説明

草刈り用作業機械

【課題】本発明の草刈り用作業機械は、電気的エネルギを用いずに、フィルタに付着した異物を定期的に除去する。
【解決手段】ハンマーナイフモア1の操縦装置8側には、外部フィルタ機構100が設けられている。パンチングボード等から形成される外側フィルタ101は、雑草の破片等の比較的大きな異物を除去する。外側フィルタ101の表面には、複数のワイパ102が揺動可能に取り付けられている。各ワイパ102は、車両本体の姿勢変化や車両本体に生じる振動によって、左右に揺動する。各ワイパ102が、ストッパ104で規制される範囲内を揺動することにより、外側フィルタ101に付着した異物が掻き落とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ハンマーナイフモア等のような自走式または乗用式の草刈り用作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、堤防等の傾斜地や荒れ地等の不整地に生い茂る雑草や樹木を刈り取るために、ハンマーナイフモアのような草刈り用作業機械が用いられる(特許文献1)。草刈り用作業機械は、内蔵エンジンから生じる力を用いて、草や茎を刈り取り、破砕する。草刈り用作業機械はフィルタを備えており、このフィルタによって、草や茎の破片がエンジン等に供給される空気中に混入するのを防止している。
【0003】
草や茎の破片がフィルタに付着して、フィルタが目詰まりすると、エンジンへの吸気が妨げられたり、車体内部の温度が上昇する。そこで、オペレータは、定期的または不定期に、フィルタを手作業で清掃する。
【0004】
なお、刈り取られた草によって、草刈り用作業機械内部の通路が目詰まりするのを防止するようにした技術は知られている(特許文献2,特許文献3)。
【特許文献1】特開平11−225530号公報
【特許文献2】特開平10−248351号公報
【特許文献3】特開平11−275924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、ハンマーナイフモアのような草刈り用作業機械では、走行しながら多量の雑草等を刈り取ることができるため、刈り取った草や茎の破片によって、フィルタが目詰まりし易い。このため、従来技術では、オペレータは、時々、手作業でフィルタを清掃する必要があり、使い勝手の点で改善の余地がある。また、手作業によるフィルタ清掃作業の頻度が多くなると、草刈り作業の効率が低下する。手作業でフィルタを清掃するためには、草刈り作業を一時中断する必要があるためである。しかし、草刈り作業を行っている間は、雑草等の異物が絶え間なくフィルタに付着するため、草刈り作業を中断させる回数が増大し、この結果、草刈り作業の効率が低下する。
【0006】
なお、前記特許文献2,3には、刈り取った草を集めるための通路が、刈り取られた草によって詰まるのを防止する技術について開示されているが、フィルタの目詰まりに関する言及は全く含まれていない。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、フィルタの清掃作業を軽減できるようにした草刈り用作業機械を提供することにある。本発明の他の目的は、特別な動力を用いずに、通常の使用で生じる振動を利用して、フィルタに付着した異物の少なくとも一部を自動的に除去することができるようにした草刈り用作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従う、走行しながら草を刈る草刈り用作業機械は、作業車両本体と、作業車両本体の下側に設けられる走行体と、作業車両本体の前側に設けられる草刈り部と、作業車両本体に設けられる機械室と、機械室内に連通して設けられるフィルタ機構であって、機械室内に流入する空気中から異物を除去するための少なくとも一つ以上のフィルタと、一端側が回動支点となり、他端側が自由端となるようにして、各フィルタのいずれか一つ以上の外側に少なくとも一つ以上設けられるワイパ部材とを備えたフィルタ機構と、を含んで構成される。
【0009】
フィルタ機構は、機械室側寄りに設けられ、相対的に小さい異物を除去するための内側フィルタと、この内側フィルタの外側に設けられ、相対的に大きい異物を除去するための外側フィルタと、外側フィルタの外側に接触するようにして設けられるワイパ部材とを備えて構成することができる。
