説明

茶畝跨走型茶園管理装置並びにこれに用いられる刈り落としダクト装置

【課題】 常に正確に剪枝した茶枝葉を畝間に案内することができる装置を提供することを技術課題としたものである。
【解決手段】 本発明の茶畝跨走型茶園管理装置Mは、走行機体1、茶刈機ユニット2、移送装置3、刈り落としダクト装置4を具えて成り、前記刈り落としダクト装置4は、上部ダクト41と、中継ダクト42と、下部ダクト43とが上下方向に連設されて成り、前記上部ダクト41は、上方において移送装置3における移送終端部32と直接または間接的に接続されるとともに、下端は走行機体1における走行体側に偏向するように構成され、また中継ダクト42は、前記上部ダクト41の下方にフレキシブルに連設されるとともに、左右の走行体の幅方向の設定に応じて、落下方向を偏向し得るように構成され、更に下部ダクト43は中継ダクト42下方に設けられ、常時落とし込み方向を鉛直方向に向けるように接続されていることを特徴として成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶畝を跨ぎながら走行し、茶樹の育成管理のための刈り均し等の剪枝作業や茶葉を収穫する摘採作業等を行うことが出来る茶刈装置に関するものであって、特に剪枝作業において刈り取った茶枝葉を茶畝間地に案内できるようにした茶畝跨走型茶園管理装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
茶園管理の主たるものとして、茶葉の収穫に備えて茶樹(茶畝)の刈り均しを行う剪枝作業がある。この剪枝作業では、刈り取った茶枝葉は多くの場合茶畝の間に撒き落とすように放置して、結果的に茶園の養分の一部として利用したり、併せてマルチングの一助として用いられている。
当然ながらこのような作業にあたっては、刈り取られた茶枝葉が確実に畝間地に落とされることが厳格に要求される。因みに、茶枝葉が途中で茶樹の樹叢に引っ掛って残留している場合には、次の茶葉収穫の時に、異物として混入してしまうことが予想され、高収穫を目的とした管理作業の効果を一挙に無にする結果を招いてしまう。
【0003】
ところで近時、茶葉の摘採作業を含め茶刈作業は、茶畝を跨いで走行し、且つ作業者が搭乗操作する乗用型茶刈機による作業が普及している。この装置は、通常同一農家であっても茶園が違えば茶畝幅が異なる場合もあることから、装置の走行機体の幅寸法はある程度の可変調整できるようになっている。このため、剪枝作業により刈り取った茶枝葉を案内する刈り落としダクト装置についても、走行機体の幅変更に応じながら茶畝間に茶枝葉を案内できるように対応した構成がとられている(特許文献1)。
このような従来手法によって一定の効果を得られているものの、刈り取られた茶枝葉の畝間地への正確な案内という点では、いまだ改良の余地があった。
【0004】
加えてこの種の茶畝跨走型茶園管理装置は、茶葉の摘採に備え、装置後方に茶葉の収容系装置を設けており、剪枝作業を行うにあたっては、この収容系装置と刈り落としダクト装置に付け替える作業を行わなければならない。このような付け替え作業を不要ないしは省力化することについても市場から要求され始めている。
【特許文献1】特開2000−50719号公報
【特許文献2】特開2000−125643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような要請に応えるためになされたものであって、常に正確に剪枝した茶枝葉を畝間に案内することができ、更に加えて収容系装置があったとしても、合理的に刈り落としダクト装置の設定ができる装置を提供とすること技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の茶畝跨走型茶園管理装置は、茶畝を跨いで走行する走行機体と、これに搭載され茶枝葉を刈り取る茶刈機ユニットと、茶枝葉を上方移送する移送装置と、走行機体後方に設けられ刈り取られた茶枝葉を畝間地に案内する刈り落としダクト装置とを具えて成り、前記刈り落としダクト装置は、上部ダクトと、中継ダクトと、下部ダクトとが上下方向に連設されて成り、前記上部ダクトは、上方において移送装置における移送終端部と直接または間接的に接続されるとともに、下端は走行機体における走行体側に偏向するように構成され、また中継ダクトは、前記上部ダクトの下方にフレキシブルに連設されるとともに、左右の走行体の幅方向の設定に応じて、落下方向を偏向し得るように構成され、更に下部ダクトは中継ダクト下方に設けられ、常時落とし込み方向を鉛直方向に向けるように接続されていることを特徴として成るものである。
