説明

茶枝葉の移送装置並びにこれを具えた茶刈装置

【課題】 刈り取り直前の茶枝葉が、全体的に進行方向側に倒れ込む現象を防止することにより、刈り残しも防止でき、また刈跡も綺麗で、刈り取った茶枝葉を前方にこぼしてしまうこともない新規な茶枝葉の移送装置並びにこれを具えた茶刈装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、例えば刈刃22の上方に移送ダクト6を立ち上げ、この移送ダクト6内に刈刃22の後方側から背面風Wを吹き込み、この背面風Wの風送作用によって刈り取り後の茶枝葉Aを所定の位置に向けて移送する装置であって、この移送ダクト6は、刈刃22の前方側が適宜の高さで、ほぼ茶畝T上面に沿った形状に開口された移送開始部35を具えるものであり、また移送開始部35には、開口部の上方から前方に張り出すヒサシ体43が、ほぼ茶畝上面に沿った状態に形成され、ヒサシ体43が差し掛けられた未刈取状態の茶枝葉Aに、背面風Wによる吸引作用が及ぶようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉の摘採や枝幹の剪除等を行う茶刈装置における茶枝葉の移送装置並びにこれを具えた茶刈装置に関するものであって、特にスムーズに茶刈作業を行い、また刈り取った茶枝葉をスムーズに移送・収容し、刈跡も綺麗な刈取面が得られるようにした移送装置の改良に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば茶葉の摘採を行う摘採装置としては、比較的大型の乗用型摘採装置が存在する。このものは、摘採した茶葉の収容部として、大容量のコンテナを搭載したもの、あるいは複数の茶袋を吊り下げ状態に取り付けて収容部を形成する等、大量の茶葉を収容できるようにしたものが多い。
そして、このような摘採装置にあっては、例えば図14に示すように、刈刃22′の前方側に茶葉移送のための分岐ノズルN付きの送風管を配し、この分岐ノズルNから圧力風を送り込んで、茶葉Aを収容部4′まで移送するのが一般的であった。また、刈刃22′から収容部4′まで茶葉Aを移送する移送路は、刈刃22′のほぼ後方に延びる水平移送部Xと、その後に収容部4′の上部に臨むように接続された上昇移送部Yとを具えるのが一般的であった(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような移送形態(送風形態)では、水平移送部Xを要する分、移送装置5′ひいては摘採装置の前後長が長くなり、摘採装置の取り回し性を低下させてしまうという問題があった。
このようなことから、本出願人は、刈刃の後方側からダクト内に送り込む背面風の作用によって、刈り取り後の茶枝葉を移送するようにした新たな移送手法を鋭意研究し、種々の特許出願に至っている(例えば特許文献2参照)。
この特許文献2では、例えば図15に示すように、単に背面風Wによって、刈り取り後の茶枝葉Aを移送することにとどまらず、移送ダクト6′の前面板31′(前面調節板310′)を上下にスライド自在に形成し、移送開始部35′の間口(開口高さ)が変更できるようにしており、これにより茶枝葉Aを確実に刈り取り、またその後の移送もスムーズに行えるようにしている。
【0004】
しかし、このような移送手法においても以下のような点で更なる改良が求められていた。すなわち、上記特許文献2では、刈り取り作業中、上記図15に併せて示すように、刈り取り直前の特に進行方向側に伸びた茶枝葉Aが、全体的に進行方向(刈取方向)側に倒れ込む傾向にあった。これは、刈刃22′に押された茶枝葉Aが進行方向側に押されることはもちろん、刈刃22′に押された茶枝葉Aが更に前方側の別の茶枝葉Aを次々に押し込むために起こる現象と考えられる(一種のドミノ現象)。そして、このように茶枝葉Aが全体的に進行方向に傾いた(押し込まれた)状態では、刈刃22′の下に潜り込む茶枝葉Aも存在することがあり、当然これは刈り取られないまま残ってしまうため、これが問題であった。もちろん、このような状態での刈り取りは、刈跡も綺麗ではなく、また刈ならし等の剪枝作業にあっては、剪除した枝幹などが前方側に飛び散ることがあり、このような点で改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−95346号公報
【特許文献2】特開2008−35706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景からなされたものであって、刈り取り直前の茶枝葉が、全体的に進行方向(刈取方向)側に倒れ込む現象を防止することにより、刈り残しも防止でき、また刈跡も綺麗で、刈り取った茶枝葉を前方にこぼしてしまうこともない新規な茶枝葉の移送装置並びにこれを具えた茶刈装置を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の茶枝葉の移送装置は、茶葉や枝幹等の茶枝葉を刈り取る刈刃に対し、刈り取り後の茶枝葉を所定の位置に向けて移送する移送ダクトを具え、この移送ダクト内に刈刃の後方側から背面風を吹き込み、この背面風の風送作用によって刈り取り後の茶枝葉を所定の位置に向けて移送する装置において、前記移送ダクトは、刈刃が設けられる下部において刈刃の前方側が適宜の高さで、ほぼ茶畝上面に沿った形状に開口された移送開始部を具えるものであり、この移送開始部には、開口部の上方から前方に張り出すヒサシ体が、ほぼ茶畝上面に沿った状態に形成され、ヒサシ体が差し掛けられた未刈取状態の茶枝葉に、背面風による吸引作用が及ぶようにしたことを特徴として成るものである。
【0008】
