説明

苦味が軽減したエピナスチン含有安定化製剤

【課題】 エピナスチン及びその塩の苦味が軽減し安定性が向上した製剤を提供する。
【解決手段】 エピナスチン及びその医薬的に許容される塩と、甘味剤(例えば、アスパルテーム、エリスリトール、キシリトール及びD−ソルビトール)と酸味剤とを含む経口製剤において、前記酸味剤の割合を、甘味剤100重量部に対して10〜1000重量部とし、エピナスチン及びその塩の苦味を有効に低減し、しかも安定性を向上させる。このような製剤は、長期間に亘り着色などが生じることがなく、光やpH等に対する安定性が格段に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピナスチン及びその医薬的に許容される塩(以下、薬効成分ともいう)の有する苦味を軽減した新規な経口製剤及び苦味軽減剤、前記経口製剤の製造方法、並びに前記薬効成分の苦味を軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3−アミノ−9,13b−ジヒドロ−1H−ジベンズ[c,f]イミダゾ[1,5−a]アゼピンで示される化学構造を有するエピナスチン及びその医薬的に許容される塩は、特開昭56−139484号公報(特許文献1)に開示されており、抗アレルギー、抗ヒスタミンおよび抗セロトニン活性を有する化合物である。また、塩酸エピナスチンは、「アレジオン」(登録商標)として日本で市販されている医療用医薬品でもあり、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等の疾患の治療に有効な医薬品として広く使用されている。
【0003】
塩酸エピナスチンは、白色〜微黄色の粉末であり、においはないが、強い苦味を有する。一方、医薬品の味を改善して服用時の患者のコンプライアンスを向上させることは重要なことであり、塩酸エピナスチン製剤においてもこれまで様々な苦味の改善が試みられてきている。例えば、「アレジオン」は種々の剤形(例えば、錠剤、ドライシロップ剤、内服液など)として販売されており、これらの製剤ではエピナスチンの苦味をマスキングするため甘味剤が配合されており、例えば、ドライシロップ剤ではアスパルテームおよびエリスリトールが配合されている。また、特開2005−82594号公報(特許文献2)では、界面活性剤と、油、脂肪、ワックス、脂肪アルコールまたは脂肪酸との混合物を用いて、エピナスチンをコーティングすることにより、苦味を隠蔽した製剤(特に粉剤)が開示されている。
【0004】
特表2005−508364号公報(特許文献3)には、エピナスチンと、エピナスチンの苦みを即効性でマスクする成分および苦みを持続性でマスクする成分とを含む粉末製剤が開示されており、即効性の苦味をマスクするための成分(即効性甘味成分)として、サッカリンナトリウム、エリスリトール及びアスパルテームが、持続性の苦味をマスクする成分(持続性甘味成分)として、グリチルリジネート又はグリチルリジン酸が開示されている。さらに、この文献3には、pH調整剤を加えて液体のpHを5〜8に調整すること、pH調整剤として、クエン酸、コハク酸、酒石酸、塩酸、水酸化ナトリウム、緩衝剤(リン酸二ナトリウムなど)などが使用できることが記載されている。これらのpH調整剤は、エピナスチン100重量部に対して100〜600重量部の割合で使用されている。
【0005】
また、特開2001−81033号公報(特許文献4)では、光による変色を防止するため、酸化チタン顔料含有フィルムと塩酸エピナスチン含有裸錠との中間に、酸化チタン顔料を含まないポリマーフィルム層を設けることが開示されている。
【0006】
しかし、これらの方法では、強い苦味を軽減しつつ、エピナスチンおよびその医薬的に許容される塩の安定性を改善することが困難である。
【特許文献1】特開昭56−139484号公報(実施例1)
【特許文献2】特開2005−82594号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特表2005−508364号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2001−81033号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、エピナスチン及びその医薬的に許容される塩(特に、塩酸エピナスチン)の苦味を有効に低減できる経口製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、エピナスチン及びその医薬的に許容される塩(特に、塩酸エピナスチン)を含有する安定性の高い経口製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、長期間に亘り着色などが生じることがなく、エピナスチン及びその医薬的に許容される塩の安定性が向上できる経口製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、熱、湿気(水分)、光やpHなどに対してエピナスチン及びその医薬的に許容される塩の安定性が大きく改善された経口製剤及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、エピナスチン及びその医薬的に許容される塩の苦みを有効に軽減し、コンプライアンスを高めることができる苦味軽減剤及び苦味軽減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、合成甘味料および糖アルコールから選択された少なくとも一種の甘味剤と、酸味剤とを特定の割合で用いると、薬効成分の苦味を有効に低減できるだけでなく、長期間に亘り着色などが生じることがなく、光やpHなどに対する安定性が格段に向上することを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の経口製剤は、エピナスチン又はその医薬的に許容される塩と、合成甘味料および糖アルコールから選択された少なくとも一種の甘味剤と、酸味剤とを含み、酸味剤の割合が、甘味剤100重量部に対して、10〜1000重量部(例えば、10〜750重量部)である。