【0010】
ワイパ部材は複数設けることができ、これら複数のワイパ部材の全部または一部を互いに連結する連結部を、フィルタ機構がさらに備えてもよい。
【0011】
ワイパ部材を振動源に連結し、振動源から伝達される変位力によってワイパ部材を駆動するための伝達部を、フィルタ機構がさらに備えてもよい。
【0012】
振動源は、作業車両本体に設けられる振り子として構成してもよい。あるいは、作業車両本体を振動源に用いてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、草刈り用作業機械が走行しながら雑草等を刈り取ると、この刈り取り作業に伴って振動が発生し、この振動によってワイパ部材が駆動される。これにより、ワイパ部材は、電気エネルギーを消費することなく、フィルタに付着した草や茎またはこれらの破片を、自動的に除去することができる。従って、フィルタ清掃作業の頻度を低減して使い勝手を向上することができ、草刈り作業の効率を高めることができる。
【0014】
また、ワイパ部材を、作業車両本体や振り子のような振動源に連結することにより、より大きな振動力を利用して、ワイパ部材を駆動させることができ、フィルタ清掃能力を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、草刈り用作業機械として、ハンマーナイフモアを例に挙げて説明する。以下に詳述するように、本実施形態では、ハンマーナイフモア1の操縦装置8側に設けられる外側フィルタ101の表面に、複数のワイパ102を設けている。各ワイパ102は、その上端側が回動可能に支持されており、その下端側は自由端となっている。本発明の理解及び実施のために、まず最初に、ハンマーナイフモアの全体構造について説明し、次に、フィルタ機構について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、ハンマーナイフモア1の斜視図である。ハンマーナイフモア1は、後述のように、ハンマーのようなカッター16(図2参照)を回転させながら走行することにより、雑草や小型の樹木等を粉砕する装置である。ハンマーナイフモア1は、例えば、車両本体2と、クローラ3と、作業機4とを備えて構成される。
【0017】
「作業車両本体」としての車両本体2の下側には、「走行体」としてのクローラ3が設けられている。車両本体2には、後述のように、エンジン22(図6参照)や油圧装置(図示せず)を収容するための機械室20,30(図3参照)が設けられている。車両本体2の外側は、外装5によって覆われている。
【0018】
車両本体2の上側には、カバー6が開閉可能に取り付けられている。カバー6の基端側は、車両本体2の前側に回動可能に取り付けられている。カバー6の先端側は、操縦装置8側に向けて延びるようにして設けられている。これにより、カバー6は、車両本体2の上側を覆うようにして、開閉可能に設けられる。カバー6を開くことにより、オペレータは、機械室20,30の整備等を行うことができる。車両本体2の後側下部には、ステップ7が設けられている。オペレータは、ステップ7に立って、ハンマーナイフモア1を操作する。
【0019】
車両本体2の前側には、「草刈り部」としての作業機4が上下に揺動可能に設けられている。作業機4は、例えば、カッターケース10と、カッターカバー11と、左右両側のリンク12と、左右両側のバネ13と、左右両側のソリ14と、回転軸15及び複数のカッター16とを備えて構成される。
【0020】
カッターケース10は、回転軸15及びカッター16を収容するものである。カッターケース10の前側の下部には、カッターカバー11がリンク12及びバネ13を介して、開閉可能に取り付けられている。この構成により、刈り取り対象物である雑草等の背丈に応じて、カッターカバー11の開口量が変化する。雑草の背丈が低い場合、カッターカバー11の開く量は小さくなる。これにより、小石等がカッターケース10内から前方に飛散するのを防止する。雑草の背丈が高い場合、カッターカバー11には開方向(上方向)への力が加わり、カッターカバー11の開く量は大きくなる。これにより、背丈の高い雑草を大量にカッターケース10内に取り込んで、破砕することができる。カッターケース10の両側面の下側には、ソリ14が設けられている。
