説明

苗移植機

【課題】植付条間を狭く設定可能な苗植付装置を備えたコンパクトな苗移植機の提供である。
【解決手段】苗植付装置50に、植付伝動ケース2,43からの出力軸9と、出力軸9の回転により駆動回転する各植付条の駆動アーム36と、各植付条の駆動アーム36の駆動回転により苗を植える各植付条の苗植付具59と、各植付伝動ケース2,43と苗植付具59に連結した揺動アーム108とを有し、各植付条の駆動アーム36の各植付条の苗植付具59との連結側36bとは反対側端部に、苗植付具59とのバランスを取り、且つ走行車体56の前進方向に向かって植付伝動ケース2,43の左右端部より内側に突出し、かつ駆動アーム36の回転駆動時に植付伝動ケース2,43の左右端部に接触しない位置にバランスウエイト部36aを設けたため、各植付条の苗植付具59の互いの間隔である植付条間を狭く設定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行車体に苗植付装置を連結した苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右に複数設けた苗載部に苗を載せて左右移動して苗を一株分づつ前記苗載部に対応する左右に複数設けた苗取出口へ供給する苗載台と、苗取出口の苗を取って植え付ける左右に複数設けた苗植付装置を備える苗植付部と、粉粒体となる肥料や薬剤を貯溜する粉粒体貯溜部と該粉粒体貯溜部内の粉粒体を所定量づつ繰り出す繰出部とを備えた粉粒体吐出装置と、苗植付面を滑走しながら整地するフロートなどを走行車体に設けた苗移植機となる多条植形態の乗用型田植機が知られている。
【0003】
このような乗用型田植機の苗植付部の苗植付装置は、苗植付具の先端の植付爪が上下に長い閉ループ軌跡を描いて作動し、一株分の苗を切取って土中に植込み、苗を差し込んで移植するものである。
苗植付具の植付爪は、このように泥土等が付着しやすく、また接地した際の衝撃を受けるため、保守点検が必要となる。そして、保守点検の作業効率を高めるために下記特許文献1には、ピンによって植込ケース(苗植付具のことである)を苗植歯車箱(植付伝動装置のことである)から容易に取り外せるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−155323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の構成により、苗植付具の保守点検作業は容易になる。
一方、近年、設置スペースや経済性等の観点から、よりコンパクトな苗移植機が要望されている。そして、苗植付装置による植付条間も従来より狭く設定できるものが望まれている。
【0006】
しかし、上記特許文献1記載の苗植付装置は、苗植付具と苗植付具を回転作動させるためのクランク部、苗植付具への植付伝動装置などによって機体の左右方向幅(横幅)を取っており、苗植付具のメンテナンス性は良好であっても、植付条間を狭く設定できず、苗移植機のコンパクト化の要請には対応できない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、植付条間を狭く設定可能な苗植付装置を備えたコンパクトな苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記構成によって達成される。
すなわち、請求項1に係る発明は、走行車体(56)と、該走行車体(56)上に設けた駆動源(E)と、該走行車体(56)の後方に設けた苗載台(6)と、前記苗載台(6)上の苗を植え付けるために各植付条を対応させて設けた苗植付装置(50)と、前記駆動源(E)からの動力を苗植付装置(50)に伝動するために各苗植付装置(50)ごとに設けた植付伝動部を収納したケース(2,43)とを備えた複数条植えの苗移植機において、前記苗植付装置(50)は、前記走行車体(56)の前進方向に向かって左右方向に長手方向を有し、前記植付伝動ケース(2,43)の左右方向両側に突出して該植付伝動ケース(2,43)からの動力により回転する出力軸(9)と、該出力軸(9)の両端部にそれぞれ固着連結し、該出力軸(9)の回転により駆動回転する各植付条の駆動アーム(36)と、出力軸(9)の取付部よりも後方に前記各植付伝動ケース(2,43)側の端部を連結し、該端部を支点として他端部が前後方向に揺動する揺動アーム(108)と、前記走行車体(56)の前進方向に向かって前記各植付伝動ケース(2,43)の左右両側にそれぞれ設けられ、前部が各植付条の駆動アーム(36)の端部(36b)に連結し、後部が前記揺動アーム(108)の揺動側端部に連結して、各植付条の駆動アーム(36)の駆動回転により前記揺動アーム(108)を揺動させながら前記走行車体(56)の前進方向に向かって側面視で前端部が上下方向に長いループ状の作動軌跡で苗を植え付ける各植付条の苗植付具(59)とを有し、前記駆動アーム(36)の苗植付具(59)との連結側端部(36b)とは反対側の端部に、前記苗植付具(59)とのバランスを取り、且つ走行車体(56)の前進方向に向かって植付伝動ケース(2,43)の左右端部より内側に突出し、かつ駆動アーム(36)の回転駆動時に植付伝動ケース(2,43)の左右端部に接触しない位置にバランスウエイト部(36a)を設けたことを特徴とする苗移植機である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記苗植付具(59)は前記走行車体(56)の前進方向に向かって前記駆動アーム(36)の左右方向外側に設け、前記揺動アーム(108)は前記走行車体(56)の前進方向に向かって左右方向位置が前記駆動アーム(36)とほぼ同じ又は前記駆動アーム(36)の左右方向外側であって、且つ前記苗植付具(59)の左右方向内側に設け、前記揺動アーム(108)と前記苗植付具(59)とを連結する連結部(110)を、走行車体(56)の前進方向に向かって苗植付具(59)の左右内側に設け、前記駆動アーム(36)のバランスウエイト部(36a)の前記連結部(110)に対向する表面に、走行車体(56)の前進方向に向かって左右内側であって、駆動アーム(36)の回転駆動時に前記連結部(110)と接触しないように凹部(36aa)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の苗移植機によれば、駆動アーム(36)のバランスウエイト部(36a)を、植付装置伝動ケース(2,43)の左右端部より内側に突出し、かつ駆動アーム(36)の回転駆動時に植付装置伝動ケース(2,43)の左右端部に接触しない位置に設けていることから、バランスウエイト部(36a)を接地しない状態で、植付具(59)の作動による振動を低減できるように植付具(59)とのバランスを取るのに必要な大きさを確保し、且つ左右方向に設けた各植付条の苗植付具(59)の互いの間隔である植付条間を狭く設定できる。
