説明

苗移植機

【課題】 苗移植機において、苗を苗取出口へ適正な状態で且つ適確に供給し、苗植付装置が精度良く苗を植付けることができるようにすることを課題とする。
【解決手段】 苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、前記苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、該苗載台(80)上の苗を上側から押圧する苗押え具(130)と、前記苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置とを設けた苗移植機において、苗取出口(78)側へいくほど苗載台(80)の苗載面(80c)に近づくように斜めの部分(142b)を備える苗浮き上がり防止具(139)を、苗押え具(130)より苗取出口(78)側に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機の一例である乗用型田植機において、苗の端部を受ける苗受枠と、該苗受枠に備える苗取出口と、前記苗受枠に沿って左右移動して苗を前記苗取出口に供給する苗載台と、該苗載台上の苗を上側から押圧する苗押え具と、前記苗取出口に供給された苗を植付ける苗植付装置とを設けたものが知られている。この乗用型田植機は、前記苗押え具により、苗載台上の苗が該苗載台の苗載面あるいは苗受枠から浮き上がるのを抑えると共に、苗載台の左右移動で移動しない苗受枠上の苗が左右方向へ歪むのを抑える(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−314293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記背景技術によると、苗押え具により、苗載台上の苗が該苗載台の苗載面あるいは苗受枠から浮き上がるのを抑えると共に、苗載台の左右移動で移動しない苗受枠上の苗が左右方向へ歪むのを抑えることができるが、床部が軟弱な苗や運搬等のためにロール状に巻いた苗等を植付ける場合、床部が軟弱なために苗受枠上で苗が歪んだり、巻き癖がついているために苗がロール状に復元しようとして苗が撓んだりするおそれがあり、苗押え具のみでは苗の浮き上がりや歪みを防止するのに不十分であることも多く、歪んだり撓んだりした苗が不適正な状態で苗取出口に供給され、苗植付装置による苗の植付精度を低下させるおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、苗を苗取出口へ適正な状態で且つ適確に供給し、苗植付装置が精度良く苗を植付けることができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、前記苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、該苗載台(80)上の苗を上側から押圧する苗押え具(130)と、前記苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設けた苗移植機において、苗取出口(78)側へいくほど苗載台(80)の苗載面(80c)に近づくように斜めの部分(142b)を備える苗浮き上がり防止具(139)を、苗押え具(130)より苗取出口(78)側に設けた苗移植機とした。
【0006】
従って、請求項1に記載の苗移植機は、苗載台(80)上に苗を搭載した状態で、該苗載台(80)を機体に対して左右方向に移動させて苗を所定の苗取出口(78)へ一株分ずつ供給し、苗植付装置(37)が前記苗取出口(78)へ供給された苗を取り出して圃場に移植する。苗載台(80)上の苗は、苗押え具(130)により上側から押圧され、この苗押え具(130)から引き継がれる苗浮き上がり防止具(139)の前記斜めの部分(142b)により、苗取出口(78)の手前で該苗取出口(78)側へいくほど苗を強く押圧する。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、苗浮き上がり防止具(139)を、合成樹脂で形成し、苗押え具(130)に着脱自在に設けた請求項1に記載の苗移植機とした。
従って、請求項2に記載の苗移植機は、請求項1に記載の苗移植機の作用に加えて、苗浮き上がり防止具(139)を苗押え具(130)に着脱することができる。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、苗浮き上がり防止具(139)を、苗押え具(130)に備える交差する2つの軸(131b,132b,133)に装着し、一方の軸(133)が嵌る嵌合部(140a)を上下に複数設けた上部切り欠き溝(140)と他方の軸(131b,132b)が嵌る上下方向に設けた側部切り欠き溝(141)とを備える請求項2に記載の苗移植機とした。