更に請求項2記載の茶枝葉の移送装置は、前記請求項1記載の要件に加え、前記移送ダクトには、このものの前面板に沿って上下方向の取付高さが変更できる調節板が設けられ、この調節板の取付高さによって移送開始部の開口上限位置が決定されるものであり、前記ヒサシ体は、この調節板の下端部から前方に突出するように形成されることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載の茶枝葉の移送装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記ヒサシ体は、前方に突出する張り出し長さが変更自在に形成されることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載の茶枝葉の移送装置は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記ヒサシ体は、前方への張り出し先端側が上下方向に回動自在に設けられることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載の茶刈装置は、茶畝を跨いで走行する走行機体と、この走行機体に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う茶刈機体と、この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部と、刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉を茶刈機体から収容部まで移送する移送装置とを具え、目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした装置であって、前記移送装置には、請求項1、2、3または4記載の茶枝葉の移送装置が適用されることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の茶枝葉の移送装置並びにこれを具えた茶刈装置は、上述した手段により以下のような効果を奏するものである。
まず請求項1記載の発明によれば、移送開始部には、開口部の上方からヒサシ体が前方に張り出すように形成されるため、移送ダクト内で背面風を生じさせると、ヒサシ体にかざされた(ヒサシ体が差し掛けられた)刈り取り直前の茶枝葉(茶樹)に対しても、移送ダクト内に吸い込む吸引力を作用させることができる。このため、刈り取り直前の茶枝葉は、茶刈装置の進行方向側に倒れ込むことがなくなり、ほぼ茶枝葉を立たせた状態で刈り取ることができる。従って、刈り残しも防止でき、刈跡も綺麗なものとなり、刈り取った茶枝葉が移送開始部側からこぼれてしまうことも防止できる。
【0013】
また請求項2記載の発明によれば、ヒサシ体は、移送ダクト前面において上下方向の取付高さが変えられる調節板に対して取り付けられるため、開口部である移送開始部の上限位置を調節板によって決定すれば、自然にヒサシ体の高さも設定され、ヒサシ体の高さ設定が容易に行える(調節板の上下設定と、ヒサシ体の高さ設定が関連付けられるため、設定が容易となる)。
【0014】
また請求項3記載の発明によれば、ヒサシ体は、前方側への張り出し長さが適宜変更可能に形成されるため、摘採状況に応じて、言い換えれば刈り取り直前の茶枝葉(茶樹)に作用させたい吸引力の大きさや吸引力を作用させたい領域(広さ)等に応じてヒサシ体の張り出し長さが調節できる。例えば、移送開始部の前方側において吸引力を比較的広範囲にわたって作用させたい場合には、ヒサシ体の張り出し長さを大きく設定するものである。
【0015】
また請求項4記載の発明によれば、ヒサシ体は前方側が上下方向に回動自在であるため、例えばヒサシ体を、前方側(張り出し先端側)が上向きになるように回動させた場合には、吸い込み側に向かって開口面積(断面積)が徐々に狭まるため、吸引力としては徐々に増強すると考えられる。このように回動自在のヒサシ体であれば、茶枝葉の吸い込み方向に向かって、徐々に吸引力を変化させることができるものである。
【0016】
また請求項5記載の茶刈装置によれば、移送開始部には、開口部の上方からヒサシ体が前方に張り出すように形成されるため、移送ダクト内で背面風を生じさせると、ヒサシ体にかざされた(ヒサシ体が差し掛けられた)刈り取り直前の茶枝葉(茶樹)に対しても、移送ダクト内に吸い込む吸引力を作用させることができる。このため、刈り取り直前の茶枝葉は、茶刈装置の進行方向側に倒れ込むことがなくなり、ほぼ茶枝葉が立った状態で刈り取ることができる。従って、刈り残しも防ぐことができ、綺麗な刈跡が得られ、刈り取った茶枝葉が移送開始部側からこぼれてしまうことも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の茶枝葉の移送装置の一部を示す拡大断面図、並びにこの移送装置を具えた茶刈装置の一例である茶畝跨走型摘採装置を使用状態で示す斜視図である。
【図2】同上、茶畝跨走型摘採装置を示す正面図である。
【図3】同上、茶畝跨走型摘採装置を示す側面図(a)、並びに移送装置のダクトユニットを示す縦断側面図(b)である。
【図4】移送装置周辺を示す斜視図である。
【図5】移送ダクトを前面調節板とともに示す正面図である。
【図6】摘採機体を示す正面図である。
【図7】ダクトユニットを示す背面図(a)、並びに同図b−b線で破断した縦断側面図である。
【図8】二種の摘採態様を示す縦断側面図である。
【図9】ダクトユニットの他の二種の実施例(a)・(b)を示す背面図である。
【図10】ダクトユニットによる背面風に加えて、補助的に正面風を作用させるようにした他の実施例を示す縦断側面図である。
