説明

草刈り作業機

【課題】刈取り作業部が障害物などに衝突してもダメージを受け難く、また、メンテナンスも容易に行える草刈り作業機を提供する
【解決手段】刈取り作業部5は、回転する水平軸に複数の刈取り刃51を側面視放射状に設けた刈取りロータ56と、刈取りロータ56上方を覆う刈取り部カバー52と、刈取りロータ56の左右端部をベアリング550を介して保持するサイドプレート55を有し、刈取り部カバー52の前方端は、側面視の断面が逆L字状部522を有し、逆L字状部522の内側には逆L字状部522の上面と前方面とを連結した複数の補強部材521が取り付けられていて、補強部材521には、作業時の異物飛散防止用のフラップ520が保持されている草刈り作業機を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに装着されて草刈り作業を行う農業用機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の刈取り装置の従来技術として特開2010−268685号公報(従来技術1)が開示されている。
【0003】
従来技術1には、「走行車であるトラクタに連結された状態でトラクタの走行により草などを刈取る農作業機」であり「入力軸10側からの動力に基づいて所定方向に回転しながら草等の刈取り作業をするカッテング軸15が設けられている」草などを刈取る農作業機の開示がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−268685号公報(従来技術1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラクタに装着されて使用される草刈り作業機の場合、刈取り作業中の刈取り作業部の前方には刈取り前の丈のある草が繁茂していて、障害物等が中にあっても作業者から確認しにくいため、刈取り作業部前方が障害物に衝突してカバー等が破損する場合がある。特にトラクタから側方にオフセットさせて作業する草刈り作業機の場合、トラクタが走行していない部分の刈取りをするため、この様な事故が発生しやすい。このため、前方部や刈取り作業部全体の剛性を上げて破損を軽減する必要があるが、重量も増加して作業時のバランスが悪くなるとともに、製造コストも嵩む問題がある。
【0006】
また、刈取り作業部前方と後方には、石等の異物が刈取り部から飛び出さないように刈取り作業部幅方向全体に亘ってフラップが設けられている。このフラップもまた障害物との衝突や刈取り部から飛散した石などにより変形や破損があり、交換の頻度が多い。しかし、交換には、刈取り作業部幅方向に長いフラップの回動軸を取り外す必要があり、一人では容易に交換ができない問題がある。
【0007】
このため本発明の目的は、刈取り作業部が障害物などに衝突してもダメージを受け難く、また、メンテナンスも容易に行える草刈り作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、トラクタに連結して使用される草刈り作業機において、刈取り作業部は、回転する水平軸に複数の刈刃を側面視放射状に設けた刈取りロータと、刈取りロータ上方を覆う刈取り部カバーと、前記刈取りロータの左右端部をベアリングを介して保持するサイドプレートを有し、前記刈取り部カバーの前方端は、側面視の断面が逆L字状部を有し、該逆L字状部の内側には逆L字状部の上面と前方面とを連結した複数の補強部材が取り付けられていて、該補強部材には、作業時の異物飛散防止用のフラップが保持されている草刈り作業機を提案する。また、前記補強部材は、ロータカバーに対し取り付け取外し可能に設けられている草刈り作業機を提案する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、前方端が、側面視の断面が逆L字状部を有しているため、重量を増加させずに強度を確保可能で、作業中に障害物や異物等に衝突した際のガードの効果を有する。また、逆L字状部の内側には、逆L字状部の上面と前方面とを連結した複数の補強部材が取り付けられているため、強度がさらに向上する。さらに、作業時の異物飛散防止用のフラップが前記補強部材に保持されていることにより、破損等によりフラップの一部を交換する場合、全体をセットで外して交換できるため、メンテナンスを容易に効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施した草刈り作業機の側面図。
【図2】本発明を実施した草刈り作業機をトラクタ後方に位置させた状態の平面図。
【図3】本発明を実施した草刈り作業機をトラクタ側方にオフセットさせた状態の平面図。
【図4】刈取り作業部の要部正面図。
