説明

苗移植機

【課題】苗受枠と苗載台の下端部との間に泥が付着し難いようにした苗移植機を提供すること。
【解決手段】苗の端部を受ける苗受枠81の上側で該苗受枠81に沿って左右移動して苗を前記苗取出口78に供給する苗載台80と苗載台80の下部にスクレーパ29を取り付け、苗受枠81と接するスクレーパ29の側面に苗載台80の厚み方向に苗載面側から苗表面側に向けて1以上の溝29aを設けた苗移植機であり、スクレーパ29の苗載台80を左右にスライドさせるときにスクレーパ29が苗受枠81上に付着した泥を容易に取り除くことができ、さらにスクレーパ29の下側に複数の溝29aが設けていると、苗受枠81上に泥が堆積していても苗載台80が左右に移動する毎にスクレーパ29の下端部が容易に変形して苗受枠81上の泥を取り除くことができ、無理に苗載台80をスライドさせようとして苗載台80を破損させるおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機の一例である乗用型田植機において、苗の端部を受ける苗受枠と、該苗受枠に備える苗取出口と、苗受枠の上側で前記苗受枠に沿って左右往復動して苗を前記苗取出口に供給する苗載台と、を設けたものが知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−154535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の発明によると、苗移植機で苗の植付作業を進めると苗受枠と左右往復動する苗載台の下端部との間に泥が付着して苗載台の移動がスムーズに行えなくなること等があるので、苗の植付作業を中断して、頻繁に泥よけ作業を行う必要があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、苗受枠と苗載台の下端部との間に泥が付着し難いようにした苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、苗受枠(81)の上側で該苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設けた苗移植機において、苗載台(80)の下端部に、苗受枠(81)上の土を掻き取るスクレーパ(29)を取り付けることを特徴とする苗移植機である。
【0007】
請求項2に係る発明は、苗受枠(81)と接するスクレーパ(29)の側面に苗載台(80)の厚み方向に離れる方向に苗受枠(81)に臨む1以上の溝(29a)を設けることを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0008】
請求項3に係る発明は、スクレーパ(29)の断面形状を苗載台(80)の厚み方向に苗載面から離れる位置程、幅狭にしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の苗移植機である。
【0009】
請求項4に係る発明は、苗載台(80)の苗載面の裏側に苗載台(80)の左右移動用のレール(121)を取り付け、該レール(121)とスクレーパ(29)とを苗載台(80)に締結する共通する締結部材(31)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の苗移植機である。
【0010】
請求項5に係る発明は、断面形状がコ字状であって、下部に溝を有するスクレーパ(29)を苗載台(80)の仕切り壁部(80a)に装着したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の苗移植機である。
【0011】
請求項6に係る発明は、スクレーパ(29)と苗載台(80)の下端部との接続部にスプリング(36)を配置したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、スクレーパ29を苗載台80の下端部に取り付けたので、苗載台80を苗受枠81に沿って左右にスライドさせるときにスクレーパ29が苗受枠81上に付着した泥を容易に取り除くことができ、無理に苗載台80をスライドさせようとして苗載台80を破損させるおそれがない。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、スクレーパ29の苗受枠81と接する側面に複数の溝29aが設けているので、苗受枠81上に泥が堆積していても苗載台80が苗受枠81に沿って移動する毎にスクレーパ29の下端部が容易に変形して苗受枠81上の泥を取り除くことができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の発明の効果に加えて、スクレーパ29は、苗載台80の厚み方向に苗載面から離れる程、幅狭になっているので泥を砕きやすくなり、またスクレーパ29の先端側ほど泥が苗受枠81上から押し出され易くなり、泥を容易に取り除くことができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、苗載台80の苗載面の裏側のレール121とスクレーパ29とを共通する締結部材31で苗載台80に締結したので、苗載台80とスクレーパ29だけでなくレール121も同時に