説明

荷役ラインの緊急離脱装置

【課題】可燃性ガスを発生する固形バラ積み貨物の荷役中に、貨物船と連結された陸上荷役装置を安全かつ迅速に貨物船から切り離すことができる荷役ラインの緊急離脱装置を提供する。
【解決手段】下側に上部接続部材13を有し、搬送用配管2に接続する上部構造体10と、前記上部接続部材13に当接する下部接続部材23を上側に有し搬送用配管3に接続する下部構造体20と、前記上部接続部材13と下部接続部材14とを当接した状態で連結する連結部材30と、該連結部材30を連結及び開放する連結及び解放機構と、前記上部構造体10に設けた上部開閉弁14と、前記下部構造体20に設けた下部開閉弁24とを備えた荷役ラインの緊急離脱装置1において、前記上部開閉弁14と前記下部開閉弁24をゲート弁で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスを発生するガスハイドレート等のバラ積み貨物の荷役中に、貨物船と陸上荷役装置との間を連結している連結ラインを緊急時に安全かつ迅速に切り離すことができる大口径用の荷役ラインの緊急離脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たなエネルギー源として注目されているガスハイドレート等の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物を貨物船と陸上荷役装置との間で移動する際には、荷役ラインは、貨物から発生する可燃性ガスが荷役中に漏洩したり、また、搬送中の粉体や粒体が飛散したりするのを回避するために、気密状態に維持される。
【0003】
この荷役ラインで荷役している最中に、風や波浪等のために貨物船が大きく運動したりして、荷役設備の可動範囲を越える場合や、陸上側や貨物船側に火災等の大きなトラブルが発生した場合には、陸上設備や貨物船を保護するために、速やかに荷役ラインを遮断及び分離して緊急離脱する。
【0004】
この緊急離脱装置の例として、原油や液化天然ガス(LNG)等の液体の場合ではあるが、カップラーの開閉弁をしっかりとした締め切り力によって閉じることができ、開閉弁の閉弁後に速やかにカップラーの連結を開放できる流体荷役装置における緊急切り離し装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この流体荷役装置における緊急切り離し装置では、開閉弁はボール弁に類似した2つの弁体により構成されており、LNG用の16インチ(約400mmφ)配管を対象にしているので重量的に実施できる範囲内に収まっている。しかしながら、大型化を指向し、直径が1200mmφにもなるような大口径用の緊急離脱装置のような場合には、重量の点から限界がある。また、液体用であるため、固形バラ積み貨物を扱う際にはバラ積み貨物である粉体や粒体が緊急離脱装置内に蓄積する可能性があるので、開閉弁の完全かつ確実な閉鎖に不安が生じるという問題もある。
【0006】
また、軽量化を図って、ボール弁の代わりにバタフライ弁を用いると弁体の重量は軽減するが、搬送路内に弁体とシャフトが配置されるため、粉体や粒体がこれらの弁体やシャフトに衝突して損傷させる可能性があり、開閉弁の完全かつ確実な閉鎖に不安が生じる。
【0007】
また、緊急離脱装置は重量のみならず、これを配置するスペースを小さくしないと、緊急離脱装置を支持したり、配設するスペースの確保が難しくなったりするという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−154962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、可燃性ガスを発生する固形バラ積み貨物の荷役中に、貨物船と連結された陸上荷役装置を安全かつ迅速に貨物船から切り離すことができる荷役ラインの緊急離脱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の荷役ラインの緊急離脱装置は、可燃性ガスを発生する固形バラ積み貨物の荷役ラインに使用すると共に、下側に上部接続部材を有し、搬送用配管に接続する上部構造体と、前記上部接続部材に当接する下部接続部材を上側に有し搬送用配管に接続する下部構造体と、前記上部接続部材と下部接続部材とを当接した状態で連結する連結部材と、該連結部材を連結及び開放する連結及び開放機構と、前記上部構造体に設けた上部開閉弁と、前記下部構造体に設けた下部開閉弁とを備えた荷役ラインの緊急離脱装置において、前記上部開閉弁と前記下部開閉弁をゲート弁で構成する。
