説明

蓄熱成型体

繊維様またはフィルム様成型体が、可塑化混合物から作製され、前記混合物は、その重量に対して60〜10質量%のキャリア成分および40〜90質量%の相変化物質から成り、前記キャリア成分は、前記可塑化混合物に対して5〜20質量%の、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、およびこれらの混合物を含む群から選択されるポリマーまたはポリマーブレンド、5〜20質量%のスチレンブロックコポリマー、ならびに、0〜20質量%の1種または2種以上の添加剤、を含有し、前記相変化物質は、天然および合成パラフィン、ポリエチレングリコール(=ポリエチレンオキシド)、ならびにこれらの混合物を含む群から選択され、前記可塑化混合物は、130〜220℃の温度にて、スピナレットまたはスリットダイスを通して押出され、延伸される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その重量に基づいて、60〜10質量%のキャリア成分および40〜90質量%の相変化物質から成る可塑化混合物から成る繊維状または箔様成型体を製造する方法に関し、より詳細には、可塑化混合物の質量に基づいて、キャリア成分は、5〜20質量%の、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、およびこれらの混合物の群から選択されポリマーまたはポリマーブレンド、5〜20質量%のスチレンブロックコポリマー、ならびに0〜20質量%の1種または2種以上の添加剤、を含有し、相変化物質は、天然および合成パラフィン、ポリエチレングリコール(=ポリエチレンオキシド)、長鎖ジアルキルエーテル、長鎖アルキルアルコール、低分子量高結晶度PEワックス、およびこれらの混合物からなる群より選択され、そして、可塑化混合物は、130〜220℃の温度にて、押出しダイスを通して押出され、繊維状または箔様成型体が得られる。
【0002】
本発明は、さらに、その質量に基づいて、60〜10質量%のキャリア成分および40〜90質量%の相変化物質から成る繊維状または箔様成型体に関し、より詳細には、成型体の質量に基づいて、キャリア成分は、5〜20質量%の、LDPE、HDPE、PMMA、ポリカーボネート、およびこれらの混合物の群から選択されるポリマーまたはポリマーブレンド、5〜20質量%のスチレンブロックコポリマー、ならびに0〜20質量%の1種または2種以上の添加剤、を含有し、相変化物質は、天然および合成パラフィン、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物から成る群より選択される。
【0003】
相変化物質(以下、PCMと略す)の相転移温度では、本発明の繊維または箔(以下、それぞれ、PCM繊維および箔とも称する)の蓄熱エンタルピーは、最大230J/gである。これらの繊維または箔は、布地およびシート材料の作製に適しており、これらに有利な熱特性を付与する。PCM繊維/箔は、その高い蓄熱エンタルピーのために、熱を吸収または放出することによって温度変化の補償を行う。用いることができる布地材料としては、特には、布地服複合物、他の合成または天然の布地用繊維との織物およびニット、さらには工業用布地および工業用布地複合物である。本発明のPCM繊維はまた、これを加工することによって細断PCM繊維またはPCMステープル繊維を得ることもでき、これらは、同様に布地用途に用いられる(断熱性衣服、工業用布地)。
【背景技術】
【0004】
先行技術では、相変化物質(PCM)、ならびにポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリマー熱可塑性キャリア成分から成るブレンド、ならびに、それから製造される成型体が開示されている。該当する特許明細書には、とりわけ、従来の溶融紡糸プロセスによる繊維の作製について述べられている。1種または2種以上のPCMおよびポリマーキャリア成分から成るブレンドは、以下、PCM−ポリマー配合物と称する。
【0005】
