ71と芯出し動作を行うハンマー手段25との強調動作について説明する。この際、回転テーブル1の外周に一定間隔(決められた角度)で設けた凹部(ドグ)74と回転テーブル1近傍に設けた近接センサ73により、テーブル1が1周する時のパルス数をカウントできるようにする。また、機械的に設けた凹部(ドグ)74では細かな間隔が取れないため、電気的に必要に応じて分割を行い、角度検出の精度を上げる。そして、回転テーブル1には、1周する間に1回出力する原点センサを設ける。
【0052】
設定されたテーブル回転数によって得られる角速度を求める。以上の条件で得られる角速度と位相検出用近接センサ及び原点センサから得られたデータを元に、テーブル1の原点位置から見て何度の位置に振れの最大位置があるかを特定する。この特定された情報を使って、偏芯の最大位置に対してハンマーの叩くタイミング(進み角)を演算する。これらの制御により、回転テーブル1の設定速度を変更しても、常に変位センサ71で求めた偏芯最大位置からどの程度テーブルを進めた位置を叩けばよいかが分かる。当然、レバー26の振り下ろし角を大きくすると、ハンマー手段25が旋回運動する角速度が速くなるためデータテーブルで得られる条件も考慮して叩き位置を演算する。
【0053】
データテーブルのパラメータから得られた1軸アクチュエータ(上下動機構46)の高さ方向の位置決めを行う。次に、シリンダ機構32のピストンロッド32bを延ばし、レバー26の短片26bを持ち上げ、この状態で、シリンダ機構51のピストンロッド51bを延ばし、連結用ピン49をレバー26の短片26bの嵌合孔55に嵌合させる。これによって、レバー26の打角が決定される。その後、シリンダ機構32のピストンロッド32bを縮めて、ピストンロッド32bをレバー26の小径ローラ31から離間させる。そして、レバー26の嵌合孔55から連結用ピン49の嵌合を解除する。これによって、レバー26がその支点Aを中心に矢印Cのように揺動して、錘27にてワークWの外周面を打撃することができ、芯出し動作を行うことができる。
【0054】
その後は、ステップS11へ移行して、芯ずれが収束値以内かを判断する。すなわち、芯ずれが収束値以内であれば、芯出し動作を終了(完了)し、芯ずれが収束値に入っていなければ、ステップS7に戻る。
【0055】
本発明では、検出された偏芯量に応じて、ハンマー手段25にてワークWに対して衝撃力を付与すればよく、簡単に芯出しを行うことができる。
【0056】
検出した検出値に基づいて最適打力を予め設定された条件から選択するものであるので、最適な芯出し行うことができ、比較的高精度の芯出しを行うことができる。
【0057】
レバー26の旋回角の大きさと旋回速度とで決まる角速度によってワークWへ衝撃力を付与するものでは、支点Aを中心とした錘27の旋回運動による衝突エネルギー(衝撃力)を付与することになる。このため、水平方向に物体を移動させる押圧力に比べて小さい力で物体を動かすことが可能である。しかも、ハンマー手段25への衝撃反力を緩和することができ、装置としての耐久性の向上を図ることができ、長期にわたって安定した芯出しを行うことができる。また、ハンマー手段25自体が反力吸収構造を構成するので、反力吸収構造を別途構成する必要がなく、装置全体としての省スペース化及びコスト低減を図ることができる。
【0058】
本発明の方法によれば、収束目標値になるまで芯出しすることができ、高精度の芯出しを行うことができる。
【0059】
ところで、ワークWが縦型旋盤及び横型旋盤における加工物であったり、縦型研削盤及び横型研削盤における加工物であったりする。このように、本発明にかかる芯出し装置は、縦型旋盤及び横型旋盤に用いたり、縦型研削盤及び横型研削盤に用いたりすることができ、旋盤や研削盤による加工精度の向上を図ることができる。また、ワークの偏芯量を検出後に、ワーク回転を停止させた状態でも偏芯量を修正することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、予め用意するデータテーブルは、5段階に限るものではなく、増減は任意である。また、ワークの移動量(芯ずれ補正量)のサンプリングを行う際の手動操作による打撃の回数も10回に限るものではない。また、近接センサ用の凹部74の数の増減も任意であるが、少なすぎると、測定精度が低下し、多すぎると、加工性に劣ることになる。このため、ワークWの大きさ、回転テーブル1の回転速度等に応じて、凹部74の数を種々設定できる。また、凹部74の大きさとしては、使用するセンサが検出可能な範囲で種々変更することができる。錘27の大きさや重さも、最適打力を得る範囲で種々変更することができる。なお、ワークWとしては、ベアリングの内輪や外輪に限らず、輪状加工物ではない円盤状加工物等であってもよい。また、ワーク姿勢は、軸垂直であっても軸水平であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の芯出し装置の正面図である。
【図2】前記芯出し装置の背面図である。
【図3】前記芯出し装置の平面図である。
【図4】前記芯出し装置の要部拡大平面図である。
【図5】前記芯出し装置のハンマー手段を示す拡大図である。
【図6】前記芯出し装置のハンマー手段の平面図である。
【図7】前記芯出し装置のハンマー手段の要部拡大図である。
【図8】前記芯出し装置の制御部の簡略ブロック図である。
【図9】本発明の芯出し方法のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0062】
1 回転テーブル
25 ハンマー手段
26 レバー
27 錘
70 変位検出手段
71 変位センサ
72 位相検出センサ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを回転させるための回転テーブルと、この回転テーブルを介して回転しているワークの偏芯量を検出する変位検出手段と、この変位検出手段にて検出された偏芯量をワークへの衝撃にて修正するハンマー手段とを備えたことを特徴とする芯出し装置。
【請求項2】
前記変位検出手段は、ワークの偏芯大きさを検出する変位センサと、前記テーブルの回転角位相を検出する位相検出センサとを備え、変位センサにて検出した偏芯大きさと位相検出センサにて検出した回転角位相とに基づいて、予め設定された条件から最適打力を選択することを特徴とする請求項1に記載の芯出し装置。
【請求項3】
ハンマー手段は、基端側の支点を中心とした旋回運動が可能なレバーと、このレバーの先端に付設される錘とを備え、錘とレバーの旋回角の大きさと旋回速度とで決まる角速度によってワークへ衝撃力を付与することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の芯出し装置。
【請求項4】
前記ワークが縦型旋盤及び横型旋盤における加工物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の芯出し装置。
【請求項5】
前記ワークが縦型研削盤及び横型研削盤における加工物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の芯出し装置。
【請求項6】
ワークの偏芯量を検出後に、ワーク回転を停止させた状態でも偏芯量を修正することができることを特徴とする請求項1に記載の芯出し装置。
【請求項7】
回転テーブルを介して回転しているワークの偏芯量を検出し、ハンマー手段にてワークへ衝撃力を付与して前記偏芯量を修正する芯出し動作を行い、偏芯量が予め設定された収束目標値まで前記芯出し動作を繰り返すことを特徴とする芯出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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