【0011】
ボール弁方式と比較して重量の軽減が可能で、また、バタフライ弁と比較して搬送路に弁体やシャフト(回転軸)等の障害物が無いため、弁体、シャフト等の開閉機構のバラ積み貨物による衝突に起因する故障を回避でき、円滑な開閉動作を実現することができる。また、連結装置の搬送方向(上下方向)の厚みを薄くでき、また、重量も軽減することができる。そのため、着脱が容易で、省スペースとなる。従って、約1.0mφ以上となる流路に設ける大口径用の緊急離脱装置として使用できるようになる。
【0012】
上記の荷役ラインの緊急離脱装置において、可燃性ガスを発生するガスハイドレートの荷役の際に、貨物船と陸上荷役装置との間を連結する口径が0.5mφ〜3.0mφの荷役ラインに使用すると、ガスハードレートはペレット状等の固定物であるため、より効果的である。
【0013】
上記の荷役ラインの緊急離脱装置において、前記連結部材を、連結時には、前記下部接続部材を前記上部接続部材に押圧する複数の爪部を、前記上部接続部材の周囲に複数個配置して構成するとともに、開放時には、前記開放機構により、前記爪部を前記下部接続部材から離れる方向に移動させて、連結を開放するように構成する。
【0014】
あるいは、上記の荷役ラインの緊急離脱装置において、前記連結部材を、連結時には、前記上部接続部材を前記下部接続部材に押圧する複数の爪部を、前記下部接続部材の周囲に複数個配置して構成するとともに、開放時には、前記開放機構により、前記爪部を前記上部接続部材から離れる方向に移動させて、連結を開放するように構成する。
【0015】
これらの構成によれば、爪部を相手側の接続部材に押圧させることで連結を行うので、連結作業が安全で且つ比較的容易となる。この爪部の移動と、爪部の係合は、シリンダ等を駆動力とするリンク機構で行い、装置自体を小型化できる。また、爪部の移動範囲を小さくすることが可能であるので、緊急離脱時でも、緊急離脱装置の周囲の安全上からの立ち入り禁止範囲を小さくできる。
【0016】
また、爪部の開度を好ましくは30°〜90°とすることにより、離れていく接続部材が引っかかり難くなり、確実に連結を開放できるようになる。また、爪部の回動とするため、連結の開放に必要な作動時間を2秒程度にすることができる。
【0017】
上記の荷役ラインの緊急離脱装置において、記爪部を、連結の開放時に前記上部接続部材と前記下部接続部材の当接面に対して垂直な面内を回転移動させるように構成する。この構成によれば、連結の開放時に、爪部が、離脱しようとしている上部接続部材又は下部接続部材と接触したり、係合したりするのを容易に防止できる。
【0018】
また、上記の荷役ラインの緊急離脱装置において、前記爪部のすべてを、一つのアクチュエータで同時にかつ均等に駆動するように構成する。この構成によれば、一本のピストン(シリンダー)などの一つのアクチュエーターですべての爪部を駆動して回転移動させるので、制御が単純になると共に、すべての爪部の開閉度が同じとなり、離脱時の爪部の引っかかりを回避でき、安全性が増す。
【0019】
なお、配管ラインの着脱用に、第1の配管のフランジと、第2の配管のフランジの接合部分において、連結時には両方のフランジの外周側をバンドで締め付けることで、バンドの内側に両方のフランジを嵌合して第1の配管と第2の配管を接合し、緊急離脱時にはバンドを開いてバンドによる両方のフランジの外周側に対する締め付けを解除することで、第1の配管と第2の配管を分離可能するバンドタイプの緊急離脱装置がある。
【0020】
しかしながら、このバンドタイプの緊急離脱装置では、バンドが開いた際にバンドの周長分が周囲に振り回されるため、解放後のバンドが緊急離脱装置の他の部分に激突するだけではなく、周辺の機器や人間に危険が及ぶ可能性があるという問題がある。また、第1の配管と第2の配管の連結に際しての再接続作業において、バンドで締めるタイプの接続方法は作業員の負担が大きく、現実的ではないという問題や、開放されたバンドを支えるハンガー、即ち、開放されたバンドを吊るす物が必要となり、これらの設置の問題もある。