【0007】
請求項2記載記載の茶畝跨走型茶園管理装置は、前記要件に加え、前記上部ダクトについては、走行機体幅方向において中央で分岐し、左右一対のほぼ対称形状であることを特徴として成るものである。
【0008】
請求項3記載記載の茶畝跨走型茶園管理装置は、前記要件に加え、前記走行機体については、その後部に折り畳み自在のコンテナタイプの収容ユニットを具えて成り、その収容ユニットを折り畳み状態に搭載したまま、その後方に前記刈り落としダクト装置を具えさせることを特徴として成るものである。
【0009】
請求項4記載記載の茶畝跨走型茶園管理装置は、前記要件に加え、前記収容ユニットにおける天板を展開した状態において、その上面に導入フードを設置し、この導入フードを介して、上部ダクトが移送装置と間接的に接続されるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0010】
請求項5記載記載の茶畝跨走型茶園管理装置に用いられる刈り落としダクト装置は、上部ダクトと、中継ダクトと、下部ダクトとが上下方向に連設されて成り、前記上部ダクトは、上方において移送装置における移送終端部と直接または間接的に接続されるとともに、下端は走行機体における走行体側に偏向するように構成され、また中継ダクトは、前記上部ダクトの下方にフレキシブルに連設されるとともに、左右の走行体の幅方向の設定に応じて、落下方向を偏向し得るように構成され、更に下部ダクトは中継ダクト下方に設けられ、常時落とし込み方向を鉛直方向に向けるように接続されていることを特徴として成るものである。
【0011】
請求項6記載記載の茶畝跨走型茶園管理装置に用いられる刈り落としダクト装置は、前記請求項5記載の要件に加え、前記上部ダクトは、走行機体幅方向において中央で分岐し、左右一対のほぼ対称形状であることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0012】
まず請求項1記載または5記載の発明によれば、刈り落としダクト装置は全体として三分割されたような構成を具え、中継ダクトに、装置の幅変更に対応する機能を担わせ、その下方おける下部ダクトに正確に茶畝間地に刈り取った茶枝葉を案内する作用を担わせているから、剪枝した茶枝葉を正確に畝間地に案内がなし得る。
【0013】
また請求項2または6記載の発明によれば、茶畝左右の畝間地に一挙に且つ均等に茶枝葉が蒔かれ、能率的な作業がなされる。
【0014】
また請求項3または4記載の発明によれば、茶葉の摘採のために用いる収容系装置を折り畳み自在とし、その後方に刈り落としダクト装置を背負わせるように設置できるものであるから収容系装置を取り外すことなく簡単に剪枝作業の準備がなし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の最良の形態は、以下の実施例に述べるとおりである。なお説明にあたっては、本発明の茶畝跨走型茶園管理装置は、実際には収穫のための摘採作業にも用いられ、またその後の剪枝等の茶園管理作業にも用いられることから、以下の明細書の中でいう茶刈機体とは、実質的に摘採を行う摘採機と、剪枝を行う剪枝機とを総称するものである。もちろん、具体的な説明の中で、両者を区別して説明することが適切な場合には、それぞれの作業に特化した用語を用いる。しかしながら、図中の参照符号等は茶刈機体として統一して用いる。また、刈り取られる茶枝葉についても、収穫茶葉を説明する場合には、摘採茶葉あるいは茶葉の用語を用い、また剪枝作業においては、茶枝葉の用語を用いるが、両者を区別する必要がない場合には、茶枝葉として記し、参照符号Aも同一のものを用いる。
【実施例】
【0016】
本発明の茶畝跨走型茶園管理装置Mは、一例として図1、2、4、5にその全体形状を示すものであって、茶畝Tを跨ぐように走行する走行機体1と、この走行機体1によって茶畝T上面に位置するように支持される茶刈機体2と、刈り取った茶枝葉Aを茶刈機体2の後方上部へ移送する移送装置3と、刈り取られた茶枝葉Aを茶畝Tの畝間地tに落とすり刈り落としダクト装置4とを具え、更に収穫のために摘採する場合において茶葉Aを収容する収容系装置5とを具えて成るものである。以下、各構成部について説明する。
【0017】