【図11】移送ダクトの背板自体を、上り傾斜角度が55度になるように設定した他の実施例を示す縦断側面図である。
【図12】摘採直前の茶葉の上方に差し掛けるヒサシ体において、前方への張り出し長さを変更自在とした他の実施例を示す縦断側面図である。
【図13】移送開始部側を回動基端として張り出し先端側を上下方向に回動自在に形成したヒサシ体の他の実施例を示す縦断側面図である。
【図14】摘採茶葉の従来の移送手法及びその経路を模式的に示す説明図である。
【図15】背面風に加えダクトユニットの前面板(前面調節板)を上下スライド自在に形成した、従来の他の移送手法において、その改良点(改良が望まれていた点)を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
なお、説明にあたっては、まず本発明の茶刈装置として摘採装置を例に挙げながら、その全体構成を概略的に説明し、併せて本発明装置である茶枝葉の移送装置について説明する。また、摘採装置としては、刈り取った茶葉Aを上昇移送して収容部に収容する、いわゆる大型の乗用式摘採装置(茶畝跨走型摘採装置1)を例に挙げて説明する。
また、本発明の移送手法そのものは、茶芽を刈り取る摘採作業のみならず、樹形を整え樹勢の回復を図るために枝幹を剪除する剪枝作業にも利用でき、このため本発明の名称中や特許請求の範囲に記載した「茶枝葉」とは、摘採した茶葉Aと剪除した枝幹とを総称するものである(茶枝葉にも茶葉と同一の符号Aを付す)。また、「茶刈」もしくは「茶刈装置」とは、摘採(摘採装置)と剪枝(剪枝装置)とを総称するものである。なお剪枝作業の具体的形態については後述する。
【実施例】
【0019】
本発明の移送手法を適用した茶畝跨走型摘採装置1は、一例として図1、図2に示すように、茶畝Tを跨ぐように走行する走行機体2と、この走行機体2によって茶畝T上面に位置するように支持される摘採機体3と、摘採機体3の後方に設けられ摘採した茶葉Aを収容する収容部4と、摘採した茶葉Aを摘採機体3から収容部4まで移送する移送装置5とを具えて成るものである。以下、各構成部について説明する。
【0020】
まず走行機体2について説明する。このものは、茶畝Tを跨いで茶畝間の畝地を接地走行するものであり、走行方向から見て概ね門型状に形成されたフレーム11を骨格部材とする。このフレーム11は、畝間に立ち上げ状態に設けられる脚部フレーム11Aと、この脚部フレーム11Aを繋ぐ連結フレーム11Bと、脚部フレーム11Aに対し昇降自在に取り付けられる昇降ブラケット11Cとを具えて成るものである。そして、脚部フレーム11Aの下端には一例としてクローラを適用した走行体12を設ける。もちろん、この走行体12は、このようなクローラに限らず、畝地を過剰に押し付けないような空気タイヤ、あるいは双方を適用した形態(例えば前側に空気タイヤ、後側にクローラを適用した形態)等が適宜採り得る。
【0021】
更に連結フレーム11Bの上部には、茶畝跨走型摘採装置1に乗車した作業者が座る操縦者用シート13、操縦桿14、茶畝跨走型摘採装置1の制御や操作等を行うためのコントロールボックス15を設けるものである。そして操縦者用シート13の側傍には、例えばディーゼルエンジン等を適用した原動機16を搭載するものであり、一例として、この原動機16により図示を省略する油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプにより供給される作動油によって前記走行体12の駆動や、後述する摘採機体3の刈刃22の駆動、更には前記昇降ブラケット11Cの昇降動を担うシリンダ(図示略)等の駆動を行う。
【0022】
また前記連結フレーム11B上には、刈刃22によって刈り取った茶葉Aを風送するための送風機17A・17Bを二基並設するものであり、これら送風機17A・17Bは、一例として図4に示すように、前記原動機16により直接駆動される。なお二基の送風機17A・17Bは、回転軸171が同軸であり、この回転軸171がプーリとベルトを介して前記原動機16により駆動される。
そして、これら送風機17A・17Bからは送風ダクト18A・18Bを介して圧力風が移送装置5(摘採機体3側)に供給される。なお送風ダクト18A・18Bは、一部または全部が、フレキシブルダクト180によって構成され、移送装置5に接続されている。
【0023】
次に摘採機体3について説明する。このものは茶葉Aの摘採を実質的に行うものであり、刈刃22を主要部材として成るものである。この刈刃22は、例えば図6に示すように、上下一対の刈刃体22Aと、これら刈刃体22Aを摺動自在に支持する刈刃支持フレーム22Bと、刈刃体22Aを偏心板やエキセントリックシャフト等によって往復摺動させる駆動部22Cとを具えて成り、上下一対の刈刃体22Aを交互に往復動させることで、各刈刃体22Aに形成した刃(歯)のバリカン作用により茶葉Aを刈り取るものである。
【0024】
このように刈刃22は、刈刃体22A、刈刃支持フレーム22B、駆動部22C等を一体的に組み付けた、いわゆるカセット式替刃の形態を採り、刈刃22の取り替えにより、容易に茶畝跨走型摘採装置1から浅刈装置・中刈装置等の剪枝装置に仕様変更できるものである。なお図中符号23は、このようなカセット式の刈刃22を着脱自在に保持する側板部であり、この側板部23が、例えば図3(a)に示すように、上記昇降ブラケット11Cに支持され、刈刃22の高さが自在に設定できる構成となっている。
【0025】
また、上記刈刃22の駆動部22Cも、前記油圧ポンプ(走行機体2に搭載された原動機16によって駆動される)から供給される作動油によって駆動することが望ましい構成であるが、刈刃22の駆動は別途エンジンによって行うことも可能である。