【0009】
従って、請求項3に記載の苗移植機は、請求項2に記載の苗移植機の作用に加えて、
苗浮き上がり防止具(139)を、上部切り欠き溝(140)と側部切り欠き溝(141)とにより、苗押え具(130)に備える交差する2つの軸(131b,132b,133)にしっかりと装着することができる。また、嵌合部(140a)を上下に複数設けた上部切り欠き溝(140)により、一方の軸(133)が嵌る嵌合部(140a)を切り替えることにより、苗浮き上がり防止具(139)の上下位置を変更することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の苗移植機によると、苗浮き上がり防止具(139)の斜めの部分により苗取出口(78)の手前で該苗取出口(78)側へいくほど苗を強く押圧するので、苗取出口(78)又は該苗取出口(78)の近くで苗が苗載台(80)の苗載面あるいは苗受枠(81)から浮き上がるようなことを適確に防止でき、また苗載台(80)の左右移動で苗受枠(81)上の苗が左右方向へ歪むようなことを適確に防止できるため、苗を苗取出口(78)へ適正な状態で且つ適確に供給し、苗植付装置(37)が精度良く苗を植付けることができる。
【0011】
請求項2に記載の苗移植機によると、苗浮き上がり防止具(139)を苗押え具(130)に着脱することができ、苗浮き上がり防止具(139)の押圧により逆に苗を損傷させるおそれがある場合に、該苗浮き上がり防止具(139)を取り外すことができ、苗の状態に応じて苗が損傷しないように調節できる。
【0012】
請求項3に記載の苗移植機によると、苗浮き上がり防止具(139)を苗押え具(130)に備える交差する2つの軸(131b,132b,133)にしっかりと装着することができ、浮き上がり防止作用部(142)に如何なる方向から外力が作用しても苗押え具(130)から外れにくく、植付作業の途中で外れることにより苗が浮き上がったり歪んだりするようなことを防止できる。また、苗浮き上がり防止具(139)の上下位置を変更することができ、苗への押圧力を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
図1及び図2は、施肥装置付きの乗用型の田植機(1)を示すものであり、この乗用型の田植機(1)は、走行車体(2)の後側に昇降リンク装置(3)を介して苗植付部(4)が昇降可能に装着され、走行車体(2)の後部上側に施肥装置(5)の本体部分が設けられている。
【0014】
走行車体(2)は、駆動輪である各左右一対の前輪(6)及び後輪(7)を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース(8)が配置され、そのミッションケース(8)の左右側方に前輪ファイナルケース(9)が設けられ、該前輪ファイナルケース(9)の変向可能な前輪支持部(9a)から外向きに突出する前輪車軸に前輪(6)が取り付けられている。また、ミッションケース(8)の背面部にメインフレーム(10)の前端部が固着されており、そのメインフレーム(10)の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(11)を支点にして後輪ギヤケース(12)がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース(12)から外向きに突出する後輪車軸に後輪(7)が取り付けられている。
【0015】
原動機となるエンジン(13)はメインフレーム(10)の上に搭載されており、該エンジン(13)の回転動力が、第一ベルト伝動装置(14)を介して正逆転切替可能な伝動装置となる油圧式の前後進無段変速装置(HST)(15)へ入力される。そして、該前後進無段変速装置(HST)(15)からの出力が第二ベルト伝動装置(16)を介してミッションケース(8)に伝達される。ミッションケース(8)に伝達された回転動力は、該ケース(8)内の伝動分岐部(8a)で走行用伝動経路と植付用伝動経路とに分岐して伝動され、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース(9)に伝達されて前輪(6)を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース(12)に伝達されて後輪(7)を駆動する。また、外部取出動力は、取出伝動軸(17)を介して走行車体(2)の後部に設けた植付クラッチケース(18)に伝達され、それから植付伝動軸(19)によって苗植付部(4)へ伝動されるとともに、施肥伝動機構(図示せず)によって施肥装置(5)へ伝動される。