【図5】刈取り作業部を断面した要部側面図。
【図6】刈取り作業部の一部を断面した後面図。
【図7】動力伝達部を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を以下の図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した草刈り作業機の側面図、図2は同じく草刈り作業機をトラクタ後方に位置させた状態の平面図、図3は同じく草刈り作業機をトラクタ側方にオフセットさせた状態の平面図、図4は刈取り作業部の要部正面図、図5は刈取り作業部を断面した要部側面図、図6は刈取り作業部の一部を断面した後面図、図7は動力伝達部を示した平面図を示したものである。
【0012】
本例に示す草刈り作業機は、トラクタ1の後方に設けた3点リンクヒッチ機構に装着され、トラクタ1からの動力により刈取り作業部5を駆動して使用されるものである。また、刈取り作業部5は、トラクタ1に対して左右に移動可能に設けられていて、トラクタ1の側方に位置させての作業も可能であり、トラクタ1のタイヤで刈取り前の草を踏まずに前進刈取り作業が可能である。
【0013】
本例の草刈り作業機は、前方部にトラクタ1に装着するための装着部2を設け、その後方に刈取り作業部5が設けられていて、装着部2と刈取り作業部5はオフセット機構部6を介して連結されている。オフセット機構部6は平面視平行リンクで構成されていて、平行リンク前方端が装着部2側に、後方端側が刈取り作業部5側に回動自在にそれぞれ連結されていて、刈取り作業部5が左右に移動しても進行方向に対して直交姿勢が変化しないように構成されている。
【0014】
前記装着部2には、オートヒッチ装置が設けられていて、トラクタ1後方に設けられた昇降装置である3点リンク機構にヒッチ枠20を取り付け、3点リンク機構によりヒッチ枠20を上昇させて草刈り作業機を吊り上げると、自動的に草刈り作業機が連結されて装着される装置である。トラクタ1の後方に設けた左右一対のロワーリンク11とその中央上方に設けたトップリンク10とからなる3点リンクヒッチ機構に、これらを定型化するヒッチ枠20(クイックカプラー又はオートヒッチと称される)を取り付け、草刈り作業機の前方に設けた中央上方部のトップピン210にヒッチ枠20上方のトップフック207を係合させるとともに3点リンクヒッチ機構を上昇させると、草刈り作業機側の前方下方左右に設けたロワーピン205がヒッチ枠20側に引き寄せられ、ヒッチ枠20のロワープレート206のU字溝に係合するとともに、U溝部に設けたフック208により抜け止めが行われ、トラクタ1と草刈り作業機が連結される。
【0015】
刈取り作業部5は、刈取り作業部5の片側側方上方部に設けた動力の入力部であるベベルギヤケース3が設けられていて、図7に示すように、このベベルギヤケース3から前方に向け突設させた第2入力軸30と装着部2に設けた第1入力軸212が軸方向に伸縮可能なユニバーサルジョイント65で連結されていて、さらに、第1入力軸212前方側がトラクタPTO軸13とユニバーサルジョイント12により連結され、動力がトラクタ1から取出され刈取り作業部5は駆動される。第2入力軸30と装着部2に設けた第1入力軸212が軸方向に伸縮可能なユニバーサルジョイント65で連結されていることで、装着部2と刈取り作業部5との間に設けた平行リンクで構成したオフセット機構部6の回動時の芯間の変位量を吸収する。
【0016】
ベベルギヤケース3は、刈取り作業部5の最側端の刈取り刃51より外側に突設されて設けられていて、ベベルギヤケース3は、第2入力軸30に入力された動力を内部のベベルギヤ31により第2入力軸30と直行する方向に変換及び変速する。変換された動力はベベルギヤケース3の片側側方から水平方向の出力軸32により刈取り作業部5の側方端側に伝達される。側方端部側の出力軸32先端には出力プーリ33が固着されていて、さらに、その下方に前記刈取り作業部5の回転軸50の端部に固着された入力プーリ57が設けられていて、これらのプーリに掛け渡された伝動ベルトにより第2入力軸30に入力された動力は、刈取り作業部5の回転軸50に伝達され回転駆動する。前記プーリ及び伝動ベルト部はベルトカバー4により覆われてガードされている。
【0017】
刈取り作業部5は、トラクタ進行方向と直交する水平方向の回転軸50に放射状に複数の刈取り刃51を揺動自在に設けた刈取りロータ56を有し、これを回転軸50の上方を刈取りした草が通過するように前方から後方に掬い上げるように回転させ、雑草等を刈取りするとともに破砕する。刈取り刃51回転軌跡外周上方部は、刈取り部カバー52で覆われていて、切断された雑草等の飛散を防止するとともに刈取られた雑草等の一部を回転軸50の周りに持ち回らせてさらに細かく破砕するように設けられている。回転軸50の両端部はベアリング550を介して刈取り部カバー52の左右側部のカバーであるサイドプレート55に保持されている。
