苗植付装置
【課題】 苗のせ台を非作業姿勢に切り換える際の前作業負担を軽減できる苗植付装置を提供する。
【解決手段】 苗のせ台17と横送り駆動螺軸20とを連結する連結部材23を、苗のせ台17に連係された第1連結部材23Aと螺軸20に連係された第2連結部材23Bとで構成する。許容機構Cを、第1連結部材23Aに形成された鉤状の長孔23aと、第2連結部材23Bに設けられ長孔23aに係合する係合ピン23bとで構成してある。
【解決手段】 苗のせ台17と横送り駆動螺軸20とを連結する連結部材23を、苗のせ台17に連係された第1連結部材23Aと螺軸20に連係された第2連結部材23Bとで構成する。許容機構Cを、第1連結部材23Aに形成された鉤状の長孔23aと、第2連結部材23Bに設けられ長孔23aに係合する係合ピン23bとで構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗のせ台及びその苗のせ台を横送り駆動可能に構成している苗植付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
苗のせ台を横送り駆動するのに、植付フィードケースから横送り駆動のための駆動軸を横側方に延出するとともに、その横送り駆動軸の螺旋溝に係合して左右移動する移動体を取り付けていた。一方、苗のせ台の走行機体に向かう背面にはブラケットが取付られており、そのブラケットと移動体とをボルトで連結固定して、横送り駆動軸で苗のせ台を横送り駆動していた(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−95337号公報(段落番号〔0026〕、図1、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した構成において、苗のせ台の背面側に位置する機器に対してメインテナンス作業を行う場合に、その背面側は上記した横送り機構や苗のせ面のマット状苗等を苗取り出し口に送る縦送り機構があるところから、メインテンス作業を行うのに十分なスペースが採り難い面がある。
そこで、苗のせ台を非作業姿勢に切り換えて苗のせ台の背面側のスペースを確保する方法が考えられるが、この場合に問題となるのは、苗のせ台と横送り駆動軸との連係の解除する前作業が必要であるということである。
つまり、上記した連係構成においては、ブラケットと移動体とをボルトで連結固定しているので、これを解除するには、人為的にボルトを取外す必要がある。
しかし、ボルトを取外す前作業を行う場合には、苗のせ台は作業姿勢に維持されたままであるので、以前として狭い空間での作業を強いられるところから、作業負担が重いものとなる虞があった。
【0005】
本発明の目的は、苗のせ台を非作業姿勢に切り換える際の前作業負担を軽減できる苗植付装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成)
本発明の第1特徴は、苗のせ台を作業姿勢と非作業姿勢とに切換可能に構成するとともに、前記苗のせ台を横送り駆動する駆動軸と前記苗のせ台とを連結部材を介して連係し、前記苗のせ台と前記連結部材、及び、前記連結部材と前記駆動軸との連係状態を維持しながら、前記苗のせ台を非作業姿勢に切換えることを許容する許容機構を前記連結部材に設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
(作用効果)
つまり、非作業姿勢に苗のせ台を切り換える場合には、苗のせ台を非作業姿勢に向けて切換え操作すると、許容機構が有効に機能し、連結部材は苗のせ台と駆動軸との連係状態を解除することなく、苗のせ台を非作業姿勢に切換えることを許容する。
このことによって、苗のせ台を非作業姿勢に切り換える為に、連結部材の苗のせ台等との連係を解除する為に、苗のせ台背面側の狭いスペースで前作業をする必要がなく、また、苗のせ台を非作業姿勢に切り換えて、広いスペースを確保してのメインテナンス作業を行うことができる。
【0008】
(構成)
本発明の第2特徴は、前記連結部材を前記苗のせ台に連係された第1連結部材と前記駆動軸に連係された第2連結部材とで構成し、前記許容機構を、前記第1連結部材に形成された鉤状の長孔と、第2連結部材に設けられ前記長孔に係合する係合ピンとで構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
(作用効果)
本発明の第2特徴によれば、苗のせ台を非作業姿勢に向けて移動させると、径合ピンが鉤状の長孔内を相対的に位置変更しながら移動するので、第1連結部材と第2連結部材の連係状態を維持することができながら、第1連結部材と苗のせ台、駆動軸と第2連結部材との連係は変らない。
しかも、許容機構として、鉤状長孔と係合ピンを設けるという簡易な構造によって達成できたので、製作上も製作コスト面でも大変有利である。
【0010】
(構成)
本発明の第3特徴構成は、前記苗のせ台の苗を苗取出口に向けて送る縦送り機構と前記縦送り機構に動力を伝達する駆動部材とを前記苗のせ台に設けるとともに、前記駆動部材に当接して駆動力を付与する出力部材を植付駆動部に設け、前記駆動部材を前記出力部材との当接範囲から外れた待機位置に保持する保持機構を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
(作用効果)
本発明の第3特徴によると、苗のせ台を非作業姿勢に切り換えると、駆動部材と出力部材との当接状態が解除される。そうすると、出力部材の位置が定まらないものとなる。したがって、出力部材の位置が定まらない状態で苗のせ台を作業姿勢に復帰させると、出力部材が駆動部材と当接する範囲に復帰し得ないことがあり得る。
そこで、本発明の第3特徴においては、保持機構によって、苗のせ台を非作業姿勢に切り換える際に、出力部材を一旦当接範囲から外れた位置に保持する。これによって、苗のせ台を非作業姿勢に切り換える際に、出力部材が駆動部材と干渉することなく、かつ、一定の姿勢で苗のせ台の非作業姿勢への切り換わりに追従する。
そして、苗のせ台を作業姿勢に復帰させる際にも、出力部材と駆動部材とは接触することはなく、苗のせ台を作業姿勢に切り換えた状態で、保持機構の保持状態を解除すれば、出力部材を駆動部材との当接範囲に戻すことができる。
【0012】
(構成)
本発明の第4特徴は、前記苗のせ台を前記非作業姿勢に切り換えた状態で、前記苗のせ台と、その苗のせ台を支持する支持部とに亘って掛け渡されて、前記非作業姿勢に維持する保持部材を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
(作用効果)
本発明の第4特徴によると、苗のせ台を非作業姿勢に維持する構成として、苗のせ台とその苗のせ台を支持する支持部とに亘って掛け渡されるだけの保持部材を設けることによって、簡単な機構で安定した非作業姿勢を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、前車輪1、後車輪2を備えた走行機体5の前部にエンジン3、後部に運転席4を配置するとともに、運転席4の後方に施肥装置を配置し、走行機体5の後端に、油圧シリンダ6で駆動される昇降リンク機構7を介して苗植付装置10を取り付けて田植機を構成してある。
【0015】
苗植付装置10の構成について説明する。
図1〜図3に示すように、苗植付装置10は、昇降リンク機構7の後端に取り付けられ、エンジン3からの動力伝達を受ける植付フィードケース8を設けるとともに、機体横幅方向に沿って横向きメインフレーム9を配置し、植付フィードケース8を横向きメインフレーム9の左右中間位置に配置し、横向きメインフレーム9より後方に向けて複数個の植付伝動ケース11を平行な状態に配置してある。各植付伝動ケース11には苗植付機構13が設けられており、植付フィードケース8からの動力を各植付伝動ケース11に伝達し、苗植付機構13を駆動するように、植付駆動部が構成されている。
【0016】
図1〜図3に示すように、苗植付機構13の上方側には、マット状苗を載置する苗のせ台17が設けてあり、苗のせ台17は苗植付機構13の植付動作に連動して左右方向に一定ストロークで往復移動可能に構成される。ここで、苗のせ台17の横スライド移動機構について説明する。
【0017】
図1〜図3に示すように、横向きメインフレーム9の両端に支柱12,12を立設するとともに、支柱12の上端に苗のせ台17の上部をスライド自在に受け止める上部ガイド機構Aを設けてある。一方、植付伝動ケース11における苗植付機構13の前方側に、苗のせ台17の下端部を受け止めてその苗のせ台17のスライド移動をガイドする支持部としての摺動レール14を設けてある。苗のせ台17は上部ガイド機構Aと下方の摺動レール14とで受け止められ、左右に摺動移動可能に構成されている。