【0021】
図2は、カッターカバー11を開いた状態で示す正面図である。カッターケース10内に設けられた回転軸15は、例えば、油圧モータ等によって回転される。回転軸15には、その軸方向に離間して、ハンマナイフ型のカッター16が複数設けられている。
【0022】
図3は、ハンマーナイフモア1の側面図である。図4は、カバー6を取り外した状態で、機械室20,30に着目した部分斜視図である。車両本体2は、機械室20,30を備えている。一方の機械室20は、例えば、エンジン22やラジエータ23及び作動油クーラ24(いずれも図6参照)を収容しており、他方の機械室30は、例えば、燃料タンク31及び作動油タンク32(いずれも図4参照)を収容している。機械室20と機械室30との間には、開口部を有する隔壁9が設けられている。
【0023】
機械室20の上側には、カバー6及び隔壁9によって、空間9Aが形成される。カバー6を閉じた状態では、カバー6の先端側(図3中の右側)と車両本体2との間に、開口部が形成される。この開口部は、後述の外側フィルタ101によって施蓋される。カバー6の下側に形成される空間9A内には、「フィルタ機構」の一部を構成する内側フィルタ機構40が設けられる。内側フィルタ機構40は、例えば、複数の取付フレーム41と、内側フィルタ42(図6参照)とを備えて構成される。
【0024】
各取付フレーム41は、例えば、四角形状にそれぞれ形成されている。2枚の取付フレームを向かい合わせて配置することにより、全体として逆V字状を形成する。そして、各取付フレーム41には、図6で示すように、それぞれ2個ずつの内側フィルタ42が着脱可能に取り付けられる。各内側フィルタ42は、例えば、スポンジ状のフィルタ素材から形成されており、比較的小さい異物を除去するようになっている。
【0025】
操縦装置8は、車両本体2の後側に設けられている。操縦装置8は、例えば、走行レバー、駐車ブレーキレバー、カッタークラッチレバー、刈り取り高さ調節用ノブ、エンジン回転数調整レバー、エンジン始動スイッチ、モニタパネル等を備えて構成される。なお、図中では、外側フィルタ101を清掃する機構を十分に示すために、走行レバー等の図示を適宜省略している。
【0026】
なお、車両本体2の側面を取り囲むようにして設けられる外装5には、排気口5Aが設けられている。エンジン22から排出されるガスは、排気口5Aを介して大気中に放出される。
【0027】
図5は、操縦装置8側から見たハンマーナイフモア1の部分拡大斜視図である。内側フィルタ機構40の外側には、操縦装置8側に向くようにして、外側フィルタ機構100が設けられている。外側フィルタ機構100及び内側フィルタ機構40によって、「フィルタ機構」が構成される。
【0028】
外側フィルタ機構100は、例えば、外側フィルタ101と、複数のワイパ102と、ワイパ連結部材103と、複数のストッパ104とを備えて構成される。外側フィルタ101は、例えば、パンチングボードや網等のように、多数の開口部を有する平板状に形成されている。外側フィルタ101は、内側フィルタ42よりも目が粗く、比較的大きな異物を除去するようになっている。
【0029】
外側フィルタ101の外面側には、複数のワイパ102がそれぞれ揺動可能に取り付けられている。本実施例の外側フィルタ機構100は、例えば、合計6個のワイパ102を備えている。6個のワイパ部材のうち左右両側に位置するワイパ102は、それぞれ単独で動作するようになっている。残りの4個のワイパ102は、ワイパ連結部材103によって連結されており、一体的に動作するようになっている。
【0030】
各ワイパ102の可動範囲を規制するために、ピン状に形成されるストッパ104が用いられる。複数のストッパ104は、、外側フィルタ101から外側に突出するようにして、所定の位置に設けられる。各ストッパ104は、各ワイパ102の可動範囲を制限し、各ワイパ102同士が干渉するのを防止する。外側フィルタ101の左右両側にそれぞれ位置するワイパ102には、その左右両側に、ストッパ104がそれぞれ設けられている。ワイパ連結部材103によって連結された各ワイパ102は、一体的に揺動するため、ストッパ104は、連結されたワイパ群の左右両側にのみ配置されている。