苗載台80に取り付けることができ、しかもレール121の強度を従来より上げることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、スクレーパ29として水平断面形状がコ字状の部材を用いるので強度の高いスクレーパ29が得られる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、スクレーパ29と苗載台80の下端部との接続部にスプリング36を配置することで、苗受枠81上に障害物があると、苗載台80を苗受枠81に沿って移動させてもスクレーパ29がその障害物を容易に乗り越えることができ、苗載台80を破損させるおそれはない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例の田植機の側面図である。
【図2】図1の田植機の平面図である。
【図3】図1の田植機の苗載台の苗送り伝動構成を分かりやすく示す正面図である。
【図4】図1の田植機の苗載台の苗移送量変更装置を分かりやすく示す断面側面図である。
【図5】図1の田植機の苗載台と苗受枠部分の一部縦側断面図(機体の前進方向に向かって左側から見た図)(図5(a))とスクレーパの側面図(図5(b))と図5(b)の矢印S方向から見たスクレーパを示す図(図5(c))である。)
【図6】図1の田植機の苗載台の下端部をカットした部分を斜線で示す縦側断面図(機体の前進方向に向かって左側から見た図)である。
【図7】図1の田植機の苗載台の下側から被せるためのスクレーパの側面図(図7(a))、図7(a)のS1矢視図(図7(b))、図7(a)のS2−S2線切断図(図7(c))である。
【図8】図1の田植機の苗載台にスクレーパを下側から被せるための側面図(図8(a))、図8(a)のS1−S1線切断矢視図(図8(b))、図8(a)のS2−S2線矢視図(図8(c))である。
【図9】図1の田植機の苗載台にスクレーパを取り付けた場合の側断面図(図9(a))と図9(a)の矢印S方向から見た図(図9(b))である。
【図10】図1の田植機の苗載台にスクレーパを取り付けた場合の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
図1及び図2は、6条植えの施肥装置付きの乗用型の田植機1を示すものであり、この乗用型の田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0020】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪6及び後輪7を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース8が配置され、そのミッションケース8の左右側方に左右一対の前輪ファイナルケース9が設けられ、該前輪ファイナルケース9の変向可能な左右一対の前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪6が取り付けられている。また、ミッションケース8の背面部にメインフレーム10の前端部が固着されており、そのメインフレーム10の後端左右中央部に前後水平に設けた左右一対の後輪ローリング軸を支点にして左右一対の後輪ギヤケース12がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース12から外向きに突出する後輪車軸に後輪7が取り付けられている。
【0021】
原動機となるエンジン13はメインフレーム10の上に搭載されており、該エンジン13の回転動力が、ベルト伝動装置14を介して正逆転切替可能な伝動装置となる油圧式の前後進無段変速装置15へ入力される。そして、該前後進無段変速装置15からの出力がミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された回転動力は、該ミッションケース8内の伝動分岐部で走行用伝動経路と植付用伝動経路とに分岐して伝動され、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0022】
そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース9に伝達されて前輪6を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース12に伝達されて後輪7を駆動する。また、外部取出動力は、取出伝動軸17を介して走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース18に伝達され、それから植付伝動軸19によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0023】
