説明

荷重支持体と支柱体との接合構造

【課題】荷重伝達部材を介して鉄筋から伝達される荷重を環状部材の広い領域に分散して伝達して環状部材の変形を効果的に防止でき、かつ荷重伝達部材の装填作業を簡単なものにできる荷重支持体と支柱体との接合構造を提供する。
【解決手段】接合構造30は、荷重支持体12、14の内部において支柱体16の外周側に配置された環状部材32、34と、支柱体16に交差する複数本の鉄筋のうちの少なくとも一本の交差主鉄筋20に設けられ、環状部材32、34と支柱体16の外周面との間に位置する定着端部と、環状部材32、34と定着端部との間に配置された荷重伝達部材44とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架橋等の建造物における梁、床等を構成した鉄筋コンクリート造の荷重支持体を支柱体に接合する荷重支持体と支柱体との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の建造物に適用される荷重支持体と支柱体との接合構造としては、例えば、特許文献1及び特許文献2にそれぞれ記載されたものが知られている。特許文献1には、鋼管柱と鉄筋コンクリートからなるフラットスラブの接合構造が記載されており、この接合構造では、鋼管柱におけるスラブ下面位置及びスラブ上面位置の2ヶ所にそれぞれ鋼管柱を取り巻くように支圧板が接合されており、これらの支圧板が水平方向の外力に起因する曲げモーメントを伝達できる程度に、それぞれスラブ側に張り出している。また特許文献1記載の接合構造では、スラブの鉄筋における鋼管柱近傍に配置されたものの先端部がフック状(J字状)に折り曲げられると共に、1個のリング状部材が鋼管柱を取り巻くように配置され、フック状に折り曲げられた鉄筋の先端部がリング状部材を引っ掛けるように配置されている。
【0003】
また特許文献2には、鉄筋コンクリート造の梁と杭との接合構造が記載されており、この接合構造は、鋼管杭の周囲に遊嵌されている上下一対の定着リングと、これら一対の定着リングの間に挟まれる断面T字状の定着板とを備え、一対の環状部材の間から外周側へ突出した定着板の端部には主鉄筋が溶接により固着されており、これらがコンクリートにより一体化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−160685号公報(図10及び図11、段落[0029]〜[0031])
【特許文献2】特開2001−342684号公報(図2、段落[0023]〜[0027])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の接合構造では、主鉄筋におけるJ字状に折り曲げられた先端部を1個のリング状部材に引っ掛けるように配置し、主鉄筋からの荷重をリング状部材に伝達し、このリング状部材を介して荷重を鋼管柱及び他の主鉄筋に伝達する。しかし、このような構造を採った場合には、主鉄筋からの荷重がリング状部材における狭い領域に集中し、過大な荷重がフラットスラブを含む建造物に作用した場合には、スラブ内でリング状部材に局部的な変形が生じるおそれがある。
【0006】
また特許文献2記載の接合構造では、主鉄筋の先端部を一対の定着リングの間に挟まれた定着板の端部に建設現場で溶接しなければならないため、その作業が非常に煩瑣なものになる。
本発明の目的は、上記事実を考慮して、荷重伝達部材を介して鉄筋から伝達される荷重を環状部材の広い領域に分散して伝達して環状部材の変形を効果的に防止でき、かつ荷重伝達部材の装填作業を簡単なものにできる荷重支持体と支柱体との接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造は、複数本の鉄筋を備えた鉄筋コンクリート造の荷重支持体と、外周部が鋼管により形成され、前記荷重支持体の内部に軸線方向に沿った一部が埋設される支柱体との接合構造であって、前記荷重支持体の内部において前記支柱体の外周側に配置された環状部材と、前記支柱体に交差する方向に配置された前記複数本の鉄筋のうちの少なくとも一本に設けられ、前記環状部材と前記支柱体の外周面との間に位置する定着端部と、前記環状部材と前記定着端部との間に配置された荷重伝達部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
このような荷重支持体と支柱体との接合構造では、荷重伝達部材が、荷重支持体の内部において支柱体の外周側に配置された環状部材と、支柱体に交差する方向に配置された複数本の鉄筋のうちの少なくとも一本に設けられ、環状部材と支柱体の外周面との間に位置する定着端部との間に配置されることにより、鉄筋からの荷重(圧縮荷重又は引張荷重)を、定着端部と環状部材との間に介在するコンクリート層及び荷重伝達部材を介して環状部材に伝達できると共に、環状部材を介して支柱体に伝達できる。
【0009】
このとき、鉄筋から伝達される荷重の伝達方向に沿った荷重伝達部材の環状部材に対する投影面積を、鉄筋の環状部材に対する投影面積よりも大きくすれば、このような荷重伝達部材を用いないで、鉄筋を環状部材に接合した場合と比較し、鉄筋からの荷重をコンクリート層及び荷重伝達部材を介して環状部材の広い領域に均等に分散して伝達できるので、鉄筋からの伝達荷重により環状部材が局部的に変形することを効果的に防止できる。
従って、鉄筋からの伝達荷重により環状部材が局部的に変形することを効果的に防止できるので、環状部材の変形に伴って鉄筋から支柱体に伝達される荷重の伝達効率が低下することを効果的に防止できる。
【0010】
また、コンクリート成形物を形成するコンクリートの打設前又は打設途中に、荷重伝達部材を環状部材と定着端部との間に配置するだけで、荷重伝達部材を装填できるので、鉄筋と環状部材との間で荷重を伝達する荷重伝達部材の装填作業を極めて簡単なものにできる。
また、本発明の第2の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造は、第1の態様の荷重支持体と支柱体との接合構造において、前記定着端部が鉤状の連結フック部または鍔状のヘッド部であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の第3の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造は、第1の態様又は第2の態様の荷重支持体と支柱体との接合構造において、前記環状部材は前記支柱体の外周側に少なくとも2個配置され、これらのうちの一対の環状部材が前記定着端部を設けた鉄筋を挟み込むように配置されていることが好ましい。
このような荷重支持体と支柱体との接合構造では、荷重伝達部材が、一対の環状部材の間に挟み込まれた鉄筋に連結されて、定着端部と一対の環状部材との間に介装されることにより、鉄筋からの荷重(圧縮荷重又は引張荷重)を、定着端部と一対の環状部材との間に介在するコンクリート層及び荷重伝達部材を介して一対の環状部材に略均等に分散して伝達できると共に、一対の環状部材を介して支柱体に伝達できる。
【0012】
このとき、鉄筋から伝達される荷重の伝達方向に沿った荷重伝達部材の一対の環状部材に対する投影面積を、鉄筋の一対の環状部材に対する投影面積よりも大きくすれば、このような荷重伝達部材を用いないで、鉄筋を環状部材に接合した場合と比較し、鉄筋からの荷重をコンクリート層及び荷重伝達部材を介して一対の環状部材の広い領域に均等に分散して伝達できるので、鉄筋からの伝達荷重により環状部材が局部的に変形することを効果的に防止できる。
【0013】
また、本発明の第4の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造は、第1の態様乃至第3の態様のうちいずれか1の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造において、前記環状部材は、鋼材により環状に形成されたベースリング部であり、該ベースリング部の内周面及び外周面の少なくとも一方にはリブ状のダイヤフラム部が接合されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の第5の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造は、第4の態様の荷重支持体と支柱体との接合構造において、前記定着端部は鉤状の連結フック部であり、前記ダイヤフラム部は前記ベースリング部の内周面に接合されたものであって、前記ダイヤフラム部における前記連結フック部に対応する部位に、前記軸線方向へ貫通する挿通穴が穿設され、前記荷重伝達部材は、前記連結フック部の内側であって、前記ベースリング部の内周側を挿通すると共に、前記ダイヤフラム部における前記挿通穴をそれぞれ挿通するように配置されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の第6の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造は、第2の態様乃至第5の態様のうちいずれか1の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造において、前記定着端部は鉤状の連結フック部であり、前記荷重伝達部材は、U字状に湾曲した形状に形成されると共に、前記環状部材を上側から跨ぐように配置されていることが好ましい。
また、本発明の第7の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造は、第2の態様乃至第5の態様のうちいずれか1の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造において、前記定着端部は鍔状のヘッド部であり、前記荷重伝達部材は、その断面形状がU字状またはC字状に形成されると共に、前記鉄筋の外周側に嵌挿されて前記鉄筋に連結されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明の第8の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造は、第1の態様乃至第7の態様のうちいずれか1の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造において、前記環状部材の内周側に棒状の補強鋼材が複数本配置され、前記補強鋼材の各々は、その両端部が前記環状部材の内周面に当接するように配置されていることが好ましい。