【0031】
なお、上記の例に限らず、全てのワイパ102をワイパ連結部材103で連結する構成でもよい。または、ワイパ連結部材103を廃止し、全てのワイパ102を、それぞれ単独で動作させる構成としてもよい。
【0032】
図6は、内側フィルタ42,外側フィルタ101とワイパ102との関係を模式的に示す説明図である。図6は、各フィルタ42,101及びワイパ102を、車両本体2の側面方向から見た様子が示されている。
【0033】
内側フィルタ42は、互いに向き合うようにして逆V字状に配置されている。これにより、一方の内側フィルタ42と他方の内側フィルタ42との間には、断面が三角形状の空間42Aが形成される。そして、この断面三角形状の空間42Aに臨むようにして、機械室20が設けられている。換言すれば、機械室20に清浄な空気を供給するために、機械室20の上側に内側フィルタ機構40が設けられる。上述のように、機械室20内には、例えば、エンジン22,ラジエータ23及び作動油クーラ24等が設けられている。
【0034】
エンジン22は、吸気ダクト21を備えている。吸気ダクト21の先端側は、エンジン22の側部を、ラジエータ23の上方に向けて延設されている。吸気ダクト21の基端側は、エンジン22の上面側に接続されている。つまり、外気を吸い込むための吸気口(吸気ダクト21の先端側の開口部)を、操縦装置8側から遠ざけることにより、吸気音を低減している。なお、吸気構造は上記の例に限定されない。
【0035】
外側フィルタ機構100は、内側フィルタ機構40の外側に位置して、カバー6の先端側と車両本体2との間の開口部を施蓋するようにして設けられている。ハンマーナイフモア1の周囲の空気A1は、外側フィルタ101を通過して、空間9A内に流入する。空気A1に含まれる異物のうち、各カッター16によって粉砕された雑草等の比較的大きな異物は、外側フィルタ101によって除去される。
【0036】
空間9A内に流入した空気A2は、各内側フィルタ42を通過して、空間42A内に流入する。このとき、空気A2に含まれる比較的小さな異物は、内側フィルタ42によって除去される。これにより、空間42A内の空気A3は、異物の少ない清浄な空気となり、吸気ダクト21を介してエンジン22に吸い込まれる。また、清浄な空気A3は、ラジエータ23及び作動油クーラ24等を冷却する。
【0037】
図7は、一つのワイパ102を拡大して示す斜視図である。図8は、ワイパ102の正面図及び側面図である。図7及び図8に示すように、ワイパ102は、例えば、薄肉板状に形成されるブレード102Aと、ブレード102Aの基端側(上端側)に設けられる支持部102Bと、ブレード102Aの先端側(下端側)に設けられる連結部102C等から構成される。ワイパ102の大部分は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料から形成することができるが、これに限らず、セラミックス材料や合成樹脂材料等から形成する構成としてもよい。
【0038】
ブレード102Aの背面側(外側フィルタ101側)には、図8に示すように、薄肉板状の接触部材102Eが接着されている。接触部材102Eは、外側フィルタ101の表面に接触して、外側フィルタ101の表面に付着した雑草またはその粉砕物等の異物を、掻き落とすためのものである。接触部材102Eとしては、例えば、ゴム材料や合成樹脂材料等を用いることができる。
【0039】
支持部102Bは、ブレード102Aの基端側に一体的に設けられている。支持部102Bは、取付穴102B1を介して、外側フィルタ101の表面の上側に回動可能に取り付けられる。
【0040】
連結部102Cは、例えば、立法形状に形成され、ブレード102Aの先端側に一体的に設けられている。連結部102Cは、重りの役割も果たしている。連結部102Cの前面側には、ワイパ連結部材103を取り付けるためのピン102Dが設けられている。ワイパ連結部材103に設けられた取付穴に、ピン102Dを挿入することにより、複数のワイパ102をワイパ連結部材103によって容易に連結することができる。また、ワイパ連結部材103の取付穴から、ピン102Dを引き抜くことにより、複数のワイパ102の連結を容易に解除することもできる。なお、複数のワイパ102を連結する方法は、上記の構成に限定されない。例えば、面ファスナーを用いて、ワイパ連結部材103と各ワイパ102とを着脱可能に取り付ける構成でもよいし、あるいは、接着剤等の接着手段や溶接等の固着手段を用いてワイパ連結部材103と各ワイパ102とを着脱不能に取り付ける構成でもよい。