【0018】
刈取り部カバー52の前方端部は、刈取りロータ56より前方に突設していて、刈取り部カバー52前方から連続して突設する水平面とその前方端から下方の垂直方向に折り曲げられて、逆L字状部522を形成している。また、逆L字状部522内側には、水平面と前方部の垂直面を連結する補強部材521が刈取り作業部5の幅方向に複数ボルト・ナットで取り付けられている。これにより、刈取り部カバー52の前方端部が逆L字状部522と補強部材521の協同効果により強度が向上し、障害物等に衝突した場合でも容易に破損しない。
【0019】
補強部材521の刈取り作業部5の幅方向と直交する面には、フラップ520を保持するためのフラップ保持軸523を取り付ける取り付け孔が設けられている。フラップ520は、刈取り作業部5の幅方向に多数設けられ、逆L字状部522の前方下方端部から下方に垂れ下げられ、刈取りロータ56で跳ね飛ばされた異物等が外に飛び出さないように設けられている。前記フラップ保持軸523を前記補強部材521の取り付け孔に嵌挿するとともに、フラップ520の一端に設けた保持孔に嵌挿してフラップ520が保持されていて、フラップ保持軸523を中心に下方側が前後に回動する。補強部材521を外すと、フラップ520が一体で外れるため、刈幅方向に長いフラップ部の交換等が容易に行える。刈幅方向に複数設けた補強部材521は、一体で構成されていても良い。
【0020】
刈取り作業部5後方下部にはゲージローラ7が設けられていて、作業時には地表面に接地して刈取り作業部5の後方側の地上高さを保持する。ゲージローラ7は刈取りロータ56の略幅の長さの円筒状に設けてあり、刈取り作業部5の左右の側板55から後方に延設した取付け板70に左右端部を軸受72を介して回転自在に保持されている。側板55への取付け板70取付け孔が複数設けてあり、取り付け孔位置を選択して取り付けることで刈取り作業部5の高さを調整する。
【0021】
刈取り作業部5を左右に移動させるオフセット機構部6は、前端側を装着部2に水平回動自在に連結されて後方側へ延びる回動アーム60と、一端を装着部側に他端を回動アーム60側にそれぞれ水平回動自在に連結してその伸縮動作により回動アーム60を水平方向に回動させるオフセット用電動シリンダ63と、回動アーム60の回動端側で刈取り作業部5を保持する刈取り作業部保持ブラケット64を有し、回動アーム60は左右に一対平行に設けられ前方端が装着部2側に、後方端側が刈取り作業部5側の刈取り作業部保持ブラケット64にそれぞれ垂直方向に設けた前方回動軸61および後方回動軸62により連結されて平行リンクを構成していて、刈取り作業部5が図2に示すトラクタ後方位置から図3に示すトラクタの側方側双方への左右移動が行われても進行方向に対して刈取り作業部の直交姿勢が変化しないように構成されている。平行リンクを使用したオフセット機構で構成されているため、構造がシンプルで製造コストを兼価に抑えることが可能である。
【0022】
刈取り作業部保持ブラケット64は、回動アーム60の回動端側に垂直方向の後方回動軸62により平行リンク機構を成して水平回動自在に保持されていると共に、進行方向と平行に水平に設けた刈取り部回動軸53により刈取り作業部5を進行方向と直行する面において上下方向回動自在に保持している。刈取り作業部5側と刈取り作業部保持ブラケット64側にそれぞれ両端部を回動自在に刈取り部回動用電動シリンダ54が連結されていて、刈取り部回動用電動シリンダ54を伸縮動作させることにより、刈取り作業部5を刈取り部回動軸53を中心に上下に回動させることができる。刈取り作業部5を上下に回動させることにより、トラクタ1の走行面に対し側方の上下に傾斜した傾斜面の雑草等を刈取ることが可能となる。
【0023】
オフセット機構部6前端側の装着部2との連結は、装着部2のマストフレーム202の左右一方側の下方部に連結ブラケット203を介して連結されていて、連結ブラケット203の後方側に前記回動アーム60を垂直方向に設けた前方回動軸61により保持するとともに、連結ブラケット203の前方側一端を進行方向と直交する水平方向の上下回動軸によりマストフレーム202に前後回動自在に連結している。該前後回動角は一定範囲に規制されているが、これにより装着部2に対し刈取り作業部5が前後に一定範囲で揺動可能となり、作業圃場の凹凸に対し作業時追従できるように構成されている。
【0024】