【0011】
また、請求項2記載の苗移植機によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、植付伝動部ケース(2,43)の出力軸(9)の両端部に設けた駆動アーム(36)と左右方向がほぼ同じ位置又は駆動アーム(36)よりも左右方向外側であって、且つ苗植付具(59)の左右方向内側に揺動アーム(108)を設けたことで、揺動アーム(108)を左右方向の内側寄りの位置に配置でき、苗植付装置(50)をコンパクトにできると共に、効率よく前記植付条間を狭く設定できる。
また、揺動アーム(108)と苗植付具(59)とを連結する連結部(110)を苗植付具(59)の左右内側に設け、駆動アーム(36)のバランスウエイト部(36a)の連結部(110)に対向する表面に、左右内側であって、駆動アーム(36)の回転駆動時に連結部(110)と接触しないように凹部(36aa)を設けたことで、駆動アーム(36)が回転駆動しても揺動アーム(108)と苗植付具(59)との連結部(110)に干渉することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の苗移植機(6条植)の側面図である。
【図2】図1の苗移植機の平面図である。
【図3】図1及び図2の田植機の苗植付部の伝動機構を示した図である。
【図4】図1の田植機の畦クラッチとその作動用のケーブルの接続部を示した図である。
【図5】図1の田植機の苗送りベルトとその作動用のケーブルの接続部を示した図である。
【図6】図1の田植機の苗植付部の伝動装置の平面図である。
【図7】図7(a)は図6の伝動装置部の苗植付装置付近の拡大平面図であり、図7(b)は図7(a)の側面図である。
【図8】条間距離が広い苗載部を搭載した苗タンクの平面図(4条植)である。
【図9】苗載部の条間距離を狭くした場合の苗タンクの平面図(6条植)である。
【図10】図9の苗タンクの断面図である。
【図11】図2に示す苗移植機の各苗載部の横幅を変えた場合の苗タンクの平面図である。
【図12】条間距離が広い苗載部用の苗箱を条間距離が狭い苗載部に利用する場合の説明図である。
【図13】本発明の一実施形態の苗移植機の苗タンクの平面図である。
【図14】苗タンクの苗載部から苗植付具が苗を掻き取る際の説明図(苗タンクの平面図)である。
【図15】苗タンクの苗載部から苗植付具が苗を掻き取る際の説明図(苗植付具付近の図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、本発明の一実施形態の苗移植機としての6条植田植機の左側面図を示し、図2には図1の田植機の平面図を示す。また、図3には、図1の田植機の苗植付部Nの伝動機構を示す。
なお、本明細書では、田植機の前進方向に向って左右方向をそれぞれ左、右とし、前進方向を前、後進方向を後とする。
【0014】
走行車体56は、駆動輪である各左右一対の前輪13,13及び後輪15,15を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース22が配置され、そのミッションケース22の左右側方に前輪ファイナルケース80が設けられ、該前輪ファイナルケース80の操向方向を変えることができる前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸14に前輪13,13が取り付けられている。また、左右各々の後輪ギヤケース81は、回動支点軸S回りに上下に回動し、これにより、左右の後輪15が上下して、圃場に追従する。その後輪ギヤケース81から外向きに突出する後輪車軸16に後輪15,15が取り付けられている。
【0015】
車体56のステップフロア17上には、ミッドカバー18上に運転席19を搭載し、このシートカバー18下に駆動源であるエンジンEや燃料タンク21等を設ける。また、ステップフロア17の下方左右両側にオペレータが乗降する際の乗降ステップ20を設けている。
エンジンEの回転動力がエンジン出力プーリ90(図1)からベルト91(図1)を介して無段式の静油圧式変速装置(HST)93(図1)の入力軸に伝えられ、この入力軸から油圧ポンプを駆動し、更に、静油圧式変速装置の出力軸からミッションケース22内のミッションに伝達される。ミッションケース22内のミッションに伝達された回転動力は、ケース22内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、前輪ファイナルケース80から前輪13,13、後輪ギヤケース81から後輪15,15へ伝動すると共に、植付伝動軸23にも伝動する。
【0016】
機体の前部でステップフロア17から立ち上がるステアリングポスト24部の左右両側部には、補給用の苗を載せておく予備苗載台25,25が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
また、車体56の後端部には、平行リンク形態のリフトリンク57が上下回動自在に連結され、1本の上リンク57aと左右一対の下リンク57b,57bを備えている。これらリフトリンク57は、その基部側が車体56の後端部に立設した背面視門形のリヤフレーム26に回動自在に取り付けられている。そして、車体56と下リンク57b,上リンク57aとの間の昇降シリンダ27の伸縮によって、上リンク57a及び下リンク57b,57bが上下に回動し、苗植付部Nがほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0017】
そして、リフトリンク57後端のヒッチリンク28には、前後方向に長手方向を有するローリング軸55(図6)が配置され(図1のR部分に位置している)、左右方向にローリング自在に連結しているローリング軸55の左右両側にはバネ95(図1)があり、そのバネが伸びたり縮んだりすることで、水平状態を保っている。バネ95は、車体56側と後述する支持フレーム30に連結している。また、ローリング軸55は車体56の左右方向中央部に位置している。
【0018】