【0041】
図9〜図12を参照して、本実施例によるハンマーナイフモア1のフィルタ機構(40,100)の作用を説明する。図9は、外側フィルタ機構100の正面を模式的に示す正面図である。
【0042】
既に述べた通り、本実施例によるハンマーナイフモア1は、外側フィルタ機構100及び内側フィルタ機構40の複数種類のフィルタ構造を備えており、かつ、外側フィルタ機構100には、ハンマーナイフモア1の動作に応じて自然に揺動するワイパ102を設けている。
【0043】
図9に示すように、本実施例では、外側フィルタ101の外面側に、合計6個のワイパ102を設けている。6個のワイパ102のうち、左右両端に位置する各ワイパ102は、それぞれ単独で左右に揺動する。残りの4個の各ワイパ102は、ワイパ連結部材103によって連結されており、一体的に左右に揺動する。各ワイパ102の揺動範囲S1、即ち、各ワイパ102による清掃可能範囲S1は、図5示したストッパ104によって決定される。各ワイパ102は、ストッパ104によって規制された範囲S1内で、左右に揺動し、外側フィルタ101に付着した雑草等の異物を掻き落とす。
【0044】
もしも、外側フィルタ101の殆ど全ての表面に雑草等の異物が付着した場合でも、各範囲S1に存在する異物は、各ワイパ102によってそれぞれ除去される。従って、範囲S1にワイパ102の本数nを乗じた値の面積ΣS(=S1×n)の分だけ、空気の流入面積が確保される。そこで、例えば、外気温度やエンジン温度等の各種条件を考慮して、必要なΣSを算出し、ワイパ102の設置本数や揺動範囲S1等を決定することにより、車両本体2内に必要な外気を供給することができる。
【0045】
もっとも、範囲S1は、ワイパ102の最大揺動範囲を示しており、範囲S1内に存在する全ての異物が常に除去されることを保証するものではない。例えば、雑草等の異物の性質(破片の大きさや形状、濡れ具合等)、異物が単位時間当たりに外側フィルタ101に付着する量、ハンマーナイフモア1の走行姿勢の変化や走行時の振動により得られる慣性力の大きさによって、各ワイパ102により実際に清掃される面積は異なる。
【0046】
図10は、ハンマーナイフモア1による除草作業の一例を示す説明図である。ハンマーナイフモア1は、例えば、堤防のような傾斜地1000に生い茂る雑草Wを効率的に除去するために使用される。なお、傾斜地1000の雑草Wに限らず、例えば、平坦地1001に生えている雑草も、ハンマーナイフモア1により刈り取ることができる。ハンマーナイフモア1の一つの利点は、主に雑草の地上部分を粉砕し、雑草の根は残すことができる点である。従って、ハンマーナイフモア1を用いることにより、堤防や畦等の構造物の強度を低下させることなく、雑草を刈り取ることができる。
【0047】
ハンマーナイフモア1によって傾斜地1000の雑草Wを除去する場合、ハンマーナイフモア1は、走行路R1〜R4に示すように、進行方向を反転させながら傾斜地1000を走行する。
【0048】
図11は、ハンマーナイフモア1の姿勢変化を示す説明図である。図11(a)に示すように、ハンマーナイフモア1が平坦地1001を走行する場合、ハンマーナイフモア1は地面とほぼ水平になる。ハンマーナイフモア1がR1,R3を走行する場合、図11(b)に示すように、ハンマーナイフモア1は、傾斜地1000の傾斜角θに応じて、右側(F3方向)に傾く。これとは逆に、ハンマーナイフモア1がR2,R4を走行する場合、図11(c)に示すように、ハンマーナイフモア1は、傾斜角θに応じて、左側(F4方向)に傾く。
【0049】
