説明

苗植機の苗植制御装置

【課題】 野菜移植のような苗植機では、苗植嘴に苗供給するための多数の苗カップを無端状に連設した苗供給装置を設け、この苗カップに作業者が直接苗を供給して搬送させながら、苗植嘴へ供給させる形態が多い。このような作業形態では、苗カップに対する苗供給操作が遅れて、苗植嘴による欠株作用を生じ易い。又、このようなときは車体の走行を停止するが、操作が面倒であり、円滑な苗植作業を維持し難い。
【解決手段】 苗植嘴1に搬送供給する苗カップ2を多数個連設した苗供給装置3を有した苗植機において、苗収容センサによる各苗カップ2の苗収容状況の検出により車体走行速を変速する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗植機の苗供給装置における苗搬送供給状況に応じて苗植走行速を変速する苗植制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
苗を収容する苗カップを連設したターンテーブル形態で搬送しながら苗植嘴へ供給し、この苗植嘴を車体の走行によって土壌面に下降作動させて、苗を一定間隔に植付ける技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開平1ー157306号公報(台3頁、図8)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
野菜移植のような苗植機では、苗植嘴に苗供給するための多数の苗カップを無端状に連設した苗供給装置を設け、この苗カップに作業者が直接苗を供給して搬送させながら、苗植嘴へ供給させる形態が多い。このような作業形態では、苗カップに対する苗供給操作が遅れて、苗植嘴による欠株作用を生じ易い。又、このようなときは車体の走行を停止するが、操作が面倒であり、円滑な苗植作業を維持し難い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、苗植嘴1に搬送供給する苗カップ2を多数個連設した苗供給装置3を有した苗植機において、苗収容センサ4による各苗カップ2の苗収容状況の検出により車体走行速を変速する変速装置を設けたことを特徴とする苗植制御装置の構成とする。苗供給装置3、及び苗植嘴1を伝動し、苗植車体の走行を駆動しながら、苗植作業を行う。作業者は、予め搭載している補助苗受台上の苗を取出して苗供給装置3の各苗カップ2に供給することによって、苗植嘴1による空植作用を行わせないようにする。この各苗カップ2に対する苗供給が遅れること等によって、一部の苗カップ2が空状態を生ずると、これを苗収容センサ4が検出して、この苗カップ2の空状態に応じて苗植車体の走行速度を減速して、苗植付作動を減速する。このとき、苗植付作動である走行速や、苗植嘴1の苗植作動速は緩速となるが、各苗植付ピッチは変らない。又、このような苗植付作動の減速時に作業者による各苗カップ2に対する苗供給を行って、苗植嘴1へ空植状態にならないように供給する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明は、苗植嘴1によって苗植付するための苗を搬送供給する苗カップ2に対する苗の供給収容状況を、苗収容センサ4によって検出しながら、この苗の供給されていない苗カップ2を検出し、又はこの空苗カップ2の多い場合は、これに応じて苗植機車体の走行速が減速されるため、この減速時に作業者が各空の苗カップ2に対して苗の供給を行わせることができ、空植を少くすることができ、苗植作業性を容易化し、高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図例に基づいて、苗植機は、前後方向に沿うメインフレーム5の前端部にミッションケース6を設け、後端にハンドル7を有する。このミッションケース6の上側にはエンジン8を搭載し、左右両側部のアクスルハウジング9の周りには、車輪10を軸装11する車輪伝動ケース12の前端部を回動自在に軸支し、この伝動ケース12の上下回動によって車体の昇降、乃至ピッチング作動し、又はローリング作動する形態である。この左右のアクスルハウジング9と一体のアーム13の後端部と、ミッションケース6の後方に突出のピッチングシリンダ14後端のアーム15両端との間を、ローリングシリンダ16、ロッド17で連結し、ピッチングシリンダ14の油圧力伸縮によって、左右の車輪10を昇降させることができ、ローリングシリンダ16の伸縮によって、この左側の車輪10を右側の車輪10に対して昇降回動させて、車体の左右傾斜を制御することができる。ミッションケース6の前方には前輪軸18を介して前輪19を軸装する。