【0021】
これらの問題は、400mmφ以下のような小口径の離脱装置の場合には、危険範囲が小さく、取り扱いも容易で、ハンガー等も小さくて済むのであまり大きな問題とならないが、1000mmφ程度にもなるような大口径の緊急離脱装置の場合には、これらの問題は、緊急離脱装置の開発において大きな問題となる。
【0022】
これに対して、本発明の爪タイプの緊急離脱装置では、接合部の周囲に危険なバンドが振り回される事態が発生しないので、安全である上に、再接続作業が比較的容易になるというメリットがある。
【0023】
従来の爪タイプの接続装置では遠隔操作ではあるものの作業員が機側にて監視して作業を進めるため、取り外しの際に爪が相手側の配管のフランジに引っかかるという懸念は少なく、また、引っかかってもその場ですぐに対応することが可能であり、緊急性も低い。しかしながら、緊急離脱装置においては無人にて確実な離脱を達成する必要があるため、緊急離脱時に相手側の配管のフランジに開いた爪部が引っかかり難くすることを目的に、爪部の開度を従来の30°よりも大きい角度に変更し、また、作動時間を2秒にして、離脱が容易にできるように工夫を凝らしている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の荷役ラインの緊急離脱装置によれば、ゲート弁方式による緊急離脱装置であるため、従来技術のボール弁方式と比較して重量の軽減が可能で、また、バタフライ弁と比較して搬送路に弁体やシャフト(回転軸)等の障害物が無いため、弁体、シャフト等の開閉機構のバラ積み貨物による衝突に起因する故障を回避でき、円滑な開閉動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態における荷役ラインの緊急離脱装置の連結状態を示した側断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における荷役ラインの緊急離脱装置の分離状態を示した側断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における荷役ラインの緊急離脱装置の弁体の動きを示した水平断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における荷役ラインの緊急離脱装置のクランパーと連結状態を示した側面図である。
【図5】ゲート弁の弁座の構成を示した部分側断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における荷役ラインの緊急離脱装置のクランパーの構成を示した側断面図である。
【図7】図6のクランパーの連結を開放した状態を示した側断面図である。
【図8】第3ピストン周辺の構成を示した平面図である。
【図9】爪部の配置を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明に係る荷役ラインの緊急離脱装置の実施の形態について、貨物船と陸上荷役設備との間の天然ガスハイドレートの荷役を例にして説明する。しかし、本発明は、この天然ガスハイドレートや船舶と陸上との間の荷役に限定されず、その他の可燃性ガスを発生するバラ積み貨物の荷役に適用できる。
【0027】
図1〜図7に本願発明に係る実施の形態の荷役ラインの緊急離脱装置1を示す。
【0028】
図1及び図2に示すように、この緊急離脱装置1では、搬送路の上流側の上部構造体10と下流側の下部構造体20とで図1のCの部分から2分割可能に構成し、この両方の上部構造体10と下部構造体20をカップラー(連結部材)30で着脱可能に連結している。通常荷役中では、カップラー30により両方の上部構造体10と下部構造体20が気密状態を維持しながら連結された状態でバラ積み貨物は上部構造体10から下部構造体20に、自由落下等により搬送される。また、緊急時には、上部構造体10内の上部開閉弁14と、下部構造体20内の下部開閉弁24とが同時に閉弁し、この閉弁後にカップラー30を開放して上部構造体10と下部構造体20を開放することで、図1及び図2のCの部分から分離する。
【0029】