図12は、各ワイパ102の姿勢変化を示す説明図である。図12(a)は、ハンマーナイフモア1が平坦地1001で停止しているような場合を示す。この場合、各ワイパ102は、鉛直線上に位置する。図12(b)は、ハンマーナイフモア1が図11(b)に示すようにF3方向に傾いた場合を示す。この場合、ハンマーナイフモア1の姿勢変化に応じて、各ワイパ102は、F3方向に揺動し、雑草の異物を掻き落とす。図12(c)は、ハンマーナイフモア1が図11(c)に示すようにF4方向に傾いた場合を示す。この場合、ハンマーナイフモア1の姿勢変化に応じて、各ワイパ102はF4方向に揺動し、雑草等の異物を掻き落とす。
【0050】
つまり、ハンマーナイフモア1によって通常の除草作業を行うだけで、ハンマーナイフモア1の姿勢は変化し、ストッパ104で規制される範囲S1内で左右に揺動する。上記の説明では、便宜上、地面に凹凸が無いと仮定しているが、実際には、平坦地1001及び傾斜地1000には、多数の凹凸があり、さらに、空き瓶や空き缶、小石、様々な異物が散在している。カッター16が小石等の異物を叩いたり、クローラ3が凹凸のある地面を走行すると、ハンマーナイフモア1には振動が加わる。
【0051】
従って、ハンマーナイフモア1の除草作業中、ハンマーナイフモア1の姿勢は変化し続け、かつ、ハンマーナイフモア1には振動が加わる。ハンマーナイフモア1の姿勢変化及びハンマーナイフモア1に生じる振動によって、各ワイパ102は、範囲S1を左右に揺動する。即ち、本実施例では、各ワイパ102を動作させるために、モータ等の特別な動力源を必要とせず、ハンマーナイフモア1の通常の使用により生じる姿勢変化や振動を利用して、各ワイパ102を動作させる。
【0052】
このように構成される本実施例によれば、ハンマーナイフモア1の通常の使用によって自然に得られる姿勢変化や振動を利用して、各ワイパ102を動作させることができ、外側フィルタ101に付着した雑草等の異物を除去することができる。従って、本実施例では、電気モータ等の特別な動力源を用いることなく、外側フィルタ101を自動的に清掃することができる。
【0053】
これにより、オペレータは、手作業で外側フィルタ101を清掃する必要がなく、草刈り作業の効率が向上する。また、各ワイパ102により清掃される範囲S1の合計値ΣSの流入面積を確保できるため、エンジン温度等の上昇を抑制し、オーバーヒートの発生を防止することができ、ハンマーナイフモア1の使い勝手が向上する。
【実施例2】
【0054】
図13に基づいて本発明の第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例は、上述した第1実施例の変形例に該当する。図13は、本実施例によるハンマーナイフモア1のフィルタ機構の要部を模式的に示す説明図である。
【0055】
本実施例では、各ワイパ102を揺動させるための動力用振り子110を、車両本体2に設けている。動力用振り子110は、例えば、軸110Aと、支点110Bと、重り110Cとを備えて構成される。動力用振り子110の揺動範囲S2は、左右のストッパ111によって規制される。
【0056】
軸110Aと各ワイパ102のうち少なくともいずれか一つのワイパ102のブレード102Aとは、伝達部材120によって連結されている。伝達部材120の一端121は、動力用振り子110の軸110Aの中間部に取り付けられており、伝達部材120の他端122は、一つのワイパ102のブレード102Aに取り付けられている。
【0057】
重り110Cの質量や軸110Aの長さを調節することにより、動力用振り子110から比較的大きな運動エネルギを得ることができる。動力用振り子110から生じる運動エネルギは、伝達部材120を介して、ワイパ102に伝達される。このワイパ102とワイパ連結部材103によって連結された各ワイパ102は、動力用振り子110の揺動に応じて、範囲S1内を揺動する。
【0058】
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。これに加えて、本実施例では、「振動源」としての動力用振り子110を設け、動力用振り子110の運動エネルギを利用して各ワイパ102を動作させる構成としたため、各ワイパ102による異物の除去能力を高めることができる。
【実施例3】
【0059】
図14に基づいて本発明の第3実施例を説明する。図14は、本実施例によるハンマーナイフモア1のフィルタ機構の要部を示す説明図である。本実施例では、「振動源」として車両本体2を用いる。