そして、苗植付部Nは6条植の構成で、苗植付部Nの植付伝動部1(図3)とローリング軸55を支持する支持フレーム30(支持フレーム30が、走行車体56からローリング軸55を介して支持されているともいえる)、苗を載せて左右往復動して苗を一株づつ各条の苗取出口6b、…に供給する苗載部6e、苗載部6eを有する苗タンク(苗載台)6、及び前記苗取出口6b、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置50、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする図示しない左右一対の線引きマーカ等を備えている。
【0019】
各苗載部6eは方形状のマット苗を収容して繰出すもので、後下りの傾斜に構成されて、下端底部には苗送りベルト6cを設け、この苗送りベルト6cの間歇的駆動によって苗を一定量毎繰出すものである。具体的には、苗タンク6は、左右に複数設けた各々の苗載部6eにマット苗を載せて左右に往復動し苗を一株分づつ各条における苗受板(前板)6aの苗取出口6bに供給すると共に横一列の苗を全て苗取出口6bに供給すると苗送りベルト6cにより苗を下方に移送する。
【0020】
そして、苗植付装置50の苗植付具59は先端(前端部)が上下方向に長い閉ループ軌跡を描いて作動し、一株分の苗を切取って土中に植込む。また、苗載部6eはマット苗毎に仕切突条部6dによって仕切られている。なお、苗送りベルト6cは車体56の前進方向に向かって前後方向又は上下方向に苗を移送する。本実施形態では、苗送りベルト6cは車体56の前進方向に向かって後方下部に苗を移送する。
【0021】
苗植付部Nの下部には中央にセンターフロート51、その左右両側にサイドフロート52がそれぞれ設けられており、これらセンターフロート51、サイドフロート52を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、センターフロート51、サイドフロート52が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置50、…により苗が植付けられる。前記センタフロート51とサイドフロート52は、後部を深さフレーム115後端のフロート軸40(図1)の周りに回動自在に支持し、深さフレーム115は支持フレーム30に対して上下回動可能にしてフロート軸40の高さを調節できる構成である。
【0022】
そして、各フロート(センターフロート51、サイドフロート52)は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動し、植付作業時にはセンターフロート51の前部の上下動が迎い角センサ53(図1)により検出され、その検出結果に応じて昇降シリンダ27を制御する油圧バルブ29(図1)を切り替えて苗植付部Nを昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
前記苗植付装置50の植付伝動部(植付装置伝動ケース)1は、左右方向に幅広い形態であり、後部を左右に分岐させて各センタフロート51、及びサイドフロート52の上部に沿って後方へ突出してフォーク状形態に分岐部を形成している。
植付伝動軸23によって苗植付部Nへ伝動される動力は、苗植付部Nに備える植付伝動部1内へ伝動され、該植付伝動部1内から各条の苗植付装置50及び苗送りベルト6cへ伝動される。植付伝動部1内で動力を分岐して各2条毎の単位で苗植付装置50へ伝動する分岐伝動部41が設けられ、該分岐伝動部41の伝動を入切する植付用部分クラッチ61が設けられ、植付用部分クラッチ61から分岐伝動部41にはチェン178(図3)により動力が伝動される構成であり、植付用部分クラッチ61により苗植付装置50を2条毎に停止させることができる。
【0023】
苗植付装置50の作動及び停止を隣接する2条づつの単位で切り替える植付用部分クラッチ61は、畦際での作業時に「切」に操作されることが多いことから、通常「畦クラッチ」と呼ばれている。なお、植付用部分クラッチ61の操作に連動してそれに対応する植付条の苗送りベルト6cも停止させる連動機構が設けられている。植付用部分クラッチ61を操作する各々の畦クラッチレバー62(図1)が運転席19の後側で且つ苗タンク6の上部の前方に設けられている。
また、図3に示すように、植付伝動部1内の動力からの駆動により苗送り駆動カム170が常時回転し、苗載部6eの左右移動端で苗送り駆動カム170が苗送りアーム172、172に係合することで苗送りアーム172と一体の回転軸174が回動し、174の回動により左右のリンク176を介して左右の苗送り用部分クラッチ63も駆動し、苗送り用部分クラッチ63から苗送り駆動ローラ220を駆動して、苗送りベルト6cを駆動する。そして、図4には植付用部分クラッチ61とその作動用の植付用ケーブル72の接続部を示し、図5には苗送りベルト6cとその作動用の苗送りケーブル73の接続部を示している。
【0024】
植付伝動部1内に設けられた植付用部分クラッチ61は苗植付装置50の伝動軸50aに固着した駆動側クラッチ体206と該クラッチ体206のクラッチ歯206aと係脱自在のクラッチ歯207aを有する受動側クラッチ体207を備えており、該受動側クラッチ体207はスプリング209とスプロケット210とワッシャ211により常時伝動軸50a側に付勢されており、常時は植付用部分クラッチ61は作動状態にある(植付用ケーブル72を引いた状態)。
【0025】
受動側クラッチ体207の側面にはクラッチピン溝207bが設けられており該溝内に植付用ケーブル72の先端に接続された畦クラッチピン213が挿脱自在に設けられている。畦クラッチピン213は植付伝動部1の壁面の穴を貫通するように穴内に設けられ、かつスプリング214で植付伝動部1の壁面から植付伝動部1の内側に突出自在になっている。従って植付用ケーブル72を引くと畦クラッチピン213は受動側クラッチ体207のクラッチピン溝207bから引き抜かれる方向に移動される。畦クラッチピン213は受動側クラッチ体207のクラッチピン溝207b内を所定の引き抜き量で引き抜かれると、スプリング214の付勢力により植付用部分クラッチ61が「入」となる。植付用部分クラッチ61は苗の植え付けを行わない時(植付用部分クラッチ61:「切」)は定位置停止クラッチとなっており、植付用ケーブル72を引くと植付用部分クラッチ61が「入」となる。
【0026】