エンジン13の上部はエンジンカバー20で覆われており、その上に座席21が設置されている。座席21の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー22があり、その上方に前輪6を操向操作するハンドル23が設けられている。ハンドル23の右側には、前記前後進無段変速装置15を操作する前後進変速レバー203が設けられている。また、前後進変速レバー203のグリップ部には、苗植付部4の昇降操作及び作動の入切操作が行える植付昇降操作スイッチが設けられている。エンジンカバー20及びフロントカバー22の下端左右両側は水平状のフロアステップ26になっている。また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台27が設けられている。
【0024】
昇降リンク装置3は、1本の上リンク70と左右一対の下リンク71を備えている。これらの上リンク70及び下リンク71は、その基部側がメインフレーム10の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム72に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク73が連結されている。そして、縦リンク73の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸74が挿入連結され、連結軸74を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム10に固着した支持部材と上リンク70に一体形成したスイングアームの先端部との間に昇降エアシリンダ76が設けられており、該昇降エアシリンダ76を伸縮させることにより、上リンク70が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0025】
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース77、マット苗を載せて左右往復動し、苗を一株分づつ各条の苗取出口78に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口78に供給すると苗送りベルト79により苗を下方に移送する苗載台80、苗取出口78に供給された苗を苗植付具37aで圃場に植付ける苗植付装置37等を備えている。
【0026】
主に図3、図4に示すように、苗載台80は、苗載面の裏側で、その裏面側下部に左右方向に設けた苗受枠81に沿って左右動自在に支持されている。また、この苗載台80は、上下に延びる複数の仕切り壁部80a(図2、図4)を備えており、該仕切り壁部80aにより区分されて各条の苗載部80b(図2)が構成され、6条分の苗を搭載できる構成となっている。なお、前記苗受枠81に6条分の前記苗取出口78が設けられている。伝動ケース77の左右両側から突出して該伝動ケース77内の動力でリードカム82aを横方向に左右往復移動させるリードカム軸82が設けられ、リードカム82aと苗載台80とが連結されていて、リードカム軸82が駆動回転することにより苗載台80が左右往復動するようにしている。リードカム軸82は、その一端部左端部が伝動ケース77で支持されている。
【0027】
苗載台80の裏面側の上下には、左右方向に長い上側左右移動用案内部材120及び下側左右移動用案内部材121がそれぞれ固着して設けられている。上側左右移動用案内部材120は、側面視で下側が切り欠かれた断面形状に形成されており、下側から支持される回転自在の支持ローラ122が係合している。この支持ローラ122は、上側左右移動用案内部材120に沿う適宜位置に複数個設けられ、伝動ケース77の上側に固着された苗載台支持フレーム123の上部に取り付けられている。下側左右移動用案内部材121は、苗受枠81に上側から載る。従って、苗載台80は、支持ローラ122と苗受枠81とにより左右方向に移動可能に支持されている。
【0028】
苗載台80支持フレーム123には苗載台80が左右移動端に到達したことを検出する左右各々の移動端センサ131(図4)を設け、該移動端センサ131は苗載台80の左右方向端部の裏面側に突出する仕切り壁部80aが当たって検出する構成となっている。
【0029】
苗送りベルト79は、駆動ローラ84と従動ローラ85に巻き掛けられている。駆動ローラ84は左右方向の苗送り駆動軸86と一体回転するように設けられている。苗送り駆動軸86は、各2条毎に設けられ、各々のラチェット機構87により、苗送りベルト79が苗送りする方向にだけ回転を伝達するようになっている。従って、苗送りベルト79が、苗載台80の左右移動端で該苗載台80上の苗を苗受枠81側へ移送する苗移送装置となる。
【0030】
苗送りベルト79の駆動機構は下記の構成となっている。
すなわち、伝動ケース77の左右両側からそれぞれ突出して回転駆動する駆動側アーム88が設けられている。なお、伝動ケース77の右側の駆動側アーム88は、リードカム軸82を介して回転駆動する。また、苗送り駆動軸86の上側には左右方向の中継軸89が各2条毎に設けられ、それに従動側アーム90が取り付けられている。中継軸89と苗送り駆動軸86とは、各々第一アーム91並びに第二アーム92及びリンク93とからなるリンク機構94により伝動連結されている。
【0031】