【0026】
次に上記刈刃22によって刈り取った茶葉Aを収容する収容部4について説明する。収容部4は、一例として図1〜図3に示すように、コンテナ式のものを採用し、この中に直接的に茶葉Aを収容する形態を採る。もちろんコンテナ式以外の収容部4としては、収容部フレーム内に1袋または2袋以上の茶袋を支持し、これら茶袋の受入口(開放端側)を後述する移送ダクト6の吐出口37に掛け止めしておくような形態を採ることも可能である。
【0027】
次に本発明装置である茶葉Aの移送装置5について説明する。移送装置5は、刈り取った茶葉Aを所定の位置に向けて移送する部位であり、ここでは茶葉Aを摘採機体3から収容部4まで中継移送するものである。具体的には刈り取り直後の茶葉Aを収容部4に向けて刈刃22の上方に移送する形態(上昇移送)を採る。ここで、茶葉Aの移送は空気流、つまりダクト内に圧力風を送り込んで収容部4に移送するものであり、ここでは複数のダクト部材を用いることに因み、これらをダクトユニット5Aと総称する(移送装置5の末尾に「A」を付けて示す)。
【0028】
ダクトユニット5Aは、一例として図4に示すように、移送ダクト6と背面ダクト7とを主要部材として成るものであり、このうち移送ダクト6は、例えば図3(b)に示すように、刈刃22の直上部からやや後方斜め上方に立ち上げた後、収容部4の上方に臨むように形成されるものである。また背面ダクト7は、刈刃22の後方側、すなわち摘採方向(進行方向)に対して後方となる刈刃22の背面側から、前記移送ダクト6内に上昇流となる圧力風(これを背面風Wとする)を送り込むものである。以下、これら移送ダクト6や背面ダクト7等について更に詳細に説明する。
【0029】
まず移送ダクト6について説明する。このものは、上述したように例えば刈刃22に対し、その上方に立ち上げられ、刈り取り直後の茶葉Aを収容部4まで上昇移送するものである。
このような移送形態を採ることに因み、移送ダクト6は、摘採装置の前面側に設けられる前面板31と、摘採装置の後方側に設けられる背板32と、その間を接続する側板33とによって、内部が空洞状(風洞状)に形成され、ダクトの上下両端部が開口状態に形成されて成るものである。ここで、摘採した茶葉Aの移送が始まる下部開口を移送開始部35とし、茶葉Aの移送が終わる上部開口を移送終端部36とするものであり、この移送終端部36には収容部4に臨む吐出口37が形成される。
【0030】
なお、移送ダクト6は、下端底部に刈刃22が設けられ、刈刃22から適宜の高さで前方側が開口されて成り、ここが上記移送開始部35である。言い換えれば、開口部としての移送開始部35の下端は、刈刃22とほぼ同じ高さ(位置)に設定されるものである。
また、移送ダクト6における移送開始部35(開口部)は、刈刃22と同様に、茶畝Tの上面形状に合わせて、例えば中央がやや高い湾曲状に形成されるとともに、刈刃22とほぼ同じ長さ(茶畝Tの幅方向の寸法)に形成される。
また、移送ダクト6には、例えば移送開始部35の近傍において、背面ダクト7から上向きの背面風Wが吹き込まれるものであり、この噴出口を吹出口38とする。もちろん、この吹出口38は、背面風Wと称されるように、刈刃22の後方に形成されるものである(図3(b)では刈刃22の直後方に形成されている)。
【0031】
一方、移送終端部36は、摘採装置の側面から視た状態で、吐出口37が収容部4に臨むように適宜湾曲形成されるものである(図3(a)参照)。因みに、摘採した茶葉Aを茶袋に収容する形態を採る場合には、この吐出口37に、茶袋の開放端側を取り付けるフック37aが設けられるものである(図4参照)。
【0032】
また、移送ダクト6は、直立状態(刈刃22の直上)から約8度程度、摘採装置の後方側に後傾状態に設置されるものであり、これは刈り取られた茶葉Aが移送ダクト6(移送開始部35)から前方側にこぼれ落ちにくく、スムーズに吹き上げられていくことを意図したためである。もちろん、移送ダクト6の後傾角度は、茶畝跨走型摘採装置1の後方への過剰な張り出しを防ぐことを前提として、直立状態から約5〜45度の範囲内の適宜の角度に設定することができる。
【0033】
なお、移送ダクト6は、移送開始部35から吐出口37(移送終端部36)に至る移送途中において、幅寸法や断面積等を急激に変化させないことが好ましく、これは移送に伴う茶葉Aの傷みを極力低減させるためである。また移送路は、例えば図4、図5、図7に示すように、移送途中に分岐部39が形成され、移送路が二股状に分岐するように形成されている。この分岐部39は、上昇移送する茶葉Aを左右に分ける部位となるため、茶葉Aが分岐部39に当たっても極力茶葉Aが傷まないように、滑らかなR状つまり移送路としては略U字状を成し、スムーズに茶葉Aを左右に振り分けるようにすることが好ましい。
【0034】
また、このような移送ダクト6(ダクトユニット5A)は、少なくとも一部が入れ子状もしくはフレキシブル状に形成され、刈刃22とともに上下動できる構成が望ましい。
以上述べたように、本実施例では、茶葉Aを上昇移送するにあたり刈刃後方側への移送をほとんど伴わないため、移送装置5ひいては茶畝跨走型摘採装置1の前後長を短縮化できるものである。
【0035】
また、移送ダクト6の前面板31には、例えば図3(b)、図4、図7(b)に示すように、上下方向にスライドする前面調節板310が設けられ、この前面調節板310を適宜スライドさせることによって、移送開始部35における前方側の開口高さ(開口面の大きさ)を種々変更するものである。前面調節板310は、このように移送開始部35の開口上限位置を決定する部材であるため、前面調節板310の下端は、移送開始部35と同様に、刈刃22とほぼ同じ長さ(茶畝Tの幅方向の寸法)に形成され、また茶畝Tの上面形状に合わせ、例えば中央がやや高い湾曲状に形成される。