図1及び図2に示すように、この上部構造体10は、上部管路12の下側に上部接続管路12Aをフランジを介して接続して構成され、上部管路12の上側にフランジ11を有し、また、上部接続管路12Aの下側に上部接続フランジ(上部接続部材)13を有して構成される。また、上部管路12には、ゲート弁で構成される上部開閉弁14を配置して構成する。この上部管路12にはフランジ11を介して貨物船(又は陸上荷役装置)からの搬送用配管(搬送路)2が接続される。なお、上部管路12と上部接続管路12Aはフランジを介さずに接続して一体的に構成してもよい。
【0030】
また、下部構造体20は、下部管路22の上側に下部接続管路22Aをフランジを介して接続して構成され、下部管路22の下側にフランジ21を有し、また、下部接続管路22Aの上側に下部接続フランジ(下部接続部材)23を有して構成される。また、下部管路22には、ゲート弁で構成される下部開閉弁24を配置して構成する。この下部管路22にはフランジ21を介して陸上荷役装置(又は貨物船)からの搬送用配管(搬送路)3が接続される。なお、上部管路12と上部接続管路12Aはフランジを介さずに接続して一体的に構成してもよいが、フランジ接続とした方が、上部開閉弁14を有する部分である上部管路12と、カップラー30を設ける部分である上部接続管路12Aとが分離可能となるので、製作の面からも保守点検の面からも好ましい。
【0031】
上部開閉弁14と下部開閉弁24はバラ積み貨物と可燃性ガスを遮断する弁であり、これらの上部開閉弁14と下部開閉弁24により、上部構造体10と下部構造体20を切り離す時及び切り離した後において、外部との間の気密状態を維持して、貨物船側からも陸上設備側からも可燃性ガスが外部に漏洩することを防止する。
【0032】
本発明においては、これらの上部開閉弁14と下部開閉弁24をゲート弁で構成する。このゲート弁は、図3に示すように、第1ピストン16の先端部のジョイント部材17がトルクアームと呼ばれる回動体18に、ピンボルト等で形成されるピン18aにより係合している。また、回動体18は、弁体14aと一体的に固定され、弁体14aと共に回転軸18b周りに回動するように構成される。
【0033】
この構成により、第1ピストン16の収縮(bからa)により、回動体18は回転軸18b周りに回動して、この回動体18に連結するスライドゲートである弁体14aをB位置からA位置に移動して弁体14aを収納部10aに収納する。これにより、図3に示すような開弁状態にする。また、第1ピストン16の伸展(aからb)により回動体18を逆方向に回動して、弁体14aをA位置からB位置に移動することにより、閉弁状態にする。つまり、円形の弁体14aを、開閉機構の第1ピストン16の伸縮(bからa)により開閉する。
【0034】
なお、この弁体14aの回動は、シリンダーストロークにより回り過ぎを防止している。この弁開閉検出器18cは、更に、弁体14aが閉弁状態にあること、あるいは、開弁状態にあることを知らせる機能を有している。この弁開閉検出器18cによる閉鎖信号を受けて、カップラー30の開放操作が開始される。また、所々に、弁体14aの先端部が通過する部分をエアーパージできるように、エアー供給口10bを設け、図示しないエアー供給配管を連結できるように構成される。また、フランジ11には、搬送用配管2との接合用にボルト孔11aを設けてある。
【0035】
また、下部開閉弁24の開閉方式の一つとして、図4に示すようなものがある。この図4の方式では、上部開閉弁14用の回転軸18bと下部開閉弁24用の回転軸28bとをカプリング19で接続して、上部開閉弁14の開閉と同様に行う。また、このカプリング19により、上部開閉弁14と下部開閉弁24の開閉を同期させることができる。また、上部構造体10と下部構造体20が切り離された時には、下部開閉弁24用の回転軸28bはカプリング19から外れるように、連結時には差し込み状態で回転軸28b周りの回転方向をカプリング19に固定された状態で支持される。
【0036】
図5に示すように、弁座15には、空間部15gを設けると共に、この空間部15gの下側に傾斜部15fを設けて構成する。更に、弁体14aに当接するようにシールゴム等のシール部材15hを設ける。下部開閉弁24の弁座25も同様に構成する。
【0037】