前記甘味剤としては、アスパルテーム、エリスリトール、キシリトール及びD−ソルビトールから選択された少なくとも一種用いてもよい。また、前記酸味剤としては、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、オキシカルボン酸およびこれらの塩から選択された少なくとも一種用いてもよく、例えば、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、フマル酸、マレイン酸、アスコルビン酸及びこれらの塩から選択された少なくとも一種が挙げられる。エピナスチン又はその医薬的に許容される塩1重量部に対して、甘味剤の割合は0.1〜200重量部程度であってもよく、酸味剤の割合は1〜150重量部程度であってもよい。
本発明の経口製剤は、さらに香料を含んでいてもよく、香料としては、例えば、ストロベリーエッセンス、ニッキエッセンス、ホワイトグレープエッセンス、バナナエッセンス及びドリンクエッセンスから選択された少なくとも一種が挙げられる。また、本発明の経口製剤は、さらに、甘味増強剤を含んでいてもよく、甘味増強剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、有機酸塩及びリン酸塩から選択された少なくとも一種を用いることができる。なお、本発明の経口製剤は、液剤またはシロップ剤であってもよい。本発明の経口製剤(液剤)のpHは、3〜7の範囲程度であってもよい。
【0014】
本発明の経口製剤は、薬効成分としてのエピナスチン又はその医薬的に許容される塩と、前記特定の甘味剤と、酸味剤とを用いて製造できる。甘味剤100重量部に対する酸味剤の割合は10〜750重量部程度である。
【0015】
本発明は、薬効成分であるエピナスチン又はその医薬的に許容される塩の苦味を軽減するための苦味軽減剤であって、前記特定の甘味剤と、酸味剤とで構成され、甘味剤100重量部に対して酸味剤を10〜750重量部の割合で含む苦味軽減剤も包含する。さらに、本発明は、薬効成分としてのエピナスチン又はその医薬的に許容される塩に、前記苦味軽減剤を添加して薬効成分の苦味を軽減する方法も包含する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、特定の甘味剤と酸味剤とを特定の割合で用いるため、エピナスチン及びその医薬的に許容される塩の苦味を有効に低減でき、患者の服用性を大幅に改善できる。また、長期間に亘り着色などが生じることがなく、熱、湿気、光、pH等に対する安定性を高めた経口製剤を提供することができ、経口製剤の貯蔵安定性を大幅に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[経口製剤]
本発明の経口製剤の薬効成分であるエピナスチン(化学名:3−アミノ−9,13b−ジヒドロ−1H−ジベンズ[c,f]イミダゾ[1,5−a]アゼピン)は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒症、痒疹、掻痒を伴う尋常性乾癬などの治療に有効な薬剤である。エピナスチンはにおいはないが、苦味を呈する。そのため、エピナスチンの苦味を有効にマスキングすることが重要である。
【0018】
上記エピナスチンの医薬的に許容される塩としては、生理的または薬学的に許容される種々の塩が使用でき、塩を形成する酸または塩基は、成分の種類に応じて選択でき、例えば、無機酸塩(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などとの塩);有機酸塩(例えば、カルボン酸塩(例えば、モノカルボン酸塩(例えば、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などとの塩)、多価カルボン酸塩(例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸などとの塩)など)、オキシカルボン酸塩(例えば、酒石酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、サリチル酸、フェノールフタリン、タンニン酸などとの塩)、アミノ酸塩(アスパラギン酸との塩など)、有機スルホン酸塩(例えば、アルカンスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などとの塩)、アレーンスルホン酸塩(例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ジフェニルジスルホン酸塩などとの塩)など)など);無機塩基との塩(例えば、アルカリ金属水酸化物との塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどとの塩)、