【0007】
車体の後部上には、左右方向にわたって回転するターンテーブル形態の苗カップ2を無端状に連結した供給装置3を配置し、この前側下部において昇降して苗カップ2から受け継いだ苗を土壌面に植付ける苗植嘴1を左右幅中央部に設ける。これら供給装置3の苗カップ2、及び苗植嘴1は、ミッションケース6の後方に突出されるPTO軸20,21によって連動される。苗カップ2は、苗植嘴1へ苗を一株毎供給するもので、一定間隔に無端チエン22に連結されて、左右のスプロケット23間に掛渡されて、左右に往復回動する形態である。この回動行程における主として後部行程で作業者による苗補給を行い、前部行程の中央位置で前記苗植嘴1へ苗供給を行わせることができる。このため、各苗カップ2の底部には開閉可能の底蓋24を有し、この苗カップ2が苗植嘴1の直上に達すると底蓋24が開かれて収容苗を苗植嘴1へ落下供給する形態としている。このような供給装置3の前側上部には補助苗受台25を支架して、前記苗カップ2へ補給するための苗を収容した苗トレイを支持することができる。作業者は、後部ハンドル7を把持操縦しながら、補助苗受台25の苗トレイから苗を取出して、回転している各苗カップ2へ一株宛て毎に供給作業を行うことによって苗植作業を行わせるものである。
【0008】
ここにおいて、この発明に係る苗植機は、苗植嘴1に搬送供給する苗収容苗カップ2を多数個連設した苗供給装置3を有した苗植機において、苗収容センサ4による各苗カップ2の苗収容状況の検出により車体走行速を変速することを特徴とする苗植制御装置の構成とする。苗供給装置3、及び苗植嘴1を伝動し、苗植車体の走行を駆動しながら苗植作業を行う。作業者は、予め搭載している補助苗受台上の苗を取出して苗供給装置3の各苗カップ2に供給することによって、苗植嘴1による空植作用を行わせないようにする。この各苗カップ2に対する苗供給が遅れること等によって、一部の苗カップ2が空状態を生ずると、これを苗収容センサ4が検出して、この苗カップ2の空状態に応じて苗植車体の走行速度を減速して、苗植付作動を減速する。このとき、苗植付作動である走行速や、苗植嘴1の苗植作動速は緩速となり、各苗植付苗の前後植付間隔は一定に維持されて変わらない。又、このような苗植付作動の減速時に作業者による各苗カップ2に対する苗供給を行って、苗植嘴1へ空植状態にならないように供給する。
【0009】
苗カップ2における苗供給の有、無を検出する苗収容センサ4は、苗植嘴1位置の植付直前位置Aと、これよりも適宜間隔離れた前行程位置Bとに配置して、各々センサ4A、4Bとして構成している。各センサ4A、4Bは、底蓋24の重量を検出するリミットスイッチ、又はロードセル形態として、ターンテーブルを構成するテーブルベーム26に配置して、各苗カップ2が移動して底蓋24がセンサ4A、4B上を摺動して支持される毎に、苗カップ2の重量を計測して苗の有無を検出する。この苗収容センサ4による検出によって、苗植嘴1直上位置直前の苗カップ2に所定の苗が有るときは、コントローラ27を介して車速変速装置28を所定の車速位置に維持して走行するが、苗カップ2に苗が無いときは、これによって車速を適宜に減速するように構成している。このような車速の減速走行時には、作業者が各空の苗カップ2内に苗補給を行うことによって、空植を少くすることができ、かつ、減速走行によって空植状態を少くすることができ、作業者による苗補給時間を維持して、苗補給操作を容易化するものである。
【0010】