また、この上部開閉弁14と下部開閉弁24においては、空間部15gの下側に傾斜部15fを設けているので、バラ積み貨物である粉体や粒体の固形物を荷役対象としても、ゲート弁の移動部分、即ち、開閉部分への固形物の噛み込みを防止できる。更に、必要に応じて、エアー供給口10bより、弁体14aの先端部が通過する部分にエアーを供給してエアーパージする。その上、弁体14aの上側の部位にシールゴム15hを配置しているので、可燃性ガスが発生するバラ積み貨物を扱っても、緊急離脱時の外部への可燃性ガスの漏洩を防止できる。
【0038】
このゲート弁方式の採用により、ボール弁方式と比較して重量の軽減が可能となる。また、バタフライ弁と比較して搬送路に弁体やシャフト(回転軸)等の障害物が無いため、弁体、シャフト等の開閉機構のバラ積み貨物による衝突に起因する故障を回避でき、円滑な開閉動作を実現することができる。そのため、0.5mφ〜3.0mφ等の約1.0mφ以上となるような大口径用の緊急離脱装置として使用できるようになる。更に、ボール弁、バタフライ弁でなくゲート弁とすることにより、取り扱いが容易となり、また、緊急離脱装置の搬送方向(上下方向)の厚みを薄くでき、また、重量も軽減することができる。そのため、着脱が容易で、しかも、省スペースとなる。
【0039】
次に、上部接続フランジ13と下部接続フランジ23を連結するカップラー30について説明する。なお、この説明では、カップラー30を上部構造体10側に設けたものについて説明するが、カップラー30を下部構造体20側に設けることもできる。
【0040】
図6及び図7に示すように、このカップラー30は、上部接続フランジ13の周囲に複数(例えば、図9に示すように等間隔に16個)のクランパー(爪部)31が配置されて構成される。このクランパー31は、三角形状に形成され、上部接続フランジ13と下部接続フランジ23を連結するときと、この連結を開放するときに、上部接続フランジ13側に固定されたヒンジ31a周りを回転移動するように構成される。この回転移動は、このヒンジ31aにより、上部接続フランジ13と下部接続フランジ23の当接面に対して垂直で、上部カップラー10と下部カップラー20の管軸を含む面内で行われる。
【0041】
この管軸から放射方向(半径方向)にクランパー31の先端が移動するように回動させる構成により、連結を開放するときに、クランパー31が離脱しようとしている下部接続フランジ23と接触するのを防止できる。また、フランジガイド31bをクランパー31の間に関して一つおきに設けて、連結時に上部接続フランジ13を下部接続フランジ23に当接させるときのガイドとして使用する。これらのクランパー31は、それぞれピン32を介してボールジョイント33で、スプリングユニット34に連結して構成される。このスプリングユニット34の反対側はピン35で、ベアリング外輪36に固定されている。
【0042】
ベアリング外輪36は、下部構造体20の側面に固定されたベアリング内輪37に沿って揺動可能に設けられる。このベアリング外輪36は、図8に示すように、このベアリング外輪36に固定されたシリンダーブラケット36aを、ピン38aで第2ピストン38(アクチュエーター)にピン結合され、この第2ピストン38の伸展及び収縮により揺動する。
【0043】
図8の実線で示すように、上部接続フランジ13と下部接続フランジ23とが連結している状態では、この第2ピストン38は収縮しており(c位置)、シリンダーブラケット36aは実線の位置にある。この状態では、図6に示すように、上部接続フランジ13に固定されているボールジョイント33と、ベアリング外輪36に固定されているピン35とを結ぶ線分は、上部接続フランジ13と下部接続フランジ23の当接面に略垂直の状態となって、このボールジョイント33とピン35との間の距離は短くなっている。この状態では、スプリングユニット34のバネ力により、クランパー31をピン31aの周りに押し下げている。この押し下げにより、クランパー31の先端側が、上部接続フランジ13を下部接続フランジ23に押圧している。
【0044】
また、図8の点線で示すように、緊急時で、連結を開放する時には、第2ピストン38を伸展させる(d位置)。この第2ピストン38の伸展により、シリンダーブラケット36aは点線の位置に移動する。上部接続フランジ13に固定されているクランパー31のボールジョイント33と、ベアリング外輪36に固定されているピン35とを結ぶ線分は、上部接続フランジ13と下部接続フランジ23の当接面に対して傾斜した状態となって、このボールジョイント33とピン35との間の距離が長くなる。