植付用部分クラッチ61を切にするときは、植付用ケーブル72が弛められるので、圧縮スプリング214の付勢により畦クラッチピン213がクラッチピン溝207bに入り、その状態で受動側クラッチ体207が回転することにより、クラッチピン溝207bの案内により受動側クラッチ体207が圧縮スプリング209に抗して徐々に該圧縮スプリング209側に移動し、受動側クラッチ体207の所定の回転位置(クラッチピン溝207bの回転方向端部に畦クラッチピン213が位置する状態)でクラッチ歯206a、207aの係合が初めて外れ、受動側クラッチ体207が定位置で停止する。 なお、圧縮スプリング209の付勢力で、圧縮スプリング214が縮んで畦クラッチピン213が植付用ケーブル72側へ押し戻されることはない。
そして、植付用部分クラッチ61が「入」となると、スプロケット210に係止しているチェン216が駆動され、苗植付装置50が作動する。
【0027】
図5には苗送りベルト6cの作動機構の構成を示す。苗送りケーブル73はL字状のシフターアーム219の一端部に接続しており該シフターアーム219の他端部は苗送り駆動ローラ220の駆動側クラッチ体221に接続しており、苗送りケーブル73の「入」、「切」側への動きに応じて駆動側クラッチ体221が「入」、「切」に切り替わる構成になっており、苗送り用部分クラッチ63を構成している。駆動側クラッチ体221は苗送りローラ220にクラッチ歯220a、221aを介して係脱可能な構成であり、苗送り駆動ローラ220の駆動側クラッチ体221とは反対側には隣接条の苗送り駆動ローラ220に常時噛合したクラッチ歯を介して接続している。苗送り駆動ローラ220の並列位置に苗送り従動ローラ223があり、これらの駆動ローラ220、従動ローラ223間には苗送りベルト6cが巻かれている。
【0028】
畦クラッチレバー62の操作により、植付用部分クラッチ61の受動側クラッチ体207を作動・非作動に切り換えることができ、また苗送りベルト6cの駆動側クラッチ体221を作動・非作動に切り換えることができる。すなわち、畦クラッチ作動用の植付用ケーブル72を畦クラッチ作動側に動かし、同時に苗送りベルト作動用の苗送りケーブル73を苗送りベルト作動側に動かすことができ、また、畦クラッチ作動用の植付用ケーブル72を畦クラッチ非作動側に動かし、同時に苗送りベルト作動用の苗送りケーブル73を苗送りベルト非作動側に動かすことができる。このように、各畦クラッチレバー62の操作で苗植付装置50と苗送りベルト6cを同時に作動させることができ、また同時に非作動とさせることができる。
【0029】
図6には、図1の苗移植機の苗植付部Nの植付伝動部1の平面図を示す。また、図7(a)には、図6の伝動装置部の苗植付装置50付近の拡大図を示し、図7(b)には図7(a)の側面図を示す。
前記植付伝動部1は、左右方向に長手方向を有するスペーサケース44と該スペーサケース44から各苗植付装置50の各条の苗植付具59に分岐する中央部のセンタケース2と左右両側のサイドケース43からなり、中央部のセンタケース2の左右両側部にチューブ形態のスペーサケース44を介してサイドケース43を連結して一体的構成として、フォーク状形態に形成している。このフォーク状形態の柄部に当るセンタケース2部のほぼ同じ位置にローリング軸55を設けると共に、この右寄り位置に入力軸3を設けて、前記植付伝動軸23に連結する。
【0030】
各センタケース2及びサイドケース43の後端部に軸装される植付出力軸9の左右両側部には駆動アーム36が設けられる。
各駆動アーム36の端部には、植付出力軸9に連結した支持フレーム(支持部材)46に支持された苗植付具59が設けられて、この駆動アーム36の回転によって垂下姿勢を維持して昇降駆動されながら、上部の苗取出口6bで分離保持した苗を土壌面に挿植するもので、センタケース2、サイドケース43毎に二条植形態とし、全体で六条植えの構成としている。
【0031】
センタケース2とサイドケース43の前部間には、該スペーサケース44内部を経て横方向(左右方向)にわたって伝動軸4が軸装され、この伝動軸4から分岐伝動部41、センタケース2、サイドケース43内の縦伝動機構であるチェン178を介して植付出力軸9が伝動回転する。更に各分岐伝動部41には植付用部分クラッチ61が設けられ、この植付用部分クラッチ61を入り切りすることによってセンタケース2、サイドケース43部への伝動が入り、切りされる。
【0032】
植付用部分クラッチ61(図1)は各センタケース2及びサイドケース43毎に設けられるため、畦際作業で苗植作業を停止しようとする条数域にわたる個所の植付用部分クラッチ61を畦クラッチレバー62により切り操作できる。このとき、各植付用部分クラッチ61は、二条植の分岐伝動部41の伝動を入り切りする形態であるため、二条植毎の植付用部分クラッチ61の操作となる。
また、この各分岐伝動部41には安全クラッチ8が設けられ、安全クラッチ8は、分岐伝動部41の伝動軸4上には該伝動軸4とチエンスプロケット67との間で動力を伝達するクラッチ爪を備えて、スプリング68によってチエンスプロケット67側へ押圧されている。チエンスプロケット67は伝動軸4周りに回転自在で、このチエンスプロケット67側に苗植付過負荷が働くことによって、この安全クラッチ8部がクラッチ切りになる。
【0033】
前記中央部のセンタケース2の前部には、チェン178、及び前記ローリング軸55の右側にカム軸伝動ケース12が形成されて、前記苗載部6eの底部下側に横方向に沿って設けられるリードカム軸10の右端部を軸受けする。カム軸伝動ケース12内にはリードカム軸10の右端部と伝動軸4との間のチェン伝動からなるカム軸伝動機構11が設けられ、カム軸伝動機構11、カム軸伝動ケース12からなる横伝動部により、伝動軸4からリードカム軸10に動力が伝動される。
【0034】
このリードカム軸10は周面に往復螺旋状のカム溝47が形成されて、左右移動自在に支持された苗載部6e底部下面に突出するリードカム48を嵌合させて、このリードカム軸10の回転によって苗載部6eをタンク幅にわたって左右へ往復移動させる。このリードカム軸10の先端部には苗送り駆動カム170を有して、この苗送り駆動カム170の回転によって苗送りアーム172(図3)が駆動し、苗載部6eが左右横端部に移動する毎に苗送りベルト6cを一定量毎に駆動して、苗載部6eのマット苗を苗受板6a側へ移送する。
【0035】
苗植作業時に苗植付部Nはローリング軸55周りにローリング自在の状態にあって、センタフロート51、サイドフロート52の接地滑走により、土壌面や耕盤等が左右に傾斜すると、このローリング軸55の周りにローリング制御されて、各フロート51、52による滑走土壌面をできるだけ水平面に維持するように均平して、苗植深さを揃えるように維持する。