【0018】
ここで、上記スライド機構の詳細な説明をすると、まず、上部ガイド機構Aについて説明する。図3〜5に示すように、支柱12に属するものとしては、支柱12の上端にブラケット12Aを取り付け、ブラケット12Aから上向きに棒状部材12Bを立設し、この棒状部材12Bにガイドローラ12Cを取り付けたものが設けられている。一方、苗のせ台17側に属するものとしては、苗のせ台17の走行機体3に面する背面側に、横向きのガイドフレーム17Aを固定し、このガイドフレーム17Aは断面チャンネル状のもので、開口を下向きにした状態で苗のせ台17の背面に取り付けられてある。
【0019】
以上、上部ガイド機構Aは、前記した支柱12に属するものと、苗のせ台17側に属するものとで構成されており、ガイドフレーム17Aの内部空間にガイドローラ12Cを嵌め込み、苗のせ台17の上部をスライド移動自在に案内する機能を発揮する。
【0020】
次に、苗のせ台17の下部側でのスライド支持構造について説明する。図3〜図5に示すように、苗のせ台17の走行機体に向かう裏面側で前記したガイドフレーム17Aの下方に同じく左右幅一杯に亘る支持部材17Bを取り付け固定するとともに、支持部材17Bの下方に前記した摺動レール14を配置してある。図16〜図21に示すように、支持部材17Bを上下から挟み込むように、上側に第1摺動部材15A、下側に第2摺動部材15Bを配置する。第2摺動部材15Bにヘッド部分を埋め込まれ上向きにネジ部分を突出させたスタッドボルト16を設け、そのスタットボルト16を第1摺動部材15Aと支持部材17とに貫通させて、支持部材17Bと第1、第2摺動部材15A、15Bとを一体でスライド移動自在に構成する。第2摺動部材15Bは摺動レール14に支持されるように、支持部材17Bと摺動レール14との間に位置する。
【0021】
図16〜図21に示すように、摺動レール14の上面にはスライド案内板14Aがビス止めされており、第2摺動部材15Bを載置案内するように構成してある。第2摺動部材15Bは、断面アングル状の長尺部材であり両端に給油パイプ15bを立設し、断面アングル状の長尺部材の縦壁面15aを苗のせ面側に配置して取り付けられており、給油パイプ15bの下方の底面を上方に立ち上げて潤滑油の貯留空間aとして利用する構成に形成されている。
【0022】
図16及び図21に示すように、貯留空間aにはスポンジ板18を嵌め込んで使用することも可能であり、潤滑油の保持能力を高める構成を採ってもよい。
図16〜図18に示すように、第2摺動部材15Bに給油パイプ15bを設けているが、この給油パイプ15bを通して潤滑油(グリス)を供給する為に、苗のせ面を仕切る仕切壁17Fに取付け供給パイプ17aと給油パイプ15bとをゴムホース19で連結して、苗のせ台17の苗のせ面側から給油作業を行えるようになっている。
このように、第2摺動部材15Bに給油パイプ15bを設けることによって、部品点数の削減が可能である。しかも、摺動部材15と苗のせ台17の背面との間に間隙を設けてあるので、その間に苗の根詰まり等を回避でき、油の潤滑を阻害することが少ない。
【0023】
図16及び図17に示すように、第2摺動部材15Bにおける左右給油パイプ15bと上下に貫通するスタッドボルト16との間には、弾性突起15c、15cが形成してあり、支持部材17Bに形成された貫通孔17b、17bに下から貫通して貫通孔17b、17bの縁部に圧接して、第2摺動部材15Bの取り付け状態を強固にする機能を発揮する構成が採られている。
【0024】
第1摺動部材15Aについて説明する。図18、図19及び図21に示すように、第1摺動部材15Aは、アングル状の短尺部材であり、上壁15dを支持部材17Bに載置するとともに、縦壁面15eを摺動レール14の走行機体5側に面する外面に沿って配置し、縦壁面15eの下端部を僅かに屈曲形成して、摺動レール14の凹面部14aに係合させて、摺動レール14との係合度を高める構成が採られている。
【0025】
図18、図19及び図21に示すように、第1摺動部材15Aの上壁15dに、摺動方向とは直交する方向に向けて切欠部15fが形成してあり、この切欠部15fは、平面視において、クランク状を呈している。クランク状の切欠部15fは、上壁15dの苗のせ面側の内端から摺動レール14の外面に対応する外端に向かって中間部に至る第1誘導切欠部15gとその第1誘導切欠部15gの終端となる中間部から摺動方向に沿った状態に形成された第2誘導切欠部15hとを連通する状態で形成されている。第2誘導切欠部15hの終端から前記した外端に掛けては、第1誘導切欠部15gに平行な第3誘導切欠部15kが形成してあり、これら3つの誘導切欠部15g、15h、15kでクランク状の切欠部15fを形成してある。
【0026】
図19及び図21に示すように、このように第1誘導切欠部15gを形成することによって、取付用のスタットボルト16を取り付けた状態であっても、そのスタットボルト16をかわして第1摺動部材15Aを前記外端側に引き出すこと、及び、前記外端から内端に向けて装入することができるようになっており、取付取外しが容易になっている。第2誘導切欠部15hに取付用のスタットボルト16を挿通するボルト挿通部Hを形成しそのボルト挿通位置で締め付け固定すれば、第1摺動部材15Aは外端側に抜け出ることはなく、取付固定状態が安定する。
【0027】
第2誘導切欠部15hと第1、第3誘導切欠部15g、15kとの交点の外側には、リブ15m、15mが夫々形成されており、第2誘導切欠部15hのボルト挿通部Hにスタットボルト16を取り付けた状態で、第1摺動部材15Aを第2誘導切欠部15hに沿って移動させようとしても、スタットボルト16に取り付けたナット16Aがリブ15mに当接して第1摺動部材15Aの位置変動が阻止される。
以上のような構成によって、第1摺動部材15A等の取付取外しを容易に行うことができるとともに、不測に脱落しないようになった。
【0028】
横送り機構Bに付いて説明する。図3、図5及び図14に示すように、前記した植付動力をエンジン3側から受ける植付フィードケース8から横側方の一側に向けて駆動軸としての螺軸20を延出するとともに、延出端をブラケット21で支持している。螺軸20の中間位置には、螺軸20に形成した螺旋溝20Aに係合するコマ部材22Aを収納した移動体22を外嵌装着してある。この移動体22は、螺軸20を軸芯回りに回転させることによって、螺軸20の軸芯に沿って往復移動することとなる。
【0029】
移動体22と苗のせ台17とを連結する連結部材23について説明する。図3、図5及び図14に示すように、苗のせ台17の背面に取付台17Cを取付固定するとともに、取付台17Cから第1連結部材23Aを延出している。第1連結部材23Aの先端部分には、鉤状の長孔23aが形成してある。一方、移動体22に第2連結部材23Bを設けてあり、この第2連結部材23Bの先端部に、前記長孔23aに係合する係合ピン23bを設けてある。
以上のような構成によって、螺軸20を軸芯回りに回転させると、移動体22が往復移動し、移動体22に連結部材23で繋がった苗のせ台17が往復移動することになる。
ここに、第1連結部材23Aと第2連結部材23Bとで連結部材23を構成する。また、鉤状の長孔23aと係合ピン23bとを、連結部材23と駆動軸としての螺軸20との連係状態を維持しながら、苗のせ台17を非作業姿勢に切換えることを許容する許容機構Cと称する。
【0030】
苗取出し部について説明する。図20に示すように、苗のせ台17における苗植付機構13の植付爪13Aが通過する部分に苗取出口17Dが形成されており、苗取出口17Dから下向きに苗取出ガイド17Eを形成してある。苗取出ガイド17Eは左右一対のガイド体17c、17cとからなっており、ガイド体17c、17cの上端には、図20(ロ)(ハ)に示すように、面取り17dが施されており、取り出し苗の傷つきを防止するようにしてある。
【0031】
図4及び図5に示すように、苗取出口17Dの上方には、苗のせ面上のマット状苗をその苗取出口17Dに向けて繰り出す縦送り機構Eを設けてある。縦送り機構Eは、苗のせ台17の下端側に駆動輪体24を設けるとともに、駆動輪体24の上方に従動輪体を設け、両輪体24に亘って駆動ベルト26を掛け渡して、構成してある。駆動ベルト26の表面には多数の突起が形成してあり、突起がマット状苗を係止してそのマット状苗の移動を効率よく行えるようになっている。
【0032】
図6〜図8に示すように、駆動輪体24と同一の駆動軸25に駆動部材としての駆動アーム27を取り付けてあり、駆動アーム27は巻バネ28によって待機位置に戻し付勢されるとともに、ワンウエイクラッチ(図示せず)によって、戻り時に遊転すべく構成してある。