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物との塩(例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどとの塩)、アルカリ土類金属炭酸塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩など):有機塩基との塩(アルキルアミン塩(例えば、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩など)、アルカノールアミン塩(例えば、モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)、アルキレンジアミンなどのポリアミン塩、ピリジン塩などの第3級アミン塩など)などが例示できる。特に好ましい塩は、塩酸エピナスチンである。
【0019】
上記薬効成分(エピナスチン及び/又はその医薬的に許容される塩)の含有量は、製剤の種類などに応じて選択でき、例えば、製剤全体の0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%程度の範囲から選択できる。
【0020】
なお、エピナスチンは、必要であれば他の活性成分(薬理活性又は生理活性成分)と併用してもよく、他の活性成分は苦味を有していてもよい。前記他の活性成分としては、例えば、鎮痛剤、解熱鎮痛剤、鎮咳剤、去痰剤、鎮静剤、鎮けい剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、糖尿病治療剤、肝疾患治療剤、潰傷治療剤、健胃消化剤、血圧降下剤、ホルモン剤、抗生物質、サルファ剤、精神神経用剤、眼圧降下剤、ビタミン剤、アミノ酸類、ミネラル類などであってもよい。これらの成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
前記他の苦味を有する活性成分としては、例えば、アミノピリン、アンチピリン、フェナセチン、テオフィリン、無水カフェイン、アセトアミノフェン、サリチル酸コリン、臭化水素酸デキストロメトルファン、塩酸トリメトキノール、アロバルビタール、シクロバルビタール、バルビタール、フェノバルビタール、N−メチルスコポラミン・メチル硫酸塩、フロプロピオン、ジクロフェナクナトリウム、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸シクロペプタジン、トルブタマイド、グルブゾール、アセトヘキサアミド、クロルブロパミド、塩酸ヒドラジノフタラジン、レセルピン、ポリサイアザイド、デキサメサゾン、ベタメサゾン、アミノベンジルペニシリン、セファレキシン、塩酸テトラサイクリン、塩酸ドキシサイクリン、クロラムフェニコール、スルフィソメゾール、スルフィソオキサザール、ヒドロキシジンバモエート、プリミドン、イソソルビド、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、アスコルビン酸、パントテン酸、チアミン、フルスルチアミン及びこれらの塩、塩酸リジンなどが挙げられる。苦味活性成分としての生薬成分には、例えば、イカリソウ、オウセイ、ガラナ、クコシ、ジオウ、トウキ、トチュウ、ニンジン、オウゴン、オオバク、オウレン、ガジュツ、カロウコン、キキョウ、キハダ、ケンゴシ、ゲンチアナ、コウブシ、コウボク、ゴシツ、サイコ、サフラン、サンズコン、セキショウコン、センブリ、センボウ、ソウジュツ、ダイオウ、チンピ、トウヒ、ニガキ、ビャクシャク、ヨモギ、ニガヨモギ、ホップ、ホカミ、マオウ、リュウタン、リンドウ、レンギョウなどの生薬原料からの抽出物が例示できる。
【0022】
[甘味剤]
本発明の経口製剤及び苦味軽減剤は、エピナスチンの苦味を有効に軽減し、長期間に亘り着色などが生じることがなく、光やpH等に対する安定性を格段に向上させるため、特定の甘味剤を含む。甘味剤としては、合成甘味料[サッカリン又はその塩(サッカリンナトリウムなど)、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファム又はその塩(アセスルファムカリウムなど)など]および糖アルコール類[マンニトール(D−マンニトール)、ソルビトール(D−ソルビトール)、エリスリトール、キシリトール、還元パラチノース、マルチトール、ラクチトールなど]が例示できる。これらの甘味剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい甘味剤は、アスパルテーム及び/又は糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、D−ソルビトールなど)である。合成甘味料と糖アルコール類とを好適に組み合わせてもよい。
【0023】
複数の甘味剤を用いる場合、各甘味剤の使用量は、甘味度等に応じて選択でき、例えば、合成甘味料(例えば、アスパルテーム)1重量部に対する糖アルコールの割合は、通常、0〜50重量部(例えば、0.1〜50重量部)程度の範囲から選択でき、0.5〜40重量部(例えば、0.7〜35重量部)、好ましくは1〜30重量部(例えば、2〜25重量部)程度、さらに好ましくは3〜20重量部程度であってもよい。
【0024】
甘味剤の割合は、薬効成分(例えば、塩酸エピナスチン)1重量部に対して、通常、0.1〜200重量部、好ましくは0.5〜100重量部、より好ましくは1〜75重量部程度(例えば、3〜60重量部)であってもよい。
【0025】