【0036】
苗植付部Nの伝動機構について説明する。
エンジンEからの動力が植付伝動軸23を介して入力軸3へ伝動されて伝動軸4が回転し、センタケース2、サイドケース43部の植付用部分クラッチ61、安全クラッチ8、分岐伝動部41、及びチェン178等を経て苗植付具59が作動する。また、この伝動軸4からカム軸伝動ケース12内のカム軸伝動機構11を経てリードカム軸10が回転し、苗載部6eが左右に往復移動することで、苗取出口6b上に順次苗を供給する。また、この苗の供給動作と共に、苗載部6eが左右端部に達すると、苗送り駆動カム170によって苗送りアーム172(図3)が駆動し、苗送りベルト6cにより苗を下方に移送する。 そして、このようにして、苗載部6eに収容していたマット状の苗が、苗受板6a側に繰出されると共に、苗受板6aの苗取出口6bに作用する各苗植付具59によって分離保持されて、センタフロート51、各サイドフロート52で均平された土壌面に植付けられる。
【0037】
苗植付装置50の苗植付具59の連結及び作動機構について説明する。
植付伝動部1内の分岐伝動部41からチェン178を介して各センタケース2及びサイドケース43の左右方向両側に突出して軸装される植付出力軸9に動力が伝動され、植付出力軸9は回転する。植付出力軸9の各センタケース2及びサイドケース43から突出した両端部にはそれぞれ各条の駆動アーム36が固着連結しており、植付出力軸9の回転に連動して駆動回動する。駆動アーム36の一端部には苗植付具59が回動可能に連結している(図7の連結部V)。駆動アーム36の回転によって苗植付具59が垂下姿勢を維持して昇降駆動され、苗取出口6bで分離保持した苗を先端(前端部)の植付爪59aにより掻き取って側面視で上下方向に長いループ状の作動軌跡(図15(c)の一点鎖線)で苗を植え付ける。
【0038】
苗植付具59の後端部には揺動アーム108の一端が回動可能に連結し、揺動アーム108の他端は各センタケース2及びサイドケース43の後部に固着した支持フレーム46の後端部46aに回動可能に連結している。
例えば、図7に示すように植付出力軸9が矢印A方向に回転すると、植付出力軸9の両端部に固着連結した駆動アーム36も植付出力軸9を支点として矢印A方向に回動する。駆動アーム36の端部に中央部が回動自在に連結した苗植付具59も垂下姿勢を維持したまま植付出力軸9を支点として同様に矢印A方向に回動し、植付爪59aにより苗を植え付ける。苗植付具59の後端部に連結した揺動アーム108は、支持フレーム46との連結部(支持フレーム46の後端部46a)を支点として苗植付具59の作動に連動して矢印B方向(前後方向)に揺動する。
【0039】
そして、駆動アーム36の苗植付具59との連結側端部36bとは反対側の端部36aには、各植付条の苗植付具59とのバランスを取るためのバランスウエイト部36aを設けている。バランスウエイト部36aは、各センタケース2及びサイドケース43の左右端部より内側に突出し、かつ駆動アーム36の回転駆動時に各センタケース2及びサイドケース43の左右端部に接触しない位置に設けている。
【0040】
駆動アーム36のバランスウエイト部36aと各センタケース2及びサイドケース43の駆動アーム36との連結部分K(図7(a))は、走行車体56の前進方向に向かってさゆう方向に重複する位置にある。
【0041】
駆動アーム36の回転駆動時に、駆動アーム36と各センタケース2やサイドケース43を平面視で全く重複しないように左右方向幅を取って設けると、センタケース2やサイドケース43の左右方向外側に設けた各植付条の苗植付具59の互いの間隔である植付条間(条間距離)を現状から狭く設定することができなくなる。
【0042】
しかし、このように、駆動アーム36のバランスウエイト部36aを各センタケース2やサイドケース43と、苗植付具59の植え付け作動によって平面視で一部重複するが、各センタケース2及びサイドケース43の左右端部(連結部分K)より内側に突出し、かつ駆動アーム36の回転駆動時に各センタケース2及びサイドケース43の左右端部に接触しない位置に設けることで、バランスウエイト部36aを接地しない状態で、苗植付具59の作動による振動を低減できるように苗植付具59とのバランスを取るのに必要な大きさを確保し、且つ植付条間を狭く設定できる。
【0043】
例えば、駆動アーム36の交換等、大きな変更なしで条間距離を4条植えの30cmから6条植えの25cmに短縮することができる。30cmから25cmに短縮する場合は、苗植付具59と駆動アーム36や揺動アーム108との連結部の部材(ボルト(軸)の長さ等)を変更する。本構成により苗植付装置50、引いては苗移植機をコンパクトにできる。
また、揺動アーム108は左右方向位置が前記駆動アーム36とほぼ同じ又は駆動アーム36よりも左右方向外側に設けると良い。
【0044】
植付出力軸9の両端部に設けた駆動アーム36と左右方向がほぼ同じ位置又は駆動アーム36よりも左右方向外側であって、且つ苗植付具59の左右方向内側に揺動アーム108を設けることで、揺動アーム108を左右方向の内側寄りの位置に配置でき、苗植付装置50をコンパクトにできると共に、効率よく植付条間を狭く設定できる。
【0045】
更に、苗植付具59と駆動アーム36と揺動アーム108との連動機構について、詳しく説明する。
上述のように、植付作動時には、揺動アーム108は苗植付具59の作動により支持フレーム46の後端部46aを支点として前後方向(矢印B方向)に揺動する。そして、駆動アーム36の連結側端部36bが前方でバランスウエイト部36aが後方に位置する時(図7(a)の状態)は、苗植付具59の駆動アーム36との連結部36bが植付出力軸9に対して前方に位置するため、揺動アーム108も揺動支点(支持フレーム後端部46a)に対して前方側に位置することになる。一方、駆動アーム36のバランスウエイト部36aが前方で連結側端部36bが後方に位置する時は、苗植付具59の駆動アーム36との連結部36bが植付出力軸9に対して後方に位置するため、揺動アーム108も揺動支点46aに対して後方側に位置することになる。
【0046】