一方、植付フィードケース8の螺軸20突出位置とは異なる位置より、左右方向に向けて出力軸29を突出させて出力軸29の突出部分に常時回転する出力部材としての出力アーム30を取り付ける。
【0033】
以上のような構成により、螺軸20を回転させて苗のせ台17を横移動させると、苗のせ台17の横移動ストローク端において、出力アーム30と駆動アーム27との横移動方向での位置が一致し、出力アーム30によって駆動アーム27がバネ付勢力に抗して一定回転範囲だけ駆動される。この一定回転範囲だけ駆動されるとワンウエイクラッチによって駆動輪体24を駆動し、駆動ベルト26を駆動する。これによって一定量だけマット状苗が苗取出口17Dに向けて繰り出される。
【0034】
次に、駆動アーム27を待機位置に保持する保持機構Fについて説明する。図5〜図11に示すように、駆動輪体24の駆動軸25に駆動アーム27とともに規制アーム31を遊転自在に取り付けている。規制アーム31の上面には係止頭部31Aが設けてあるとともに、駆動アーム27の上面にもブラケット27Aが設けてあり、ブラケット27Aに調整ネジ32を取り付け、調整ネジ32のブラケット27Aより下向きに突出した先端を規制アーム31の係止頭部31Aに当接する配置構成となっている。
【0035】
このように、調整ネジ32を規制アーム31に当接させているだけであるので、出力アーム30で駆動アーム27を駆動する場合には、駆動アーム27は規制アーム31から離間する状態となるだけであるので、縦送り時には規制アーム31は影響しない。
【0036】
図6〜図9に示すように、駆動輪体24と従動輪体との間の中間高さ位置で二つの縦送り機構E,Eの間の位置において、苗のせ台17の背面に支持ブラケット35を取付け、支持ブラケット35に保持機構Fとしての引き上げ操作具34を支持するように構成する。引き上げ操作具34は、上端に円弧状に握り部34Aを形成するとともに、下端に鉤状係止部34Bを形成し、握り部34Aと鉤状係止部34Bとの間に鍔部34Cを形成してある。
【0037】
図9〜図11に示すように、引き上げ操作具34の鉤状係止部34Bを係止頭部31Aに形成した横向き孔31aに貫通させて鉤状係止部34Bを係止頭部31Aに係合させる構成を採っている。このように、鉤状係止部34Bを係止頭部31Aに係合させる構成ことによって、図8に示すように、円弧状の握り部34Aを持って引き上げ操作具34を引き上げ操作すると、規制アーム31が揺動して引き上げられる。この場合に、駆動アーム27は調整ネジ32を規制アーム31の係止頭部31Aに当接させているので、規制アーム31の上方揺動変位を受けて上方に連動揺動作動する。
これによって、駆動アーム27は出力アーム30と当接して駆動力を受ける作動範囲から脱出して待機位置に退避することとなる。ここに、規制アーム31、及び、引き上げ操作具34を、駆動アーム27を待機位置に保持する保持機構Fと称する。
【0038】
図12に示すように、引き上げ操作具34を支持すべく設けてある支持ブラケット35には、幅広部35aと幅狭部35bとを一体形成した抜き孔35Aを形成してあり、幅広部35aの幅は引き上げ操作具34の鍔部34Cの径よりも幅広であり、幅狭部35bの幅は引き上げ操作具34の鍔部34Cの径よりも幅狭であり、かつ、引き上げ操作具34の鍔部34Cと鉤状握り部34Aとの間の棒状部分の径よりも幅狭である。
【0039】
図7に示すように、前記した棒状部分を抜き孔35A内に位置させた状態では駆動アーム27は出力アーム30との当接可能な姿勢にあり、図8に示すように、この状態から引き上げ操作具34を引き上げて、鍔部34Cを、幅広部35aを通過させ、鍔部34Cを幅狭部35bの方に移動させて幅狭部35bの縁部に当接載置することによって、引き上げ操作具34を支持ブラケット35に支持できる。この場合に規制アーム31が引き上げ操作具34によって引き上げられ、これによって前記したように、駆動アーム27が出力アーム30とは当接しない待機姿勢に保持される。
【0040】
次に、苗取量調節機構Dについて説明する。図5〜図9に示すように、摺動レール14を支持する支持台36を、植付伝動ケース11の側面に上下動自在に装着するとともに、支持台36の上端位置に係合凹部36Aを設ける。係合凹部36Aに係合する調節アーム37を設け、図示してはいないが苗取量調節操作具に調節アーム37を連係し、調節アーム37で支持台36を上下動させて、摺動レール14とともに苗のせ台17の全体を上下移動させて苗のせ台17と植付伝動ケース11との相対高さを変更して、植付爪13Aの苗取量軌跡に対する苗取出口17Dの相対位置を変更し、苗取量を調節できるように構成してある。
【0041】
図5〜図9に示すように、調節アーム37と一体揺動する連動アーム38をその調節アーム37と同一軸に装着し、調節アーム37の苗取量調節のための揺動作動に連動して連動アーム38を連動揺動させるとともに、この連動アーム38で規制アーム31を揺動駆動すべく構成する。そうすると、規制アーム31の揺動によって、駆動アーム27も同じように揺動することとなる。
例えば、苗取量を小さくする為に、苗のせ台17を持ち上げた場合には、図6及び図7に示すように、調節アーム37の回動作動によって連動アーム38を介して規制アーム31が一定角度だけ回動し、駆動アーム27を待機位置より僅かに上方に移動させて、その位置があらたな待機位置となる。
【0042】
そうすると、出力アーム30によって駆動される駆動アーム27の出力アーム30との当接開始位置(待機位置)aがa’に変位しているので、その分だけ駆動アーム27の揺動角が小さくなり、そのことによって、縦送り量が小さくなる。
このような構成によって、苗取量調節に連動して縦送り量を調節できることとなっている。
【0043】
次に、苗のせ台17のメインテナンス姿勢に切り換える構造について説明する。図5に示すように、支柱12の上端にガイドローラ12Cを取り付けているブラケット12Aを設けているが、通常は、そのブラケット12Aは上方が枢支ピン12aで下方がボルト12bで固定されている。そして、メインテナンス時等においては、下方側のボルト12bを外し、上方側の枢支ピン12aを旋回中心として、苗のせ台17全体を後方側に向けて外開き状態に切り換えることができる。
【0044】
このように、外開き状態に切り換える際に、苗のせ台17の下端部の係合状態については、次ぎのように、係合状態を解除しなければならない。つまり、図9に示すように、摺動レール14については植付伝動ケース11に支持して苗のせ台17から分離する。これにともなって、摺動レール14と苗のせ台17の支持部材17Bとを連結結合させていた第1摺動部材15Aと第2摺動部材15Bとを取外す。
これによって摺動レール14と苗のせ台17の支持部材17Bとの連係を解除することができる。
【0045】
一方、引き上げ操作具34によって、規制アーム31を引き上げ駆動アーム27を待機位置に退避させる。これによって、自由揺動可能な規制アーム31とバネ付勢された駆動アーム27とを、苗のせ台17がメインテナンス姿勢に切り換わった場合にも、規制アーム31が垂れ下がり状態となり、その垂れ下がり状態で苗のせ台17を元の姿勢に復帰させた場合に、連動アーム38や出力アーム30との係合が行えなくなる点を回避できる。
【0046】
以上のところから、苗のせ台17の上部および下部と、苗のせ台17を支持する植付伝動ケース11及び支柱12等との連係を断つことができる。そして、苗のせ台17の上下中間位置において、苗のせ台17の横送り用螺軸20との連係は前記したように連結部材23によって、連係状態を解除することなく苗のせ台17の分離が可能である。
【0047】
つまり、図5、図13〜図15に示すように、第1連結部材23Aと第2連結部材23Bとで連結部材23を構成しているが、苗のせ台17を通常の作業状態に設定している場合には、図5に示すように、第1連結部材23Aの鉤状の長孔23aに対して第2連結部材23Bの係合ピン23bが、長孔23aの上端位置にある。この状態から苗のせ台17を前記した旋回中心回りに揺動解放操作すると、第2連結部材23Bが螺軸20を中心として一定角度だけ回動するとともに、第2連結部材23Bの係合ピン23bが第1連結部材23aの長孔23aの他方の端部に当接する位置まで相対的に移動する。これによって、連結部材23の連係を維持しながら、苗のせ台17を非作業姿勢に切換えることを許容する許容機構Cを構成することができたのである。
【0048】
苗のせ台17を開き操作した状態を維持する機構について説明する。維持する機構としては、図13に示すように、開き操作された状態の苗のせ台17における支持部材17Bと、植付伝動ケース11に支持された摺動レール14に亘って保持部材としての支え棒39を掛け渡す。支え棒39としては、図4、図5、及び、図16に示すように、苗のせ台17の左右側端に1本づつ設けてあり、これによって、苗のせ台17の復帰揺動が阻止される。支え棒39は、チャンネル形状に棒状材を折り曲げ形成されたもので、直線棒材39Aの両端に折り曲げ形成されて平行姿勢に設定された二つの受止棒材39B、39Bの部分を摺動レール14と支持部材17Bとの角部に当て付けて支え機能を発揮する。