また、本発明の第9の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造は、第2の態様乃至第8の態様のうちいずれか1の態様に係る荷重支持体と支柱体との接合構造において、前記定着端部は前記複数本の鉄筋のうちの少なくとも二本に設けられた鉤状の連結フック部であり、前記環状部材が、前記荷重支持体の内部における前記支柱体の軸線方向に沿って異なる位置にそれぞれ配置された、前記定着端部を設けた一対の前記鉄筋の間に挟み込まれ、前記荷重伝達部材は、前記一対の鉄筋のうち一方の鉄筋における前記連結フック部の内側、前記環状部材の内周側及び、前記一対の鉄筋のうち他方の鉄筋における前記連結フック部の内側をそれぞれ挿通するように配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る荷重支持体と支柱体との接合構造によれば、荷重伝達部材を介して鉄筋から伝達される荷重を環状部材の広い領域に分散して環状部材の変形を効果的に防止でき、かつ荷重伝達部材の装填作業を簡単なものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る接合構造が適用されたラーメン高架橋の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る接合構造の平面図及び断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る接合構造におけるジョイントリングの平面図及び側面断面図である。
【図4】図1に示されるラーメン高架橋における交差主鉄筋と鋼管柱の接合部分の構造を示す平面図及び断面図である。
【図5】図1に示されるラーメン高架橋における橋幅方向に沿った側端部付近の内部構造を示す平面図及び断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る高架梁に橋幅方向に沿った水平荷重が作用した場合にラーメン高架橋に作用するモーメント分布を示し曲げモーメント図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る接合構造が適用されるラーメン高架橋の建造方法を説明するための鋼管柱及び接合構造付近の平面図及び側面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る接合構造が適用されるラーメン高架橋の建造方法を説明するための鋼管柱及び接合構造付近の平面図及び側面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る接合構造が適用されるラーメン高架橋の建造方法を説明するための鋼管柱及び接合構造付近の平面図及び側面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る接合構造が適用されるラーメン高架橋の建造方法を説明するための鋼管柱及び接合構造付近の平面図及び側面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る荷重伝達ロッドの変形例を接合構造に用いた場合の構成を示す平面図及び断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る接合構造に用いられるジョイントリングの変形例の構成を示す平面図及び断面図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る接合構造に用いられるジョイントリングの変形例の構成を示す平面図及び断面図である。
【図14】(A)及び(B)は本発明の第2の実施形態に係る接合構造の平面図、断面図及び斜視図、(C)は交差主鉄筋及び荷重伝達スペーサの分解斜視図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る接合構造に用いられるジョイントリングの変形例の構成を示す平面図及び断面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る接合構造の斜視図及び断面図である。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る接合構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るラーメン高架橋及び、このラーメン高架橋に適用される荷重支持体と支柱体との接合構造について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
(ラーメン高架橋及び接合構造の構成)
図1には、本発明の第1の実施形態に係る接合構造が適用されたラーメン高架橋の構成が示されている。なお、図1にて、矢印WBは高架橋の橋幅方向、矢印HBは高架橋の高さ方向をそれぞれ示している。
ラーメン高架橋10は、地表面Gに対して上方に支持された荷重支持体である高架梁12、地表面Gに対して下方(地中)に埋設された荷重支持体である地中梁14及び、高架梁12と地中梁14とを連結した支柱体である複数本の鋼管柱16をそれぞれ備えている。
【0020】
高架梁12は、肉厚プレート状乃至角柱状に形成されたコンクリート成形物18、コンクリート成形物18の内部における下面側に埋設された複数本の下側主鉄筋21及び、コンクリート成形物18内部における上面側に埋設された複数本の上側主鉄筋22を備えている。コンクリート成形物18は、平面視にて橋軸方向(図2(A)の矢印SB方向)に沿って細長い略長方形又は略正方形に形成されており、橋軸直角方向に沿った断面が幅方向に沿って細長い矩形状に形成されている。
【0021】
高架梁12内の下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22には、橋幅方向に沿って延在するもの(図1参照)及び、これに直交する橋軸方向に沿って延在するもの(図示省略)があり、これらが2次元又は3次元(本実施形態では2次元)の格子状に組み合わされて下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22は構成されている。
【0022】
また地中梁14も、肉厚板状に形成されたコンクリート成形物18を備えると共に、このコンクリート成形物18に埋設された複数本の下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22を備えている。地中梁14内の下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22も、高架梁12内の下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22と同様に、橋幅方向及び橋軸方向に沿って延在するものが、2次元又は3次元(本実施形態では2次元状)の格子状に組み合わされて構成されている。下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22が請求項1に規定する「鉄筋」を構成する。
【0023】
鋼管柱16は、その外周部が断面円形の鋼管24により形成されており、この鋼管24の内部にコンクリート26が充填されて構成されている。なお、鋼管柱16に要求される曲げ剛性あるいは強度に応じて、鋼管24内のコンクリート26を省略することも可能である。鋼管柱16は、その中心軸CPが高さ方向と実質的に一致しており、その下端側が地中梁14を貫通して、下端面を下方(地中内)へ突出させている。また鋼管柱16は、その上端側が高架梁12の内部に埋設されており、上端面が上側主鉄筋22の直下に位置している。
【0024】
地中梁14内の下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22には、鋼管柱16の外周側から鋼管柱16の外周面17へ向かって延出し、その延長線が外周面17と交差するものと、延長線が外周面17とは交差しないものとが存在する。なお、図1には、延長線が外周面17と交差する地中梁14内の下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22のみが示されている。高架梁12内の下側主鉄筋21にも、鋼管柱16の外周側から鋼管柱16の外周面17へ向って延出し、その延長線が外周面17と交差するものと、延長線が外周面17とは交差しないものとが存在する。
【0025】
なお、図1には、延長線が外周面17と交差する高架梁12内の下側主鉄筋21のみが示されている。また上側主鉄筋22は、鋼管柱16の上方に位置しているので鋼管柱16とは交差しない。
上述したように、鋼管柱16と交差する下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22(以下、これらを包括して「交差主鉄筋20」と言う。)には、図2(A)に示されるように、その先端部にU字状に湾曲して鋼管柱16の外周側へ折り返された定着端部としての鉤状の連結フック部28が形成されている。
【0026】
交差主鉄筋20のうち、鋼管柱16を挟んで橋幅方向の一方の側にある複数本(本実施形態では、2本)の交差主鉄筋20は、それぞれの連結フック部28の先端が橋幅方向に沿って互いに同一位置にあり、また鋼管柱16を挟んで橋幅方向の他方の側にある複数本(本実施形態では、2本)の交差主鉄筋20も、連結フック部28の先端が橋幅方向に沿って互いに同一位置にある。
【0027】
同様に、交差主鉄筋20のうち、鋼管柱16を挟んで橋軸方向の一方の側にある複数本(本実施形態では、2本)の交差主鉄筋20は、連結フック部28の先端が橋軸方向に沿って互いに同一位置にあり、鋼管柱16を挟んで橋軸方向の他方の側にある複数本(本実施形態では、2本)の交差主鉄筋20も、連結フック部28の先端が橋軸方向に沿って互いに同一位置にある。これらの交差主鉄筋20は、連結フック部28の先端を鋼管柱16の外周面17から離間させており、鋼管柱16の中心軸CPからの各連結フック部28の先端までの距離は略一定のものになっている。
【0028】