甘味剤のうち合成甘味料(例えば、アスパルテーム)の割合は、薬効成分(例えば、塩酸エピナスチン)1重量部に対して、通常、0.1〜100重量部、好ましくは0.3〜50重量部、より好ましくは0.5〜25重量部程度(例えば、1〜10重量部)であってもよい。甘味剤のうち糖アルコールの使用量は、上記甘味剤の総量から人工甘味料の使用量を減算した割合であってもよい。
【0026】
これらの甘味剤の使用量は、製剤全体の0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜13重量%程度であってもよい。
【0027】
また、個々の甘味剤の使用量としては、製剤全体に対して、合成甘味料(例えば、アスパルテーム)は0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜1重量%程度であってもよい。糖アルコールは1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは3〜10重量%程度である。なお、エリスリトール及びキシリトールは、それぞれ、製剤全体に対して、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは3〜10重量%程度であってもよく、D−ソルビトールは製剤全体に対して、1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜7重量%程度であってもよい。
【0028】
また、本発明の経口製剤及び苦味軽減剤は、ショ糖の甘味度を100としたとき、甘味度200以下の糖類(前記甘味剤以外の糖類)を含んでもいてもよい。
【0029】
このような糖類としては、例えば、糖(ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、黒砂糖、ハチミツ、トレハロース、マルトース(麦芽糖)、キシロース、マンノース、ラフィノース、ガラクトース、フルクトース、ラムノース、異性化糖(高フルクトースシロップ)、パラチノースなど)、オリゴ糖(デンプン糖(デンプン糖化物)、マルトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガーなど)などが例示できる。これらの糖類は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
上記糖類は非還元型(トレハロース型)であっても、還元型(マルトース型)であってもよい。還元糖の種類は、遊離のアルデヒド基又はケトン基を有し、還元性を示す糖であれば特に限定されず、例えば、遊離の単糖類;還元麦芽糖又はマルトース、イソマルトース、ラクトース、パラチノースなどの少糖類又はオリゴ糖類が例示できる。これらの還元糖も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。還元糖としては、還元麦芽糖(水あめ、粉糖など)又はマルトースを用いる場合が多い。
【0031】
[酸味剤]
さらに、本発明の経口製剤及び苦味軽減剤は、エピナスチンの苦味を有効に軽減し、長期間に亘り着色などが生じることがなく、光やpH等に対する安定性を格段に向上させるため、酸味剤を含む。酸味剤の種類は、酸味を呈する限り特に制限されず、種々の有機酸成分が使用できる。酸味剤としては、例えば、飽和カルボン酸(例えば、酢酸などの飽和モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸などの飽和ジカルボン酸)および不飽和カルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸などの不飽和多価カルボン酸)が挙げられる。これらの飽和および不飽和カルボン酸は、オキシカルボン酸(例えば、乳酸、グルコン酸などのヒドロキシモノカルボン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのヒドロキシポリカルボン酸)をも包含する。また、これらの飽和および不飽和カルボン酸は、ラクトン類(例えば、アスコルビン酸など)も包含する。これらの酸味剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの酸味剤のうち、オキシカルボン酸(例えば、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸など)、フマル酸、アスコルビン酸などを使用する場合が多く、特に、少なくともオキシカルボン酸を用いる場合が多い。
【0032】
酸味剤は塩(ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩)として使用してもよい。酸味剤が光学活性体であるとき、光学活性体はd,l,dl体であってもよく、ラセミ体であってもよい。なお、複数の酸味剤を用いると、苦味の矯味に有効な場合がある。
【0033】
酸味剤の割合は、甘味剤の種類や量的割合などに応じて選択でき、エピナスチン又はその医薬的に許容される塩(薬効成分)1重量部に対して、例えば、1〜150重量部、好ましくは2〜100重量部、さらに好ましくは5〜75重量部(例えば、10〜50重量部)程度であってもよい。製剤全体に対する酸味剤の使用量は、例えば、1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは3〜7重量%程度であってもよい。
【0034】