【0049】
図16及び図18に示すように、苗のせ台17が作業姿勢にある通常時においては、支え棒39は、苗のせ台17の側端に形成された取付具40に装着されている。取付具40は、縦送り機構Eの駆動輪体24の駆動軸25を支持するブラケット40Aと、ブラケット41の上方に設けられたバネ板製の差込受具40Bとで構成されている。このような取付具40に対してブラケット40Aの支持孔に一方の受止棒材39Bを貫通させ、他方の受止棒材39Bを差込受具40B、40Bに嵌め込み装着して、取付け固定されている。
【0050】
8条植え田植機等で使用する延長摺動レール41を設ける場合の収納構造について説明する。図22〜図24に示すように、延長摺動レール41を取付ブラケット42に固着するとともに、取付ブラケット42を介して延長摺動レール41を本体側の摺動レール14に連結可能に構成する。
【0051】
ここに取付ブラケット42の構造について説明すると、図22〜図24に示すように、取付ブラケット42は、延長摺動レール41を取付固定している取付部42Aと、この取付部42Aに対して直交する姿勢で形成してある繋ぎ部42Bと、繋ぎ部42Bの先端側に位置する装着部42Cとで構成してある。図24に示すように、装着部42Cは、繋ぎ部42Bと同じ姿勢で横側方にやや偏位する状態で設けてある基端部分42aと基端部分42aに対して上向き斜め姿勢に折り曲げ形成されている先端部分42bとからなる。基端部分42aから先端部分42bに掛けて装着用孔42cが形成されている。
【0052】
上記したような構成になる延長摺動レール41を取り付けるには、次ぎのように行う。図23に示すように、本体側の摺動レール14の苗取出口17D近傍であって背面側に、装着台44を設け、その装着台44にネジ取付部を形成してある。その装着台44に対して取付ブラケット42の装着用孔42cを形成した装着部42Cを取付け、操作用の握り部43Aを備えた固定用ネジ43で締め込み固定する。
【0053】
図22に示すように、延長摺動レール41を本体側の摺動レール14に連結して作業姿勢に設定する場合には、取付ブラケット42の基端部分42aを装着台44の表面に合わせる状態で当て付けて、固定用ネジ43で締め付け固定する。そうすると、延長摺動レール41と本体側の摺動レール14の横側端同士が接触する状態で連結される。この場合に、延長摺動レール41の一端には連結用のピン41aと連結板41bとが突設させてあり、延長摺動レール41と本体側の摺動レール14の連結状態においては、連結用のピン41aが本体側の摺動レール14の接続端面に形成された連結用の孔に差込み嵌合され、連結板41bが摺動レール14の矩形断面内に差込み嵌合されて、位置決め機能を担っている。
【0054】
延長摺動レール41を使用しない非作業姿勢に切り換えるには、図22に示すように、固定用ネジ43を僅かに緩めて延長摺動レール41を離間させていく。この場合に、装着台44に取り付けられている取付ブラケット42においては、装着台44に接触していた基端部分42aから先端部分42bに切り換わると同時に、先端部分42bが基端部分42aに対して傾斜する状態にあるので、取付ブラケット42の繋ぎ部42Bや取付部42Aが本体側の摺動レール14に対して横側方に離間するとともに機体前方側にも離間するものとなる。
【0055】
ただし、この状態のままであれば、横側方にはみ出した状態となるので、延長摺動レール14を一旦横側方に引き出した状態で、図23に示すように、装着台44のネジ孔中心Xを中心として延長摺動レール41を半回転させて固定用ネジ43で固定し、本体側の摺動レール14より上方で機体内方側に収納するようにする。
【0056】
〔別実施形態〕
(1) 保持機構Fとしては、引き上げ操作具34で人為的に規制アーム31を人為的に引き上げる操作を行っているが、この引き上げ操作具34の代わりに、自動的に作動するアクチュエータを利用してもよい。また、この実施形態では、引き上げ操作具34で人為的に規制アーム31を引き上げ操作しているが、引き上げ操作具34で直接駆動アーム27を引き上げる構成を採っても良い。
【0057】
(2) 許容機構Cとしは、長孔23aと係合ピン23bとの取付対象を切り換えてもよく、また、長孔23aとしても、鉤状ではなく円弧状の長孔としたり、単に直線的な長孔であってもよい。
【0058】
(3) 横送り駆動軸としては、螺旋溝20Aを有する螺軸20ではなく、通常の螺旋溝を有していないネジ軸であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】施肥装置付き乗用型田植機の全体の側面図
【図2】施肥装置付き乗用型田植機の全体の平面図
【図3】苗植付装置の伝動構造等を示す平面図
【図4】苗のせ台を示す背面図
【図5】苗植付装置の側面図
【図6】保持機構、縦送り機構、苗取量調節機構との連係関係を示す側面図
【図7】保持機構、縦送り機構、苗取量調節機構との連係関係を示し、苗取量調節機構によって苗取量を少なくした状態を示す側面図
【図8】保持機構、縦送り機構、苗取量調節機構との連係関係を示し、保持機構によって縦送り用の駆動アームを出力アームとの当接不能な位置まで持ち上げ待避姿勢に切換えた状態を示す側面図
【図9】図8の状態から、苗のせ台をメインテナンス姿勢に切り換えた状態を示す側面図
【図10】保持機構、縦送り機構、との連係関係を示す正面図
【図11】保持機構を示す分解斜視図
【図12】保持機構の支持ブラケットを示す平面図
【図13】苗のせ台をメインテナンス姿勢に切り換え、保持部材によって支持した状態を示す側面図
【図14】苗のせ台の横送り機構を示す一部切欠き正面図
【図15】横送り機構と苗のせ台とを連結する連結部材を示めし、(イ)は側面図、(ロ)は正面図
【図16】第1、第2摺動部材、及び、保持部材等を装備している苗のせ台の背面図
【図17】第1、第2摺動部材、及び、その摺動部材への給油構造を示す平面図
【図18】摺動部材、及び、その摺動部材への給油構造、保持部材等を装備し、保持部材を取り付ける前の状態を示している苗のせ台の側面図
【図19】第1摺動部材を示す平面図
【図20】苗取出し口の構造を示し、(イ)は側面図、(ロ)は苗取り出し口の構造を示す横断平面図、(ハ)は苗取り出し口の別構造を示す横断平面図
【図21】第1、第2摺動部材、及び、摺動レール等を示す分解斜視図
【図22】(イ)は、延長摺動レールを本体側の摺動レールに一体化した状態を示す平面図、(ロ)は、延長摺動レールを本体側の摺動レールから分離した状態を示す平面図
【図23】(イ)は、延長摺動レールを本体側の摺動レールから分離し、その取付ブラケット部分を示す側面図、(ロ)は、延長摺動レールをX軸芯回りで回転させて、苗のせ台の幅内に位置させた状態を示す平面図
【図24】延長摺動レールと摺動レールとの分解斜視図
【符号の説明】
【0060】
8、11 植付駆動部
14 支持部
17 苗のせ台
20 駆動軸
23 連結部材
23a 長孔
23b 係合ピン
27 駆動部材
30 出力部材
39 保持部材
C 許容機構
E 縦送り機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗のせ台及びその苗のせ台を横送り駆動可能に構成している苗植付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
苗のせ台を横送り駆動するのに、植付フィードケースから横送り駆動のための駆動軸を横側方に延出するとともに、その横送り駆動軸の螺旋溝に係合して左右移動する移動体を取り付けていた。一方、苗のせ台の走行機体に向かう背面にはブラケットが取付られており、そのブラケットと移動体とをボルトで連結固定して、横送り駆動軸で苗のせ台を横送り駆動していた(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−95337号公報(段落番号〔0026〕、図1、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した構成において、苗のせ台の背面側に位置する機器に対してメインテナンス作業を行う場合に、その背面側は上記した横送り機構や苗のせ面のマット状苗等を苗取り出し口に送る縦送り機構があるところから、メインテンス作業を行うのに十分なスペースが採り難い面がある。