本実施形態に係るラーメン高架橋10では、図1に示されるように、交差主鉄筋20の先端側が接合構造30により鋼管柱16に接合される。ここで、接合とは、ラーメン高架橋10に外力又は内部応力が作用し、任意の交差主鉄筋20に荷重が伝達された場合に、この交差主鉄筋20に伝達された荷重が交差主鉄筋20から鋼管柱16へ伝達可能になり、かつ鋼管柱16を介して他の交差主鉄筋20にも伝達可能となるように、交差主鉄筋20と鋼管柱16とを機械的に連結することを言うものとする。
【0029】
図1に示されるように、接合構造30は、高さ方向に沿って交差主鉄筋20の上側及び下側にそれぞれ配置される一対のジョイントリング32、34を備えている。環状部材であるジョイントリング32とジョイントリング34とは基本的に同一形状とされており、図3(A)及び(B)に示されるように、平面視にて略正方形のリング状に形成されている。ジョイントリング32、34には、その外周側に鋼棒が環状に成形されたベースリング部36が設けられると共に、このベースリング部36の内周面に全周に亘って溶接等により接合されたリブ状のダイヤフラム部38が設けられている。ベースリング部36には、橋軸方向及び橋幅方向に沿ってそれぞれ直線状に延在する4個の辺部36A〜36Dが形成されている。
【0030】
ここで、ベースリング部36は、内周面へのダイヤフラム部38の接合作業が容易であることから、断面が矩形状の鋼棒により形成されているが、円形等の他の断面形状としても良い。またベースリング部36を内部が中空の鋼管により形成しても良く、その場合の断面形状も矩形を含む任意の形状とすることができる。
ダイヤフラム部38は厚さ一定の鋼板を素材として成形されており、その外周端部がベースリング部36の内周面における厚さ方向の中央部に接合されている。ダイヤフラム部38には、中央側に円形開口40が穿設されており、この円形開口40の内径は、鋼管柱16の外径よりも若干大きくなっている。ここで、円形開口40の中心は、ベースリング部36の橋幅方向及び橋軸方向に沿った断面(水平断面)内における幾何学的な中心点(重心)と一致している。
【0031】
図1に示されるように、一対のジョイントリング32、34は荷重支持体である高架梁12及び地中梁14の内部において鋼管柱16の外周側に嵌挿(配置)され、コンクリート成形物18の内部に鋼管柱16の一部と共に埋設される。具体的には、地中梁14の内部には、1本の鋼管柱16に対して一対のジョイントリング32、34が2組配置され、高架梁12の内部には、1本の鋼管柱16に対して一対のジョイントリング32、34が1組のみ配置される。
【0032】
地中梁14内に配置される2組のジョイントリング32、34のうち、1組のジョイントリング32、34は、高さ方向に沿って下側主鉄筋21に対応する位置に配置され、残りの1組のジョイントリング32、34は、高さ方向に沿って上側主鉄筋22に対応する位置に配置される。このとき、図1に示されるように、地中梁14内の下面側に配置された一対のジョイントリング32、34は、それらのベースリング部36間に下側主鉄筋21(交差主鉄筋20)の先端側を挟持する。また地中梁14内の上面側に配置された一対のジョイントリング32、34は、それらのベースリング部36間に上側主鉄筋22(交差主鉄筋20)の先端側を挟持する。
【0033】
一方、高架梁12内に配置される一対のジョイントリング32、34は、高さ方向に沿って下側主鉄筋21に対応する位置に配置され、それらのベースリング部36間に下側主鉄筋21(交差主鉄筋20)の先端側を挟持する。一対のジョイントリング32、34は、鋼管柱16の外周側へ嵌挿されると共に、ベースリング部36間に交差主鉄筋20を挟持するように配置されることにより、鋼管柱16及び交差主鉄筋20に対する装填が完了する。
【0034】
地中梁14及び高架梁12内に埋設され一対のジョイントリング32、34には、一対のベースリング部36間に交差主鉄筋20の外径に対応する幅の隙間が形成される。また一対のジョイントリング32、34は、ベースリング部36間に交差主鉄筋20を直接又は薄いコンクリート層を介して挟持することにより、高さ方向(鋼管柱16の軸線方向)に対して傾きが生じないように支持される。このとき、各ジョイントリング32、34は、円形開口40の中心が鋼管柱16の中心軸CPと略一致するように位置決めされる。これにより、ダイヤフラム部38の内周端と鋼管柱16の外周面17との間には幅が略一定となった隙間が全周に亘って形成される。
【0035】
なお、図4に示されるように、本実施形態に係る一対のジョイントリング32、34は、その各辺部36A〜36D間にそれぞれ2本ずつの交差主鉄筋20を挟持する。但し、各辺部36A〜36D間に挟持する交差主鉄筋20の本数は2本に限定されるものではなく、この本数は鋼管柱16の直径、コンクリート成形物18内に埋設された下側主鉄筋21又は上側主鉄筋22の密度(ピッチ)等に応じて増減する。
【0036】
図5(A)及び(B)には、高架梁12における橋幅方向に沿った側端部付近の内部構造が示されている。図5(A)に示されるように、高架梁12における橋幅方向に沿った端部付近では、上側主鉄筋22に下方へ向って湾曲した曲げ部42が形成されると共に、この曲げ部42に対して先端側の部分がコンクリート成形物18の側端面に沿って下側主鉄筋21の下側まで延出している。これにより、コンクリート成形物18内での上側主鉄筋22に対する拘束力が増大し、外部荷重等により上側主鉄筋22が長手方向に沿って滑り移動することが阻止される。
【0037】
図4に示されるように、接合構造30は各交差主鉄筋20にそれぞれ装填される複数本の荷重伝達部材としての荷重伝達ロッド44を備えている。ここで、荷重伝達ロッド44は、直棒状の鉄鋼材料により形成されており、例えば、表面にリブ、節等の突起が形成された鉄筋材を所定の長さに切り揃えることにより形成される。また荷重伝達ロッド44の長さは、交差主鉄筋20を挟持したジョイントリング32の下端面とジョイントリング34の上端面との間隔よりも長くなっている。
【0038】
図2(A)に示されるように、接合構造30では、1本の交差主鉄筋20に対して2本で1組とされた荷重伝達ロッド44が装填される。1組の荷重伝達ロッド44は、一対のジョイントリング32、34の間に挟み込まれた交差主鉄筋20の連結フック部28の内側であって、一対のベースリング部36の内周側に位置するように配置される。即ち、1組の荷重伝達ロッド44は、環状部材としてのジョイントリング32、34と定着端部としての連結フック部28との間に配置される。このとき、荷重伝達ロッド44は、その長手方向が鋼管柱16の軸線方向と略一致するような直立状態とされる。また1組のうち1本の荷重伝達ロッド44は、交差主鉄筋20の幅方向(矢印WR方向)に沿って連結フック部28内における一端側に位置し、また残りの1本の荷重伝達ロッド44は、交差主鉄筋20の幅方向に沿って連結フック部28内における他端側に位置する。また2本の荷重伝達ロッド44は、交差主鉄筋20の長手方向と一致する鉄筋軸方向(図2(A)の矢印LR方向)に沿って連結フック部28内で略同一位置に位置する。
【0039】
一対のダイヤフラム部38には、それぞれ各連結フック部28の内側に面するように挿通穴46が穿設されている。この挿通穴46は、1本の連結フック部28について2個(1組)ずつ設けられており、これら1組2個の挿通穴46の幅方向WR及び長手方向LRに沿った位置は、連結フック部28内における1組2本の荷重伝達ロッド44が配置される位置と実質的に一致している。
【0040】
交差主鉄筋20に装填される荷重伝達ロッド44は、上側のダイヤフラム部38に穿設された挿通穴46、連結フック部28の内側及び、下側のダイヤフラム部38に穿設された挿通穴46をそれぞれ鋼管柱16の軸線方向に沿って挿通した状態とされる。このとき、荷重伝達ロッド44が一対のダイヤフラム部38にそれぞれ穿設された挿通穴46を挿通することにより、荷重伝達ロッド44を連結フック部28に対する所定の装填位置に確実に位置決めできると共に、荷重伝達ロッド44が軸線方向に対して傾くことも制限できる。
【0041】
接合構造30では、一対のジョイントリング32、34、一対のジョイントリング32、34間に挟持された交差主鉄筋20及び荷重伝達ロッド44がそれぞれ鋼管柱16の外周側に配置され、この鋼管柱16と共にコンクリート成形物18の内部に埋設される。これにより、交差主鉄筋20が接合構造30により鋼管柱16に接合されるので、任意の交差主鉄筋20に外部から荷重が伝達され、又は内部応力が作用した場合に、この交差主鉄筋20に伝達された荷重(圧縮荷重又は引張荷重)の一部が荷重伝達ロッド44、一対のジョイントリング32、34及び、これらの間に介在するコンクリート層48(図4(B)参照)を介して鋼管柱16に伝達される。このとき、交差主鉄筋20から伝達される荷重の伝達方向(=鉄筋軸方向)に沿った2本の荷重伝達ロッド44の一対のジョイントリング32、34に対する投影面積の和は、1本の交差主鉄筋20の一対のジョイントリング32、34に対する投影面積よりも大きくなっている。
【0042】
また、鋼管柱16へ荷重を伝達した交差主鉄筋20が高架梁12に配置されている場合には、交差主鉄筋20から鋼管柱16に伝達される荷重は、この鋼管柱16を介して地中梁14における鋼管柱16周辺の複数本の交差主鉄筋20に伝達される。これとは逆に、鋼管柱16へ荷重を伝達した交差主鉄筋20が地中梁14に配置されている場合には、交差主鉄筋20から鋼管柱16に伝達される荷重は、この鋼管柱16を介して高架梁12における鋼管柱16周辺の複数本の交差主鉄筋20に伝達される。また交差主鉄筋20から一対のジョイントリング32、34に伝達された荷重の一部は、ジョイントリング32、34を介して反対側に位置する複数本の交差主鉄筋20にも伝達される。
【0043】
次に、図5及び図6を参照しつつ、高架梁12に水平荷重(この場合には、橋幅方向に沿った荷重)Fが作用した場合に、ラーメン高架橋10に生じる内部荷重及び曲げモーメントについて説明する。
図6には高架梁12に橋幅方向に沿った水平荷重Fが作用した場合に、ラーメン高架橋10に作用する曲げモーメント分布が示されている。ラーメン高架橋10に図6に示される曲げモーメントが作用すると、高架梁12には橋幅方向に沿った曲げ変形が発生する。この曲げ変形に伴って、高架梁12には、中立面NFを介して下側の領域には橋幅方向に沿った引張力が発生し、中立面NFを介して上側の領域には橋幅方向に沿った圧縮力が発生する。
【0044】