【0016】
エンジン(13)の上部はエンジンカバー(20)で覆われており、その上に座席(21)が設置されている。座席(21)の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット(22)があり、その上方に前輪(6)を操向操作するハンドル(23)が設けられている。座席(21)の右側には、前記前後進無段変速装置(HST)(15)を操作する前後進変速レバー(24)が設けられている。また、ハンドル(23)の近傍には、苗植付部(4)の昇降操作及び作動の入切操作がおこなえる植付昇降操作レバー(25)が設けられている。エンジンカバー(20)及びボンネット(22)の下端左右両側は水平状のフロアステップ(26)になっている。また、走行車体(2)の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台(27)が設けられている。
【0017】
昇降リンク装置(3)は、1本の上リンク(70)と左右一対の下リンク(71)を備えている。これらリンク(70,71)は、その基部側がメインフレーム(10)の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム(72)に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク(73)が連結されている。そして、縦リンク(73)の下端部に苗植付部(4)に回転自在に支承された連結軸(74)が挿入連結され、連結軸(74)を中心として苗植付部(4)がローリング自在に連結されている。メインフレーム(10)に固着した支持部材と上リンク(70)に一体形成したスイングアーム(75)の先端部との間に昇降油圧シリンダ(76)が設けられており、該シリンダ(76)を油圧で伸縮させることにより、上リンク(70)が上下に回動し、苗植付部(4)がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0018】
苗植付部(4)は8条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース(77)、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口(78)に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口(78)に供給すると苗送りベルト(79)により苗を下方に移送する苗載台(80)、苗取出口(78)に供給された苗を苗植付具(37a)で圃場に植付ける苗植付装置(37)等を備えている。
【0019】
苗載台(80)は、苗載面の裏側でその裏面側下部に左右方向に設けた苗受枠となる横枠(81)に沿って左右動自在に支持されている。また、この苗載台(80)は、上下に延びる複数の仕切り壁部(80a)を備えており、該仕切り壁部(80a)により区分けされて各条の苗載部(80b)が構成され、8条分の苗を搭載できる構成となっている。尚、前記横枠(81)に8条分の前記苗取出口(78)が設けられている。伝動ケース(77)の左右両側から突出して該伝動ケース(77)内の動力で横方向に左右往復移動する横移動棒(82)が設けられ、該横移動棒(82)の両端部に固着した連結部材(83)と苗載台(80)とが連結されていて、横移動棒(82)が左右往復動することにより苗載台(80)が左右往復動するようにしている。尚、伝動ケース(77)内には、リードカムと該リードカムに螺合する該リードカム軸が設けられている。従って、横移動棒(82)は、その中間部が伝動ケース(77)内で前記リードカムに固着され、前記リードカム軸の駆動回転により左右往復移動する構成となっている。
【0020】