そこで、苗のせ台を非作業姿勢に切り換えて苗のせ台の背面側のスペースを確保する方法が考えられるが、この場合に問題となるのは、苗のせ台と横送り駆動軸との連係の解除する前作業が必要であるということである。
つまり、上記した連係構成においては、ブラケットと移動体とをボルトで連結固定しているので、これを解除するには、人為的にボルトを取外す必要がある。
しかし、ボルトを取外す前作業を行う場合には、苗のせ台は作業姿勢に維持されたままであるので、以前として狭い空間での作業を強いられるところから、作業負担が重いものとなる虞があった。
【0005】
本発明の目的は、苗のせ台を非作業姿勢に切り換える際の前作業負担を軽減できる苗植付装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成)
本発明の第1特徴は、苗のせ台を作業姿勢と非作業姿勢とに切換可能に構成するとともに、前記苗のせ台を横送り駆動する駆動軸と前記苗のせ台とを連結部材を介して連係し、前記苗のせ台と前記連結部材、及び、前記連結部材と前記駆動軸との連係状態を維持しながら、前記苗のせ台を非作業姿勢に切換えることを許容する許容機構を前記連結部材に設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
(作用効果)
つまり、非作業姿勢に苗のせ台を切り換える場合には、苗のせ台を非作業姿勢に向けて切換え操作すると、許容機構が有効に機能し、連結部材は苗のせ台と駆動軸との連係状態を解除することなく、苗のせ台を非作業姿勢に切換えることを許容する。
このことによって、苗のせ台を非作業姿勢に切り換える為に、連結部材の苗のせ台等との連係を解除する為に、苗のせ台背面側の狭いスペースで前作業をする必要がなく、また、苗のせ台を非作業姿勢に切り換えて、広いスペースを確保してのメインテナンス作業を行うことができる。
【0008】
(構成)
本発明の第2特徴は、前記連結部材を前記苗のせ台に連係された第1連結部材と前記駆動軸に連係された第2連結部材とで構成し、前記許容機構を、前記第1連結部材に形成された鉤状の長孔と、第2連結部材に設けられ前記長孔に係合する係合ピンとで構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
(作用効果)
本発明の第2特徴によれば、苗のせ台を非作業姿勢に向けて移動させると、径合ピンが鉤状の長孔内を相対的に位置変更しながら移動するので、第1連結部材と第2連結部材の連係状態を維持することができながら、第1連結部材と苗のせ台、駆動軸と第2連結部材との連係は変らない。
しかも、許容機構として、鉤状長孔と係合ピンを設けるという簡易な構造によって達成できたので、製作上も製作コスト面でも大変有利である。
【0010】
(構成)
本発明の第3特徴構成は、前記苗のせ台の苗を苗取出口に向けて送る縦送り機構と前記縦送り機構に動力を伝達する駆動部材とを前記苗のせ台に設けるとともに、前記駆動部材に当接して駆動力を付与する出力部材を植付駆動部に設け、前記駆動部材を前記出力部材との当接範囲から外れた待機位置に保持する保持機構を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
(作用効果)
本発明の第3特徴によると、苗のせ台を非作業姿勢に切り換えると、駆動部材と出力部材との当接状態が解除される。そうすると、出力部材の位置が定まらないものとなる。したがって、出力部材の位置が定まらない状態で苗のせ台を作業姿勢に復帰させると、出力部材が駆動部材と当接する範囲に復帰し得ないことがあり得る。
そこで、本発明の第3特徴においては、保持機構によって、苗のせ台を非作業姿勢に切り換える際に、出力部材を一旦当接範囲から外れた位置に保持する。これによって、苗のせ台を非作業姿勢に切り換える際に、出力部材が駆動部材と干渉することなく、かつ、一定の姿勢で苗のせ台の非作業姿勢への切り換わりに追従する。
そして、苗のせ台を作業姿勢に復帰させる際にも、出力部材と駆動部材とは接触することはなく、苗のせ台を作業姿勢に切り換えた状態で、保持機構の保持状態を解除すれば、出力部材を駆動部材との当接範囲に戻すことができる。
【0012】
(構成)
本発明の第4特徴は、前記苗のせ台を前記非作業姿勢に切り換えた状態で、前記苗のせ台と、その苗のせ台を支持する支持部とに亘って掛け渡されて、前記非作業姿勢に維持する保持部材を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
(作用効果)
本発明の第4特徴によると、苗のせ台を非作業姿勢に維持する構成として、苗のせ台とその苗のせ台を支持する支持部とに亘って掛け渡されるだけの保持部材を設けることによって、簡単な機構で安定した非作業姿勢を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、前車輪1、後車輪2を備えた走行機体5の前部にエンジン3、後部に運転席4を配置するとともに、運転席4の後方に施肥装置を配置し、走行機体5の後端に、油圧シリンダ6で駆動される昇降リンク機構7を介して苗植付装置10を取り付けて田植機を構成してある。
【0015】
苗植付装置10の構成について説明する。
図1〜図3に示すように、苗植付装置10は、昇降リンク機構7の後端に取り付けられ、エンジン3からの動力伝達を受ける植付フィードケース8を設けるとともに、機体横幅方向に沿って横向きメインフレーム9を配置し、植付フィードケース8を横向きメインフレーム9の左右中間位置に配置し、横向きメインフレーム9より後方に向けて複数個の植付伝動ケース11を平行な状態に配置してある。各植付伝動ケース11には苗植付機構13が設けられており、植付フィードケース8からの動力を各植付伝動ケース11に伝達し、苗植付機構13を駆動するように、植付駆動部が構成されている。
【0016】
図1〜図3に示すように、苗植付機構13の上方側には、マット状苗を載置する苗のせ台17が設けてあり、苗のせ台17は苗植付機構13の植付動作に連動して左右方向に一定ストロークで往復移動可能に構成される。ここで、苗のせ台17の横スライド移動機構について説明する。
【0017】
図1〜図3に示すように、横向きメインフレーム9の両端に支柱12,12を立設するとともに、支柱12の上端に苗のせ台17の上部をスライド自在に受け止める上部ガイド機構Aを設けてある。一方、植付伝動ケース11における苗植付機構13の前方側に、苗のせ台17の下端部を受け止めてその苗のせ台17のスライド移動をガイドする支持部としての摺動レール14を設けてある。苗のせ台17は上部ガイド機構Aと下方の摺動レール14とで受け止められ、左右に摺動移動可能に構成されている。
【0018】
ここで、上記スライド機構の詳細な説明をすると、まず、上部ガイド機構Aについて説明する。図3〜5に示すように、支柱12に属するものとしては、支柱12の上端にブラケット12Aを取り付け、ブラケット12Aから上向きに棒状部材12Bを立設し、この棒状部材12Bにガイドローラ12Cを取り付けたものが設けられている。一方、苗のせ台17側に属するものとしては、苗のせ台17の走行機体3に面する背面側に、横向きのガイドフレーム17Aを固定し、このガイドフレーム17Aは断面チャンネル状のもので、開口を下向きにした状態で苗のせ台17の背面に取り付けられてある。
【0019】
以上、上部ガイド機構Aは、前記した支柱12に属するものと、苗のせ台17側に属するものとで構成されており、ガイドフレーム17Aの内部空間にガイドローラ12Cを嵌め込み、苗のせ台17の上部をスライド移動自在に案内する機能を発揮する。
【0020】
次に、苗のせ台17の下部側でのスライド支持構造について説明する。図3〜図5に示すように、苗のせ台17の走行機体に向かう裏面側で前記したガイドフレーム17Aの下方に同じく左右幅一杯に亘る支持部材17Bを取り付け固定するとともに、支持部材17Bの下方に前記した摺動レール14を配置してある。図16〜図21に示すように、支持部材17Bを上下から挟み込むように、上側に第1摺動部材15A、下側に第2摺動部材15Bを配置する。第2摺動部材15Bにヘッド部分を埋め込まれ上向きにネジ部分を突出させたスタッドボルト16を設け、そのスタットボルト16を第1摺動部材15Aと支持部材17とに貫通させて、支持部材17Bと第1、第2摺動部材15A、15Bとを一体でスライド移動自在に構成する。第2摺動部材15Bは摺動レール14に支持されるように、支持部材17Bと摺動レール14との間に位置する。
【0021】
図16〜図21に示すように、摺動レール14の上面にはスライド案内板14Aがビス止めされており、第2摺動部材15Bを載置案内するように構成してある。第2摺動部材15Bは、断面アングル状の長尺部材であり両端に給油パイプ15bを立設し、断面アングル状の長尺部材の縦壁面15aを苗のせ面側に配置して取り付けられており、給油パイプ15bの下方の底面を上方に立ち上げて潤滑油の貯留空間aとして利用する構成に形成されている。