この結果、図5に示されるように、下側主鉄筋21には、コンクリート成形物18を介して鉄筋軸方向(橋幅方向)に沿った引張力R1が伝達され、上側主鉄筋22には、コンクリート成形物18を介して鉄筋軸方向(橋幅方向)に沿った圧縮力R2が伝達される。このとき、上側主鉄筋22の圧縮力R2はコンクリート成形物18の圧縮抵抗により支持され、コンクリート成形物18を介して鋼管柱16にコンクリート支圧力CUとして伝達される。このコンクリート支圧力CUは、その大きさが鋼管柱16の軸線方向に沿って上側主鉄筋22から中立面NFへ向って徐々に減少するものになる。
【0045】
一方、下側主鉄筋21の引張力R1は、荷重伝達ロッド44を介し、支圧力C1として上下一対のジョイントリング32、34に略均等に分散されて伝達される。この支圧力C1は、下側主鉄筋21の反対側で一対のジョイントリング32、34により支圧力C2に変換され、コンクリート層48を介してコンクリート支圧力CLとして鋼管柱16に伝達される。このコンクリート支圧力CLは、その大きさが中立面NFから高架梁12の下端面へ向って徐々に増大するものになる。
【0046】
(ラーメン高架橋の建造方法)
次に、図7〜図9を参照しつつ、本実施形態に係る接合構造30が適用されるラーメン高架橋10の建造方法について説明する。接合構造30により交差主鉄筋20を鋼管柱16に接合する際には、先ず、図7に示されるように、鋼管柱16外周側における交差主鉄筋20(図7では、下側主鉄筋21)に対応する部位にジョイントリング34を嵌挿し、ジョイントリング34の中心が鋼管柱16の中心軸CPと一致するように位置決めした後、このジョイントリング34を鋼管柱16に対して仮止めする。このとき。ジョイントリング34は、例えば、ブラケット等を介して鋼管柱16の周囲に組立てられた作業用の足場により連結されることにより、鋼管柱16に対して固定される。
【0047】
次いで、図8に示されるように、地表面Gから所定の高さとなる水平面に沿って複数本の鉄筋材を橋幅方向及び橋軸方向に沿ってそれぞれ延在するように配置し、これらの鉄筋材により下側主鉄筋21を二次元の格子状に組立てる。これらの下側主鉄筋21のうち、鋼管柱16の外周側から外周面付近まで延出する交差主鉄筋20については、図8(B)に示されるように、先端部にU字状の連結フック部28が形成されたものが用いられる。これらの交差主鉄筋20の先端側は、ジョイントリング34上に載置されることにより、下方へ撓まないようにジョイントリング34により支持される。
【0048】
下側主鉄筋21の組立完了後には、図9に示されるように、鋼管柱16の外周側に上端側から上側のジョイントリング32を嵌挿し、このジョイントリング32を交差主鉄筋20上に載置すると共に、ジョイントリング32の中心が鋼管柱16の中心軸CPと一致するように橋幅方向及び橋軸方向に沿って位置決めする。この状態で、図10に示されるように、荷重伝達ロッド44を上方からジョイントリング32の挿通穴46、連結フック部28の内側及び、ジョイントリング34の挿通穴46にそれぞれ挿通させ、荷重伝達ロッド44を交差主鉄筋20の連結フック部28に装填する。
【0049】
荷重伝達ロッド44は、ジョイントリング32、34及び連結フック部28から脱落しないように、例えば、仮止め用のクリップ等によりジョイントリング32のダイヤフラム部38に仮止めされる。なお、荷重伝達ロッド44に外周面に鍔状部材を溶接、圧延等により予め固定しておき、この鍔状部材をジョイントリング32のダイヤフラム部38へ当接させることにより、荷重伝達ロッド44の脱落を防止するようにしても良い。
荷重伝達ロッド44を全ての交差主鉄筋20へ装填した後、図10に示されるように、地表面Gから所定の高さとなる水平面に沿って複数本の鉄筋材を橋幅方向及び橋軸方向に沿ってそれぞれ延在するように配置し、これらの鉄筋材により上側主鉄筋22を二次元の格子状に組立てる。
【0050】
最後に、鋼管柱16、下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22を囲むように、上面側が開口した筐体状のコンクリート枠(図示省略)を設置し、このコンクリート枠内に未硬化のコンクリート材料を流し込み、このコンクリート材料を硬化させてコンクリート成形物18を成形することにより、高架梁12の建造が完了する。なお、コンクリート枠は解体され、例えば、他の高架梁12の建造に用いられる。また、地中梁14についても、高架梁12と基本的に同じ建造方法により建造されることから、その建造方法についての説明を省略する。
【0051】
(接合構造の作用)
次に、本実施形態に係る接合構造30の作用について説明する。本実施形態に係る接合構造30では、荷重伝達部材としての荷重伝達ロッド44が、荷重支持体としての地中梁14及び高架梁12の内部において支柱体である鋼管柱16の外周側に配置された環状部材としてのジョイントリング32、34と、鋼管柱16に交差する交差主鉄筋20に設けられ、ジョイントリング32、34と鋼管柱16の外周面との間に位置する定着端部としての連結フック部28との間に配置されることにより、交差主鉄筋20からの荷重(圧縮荷重又は引張荷重)を、連結フック部28とジョイントリング32、34との間に介在するコンクリート層48及び荷重伝達ロッド44を介してジョイントリング32、34に伝達できると共に、ジョイントリング32、34を介して鋼管柱16に伝達できる。
【0052】
このとき、公差主鉄筋20から伝達される荷重の伝達方向に沿った荷重伝達ロッド44のジョイントリング32、34に対する投影面積の和が、1本の公差主鉄筋20のジョイントリング32、34に対する投影面積よりも大きくなっているので、このような荷重伝達ロッド44を用いないで、公差主鉄筋20をジョイントリング32、34に接合した場合と比較し、公差主鉄筋20からの荷重をコンクリート層48及び荷重伝達ロッド44を介してジョイントリング32、34の広い領域に均等に分散して伝達できるので、公差主鉄筋20からの伝達荷重によりジョイントリング32、34が局部的に変形することを効果的に防止できる。
【0053】
すなわち、直棒状の荷重伝達ロッド44が一対のジョイントリング32、34間に挟み込まれた交差主鉄筋20の連結フック部28の内側であって、一対のベースリング部36の内周側を挿通するように配置されることにより、交差主鉄筋20からの荷重(圧縮荷重又は引張荷重)を、コンクリート層48及び荷重伝達ロッド44を介して一対のジョイントリング32、34に略均等に分散して伝達できると共に、一対のジョイントリング32、34を介して鋼管柱16に伝達できる。
【0054】
このとき、交差主鉄筋20から伝達される荷重の伝達方向に沿った荷重伝達ロッド44の一対のジョイントリング32、34に対する投影面積の和が、1本の交差主鉄筋20の一対のジョイントリング32、34に対する投影面積よりも大きくなっていることから、このような荷重伝達ロッド44を用いないで、交差主鉄筋20をジョイントリングに直接接合して比較し、交差主鉄筋20からの荷重をコンクリート層48及び荷重伝達ロッド44を介して一対のジョイントリング32、34の広い領域に均等に分散して伝達できるので、交差主鉄筋20からの伝達荷重により一対のジョイントリング32、34が局部的に変形することを効果的に防止できる。
【0055】
この結果、本実施形態に係る接合構造30によれば、交差主鉄筋20からの伝達荷重により一対のジョイントリング32、34が局部的に変形することを効果的に防止できるので、ジョイントリング32、34の変形に伴って交差主鉄筋20から鋼管柱16に伝達される荷重の伝達効率が低下することも効果的に防止できる。
また接合構造30では、コンクリート成形物を形成するコンクリートの打設前又は打設途中に、荷重伝達部材としての荷重伝達ロッド44を環状部材としてのジョイントリング32、34と定着端部としての連結フック部28との間に配置するだけで、荷重伝達ロッド44を装填できるので、公差主鉄筋20とジョイントリング32、34との間で荷重を伝達する荷重伝達ロッド44の装填作業を極めて簡単なものにできる。
【0056】
すなわち、コンクリートの打設前に、荷重伝達ロッド44を交差主鉄筋20の連結フック部28の内側であって、一対のベースリング部36の内周側を挿通するように配置するだけで、荷重伝達ロッド44を交差主鉄筋20の連結フック部28に装填できるので、交差主鉄筋20と一対のジョイントリング32、34との間で荷重を伝達する荷重伝達ロッド44の装填作業を極めて簡単なものにできる。
【0057】
また本実施形態に係る接合構造30では、ジョイントリング32、34が、鋼材により環状に形成されたベースリング部36の内周面に全周に亘ってリブ状のダイヤフラム部38が接合されて構成されていることにより、ベースリング部36のみで構成されている場合と比較し、交差主鉄筋20から伝達される荷重に対するジョイントリング32、34の曲げ剛性を大幅に高めることができるので、交差主鉄筋20からの伝達荷重により一対のジョイントリング32、34が局部的に変形することを更に効果的に防止できるようになる。
【0058】
(荷重伝達ロッドの変形例)
次に、本実施形態に係る接合構造30に用いられる荷重伝達ロッド50の変形例について説明する。図11には、荷重伝達ロッドの変形例を本実施形態に係る接合構造に用いた場合の構成が示されている。この荷重伝達ロッド50は、図11(B)に示されるように、鉄筋材がU字状に湾曲されて形成されている。荷重伝達ロッド50には、その長手方向に沿った一端側に直線状の直棒部52が形成されると共に、他端側にも直線状の直棒部54が形成され、これらの直棒部52、54の間に円弧状に湾曲した湾曲部56が形成されている。
【0059】
接合構造30では、荷重伝達ロッド50が一対のジョイントリング32、34におけるベースリング部36を上方から跨ぐように配置されている。このとき、一端側の直棒部52はジョイントリング32の挿通穴46、連結フック部28の内側及び、ジョイントリング34の挿通穴46をそれぞれ挿通するように配置され、他端側の直棒部52は一対のジョイントリング32、34の外周側に配置される。また直棒部52が上下一対のジョイントリング34の挿通穴46をそれぞれ挿通することにより、直棒部52、54は、その長手方向が鋼管柱16の軸線方向と略一致するように、一対のジョイントリング32、34により支持される。
【0060】