苗載台(80)の裏面側の上下には、左右方向に長い左右移動用案内部材(120、121)がそれぞれ固着して設けられている。上側の左右移動用案内部材(120)は、側面視で下側が切り欠かれた断面形状に形成されており、下側から支持される回転自在の支持ローラ(122)が係合している。この支持ローラ(122)は、上側の左右移動用案内部材(120)に沿う適宜位置(4か所)に複数個(4個)設けられ、伝動ケース(77)の上側に固着された苗載台支持フレーム(123)の上部に取り付けられている。下側の左右移動用案内部材(121)は、側面視で下側が切り欠かれた切り欠き断面形状部分(121a)とその直上の四角形の断面形状部分(121b)とを備え、前記切り欠き断面形状部分(121a)にスライダ(124)が固着されている。このスライダ(124)は、上部に設けた突起(124a)を下側の左右移動用案内部材(121)に設けた取付孔に挿入して固着する構成となっており、下側の左右移動用案内部材(121)に沿う適宜位置(4か所)に複数個(4個)設けられ、横枠(81)の上部に備えるレール部分(81a)に上側から係合する。従って、苗載台(80)は、支持ローラ(122)と横枠(81)とにより左右方向に移動可能に支持されている。また、支持ローラ(122)とスライダ(124)とは、ポリエチレン系樹脂(超高分子量ポリエチレン)で形成された摺動部材となっている。
【0021】
苗送りベルト(79)は、駆動ローラ(84)と従動ローラ(85)とに張架されている。駆動ローラ(84)は左右方向の苗送り駆動軸(86)と一体回転するように設けられている。苗送り駆動軸(86)は、ラチェット機構(87)により、苗送りベルト(79)が苗送りする方向にだけ回転を伝達するようになっている。
【0022】
苗送りベルト(79)の駆動機構は下記の構成となっている。すなわち、伝動ケース(77)の左右両側からそれぞれ突出して回転駆動する駆動側アーム(88)が設けられている。また、苗送り駆動軸(86)の上側には左右方向の中継軸(89)が設けられ、それに従動側アーム(90)が取り付けられている。中継軸(89)と苗送り駆動軸(86)とは、アーム(91,92)及びリンク(93)とからなるリンク機構(94)により伝動連結されている。
【0023】
苗載台(80)が左右移動行程の端部に到達すると、駆動側アーム(88)が従動側アーム(90)にその下側から当接して、中継軸(89)を所定角度回転させる。その回転がリンク機構(94)及びラチェット機構(87)を介して苗送り駆動軸(86)に伝達される。これにより、苗送りベルト(79)が所定量だけ作動する。尚、苗載台(80)が左右移動両端部でそれぞれ苗送り動力を伝達できるように、1個の駆動側アーム(88)に対して左右に2個の従動側アーム(90)が同一の中継軸(89)上に設けられている。駆動側アーム(88)が従動側アーム(90)から離れると、後述する揺動支点軸(95)に係止したスプリング(96)の張力によって中継軸(89)及び従動側アーム(90)は駆動前の位置に戻る。尚、中継軸(89)及び従動側アーム(90)は、スプリング(96)の張力で、中継軸(89)の端部に設けたストッパ(97)が苗載台(80)本体側の規制部材(98)に当接する位置まで戻る構成となっている。
【0024】
ところで、苗送り駆動軸(86)は、左側4条部分と右側4条部分とに分割されている。また、中継軸(89)も左側中継軸と右側中継軸とに分割されている。そして、左右の苗送り駆動軸(86)及び中継軸(89)に対応して、駆動側アーム(88)、リンク機構(94)及び左右2個の従動側アーム(90)も左右にそれぞれ設けられた構成となっている。
【0025】
従動側アーム(90)は、回動中心近くの基部分(90a)と駆動側アーム(88)が当接する回動先端側部分(90b)とが別体で構成され、両部分(90a,90b)がアーム(90)中途部に設けた左右方向の揺動支点軸(95)で連結されている。尚、前記基部分(90a)が中継軸(89)と一体回転する構成となっており、前記回動先端側部分(90b)は、揺動支点軸(95)に設けたトルクスプリング(図示せず)により揺動支点軸(95)回りに上側(苗送りベルト(79)への伝動において当接する側とは反対側)へ回動する方向へ付勢され、常態ではそれ以上上側へ回動しないように中継軸(89)に当接している。従って、駆動側アーム(88)が従動側アーム(90)にその下側から当接する通常の苗送り伝動時には、従動側アーム(90)の基部分(90a)と回動先端側部分(90b)とが一体的に中継軸(89)回りに上側へ回動する。一方、駆動側アーム(88)が逆転して従動側アーム(90)にその上側から当接するときは、基部分(90a)に対して回動先端側部分(90b)だけが下側(苗送りベルト(79)への伝動において当接する側)へトルクスプリングに抗して揺動するのである。
【0026】