用いられるPCMは、好ましくは、パラフィン、またはその他として長鎖ジアルキルエーテル、長鎖アルキルアルコール、または低分子量高結晶度PEワックスを含む。パラフィンを用いることの基本的な問題点は、それが可塑化または溶融プロセスの過程で高温に曝されて、押出しダイスから押出されることに伴って圧力が低下すると、蒸発して気泡を形成するということである。気泡の形成は、押出し成型体の欠陥の原因となる。繊維の溶融紡糸の場合、これは切断またはフィラメントの破断に繋がる。さらに、ペレット、箔、シートなどを例とするPCMポリマー配合物から作製される成型体は、相転移温度を超えると、液化したPCM(好ましくはパラフィン)が遊離することが知られている。このプロセスは、技術業界内では「浸み出し(sweating)」とも称され、PCMが表面近傍に存在することが原因と考えられる。パラフィンなどのPCMは、広範な種々のポリマーに対して混和性が低いかまったくない。しかし、可塑化および/または溶融ならびに機械せん断を用いることにより、パラフィンをポリマーキャリア成分中に乳化させることが可能である。この種の溶融エマルジョンの中で、パラフィンは液滴様含有物(droplet-like inclusions)または液滴様ドメインの形態を取っている。PCM液滴またはパラフィン液滴はまた、溶融物から作製された成型体中にも見られる。製造または使用の結果として、成型体表面にクラックまたは破断を例とする欠陥が生じた場合、液化PCMは、相変化温度を超えると、表面のすぐ下に位置する液滴から抜け出して環境中へ放出され得る。
【0006】
特許文献1は、相変化物質として、パラフィンなどの非カプセル化結晶炭化水素を最大60質量%まで含む溶融紡糸ポリオレフィン繊維の作製について記載している。パラフィンを繊維内に固定し、浸み出しを防ぐために、7〜16質量%の質量比率でのシリカ粒子が溶融物またはブレンドに添加される。
【0007】
特許文献2および特許文献3は、ポリマーマトリックス中のPCM成分の充填レベルを高めることを目的とした、化学架橋されたPCM−ポリエチレン配合物の製造に関するものである。しかし、これらの化学架橋されたPCM−ポリエチレン配合物は、可塑化/溶融プロセスの終了前に架橋が開始してしまい、それに伴う粘度の上昇によって経済的な有用性がまったくない値まで紡糸速度が低下することが余儀なくされ、従来の溶融紡糸プロセスによる繊維の製造には適さない。
【0008】
特許文献4は、フィラメント形成ポリマーから成るモノフィラメントを、溶融紡糸を介して製造する方法を開示している。述べられているフィラメント形成ポリマーは、とりわけ、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリアクリロニトリルである。スピナレットヘッドからの排出直後に、モノフィラメントは空気の吹きつけによって処理され、冷却され得る。次に、これは、−10〜+150℃の温度範囲である液体浴に通される。このプロセスは、PCM含有ポリマー繊維の製造にはあまり適するものではなく、それは、高温の熱可塑状態では、これらが実質的にまったく引張強度を持っておらず、このことにより、自重によって紡糸口金からすぐに切断されてしまう可能性があるからである。
【0009】
二成分溶融紡糸プロセスとして知られる方法も存在し、この場合、互いの空間上の境界が明確で異なる物質から作られている2種のフィラメントまたは領域を持つ繊維が押出されるように、押出しダイスが2つのゾーンを持つ。特許文献5および特許文献6は、この種の方法を開示している。二成分繊維は、例として、コアシェル型またはマルチフィラメント(海島)型の断面を有し、この場合、コア部またはフィラメントは、PCMから成り、シース部または周囲マトリックスは、熱可塑性ポリマーから成る。二成分溶融紡糸プロセスは、蓄熱PCM含有繊維の製造にはあまり適さないことが示されている。この目的のために必要である押出しヘッドは、複雑な形状であり、ダイスの目詰まりが起こりやすい。この問題は、上述の気泡形成およびそれに付随する繊維の切断によって悪化するものであり、それからの残渣が紡糸口金でのケーキングを引き起こしてしまう。従って、二成分繊維における繊維中のPCMの比率に制限があり、約30質量%までと低い値である。これに対応して、二成分繊維によって得られる蓄熱容量に限界が生ずる。
【0010】