【0022】
図16及び図21に示すように、貯留空間aにはスポンジ板18を嵌め込んで使用することも可能であり、潤滑油の保持能力を高める構成を採ってもよい。
図16〜図18に示すように、第2摺動部材15Bに給油パイプ15bを設けているが、この給油パイプ15bを通して潤滑油(グリス)を供給する為に、苗のせ面を仕切る仕切壁17Fに取付け供給パイプ17aと給油パイプ15bとをゴムホース19で連結して、苗のせ台17の苗のせ面側から給油作業を行えるようになっている。
このように、第2摺動部材15Bに給油パイプ15bを設けることによって、部品点数の削減が可能である。しかも、摺動部材15と苗のせ台17の背面との間に間隙を設けてあるので、その間に苗の根詰まり等を回避でき、油の潤滑を阻害することが少ない。
【0023】
図16及び図17に示すように、第2摺動部材15Bにおける左右給油パイプ15bと上下に貫通するスタッドボルト16との間には、弾性突起15c、15cが形成してあり、支持部材17Bに形成された貫通孔17b、17bに下から貫通して貫通孔17b、17bの縁部に圧接して、第2摺動部材15Bの取り付け状態を強固にする機能を発揮する構成が採られている。
【0024】
第1摺動部材15Aについて説明する。図18、図19及び図21に示すように、第1摺動部材15Aは、アングル状の短尺部材であり、上壁15dを支持部材17Bに載置するとともに、縦壁面15eを摺動レール14の走行機体5側に面する外面に沿って配置し、縦壁面15eの下端部を僅かに屈曲形成して、摺動レール14の凹面部14aに係合させて、摺動レール14との係合度を高める構成が採られている。
【0025】
図18、図19及び図21に示すように、第1摺動部材15Aの上壁15dに、摺動方向とは直交する方向に向けて切欠部15fが形成してあり、この切欠部15fは、平面視において、クランク状を呈している。クランク状の切欠部15fは、上壁15dの苗のせ面側の内端から摺動レール14の外面に対応する外端に向かって中間部に至る第1誘導切欠部15gとその第1誘導切欠部15gの終端となる中間部から摺動方向に沿った状態に形成された第2誘導切欠部15hとを連通する状態で形成されている。第2誘導切欠部15hの終端から前記した外端に掛けては、第1誘導切欠部15gに平行な第3誘導切欠部15kが形成してあり、これら3つの誘導切欠部15g、15h、15kでクランク状の切欠部15fを形成してある。
【0026】
図19及び図21に示すように、このように第1誘導切欠部15gを形成することによって、取付用のスタットボルト16を取り付けた状態であっても、そのスタットボルト16をかわして第1摺動部材15Aを前記外端側に引き出すこと、及び、前記外端から内端に向けて装入することができるようになっており、取付取外しが容易になっている。第2誘導切欠部15hに取付用のスタットボルト16を挿通するボルト挿通部Hを形成しそのボルト挿通位置で締め付け固定すれば、第1摺動部材15Aは外端側に抜け出ることはなく、取付固定状態が安定する。
【0027】
第2誘導切欠部15hと第1、第3誘導切欠部15g、15kとの交点の外側には、リブ15m、15mが夫々形成されており、第2誘導切欠部15hのボルト挿通部Hにスタットボルト16を取り付けた状態で、第1摺動部材15Aを第2誘導切欠部15hに沿って移動させようとしても、スタットボルト16に取り付けたナット16Aがリブ15mに当接して第1摺動部材15Aの位置変動が阻止される。
以上のような構成によって、第1摺動部材15A等の取付取外しを容易に行うことができるとともに、不測に脱落しないようになった。
【0028】
横送り機構Bに付いて説明する。図3、図5及び図14に示すように、前記した植付動力をエンジン3側から受ける植付フィードケース8から横側方の一側に向けて駆動軸としての螺軸20を延出するとともに、延出端をブラケット21で支持している。螺軸20の中間位置には、螺軸20に形成した螺旋溝20Aに係合するコマ部材22Aを収納した移動体22を外嵌装着してある。この移動体22は、螺軸20を軸芯回りに回転させることによって、螺軸20の軸芯に沿って往復移動することとなる。
【0029】
移動体22と苗のせ台17とを連結する連結部材23について説明する。図3、図5及び図14に示すように、苗のせ台17の背面に取付台17Cを取付固定するとともに、取付台17Cから第1連結部材23Aを延出している。第1連結部材23Aの先端部分には、鉤状の長孔23aが形成してある。一方、移動体22に第2連結部材23Bを設けてあり、この第2連結部材23Bの先端部に、前記長孔23aに係合する係合ピン23bを設けてある。
以上のような構成によって、螺軸20を軸芯回りに回転させると、移動体22が往復移動し、移動体22に連結部材23で繋がった苗のせ台17が往復移動することになる。
ここに、第1連結部材23Aと第2連結部材23Bとで連結部材23を構成する。また、鉤状の長孔23aと係合ピン23bとを、連結部材23と駆動軸としての螺軸20との連係状態を維持しながら、苗のせ台17を非作業姿勢に切換えることを許容する許容機構Cと称する。
【0030】
苗取出し部について説明する。図20に示すように、苗のせ台17における苗植付機構13の植付爪13Aが通過する部分に苗取出口17Dが形成されており、苗取出口17Dから下向きに苗取出ガイド17Eを形成してある。苗取出ガイド17Eは左右一対のガイド体17c、17cとからなっており、ガイド体17c、17cの上端には、図20(ロ)(ハ)に示すように、面取り17dが施されており、取り出し苗の傷つきを防止するようにしてある。
【0031】
図4及び図5に示すように、苗取出口17Dの上方には、苗のせ面上のマット状苗をその苗取出口17Dに向けて繰り出す縦送り機構Eを設けてある。縦送り機構Eは、苗のせ台17の下端側に駆動輪体24を設けるとともに、駆動輪体24の上方に従動輪体を設け、両輪体24に亘って駆動ベルト26を掛け渡して、構成してある。駆動ベルト26の表面には多数の突起が形成してあり、突起がマット状苗を係止してそのマット状苗の移動を効率よく行えるようになっている。
【0032】
図6〜図8に示すように、駆動輪体24と同一の駆動軸25に駆動部材としての駆動アーム27を取り付けてあり、駆動アーム27は巻バネ28によって待機位置に戻し付勢されるとともに、ワンウエイクラッチ(図示せず)によって、戻り時に遊転すべく構成してある。
一方、植付フィードケース8の螺軸20突出位置とは異なる位置より、左右方向に向けて出力軸29を突出させて出力軸29の突出部分に常時回転する出力部材としての出力アーム30を取り付ける。
【0033】
以上のような構成により、螺軸20を回転させて苗のせ台17を横移動させると、苗のせ台17の横移動ストローク端において、出力アーム30と駆動アーム27との横移動方向での位置が一致し、出力アーム30によって駆動アーム27がバネ付勢力に抗して一定回転範囲だけ駆動される。この一定回転範囲だけ駆動されるとワンウエイクラッチによって駆動輪体24を駆動し、駆動ベルト26を駆動する。これによって一定量だけマット状苗が苗取出口17Dに向けて繰り出される。
【0034】
次に、駆動アーム27を待機位置に保持する保持機構Fについて説明する。図5〜図11に示すように、駆動輪体24の駆動軸25に駆動アーム27とともに規制アーム31を遊転自在に取り付けている。規制アーム31の上面には係止頭部31Aが設けてあるとともに、駆動アーム27の上面にもブラケット27Aが設けてあり、ブラケット27Aに調整ネジ32を取り付け、調整ネジ32のブラケット27Aより下向きに突出した先端を規制アーム31の係止頭部31Aに当接する配置構成となっている。
【0035】
このように、調整ネジ32を規制アーム31に当接させているだけであるので、出力アーム30で駆動アーム27を駆動する場合には、駆動アーム27は規制アーム31から離間する状態となるだけであるので、縦送り時には規制アーム31は影響しない。
【0036】
図6〜図9に示すように、駆動輪体24と従動輪体との間の中間高さ位置で二つの縦送り機構E,Eの間の位置において、苗のせ台17の背面に支持ブラケット35を取付け、支持ブラケット35に保持機構Fとしての引き上げ操作具34を支持するように構成する。引き上げ操作具34は、上端に円弧状に握り部34Aを形成するとともに、下端に鉤状係止部34Bを形成し、握り部34Aと鉤状係止部34Bとの間に鍔部34Cを形成してある。
【0037】