苗載台(80)の苗載面(80c)の上側には、マット苗の床部の上面に当たって該マット苗を苗載面(80c)側へ押圧する苗押え具(130)が設けられている。この苗押え具(130)により、マット苗を苗送りベルト(79)側に適度に押圧し、苗送りベルト(79)で確実に精度良くマット苗を移送できるようにしている。苗押え具(130)は、金属製の棒材のみが組み合って構成され、マット苗に当たる部分は苗載台(80)に沿って延びる接触部(131,132)で構成されている。この接触部(131,132)は、各条の苗載部(80b)毎に3本ずつ設けられ、苗載部(80b)の左右中央に位置する全長が短い1本の中央の接触部(131)と、苗載部(80b)の左右両側部に位置する全長が長い2本の側部の接触部(132)とからなる。これらの接触部(131,132)は、前端部(131a,132a)及び後端部(131b,132b)の両端が上側(苗載台(80)の苗載面(80c)とは反対側)に屈曲している。尚、前記前端部(131a,132a)及び後端部(131b,132b)は、軸である。中央の接触部(131)及び側部の接触部(132)の屈曲した後端部(132b)の上端は左右方向に延びる軸となる後側部(133)に溶接により固着され、側部の接触部(132)の屈曲した前端部(132a)の上端は左右方向に延びる前側部(134)に溶接により固着され、側部の接触部(132)は前側部(134)及び後側部(133)で両持ち支持され、中央の接触部(131)は後側部(133)で片持ち支持されている。尚、前側部(134)及び後側部(133)は2条分の苗載部(80b)毎にそれぞれ1本設けられ、2条分の苗載部(80b)における接触部(131,132)が共通の前側部(134)及び後側部(133)に支持される構成となっている。
【0027】
苗載台(80)の仕切り壁部(80a)には後側の支柱(135)が仕切り壁部(80a)から立ち上がるように固着して設けられ、この後側の支柱(135)には前後方向に向く断面円形状の取付孔が設けられている。この取付孔は、後側の支柱(135)の上下方向に複数設けられている。同様に、苗載台(80)の仕切り壁部(80a)には前側の支柱(136)が仕切り壁部(80a)から立ち上がるように固着して設けられ、この前側の支柱(136)の上端部には前側から切り欠いた断面半円形状の切り欠き部(136a)が設けられている。一方、前記後側部(133)の左右両端には後側に屈曲した固定部(133a)が設けられ、この固定部(133a)が前記取付孔に挿入されている。また、前記前側部(134)の左右両端部が前記切り欠き部(136a)に挿入されている。従って、前側部(134)が左右の前側の支柱(136)で支持され、後側部(133)が左右の後側の支柱(135)で支持され、苗押え具(130)全体が苗載台(80)に支持された構成となっている。
【0028】
そして、苗押え具(130)は、前記固定部(133a)を取付孔から抜いて外すことにより、前側部(134)を軸心として上下に回動させることができる。この苗押え具(130)の回動により、植付作業終了時等に、苗押え具(130)と苗載台(80)の苗載面(80c)との間に残った苗を、苗押え具(130)が邪魔にならずに容易に取り出すことができる。また、苗押え具(130)を回動して前記固定部(133a)を別の取付孔に挿入することにより、苗載面(80c)に対する接触部(131,132)の位置あるいは角度を変更することができ、マット苗の床部の厚みや強度等の違いに応じて苗押え具(130)の位置あるいは角度を調節し、苗送りベルト(79)の苗送り抵抗が過大にならずに苗を苗送りベルト(79)側に適度に押圧することができる。更には、固定部(133a)を取付孔から抜いて外すと共に前側部(134)を切り欠き部(136a)から外すことにより、苗載台(80)から苗押え具(130)を取り外すことができ、苗載台(80)上に残った苗を容易に取り出せることはもとより、苗載台(80)や苗植付部(4)のメンテナンスを苗押え具(130)が邪魔にならずに容易に行える。尚、固定部(133a)を取付孔から抜くときは、苗押え具(130)(主として後側部(133))を撓ませながら抜くようになっている。
【0029】
後側部(133)の左右両端部には、上側へ延びる苗受け止め具取付部(137)を溶接により固着して設けている。この苗受け止め具取付部(137)に苗受け止め具(138)を引っ掛けて装着できる構成となっている。前記苗受け止め具(138)は、各条の苗載部(80b)毎に設けられ、当該苗載部(80b)上の苗がその自重により苗取出口(78)側に移動しないように受け止めるものである。この苗受け止め具(138)により、苗送りベルト(79)の作動に拘らず、苗取出口(78)へ確実に苗が供給されないようにでき、一部の植付条で苗を植え付けずに他の植付条のみで部分的に苗の植付作業を行うことができる。