上記の問題を回避するための1つの公知の方法は、ポリマーの封体がPCMを封入しているPCMマイクロカプセルの使用に基づくものである。このPCMマイクロカプセルは、上流プロセス工程において、好ましくは押出し機によってキャリア成分中に組み込まれる。キャリア成分およびPCMマイクロカプセルから成る可塑化ブレンドを押出すことでストランドが得られ、これがペレット化される。得られたペレットは、繊維を得る溶融紡糸プロセスのための出発物質として用いられる。この方法でもやはり、ペレット中、従って繊維中のPCMの量的比率に、約30質量%の値までという制限がある。繊維中のPCMの組み込み量を増加させるには、ペレット中のPCMマイクロカプセルの量、従って密度を、押出し機内の強いせん断力がPCMマイクロカプセルの破壊、およびPCMの遊離を促進する値まで増加させる必要があるであろう。気泡の形成などの付随する不都合な影響については上述した。
【0011】
特許文献7は、キャリアマトリックスとしてのポリエチレン中にナイロン6カプセル化PCMを用いており、繊維中のPCMの比率は、最大で30質量%である。
【0012】
比較的多くの成型体の作製に適するその他のPCM−ポリマー配合物が開発されている。特許文献8(=特許文献9)は、蓄熱エンタルピーが最大135J/gである熱可塑性材料を製造する方法を開示している。この熱可塑性材料は、相変化物質、特にパラフィン、ならびにキャリア成分としてPMMAおよびスチレンブロックコポリマーから成るブレンドを含有する。この熱可塑性材料を用いて、ストランド押出しペレットが作製される。この熱可塑性材料からの繊維の製造も提供されているが、この目的のための具体的な押出し方法についてはまったく開示されていない。特許文献8のペレットは、温度変化サイクルを用いた抽出試験において、パラフィンの遊離は実質的に起こしていない。低温破壊ペレット(cryofractured pellets)の電子顕微鏡写真より、パラフィンが、液滴様ドメインの形態でキャリア成分中に含まれていることが分かる。パラフィンドメインの直径は、10〜100μmの範囲である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5885475号
【特許文献2】米国特許第4737537号
【特許文献3】米国特許第4908166号
【特許文献4】ドイツ特許第43 36 097 A1号
【特許文献5】米国特許第2003/0035951 A1号
【特許文献6】米国特許第2007/0089276 A1号
【特許文献7】米国特許第2002/0105108号
【特許文献8】国際公開第2009/118344 A1号
【特許文献9】ドイツ特許第10 2008 015 782号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献8に記載のPCM−ポリマー配合物、およびそれを製造する方法を出発点として、本発明者らは、パラフィン含有量が40〜75質量%、ならびに、それぞれ繊度が5〜70tex、および厚さが100〜1000μmである溶融紡糸繊維、および押出し箔の作製を試みた。ここで持ち上がった問題点は以下の通りであった。
− 繊維/箔の数多くの切断(特に延伸時)
− それぞれ3cN/tex未満、および30N/mm未満の低い破断力
− 浸み出しによるロスが多いこと
【0015】
上記問題点は、繊維/箔の不利な表面:体積比(それぞれ約1/半径、および約1/厚さ)が原因と考えられる。5〜70texの繊度は、繊維径にして約80〜300μmに相当する。特許文献8に記載のストランド押出しペレットに関する研究によると、パラフィンドメインの寸法は、10〜100μmの範囲である。パラフィンドメインのサイズが繊維径に対して小さくないこと、および充填レベルが75質量%までと高いことから、パラフィンドメインが繊維表面のすぐ下に存在し、それが繊維体積に対して大きいものである可能性が高い。
【0016】
紡糸および延伸の過程で繊維表面に生ずる小欠陥は、従って、著しいパラフィンの喪失、およびそれに伴う繊維の構造的弱体化、ならびに浸み出しを引き起こし得る。同様の問題が、1000μm未満の範囲の厚さである押出し箔の作製においても生じた。
【0017】