以上説明した荷重伝達ロッド50が用いられた接合構造30では、荷重伝達ロッド50の直棒部52をジョイントリング32の挿通穴46、連結フック部28の内側及び、ジョイントリング34の挿通穴46にそれぞれ挿通させると共に、直棒部54を一対のジョイントリング32、34の外周側に差し込むだけで、荷重伝達ロッド50が一対のジョイントリング32、34により下方から支持された状態になることから、仮止め用のクリップを用いたり、又は荷重伝達ロッド50に鍔状部材を固定しなくても、荷重伝達ロッド50が交差主鉄筋20及び一対のジョイントリング32、34から脱落することを確実に防止できるので、荷重伝達ロッド50の交差主鉄筋20に対する装填作業を簡略化できる。
【0061】
(ジョイントリングの変形例)
次に、本実施形態に係る接合構造30に用いられるジョイントリングの変形例について説明する。図12及び図13には、それぞれ本実施形態に係る接合構造30におけるジョイントリングの変形例が示されている。
図12に示されるジョイントリング60は平面視にて円環状に形成されており、略矩形状の断面を有する鋼材により形成されたベースリング部62及び、このベースリング部62の内周側に配置される複数本の補強鉄筋(補強鋼材)64を備えている。補強鉄筋64は直棒状の鉄筋材を所定の長さに切断することにより形成されている。複数本の補強鉄筋64は、平面視にてベースリング部62の弦方向にそれぞれ延在しており、その両端部をそれぞれベースリング部62の内周面に当接させている。この補強鉄筋64の両端部は、必要に応じて溶接等によりベースリング部36の内周面に固着される。
【0062】
図12(B)に示されるように、補強鉄筋64は、ベースリング部62の内周側における上端側及び下端側にそれぞれ配置されており、このベースリング部62の上端側及び下端側に配置される一対の補強鉄筋64は平面視にて同一位置に配置されている。本実施形態では、ベースリング部62の内周側に一対の補強鉄筋64が4組配置されている。この一対の補強鉄筋64の両端部は、ベースリング部62を周方向に沿って4等分した円弧部62A〜62Dの両端部にそれぞれ当接している。
【0063】
図12に示されるジョイントリング60も、ジョイントリング32、34と同様に、一対で1組とされて鋼管柱16の外周側に嵌挿され、一対のベースリング部62の間に交差主鉄筋20を挟持する。このとき、交差主鉄筋20における連結フック部28の先端は、補強鉄筋64の内周側まで挿入される。この状態で、荷重伝達ロッド44又は荷重伝達ロッド50の直棒部52が連結フック部28の内側であって、補強鉄筋64の内周側に挿入される。これにより、交差主鉄筋20からの伝達荷重の一部がコンクリート層及び補強鉄筋64を介してジョイントリング60に伝達されると共に、残りの一部が直接的に一対のジョイントリング60に伝達される。
【0064】
図12に示されるジョイントリング60では、ベースリング部62の内周側に複数本(本実施形態では、8本)の補強鉄筋64が配置され、これらの補強鉄筋64が両端部を各円弧部62A〜62Dの両端部にそれぞれ当接させることにより、交差主鉄筋20から荷重が伝達された場合に、伝達荷重が補強鉄筋64によりベースリング部62の広い範囲に分散して伝達されると共に、伝達荷重の一部がベースリング部36内周側の補強鉄筋64によっても支持されるので、ジョイントリング60がベースリング部62のみで構成されている場合と比較し、交差主鉄筋20からの伝達荷重により一対のジョイントリング32、34が局部的に変形することを効果的に防止できる。
【0065】
次に、図13に示されるジョイントリング70について説明する。このジョイントリング70が図12に示されるジョイントリング60と異なる点は、ベースリング部62の上端側及び下端側にそれぞれ配置された一対の補強鉄筋64の間にリブ状のダイヤフラム部72が配置されている点であり、他の部分は基本的にジョイントリング60と同一の構成を備えている。このダイヤフラム部72は、図3に示されるジョイントリング32、34のダイヤフラム部38と同様に、その外周側の端部が全周に亘ってベースリング部62の内周面に溶接等により接合されている。
【0066】
なお、このジョイントリング70を用いた接合構造30では、図3に示されるジョイントリング32、34を用いた場合と同様に、ダイヤフラム部72に挿通穴46を穿設し、この挿通穴46に荷重伝達ロッド44又は荷重伝達ロッド50の直棒部52を挿通させても良い。また挿通穴46を穿設することなく、主鉄筋20の連結フック部28の内側及び、ダイヤフラム部72の内周側に荷重伝達ロッド44又は荷重伝達ロッド50の直棒部52をそれぞれ挿通させても良い。
【0067】
図13に示されるジョイントリング70では、ベースリング部62の内周側に複数本(本実施形態では、8本)の補強鉄筋64が配置されると共に、ダイヤフラム部72をベースリング部62の内周面に溶接等により接合したことにより、図3に示されるジョイントリング32、34及び図12に示されるジョイントリング60と比較し、交差主鉄筋20から伝達される荷重に対するジョイントリング70の曲げ剛性を更に高めることができるので、交差主鉄筋20からの伝達荷重により一対のジョイントリング70が局部的に変形することを更に効果的に防止できる。
【0068】
[第2の実施形態]
(接合構造の構成)
図14には、本発明の第2の実施形態に係る接合構造の構成が示されている。この接合構造80は、図1に示される第1の実施形態に係る接合構造30に代えてラーメン高架橋10に適用可能なものである。なお、本実施形態に係る接合構造80では、第1の実施形態に係る接合構造30と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0069】
すなわち、本実施形態に係る接合構造80は、第1の実施形態に係る接合構造30と同様に、ラーメン高架橋10における高架梁12及び地中梁14内に配筋された交差主鉄筋20を鋼管柱16に接合するものである。
但し、図1に示されるラーメン高架橋10では、交差主鉄筋20の先端部にU字状に湾曲した連結フック部28が形成されていたが、本実施形態に係る接合構造80が適用される場合には、図14(C)に示されるように、交差主鉄筋20の先端部には、連結フック部28に代えて定着端部としての鍔状のヘッド部82が形成されている。
【0070】
ヘッド部82は、交差主鉄筋20の鉄筋部94の外径に対して3倍程度の外径を有する円板状に形成されており、鉄筋部94と同軸的に配置されている。このようなヘッド部82は、交差主鉄筋20と一体的に成形することも可能であり、また交差主鉄筋20の先端部に溶接等により固着することも可能である。
図14(B)に示されるように、接合構造80は、第1の実施形態に係る接合構造30と同様に、高さ方向に沿って交差主鉄筋20の上側及び下側にそれぞれ配置される環状部材としての一対のジョイントリング84、86を備えている。ジョイントリング84とジョイントリング86とは基本的に同一形状とされており、それぞれ平面視にて矩形状に形成されたベースリング部36(図3参照)のみにより構成されている。
【0071】
一対のジョイントリング84、86は、それぞれ鋼管柱16の外周側に嵌挿され、コンクリート成形物18の内部に鋼管柱16の一部と共に埋設される。このとき、地中梁14内の下面側に配置された一対のジョイントリング84、86は、下側主鉄筋21(交差主鉄筋20)の先端側を挟持する。また地中梁14内の上面側に配置された一対のジョイントリング84、86は、上側主鉄筋22(交差主鉄筋20)の先端側を挟持する。
【0072】
一方、高架梁12内に配置される一対のジョイントリング84、86は、下側主鉄筋21(交差主鉄筋20)の先端側を挟持する。一対のジョイントリング84、86は、鋼管柱16の外周側へ嵌挿されると共に、交差主鉄筋20を挟持することにより、鋼管柱16及び交差主鉄筋20に対する装填が完了する。このとき、ジョイントリング84、86は、ベースリング部36の水平断面における中心(重心)が鋼管柱16の中心軸CPと略一致するように位置決めされる。
【0073】
図14(C)に示されるように、接合構造80は交差主鉄筋20に装填される荷重伝達部材としての荷重伝達スペーサ88を備えている。ここで、荷重伝達スペーサ88は、略円形の鉄板材により形成されている。荷重伝達スペーサ88には、その径方向に沿って外周面の一端部から他端側へ延在する嵌挿溝90が形成されている。この嵌挿溝90には、開口端とは反対側の先端部に半円状にR加工された湾曲面92が形成されており、この湾曲面92を除く部分の開口幅が鉄筋部94の外径よりも僅かに大きくなっている。
【0074】
ここで、図14(B)に示されるように、交差主鉄筋20を挟持した一対のジョイントリング84、86の上端面から下端面までの間隔Dとすると、荷重伝達スペーサ88の外径は(D×1/2)以上になっている。また荷重伝達スペーサ88は、その嵌挿溝90が鉄筋部94の外周側に差し込まれることにより、交差主鉄筋20の先端側に装填される。このとき、鉄筋部94は嵌挿溝90の湾曲面92に当接し、この状態では、荷重伝達スペーサ88の中心が交差主鉄筋20の鉄筋軸SR(図14(C)参照)と実質的に一致する。
【0075】
なお、荷重伝達スペーサ88の厚さは、交差主鉄筋20から伝達される荷重の大きさに応じて適宜設定されるが、1枚の荷重伝達スペーサ88のみでは伝達荷重に耐えられない場合には、2枚以上の荷重伝達スペーサ88を1本の交差主鉄筋20に装填するようにしても良い。
図14(A)及び(B)に示されるように、荷重伝達スペーサ88は、一対のジョイントリング84、86の間に挟持された交差主鉄筋20の先端側に装填される。具体的には、荷重伝達スペーサ88は、鉄筋部94におけるヘッド部82に対して基端側の部分であって、一対のジョイントリング84、86の内周側の部分に連結される。
【0076】
このとき、荷重伝達スペーサ88は、鉄筋軸方向に沿ってヘッド部82から離間させ、かつジョイントリング84、86の内周面からも離間させることが好ましい。このように配置することにより、荷重伝達スペーサ88をヘッド部82に当接させる場合と比較し、ヘッド部82からの荷重を、コンクリート(コンクリート層)を介して荷重伝達スペーサ88の広い範囲に伝達でき、荷重伝達スペーサ88の変形を抑制できる。但し、鉄筋軸方向に沿ってヘッド部82とヘッド部82との間に十分な間隔を確保できない場合には、コンクリート層の圧壊を防止するため、荷重伝達スペーサ88をヘッド部82に当接させても良い。