【0030】
各々の接触部(131,132)の後端部(131b,132b)の上端と後側部(133)とが交差する部分には、苗載台(80)上の苗が苗載面(80c)あるいは横枠(81)から浮き上がるのを防止すると共に、苗載台(80)の左右移動で左右方向へずれるのを防止する苗浮き上がり防止具(139)を取り付けている。この苗浮き上がり防止具(139)は、合成樹脂製であり、上部に苗押え具(130)の後側部(133)が嵌る上部切り欠き溝(140)を備え、側面に上下方向に向く苗押え具(130)の接触部(131,132)の後端部(131b,132b)が嵌る側部切り欠き溝(141)を備え、下部にマット苗の床部の上面に当たって該苗を押圧する浮き上がり防止作用部(142)を備えている。尚、この苗浮き上がり防止具(139)は、上部切り欠き溝(140)及び側部切り欠き溝(141)により、苗押え具(130)に着脱できる。前記上部切り欠き溝(140)は、苗浮き上がり防止具(139)の上側から切り欠いた構成となっており、前記後側部(133)が嵌る嵌合部となる断面円形の部分(140a)を上下に複数(2個)連ねて設けている。前記側部切り欠き溝(141)は、機体の左側から切り欠いた構成となっており、前記接触部(131,132)の後端部(131b,132b)が嵌る断面半円形状の部分が上下方向に貫通した構成となっている。この側部切り欠き溝(141)の上下の適宜の位置には、苗浮き上がり防止具(139)が前記苗押え具(130)から外れにくいように該溝(141)側に突出する突出部(141a)が設けられている。前記浮き上がり防止作用部(142)は、苗押え具(130)の接触部(131,132)と同じ左右方向の位置で且つ前記接触部(131,132)より後側に配置され、斜め後下方に向く鋭角状の頂点部(142a)を備えた側面視三角形状であり、この下辺部(142b)に苗の床部の上面が接触することになる。前記下辺部(142b)は、苗押え具(130)の接触部(131,132)の接触面部分より苗載面(80c)側に位置し、苗載台(80)の苗送り下手側(下側、後側又は苗取出口(78)側)へいくほど苗載面(80c)に近づくように苗載面(80c)に対して斜めに構成されている。前記頂点部(142a)は、苗載台(80)の苗載面(80c)の後端と対向する位置に配置されている。また、浮き上がり防止作用部(142)の左右方向の幅は、苗押え具(130)の接触部(131,132)の左右方向の幅より狭くなっている。
【0031】
苗植付部(4)の下部には、中央2条分の苗植付位置を整地するセンターフロート(100)、左右それぞれ最外2条分の苗植付位置を整地するサイドフロート(101)及びセンターフロート(100)とサイドフロート(101)との間で残り1条分の苗植付位置を整地するミッドフロート(102)が設けられている。これらフロート(100,101,102)を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート(100,101,102)が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置(37)により苗が植付けられる。各フロート(100,101,102)は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート(100)の前部の上下動が上下動検出機構(103)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ(76)を制御する油圧バルブ(図示せず)を切り替えて苗植付部(4)を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0032】