【0060】
即ち、伝達部材120の一端121は、動力用振り子110に代えて、車両本体2の特定の場所に取り付けられる。特定の場所としては、車両本体2の各部のうち、ハンマーナイフモア1の使用によって生じる振動が比較的大きく出現する場所が選定される。例えば、エンジン22の近傍等が特定の場所として選択される。伝達部材120は、車両本体2に生じた振動を各ワイパ102に伝達する。これにより、各ワイパ102は、範囲S1内を左右に揺動して、雑草等の異物を掻き落とす。
【0061】
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。これに加えて、本実施例では、車両本体2の振動を利用して各ワイパ102を作動させるため、前記第2実施例に比べて構成を簡素化することができる。
【実施例4】
【0062】
図15に基づいて本発明の第4実施例を説明する。図15は、本実施例によるハンマーナイフモア1の外側フィルタ機構130の構成を示す正面図である。外側フィルタ機構130は、上述した外側フィルタ機構100と同様に、内側フィルタ機構40の外側に位置して、操縦装置8側に露出して設けられる。外側フィルタ機構130は、例えば、外側フィルタ131と、複数のワイパ132と、ストッパ134とを備えて構成される。
【0063】
ワイパ132は、例えば、薄肉板状に形成されるブレード132Aと、ブレード132Aの基端側に設けられる支持部132Bと、ブレード132Aの先端側に設けられる重り132C等から構成される。ブレード132Aの背面側には、ゴム等の接触部材が設けられている。
【0064】
本実施例では、前記第1実施例とは異なり、外側フィルタ131の左右にそれぞれ一つずつワイパ132を横向きに設けている。各ワイパ132の支持部132Bは、外側フィルタ131の左右両側に回動可能に支持されており、ブレード132Aは図中の上下方向に揺動する。ブレード132Aの可動範囲S3は、ブレード132Aの上下に離間して設けられたストッパ134によって規制される。このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。
【実施例5】
【0065】
図16に基づいて本発明の第5実施例を説明する。図15は、本実施例によるハンマーナイフモア1の外側フィルタ機構100の構成を示す正面図である。前記第1実施例との相違点は、ワイパ連結部材103の両端に、つまみ部103Aを設けた点にある。できるだけ重量を少なくするために、各つまみ部103Aは、例えば、合成樹脂材料等から薄肉な中空の球状に形成される。オペレータは、左右いずれかのつまみ部103Aを握って左右に動かすことにより、各ワイパ102を左右に揺動させることができる。なお、ワイパ連結部材103の中間に、一つのつまみ部102Aを設ける構成としてもよい。このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、草刈り用作業機械として、車両の後方にオペレータが立って操作する形式のハンマーナイフモアを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、乗用車型の草刈り作業機械や手押し式の草刈り作業機械にも適用可能である。また、バネワイパを外側フィルタに向けて付勢するために、ゴムやバネ等の付勢手段を設けてもよい。さらに、振動源としての動力用振り子の構成は、図示のものに限らず、種々の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ハンマーナイフモアの斜視図。
【図2】作業機の正面図。
【図3】ハンマーナイフモアの側面図。
【図4】カバーを取り除いた状態で車両本体の上部を拡大して示す斜視図。
【図5】外側フィルタ機構を拡大して示す斜視図。
【図6】内側フィルタ機構及び外側フィルタ機構の関係を示す説明図。
【図7】ワイパを拡大して示す斜視図。
【図8】ワイパの正面図及び側面図。
【図9】外側フィルタ及び各ワイパの配置を示す説明図。
【図10】ハンマーナイフモアによる草刈り作業時の走行経路を示す説明図。
【図11】草刈り作業によるハンマーナイフモアの姿勢変化を示す説明図。