【0045】
これにより、スプリングユニット34は強制的に伸展させられ、クランパー31を押し上げるので、クランパー31はピン31aの周りに回動する。この回動により、クランパー31の先端側が、ピン31a周りに回動し、クランパー31の先端が下部接続フランジ23から離れ、クランパー31は下部接続フランジ23を上部接続フランジ13へ押圧する力が無くなる。この押圧力が無くなることにより、下部接続フランジ23は上部接続フランジ13から分離される。この分離は、迅速且つ確実に行うことができるように、重力、又は、図示しない分離促進用のピストンによる押圧力や、図示しないワイヤーによる引張力等により促進される。
【0046】
なお、このクランパー31の横に配置された、フランジガイド31bが、補助的ではあるが、連結を開放する際に離脱する下部接続フランジ23がクランパー31に接触したり、係合したりするのを防止する。
【0047】
また、上記のようにクランパー31のすべてを、一本の第2ピストン38で同時にかつ均等に駆動するように構成される。これにより、一本の第2ピストンですべてのクランパー31を駆動して回転移動させるので、制御が単純になると共に、すべてのクランパー31の開閉度が同じとなり、離脱時のクランパー31の引っかかりを回避でき、安全性を増すことができる。
【0048】
また、更に、クランパー31の回動に要する作動時間、即ち、第2ピストン38の進展に要する作動時間を短時間、例えば2秒にして、上部構造体10と下部構造体20の離脱を迅速かつ容易にできるようにすることが好ましい。
【0049】
これらの構成によれば、上部接続フランジ13の周囲に配置した複数(例えば、16個)のクランパー31を相手側の接続部材である下部接続フランジ23に押圧させることで連結を行う。このクランパー31の回動と、クランパー31の下部接続フランジ23との係合は、第2ピストン38を駆動力とするリンク機構で行うが、この駆動力の大きさは小さくて済むので装置自体を小型化できる。また、クランパー31の移動範囲もボールジョント33回りの小さい範囲内に収めることができるので、緊急離脱時でも、緊急離脱装置1の周囲における、安全面から設けられる立ち入り禁止範囲を小さくできる。
【0050】
このカップラー30の開放操作は、弁体14aと弁体24aが閉弁状態にあることを示す弁開閉検出器18cによる閉鎖信号を受けてから開始され、第2ピストン38の伸展によりクランパー31を開くように構成される。つまり、弁開閉検出器18cによる閉鎖信号を受けないと第2ピストン38が伸展操作を行うことができないように構成する。つまり、クランパー31の開閉にインターロック機構を設ける。
【0051】
このインターロック機構を備えることにより、上部構造体10と下部構造体20は上部開閉弁14と下部開閉弁24の2つのゲート弁が搬送路2、3を完全に閉止した後に、分離される構造となる。そのため、上部開閉弁14と下部開閉弁24の完全な閉止前に上部構造体10と下部構造体20が分離してしまうことによる可燃性ガスの外部漏洩を防止することができる。
【0052】
上記の構成の荷役ラインの緊急離脱装置1によれば、上部開閉弁14と下部開閉弁24をゲート弁方式にしているため、従来技術のボール弁方式と比較して重量の軽減が可能で、また、バタフライ弁と比較して搬送路に弁体やシャフト(回転軸)等の障害物が無いため、弁体、シャフト等の開閉機構のバラ積み貨物による衝突に起因する故障を回避でき、円滑な開閉動作を実現することができる。
【0053】
更に、連結を、カップラー30のクランパー31を相手側の接続部材である下部接続フランジ23に押圧させることで上部接続フランジ13と下部接続フランジ23との連結を行うので、緊急離脱装置1を小型化できる。
【0054】