【0036】
なお、前面調節板310をスライド自在に形成するにあたっては、例えば図4、図5に示すように、前面調節板310の幅方向にわたって適宜の間隔で複数の長孔311(上下方向に長い孔)を穿孔しておき、且つ前面板31にもこれに対応するネジ孔31aを穿孔しておくものであり、蝶ネジ312を、前面調節板310の外側から長孔311を通してネジ孔31aにネジ留めすることにより行える。すなわち、ネジ孔31aに嵌め込んだ蝶ネジ312の締め付け/締め付け解除(緩め)により、前面調節板310を適宜の高さに上下動させ、また設定した位置を維持するものである。もちろん、前面板31に形成するネジ孔31aについては、これを複数の高さ位置に穿孔しておけば、適用するネジ孔31a(蝶ネジ312を嵌めるネジ孔31a)の位置を変更することにより、長孔311の長さ以上に前面調節板310を大きく上下動させ得るものである。
因みに従来は、茶畝上面から前面調節板310の間隔、つまり移送開始部35の前面開口寸法(高さ)として200〜270mm程度となるように前面調節板310の最下限位置が設定されていたが、本実施例では、これが剪枝作業時50〜100mm程度、摘採作業時100〜200mm程度まで狭められたものであり、これは後述するヒサシ体43にかざされた茶葉A(摘採直前の特に進行方向側に伸びた未摘採の茶葉A)を、より強く吸引するためである。
【0037】
更にまた、前記移送ダクト6(例えば移送開始部35の近傍)には、背面風Wを噴出する吹出口38の直後方から移送ダクト6の背板32に対し、上り傾斜状態に移送促進板41が設けられる。この移送促進板41の上り傾斜角は、本実施例では図3、図7、図8の側面図に示されるように水平方向(刈刃22)から約55度に設定されるが、茶葉Aの刈り取り長さや、送風機17A・17Bの風量等によって適宜変更され得るものであり、およそ40〜70度程度の上り傾斜角に設定され得る。なお、この移送促進板41によって、吹出口38から噴出された背面風Wが、移送促進板41に沿ってスムーズに上方に(やや後方へ向けて)吹き上がるため(いわゆるコアンダ効果)、移送ダクト6の移送開始部35等に乱れを生じさせることがないものである。
【0038】
また移送開始部35には、例えば図3(b)、図4、図7(b)に示すように、この開口部の上方から前方に張り出すヒサシ体43が設けられるものであり、ここでは上記前面調節板310の下端部から前方側に突出するように形成される。このようなヒサシ体43としては、上記前面調節板310の下端部を前方側に突出状態に折り返してもよいし、前面調節板310とは別に形成した板状のヒサシ体43を溶接やネジ留めなどによって前面調節板310に取り付けることも可能である。また、ヒサシ体43も刈刃22等と同様に、茶畝Tの上面に沿った形状(例えば円弧状)に形成されるものであり、前方への突出寸法も畝幅にわたってほぼ一定に形成されることが好ましい(一例として80〜120mm程度の張り出し寸法)。これは(ヒサシ体43の突出寸法を畝幅にわたってほぼ一定に形成することが好ましいのは)、摘採作業中、ヒサシ体43が前方側に張り出すことで、ヒサシ体43にかざされた(ヒサシ体43が差し掛けられた)摘採直前の茶葉A(茶樹)に、移送ダクト6内への吸引力を作用させるためである。すなわち、摘採作業時には背面風Wを移送ダクト6内で噴出させるものであり、これによって刈刃22付近(刈り取り部)には吸引作用が発生し、この吸引作用をヒサシ体43を設けることで、刈刃22の前方にまで(より遠くに)及ぼすことを意図したものである。そして、このヒサシ体43により、摘採作業時における茶葉Aの進行方向への倒れ込みが防止でき、茶葉Aがほぼ立った状態で刈り取ることができるものである。
なお、このようなヒサシ体43は、一部または全部を透明な部材で形成することが好ましく、これは刈り取り開始時における摘採機体3の高さ調整や、茶刈作業中における刈取状態の確認の際などに、操縦席(操縦者用シート13)から刈刃22の確認が行い易いためである。
【0039】
また、上下動する前面調節板310にヒサシ体43を設けた(形成した)ことにより、移送開始部35の開口上限位置を前面調節板310によって設定すれば、これに応じてヒサシ体43の高さも自ずと設定されるため、ヒサシ体43の高さ設定が容易となるものである(これらの設定が関連付けられるものである)。
また、このようにヒサシ体43は、上下動を行うため(前面調節板310に伴って)、ヒサシ体43が上昇した際に、両側端部分に隙間が形成されることが考えられるが、このような隙間の発生は、吸引力の低下を招くことが懸念される。このためヒサシ体43の両側端部には、例えば図4に示すように、隙間防止用の側端板44を設けることが望ましい。もちろん、ヒサシ体43が上昇(上下動)しても、側部に隙間が形成されない構造であれば、このような隙間防止用の側端板44は不要となる。
【0040】
次に、背面ダクト7について説明する。このものは、上述したように刈刃22の後方側から移送ダクト6内(例えば移送開始部35の近傍)に背面風Wを送り込むダクトであり、移送ダクト6の背面側に密着状態に設けられる。なお、ダクトユニット5Aを形成するにあたっては、移送ダクト6と背面ダクト7とを全く別々のダクト状に形成しておき、これらを張設することも可能であるし、移送ダクト6の背板32によって、背面ダクト7の前面を形成する(共通化させる)ことも可能である(言わば一体的構成)。
【0041】