【0077】
接合構造80では、一対のジョイントリング84、86、交差主鉄筋20のヘッド部82を含む先端側及び荷重伝達スペーサ88がそれぞれ鋼管柱16の外周側に配置され、この鋼管柱16と共にコンクリート成形物18の内部に埋設される。これにより、交差主鉄筋20が接合構造80により鋼管柱16に接合されるので、任意の交差主鉄筋20に外部から荷重が伝達され、又は内部応力が作用した場合に、この交差主鉄筋20に伝達された荷重(圧縮荷重又は引張荷重)の一部が荷重伝達スペーサ88、一対のジョイントリング84、86及び、これらの間に介在するコンクリート層を介して鋼管柱16に伝達される。このとき、鉄筋軸方向に沿った荷重伝達スペーサ88の一対のジョイントリング84、86に対する投影面積は、交差主鉄筋20におけるヘッド部82のジョイントリング84、86に対する投影面積よりも大きくなっている。
【0078】
また、荷重伝達スペーサ88を交差主鉄筋20に装填するタイミングについては、一対のジョイントリング84、86により交差主鉄筋20を挟持した後、コンクリートの打設前の時点が好ましいが、下側のジョイントリング86を鋼管柱16の外周側に嵌挿し、下側主鉄筋21又は上側主鉄筋22(交差主鉄筋20)の組立てが完了した直後に、荷重伝達スペーサ88を交差主鉄筋20に装填しても良い。
【0079】
(接合構造の作用)
次に、本実施形態に係る接合構造80の作用について説明する。本実施形態に係る接合構造80では、荷重伝達部材としての荷重伝達スペーサ88が、荷重支持体としての地中梁14及び高架梁12の内部において支柱体である鋼管柱16の外周側に配置された環状部材としてのジョイントリング84、86と、鋼管柱16に交差する交差主鉄筋20に設けられ、ジョイントリング84、88と鋼管柱16の外周面との間に位置する定着端部としてのヘッド部82との間に配置されることにより、交差主鉄筋20からの荷重(圧縮荷重又は引張荷重)を、ヘッド部82とジョイントリング84、86との間に介在するコンクリート層及び荷重伝達スペーサ88を介してジョイントリング34、86に伝達できると共に、ジョイントリング84、86を介して鋼管柱16に伝達できる。
【0080】
すなわち、荷重伝達スペーサ88が交差主鉄筋20におけるヘッド部82と一対のジョイントリング84、86との間の部分(鉄筋部94)に連結されることにより、交差主鉄筋20からの荷重(圧縮荷重又は引張荷重)を、コンクリート層及び荷重伝達スペーサ88を介して一対のジョイントリング84、86に略均等に分散して伝達できると共に、一対のジョイントリング84、86を介して鋼管柱16に伝達できる。
【0081】
このとき、鉄筋軸方向に沿った荷重伝達スペーサ88の一対のジョイントリング84、86に対する投影面積が、交差主鉄筋20のヘッド部82のジョイントリング84、86に対する投影面積よりも大きくなっていることから、交差主鉄筋20からの荷重をコンクリート層及び荷重伝達スペーサ88を介して一対のジョイントリング84、86に均等に分散して伝達できると共に、各ジョイントリング84、86の周方向に沿って広い領域に均等に分散して伝達できるので、交差主鉄筋20からの伝達荷重により一対のジョイントリング84、86が局部的に変形することを効果的に防止できる。
【0082】
この結果、本実施形態に係る接合構造80によれば、交差主鉄筋20からの伝達荷重により一対のジョイントリング84、86が局部的に変形することを効果的に防止できるので、ジョイントリング84、86の変形に伴って交差主鉄筋20から鋼管柱16に伝達される荷重の伝達効率が低下することも効果的に防止できる。
また接合構造30では、コンクリートの打設前に、荷重伝達スペーサ88を交差主鉄筋20の鉄筋部94に上方から嵌挿するだけで、荷重伝達スペーサ88を交差主鉄筋20に装填でき、この状態で荷重伝達スペーサ88が脱落することもないので、交差主鉄筋20と一対のジョイントリング84、86との間で荷重を伝達する荷重伝達スペーサ88の装填作業を極めて簡単なものにできる。
【0083】
(ジョイントリングの変形例)
次に、本実施形態に係る接合構造80に用いられるジョイントリングの変形例について説明する。図15には、それぞれ本実施形態に係る接合構造30におけるジョイントリングの変形例が示されている。
図15示されるジョイントリング100は、ベースリング部36の外周側に配置される複数のダイヤフラム部102を備えている。ダイヤフラム部102は厚さが一定の鋼板により形成されており、ベースリング部36における各辺部36A〜36Dの外周面にそれぞれ溶接等により接合されている。
ここで、ダイヤフラム部102は、平面視にて、外周端が曲率半径一定の円弧状に形成されると共に、内周端が前記円弧状の外周端に対する弦方向に沿って延在する直線状に形成されている。ダイヤフラム部102は、内周端面の全体が辺部36A〜36Dの外周面に接合されている。
【0084】
図15に示されるジョイントリング100も、ジョイントリング84、86と同様に、一対で1組とされて鋼管柱16の外周側に嵌挿され、一対のベースリング部36の間に交差主鉄筋20の先端側を挟持する。この状態で、荷重伝達スペーサ88が交差主鉄筋20におけるヘッド部82と一対のジョイントリング100との間の部分(鉄筋部94)に上方から差し込まれ、連結される。これにより、交差主鉄筋20からの荷重がコンクリート層及び荷重伝達スペーサ88を介して一対のジョイントリング100に伝達可能になる。
【0085】
図15に示されるジョイントリング100では、ベースリング部36における各辺部36A〜36Dの外周面にそれぞれダイヤフラム部102を接合したことにより、ジョイントリング100がベースリング部62のみで構成されている場合と比較し、交差主鉄筋20から伝達される荷重に対するジョイントリング100の周方向に沿った曲げ剛性を大幅に高めることができるので、交差主鉄筋20からの伝達荷重により一対のジョイントリング100が局部的に変形することを効果的に防止できる。
【0086】
またジョイントリング100では、各ダイヤフラム部102が辺部36A〜36Dの両端部から中央側へ向かって幅が徐々に増大する形状(略三日月状)とされている。一方、交差主鉄筋20からの荷重伝達時には、辺部36A〜36Dにおける曲げ応力の分布が両端部から中央側へ向かって幅が徐々に増大する。従って、各ダイヤフラム部102を略三日月状に形成することにより、ジョイントリング100の曲げ剛性を各辺部36A〜36Dの両端部から中央側へ向かって徐々に増大できるので、少量の補強材料(ダイヤフラム部102)を用いて効率的にジョイントリング100の曲げ剛性を増大できる。
【0087】
なお、ベースリング部36の内周面にダイヤフラム部38(図3参照)を接合して、ジョイントリング100の曲げ剛性を増大することも可能であるが、その場合には、荷重伝達スペーサ88との干渉を避けるために、ダイヤフラム部38の幅を狭くするか、ダイヤフラム部38における荷重伝達スペーサ88に面した部位に開口部又は切欠部を形成し、荷重伝達スペーサ88との干渉を避ける必要がある。
【0088】
また、本実施形態に係る接合構造80では、環状部材として図12に示されるジョイントリング60を用いることができる。この場合にも、一対で1組とされたジョイントリング60が鋼管柱16の外周側に嵌挿され、一対のベースリング部62の間に交差主鉄筋20を挟持する。このとき、交差主鉄筋20におけるヘッド部82が補強鉄筋64の内周側まで挿入される。この状態で、荷重伝達スペーサ88が交差主鉄筋20におけるヘッド部82と補強鉄筋64との間の部分(鉄筋部94)に上方から差し込まれ、連結される。これにより、交差主鉄筋20からの伝達荷重がコンクリート層及び荷重伝達スペーサ88を介してジョイントリング60に伝達可能になる。
【0089】
従って、本実施形態に係る接合構造80でも、環状部材としてジョイントリング60を用いることにより、交差主鉄筋20からの荷重伝達時に、この伝達荷重が補強鉄筋64によりベースリング部62の広い範囲に分散して伝達されると共に、伝達荷重の一部がベースリング部36内周側の補強鉄筋64によっても支持されるので、交差主鉄筋20からの伝達荷重により一対のジョイントリング60が局部的に変形することを効果的に防止できる。
【0090】
なお、本実施形態に係る接合構造80では、荷重伝達スペーサ88として略円板状のものを用いていたが、このような荷重伝達スペーサとしては、例えば、矩形状のものを用いても良く、また鉄筋材等の棒状材料をU字状に湾曲したものを用いて良い。要は、交差主鉄筋20の鉄筋部94に確実に連結でき、かつ一対のジョイントリングに対する投影面積をヘッド部82の投影面積よりも大きくできるものならば、任意の形状とすることができる。
また、ベースリング部が一定の曲率半径で湾曲しているジョイントリングを用いる場合には、ジョイントリングに伝達される荷重の大きさ平準化するために、荷重伝達スペーサとしてベースリング部の曲率半径に対応する曲率半径で湾曲したものを用いても良い。
【0091】
[第3の実施形態]
(接合構造の構成)
図16には、本発明の第3の実施形態に係る接合構造の構成が示されている。この接合構造110は、第1の実施形態に係る接合構造30に代えてラーメン高架橋10に適用可能なものである。なお、本実施形態に係る接合構造110では、第1の実施形態に係る接合構造30と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る接合構造110は、第1の実施形態に係る接合構造30と同様に、ラーメン高架橋10における高架梁12及び地中梁14内に配筋された交差主鉄筋20を鋼管柱16に接合するものである。
【0092】
但し、第1の実施形態に係る接合構造30では、複数本の交差主鉄筋20を鋼管柱16に接合するために一対(2個)のジョイントリング32、34を用いていたが、本実施形態に係る接合構造110では、複数本の交差主鉄筋20を鋼管柱16に接合するために1個のジョイントリング112のみを用いる点で、第1の実施形態に係る接合構造30とは異なっている。
【0093】