苗載台80が左右移動行程の端部に到達すると、駆動側アーム88が従動側アーム90にその下側から当たって、中継軸89(図3)を所定角度回転させる。その回転がリンク機構94及びラチェット機構87を介して苗送り駆動軸86に伝達される。これにより、苗送りベルト79が所定量だけ作動する。尚、苗載台80が左右移動両端部でそれぞれ苗送り動力を伝達できるように、1個の駆動側アーム88に対して左右に2個の従動側アーム90が同一の中継軸89上に設けられている。駆動側アーム88が従動側アーム90から離れると、中継軸89に係止した図示しないスプリングの張力によって中継軸89及び従動側アーム90は駆動前の位置に戻る。
【0032】
なお、リンク機構94及びラチェット機構87は、右側2条分のものは苗載台80の右端部、中央2条分のものは右から3条目の苗載部80bの右端部、左側2条分のものは苗載台80の左端部に配置されている。中央2条分のリンク機構94及びラチェット機構87は、左右一方側左側に偏位する伝動ケース77の苗送り伝動部77aに対して左右他方側右側に偏位して配置されるので、苗載台80と伝動ケース77を前後に近づけながら、伝動ケース77に干渉しないようにできる。ラチェット機構87には、各々2条分の苗送りベルト79の駆動を入切する苗送りクラッチ(図示せず)を備えている。従って、該苗送りクラッチを操作する苗送りクラッチワイヤ132(図3)が、ラチェット機構87から苗載台80の裏面側で該苗載台80に沿って設けられている。なお、苗送りクラッチワイヤ132の他端は、各2条毎の植付を入切する畦クラッチレバー133(図1、図2)に連結されている。この畦クラッチレバー133は、走行車体2の後部に計3本設けられ、各々の畦クラッチレバーセンサ(図示せず)により操作位置を検出できる構成となっている。
【0033】
また、苗植付部4の苗載台80の前側には、苗受枠81を上下動させて苗植付装置37(図1、図2)が苗取出口78で取り出す一株あたりの苗の量を変更する苗取り量調節レバー201(図1)を設けている。この苗取り量調節レバー201の操作位置を、苗取り量調節レバーセンサ(図示せず)が検出する構成となっている。
【0034】
駆動側アーム88は、伝動ケース77の苗送り伝動部77aの左右両側の適宜位置に左右各々2個ずつ設けられている。右外側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動右端に移動したとき、右の中継軸89の右側の従動側アーム90に当たる。右内側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動右端に移動したとき、中央の中継軸89の右側の従動側アーム90に当たると共に、苗載台80が左右移動左端に移動したとき、右の中継軸89の左側の従動側アーム90に当たる。左内側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動左端に移動したとき、中央の中継軸89の左側の従動側アーム90に当たると共に、苗載台80が左右移動右端に移動したとき、左の中継軸89の右側の従動側アーム90に当たる。左外側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動左端に移動したとき、左の中継軸89の左側の従動側アーム90に当たる。従って、計6個の従動側アーム90に対して、駆動側アーム88の個数を4個として数を削減させている。
【0035】
ここで、左右各々の中継軸89における左右各々の従動側アーム90は、該中継軸89の左右中央部に配置しているが、左右中央の中継軸89における左右の従動側アーム90は、該中継軸89の左右両端部に配置している。これにより、左右移動で振り分けて伝動ケース77の左右両側内側の駆動側アーム88から左右中央の中継軸89へ動力を伝達することができると共に、左右内側の駆動側アーム88を左右の中継軸89へ動力を伝達するアームとして兼用できる。また、各中継軸89の左右の従動側アーム90を、各中継軸89において略左右対称な位置に配置でき、各2条毎で略左右中央に配置される後述する苗移動量変更モータ135による苗送り量の変更設定を高精度で行える。
【0036】
苗載台80の各条の苗載部80bの苗送りベルト79近くの適宜位置には、各々苗減少センサ136(図2、図4)を設けている。この苗減少センサ136は、苗の有無を検出することにより、苗載台80上の適宜の位置で苗が減少したことを検出する。また、右から1条目、4条目及び6条目の苗載部80bの苗送りベルト79近くの適宜位置には、各々苗移動量センサ137(図1〜図3)を設けている。この苗移動量センサ137は、スプリング138(図3)で苗側上側に回動する側に付勢されたセンサ取付アーム146(図3)の先端に設けられ、外周面が苗の底面に接触して回転するローラ式であり、その回転角度を検出する回転角度検出型のセンサポテンショメータを備え、苗送りベルト79の苗の移送方向への苗載台80上の苗の移動量を検出する。尚、後述する苗移送量変更モータ135による苗送りベルト79の苗の最大移送量よりも、苗移動量センサ137の外周長が大きくなるよう構成されている。
【0037】
該苗移動量センサ137は、回転角度を0度以上360度未満の角度値として検出し、苗送り作動の前後の角度値から苗の移動量を検出するセンサであるが、苗送り作動の前後で0度の角度値をまたいで検出した場合でも検出できるように、制御装置(図示せず)により、360度と苗送り作動前の角度値の差及び苗送り作動後の角度値と0度の差の両方の差を加算して演算するようにしている次の演算式(1)