また背面ダクト7は、茶畝跨走型摘採装置1の背面から視た場合、一例として図1、図7(a)に示すように、裾広がりの略台形形状に形成され、上方から圧力風を取り込み、下方、つまり刈刃22の後方側から上昇流として吹き出すように形成される。ここで、圧力風の取り込み口を導入口46とするものであり、この導入口46は、左右に二つ並んで形成され、これら導入口46にそれぞれ送風機17A・17Bに接続された送風ダクト18A・18Bが接続される。なお、前記送風機17A・17Bは一基で実施することも可能であり、その場合には、背面ダクト7の導入口46を一つにすることも可能であるが、一本の送風ダクトを途中で二本に分岐して二つの導入口46に接続することが好ましく、これは圧力風(背面風W)を幅方向において均等に且つ安定して送り込むためである。
また、背面ダクト7は、図4、図7(b)に示すように、奥行き寸法(摘採装置側面から視た厚み寸法)が、上方の導入口46から下方の吹出口38に向かうにしたがい、薄くなるように形成されることが好ましく、これも圧力風(背面風W)を幅方向において均等に且つ安定して送り込むための構成である。
【0042】
本発明の茶刈装置の一例である茶畝跨走型摘採装置1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下この摘採装置による茶刈態様(摘採態様)について説明する。
(1)前面調節板の上下設定
摘採作業を行うにあたっては、まず摘採する茶葉Aの長さに応じて移送開始部35の開口寸法(開口高さ)を設定するものであり、ここでは前面調節板310を上下にスライドさせて上記設定を行う。すなわち、例えば比較的短い摘採長で茶葉Aを摘採する場合には(言わば短芽摘採)、一例として図8(a)に示すように、前面調節板310を下方寄りの位置にスライドさせて移送開始部35の開口寸法(高さ)を狭くする(開口部の上限位置を低く設定する)。一方、比較的長い摘採長で茶葉Aを摘採する場合には(言わば長芽摘採)、一例として図8(b)に示すように、前面調節板310を上方寄りの位置にスライドさせて移送開始部35の開口寸法を広くする(開口部の上限位置を高く設定する)。
このように前面調節板310を上下に適宜スライドさせることにより、例えば短芽摘採の場合には、移送開始部35が過度に開放されることに伴う、ヒサシ体43が差し掛けられた茶葉Aに及ぶ吸引力の低下・摘採後の茶葉Aの吹き上げ力の低下等を防止するとともに、摘採後の茶葉Aの移送開始部35からの飛散(前方への飛散)を防止するものである。また、長芽摘採の場合には、茶葉Aが移送ダクト6の前面板31に当接することにより、前方側に倒れ込んでスムーズな摘採・吹き上げがなされない状況を免れるものである。
【0043】
(2)背面風の形成過程の概要
このような設定を行った後、背面風Wを生じさせるものであり、これには、まず走行機体2上の原動機16を駆動し、二基の送風機17A・17Bによって圧力風を生起する。生起された圧力風は、その後、各送風ダクト18A・18B(フレキシブルダクト180)を通して背面ダクト7内に取り込まれる。背面ダクト7内に導入された圧力風は、背面ダクト7内で幅方向に拡がり、刈刃22の後方で且つ移送促進板41の直前の吹出口38から背面風Wとして移送ダクト6内(例えば移送開始部35の近傍)に送り込まれる。この背面風Wは、刈刃22の後方から、上方に向かう上昇流であり、少なくとも茶葉Aを移送ダクト6の吐出口37(移送終端部36)まで搬送する移送能力を有する。
【0044】
(3)ヒサシ体の作用
また、移送開始部35には、この開口部の上方から前方側にヒサシ体43を張り出させることから、摘採作業中は、刈刃22の前方に位置する茶葉A、つまり摘採を受ける直前の茶葉Aの上方がヒサシ体43によって覆われる(ヒサシ体43が茶葉Aにかざされる)。この状態で、茶畝上部の摘採を受ける茶葉Aは、上方がヒサシ体43で覆われる一方、下方には茶樹が存在するため、これらによって上下方向の通気は阻まれ(弱められ)、専らヒサシ体43に沿った茶畝上部の通気のみが許容された状態(あたかも茶畝上部に風洞が形成されたような状態)となる。従って、この状態で背面風Wを作用させると、茶畝T内の上部空間を、外側(主に前方)から移送ダクト6内に向かって空気が流れるようになり(吸引力が働き)、この吸引によってヒサシ体43にかざされた(ヒサシ体43が差し掛けられた)茶葉Aが刈刃22側に吸引される。このため、刈り取り直前の茶葉Aは、ほぼ立った状態となり、この状態で摘採されるものである。
【0045】
(4)移送促進板の作動態様
吹出口38から吹き上げられる背面風Wは、吹出口38に近接して移送促進板41が存在することから、コアンダ効果により移送促進板41の表面に沿って流れようとする作用が働き、このためダクト内、特に移送開始部35において背面風Wが乱れずスムーズに吹き上がるものである。また移送ダクト6が後方にやや傾斜していることから、摘採された茶葉Aが前方側に落下すること(移送開始部35からこぼれ落ちること)が防止されるものである。
【0046】
(5)茶葉の移送態様の概要
このような背面風Wによって、摘採された茶葉Aは、刈り取り直後、刈刃22の後方側に引き寄せられるものであり、これは背面風Wの吹出口38が刈刃22(移送開始部35)から離れている場合でも起こる現象である。これは(茶葉Aが刈刃22の後方側(吹出口38)に移送される現象)、刈刃22の後方から吹き出す背面風Wにより、刈刃22の後方付近、具体的には、背面風Wの吹出口38近傍に負圧が形成され(背面風Wの負圧吸引作用)、これが移送開始部35(刈り取り部)まで及ぶためと考えられる。そして、吹出口38側に引き付けられた茶葉Aは、その後、上昇流を形成する背面風Wに乗って、移送ダクト6内をスムーズに上昇し、吐出口37から収容部4内に収容される。なお、特許請求の範囲に記載した「背面風の風送作用」とは、直接、茶葉Aを背面風Wに乗せて移送することはもちろん、刈り取り部やその前方側のヒサシ体43にかざされた部位にまで及ぶ背面風Wの負圧吸引作用をも含めた総称である。