薬効成分の苦みを有効に軽減するため、本発明では、上記甘味剤100重量部に対して、酸味剤を10〜1000重量部(例えば、10〜750重量部)、好ましくは20〜600重量部(例えば、25〜550重量部)、より好ましくは30〜500重量部(例えば、35〜450重量部)程度の割合で使用する。このような割合で甘味剤と酸味剤とを含む苦味軽減剤を用いると、薬効成分の苦みを有効に軽減でき、服用に伴うコンプライアンスを向上できるだけでなく、薬効成分及び経口製剤の安定性を大きく向上でき、熱、水分(湿度)、光が作用したりpHが変動しても安定であり、着色したり不純物が生成するのを有効に防止できる。
【0035】
[甘味増強剤]
経口製剤及び苦味軽減剤はさらに鹹味(塩味)を有する甘味増強剤(又は鹹味剤)を含むのが好ましい。このような甘味増強剤としては、塩化ナトリウム、食塩、塩化カリウム、有機酸塩(ナトリウム又はカリウム塩、例えば、リンゴ酸ナトリウムなどのオキシカルボン酸ナトリウム塩、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウムなど)、リン酸塩(リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウムなど)などが例示できる。甘味増強剤(又は鹹味剤)は中性塩、例えば、ナトリウムイオン及び/又は塩素イオンとして解離する塩である場合が多い。これらの甘味増強剤も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい甘味増強剤は、塩化ナトリウムである。
【0036】
甘味増強剤(又は鹹味剤)の使用量は、甘味剤の種類やその量的割合に応じて選択でき、例えば、甘味剤100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜40重量部、さらに好ましくは1〜30重量部程度であってもよい。
【0037】
甘味増強剤の使用量は、製剤全体に対して、0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%程度であってもよい。
【0038】
なお、酸味剤としてだけでなく、甘味増強剤としても作用可能である化合物(例えば、リンゴ酸塩)を前記した酸味剤としての使用量より多く経口製剤に配合した場合、例えば、リンゴ酸塩は酸味剤としても甘味増強剤としても作用する。
【0039】
[香料]
経口製剤及び苦味軽減剤は香料を含んでいてもよい。香料としては、天然香料、例えば、果実系香料(ストロベリー、ブルーベリー、リンゴ、うめ、ライム、バニラ、ペッパーなどのエッセンス又はオイル)、果皮系香料(オレンジ、ホワイトグレープ、グレープフルーツ、レモンなどのエッセンス又はオイル)、樹皮系香料(ニッキなどのエッセンス又はオイル)、根系香料(ジンジャーなどのエッセンス又はオイル)、枝葉系香料(ミント、ペパーミント、スペアミント、ローズマリーなどのエッセンス又はオイル)、花系香料(ジャスミン、ラベンダー、ローズ、ローズマリー、ヒヤシンスなどのエッセンス又はオイル)、黒糖フレーバー、ドリンクエッセンスなど;合成香料、例えば、酢酸ベンジル、酢酸リナリル、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、シスジャスミン、シス−3−ヘキセノール、メントールなどが例示できる。これらの香料も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。香料としては、果実系香料、樹皮系香料、果皮系香料、ドリンクエッセンスが好ましく、特に、ストロベリーエッセンス、ニッキエッセンス、ホワイトグレープエッセンス、ドリンクエッセンスが好ましい。なお、ドリンクエッセンスは、ストロベリーやニッキなどを混合したものである。
【0040】
香料の量的割合は、薬効成分(例えば、塩酸エピナスチン)1重量部に対して、0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1.5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部程度であってもよい。
【0041】
これら香料の使用量は、製剤全体に対して、0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%程度であってもよい。
【0042】
上記経口製剤とは、固形製剤(例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、トローチ剤、ドライシロップ剤など)、液体製剤(例えば、シロップ剤、液剤および懸濁剤など)などの経口投与に適した製剤であればよい。本発明は苦味が感じやすい製剤、特に液剤(液剤、シロップ剤など)に適用するのが好ましい。
【0043】
本発明の経口製剤は、上記薬効成分、甘味剤、酸味剤、香料及び甘味増強剤のほかに、製剤の剤形に応じて、生理学的に許容可能であり、かつ薬効成分の矯味を損わない種々の添加剤(担体)を使用し製剤化することができる。当該製剤添加物としては、上記医薬製剤で挙げた剤型の医薬品を製造する上で通常使用される添加剤が挙げられる。例えば、局方および「医薬品添加物事典2000」(薬事日報社、2002年3月25日第2刷発行)に収載されている賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、光沢化剤、着色剤、酸化防止剤(抗酸化剤)、防湿剤、コーティング剤、糖衣剤、粘稠化剤、清涼化剤、矯臭剤(例えば、芳香剤など)、湿潤剤、溶剤又は液体、可溶化剤、界面活性剤、分散剤、懸濁剤、吸着剤、消泡剤、安定剤、防腐剤、保存剤、溶解剤、軟化剤、可塑剤、発泡剤、pH調整剤、緩衝剤などから各剤形に適したものが選択される。