苗の移動量={360度-苗送り作動前の角度値}+{苗送り作動後の角度値-0度} (1)
により、角度値を検出するだけの簡単なセンサポテンショメータで、苗の移動量を検出できる。
【0038】
また、苗移動量センサ137を苗送りクラッチに近い位置の条に設け、苗移動量センサ137の防護フレームを兼ねる後述する苗移送量変更モータ135のモータ支持フレーム139を、右から1条目、4条目及び6条目の苗載部80bの裏面側のみに設け、モータ支持フレーム139の内側に、苗送りクラッチワイヤ132(図3)を通して、モータ支持フレーム139が苗送りクラッチワイヤ132の防護フレームも兼ねた構成としている。
【0039】
苗移動量センサ137は、苗載部80bの左右中央に位置している。前記苗減少センサ136は、苗移動量センサ137を設けていない苗載部80bでは該苗載部80bの左右中央に位置しているが、苗移動量センサ137を設けた苗載部80bでは該苗載部80bの左右方向一側端に位置している。これにより、苗移動量センサ137を苗減少センサ136に優先して苗載部80bの左右中央に位置させて、苗の移動量を高精度で検出できるようにしている。各条の苗減少センサ136は、苗移動量センサ137より若干苗載台80に沿う上側位置に配置されている。
【0040】
また、苗移動量センサ137を設けた苗載部80bの苗送りベルト79より上側位置には、苗載部80b上の苗の量を判別する各々の苗量センサ140(図3)を設けている。この苗量センサ140は、苗受枠81から苗載台80に沿って苗1枚分上側の位置(苗受枠81から58cmの位置)に設けられ、その位置での苗の有無を検出することにより、苗載台80上の苗の量の大小を判別する。該苗量センサ140は、苗載部80bの左右中央に位置している。
【0041】
各2条毎の苗載部80bにおける左右中央の仕切り壁部80aの裏側には、2条毎に苗送りベルト79による苗の移送量を変更するための苗移送量変更モータ135(図3、図4)を設けている。この苗移送量変更モータ135が、苗移送装置による苗の移送量を変更する苗移送量変更装置となる。苗移送量変更モータ135は、各2条毎の左右中央に配置されているので、苗送り量の変更を各2条毎に適正に精度良く行える。苗移送量変更モータ135のピニオン135a(図4)に噛み合って回動する扇形ギヤ141を設け、該扇形ギヤ141から連結ロッド142を介して中継軸89と一体回転する苗送り規制アーム143(図4)に連結している。尚、苗送り規制アーム143に設けた長孔(図示せず)に、連結ロッド142を連結している。従って、苗移送量変更モータ135を駆動して扇形ギヤ141を回動させ、苗送り規制アーム143をその長孔(図示せず)を介して強制的に上側へ回動させると、苗送り作動で長孔により中継軸89を回動させることができる。そして、駆動側アーム88が従動側アーム90から離れると、中継軸89及び従動側アーム90は、スプリング(図示せず)の張力で、規制部材となる長孔(図示せず)の端部に連結ロッド142の端部が当たる位置まで戻る構成となっている。前記苗送り規制アーム143は、右側2条分は右側の従動側アーム90、左側2条分は左側の従動側アーム90と兼用し、中央2条分は専用の中央苗送り規制アーム144で構成している。従って、左右の苗送り規制アームは各々外側の従動側アーム90となるため、連結ロッド142の着脱等のメンテナンスが行い易い。
【0042】
苗載台80の苗載面80c(図4)の上側には、マット苗の床部の上面に当たって該マット苗を苗載面80c側へ押圧する苗押え具130(図4)が設けられている。この苗押え具130により、マット苗を苗送りベルト79側に適度に押圧し、苗送りベルト79で確実に精度良くマット苗を移送できるようにしている。
【0043】
苗植付部4の下部には、中央2条分の苗植付位置を整地するセンターフロート100、及び左右それぞれ外側2条分の苗植付位置を整地するサイドフロート101が設けられている。これらのフロートであるセンターフロート100及びサイドフロート101を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、センターフロート100及びサイドフロート101が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置37により苗が植付けられる。各フロートは圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート100の前部の上下動が上下動検出機構により検出され、その検出結果に応じ前記昇降エアシリンダ76を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0044】