まず走行機体1について説明する。このものは、茶畝Tを跨いで茶畝間の畝間地tを接地走行するものであり、走行方向から見て概ね門型状に形成されたフレーム11を骨格部材とする。このフレーム11は、畝間に立ち上げ状態に設けられる脚部フレーム11Aと、この脚部フレーム11Aを繋ぐ連結フレーム11Bと、脚部フレーム11Aに対し昇降自在に取り付けられる昇降フレーム11Cとを具えて成るものである。そして、脚部フレーム11Aの下端には一例としてクローラを適用した走行体12を設ける。もちろん、この走行体12は、このようなクローラに限らず、畝地を過剰に押し付けないような空気タイヤ、あるいは双方を適用した形態(例えば前側に空気タイヤ、後側にクローラを適用した形態)等が適宜採り得る。
【0018】
更に連結フレーム11Bの上部には、茶畝跨走型茶園管理装置Mに搭乗した作業者が座る操縦者用シート13、操縦桿14、茶刈機体2の制御や操作等を行うためのコントロールボックス15を設けるものである。そして操縦者用シート13の側傍には、例えばディーゼルエンジン等を適用した原動機16を搭載するものであり、一例として、この原動機16により図示を省略する油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプにより供給される作動油によって前記走行体12の駆動や、後述する茶刈機体2の刈刃22の駆動、更には前記昇降フレーム11Cの昇降動を担うシリンダ(図示略)等の駆動を行う。
【0019】
また前記連結フレーム11B上には、刈刃22によって刈り取った茶枝葉Aを風送するための送風機17を設けるものであって、この送風機17は前記原動機16により回転数を増速されながら駆動される。そして、この送風機17からは送風ダクト18を介して圧力風が移送装置3に供給される。なお送風ダクト18は、一部または全部が、フレキシブルダクト18Aによって構成されている。
【0020】
次に茶刈機体2について説明する。このものは剪枝等の茶刈作業を実質的に行うものであり、刈刃22を主要部材として成るものである。この刈刃22は、例えば上下一対の刈刃体22Aと、これら刈刃体22Aを摺動自在に支持する刈刃支持フレーム22Bと、刈刃体22Aを偏心板やエキセントリックシャフト等によって往復摺動させる駆動部22Cとを具えて成り、上下一対の刈刃体22Aを交互に往復動させることで、各刈刃体22Aに形成した刃(歯)のバリカン作用により茶枝葉Aを刈り取るものである(図2参照)。
【0021】
このように刈刃22は、刈刃体22A、刈刃支持フレーム22B、駆動部22C等を一体的に組み付けた、いわゆるカセット式替刃の形態を採り、刈刃22の取り替えにより、容易に浅刈機・中刈機等の剪枝機の中での仕様変更、更には剪枝機から摘採機に変更できるものである。なお茶刈機体2は、全体として上記昇降フレーム11Cに支持され、刈刃22の高さが自在に設定できる構成となっている。
【0022】
また、上記刈刃22の駆動部22Cも、前記油圧ポンプから供給される作動油によって駆動することが好ましい構成であるが、刈刃22の駆動は別途エンジンによって行うことも可能である。
なお刈刃22としては、必ずしもこのようなバリカン式のものに限らず、例えばロータリー式の回転刃を適用することも可能である。
【0023】
次に茶枝葉Aの移送装置3について説明する。
移送装置3は、刈り取った茶枝葉Aを刈り落としダクト装置4へ中継移送する部材であり、もちろん移送装置3は、茶葉の収穫のための摘採作業時には、収容系装置5に中継移送するものである。
この移送装置3の移送ダクト30は、ほぼ直立したダクト状の部材であり、移送ダクト30は、その下端において茶刈機体2の後方に開口させて成る移送開始部31と、上端において後方に開口した移送終端部32と、その間の垂直部33とを具える。前記移送ダクト30の後方に送風チャンバ35を設けるものであり、ここに前記送風ダクト18からの圧力風Wが供給される。そして、前記移送開始部31において茶枝葉Aを上方に風送する圧力風Wと作用するように供給するものである。
なお、このような茶枝葉Aの移送形態は、本出願人の開発に係るものであるが、移送形態については、従来型のように分岐吹出管を具えた風導管を刈刃22前方に配したものを適用することも、もとより差し支えない。また茶枝葉Aの上昇移送にあたって、コンベヤを用いることも差し支えない。
【0024】
次に本発明の主要部である刈り落としダクト装置4について、説明する。
このものは、一例として左右に振り分けられるようなダクト装置であって、それぞれ上部ダクト41と、中継ダクト42と、下部ダクト43とが連接するように設けられている。