【0044】
上記固形製剤としては、薬効成分と担体成分とを造粒し、生成した顆粒を必要により添加剤を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性を付与する自体公知の方法でコーティングすることにより製造され、カプセル剤は、カプセルに顆粒剤を充填することにより調製できる。固形製剤において、前記甘味剤及び酸味剤は製造工程の適当な段階、例えば、造粒工程、添加剤の添加工程などで添加してもよい。固形製剤の担体としては、賦形剤、結合剤および崩壊剤から選択された少なくとも一種の担体を使用する場合が多く、脂質などの添加剤を用いてもよい。
【0045】
前記賦形剤としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトールなどの糖類又は糖アルコール類;トウモロコシデンプンなどのデンプン;結晶セルロース(微結晶セルロースも含む)などの多糖類;軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウムなどの酸化ケイ素又はケイ酸塩などが例示できる。結合剤としては、アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプンなどの可溶性デンプン;寒天、アラビアゴム、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリ乳酸、ポリエチレングリコールなどの合成高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル類などが例示できる。崩壊剤としては、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース又はその塩(カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウムなど)、ポリビニルピロリドン(ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポピドン)など)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが例示できる。これらの担体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
脂質としては、ワックス類(蜜ろう、カルナバろう、ラノリン、パラフィン、ワセリンなど)、長鎖脂肪酸エステル(飽和又は不飽和脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸と多価アルコール(ポリC2-4アルキレングリコール、グリセリン又はポリグリセリンなど)とのエステル(グリセライドなど)など)、硬化油、高級アルコール(ステアリルアルコールなどの飽和脂肪族アルコール、オレイルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコールなど)、高級脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸など)、金属石鹸類(例えば、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩など)などが例示できる。
【0047】
添加剤としては、例えば、滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)、崩壊助剤、抗酸化剤又は酸化防止剤、乳化剤(例えば、非イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤など)、分散剤、懸濁剤、溶解補助剤、増粘剤(カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、カラギーナン、ゼラチンなどの水溶性高分子;カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類など)、pH調整剤又は緩衝剤(クエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝剤など)、防腐剤又は保存剤(メチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類など)、殺菌剤又は抗菌剤(安息香酸ナトリウムなどの安息香酸類など)、帯電防止剤、矯味剤又はマスキング剤(例えば、甘味剤など)、着色剤(ベンガラなどの染顔料など)、矯臭剤又は香料(芳香剤など)、清涼化剤、消泡剤、等張化剤、無痛化剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0048】
また、液体製剤は、液状である限り、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの形態であってもよく、ドリンク剤、エキス剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤などの内服液剤であってもよく、健康飲料などの各種飲料であってもよい。
【0049】