【0047】
(6)背面ダクトにおける圧力風の送風態様
背面ダクト7は、摘採装置の側面から視た、厚み寸法(流路断面積)が、一例として図3、図7、図8に示すように、上方の導入口46から下方の吹出口38に向かうにしたがいテーパ状に徐々に狭くなることが好ましい。これは、上記構造を採ることにより、圧力風の背面ダクト7通過時での圧力損失が少なくなり、送風機17A・17Bの能力を著しく上げなくても充分な風圧で、移送ダクト6内へ背面風Wを送り出すことができるためである。
【0048】
〔他の実施例〕
本発明は、以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、背面ダクト7内の導入口46部分には、ここに導入された圧力風が下方の吹出口38に向かって万遍なく拡がって供給されるようにすることが好ましく、例えば図9(a)に示すように、導入口46部分に、送風先端が背面ダクト7の幅方向に拡開した案内筒48を設けることが可能である。また同一趣旨で、図9(b)に示すように背面ダクト7内に拡開案内体49を設置するようにしてもよい。このものは、一例として断面L字状のブラケットを複数用い、これを導入口46から吹出口38に向けて裾広がり状もしくは放射状に取り付けるものである。
【0049】
また、上述した基本の実施例では、前面調節板310は、ネジの締め付けやその解除を手動操作によって行い、所定高さに設定するものであったが、ラックピニオン機構や電動モータシリンダ等を用いて、機械的に上下動させるようにしても構わない。なお、このような機械的な駆動方式を採った場合には、赤外線センサや接触式センサにより、茶樹の高さを検出して、別途設けた制御装置により前面調節板310を上下動させることも考えられる。
【0050】
また、上述した基本の実施例では、刈刃22の後方から作用する背面風Wのみによって茶葉Aを移送するものであったが、茶葉Aの送風形態は、これに限定されるものではない。すなわち摘採する茶芽の生育状態、移送路の状況(上昇移送距離等)、背面風Wを生起させる送風機17A・17Bの能力等によっては、例えば図10に示すように背面風Wに加えて、刈刃22の正面側(刈り取り方向正面側)からも移送風(これを正面風W1とする)を補助的に作用させることが可能である。
【0051】
また、上述した基本の実施例では、移送ダクト6の内部に、これとは別に形成した移送促進板41を設置するように説明したが、例えば図11に示すように、移送ダクト6の背板32自体を二段階で傾斜させ、吹出口38の直後方において、上り傾斜角度40〜70度に形成することも可能である。
【0052】
また、上述した基本の実施例では、前面調節板310に対するヒサシ体43の前方への張り出し寸法を特に変更するものではなかったが、ヒサシ体43の張り出し長さは適宜変更することが可能である。この実施例としては、例えば図12に示すように、ヒサシ体43を上下二重に形成しておき(上側を43A、下側を43Bとする)、上のヒサシ体43Aを、下のヒサシ体43Bに対してスライド自在に形成することが考えられる。もちろん、上下のヒサシ体43A・43Bを、スライド自在に構成するにあたっては、上述した前面板31と前面調節板310との接続構造が流用できる。なお、ヒサシ体43の張り出し長さを適宜変更可能とする上記実施例であれば、例えば摘採直前の茶葉A(茶樹)に作用させる吸引力をより広い領域に作用させたい場合に、ヒサシ体43を伸ばすことで対応できるものである。
【0053】
また、上述した基本の実施例では、前面調節板310にヒサシ体43を固定状態に設置するように説明したが、例えば図13に示すように、前面調節板310に対しヒサシ体43を回動できるように設けておき(前面調節板310の下端部側を回動基端とし、張り出し先端側を回動自由端として上下方向に回動させる)、リンク機構などによって、この回動状態を維持することが可能である。もちろん、このようなヒサシ体43の回動は、前面調節板310にモータシリンダ等を設け、機械的に行うことも可能である。
なお、ヒサシ体43を回動自在に形成することにより、例えばヒサシ体43を、前方側が上向きになるように回動させた場合には、吸い込み方向に向かうにしたがい開口面積(断面積)が徐々に狭まるため、吸引力としては徐々に強めることができる。このように、ヒサシ体43を適宜回動させることにより開口面積を変化させることができ、これにより茶葉Aの吸い込み方向において、徐々に吸引力を変化させることができるものである。
【0054】
また、上述した基本の実施例では、茶畝跨走型摘採装置1の形態を例に挙げて説明したが、上述したように、本発明に係る茶枝葉の移送装置は、摘採装置のみに限らず剪枝装置にも利用できる。この場合、剪除した枝幹は、例えば移送ダクト6内を上昇移送させた後、収容部4内を通過するように設けたシュート部材によって畝間まで導き、落下させる形態が可能である(例えば本出願人の出願に係る特開2002−136214号「茶畝跨走型茶刈装置における剪除枝幹の移送構造」参照)。もちろん剪除した枝幹は、必ずしも収容部4内を経由させて畝間まで導く必要はなく、例えば移送ダクト6の吐出口37から畝間まで別のダクトを設け、剪除枝幹を畝間に落下させることも可能である。なお、茶畝跨走型摘採装置1を剪枝装置に変更する場合、先に述べたカセット式の刈刃22を剪枝機用のものに変更すれば、摘採機体3を容易に剪枝機体に仕様変更できるものである。