まず上部ダクト41は、上端に上部接続口411を有するものであり、このものは、前記移送ダクト30の移送終端部32に接続されるように設けられている。そして、上部ダクト41の反対側の下端部を下部接続口412とするとともに、その中間部は、偏向案内部413として、後方から見てほぼ下窄まりの形状をなし、下部接続口412の位置を実質的に走行体12寄りに偏寄させている。
なお上部ダクト41には、その途中に適宜通気性を確保した通気窓41aを具える。また前記偏向案内部413の外側には、この刈り落としダクト装置4を走行機体1に取り付けるためのブラケット414を設ける。
【0025】
次に中継ダクト42について説明する。このものは上下が開口したほぼ角筒状の部材であり、上部中継口421を上方に開口させるとともに、下方に下部中継口423を開口させている。そして、その上部近くにおいて前記上部ダクト41の下部接続口412近くの部位と回動接続部422を介して回動自在に、いわばフレキシブルな状態で接続されている。
【0026】
次に下部ダクト43について説明する。
下部ダクト43は、一例として断面矩形状の上下が開口した箱状部材であり、上部受取口431は、中継ダクト42における下部中継口423に可動状態に、ほぼ外嵌め接続されるとともに、反対側の下部刈り落とし口432は、畝間地tにほぼ正確に臨むように構成される。この下部ダクト43と中継ダクト42との接続にあたっても下部ダクト43上方において中継ダクト42に対し、下部の回動接続部433とピン接続され、一例として自重により下部ダクト43は、垂れ下がり状態に設けられる。
この下部ダクト43の外側の側面には、支持杆受部434を設ける。このものは、鞘状部材であって、走行機体1側における昇降フレーム11C側に取り付けられた支持杆110Cを受け入れる。そして、図10に示すように走行体に幅方向の寸法変更に応じて支持杆110Cに従って前記中継ダクト42と、下部ダクト43とが回動接続部422を中心に下部中継口423を幅方向に従動するよう構成している。もちろんこの支持杆受部434については、中継ダクト42の下方側面に配置されてもよい。
更に、下部ダクト43は、その両側面の前後に案内スキッド部435を設けるものであり、このものは茶樹等の不整な張り出し等があった場合でも、円滑に下部ダクト43が作用できるようにするためのものである。
【0027】
なお前記中継ダクト42と、下部ダクト43との接続にあたっては、相互に回動接続部433においてピン接続される必要はない。例えば下部ダクト43が走行機体1の昇降フレーム11Cにおける支持杆110C等により、常に下方に指向するように姿勢されるならば、中継ダクト42の下方にルーズに外嵌めされるように、下部ダクト43を設けておくだけでよい。
【0028】
更に本実施例においては、折り畳み自在の収容系装置5を具えるものであって、以下これについて説明する。
なおこの収容系装置5は、主として収穫した茶葉Aを収容するためのものであるから、それを明確にするために、以下の用語としては、「茶葉A」「摘採」の語を前記茶枝葉A、茶刈りに替えて用いる。
まず収容系装置5の主要部材である収容ユニット50は、実質的に摘採した茶葉Aを収容するコンテナ部材であって、一例として図示しないトラックなどの別の収容体に移載する機能を備えているものである。このものは、一体的なコンテナ状ではなく、各部材が別体に且つ相互に可動状態に構成されている。基本的な支持部材である収容ユニットフレーム51は、図3に示すように側面視でほぼL字状を成す部材であり、このものは、昇降フレーム11Cに対して一例として平行リンク52を介して昇降自在に移動し得るように構成されている。なお符号52aは、前記平行リンク52において4点形成されるリンクピボットを示すものである。
そして、収容ユニットフレーム51の昇降シフトを担う部材は、昇降シフトシリンダ53であって、昇降シフトシリンダ53の基部を走行機体のフレーム11側の昇降フレーム11Cに接続させるとともに、摺動子53a先端を一例として下方側の平行リンク52のほぼ中間部に回動自在に接続させるものである。
【0029】
更に、この収容ユニットフレーム51は、その下方の部材が収容ユニット50の底板54を形成する。すなわち、収容ユニット50の直立フレーム51aは、その下端部から後方に張り出すように適宜の寸法の固定基部54aが形成され、それを更に延長させるように、折り上げ部54bが設けられ、その両者の間は、回動ピン54cによって回動自在に構成されている。
これら固定基部54aと折り上げ部54bとは、ともにその上面は一連のフラットな形状とされており、この底板54が収容ユニット50の底部として機能している。
【0030】