液剤は、薬効成分と前記甘味剤と酸味剤とを特定の割合で用い、液体担体成分(油性溶媒、精製水などの水性溶媒、エタノールなどのアルコール性溶媒など)と必要により添加剤とを混合して調製でき、必要により滅菌処理される。添加剤としては、慣用の成分、例えば、担体、界面活性剤(乳化剤又は分散剤)、可溶化剤、溶解補助剤、懸濁剤、増粘剤などの粘度調整剤(例えば、ガム類又は多糖類(例えば、ペクチン、ローカストビーンガム、アラビアガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、カラゲニン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など)、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、合成高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、メタアクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマーなど))、着色剤、食物繊維、防腐剤又は保存剤(例えば、安息香酸ナトリウムやパラオキシ安息香酸アルキルエステル、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、酸化防止剤(抗酸化剤)、清涼化剤、殺菌剤、抗菌剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤(一般に緩衝作用を有する(pH変化に対して抵抗性を有する)ものであればよく、例えば、有機酸系緩衝剤(酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウムなど)、リン酸塩系緩衝剤(リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸塩)、ホウ酸系緩衝剤(ホウ酸、ホウ砂など)など)、矯臭剤、消泡剤などが例示できる。液剤は、通常、各成分を精製水とともに混合し、必要によりpH調整し、滅菌処理される場合が多い。
【0050】
上記経口製剤(液剤)は、広い範囲のpH域で優れた安定性を有する。例えば、経口製剤のpHは3〜7、好ましくはpH3.5〜7、さらに好ましくはpH4〜6程度である。また、本発明の製剤のpHは、pH調整剤によりpHを調製されてもよい。pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸など)、有機酸(酢酸など)、無機塩基(水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなど)、有機塩基(アミン類など)などの他、緩衝剤を使用してもよい。
【0051】
エピナスチンは、気管支喘息;アレルギー性鼻炎;蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚掻痒症、痒疹、掻痒を伴う尋常性乾癬などの疾患の治療に有用であり、その投与量は疾患の種類、投与対象の症状、年齢、体重などによって適宜決定することができる。例えば、アレルギー性鼻炎の場合、投与量は、薬効成分の量に換算して、通常、1日1回、1回10〜20mg程度、その他の疾患の場合には、1日1回、1回20mg程度である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、薬効成分の苦味を低減でき、さらに長期に亘り製剤の安定性も向上させるため、経口投与又は服用する際の服用感の向上、長期保存時の製剤の変質防止に有用である。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0054】
実施例1〜19(液剤)及び比較例
表1に配合成分及び製剤全体における重量割合(%)を示す。40℃に加温した精製水に、香料を除く表1〜2記載の配合成分を溶解後、室温まで放冷し、必要ならば香料を加えて混和した。その後、精製水を加えて全量とし、製剤(液剤)を得た(塩酸エピナスチン濃度0.2重量%)。なお、比較例としては、市販の塩酸エピナスチン製剤(以下、市販品ともいう)を使用した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
試験例
1.官能試験
23名の男女(男:15名、女:8名)を対象に、実施例19の製剤および市販品について官能試験を行った。その結果、21名(男:14名、女:7名)において、実施例19の製剤は市販品よりも苦味が十分に抑制され、飲みやすいとの結果が得られた。以上より、実施例19の製剤は、甘味と苦味が同居したような市販品独特の味を改善することにより、服用感が大幅に向上されていることが認められた。
【0058】
2.安定性試験
[方法]
ガラス瓶に充填した実施例の製剤及び市販品を60℃で3週間保存し、1週間毎の着色度(APHAカラー)を測定した。測定したAPHAカラー値と保存前のAPHAカラー値との差(ΔAPHA=(1〜3週間保存後に測定したAPHAカラー値)−(保存前のAPHAカラー値))を表1〜2に示した。
【0059】
[APHAカラー測定方法]
JOCS3.2.1.2−1996基準油脂分析試験法に基づき、波長450nmにおけるAPHA標準色原液を作成、検量線を求め、以下の式より算出した。
【0060】
APHA=UABS×140/0.0383
[結果]
表1〜2に示すとおり、市販品(pH3.5)のΔAPHAが3週間で516.2と大きくなるのに対して、実施例の製剤(pH3.0〜6.5)ではΔAPHAの変動は極めて小さいか、もしくは変動しないことが認められた。すなわち、実施例の製剤は、pH3.0〜6.5の幅広いpH域で安定であることが認められた。