したがって、駆動アーム36の連結側端部36bが前方でバランスウエイト部36aが後方に位置する場合(図7(a)の状態)は、苗植付具59の後端部に連結する揺動アーム108が揺動支点46aの前方側に位置するため側面視で揺動アーム108とバランスウエイト部36aは重複するが、駆動アーム36の連結側端部36bが後方でバランスウエイト部36aが前方に位置する場合は、苗植付具59に連結する揺動アーム108が揺動支点46aの後方側に位置するため側面視で駆動アーム36の連結側端部36bと揺動アーム108は重複しない。
【0047】
このように、植付作動により駆動アーム36の連結側端部36bが前方でバランスウエイト部36aが後方に位置する場合は側面視でバランスウエイト部36aと揺動アーム108は重複する位置にあるが、駆動アーム36の連結側端部36bが後方でバランスウエイト部36aが前方に位置する場合は駆動アーム36の苗植付具59との連結側端部36bと揺動アーム108は重複する位置にないように苗植付具59と駆動アーム36と揺動アーム108とを設けることで、駆動アーム36と揺動アーム108の前後方向幅を抑えたコンパクトな苗植付装置50となる。
【0048】
また、揺動アーム108と苗植付具59とを連結する連結部110を、苗植付具59の左右内側に設け、駆動アーム36のバランスウエイト部36aの連結部110に対向する表面に、左右内側であって、駆動アーム36の回転駆動時に連結部110と接触しないように凹部を設けている。すなわち、連結部110に干渉しないように、バランスウエイト部36aを連結側端部36bよりも左右方向内側に偏位させて設ける。例えば、図7(a)に示すように、バランスウエイト部36aは平面視で苗植付具59と揺動アーム108を連結するボルト110部分を避けるように凹部36aaを形成すると良い。
【0049】
このように、駆動アーム36の回転駆動時に、バランスウエイト部36aの連結部110に対向する表面に、連結部110と接触しないように凹部36aaを設けることで、駆動アーム36が回転駆動しても揺動アーム108と苗植付具59との連結部(ボルト110部分)に干渉することがない。
【0050】
そして、図7(a)に示すように、支持フレーム46の後端部(揺動アーム108との連結部)46aの左右方向幅W1を支持フレーム46の前端部(植付出力軸9との連結部)46bの左右方向幅W2よりも小さくし(W1<W2)、支持フレーム46の後部が先細りとなるような形状にしても良い。
植付条間が狭い苗移植機の場合、隣接する苗植付具59の揺動アーム108同士が接近する。したがって、揺動アーム108同士の干渉を防止するために支持フレーム46の幅も狭くする必要があるが、支持フレーム46全体の横方向の幅を狭くすると支持フレーム46の強度が弱くなってしまう。
【0051】
しかし、支持フレーム46全体の横方向の幅を狭くするのではなく、揺動アーム108が連結している後端部46aの幅を他の部分よりも狭くすることで、支持フレーム46の他の部分は横方向の幅を十分確保できるため、支持フレーム46全体の強度を保持できる。
【0052】
また図8には、条間距離が広い苗載部6eを搭載した苗タンク6の平面図(4条植)を示し、図9には、苗載部6eの条間距離を狭くした場合の苗タンク6の平面図(6条植)を示す。更に、図10には、図9の苗タンク6の断面図を示す。
4条植の広い苗載部6eを切断して繋ぎ合わせて、狭い苗載部6eを形成する場合について説明する。条間距離を、例えば30cmから25cmに短縮する場合、図8に示す4条植の苗タンク6の各苗載部6eの横幅(30cm)から5cm切り取って25cmとしたものを繋いで6条植の苗タンク6として使用する。また、苗の移送が円滑になるように、各苗載部6eの表面には凹凸を設けているが、苗載部6eの切断位置Cを苗載部6e表面の凹部118に設定する。そして、各苗載部6eの繋ぎ目Dはリベット116により固定する。
【0053】
従来の苗移植機の苗タンク6は一体成形されており、6条植用と4条植用とで別々に作られていたが、条間距離を狭くする場合は、各苗載部6eの横幅を小さくして繋ぎ合わせることで、4条植用の苗タンク6を利用できる。
そして、苗載部6e表面の凹部118に繋ぎ目Dを合わせてリベット116により固定することで、リベット116の頭が苗載部6eの表面上に飛び出ることはない。したがって、このように苗載部6eを切断して繋ぐことで各苗載部6e上の苗が引っかかって搬送の妨げになることを防止できる。
【0054】
また、苗タンク6の延長部である延長苗載部120も同様に横幅を短くして繋ぐと良い。延長苗載部120も苗載部6eと同様に切断して繋ぎ合わせるが、切断位置と繋ぎ位置を苗載部6eの切断位置Cと繋ぎ位置Dに合わせて左右方向で同じ位置にすることで、各条ごとの仕切りが同じラインで繋がり、苗の滑り抵抗を減らすことができる。延長苗載部120と苗載部6eとの繋ぎ位置が左右方向で異なると、延長苗載部120を滑った苗が延長苗載部120と苗載部6eとの繋ぎ目で止まってしまう場合があるが、延長苗載部120と苗載部6eとの繋ぎ位置を一直線に揃えることで、苗が苗タンク6上をスムーズに滑る。
【0055】
図11には、図2に示す苗移植機の各苗載部6eの横幅を変えた場合の苗タンク6の平面図を示す。図11(a)には、条間距離が広め(例えば30cm)の場合の苗タンク6を示し、図11(b)及び(c)には、条間距離が狭め(例えば25cm)の場合の苗タンク6を示している。
苗タンク6の各苗載部6eの下端底部に設けた穴153には苗送りベルト6cを配置しており、上述した苗送りアーム172(図3)の駆動により苗送りベルト6cが作動して苗送りベルト6c上の苗を下方に送り出す。
【0056】
図11(a)に示す条間距離30cmの苗載部6eを条間距離25cmに狭める場合に、各苗載部6e上の二つの苗送りベルト6cを左右均等にそれぞれ縦に2箇所切断して繋ぎ合わせて、図11(b)に示すような左右対称の苗送りベルト6cが配置された条間距離25cmの苗載部6eを形成すると、各苗載部6eの繋ぎ位置Dが2箇所になって加工の手間がかかり、コストが上昇する。
しかし、各苗載部6e上の二つの苗送りベルト6cのうち左右一方の苗送りベルト6cの穴153のみ通るように1箇所だけ切断して繋ぎ合わせて、図11(c)に示すような左右非対称の苗送りベルト6cが配置された条間距離25cmの苗載部6eを形成すると、各苗載部6eの繋ぎ位置Dが1箇所で済み、加工の手間が少なくなり、コスト低減が図れる。
【0057】
図12には、条間距離が広い苗載部6e用の苗箱を条間距離が狭い苗載部6eに利用する場合の説明図(簡略図)を示す。図12(a)には苗箱125の斜視図を示し、図12(b)には育苗した際の苗箱125の断面図を示し、図12(c)には苗タンク6の一部平面図を示す。