施肥装置5は、肥料貯留タンク110に貯留されている肥料を各条の肥料繰出部63によって一定量づつ繰り出し、その肥料を肥料移送ホース111でセンターフロート100及びサイドフロート101に取り付けた施肥ガイド112まで導き、施肥ガイド112の前側に設けた作溝体113によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。モータ114で駆動のブロア115で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ116を経由して肥料移送ホース111内に吹き込み、肥料移送ホース111内の肥料を苗植付部4側の肥料吐出口施肥ガイド112へ強制的に移送するようになっている。施肥溝内に供給された肥料は、施肥ガイド112及び作溝体113の後方でセンターフロート100及びサイドフロート101に取り付けた覆土板117により覆土される。
【0045】
各条の施肥ガイド112及び作溝体113は、対応する苗植付装置37との位置関係距離を均一にして各条の肥効を均一化することが望ましいので、それぞれ前後方向において機体側面視で同じ位置に配置される。同様に、各条の覆土板117も対応する施肥ガイド112、作溝体113及び苗植付装置37との位置関係を距離を均一にすることが望ましい。何故ならば、覆土板を前寄りに位置させて施肥ガイドに近づけ過ぎると、覆土板で押し寄せられる泥が施肥ガイド内に供給されて該施肥ガイドに泥が詰まるおそれがあり、覆土板を後寄りに位置させて施肥ガイドから離し過ぎると、覆土板で覆土するまでに圃場内の水等により施肥溝の底から肥料が若干浮き上がって、その結果覆土量が少なくなり、適切な肥効が得られなくなるおそれがあるからである。
【0046】
本実施例の構成を図5(a)の苗載台80と該苗載台80を載置した苗受枠部分の一部縦側断面図(機体の前進方向に向かって左側から見た図)と図5(b)のスクレーパ29の側面図と図5(c)に図5(b)の矢印S方向から見たスクレーパ29を示す。また、図6は苗載台80の下端部をカットした部分を点線で示す縦側断面図(機体の前進方向に向かって左側から見た図)である。
【0047】
スクレーパ29は苗載台80の下端部のカット部分から苗載台80の上方に向けて差し込みボルト30とタッピングネジ31で苗載台80の表面と裏面の両側から固定する。なお、スクレーパ29の材質は鉄などの金属、耐久性が劣るが弾性材であるゴムでもよい。
【0048】
苗受枠81と苗載台80の小さな隙間に泥が入り込み、それが固着すると苗載台80がスライド出来なくなり、又は無理にスライドさせると破損するおそれがある。
しかし、スクレーパ29を苗載台80の下端部に取り付けたので、苗載台80を左右にスライドさせるときにスクレーパ29が苗受枠81上に付着した泥を容易に取り除くことができる。また、スクレーパ29の下側には図5(b)と図5(c)に示すように複数の溝29aが設けると、苗受枠81上に泥が堆積していても苗載台80が機体の前進方向に対して左右方向(苗受枠81に沿った方向)に移動する毎にスクレーパ29の下端部が容易に変形して苗受枠81上の泥を取り除くことができる。
【0049】
また図5(c)に示すように、スクレーパ29は、苗載台80の厚み方向に苗載面から離れる程、幅狭になっているので泥を砕きやすくなり、またスクレーパ29の先端の苗載台80の苗載面から離れるほど泥が苗受枠81上から押し出され易くなり、泥を容易に取り除くことができる。また溝29aの苗載台80の厚み方向の幅を大きくすることで、泥の抜けが良くなる。
【0050】
タッピングネジ31でスクレーパ29を苗載台80の下端部に固定する場合に、苗載台80を左右方向に移動させるレール33を苗載台80に裏面側に取付、該レール33の苗載台80の裏面と接する側面部分を比較的な長くすることで、該側面部分を介してタッピングネジ31を苗載台80の裏面側から取り付けるとスクレーパ29だけでなくレール33も同時に苗載台80に取り付けることができ、レール33の強度を従来より上げることができる。
【0051】
また、スクレーパ29を鋼鉄製として苗載台80に下側から被せるために図7(a)の側面図、図7(b)に示す図7(a)のS1矢視図、図7(c)に示す図7(a)のS2−S2線切断面図に示すように断面コ字状の部材を用いると強度の高いスクレーパ29が得られる。
【0052】
さらに鋼鉄製のスクレーパ29を苗載台80に下側から被せるために図8(a)の側面図、図8(b)に示す図8(a)のS1−S1線切断矢視図、図8(c)に示す図8(a)のS2矢視図に示すように断面コ字状の部材を用いても良い。
【0053】
図9(a)の苗載台80にスクレーパ29を取り付けた場合の側断面図(図9(a))と図9(a)の矢印S方向から見た図(図9(b))に示すように断面コ字状の鋼鉄製のスクレーパ29を用意し、苗載台80の下端部平面に前記スクレーパ29の平面を向かい合わせに配置して、それら平面の間にスプリング36を取り付けておき、スクレーパ29の下端部を苗受枠81上面に当接させる構成にしても良い。
【0054】
この場合は苗受枠81上に障害物dがあると、苗載台80を左右に移動させてもスクレーパ29がその障害物を容易に乗り越えることができる。
【0055】
図10の機体の側面方向から見た苗載台80にスクレーパ29を取り付けた場合の縦断面図に示すように苗載台80の下端部をくり抜いた矩形溝を形成し、苗載台80の下端部に出来た開口部から苗載台80のくり抜いた前記矩形溝にスクレーパ29を挿入し、苗載台80の下端部の開口部の機体後方部の外側からスクレーパ29にボルト30で締め付けてスクレーパ29を苗載台80に固定する。このときスクレーパ29の下端部は苗載台80の下端部平面から突出させて取り付ける。さらにボルト締めしたボルト30の先端側のスクレーパ29には空間が出来るようなボルト溝80aをスクレーパ29に形成しておき、ボルト締め前に該溝80a内にスプリング36を配置しておく。