この底板54の4周縁から立ち上がるように側周ケージ55が設けられ、これらによって茶葉Aの収容スペースが構成される。側周ケージ55の具体的構成は、前記直立フレーム51a寄りに矩形状の背面枠550を設け、フレーム部材として一定の強度を保たせるとともに、この背面枠550に対して背面板551を張設する。更にこの背面枠550には、その左右の側面上方に側縁回動支点となるコロ550Pを設け、これを前記直立フレーム51aにおける受け溝51G内において上下動が許容されて回動できるように構成する。
【0031】
一方、背面板551に対向する面は、矩形状の適宜の枠構造を有する抽出板552とするものであり、その中央部に後述する折り畳み操作のための把手552aを設ける。そして、背面板551と抽出板552との間には、左右両側面に側板553を設ける。この側板553は、図8に示すように中央折込部553aによって内側に折れ込むように構成されており、このものを完全に内側に折り込んだ際には、いわゆるガゼット構造により、抽出板552が背面板551に接近し、側周ケージ55が折り畳まれるものである。
なお、これらの背面板551と、抽出板552と、側板553とは、いずれもその下方半分程度の高さは密閉状態のパネルとするものであるが、その上方は金網、ラス板等により通気性を確保した窓状としているものである。
【0032】
そして側周ケージ55は、図3、7に示すように背面枠550の下端縁にコロ554を設け、側周ケージ55全体がコロ554の部位において前記底板54に接し、傾斜しながらずれるように構成されているものである。
なお詳細は後述するが、側周ケージ55における背面板551の下端縁には、押出フラップ555を設け、このものは、フラップヒンジ555aにおいて回動し得るように構成され、その自由端は、常に底板54上を密に摺擦するように移動する構成されている。
【0033】
一方、側周ケージ55における背面枠550の上端には、天板56が設けられるものであって、天板56自体は、図3、6、8等に示すように、前記側周ケージ55の上部開放面を塞ぐ様な構成としている。まず天板56の背面枠550側は、固定部561として背面枠550に固定的に取り付けられ、更にこれを後方に延長するにように設けた折り下げ部562を回動部562aを介して接続している。
なお天板56の全体構成は、一例として左右一対のフード受口563を開口させ、その周囲は透気性を有する金網等によって形成する。フード受口563の外側両側部には、摘採した茶葉Aを導き入れる導入フード57を組み付けるための嵌め込みレール563aを具え、更にその固定状態を確実にするためのクランプボルト563bを前記嵌め込みレール563aの反対側の部位に設けるものである。
【0034】
次に、この天板56の導入フード57について説明する。この導入フード57は、図6に示すように側面視でほぼ三角形状を成す中空箱状部材であり、走行機体1側に導入口571を開口させ、この部位が走行機体側における移送装置3の移送終端部32に摘採作業時には接続されるように構成されている。なお、この移送装置3と導入口571との間は、少なくとも接続部位において摘採した茶葉Aが円滑に収容ユニット50内に導入できればよいので、その限りで密閉性は要求されるが、厳密に完全な気密状態にする必要はない。もちろん、その間における摘採した茶葉Aの導入案内を確実にするために前記背面枠550に対しては、その上方に案内シュート572を設けて、円滑にフード受口563から摘採した茶葉Aが側周ケージ55内に移送されるように構成する。また導入フード57の内側には、この案内シュート572に対向する位置に可動規制シュート573を設け、茶葉Aの投入位置を設定できるようにする。すなわち可動規制シュート573は、前記導入フード57の後端寄りに設けられた回動軸573aにおいて回動し、適宜その角度設定がし得るように構成されている。具体的には、回動軸573aの外側に固定されたシフトレーバー574が調整ロッド575とリンク接続されて、更に調整ロッド575の自由端がクランプボルト575aによって調整用長穴576の適宜の位置に固定されるように構成され、可動規制シュート573の設定角度を調整できるようにしているものである。
【0035】
更に、このような収容ユニット50の構成部材の一部である側周ケージ55は、図7に示すように天板56を伴いながら全体として下縁側が後方に移動できるように構成するものであって、この動作は、前記収容ユニットフレーム51と側周ケージ55との間に取り付けた押出シフトシリンダ58の伸長によって行われるものである。具体的には、押出シフトシリンダ58の摺動子58a端側の接続部は、押出シフトシリンダ58動作による応力等を考慮して、側板553に取り付けられている。因みに、この側板553の部位は、中折れ状に折り畳まれることから折り畳み時に押出シフトシリンダ58との接続状態を容易に解除できるように、レバー付のクランプピン58Pを用いているものである。