この苗収容センサ4による苗カップ2における苗収容状態の検出として、例えば、直前のセンサ4Aによる苗無し状態の検出では、苗供給装置3の搬送を即座に停止し、前行程のセンサ4Bによる苗無し状態の検出では減速した状態で苗カップ2を搬送させながら、この空の苗カップ2に苗を供給することができる。このように、直前のセンサ4Aの他に前行程のセンサ4Bを設ける形態では、このセンサ4Bをポジションセンサとして、両センサ4A、4Bの検出状態によって、苗カップ2における苗が供給されていない状態や、この間の搬送行程において苗が供給された状態等を判別しながら、車速を減速比を選択するように構成することができる。又、これら苗収容センサ4には、感度を調節するための可変抵抗器53等からなる感度調節ダイヤル29を設けることができる。又、この感度調節ダイヤル29には、苗ポット2の大きさであるポットサイズによる目安表30を設けて、適切な調節を行い易くすることができる。更に、この目安表30には、苗トレイにおける灌水の有無をも選択できるように構成している。
【0011】
又、これら各前、後の苗収容センサ4A、4Bは、各別に苗カップ2搬送方向の前、後方向に移動調節可能にして、車速減速のタイミングを変更調節することができる。
このような苗収容センサ4によって苗カップ2内の苗の有無を判別して、コントローラ27を介してモータ31を出力して、変速装置28を、減速したり、又増速する。このモータ31によって駆動される変速装置28としては、通常の変速ギヤや、変速ベルト等に限らず、HST(油圧無段変速装置)、エンジン8のアクセル等を操作するように連動構成する形態とすることが可能である。
【0012】
前記苗収容センサ4Bを後側部に設ける場合は、作業者が一人で苗植作業を行うに適し、早期に苗供給状態を判断させて、苗カップ2への苗供給時間を長く確保して、供給操作の容易化を図るものである。又、苗収容センサ4Aによって苗カップ2の苗収容状況を検出する形態は、苗植機の操縦操作を行う作業者の他に、苗供給装置3に苗を供給する作業者の二人作業形態で行う場合に適する。又、これらの前、後の苗収容センサ4A、4Bは、ハンドル7部に設ける前記感度調節ダイヤル29の押し、引きによって切替えて、検出してコントローラ27へ入力するように構成している。この感度調節ダイヤル29を押すとセンサ4Aを検出作動する状態にし、一人作業する場合に適し、又、ダイヤル29を引くとセンサ4Bを作動状態にして、二人作業する場合に適する。又、このダイヤル29の近くにはこれらのセンサ4A、4Bを働かせる自動入りと、働かせない自動切りとに切替る自動スイッチ52を設けている。
【0013】
次に、主として図3、図4に基づいて、前記苗収容センサ4を、前記リミットスイッチに代えて発光器36と受光器37とからなる光学形態のセンサとしたもので、前記苗カップ2の搬送方向に対して略直角方向位置の外側に発光器を、また内側に受光器を配置する。苗カップ2の底蓋24の重量を検出するのに対して、この苗カップ2の透窓32を通すセンサビームによって、この苗カップ2内の収容苗を検出するため、苗量や、重量の大小によって検出が左右され難く、正確で安定した苗の検出を行わせることができる。前記苗収容センサ4の検出位置を前、後いずれかのセンサ4A、4Bの一個所に設定するように、取付位置を付替えることによって、車速減速の開始位置を変更して、作業者の苗供給等の操作に適合させることができる。又、光学的センサビームの透過性を良好に維持するために、角苗カップ2の搬送される透窓32に対向するテーブルベース26、又はこれに取付けられる部材にブラシ33を設け、このブラシ33の摺接によって透窓32外側面を掃除する構成としている。前記ハンドル7部にはスイッチ34を設け、この発明における苗収容センサ2による車速の自動減速制御をON、OFFすることができる。又、前記苗収容センサ2を構成する発光器36を苗カップ2ターンテーブルの回転方向の外側に配置し、受光器37を内側に配置することによって、受光器37がターンテーブルの下側に隠れるように設けて、外光の影響を受け難い形態とすることができる。又、透窓32を苗カップ2の下部の底蓋24に近い位置に設けることによって、苗の根鉢部の有無で苗有無を検出して、正確な苗検出を行わせる。又、前記各苗カップ2はチエン22に取付けられるが、これら各前後の苗カップ2の連結間隔部は、前記苗収容センサ4の照射される部分に遮光板35を設けて、前、後苗カップ2間隔部のセンサビームの透過を防止して、誤検出を無くするように構成している。
【0014】