施肥装置(5)は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)(110)に貯留されている肥料(粉粒体)を各条の肥料繰出部(粉粒体繰出部)(63)によって一定量づつ繰り出し、その肥料を肥料移送ホース(粉粒体移送ホース)(111)でフロート(100,101,102)に取り付けた施肥ガイド(112)まで導き、施肥ガイド(112)の前側に設けた作溝体(113)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。モータ(114)で駆動のブロア(115)で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ(116)を経由して肥料移送ホース(111)内に吹き込み、肥料移送ホース(111)内の肥料を苗植付部(4)側の肥料吐出口(施肥ガイド(112))へ強制的に移送するようになっている。施肥溝内に供給された肥料は、施肥ガイド(112)及び作溝体(113)の後方でフロート(100,101,102)に取り付けた覆土板(117)により覆土される。
【0033】
各条の施肥ガイド(112)及び作溝体(113)は、対応する苗植付装置(37)との位置関係(距離)を均一にして各条の肥効を均一化することが望ましいので、それぞれ前後方向において同じ位置(機体側面視で同じ位置)に配置される。同様に、各条の覆土板(117)も対応する施肥ガイド(112)、作溝体(113)及び苗植付装置(37)との位置関係を(距離)を均一にすることが望ましい。何故ならば、覆土板を前寄りに位置させて施肥ガイドに近づけ過ぎると、覆土板で押し寄せられる泥が施肥ガイド内に供給されて該施肥ガイドに泥が詰まるおそれがあり、覆土板を後寄りに位置させて施肥ガイドから離し過ぎると、覆土板で覆土するまでに圃場内の水等により施肥溝の底から肥料が若干浮き上がって、その結果覆土量が少なくなり、適切な肥効が得られなくなるおそれがあるからである。
【0034】
以上により、この乗用型の田植機(1)は、マット苗の端部を受ける苗受枠となる横枠(81)と、該横枠(81)に備える苗取出口(78)と、前記横枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、該苗載台(80)上の苗を上側から押圧する苗押え具(130)と、前記苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設け、苗取出口(78)側へいくほど苗載台(80)の苗載面(80c)に近づくように該苗載面(80c)に対して斜めの部分となる下辺部(142b)を備える苗浮き上がり防止具(139)を、苗押え具(130)より苗取出口(78)側に設けている。
【0035】
従って、この乗用型の田植機(1)は、苗載台(80)上に苗を搭載した状態で、該苗載台(80)を機体に対して左右方向に移動させて苗を所定の苗取出口(78)へ一株分ずつ供給し、苗植付装置(37)が前記苗取出口(78)へ供給された苗を取り出して圃場に移植する。苗載台(80)上の苗は、苗押え具(130)により上側から押圧され、この苗押え具(130)から引き継がれる苗浮き上がり防止具(139)の下辺部(142b)により、苗取出口(78)の手前で該苗取出口(78)側へいくほど苗を強く押圧する。
【0036】
よって、苗浮き上がり防止具(139)の下辺部(142b)により苗取出口(78)の手前で該苗取出口(78)側へいくほど苗を強く押圧するので、苗取出口(78)又は該苗取出口(78)の近くで苗が苗載台(80)の苗載面あるいは横枠(81)から浮き上がるようなことを適確に防止でき、また苗載台(80)の左右移動で横枠(81)上の苗が左右方向へ歪むようなことを適確に防止できるため、苗を苗取出口(78)へ適正な状態で且つ適確に供給し、苗植付装置(37)が精度良く苗を植付けることができる。
【0037】
尚、苗浮き上がり防止具(139)の頂点部(142a)を横枠(81)に対向する位置に配置し、下辺部(142b)の一部が横枠(81)上に位置する構成とすれば、苗浮き上がり防止具(139)がより苗取出口(78)の近くで苗を押圧することができる。
【0038】
また、苗浮き上がり防止具(139)の下辺部(142b)は、苗押え具(130)の接触部(131,132)の接触面部分より苗載台(80)の苗載面(80c)側に位置しているので、マット苗の床部を苗押え具(130)よりも強く押圧することになり、苗取出口(78)又は該苗取出口(78)の近くで苗が浮き上がったり歪んだりすることを適確に防止できる。
【0039】
また、浮き上がり防止作用部(142)の左右方向の幅は、苗押え具(130)の接触部(131,132)の左右方向の幅より狭くなっているので、浮き上がり防止作用部(142)の苗の床部への接触面の面積が小さくなり、苗取出口(78)側への苗の移送抵抗になるようなことを極力抑えることができると共に、浮き上がり防止作用部(142)が苗の床部の上面へくい込みやすくなり、苗が左右方向へ歪むようなことを効率良く防止できる。