したがって、本発明の目的は、先行技術に付随する問題点を克服すること、および布地用途に適する高蓄熱容量を有する繊維状または箔様成型体を作製するためのプロセスを提供すること、から構成される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的は、その質量に基づいて、60〜10質量%のキャリア成分および40〜90質量%の相変化物質から成る可塑化混合物が提供される方法を介して達成されるものであり、ここで、可塑化混合物の質量に基づいて、キャリア成分は、5〜20質量%の、LDPE、HDPE、PMMA、ポリカーボネート、およびこれらの混合物の群から選択されるポリマーまたはポリマーブレンド、5〜20質量%のスチレンブロックコポリマー、ならびに0〜20質量%の1種もしくは2種以上の添加剤、を含み、相変化物質は、天然および合成パラフィン、長鎖ジアルキルエーテル、長鎖アルキルアルコール、低分子量高結晶度PEワックス、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物から成る群より選択され、そして、可塑化混合物は、130〜220℃の温度にて押出しダイスを通して押出され、繊維状または箔様成型体が得られるものであり、押出しダイスから排出後0.05〜4秒の時間内に、成型体は10〜80℃の範囲の温度まで急冷されることを特徴とする。
【0019】
好ましい一実施態様においては、可塑化混合物は、60〜25質量%のキャリア成分、および40〜75質量%の相変化物質から成る。
【0020】
本発明の方法は、好ましくは、キャリア成分として、および/またはスチレンブロックコポリマーとして、SEBS、SEEPS、およびPMMAなどのアモルファスポリマーを用いる。これらは、融点は示さず、その代わりにガラス転移点のみを示す。温度が上昇すると、これらはより軟質、低粘性となり、温度が低下すると、これらはそれに応じてより粘性、硬質となる。押出しダイスの温度は、従って、紡糸押出し機または紡糸ポンプの最終ゾーンにおける温度とほぼ同じか、または実際はそれより少し低くてよい(すなわち、約10〜20℃低い)。結晶ポリマーが用いられる場合は、対照的に、ダイス温度はポリマーの融点よりも高くする必要があり、そうでなければ、紡糸口金はすぐに目詰まりを起こしてしまうことになる。
【0021】
本発明の方法の実施態様は、以下を特徴とするものである。
− 成型体は、10〜50℃の範囲、好ましくは15〜40℃、特に好ましくは15〜25℃の温度まで急冷されること、
− キャリア成分および相変化物質から成る可塑化混合物は、160〜200℃の温度で押出されること、
− 成型体は、60〜600K/秒、好ましくは80〜300K/秒、特に好ましくは120〜200K/秒の平均冷却速度で急冷されること、
− キャリア成分は、2mmと等しいかこれより小さい粒子サイズの粉末ブレンドの形態で充填されて、可塑化装置中で混合、可塑化され、および、相変化物質は、50〜130℃の範囲の温度にて液体の形態で可塑化装置へ導入されて、可塑化キャリア成分と2.5〜10分間混合されること、
− 急冷プロセスにおいて、成型体は、冷却流体で処理され、とりわけ、成型体は、所望される場合は0.1〜3g/Lの濃度で界面活性剤を含んでいてよい、水浴に通されること、
− 押出しダイスから排出後、急冷前に、成型体は、0.5〜10cm、好ましくは1〜5cmのエアギャップに通されること、
− 成型体は、5〜50m/分、好ましくは10〜30m/分の速度で押出しダイスから引き出されること、
− 押出しダイスから排出後、成型体は、1.1〜2の延伸倍率で延伸されること、ならびに、
− 成型体は、続いて、2〜12の延伸倍率での延伸工程を実施されること、を含む。
【0022】
PCM物質を液体の形態で添加する必要はない。固体の形態で添加してもよい。取り込み領域(intake region)における押出しスクリューの高い充填レベルは常に有利である。これによって高いせん断力が得られ、PCMドメイン分布の均一性が向上する結果となる。
【0023】
良好な断熱性を有する加熱された紡糸口金を用いることにより、溶融フィラメントを冷却浴中、とりわけ水浴中へ直接紡糸することも可能である。この方法を用いることで、湿式紡糸プロセスを実施することができる。ここで、口金は、有利には、冷却浴中へ約1〜20mmの度合いで突き出している。口金温度は、有利には、約70〜100℃まで低下され、冷却浴温度は、有利には、約40〜60℃まで上昇される。それに対応して、溶融物の圧力も上昇する。この手順の利点は、低粘度PCM含有溶融フィラメントの急冷がさらに速くなることである。冷却液はまた、フィラメントの浮遊も引き起こし、従って、これらには、自重による切断が容易に起こらない。
【0024】
特定の一実施態様においては、冷却浴、すなわち特に水浴は、成型体の表面を疎水性化する後架橋(postcrosslinking)ポリシロキサン、好ましくはアミノ修飾ポリシロキサンを含む。この方法により、細い紡糸されたフィラメントが冷却浴中に入った際に癒着することを阻止することができる。