【0056】
上記構成の場合は、図10に示すように機体前側の苗受枠81と苗載台80の間に障害物dがあってもスプリング36の作用でスクレーパ29が前後方向に移動可能であるために苗受枠81と苗載台80が破損するおそれがない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の実施の形態は乗用型の田植機1について記述したが、本発明は乗用型の田植機に限定されるものではなく、各種の作業機に適用可能性が高い。
【符号の説明】
【0058】
1 田植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 施肥装置 6 前輪
7 後輪 8 ミッションケース
9 前輪ファイナルケース
10 メインフレーム 12 後輪ギヤケース
13 エンジン 14 ベルト伝動装置
15 前後進無段変速装置
17 取出伝動軸 18 植付クラッチケース
19 植付伝動軸 20 エンジンカバー
21 座席 22 フロントカバー
23 ハンドル
26 フロアステップ 27 予備苗載台
29 スクレーパ 29a 溝
30 差し込みボルト
31 タッピングネジ 33 レール
36 スプリング
37 苗植付装置 37a 苗植付具
63 肥料繰出部粉粒体繰出部
70 上リンク 71 下リンク
72 リンクベースフレーム
73 縦リンク 74 連結軸
76 昇降エアシリンダ
77 伝動ケース 77a 苗送り伝動部
78 苗取出口 79 苗送りベルト
80 苗載台 80a 仕切り壁部
80b 苗載部 80c 苗載面
81 苗受枠 82 リードカム軸
82a リードカム 84 駆動ローラ
85 従動ローラ 86 苗送り駆動軸
87 ラチェット機構
88 駆動側アーム 89 中継軸
90 従動側アーム 91 第一アーム
92 第二アーム 93 リンク
94 リンク機構 100 センターフロート
101 サイドフロート
110 肥料貯留タンク
111 肥料移送ホース
112 施肥ガイド 113 作溝体
114 モータ 115 ブロア
116 エアチャンバ 117 覆土板
120 上側左右移動用案内部材
121 下側左右移動用案内部材
122 支持ローラ 123 苗載台支持フレーム
130 苗押え具 131 移動端センサ
132 クラッチワイヤ
133 畦クラッチレバー
135 苗移送量変更モータ
135a ピニオン 136 苗減少センサ
137 苗移動量センサ
138 スプリング 139 モータ支持フレーム
140 苗量センサ 141 扇形ギヤ
142 連結ロッド 143 苗送り規制アーム
144 中央苗送り規制アーム
146 センサ取付アーム
201 苗取り量調節レバー
203 前後進変速レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗の端部を受ける苗受枠(81)と、該苗受枠(81)に備える苗取出口(78)と、苗受枠(81)の上側で該苗受枠(81)に沿って左右移動して苗を前記苗取出口(78)に供給する苗載台(80)と、苗取出口(78)に供給された苗を植付ける苗植付装置(37)とを設けた苗移植機において、苗載台(80)の下端部に、苗受枠(81)上の土を掻き取るスクレーパ(29)を取り付けることを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
苗受枠(81)と接するスクレーパ(29)の側面に苗載台(80)の厚み方向に離れる方向に苗受枠(81)に臨む1以上の溝(29a)を設けることを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
スクレーパ(29)の断面形状を苗載台(80)の厚み方向に苗載面から離れる位置程、幅狭にしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の苗移植機。
【請求項4】
苗載台(80)の苗載面の裏側に苗載台(80)の左右移動用のレール(121)を取り付け、該レール(121)とスクレーパ(29)とを苗載台(80)に締結する共通する締結部材(31)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
断面形状がコ字状であって、下部に溝を有するスクレーパ(29)を苗載台(80)の仕切り壁部(80a)に装着したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項6】
スクレーパ(29)と苗載台(80)の下端部との接続部にスプリング(36)を配置したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−72232(P2011−72232A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225785(P2009−225785)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】