条間距離が広い苗載部6eの場合(4条植)は、広い苗載部6eの幅に合わせた苗箱125で、通常、苗イを育苗するが、その苗イは条間距離が狭い苗載部6eには搭載できない。すなわち、苗箱125は苗載部6eの条間距離によって、その大きさが決まっており、汎用性に欠ける。
【0058】
そこで、苗箱125の中央に仕切り130を入れて育苗することで半分の幅の苗を作り、その幅の狭い苗の苗幅に合うように苗タンク6の仕切突条部6dの幅を設定する。
例えば、条間距離が30cmの場合は、苗箱125の横幅が28cmであり(仕切突条部6dの横幅分を2cmとする)、苗箱125の中央に仕切り(フェンス)130を差し込んで横幅14cm(28/2)の苗イを育苗する。そして、条間距離が25cmの苗載部6eに搭載する場合(図12(c))は、25−14=9cmであるから苗載部6eの仕切突条部6dの幅Wを9cmに広げて使用する。
【0059】
このように、従来の苗箱125を利用して育苗した苗イを条間距離が狭い苗載部6eに搭載することができる。したがって、条間距離が狭い苗載部6e用の苗箱125を用意する必要がなく、経済的である。
【0060】
図13(a)には、条間距離が広い4条植の苗載部6eの苗タンク6と苗植付装置50の平面図を示し、図13(b)には、条間距離が狭い6条植の苗載部6eの苗タンク6と苗植付装置50の平面図を示し、図13(c)には、条間距離が広い苗載部6e用の苗を条間距離が狭い苗載部6eに搭載する場合の苗タンク6の平面図を示し、図13(d)には、図13(c)の苗タンク6が横移動(左右方向に移動することを言う)した場合の苗タンク6の平面図を示す。
【0061】
条間距離が広い苗載部6e(4条植)及び条間距離が狭い苗載部6e(6条植)の仕切突条部6dの幅Wは通常同じ幅であるが、条間距離が広い苗載部6e用の苗を条間距離が狭い苗載部6eに搭載する場合は、仕切突条部6dの幅Wを極力小さくして通常の幅の苗を苗タンク6上に搭載し、苗タンク6の横移動で仕切突条部6dが苗植付具59の左右に移動する構成とすれば、狭い条間距離で植え付けできる。
【0062】
例えば、条間距離が広い苗載部6e(4条植)の仕切突条部6dの通常の幅Wが2cmで、4条植の条間距離Jが30cmの場合(図13(a))、条間距離が狭い苗載部6e(6条植)の仕切突条部6dの通常の幅Wも同様に2cmであり、条間距離Jは25cmである(図13(b))。
4条植の条間距離Jが30cmの場合、仕切突条部6dの横幅分を2cmとすると、苗載部6eの横幅は28cmとなる。そこで、図13(c)に示すように、苗載部6eの横幅を図13(a)の4条植の苗載部6eの横幅と同じ28cmとし、仕切突条部6dの横幅分を極力小さく、例えば1mmとして苗同士を密着に近い状態とする。そして、苗タンク6の横の総幅を合わせるために、左側の斜線部で示す横幅8cmの部分には、他の苗載部6eとは幅の異なる苗を入れる。
【0063】
苗タンク6の横移動距離は条間距離が25cmである6条植の横移動距離Y(図13(c))(横移動距離Yは23cm)と同じとし、苗タンク6上の仕切突条部6dが苗植付装置50の苗植付具59の掻き取り位置である苗取出口6bを通過して横移動する(図13(c)の点線位置に移動)。
そして、苗タンク6が図13(c)に示す位置から左方向にYだけ横移動した場合、図13(d)に示す位置になる。
【0064】
図14には、苗タンク6の苗載部6eから苗植付具59が苗を掻き取る際の説明図(苗タンク6の簡略平面図)を示す。
また、図15(a)〜(c)には、苗タンク6の苗載部6eから苗植付具59が苗を掻き取る際の説明図(苗植付具59付近の簡略図)を示す。図15(a)及び(b)は平面図、図15(c)は側面図を示す。
【0065】
図14について説明する。
条間距離が30cmの苗載部6eを利用して条間距離が25cmの苗を植え付けようとするとき、例えば、苗タンク6が左端に横移動したとき右端の植付条位置に一番右端の苗載部6eの右端が位置するように揃えた場合、一番右端(1条目)の苗の左側3cmの幅部分は右から2番目(2条目)の苗植付具59が苗を植え付けることになる。以下、仕切突条部6dから3cmの整数倍の幅部分、隣の条の苗載部6eから苗を掻き取ることになる。
【0066】
すなわち、2条目の苗の左側6cmの幅部分は3条目の苗植付具59が苗を植え付けることになり、3条目の苗の左側9cmの幅部分は4条目の苗植付具59が苗を植え付けることになる。そして、4条目の苗の左側12cmの幅部分は5条目の苗植付具59が苗を植え付けることになり、5条目の苗の左側15cmの幅部分は6条目の苗植付具59が苗を植え付けることになる。斜線で示す部分の余った苗は、適宜取り除く。
そして、苗植付具59の爪59a(図7)がちょうど仕切突条部6dの左右端(左右両脇)で苗を掻き取り、苗植付具59の爪59aが仕切突条部6dと干渉しないように、苗タンク6の横移動回数を設定すると良い。苗タンク6の1回の横移動距離、すなわち苗の掻き取り幅をZとすると、Zは3cmを整数で割った値となる。
【0067】
そして、苗タンク6の横送り回数(横移動の回数)は、条間距離Jを苗植付装置50の苗取り一回当たりの横移動距離Zで割った値となり、苗植付具59により苗を掻き取るように設定する。すなわち、3cmを整数で割った値が掻き取り幅Zであり、このZで条間の25cmを割ると横送り回数になる。
例えば、苗植付具59の苗の掻き取り幅(横移動距離Z)が1cm(上記「3cmを整数で割った値」の整数を3と設定した場合)では、条間距離が25cmであるから、横送り回数は25回(25/1=25)となる。
【0068】
なお、仕切突条部6dの幅Wは極力小さめにしていることから、仕切突条部6dの幅Wよりも苗植付具59の爪59aの隙間59aaの幅の方が大きくなる。そこで、苗植付具59の苗の掻き取り時に爪59aの平面視U字形状の切り欠き部分がちょうど仕切突条部6dの左右を通過するように1回分の横移動距離Zを設定し、切り欠き部分の隙間59aaが仕切突条部6dの幅をすり抜けるようにする。なお、仕切突条部6dが切り欠き部分の隙間59aaを通らなくても、両者が干渉しなければよい。
苗植付具59の切り欠き部分の隙間59aaが仕切突条部6dの幅をすり抜けるようにすると、仕切突条部6dの左右両脇の苗を同じ爪59aで同時に掻き取ることができる。
【0069】