【0061】
3.安定性試験(熱および光の影響)
[方法]
ガラス瓶に充填した実施例12、13、14および15の製剤を60℃で3週間保存し、1週間毎に製剤の塩酸エピナスチン残存率および類縁物質生成量(不純物量)を、第十四改正日本薬局方第一部 一般試験法 3.液体クロマトグラフ法に準じて測定した。さらに実施例13および15の製剤の光に対する安定性(温度25℃,D60蛍光ランプ,120万Lux・h)を、類縁物質生成量(不純物量)を測定することで評価した。結果を表3〜4に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
[結果]
表3に示すとおり、3週間後において、市販品はΔAPHAの大きな変動(約516)とともに、塩酸エピナスチン残存率の低下(95.2%)及び類縁物質の生成量の増加(1.78%)を示した。さらに、表4に示すとおり、市販品は光に対する安定性においても市販品は類縁物質生成量が大きく増加(5.43%)した。
【0065】
一方、実施例12、13、14及び15の製剤は、表3に示すとおり、ΔAPHAの変動が極めて小さいだけでなく、塩酸エピナスチン残存率の低下や類縁物質生成量の増加もほとんど認められない。さらに、光に対する安定においても、表4に示すとおり、実施例13および15の製剤は、類縁物質の生成がほとんど認められていない。以上より、実施例製剤は市販品と比較し、安定性の面でも格段に優れた製剤であることが認められた。
【0066】
4.安定性試験(pHの影響)
[方法]
pHを3.5〜6.5に調整した実施例19の製剤をそれぞれガラス瓶に充填し、60℃で3週間保存し、1週間毎の製剤の着色度(APHAカラー)、塩酸エピナスチン残存率および類縁物質生成量を測定した。結果を表5に示す。
【0067】
【表5】

【0068】
[結果]
表5に示すとおり、市販品(pH3.5)と比較して、実施例19の製剤はいずれのpH(3.5〜6.5)においても、着色度(APHAカラー)、塩酸エピナスチン残存率および類縁物質生成量の変動が小さく、幅広いpH域で優れた安定性を示すことが認められた。
【0069】
以上、試験例1〜4の結果から明らかなように、薬効成分と甘味剤と酸味剤とを配合することで、薬効成分の苦味を有効に抑制でき、さらに、幅広いpH域において、その安定性(長期保存安定性)も有効に向上させることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピナスチン又はその医薬的に許容される塩と、合成甘味料および糖アルコールから選択された少なくとも一種の甘味剤と、酸味剤とを含む経口製剤であって、前記酸味剤の割合が、甘味剤100重量部に対して、10〜1000重量部である経口製剤。
【請求項2】
甘味剤が、アスパルテーム、エリスリトール、キシリトール及びD−ソルビトールから選択された少なくとも一種である請求項1記載の経口製剤。
【請求項3】
酸味剤が、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、オキシカルボン酸およびこれらの塩から選択された少なくとも一種である請求項1記載の経口製剤。
【請求項4】
酸味剤が、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、フマル酸、マレイン酸、アスコルビン酸及びこれらの塩から選択された少なくとも一種である請求項1記載の経口製剤。
【請求項5】
エピナスチン又はその医薬的に許容される塩1重量部に対して、甘味剤を0.1〜200重量部、酸味剤を1〜150重量部の割合で含む請求項1記載の経口製剤。
【請求項6】
さらに香料を含む請求項1記載の経口製剤。
【請求項7】
香料が、ストロベリーエッセンス、ニッキエッセンス、ホワイトグレープエッセンス、バナナエッセンス及びドリンクエッセンスから選択された少なくとも一種である請求項6記載の経口製剤。
【請求項8】
さらに、甘味増強剤を含む請求項1記載の経口製剤。
【請求項9】
甘味増強剤が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、有機酸塩及びリン酸塩から選択された少なくとも一種である請求項8記載の経口製剤。
【請求項10】
液剤またはシロップ剤である請求項1〜9のいずれかに記載の経口製剤。
【請求項11】
pHが3〜7の範囲である請求項10記載の経口製剤。
【請求項12】
薬効成分としてのエピナスチン又はその医薬的に許容される塩と、請求項1記載の甘味剤と、酸味剤とを用いて経口製剤を製造する方法であって、甘味剤100重量部に対して酸味剤を10〜750重量部の割合で用い、経口製剤を製造する方法。
【請求項13】
薬効成分であるエピナスチン又はその医薬的に許容される塩の苦味を軽減するための苦味軽減剤であって、請求項1記載の甘味剤と、酸味剤とで構成され、甘味剤100重量部に対して酸味剤を10〜750重量部の割合で含む苦味軽減剤。
【請求項14】
薬効成分としてのエピナスチン又はその医薬的に許容される塩に、請求項13記載の苦味軽減剤を添加して薬効成分の苦味を軽減する方法。

【公開番号】特開2007−31285(P2007−31285A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212152(P2005−212152)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【Fターム(参考)】