【0055】
また、上述した基本の実施例では、刈刃22を一基のみ設けた摘採装置(一段刈摘採装置)を例に挙げて説明したが、本発明は、刈刃22を上下方向に複数基設けた、いわゆる多段刈摘採装置にも適用することが可能である。例えば二段刈摘採装置の場合には、上段刈刃と下段刈刃とについて、各々にダクトユニット5Aが形成されるものであり、これら上段刈刃によって摘採した茶葉Aと、下段刈刃によって摘採した茶葉Aとを、各ダクトユニット5Aに掛け留められた別々の茶袋に分けて収容する。
これは、上段刈刃と下段刈刃とによって、性状の異なった茶葉Aを別々に摘採する場合、例えば上段刈刃によって手摘み物に近い上質の茶葉Aを摘採し、下段刈刃によって手摘み物よりは幾らか品質的には低下するが、良質の茶葉Aを摘採する場合等に好適な摘採・収容形態であり、これによって、その後の製茶加工においても茶葉Aの性状に応じた適切な加工条件が適宜採り得るものである。
なお、二段刈摘採など多段刈摘採を行う場合には、高い位置の茶葉Aから順に摘採されるため、例えば二段目のダクトユニット5Aについては、一段目のダクトユニット5Aの下部(底部外側)がヒサシ体43の作用を担うと考えられ、基本の実施例で述べたヒサシ体43(単独部材としてのヒサシ体43)は、一段目のダクトユニット5Aのみに設けることが多いと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の移送手法は、茶芽を刈り取る摘採作業のみならず、樹形を整え樹勢の回復を図るために枝幹を剪除する剪枝作業等にも利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 茶畝跨走型摘採装置
2 走行機体
3 摘採機体
4 収容部
5 移送装置
5A ダクトユニット
6 移送ダクト
7 背面ダクト
11 フレーム
11A 脚部フレーム
11B 連結フレーム
11C 昇降ブラケット
12 走行体
13 操縦者用シート
14 操縦桿
15 コントロールボックス
16 原動機
17A 送風機
17B 送風機
171 回転軸
18A 送風ダクト
18B 送風ダクト
180 フレキシブルダクト
22 刈刃
22A 刈刃体
22B 刈刃支持フレーム
22C 駆動部
23 側板部
31 前面板
31a ネジ孔
310 前面調節板
311 長孔
312 蝶ネジ
32 背板
33 側板
35 移送開始部
36 移送終端部
37 吐出口
37a フック
38 吹出口
39 分岐部
41 移送促進板
43 ヒサシ体
43A ヒサシ体(上)
43B ヒサシ体(下)
44 側端板
46 導入口
48 案内筒
49 拡開案内体
A 茶葉(茶枝葉)
N 分岐ノズル
T 茶畝
X 水平移送部
Y 上昇移送部
W 背面風
W1 正面風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉や枝幹等の茶枝葉を刈り取る刈刃に対し、刈り取り後の茶枝葉を所定の位置に向けて移送する移送ダクトを具え、この移送ダクト内に刈刃の後方側から背面風を吹き込み、この背面風の風送作用によって刈り取り後の茶枝葉を所定の位置に向けて移送する装置において、
前記移送ダクトは、刈刃が設けられる下部において刈刃の前方側が適宜の高さで、ほぼ茶畝上面に沿った形状に開口された移送開始部を具えるものであり、
この移送開始部には、開口部の上方から前方に張り出すヒサシ体が、ほぼ茶畝上面に沿った状態に形成され、ヒサシ体が差し掛けられた未刈取状態の茶枝葉に、背面風による吸引作用が及ぶようにしたことを特徴とする茶枝葉の移送装置。
【請求項2】
前記移送ダクトには、このものの前面板に沿って上下方向の取付高さが変更できる調節板が設けられ、この調節板の取付高さによって移送開始部の開口上限位置が決定されるものであり、
前記ヒサシ体は、この調節板の下端部から前方に突出するように形成されることを特徴とする請求項1記載の茶枝葉の移送装置。
【請求項3】
前記ヒサシ体は、前方に突出する張り出し長さが変更自在に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の茶枝葉の移送装置。
【請求項4】
前記ヒサシ体は、前方への張り出し先端側が上下方向に回動自在に設けられることを特徴とする請求項1、2または3記載の茶枝葉の移送装置。
【請求項5】
茶畝を跨いで走行する走行機体と、
この走行機体に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う茶刈機体と、
この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部と、
刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉を茶刈機体から収容部まで移送する移送装置とを具え、目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした装置であって、
前記移送装置には、請求項1、2、3または4記載の茶枝葉の移送装置が適用されて成ることを特徴とする茶刈装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−263821(P2010−263821A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117133(P2009−117133)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000104375)カワサキ機工株式会社 (30)
【Fターム(参考)】