【0040】
更に、苗浮き上がり防止具(139)を苗押え具(130)に着脱できる構成としているので、苗浮き上がり防止具(139)の押圧により逆に苗を損傷させるおそれがある場合に、該苗浮き上がり防止具(139)を取り外したり各条の苗載部(80b)あたりの装着する苗浮き上がり防止具(139)の個数を変えたりことができ、苗の状態に応じて苗が損傷しないように調節できる。
【0041】
しかも、苗浮き上がり防止具(139)は、浮き上がり防止作用部(142)より上側に配置された上部切り欠き溝(140)及び側部切り欠き溝(141)により苗押え具(130)に装着する構成となっているので、前記上部切り欠き溝(140)及び側部切り欠き溝(141)が苗の床部に接触しないようにでき、苗載台(80)上での苗の移送抵抗になるようなことを抑えている。また、苗浮き上がり防止具(139)は、上部切り欠き溝(140)及び側部切り欠き溝(141)により、苗押え具(130)の接触部(131,132)の後端部(131b,132b)と後側部(133)との直角に交差する2軸に装着する構成となっているので、浮き上がり防止作用部(142)に如何なる方向から外力が作用しても苗押え具(130)から外れにくく、植付作業の途中で外れることにより苗が浮き上がったり歪んだりするようなことを防止できる。更に、上部切り欠き溝(140)は、苗浮き上がり防止具(139)の上側から切り欠いた構成となっているので、苗の押圧の反力を受けても、苗浮き上がり防止具(139)が上側へ外れることがない。
【0042】
尚、上部切り欠き溝(140)は、断面円形の部分(140a)を上下に複数(2個)連ねて設けているので、後側部(133)が嵌る位置を上下に切り替えることにより、苗浮き上がり防止具(139)の上下位置を変更することができ、苗の床部への押圧力を調節することができる。
【0043】
尚、この発明の実施の形態は乗用型の田植機(1)について記述したが、本発明は乗用型の田植機に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】田植機の側面図
【図2】田植機の平面図
【図3】走行車体の要部を示す平面図
【図4】苗植付部を判りやすく示す展開平面図
【図5】苗載台の下部を示す断面側面図
【図6】スライダの周辺構造を示す断面側面図
【図7】一部破断して苗浮き上がり防止具を示す苗載台の下部の断面側面図
【図8】苗押え具及び苗浮き上がり防止具を示す側面図
【図9】苗押え具及び苗浮き上がり防止具を示す背面図
【図10】苗浮き上がり防止具を示す拡大側面図
【符号の説明】
【0045】
1:乗用型の田植機、37:苗植付装置、78:苗取出口、80:苗載台、80c:苗載面、81:横枠、130:苗押え具、131b:中央の接触部の後端部、132b:側部の接触部の後端部、133:後側部、139:苗浮き上がり防止具、140:上部切り欠き溝、140a:断面円形の部分、142b:下辺部、141:側部切り欠き溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、前記苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、該苗載台(80)上の苗を上側から押圧する苗押え具(130)と、前記苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設けた苗移植機において、苗取出口(78)側へいくほど苗載台(80)の苗載面(80c)に近づくように斜めの部分(142b)を備える苗浮き上がり防止具(139)を、苗押え具(130)より苗取出口(78)側に設けた苗移植機。
【請求項2】
苗浮き上がり防止具(139)を、合成樹脂で形成し、苗押え具(130)に着脱自在に設けた請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
苗浮き上がり防止具(139)を、苗押え具(130)に備える交差する2つの軸(131b,132b,133)に装着し、一方の軸(133)が嵌る嵌合部(140a)を上下に複数設けた上部切り欠き溝(140)と他方の軸(131b,132b)が嵌る上下方向に設けた側部切り欠き溝(141)とを備える請求項2に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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