図16(A)に示される接合構造110は、交差主鉄筋20の上側又は下側(本実施形態では、下側)に配置される環状部材としてのジョイントリング112を備えている。ジョイントリング112は、平面視にて矩形状に形成されたベースリング部36(図3参照)のみにより構成されている。このジョイントリング112は、鋼管柱16の外周側に嵌挿され、コンクリート成形物18の内部に鋼管柱16の一部と共に埋設される。このとき、ジョイントリング112は交差主鉄筋20の先端側に下方から当接し、交差主鉄筋20の先端側を下方から支持する。またジョイントリング112は、ベースリング部36の水平断面における中心(重心)が鋼管柱16の中心軸CPと略一致するように位置決めされる。
【0094】
交差主鉄筋20の先端部にはU字状に湾曲した定着端部としての連結フック部28が形成されており、この連結フック部28はジョイントリング112を掛止する状態(掛止状態)になっている。ここで、掛止状態とは、連結フック部28を形成した鉄筋材がジョイントリング112(ベースリング部36)を形成した鋼棒の外周側に半周以上巻き付けられた状態となることを言う。これにより、連結フック部28の外周側への移動が拘束されることから、過大な引張り荷重が交差主鉄筋20に作用した場合でも、連結フック部28がジョイントリング112から脱落することを効果的に防止できる。
【0095】
連結フック部28の先端は、ジョイントリング112の内周側まで挿入されている。これにより、ジョイントリング112の内周面と連結フック部28の内周端との間には隙間が形成される。また連結フック部28は、図16(B)に示されるように、鉄筋軸SRに沿った鉄筋軸方向外側から見て、中心軸CPに対して傾斜するように配置されている。
接合構造110は、交差主鉄筋20の連結フック部28に装填される直棒状の荷重伝達ロッド44を備えている。荷重伝達ロッド44は、U字状の連結フック部28の内側であって、ジョイントリング112の内周側を挿通するように配置されている。このとき、荷重伝達ロッド44は、図16(B)に示されるように、鉄筋軸方向外側から見て、ジョイントリング112の辺部36A〜36D(図16では、辺部36A)を斜めに横断する。ここで、荷重伝達ロッド44の鋼管柱16の中心軸CPに対する傾き角をθとすると、この傾き角θは90°に近い角度に設定することが好ましい。
【0096】
接合構造110では、荷重伝達ロッド44と連結フック部28との間及び、連結フック部28とジョイントリング112との間が最終的には、これらの間に介在するコンクリート層により互いに接合される。しかしコンクリートの打設前に、荷重伝達ロッド44の位置ずれや脱落を確実に防止するため、例えば、ワイヤを荷重伝達ロッド44及び連結フック部28の先端部付近に巻き付けて、荷重伝達ロッド44を連結フック部28に仮止めしても良く、また金属クリップにより荷重伝達ロッド44及び連結フック部28の先端部付近を挟み付けることにより、仮止めしても良い。
【0097】
接合構造110では、ジョイントリング112、交差主鉄筋20の連結フック部28を含む先端側及び荷重伝達ロッド44がそれぞれ鋼管柱16の外周側に配置され、この鋼管柱16と共にコンクリート成形物18の内部に埋設される。これにより、交差主鉄筋20が接合構造110により鋼管柱16に接合されるので、任意の交差主鉄筋20に外部から荷重が伝達され、又は内部応力が作用した場合に、この交差主鉄筋20に伝達された荷重(圧縮荷重又は引張荷重)の一部が荷重伝達ロッド44、ジョイントリング112及び、これらの間に介在するコンクリート層を介して鋼管柱16に伝達される。このとき、鉄筋軸方向に沿った連結フック部28及び荷重伝達ロッド44のジョイントリング112に対する投影面積は、交差主鉄筋20における連結フック部28のジョイントリング112に対する投影面積よりも当然に大きくなる。
【0098】
(接合構造の作用)
次に、本実施形態に係る接合構造110の作用について説明する。本実施形態に係る接合構造110では、鉄筋軸方向に沿った連結フック部28及び荷重伝達ロッド44のジョイントリング112に対する投影面積が、交差主鉄筋20における連結フック部28のジョイントリング112に対する投影面積よりも大きくなっていることから、連結フック部28によりジョイントリング112を掛止することのみにより交差主鉄筋20をジョイントリング112に連結した場合と比較し、交差主鉄筋20からの荷重をジョイントリング112の周方向に沿って広い領域に分散して伝達できるので、交差主鉄筋20からの伝達荷重によりジョイントリング112が局部的に変形することを効果的に防止できる。
【0099】
この結果、本実施形態に係る接合構造110によれば、交差主鉄筋20からの伝達荷重によりジョイントリング112が局部的に変形することを効果的に防止できるので、ジョイントリング112の変形に伴って交差主鉄筋20から鋼管柱16に伝達される荷重の伝達効率が低下することも効果的に防止できる。
また接合構造110では、コンクリートの打設前に、荷重伝達ロッド44を交差主鉄筋20の連結フック部28の内側に挿入し、この荷重伝達ロッド44を必要に応じて連結フック部28に仮止めするだけで、荷重伝達ロッド44を交差主鉄筋20に装填できるので、交差主鉄筋20とジョイントリング112との間で荷重を伝達する荷重伝達ロッド44の装填作業を極めて簡単なものにできる。
【0100】
また、本実施形態に係る接合構造110では、環状部材として図16に示されるジョイントリング112以外にも、図15示されるジョイントリング112を用いることができ、このジョイントリング112を用いることにより、交差主鉄筋20からの伝達荷重により一対のジョイントリング112が局部的に変形することを更に効果的に防止できる。
なお、ベースリング部36の内周面にダイヤフラム部38(図3参照)を接合して、ジョイントリング112の曲げ剛性を増大することも可能であるが、その場合には、荷重伝達ロッド44及び連結フック部28との干渉を避けるために、ダイヤフラム部38の幅を狭くするか、ダイヤフラム部38における連結フック部28に面した部位に開口部又は切欠部を形成し、連結フック部28との干渉を避ける必要がある。
【0101】
また、本実施形態に係る接合構造110では、環状部材として図12に示されるジョイントリング60を用いることができる。この場合には、交差主鉄筋20の連結フック部28によりジョイントリング112及び交差主鉄筋20を掛止し、荷重伝達ロッド44を連結フック部28の内側であって、交差主鉄筋20の内周側に差し込まれる。これにより、交差主鉄筋20からの荷重伝達時に、この伝達荷重が補強鉄筋64によりベースリング部62の広い範囲に分散して伝達されると共に、伝達荷重の一部がベースリング部36内周側の補強鉄筋64によっても支持されるので、交差主鉄筋20からの伝達荷重によりジョイントリング60が局部的に変形することを効果的に防止できる。
【0102】
なお、本実施形態に係る接合構造110では、1本の荷重伝達ロッド44のみを1個の連結フック部28に装填したが、2本以上の荷重伝達ロッド44を1個の連結フック部28に装填しても良い。このとき、2本以上の荷重伝達ロッド44を互いに平行なるように配置することも可能であり、また2本の荷重伝達ロッド44をX字状に交差させて連結フック部28に装填するようにしても良い。また荷重伝達部材としては、鉄筋材により成形された荷重伝達ロッド44以外にも細長い鉄板材を所定の長さに切断したもの(荷重伝達板)や、円形以外の異形断面の鋼棒を所定の長さに切断したものも用いることができる。
【0103】
また接合構造110では、U字状に湾曲した荷重伝達ロッド56(図11参照)を用いても良い。この場合には、荷重伝達ロッド50がジョイントリング112を上方から跨ぐよう配置されると共に、荷重伝達ロッド50の直棒部52が連結フック部28の内側であって、ジョイントリング112の内周側に差し込まれる。これにより、荷重伝達ロッド44を連結フック部28に仮止めする作業を不要にできるので、連結フック部28に対する荷重伝達ロッド50の装填作業を極めて容易なものにすることができる。
【0104】
[第4の実施形態]
(接合構造の構成)
図17には、本発明の第4の実施形態に係る接合構造の構成が示されている。これらの接合構造120は、第1の実施形態に係る接合構造30に代えてラーメン高架橋10に適用可能なものである。なお、本実施形態に係る接合構造120では、第1の実施形態に係る接合構造30と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0105】
本実施形態に係る接合構造120は、第1の実施形態に係る接合構造30と同様に、ラーメン高架橋10における高架梁12及び地中梁14を鋼管柱16に接合するものである。すなわち、本実施形態に係る接合構造120は、第1の実施形態に係る接合構造30と同様に、ラーメン高架橋10における高架梁12及び地中梁14内に配筋された交差主鉄筋20を鋼管柱16に接合するものである。
【0106】
但し、図1に示されるラーメン高架橋10では、高架梁12内に配筋された下側主鉄筋21、地中梁14内に配筋された下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22がそれぞれ2次元の格子状に構成されていたが、本実施形態の接合構造120が適用されるラーメン高架橋10では、高架梁12の下側主鉄筋21、地中梁14の下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22の少なくとも1個が3次元の格子状に構成されるか、あるいは2次元の格子状に組み合わされた鉄筋群が複数層、重ねられて構成されているものとする。
【0107】
また第1の実施形態に係る接合構造30では、複数本の交差主鉄筋20を鋼管柱16に接合するために一対(2個)のジョイントリング32、34を用いていたが、本実施形態に係る接合構造120では、複数本の交差主鉄筋20を鋼管柱16に接合する環状部材として1個のジョイント筒122のみを用いる点で、第1の実施形態に係る接合構造30とは異なっている。
【0108】
本実施形態に係る接合構造120は、高架橋の高さ方向(矢印HB方向)に沿ってそれぞれ異なる位置に配置された上下一対の交差主鉄筋20の間に介装されるジョイント筒122を備えている。ジョイント筒122は円筒状に形成されており、例えば、肉厚鋼管を交差主鉄筋20の高さ方向ピッチに対応する長さに切断することにより、作製される。このジョイント筒122は、鋼管柱16の外周側に嵌挿され、コンクリート成形物18の内部に鋼管柱16の一部と共に埋設される。このとき、ジョイント筒122は、その上端面を高さ方向に沿って上側に位置する交差主鉄筋20の先端側に当接させると共に、下端面を下側に位置する交差主鉄筋20の先端側に当接させる。またジョイント筒122は、その水平断面における中心(重心)が鋼管柱16の中心軸CPと略一致するように位置決めされる。