【0025】
本発明の別の目的は、高蓄熱容量を有し、布地用途に適する繊維状または箔様成型体を提供することから成る。
【0026】
前記目的は、その質量に基づいて、60〜10質量%のキャリア成分および40〜90質量%の相変化物質から成る成型体を介して達成されるものであり、ここで、成型体の重量に基づいて、キャリア成分は、5〜20質量%の、LDPE、HDPE、PMMA、ポリカーボネート、およびこれらの混合物の群から選択されるポリマーまたはポリマーブレンド、5〜20質量%のスチレンブロックコポリマー、ならびに0〜20質量%の1種もしくは2種以上の添加剤、を含み、相変化物質は、天然および合成パラフィン、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物から成る群より選択されるものであり、この成型体は、残留伸びが5〜100%、単位繊度あたりの破断力が7〜15cN/texである繊度が5〜70texの繊維であるか、または残留伸びが10〜100%、最大引張強度が50〜200N/mmである厚さが100〜1000μmの箔であること、ならびに相変化物質の相転移温度における熱容量が、70〜270J/gであることを特徴とする。
【0027】
本発明の成型体の実施態様は、
− その重量に基づいて、60〜10質量%のキャリア成分、および40〜90質量%の相変化物質から成ること、
− 相変化物質の相転移温度は、30〜+135℃、好ましくは−30〜+85℃の範囲であること、
− スチレンブロックコポリマーは、ジまたはトリブロックコポリマーであり、第一および第二のポリマー構成成分AおよびB、ならびに所望に応じて第三のポリマー構成成分Cを包含し、ここで、Aは、スチレンであり、BおよびCは、エチレン、ブタジエン、ブチレン、イソプレン、およびプロピレンから選択されること、
− スチレンブロックコポリマーは、SB(スチレン‐ブタジエン)、SBS(スチレン‐ブタジエン‐スチレン)、SIS(スチレン‐イソプレン‐スチレン)、SEBS(スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレン)、SEPS(スチレン‐エチレン‐プロピレン‐スチレン)、およびSEEPS(スチレン‐ポリ(イソプレン‐ブタジエン)‐スチレン)から選択されること、
− 成型体は、添加剤として、ナノスケール物質、特にはカーボンナノチューブを含むこと、および、
− 成型体は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法により製造されること、
と特徴とする。
【0028】
用いられるPCM物質はまた、既述のパラフィンの代わりに、またはそれに追加して、ジアルキルエーテルを含んでいてもよい。これらは、多くの場合、120〜300J/gの範囲の高い熱容量を示す。ジアルキルエーテルの加工性は、パラフィンのそれと同程度に良好である。しかし、長鎖アルキルアルコールおよび低分子量高結晶性PEワックスを用いることも可能である。
【0029】
本発明において、「ナノスケール物質」という表現は、粉末、分散液、またはポリマーブレンドの形態を取り、少なくとも1つの寸法、とりわけ厚さまたは直径が100nm未満である粒子を含む添加剤を包含する。用いることができるナノスケール物質またはナノスケール複合体は、従って、フィロシリケートおよびベントン(Bentone)を例とする親油性層状ミネラルであり、ここで、これらは、紡糸組成物の可塑化の過程で剥離する。この種のナノ複合体は、例として、ナノコーコーポレーション(Nanocor Corp.)(アマコルインターナショナルコーポレーション(AMCOL International Corp.))から、またはカーボンナノチューブの場合、ナノシルS.A(Nanocyl S.A.)から提供される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面および例を用いて本発明をさらに説明する。
【0031】