次に、主として図5、図6に基づいて、前記苗供給装置3のテーブルベース26上には、苗トレイTや、苗を置くことができるが、このテーブルベース26上の左右両側にわたってL字状形態のアクチュエータバー38を設け、このアクシュエータバー38の起伏回動によってON、OFFされるモータスイッチ39を設け、このモータスイッチ39のONによってステッピングモータ等からなる前記アクセルモータ31を駆動して、所定のエンジン8回転を維持するが、このモータスイッチ39がOFFすると、アクセルモータ31によってアイドリング位置へ戻る。このようなアクチュエータバー38の左右両側端部間に嵌合させるようにして苗トレイTを支持して、この苗トレイTの横移動を防止させるように保持する。苗トレイT内に苗が収容されているときは、この苗トレイTの重量によってアクチュエータバー38が倒れて、前記モータスイッチ39がON状態を維持するが、苗植作業の進行によって、この苗トレイT上の苗量が減少すると、トルクスプリング40によって上側へ浮上回動されて、モータスイッチ39をOFFして車速を自動的に減速する。このようなアクチュエータバー38を設けるテーブルベース26は、前側の補助苗受台25と略同高、乃至これより若干低くした高さに設けて、苗トレイT、又は苗の載替え等を行い易くしている。
【0015】
次に、主として図7に基づいて、前記テーブルベース26の前部上に起伏回動可能のアクチュエータバー38を軸支41して設け、このアクチュエータバー38の左右両端にはレバー42を設けて、作業者がこれを回動操作可能に構成する。このレバー42は、苗供給装置3の左右いずれの側からでも操作し易い形態に構成している。又、このアクチュエータバー38にはガスダンパー43を設け、エンジン8のアクセル、乃至スロットルと、ハンドル7のアクセルレバー44とにワイヤー45で連結し、これらアクセルレバー44の操作、又はレバー42の操作によって増減速操作可能に構成し、しかも、前記苗トレイTの重量によって苗が減少するとアクチュエータバー38の起立回動によって減速するように連動構成いている。このようなレバー38を、作業速を設定する速度牽制レバーとして、手元で復帰増速の最高速を決めることができる。ハンドル7側のアクセルレバー44を最高速にしてから最低速まで戻すと、速度牽制レバー38が最高速側まで戻り、移動時や旋回操向時にわずらわしくない。
【0016】
次に、主として図8に基づいて、前記苗供給装置3のテーブルベース26周りに回動する苗カップ2チエン22の構成について、前後の苗カップ2を嵌合支持するカップ穴46、47を形成したチエンリンクプレート48を、中間を段違形態に屈曲49する。各カップ2の嵌合するカップ穴46、47は、前後一対のリンクプレート48の前後端のカップ穴46、47を上下に重合させた状態にして嵌合させている。このようなリンクプレート48の前後中間部の屈曲49部の屈曲方向に沿って押えガイドレール50が作用するように構成する。このチエン22を屈曲49方向と逆方向Fに回転移動させて、ガイドレール50のソリ状形態の先端部51に屈曲49部が突き当って抵抗にならないように構成している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】苗植機の平面図。
【図2】苗植機の車速制御のブロック図と、各部の拡大図。
【図3】一部別実施例を示す苗植機の平面図。
【図4】その車速制御のブロック図。
【図5】一部別実施例を示す苗植機の平面図。
【図6】その車速制御のブロック図。
【図7】一部別実施例を示す苗植機の平面図。
【図8】苗カップを連結するチエン部の平面図と、側面図。
【符号の説明】
【0018】
1 苗植嘴
2 苗カップ
3 供給装置
4 苗収容センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗植嘴(1)に搬送供給する苗カップ(2)を多数個連設した苗供給装置(3)を有した苗植機において、苗収容センサ(4)による各苗カップ(2)の苗収容状況の検出により車体走行速を変速する変速装置を設けたことを特徴とする苗植制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−82044(P2009−82044A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254514(P2007−254514)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】