【0036】
本発明の茶畝跨走型茶園管理装置Mは、以上述べたような構造を有するものであり、茶枝葉Aの移送態様を述べながら、以下刈り落としダクト装置4の作用について説明する。
【0037】
(1)刈り落としダクト装置の設定
まず、この実施例のように収容系装置5が設けられているときには、収容系装置5を図1、9、12等に示すように格納状態とした後、その外側に刈り落としダクト装置4を設置するようにする。
この設置作業は、適宜刈り落としダクト装置4が既に上部ダクト41と中継ダクト42と下部ダクト43とを接続した状態にあるときには、このものを例えば収容ユニット50の後方に対しブラケット414を用いて係止させる。これにより上部ダクト41の上部接続口411と、移送装置3における移送終端部32との接続を図るとともに、下部ダクト43においては、支持杆受部425を支持杆110Cに嵌め込むように取り付けて支持させる。因みに下部ダクト43は、前記中継ダクト42に吊持されたようにして支持されるものであり、このような状態で剪枝作業を行う。
【0038】
(2)移送装置内における茶枝葉Aの移送態様
図2に示すように、一例として刈刃22の作用部近傍の移送開始部31にある茶枝葉Aは、移送風Wの作用を受けて、まず刈刃22の後方側に送られる。そして茶枝葉Aは、送風チャンバ35内の管路形状に沿って垂直部33を上昇しながら、その移送終端部32に至る。
【0039】
(3)刈り落としダクト装置における茶枝葉の刈り落とし態様
このようにして、送り込まれた茶枝葉Aは、刈り落としダクト装置4の上部ダクト41における上部接続口411から偏向案内部413を経て下部接続口412に落下する。そして茶枝葉Aは、そのまま中継ダクト42を経て下部ダクト43に至る。このとき図10に示すように中継ダクト42は、茶畝幅の調整に応じて、支持杆受け部434が左右に適宜の幅寸法に広がるが、その調整に対応して、中継ダクト42は、偏向案内部413との回動接続部422を中心に下部接続口412をずらせるような作用をする。この状態であっても、下部中継口423は、ほぼ畝間地tに対して正確にその上方に位置した状態に設定されている。因みに下部ダクト43が存在しない場合、例えば中継ダクト42全体が傾斜している場合には、茶枝葉Aは、その傾斜に従い案内されて、下部中継口423が畝間地t上方に位置していたとしても、そこから外れるように放擲されてしまう。
しかしながら本発明においては、下部ダクト43は中継ダクト42に対して吊持状態に接続されており、ほぼ鉛直になるような姿勢で垂れ下がっているから、下部刈り落とし口432を畝間上方に位置させたまま、全体としてほぼ正確に茶畝Tの畝間地tに向かうような姿勢をとっている。従って、ここに落下してきた茶枝葉Aは、正確に茶畝Tの畝間地t上に刈り落とされる。
【0040】
〔他の実施例(1)〕
この実施例は、折り畳み自在のコンテナタイプの収容ユニット50の一部を展開して刈り落としダクト装置の取り付けに利用したものである。すなわち図11、12に示すように、刈り落としダクト装置4の上部ダクト41は、その上端をほぼ水平に切り離したように開放させた形状を取り、この開放部が上部接続口411となるものである。
一方収容ユニット50における天板56は、折り下げ部562を水平に引き起こした状態としている。この状態を維持するため、いわゆる頬杖状の支持杆59を前記折り下げ部562の先端と側周ケージ55の背面枠550との間に張渡すように設ける。また天板56の上方には、摘採作業時と同様に、導入フード57を設け、これにより走行機体1側の移送ダクト30と、移送ダクト30の移送終端部32とを連通させるようにする。
そして、上部ダクト41と天板56とは、前記折り下げ部562の下面側に上部ダクト41の上部接続口411をあてがうようにして合致させ、適宜のクランプ手段で両者を固定を図るものである。このようにするときには、摘採された茶枝葉Aは、茶刈機体2によって刈り取られた後、移送ダクト30に運ばれ、更に導入フード57を経て刈り落としダクト装置4に至るものであり、上部ダクト41における上部接続口411から下方に案内されるようにして落下する。
【0041】
〔他の実施例(2)〕