次にこの発明の草刈り作業機の作動について説明する。草刈り作業機の前方部に設けた装着部2によりトラクタ1に装着し、装着部2の第1入力軸212とトラクタPTO軸13をユニバーサルジョイント12で連結し、トラクタ1からの動力により回転駆動させる。このとき、オートヒッチ装置による連結の場合、草刈り作業機を吊り上げると、自動的に草刈り作業機が連結されて、ユニバーサルジョイント12も同時に連結される。入力された動力は、ユニバーサルジョイント12から装着部2の第1入力軸212とユニバーサルジョイント65を介してベベルギヤケース3の第2入力軸30へ伝達される。ベベルギヤケース3の内部のベベルギヤ31により第2入力軸30の動力は出力軸32により動力を刈取り作業部5の側方端側に伝達する。出力軸32先端には出力プーリ33が固着されていて、その下方に前記刈取り作業部5の回転軸50の端部に固着された入力プーリ57が設けられていて、これらのプーリに掛け渡された伝動ベルトにより動力は刈取り作業部5の回転軸50に伝達され回転駆動する。回転軸50には放射状に複数の刈取り刃51が揺動自在に設けられていて、これを切断された雑草等が回転軸50の上方を通過して前方から後方に掬い上げるように回転させ、トラクタの進行により雑草等を刈取りするとともに破砕させる。刈取り刃51回転軌跡外周上方部は、刈取り部カバー52で覆われていて、切断された雑草等の飛散を防止するとともに刈取られた雑草等の一部を刈取り刃51の掬い面の作用により回転軸50周りに持ち回らせてさらに細かく破砕させる。
【0025】
刈取り作業部5は、装着部2に対してオフセット機構部6のオフセット用電動シリンダ63を伸縮させることにより左右に移動させてトラクタ1からのオフセット位置を調整して作業を行う。図3のようにトラクタ1のタイヤ側方から刈取り作業部5を外側にオフセットさせ、トラクタ1を刈取り後の圃場部面を走行させるとともに、刈取り作業部5を未刈取り部に位置させて作業を行うことで、タイヤが未作業部の雑草等を踏み倒すことによる刈残し発生を防止できる。
【0026】
トラクタ1のタイヤ側方から刈取り作業部5を外側にオフセットさせ、さらに、刈取り部回動用電動シリンダ54を伸縮させて刈取り作業部5を進行方向と直交する方向の上下に回動させることにより、トラクタ1の走行面に対して上下に傾斜している側方部の法面の草刈り作業が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は、走行機であるトラクタの後方に装着されて使用される草刈り作業をするための農業用機械に利用される。
【符号の説明】
【0028】
1 トラクタ
10 トップリンク
11 ロワーリンク
12 ユニバーサルジョイント
13 トラクタPTO軸
2 装着部
20 ヒッチ枠
200 ロワーリンクピン
201 トップリンクピン
202 マストフレーム
203 連結ブラケット
205 ロワーピン
206 ロワープレート
207 トップフック
208 フック
210 トップピン
212 第1入力軸
3 ベベルギヤケース
30 第2入力軸
31 ベベルギヤ
32 出力軸
4 ベルトカバー
5 刈取り作業部
50 回転軸
51 刈取り刃
52 刈取り部カバー
53 刈取り作業部回動軸
54 刈取り作業部回動用電動シリンダ
55 サイドプレート
550 ベアリング
56 刈取りロータ
57 入力プーリ
6 オフセット機構部
60 回動アーム
61 前方回動軸
62 後方回動軸
63 オフセット用電動シリンダ
64 刈取り作業部保持ブラケット
65 ユニバーサルジョイント
7 ゲージローラ
70 取付け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに連結して使用される草刈り作業機において、刈取り作業部は、回転する水平軸に複数の刈刃を側面視放射状に設けた刈取りロータと、刈取りロータ上方を覆う刈取り部カバーと、前記刈取りロータの左右端部をベアリングを介して保持するサイドプレートを有し、前記刈取り部カバーの前方端は、側面視の断面が逆L字状部を有し、該逆L字状部の内側には逆L字状部の上面と前方面とを連結した複数の補強部材が取り付けられていて、該補強部材には、作業時の異物飛散防止用のフラップが保持されていることを特徴とした草刈り作業機。
【請求項2】
補強部材は、刈取り部カバーに対し取り付け取外し可能に設けられている請求項1記載の草刈り作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−175906(P2012−175906A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39133(P2011−39133)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】