【0109】
定着端部としての連結フック部28の先端は、ジョイント筒122の内周側まで挿入されている。これにより、ジョイント筒122の内周面と連結フック部28の内周端との間には隙間が形成される。接合構造120は、上下一対の交差主鉄筋20の連結フック部28に装填される直棒状の荷重伝達部材としての荷重伝達ロッド44を備えている。この荷重伝達ロッド44は、U字状の連結フック部28の内側であって、ジョイント筒122の内周側を挿通するように配置されている。このとき、荷重伝達ロッド44は、その中心軸が鋼管柱16の中心軸CPと略平行になる。また荷重伝達ロッド44の全長は、ジョイント筒122の長さよりも長くなっており、その両端部をジョイント筒122の両端面からそれぞれ突出させている。
【0110】
接合構造120では、荷重伝達ロッド44と連結フック部28との間及び、連結フック部28とジョイント筒122との間が最終的には、これらの間に介在するコンクリート層により互いに接合される。しかしコンクリートの打設前に、荷重伝達ロッド44の位置ずれや脱落を防止するため、例えば、ワイヤを荷重伝達ロッド44及び連結フック部28の先端部付近に巻き付けて、荷重伝達ロッド44を連結フック部28に仮止めしても良く、また金属クリップにより荷重伝達ロッド44及び連結フック部28の先端部付近を挟み付けることにより、仮止めしても良い。また荷重伝達ロッド44の上端部に、連結フック部28の幅よりも広い幅を有する鍔部を設け、この鍔部を上側の連結フック部に突き当てることにより、荷重伝達ロッド44の位置ずれ及び脱落を防止するようにしても良い。
【0111】
接合構造120では、ジョイント筒122、交差主鉄筋20の連結フック部28を含む先端側及び荷重伝達ロッド44がそれぞれ鋼管柱16の外周側に配置され、この鋼管柱16と共にコンクリート成形物18の内部に埋設される。これにより、交差主鉄筋20が接合構造120により鋼管柱16に接合されるので、任意の交差主鉄筋20に外部から荷重が伝達され、又は内部応力が作用した場合に、この交差主鉄筋20に伝達された荷重(圧縮荷重又は引張荷重)の一部が荷重伝達ロッド44、ジョイント筒122及び、これらの間に介在するコンクリート層を介して鋼管柱16に伝達される。
【0112】
(接合構造の作用)
次に、本実施形態に係る接合構造120の作用について説明する。本実施形態に係る接合構造120では、上下一対の交差主鉄筋20からの荷重が荷重伝達ロッド44及びコンクリート層を介してジョイント筒122に伝達されことから、交差主鉄筋20からの荷重をジョイント筒122における高さ方向に沿って延在する広い領域に分散して伝達できるので、交差主鉄筋20からの伝達荷重によりジョイント筒122が局部的に変形することを効果的に防止できる。
【0113】
この結果、本実施形態に係る接合構造120によれば、交差主鉄筋20からの伝達荷重によりジョイント筒122が局部的に変形することを効果的に防止できるので、ジョイント筒122の変形に伴って交差主鉄筋20から鋼管柱16に伝達される荷重の伝達効率が低下することも効果的に防止できる。
また接合構造120では、コンクリートの打設前に、荷重伝達ロッド44を交差主鉄筋20の連結フック部28の内側に挿入し、この荷重伝達ロッド44を必要に応じて連結フック部28に仮止めするだけで、荷重伝達ロッド44を交差主鉄筋20に装填できるので、交差主鉄筋20とジョイント筒122との間で荷重を伝達する荷重伝達ロッド44の装填作業を極めて簡単なものにできる。
【0114】
なお、本実施形態に係る接合構造120では、円筒状のジョイント筒122以外にも、例えば、略角筒状のジョイント筒を環状部材として用いることができる。また本実施形態に係る接合構造120では、1本の荷重伝達ロッド44のみを上下一対の交差主鉄筋20の連結フック部28にそれぞれ装填したが、2本以上の荷重伝達ロッド44を上下一対の交差主鉄筋20の連結フック部28にそれぞれ装填しても良い。これにより、ジョイント筒122における交差主鉄筋20から荷重が伝達される領域を周方向へ拡張することが可能になるので、ジョイント筒122の局部変形を更に効果的に防止できる。また荷重伝達部材としては、鉄筋材により成形された荷重伝達ロッド44以外にも細長い鉄板材を所定の長さに切断したもの(荷重伝達板)や、円形以外の異形断面の鋼棒を所定の長さに切断したもの(荷重伝達板)も用いることができる。
【0115】
また接合構造120では、U字状に湾曲した荷重伝達ロッド56(図11参照)を用いても良い。この場合には、荷重伝達ロッド50がジョイント筒122を上方から跨ぐよう配置されると共に、荷重伝達ロッド50の直棒部52が連結フック部28の内側であって、ジョイント筒122の内周側に差し込まれる。これにより、荷重伝達ロッド44を連結フック部28に仮止めする作業を不要にできるので、連結フック部28に対する荷重伝達ロッド50の装填作業を極めて容易なものにすることができる。
以上説明した本発明の実施形態では、定着端部は、鉤状の連結フック部28あるいは鍔状のヘッド部82としてあるが、交差主鉄筋20に設けられ、環状部材と支柱体の外周面との間に位置するものであれば鉤状の連結フック部28あるいは鍔状のヘッド部82に限らない。
【実施例】
【0116】
次に、本発明の第1の実施形態に係る接合構造30を用いてラーメン高架橋10を実際に施工した場合に、接合構造30に用いられる構成部品の諸元を実施例として説明する。但し、接合構造30で用いられる構成部品については、適用対象となる建造物の規模、予想される負荷荷重の大きさ等に応じて、寸法、強度等の諸元が変化するものであり、本実施例に示される諸元に限定されるものではない。
【0117】
本実施例に係る接合構造30では、鋼管柱16における鋼管24として、外径が800mm、板厚16mmのものを用い、この鋼管24の内部にコンクリートを充填して鋼管柱16とした。高架梁12及び地中梁14としては、それぞれ橋幅方向の寸法が1200mmで、高さ方向の寸法が1200mmの略正方形の断面を有しており、橋軸方向に沿った長さが10mのものを建造した。
【0118】
高架梁12及び地中梁14には、橋軸方向に沿って12本の主鉄筋(下側主鉄筋21及び上側主鉄筋22)がコンクリート成形物18の内部に埋設されており、それらのうち8本が交差主鉄筋20として鋼管柱16の外周面付近まで延出している。ここで、主鉄筋としてはD32の寸法のものが用いられており、交差主鉄筋20については、その先端部にU字状の連結フック部28が形成されている。
【0119】
ジョイントリング32、34としては、橋幅方向に沿った外径寸法が1000mm、橋軸方向に沿った外径寸法が1000mmの略矩形状のものを用い、ジョイントリング32、34におけるベースリング部36は、90mm×90mmの矩形状断面を有する鋼棒により形成した。このベースリング部36の内周面に接合されるダイヤフラム部38は板厚16mmの鋼板により成形し、その中央部に円形開口40を形成した。またダイヤフラム部38には、1本の交差主鉄筋20に対して2個の挿通穴46が穿設されている。
またダイヤフラム部38の挿通穴46を挿通させる荷重伝達ロッド44、50としては、D32の鉄筋材を所定の長さに切断したもの、又はD32の鉄筋材を所定の長さに切断してU字状に湾曲したものを用いた。
【符号の説明】
【0120】
10 ラーメン高架橋
12 高架梁(荷重支持体)
14 地中梁(荷重支持体)
16 鋼管柱(支柱体)
17 外周面
18 コンクリート成形物
20 交差主鉄筋
21 下側主鉄筋
22 上側主鉄筋
24 鋼管
26 コンクリート
28 連結フック部(定着端部)
30 接合構造
32、34 ジョイントリング(環状部材)
36 ベースリング部
38 ダイヤフラム部
36A-36D 辺部
40 円形開口
42 曲げ部
44 荷重伝達ロッド(荷重伝達部材)
46 挿通穴
48 コンクリート層
50 荷重伝達ロッド(荷重伝達部材)
52、54 直棒部
56 湾曲部
60 ジョイントリング(環状部材)
62 ベースリング部
62A-62D 円弧部
64 補強鉄筋(補強鋼材)
70 ジョイントリング(環状部材)
72 ダイヤフラム部
80 接合構造
82 ヘッド部(定着端部)
84、86 ジョイントリング
88 荷重伝達スペーサ(荷重伝達部材)
90 嵌挿溝
92 湾曲面
94 鉄筋部
100 ジョイントリング(環状部材)
102 ダイヤフラム部
110 接合構造
112 ジョイントリング(環状部材)
120 接合構造
122 ジョイント筒(環状部材)
C1、C2 支圧力
CU、CL コンクリート支圧力
CP 中心軸
F 水平荷重
G 地表面
R1 引張力
R2 圧縮力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の鉄筋を備えた鉄筋コンクリート造の荷重支持体と、外周部が鋼管により形成され、前記荷重支持体の内部に軸線方向に沿った一部が埋設される支柱体との接合構造であって、
前記荷重支持体の内部において前記支柱体の外周側に配置された環状部材と、
前記支柱体に交差する方向に配置された前記複数本の鉄筋のうちの少なくとも一本に設けられ、前記環状部材と前記支柱体の外周面との間に位置する定着端部と、
前記環状部材と前記定着端部との間に配置された荷重伝達部材と、
を有することを特徴とする荷重支持体と支柱体との接合構造。
【請求項2】
前記定着端部が鉤状の連結フック部または鍔状のヘッド部であることを特徴とする請求項1記載の荷重支持体と支柱体との接合構造。
【請求項3】
前記環状部材は前記支柱体の外周側に少なくとも2個配置され、これらのうちの一対の環状部材が前記定着端部を設けた鉄筋を挟み込むように配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の荷重支持体と支柱体との接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−40484(P2013−40484A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177716(P2011−177716)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】