【図12】ハンマーナイフモアの姿勢変化に応じてワイパが揺動する様子を示す説明図。
【図13】第2実施例に係るハンマーナイフモアに用いられる外部フィルタ機構の要部を示す説明図。
【図14】第3実施例に係るハンマーナイフモアに用いられる外部フィルタ機構の要部を示す説明図。
【図15】第4実施例に係るハンマーナイフモアに用いられる外部フィルタ機構の要部を示す説明図。
【図16】第5実施例に係るハンマーナイフモアに用いられる外部フィルタ機構の要部を示す説明図。
【符号の説明】
【0068】
1…ハンマーナイフモア、2…車両本体、3…クローラ、4…作業機、5…外装、5A…排気口、6…カバー、7…ステップ、8…操縦装置、9…隔壁、9A…空間、10…カッターケース、11…カッターカバー、12…リンク、13…バネ、14…ソリ、15…回転軸、16…カッター、20…機械室、21…吸気ダクト、22…エンジン、23…ラジエータ、24…作動油クーラ、30…機械室、31…燃料タンク、32…作動油タンク、40 内側フィルタ機構、41…取付フレーム、42…内側フィルタ、42A…空間、100…外側フィルタ機構、101…外側フィルタ、102…ワイパ、102A…ブレード、102B…支持部、102B1…取付穴、102C…連結部、102D…ピン、102E…接触部材、103…ワイパ連結部材、103A…つまみ部、104…ストッパ、110…動力用振り子、110A…軸、110B…支点、110C…重り、111…ストッパ、120…伝達部材、121…一端、122…他端、130…外側フィルタ機構、131…外側フィルタ、132…ワイパ、132A…ブレード、132B…支持部、132C…重り、134…ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行しながら草を刈る草刈り用作業機械(1)であって、
作業車両本体(2)と、
前記作業車両本体の下側に設けられる走行体(3)と、
前記作業車両本体の前側に設けられる草刈り部(4)と、
前記作業車両本体に設けられる機械室(20)と、
前記機械室(20)内に連通して設けられるフィルタ機構(40,100)であって、前記機械室内に流入する空気中から異物を除去するための少なくとも一つ以上のフィルタ(42,101)と、一端側が回動支点(102B)となり、他端側が自由端(102C)となるようにして、前記各フィルタのいずれか一つ以上の外側に少なくとも一つ以上設けられるワイパ部材(102)とを備えたフィルタ機構と、
を含む草刈り用作業機械。
【請求項2】
前記フィルタ機構(40,100)は、
前記機械室(20)側寄りに設けられ、相対的に小さい異物を除去するための内側フィルタ(42)と、この内側フィルタの外側に設けられ、相対的に大きい異物を除去するための外側フィルタ(101)と、
前記外側フィルタの外側に接触するようにして設けられる前記ワイパ部材(102)とを備えて構成される、請求項1に記載の草刈り用作業機械。
【請求項3】
前記ワイパ部材(102)は複数設けられており、前記複数のワイパ部材の全部または一部を互いに連結する連結部(103)を、前記フィルタ機構(40,100)がさらに備える請求項1に記載の草刈り用作業機械。
【請求項4】
前記ワイパ部材(102)を振動源(2,110)に連結し、前記振動源から伝達される変位力によって前記ワイパ部材を駆動するための伝達部(120)を、前記フィルタ機構(40,100)がさらに備える請求項1に記載の草刈り用作業機械。
【請求項5】
前記振動源は、前記作業車両本体(2)に設けられる振り子(110)として構成される請求項4に記載に草刈り用作業機械。
【請求項6】
前記作業車両本体(2)を前記振動源として用いる請求項4に記載の草刈り用作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−148611(P2008−148611A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338890(P2006−338890)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(307009883)ハスクバーナ・ゼノア株式会社 (66)
【Fターム(参考)】