なお、先に述べたいずれの実施例も、刈り落としダクト装置4は、収容系装置5を格納状態にして取り付けたものであるが、このような機構を有しない収容系装置5の場合は、図示を省略するが収容系装置5を全てまたはその一部を取り外した状態で刈り落としダクト装置4を走行機体1に搭載し、作業することももとより差し支えない。この場合であっても、正確な畝間地tへの茶枝葉Aの案内が可能になるものである。
【0042】
〔他の実施例(3)〕
更に図13〜15に示す実施例がある。このものは、前記収容系装置5における収容ユニット50が折り畳まれないタイプ、すなわち常にコンテナ状の箱を構成しているものに適用するための実施例である。まず上部ダクト41については、シュート状の部材を前記収容ユニット50内に収めるように取り付ける。なおこの場合においては、上部ダクト41の上部接続口411は、その開口面が収容ユニット50の水平断面をほぼ塞ぐような寸法設定であれば、前記収容系装置5に至る導入フード57の下方開口面より十分下に位置していても差し支えない。要は、刈り落とした茶枝葉Aが散逸しなければよいのである。そしてその上部ダクト41における下部接続口412は、収容ユニット50の側面を窓状に開口させた部分に臨むように開口させている。
【0043】
更に、ここに接続される中継ダクト42は、それ自体が一例として柔軟なシート状のいわゆるフレキシブルな素材を用いるものである。そして、その上部中継口421は、収容ユニット50の側壁部ないしは上部ダクト41の下部接続口412に直接取り付けるようにするとともに、その下部中継口423を下部ダクト43に接続させる。
具体的には、この部分を下部ダクト43の上部の固定枠45に対し接続させるものであり、常時接続状態あるいはホック等により必要時において接続ができるようにしておく。
【0044】
そしてこの固定枠45は、その下方に実質的な案内作用を行う煽り板46を左右対設するように設けるものであり、このものは、固定枠45に対してヒンジ47を介して揺動自在に接続され、一対の煽り板46は、連設杆48によって連設され、常に相互が揺動されるように構成されている。なお煽り板46は、その前後に茶畝T間を移動する際にその作動が円滑に行くように内側に曲げたスキッド部461を具えている。そしてこの下部ダクト43は、その固定枠45に設けた支持杆受部434において、走行機体1側から伸びる支持杆110Cを受け入れ、走行体のトレッド幅の変更に応じて移動できるように構成している。もちろんこの移動の許容は、前記中継ダクト42がフレキシブルな素材により構成されていることによる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の茶畝跨走型茶園管理装置の斜視図である。
【図2】同上装置による茶刈作業時の状態を示す側面図である。
【図3】本発明の移送ダクトに加え収容装置を併せ、分解して示す斜視図である。
【図4】本発明の茶畝跨走型茶園管理装置の実施例における荷降ろし作業時開始直前の状態を示す側面図である。
【図5】本発明の茶畝跨走型茶園管理装置の実施例における荷降ろし完了時の状態を示す側面図である。
【図6】本発明の茶畝跨走型茶園管理装置の実施例における茶刈された茶枝葉の収容状態を示す縦断側面図である。
【図7】本発明の茶畝跨走型茶園管理装置の実施例における収容装置からの荷降ろし途中の状態を示す側面図である。
【図8】本発明の茶畝跨走型茶園管理装置の実施例における収容系装置の格納状態を示す説明図である。
【図9】本発明の茶畝跨走型茶園管理装置に実施例における刈り落としダクト装置の取り付け状態を示す側面図である。
【図10】本発明の刈り落としダクト装置の正面図を具えた茶畝跨走型茶園管理装置を示す側面図である。
【図11】本発明の刈り落としダクト装置の取付態様を異ならせた他の実施例を示す斜視図である。
【図12】同上側面図である。
【図13】本発明の刈り落としダクト装置の更に他の実施例を示す分解斜視図である。
【図14】同上背面図である。
【図15】同上側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 走行機体
11 フレーム
11A 脚部フレーム
11B 連結フレーム
11C 昇降フレーム
110C 支持杆
12 走行体
13 操縦者用シート
14 操縦桿
15 コントロールボックス
16 原動機
17 送風機
18 送風ダクト
18A フレキシブルダクト
2 茶刈機体
22 刈刃
22A 刈刃体
22B 刈刃支持フレーム
22C 駆動部
3 移送装置
30 移送ダクト
31 移送開始部
32 移送終端部
33 垂直部
35 送風チャンバ
4 刈り落としダクト装置
41 上部ダクト
41a 通気窓