また、クランパー31の移動範囲を小さくすることが可能であるので、緊急離脱時でも、緊急離脱装置1の周囲の安全上からの立ち入り禁止範囲を小さくできる。また、クランパー31が、連結を開放するときに上部接続フランジ13と下部接続フランジ23の当接面に対して垂直な面内を回転移動し、フランジガイド31bの内側から外に移動させるので、クランパー31が、離脱しようとしている下部接続フランジ23と接触したり、係合したりするのを容易に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の荷役ラインの緊急離脱装置は、ゲート弁方式による緊急離脱装置であるため、従来技術のボール弁方式と比較して重量の軽減が可能で、また、バタフライ弁と比較して搬送路に弁体やシャフト(回転軸)等の障害物が無いため、弁体、シャフト等の開閉機構のバラ積み貨物による衝突に起因する故障を回避でき、円滑な開閉動作を実現することができる。そのため、可燃性ガスを発生する固形バラ積み貨物の荷役中に、貨物船と連結された陸上荷役装置を安全かつ迅速に貨物船から切り離すことができる荷役ラインの緊急離脱装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 荷役ラインの緊急離脱装置
2、3 搬送用配管(搬送路)
10 上部構造体
10a 収納部
12 上部管路
12A 上部接続管路
13 上部接続フランジ(上部接続部材)
14 上部開閉弁
14a 弁体
15、25 弁座
16 第1ピストン
17 ジョイント部材
18 回動体(トルクアーム)
20 下部構造体
20a 収納部
22 下部管路
22A 下部接続管路
23 下部接続フランジ(下部接続部材)
24 下部開閉弁
30 カップラー(連結部材)
31 クランパー(爪部)
31a ヒンジ
32 ピン
33 ボールジョイント
34 スプリングユニット
36 ベアリング外輪
36a シリンダーブラケット
37 ベアリング内輪
38 第2ピストン(アクチュエーター)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスを発生する固形バラ積み貨物の荷役ラインに使用すると共に、下側に上部接続部材を有し、搬送用配管に接続する上部構造体と、前記上部接続部材に当接する下部接続部材を上側に有し搬送用配管に接続する下部構造体と、前記上部接続部材と下部接続部材とを当接した状態で連結する連結部材と、該連結部材を連結及び開放する連結及び解放機構と、前記上部構造体に設けた上部開閉弁と、前記下部構造体に設けた下部開閉弁とを備えた荷役ラインの緊急離脱装置において、前記上部開閉弁と前記下部開閉弁をゲート弁で構成したことを特徴とする荷役ラインの緊急離脱装置。
【請求項2】
可燃性ガスを発生するガスハイドレートの荷役の際に、貨物船と陸上荷役装置との間を連結する口径が0.5mφ〜3.0mφの荷役ラインに使用することを特徴とする請求項1に記載の荷役ラインの緊急離脱装置。
【請求項3】
前記連結部材を、連結時には、前記下部接続部材を前記上部接続部材に押圧する複数の爪部を、前記上部接続部材の周囲に複数個配置して構成するとともに、開放時には、前記開放機構により、前記爪部を前記下部接続部材から離れる方向に移動させて、連結を開放することを特徴とする請求項1又は2に記載の荷役ラインの緊急離脱装置。
【請求項4】
前記連結部材を、連結時には、前記上部接続部材を前記下部接続部材に押圧する複数の爪部を、前記下部接続部材の周囲に複数個配置して構成するとともに、開放時には、前記開放機構により、前記爪部を前記上部接続部材から離れる方向に移動させて、連結を開放することを特徴とする請求項1又は2に記載の荷役ラインの緊急離脱装置。
【請求項5】
前記爪部を、連結の開放時に前記上部接続部材と前記下部接続部材の当接面に対して垂直な面内を回転移動させることを特徴とする請求項3、又は4に記載の荷役ラインの緊急離脱装置。
【請求項6】
前記爪部のすべてを、一つのアクチュエーターで同時にかつ均等に駆動することを特徴とする請求項3、4又は5に記載の荷役ラインの緊急離脱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−223400(P2010−223400A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73955(P2009−73955)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(303046602)ニイガタ・ローディング・システムズ株式会社 (13)
【出願人】(508173901)東京貿易機械株式会社 (3)
【Fターム(参考)】