図9〜図11に示すように、引き上げ操作具34の鉤状係止部34Bを係止頭部31Aに形成した横向き孔31aに貫通させて鉤状係止部34Bを係止頭部31Aに係合させる構成を採っている。このように、鉤状係止部34Bを係止頭部31Aに係合させる構成ことによって、図8に示すように、円弧状の握り部34Aを持って引き上げ操作具34を引き上げ操作すると、規制アーム31が揺動して引き上げられる。この場合に、駆動アーム27は調整ネジ32を規制アーム31の係止頭部31Aに当接させているので、規制アーム31の上方揺動変位を受けて上方に連動揺動作動する。
これによって、駆動アーム27は出力アーム30と当接して駆動力を受ける作動範囲から脱出して待機位置に退避することとなる。ここに、規制アーム31、及び、引き上げ操作具34を、駆動アーム27を待機位置に保持する保持機構Fと称する。
【0038】
図12に示すように、引き上げ操作具34を支持すべく設けてある支持ブラケット35には、幅広部35aと幅狭部35bとを一体形成した抜き孔35Aを形成してあり、幅広部35aの幅は引き上げ操作具34の鍔部34Cの径よりも幅広であり、幅狭部35bの幅は引き上げ操作具34の鍔部34Cの径よりも幅狭であり、かつ、引き上げ操作具34の鍔部34Cと鉤状握り部34Aとの間の棒状部分の径よりも幅狭である。
【0039】
図7に示すように、前記した棒状部分を抜き孔35A内に位置させた状態では駆動アーム27は出力アーム30との当接可能な姿勢にあり、図8に示すように、この状態から引き上げ操作具34を引き上げて、鍔部34Cを、幅広部35aを通過させ、鍔部34Cを幅狭部35bの方に移動させて幅狭部35bの縁部に当接載置することによって、引き上げ操作具34を支持ブラケット35に支持できる。この場合に規制アーム31が引き上げ操作具34によって引き上げられ、これによって前記したように、駆動アーム27が出力アーム30とは当接しない待機姿勢に保持される。
【0040】
次に、苗取量調節機構Dについて説明する。図5〜図9に示すように、摺動レール14を支持する支持台36を、植付伝動ケース11の側面に上下動自在に装着するとともに、支持台36の上端位置に係合凹部36Aを設ける。係合凹部36Aに係合する調節アーム37を設け、図示してはいないが苗取量調節操作具に調節アーム37を連係し、調節アーム37で支持台36を上下動させて、摺動レール14とともに苗のせ台17の全体を上下移動させて苗のせ台17と植付伝動ケース11との相対高さを変更して、植付爪13Aの苗取量軌跡に対する苗取出口17Dの相対位置を変更し、苗取量を調節できるように構成してある。
【0041】
図5〜図9に示すように、調節アーム37と一体揺動する連動アーム38をその調節アーム37と同一軸に装着し、調節アーム37の苗取量調節のための揺動作動に連動して連動アーム38を連動揺動させるとともに、この連動アーム38で規制アーム31を揺動駆動すべく構成する。そうすると、規制アーム31の揺動によって、駆動アーム27も同じように揺動することとなる。
例えば、苗取量を小さくする為に、苗のせ台17を持ち上げた場合には、図6及び図7に示すように、調節アーム37の回動作動によって連動アーム38を介して規制アーム31が一定角度だけ回動し、駆動アーム27を待機位置より僅かに上方に移動させて、その位置があらたな待機位置となる。
【0042】
そうすると、出力アーム30によって駆動される駆動アーム27の出力アーム30との当接開始位置(待機位置)aがa’に変位しているので、その分だけ駆動アーム27の揺動角が小さくなり、そのことによって、縦送り量が小さくなる。
このような構成によって、苗取量調節に連動して縦送り量を調節できることとなっている。
【0043】
次に、苗のせ台17のメインテナンス姿勢に切り換える構造について説明する。図5に示すように、支柱12の上端にガイドローラ12Cを取り付けているブラケット12Aを設けているが、通常は、そのブラケット12Aは上方が枢支ピン12aで下方がボルト12bで固定されている。そして、メインテナンス時等においては、下方側のボルト12bを外し、上方側の枢支ピン12aを旋回中心として、苗のせ台17全体を後方側に向けて外開き状態に切り換えることができる。
【0044】
このように、外開き状態に切り換える際に、苗のせ台17の下端部の係合状態については、次ぎのように、係合状態を解除しなければならない。つまり、図9に示すように、摺動レール14については植付伝動ケース11に支持して苗のせ台17から分離する。これにともなって、摺動レール14と苗のせ台17の支持部材17Bとを連結結合させていた第1摺動部材15Aと第2摺動部材15Bとを取外す。
これによって摺動レール14と苗のせ台17の支持部材17Bとの連係を解除することができる。
【0045】
一方、引き上げ操作具34によって、規制アーム31を引き上げ駆動アーム27を待機位置に退避させる。これによって、自由揺動可能な規制アーム31とバネ付勢された駆動アーム27とを、苗のせ台17がメインテナンス姿勢に切り換わった場合にも、規制アーム31が垂れ下がり状態となり、その垂れ下がり状態で苗のせ台17を元の姿勢に復帰させた場合に、連動アーム38や出力アーム30との係合が行えなくなる点を回避できる。
【0046】
以上のところから、苗のせ台17の上部および下部と、苗のせ台17を支持する植付伝動ケース11及び支柱12等との連係を断つことができる。そして、苗のせ台17の上下中間位置において、苗のせ台17の横送り用螺軸20との連係は前記したように連結部材23によって、連係状態を解除することなく苗のせ台17の分離が可能である。
【0047】
つまり、図5、図13〜図15に示すように、第1連結部材23Aと第2連結部材23Bとで連結部材23を構成しているが、苗のせ台17を通常の作業状態に設定している場合には、図5に示すように、第1連結部材23Aの鉤状の長孔23aに対して第2連結部材23Bの係合ピン23bが、長孔23aの上端位置にある。この状態から苗のせ台17を前記した旋回中心回りに揺動解放操作すると、第2連結部材23Bが螺軸20を中心として一定角度だけ回動するとともに、第2連結部材23Bの係合ピン23bが第1連結部材23aの長孔23aの他方の端部に当接する位置まで相対的に移動する。これによって、連結部材23の連係を維持しながら、苗のせ台17を非作業姿勢に切換えることを許容する許容機構Cを構成することができたのである。
【0048】
苗のせ台17を開き操作した状態を維持する機構について説明する。維持する機構としては、図13に示すように、開き操作された状態の苗のせ台17における支持部材17Bと、植付伝動ケース11に支持された摺動レール14に亘って保持部材としての支え棒39を掛け渡す。支え棒39としては、図4、図5、及び、図16に示すように、苗のせ台17の左右側端に1本づつ設けてあり、これによって、苗のせ台17の復帰揺動が阻止される。支え棒39は、チャンネル形状に棒状材を折り曲げ形成されたもので、直線棒材39Aの両端に折り曲げ形成されて平行姿勢に設定された二つの受止棒材39B、39Bの部分を摺動レール14と支持部材17Bとの角部に当て付けて支え機能を発揮する。
【0049】
図16及び図18に示すように、苗のせ台17が作業姿勢にある通常時においては、支え棒39は、苗のせ台17の側端に形成された取付具40に装着されている。取付具40は、縦送り機構Eの駆動輪体24の駆動軸25を支持するブラケット40Aと、ブラケット41の上方に設けられたバネ板製の差込受具40Bとで構成されている。このような取付具40に対してブラケット40Aの支持孔に一方の受止棒材39Bを貫通させ、他方の受止棒材39Bを差込受具40B、40Bに嵌め込み装着して、取付け固定されている。
【0050】
8条植え田植機等で使用する延長摺動レール41を設ける場合の収納構造について説明する。図22〜図24に示すように、延長摺動レール41を取付ブラケット42に固着するとともに、取付ブラケット42を介して延長摺動レール41を本体側の摺動レール14に連結可能に構成する。
【0051】
ここに取付ブラケット42の構造について説明すると、図22〜図24に示すように、取付ブラケット42は、延長摺動レール41を取付固定している取付部42Aと、この取付部42Aに対して直交する姿勢で形成してある繋ぎ部42Bと、繋ぎ部42Bの先端側に位置する装着部42Cとで構成してある。図24に示すように、装着部42Cは、繋ぎ部42Bと同じ姿勢で横側方にやや偏位する状態で設けてある基端部分42aと基端部分42aに対して上向き斜め姿勢に折り曲げ形成されている先端部分42bとからなる。基端部分42aから先端部分42bに掛けて装着用孔42cが形成されている。
【0052】
上記したような構成になる延長摺動レール41を取り付けるには、次ぎのように行う。図23に示すように、本体側の摺動レール14の苗取出口17D近傍であって背面側に、装着台44を設け、その装着台44にネジ取付部を形成してある。その装着台44に対して取付ブラケット42の装着用孔42cを形成した装着部42Cを取付け、操作用の握り部43Aを備えた固定用ネジ43で締め込み固定する。