また、図15(c)に示すように、苗の掻き取り位置である苗取出口6b部分の苗受板6aの仕切突条部6dを切り欠いても良い。すなわち、苗受板6aの苗取出口6bの部分には仕切突条部6dを設けず、仕切突条部6dの長手方向の長さ(下端)を通常よりも短くすることで、確実に仕切突条部6dと苗植付具59の爪59aとの干渉を防止できる。更に、苗タンク6の苗載部6eの仕切突条部6dを全て取り除いて完全になくし、任意の幅の苗を搭載できるようにしても良い。例えば、芝生のように幅の大きい苗箱で全面で育苗し、適宜切断して苗タンク6(苗載部6e)上に充満するように苗を補給する。
このようにすることで、育苗の手間も省け、経済的でもある。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の苗移植機は、田植機に限らず、野菜苗などのその他の苗を植え付ける苗移植機として利用可能性がある。また、乗用型の苗移植機でも歩行型の苗移植機でもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 植付伝動部 2 センタケース
3 入力軸 4 伝動軸
6 苗タンク(苗載台) 6a 苗受板
6b 苗取出口 6b 苗取出口
6c 苗送りベルト 6d 仕切突条部
6e 苗載部 8 安全クラッチ
9 植付出力軸 10 リードカム軸
11 カム軸伝動機構 12 カム軸伝動ケース
13 前輪 14 前輪車軸
15 後輪 16 後輪車軸
17 ステップフロア 18 ミッドカバー
19 運転席 20 乗降ステップ
21 燃料タンク 22 ミッションケース
23 植付伝動軸 24 ステアリングポスト
25 予備苗載台 25a 支柱
26 リヤフレーム 27 昇降シリンダ
28 ヒッチリンク 29 油圧バルブ
30 支持フレーム 36 駆動アーム
40 フロート軸 41 分岐伝動部
43 サイドケース 44 スペーサケース
46 フレーム 47 カム溝
48 リードカム 50 苗植付装置
50a 伝動軸 51 センターフロート
52 サイドフロート 53 迎い角センサ
55 ローリング軸 56 走行車体
57 リフトリンク 57a 上リンク
57b 下リンク 59 苗植付具
61 植付用部分クラッチ 62 畦クラッチレバー
63 苗送り用部分クラッチ 67 チエンスプロケット
68 スプリング 72 植付用ケーブル
73 苗送りケーブル 80 前輪ファイナルケース
81 後輪ギヤケース 90 エンジン出力プーリ
91 ベルト 93 静油圧式変速装置
95 バネ 110 ボルト(連結部)
116 リベット 115 深さフレーム
118 凹部 120 延長苗載部
125 苗箱 130 仕切り
153 穴 170 苗送り駆動カム
172 苗送りアーム 174 回転軸
176 リンク 178 チェン
206 駆動側クラッチ体 207 受動側クラッチ体
206a、207a クラッチ歯
207b クラッチピン溝
209、214 スプリング
210 スプロケット 211 ワッシャ
213 畦クラッチピン 216 チェン
219 L字状のシフターアーム
220 苗送り駆動ローラ 221 駆動側クラッチ体
220a、221a クラッチ歯
223 従動ローラ E エンジン
N 苗植付部 S 回動支点軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(56)と、
該走行車体(56)上に設けた駆動源(E)と、
該走行車体(56)の後方に設けた苗載台(6)と、
前記苗載台(6)上の苗を植え付けるために各植付条を対応させて設けた苗植付装置(50)と、
前記駆動源(E)からの動力を苗植付装置(50)に伝動するために各苗植付装置(50)ごとに設けた植付伝動部を収納したケース(2,43)と
を備えた複数条植えの苗移植機において、
前記苗植付装置(50)は、
前記走行車体(56)の前進方向に向かって左右方向に長手方向を有し、前記植付伝動ケース(2,43)の左右方向両側に突出して該植付伝動ケース(2,43)からの動力により回転する出力軸(9)と、
該出力軸(9)の両端部にそれぞれ固着連結し、該出力軸(9)の回転により駆動回転する各植付条の駆動アーム(36)と、
出力軸(9)の取付部よりも後方に前記各植付伝動ケース(2,43)側の端部を連結し、該端部を支点として他端部が前後方向に揺動する揺動アーム(108)と、
前記走行車体(56)の前進方向に向かって前記各植付伝動ケース(2,43)の左右両側にそれぞれ設けられ、前部が各植付条の駆動アーム(36)の端部(36b)に連結し、後部が前記揺動アーム(108)の揺動側端部に連結して、各植付条の駆動アーム(36)の駆動回転により前記揺動アーム(108)を揺動させながら前記走行車体(56)の前進方向に向かって側面視で前端部が上下方向に長いループ状の作動軌跡で苗を植え付ける各植付条の苗植付具(59)とを有し、
前記駆動アーム(36)の苗植付具(59)との連結側端部(36b)とは反対側の端部に、前記苗植付具(59)とのバランスを取り、且つ走行車体(56)の前進方向に向かって植付伝動ケース(2,43)の左右端部より内側に突出し、かつ駆動アーム(36)の回転駆動時に植付伝動ケース(2,43)の左右端部に接触しない位置にバランスウエイト部(36a)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記苗植付具(59)は前記走行車体(56)の前進方向に向かって前記駆動アーム(36)の左右方向外側に設け、
前記揺動アーム(108)は前記走行車体(56)の前進方向に向かって左右方向位置が前記駆動アーム(36)とほぼ同じ又は前記駆動アーム(36)の左右方向外側であって、且つ前記苗植付具(59)の左右方向内側に設け、
前記揺動アーム(108)と前記苗植付具(59)とを連結する連結部(110)を、走行車体(56)の前進方向に向かって苗植付具(59)の左右内側に設け、
前記駆動アーム(36)のバランスウエイト部(36a)の前記連結部(110)に対向する表面に、走行車体(56)の前進方向に向かって左右内側であって、駆動アーム(36)の回転駆動時に前記連結部(110)と接触しないように凹部(36aa)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−50287(P2011−50287A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200928(P2009−200928)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】