411 上部接続口
412 下部接続口
413 偏向案内部
42 中継ダクト
421 上部中継口
422 回動接続部
423 下部中継口
43 下部ダクト
431 上部受取口
432 下部刈り落とし口
433 回動接続部
434 支持杆受部
435 案内スキッド部
45 固定枠
46 煽り板
461 スキッド部
47 ヒンジ
48 連設杆
5 収容系装置
50 収容ユニット
51 収容ユニットフレーム
51a 直立フレーム
51G 受け溝
52 平行リンク
52a リンクピボット
53 昇降シフトシリンダ
53a 摺動子
54 底板
54a 固定基部
54b 折り上げ部
54c 回動ピン
55 側周ケージ
550 背面枠
550P コロ(側縁回動支点)
551 背面板
552 抽出板
552a 把手
553 側板
553a 中央折込部
554 コロ
555 押出フラップ
555a フラップヒンジ
56 天板
561 固定部
562 折り下げ部
562a 回動部
563 フード受口
563a 嵌め込みレール
563b クランプボルト
57 導入フード
571 導入口
572 案内シュート
573 規制シュート
573a 回動軸
574 シフトレーバー
575 調整ロッド
575a クランプボルト
576 調整用長穴
58 押出シフトシリンダ
58a 摺動子
58P クランプピン
59 支持杆
A 茶枝葉(茶葉)
T 茶畝
t 畝間地
W 圧力風(移送風)
M 茶畝跨走型茶園管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を跨いで走行する走行機体と、これに搭載され茶枝葉を刈り取る茶刈機ユニットと、茶枝葉を上方移送する移送装置と、走行機体後方に設けられ刈り取られた茶枝葉を畝間地に案内する刈り落としダクト装置とを具えて成り、前記刈り落としダクト装置は、上部ダクトと、中継ダクトと、下部ダクトとが上下方向に連設されて成り、前記上部ダクトは、上方において移送装置における移送終端部と直接または間接的に接続されるとともに、下端は走行機体における走行体側に偏向するように構成され、また中継ダクトは、前記上部ダクトの下方にフレキシブルに連設されるとともに、左右の走行体の幅方向の設定に応じて、落下方向を偏向し得るように構成され、更に下部ダクトは中継ダクト下方に設けられ、常時落とし込み方向を鉛直方向に向けるように接続されていることを特徴とする茶畝跨走型茶園管理装置。
【請求項2】
前記上部ダクトは、走行機体幅方向において中央で分岐し、左右一対のほぼ対称形状であることを特徴とする前記請求項1記載の茶畝跨走型茶園管理装置。
【請求項3】
前記走行機体は、その後部に折り畳み自在のコンテナタイプの収容ユニットを具えて成り、その収容ユニットを折り畳み状態に搭載したまま、その後方に前記刈り落としダクト装置を具えさせることを特徴とする前記請求項1または2記載の茶畝跨走型茶園管理装置。
【請求項4】
前記収容ユニットにおける天板を展開した状態において、その上面に導入フードを設置し、この導入フードを介して、上部ダクトが移送装置と間接的に接続されるように構成されていることを特徴とする前記請求項1、2または3記載の茶畝跨走型茶園管理装置。
【請求項5】
上部ダクトと、中継ダクトと、下部ダクトとが上下方向に連設されて成り、前記上部ダクトは、上方において移送装置における移送終端部と直接または間接的に接続されるとともに、下端は走行機体における走行体側に偏向するように構成され、また中継ダクトは、前記上部ダクトの下方にフレキシブルに連設されるとともに、左右の走行体の幅方向の設定に応じて、落下方向を偏向し得るように構成され、更に下部ダクトは中継ダクト下方に設けられ、常時落とし込み方向を鉛直方向に向けるように接続されていることを特徴とする茶畝跨走型茶園管理装置に用いられる刈り落としダクト装置。
【請求項6】
前記上部ダクトは、走行機体幅方向において中央で分岐し、左右一対のほぼ対称形状であることを特徴とする前記請求項5記載の茶畝跨走型茶園管理装置に用いられる刈り落としダクト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−92858(P2008−92858A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277973(P2006−277973)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000104375)カワサキ機工株式会社 (30)
【Fターム(参考)】