【0053】
図22に示すように、延長摺動レール41を本体側の摺動レール14に連結して作業姿勢に設定する場合には、取付ブラケット42の基端部分42aを装着台44の表面に合わせる状態で当て付けて、固定用ネジ43で締め付け固定する。そうすると、延長摺動レール41と本体側の摺動レール14の横側端同士が接触する状態で連結される。この場合に、延長摺動レール41の一端には連結用のピン41aと連結板41bとが突設させてあり、延長摺動レール41と本体側の摺動レール14の連結状態においては、連結用のピン41aが本体側の摺動レール14の接続端面に形成された連結用の孔に差込み嵌合され、連結板41bが摺動レール14の矩形断面内に差込み嵌合されて、位置決め機能を担っている。
【0054】
延長摺動レール41を使用しない非作業姿勢に切り換えるには、図22に示すように、固定用ネジ43を僅かに緩めて延長摺動レール41を離間させていく。この場合に、装着台44に取り付けられている取付ブラケット42においては、装着台44に接触していた基端部分42aから先端部分42bに切り換わると同時に、先端部分42bが基端部分42aに対して傾斜する状態にあるので、取付ブラケット42の繋ぎ部42Bや取付部42Aが本体側の摺動レール14に対して横側方に離間するとともに機体前方側にも離間するものとなる。
【0055】
ただし、この状態のままであれば、横側方にはみ出した状態となるので、延長摺動レール14を一旦横側方に引き出した状態で、図23に示すように、装着台44のネジ孔中心Xを中心として延長摺動レール41を半回転させて固定用ネジ43で固定し、本体側の摺動レール14より上方で機体内方側に収納するようにする。
【0056】
〔別実施形態〕
(1) 保持機構Fとしては、引き上げ操作具34で人為的に規制アーム31を人為的に引き上げる操作を行っているが、この引き上げ操作具34の代わりに、自動的に作動するアクチュエータを利用してもよい。また、この実施形態では、引き上げ操作具34で人為的に規制アーム31を引き上げ操作しているが、引き上げ操作具34で直接駆動アーム27を引き上げる構成を採っても良い。
【0057】
(2) 許容機構Cとしは、長孔23aと係合ピン23bとの取付対象を切り換えてもよく、また、長孔23aとしても、鉤状ではなく円弧状の長孔としたり、単に直線的な長孔であってもよい。
【0058】
(3) 横送り駆動軸としては、螺旋溝20Aを有する螺軸20ではなく、通常の螺旋溝を有していないネジ軸であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】施肥装置付き乗用型田植機の全体の側面図
【図2】施肥装置付き乗用型田植機の全体の平面図
【図3】苗植付装置の伝動構造等を示す平面図
【図4】苗のせ台を示す背面図
【図5】苗植付装置の側面図
【図6】保持機構、縦送り機構、苗取量調節機構との連係関係を示す側面図
【図7】保持機構、縦送り機構、苗取量調節機構との連係関係を示し、苗取量調節機構によって苗取量を少なくした状態を示す側面図
【図8】保持機構、縦送り機構、苗取量調節機構との連係関係を示し、保持機構によって縦送り用の駆動アームを出力アームとの当接不能な位置まで持ち上げ待避姿勢に切換えた状態を示す側面図
【図9】図8の状態から、苗のせ台をメインテナンス姿勢に切り換えた状態を示す側面図
【図10】保持機構、縦送り機構、との連係関係を示す正面図
【図11】保持機構を示す分解斜視図
【図12】保持機構の支持ブラケットを示す平面図
【図13】苗のせ台をメインテナンス姿勢に切り換え、保持部材によって支持した状態を示す側面図
【図14】苗のせ台の横送り機構を示す一部切欠き正面図
【図15】横送り機構と苗のせ台とを連結する連結部材を示めし、(イ)は側面図、(ロ)は正面図
【図16】第1、第2摺動部材、及び、保持部材等を装備している苗のせ台の背面図
【図17】第1、第2摺動部材、及び、その摺動部材への給油構造を示す平面図
【図18】摺動部材、及び、その摺動部材への給油構造、保持部材等を装備し、保持部材を取り付ける前の状態を示している苗のせ台の側面図
【図19】第1摺動部材を示す平面図
【図20】苗取出し口の構造を示し、(イ)は側面図、(ロ)は苗取り出し口の構造を示す横断平面図、(ハ)は苗取り出し口の別構造を示す横断平面図
【図21】第1、第2摺動部材、及び、摺動レール等を示す分解斜視図
【図22】(イ)は、延長摺動レールを本体側の摺動レールに一体化した状態を示す平面図、(ロ)は、延長摺動レールを本体側の摺動レールから分離した状態を示す平面図
【図23】(イ)は、延長摺動レールを本体側の摺動レールから分離し、その取付ブラケット部分を示す側面図、(ロ)は、延長摺動レールをX軸芯回りで回転させて、苗のせ台の幅内に位置させた状態を示す平面図
【図24】延長摺動レールと摺動レールとの分解斜視図
【符号の説明】
【0060】
8、11 植付駆動部
14 支持部
17 苗のせ台
20 駆動軸
23 連結部材
23a 長孔
23b 係合ピン
27 駆動部材
30 出力部材
39 保持部材
C 許容機構
E 縦送り機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗のせ台を作業姿勢と非作業姿勢とに切換可能に構成するとともに、前記苗のせ台を横送り駆動する駆動軸と前記苗のせ台とを連結部材を介して連係し、前記苗のせ台と前記連結部材、及び、前記連結部材と前記駆動軸との連係状態を維持しながら、前記苗のせ台を非作業姿勢に切換えることを許容する許容機構を前記連結部材に設けてある苗植付装置。
【請求項2】
前記連結部材を前記苗のせ台に連係された第1連結部材と前記駆動軸に連係された第2連結部材とで構成し、前記許容機構を、前記第1連結部材に形成された鉤状の長孔と、第2連結部材に設けられ前記長孔に係合する係合ピンとで構成してある請求項1記載の苗植付装置。
【請求項3】
前記苗のせ台の苗を苗取出口に向けて送る縦送り機構と前記縦送り機構に動力を伝達する駆動部材とを前記苗のせ台に設けるとともに、前記駆動部材に当接して駆動力を付与する出力部材を植付駆動部に設け、前記駆動部材を前記出力部材との当接範囲から外れた待機位置に保持する保持機構を設けてある請求項1又は2記載の苗植付装置。
【請求項4】
前記苗のせ台を前記非作業姿勢に切り換えた状態で、前記苗のせ台と、その苗のせ台を支持する支持部とに亘って掛け渡されて、前記非作業姿勢に維持する保持部材を設けてある請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の苗植付装置。
【請求項1】
苗のせ台を作業姿勢と非作業姿勢とに切換可能に構成するとともに、前記苗のせ台を横送り駆動する駆動軸と前記苗のせ台とを連結部材を介して連係し、前記苗のせ台と前記連結部材、及び、前記連結部材と前記駆動軸との連係状態を維持しながら、前記苗のせ台を非作業姿勢に切換えることを許容する許容機構を前記連結部材に設けてある苗植付装置。
【請求項2】
前記連結部材を前記苗のせ台に連係された第1連結部材と前記駆動軸に連係された第2連結部材とで構成し、前記許容機構を、前記第1連結部材に形成された鉤状の長孔と、第2連結部材に設けられ前記長孔に係合する係合ピンとで構成してある請求項1記載の苗植付装置。
【請求項3】
前記苗のせ台の苗を苗取出口に向けて送る縦送り機構と前記縦送り機構に動力を伝達する駆動部材とを前記苗のせ台に設けるとともに、前記駆動部材に当接して駆動力を付与する出力部材を植付駆動部に設け、前記駆動部材を前記出力部材との当接範囲から外れた待機位置に保持する保持機構を設けてある請求項1又は2記載の苗植付装置。
【請求項4】
前記苗のせ台を前記非作業姿勢に切り換えた状態で、前記苗のせ台と、その苗のせ台を支持する支持部とに亘って掛け渡されて、前記非作業姿勢に維持する保持部材を設けてある請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の苗植付装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図15】
【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2007−135421(P2007−135421A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330379(P2005−330379)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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