図1は、本発明のプロセスによる繊維の紡糸または箔の押出しのための装置100を示す。装置100は、それぞれ相変化物質(PCM)1およびポリマーキャリア成分2のための供給容器10および21、ならびに紡糸口金またはスロットダイスとして設計された押し出しダイス26を持つ押出し機20を備えている。図1に示す押出し機20の配置は垂直である。押出し機20の垂直配置は、実用上の利点を有するが、必須ではない。別の選択肢として、例えば40°〜90°の傾きで押出しダイス26へと繋がる、角度を持たせた移行セクションを持つ水平配置の押出し機を用いることも可能である。二軸押出し機が、押出し機20として特に適している。供給容器10は、有利には、パラフィンが好ましいPCM1を液化および均質化する目的で、加熱システム12およびスターラー11を有する。ライン13、および計量デバイス、特に液体計量ポンプ14は、供給容器10を押出し機チャンバー24と接続している。キャリア成分2は、一般に、ブレンドのペレットの形態を取るか、またはスチレンブロックコポリマーから成るペレット、ならびにLDPE、HDPE、PMMA、ポリカーボネート、およびこれらの混合物からのポリマーまたはポリマーブレンドから成るペレットの混合物の形態を取る。供給容器21は、さらに、ナノスケール物質、特にはカーボンナノチューブなどの添加剤を含んでいてよい。供給容器21は、1つだけとする代わりに、ポリマーキャリア成分の個々の構成成分および添加剤を備える2もしくは3つ以上の供給容器が存在していてもよい。
【0032】
方向矢印23は、図1の押出し機20内の物質が流れる方向を示している。PCM1は、キャリア成分2の後に、物質の流れ方向23に沿って導入される。キャリア成分2の構成成分は、従って、PCM1が添加される前に、ゾーン22で可塑化、混合されるものであり、所望により1種または2種以上の添加剤も同様である。また、本発明において、PCM1をキャリア成分2とともに、投入ゾーン(ingoing zone)22にて可塑化することも可能である。この目的のために、PCM1およびキャリア成分2を、1つの共有する供給容器21から、またはいずれもゾーン22に接続された2つの別々の供給容器21および10から供給することが可能である。この簡便化された手順は、比較的融点および粘度が高いPCM1に適しており、この場合、液化PCM1は、物質の流れ23に逆行する位置ずれ(displacement)や背圧を受けることがない。
【0033】
ゾーン22の長さは、押出し機20の全長に対して15〜30%である。プロセスは、PCM1の導入点から押出しダイス26までの溶融物の滞留時間が少なくとも2.5分となるように行われる。この方法により、PCM1とキャリア成分2との十分な混合が行われる。PCM1とキャリア成分2との混合を促進する目的で、二軸押出し機20を用いることが有利である。
【0034】
本発明は、PCM1と、SEBS、SBS、SEPS、SEPS、EPRを例とするPCMへの親和性を有するアモルファススチレンブロックコポリマー、およびPMMAなどの別の、特にはアモルファスポリマーから成ることが好ましく、所望される場合は無機添加剤を含んでいてもよいポリマーキャリア成分2との徹底した混合を提供する。この目的のために、二軸押出し機を用いることが好ましい。ポリマーキャリア成分2は、PCM1をPCM‐ポリマー配合物内に保持する三次元ネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造は、アモルファスポリマー、特にはPMMAによって安定化される。このポリマーは、溶融紡糸または押出しプロセスから得られるフィラメント/箔5の形態および強度に有利な効果をもたらす。同様のことが、多層カーボンナノチューブなどの添加剤にも言える。PMMAおよび所望に応じて多層カーボンナノチューブを添加することで、フィラメント/箔の切断および破断の数を減少させ、溶融紡糸プロセスまたは箔押出しプロセスの収率を高めることができる。ポリマーキャリア成分2がスチレンブロックコポリマー単独から成る場合、押出しダイス26から排出されるフィラメント/箔5の強度は、非常に弱く、紡糸物質または箔の連続した引き取りは不可能となる(比較例2を参照)。PMMA、またはLDPE、HDPE、もしくはポリカーボネートなどのその他のポリマーは、可塑化/溶融プロセスの過程でスチレンブロックコポリマーの三次元ネットワーク構造中に比較的均質に埋め込まれた状態となり、パラフィンの遊離を抑制する。この効果は、溶融物が押出しダイスから排出された後、PMMAが、パラフィンおよびスチレンブロックコポリマーよりも迅速に固化するという事実にある程度は起因すると考えられる。固化されたPMMAは、液化パラフィンの動きの自由度を低下させ、溶融フィラメントまたは箔を安定化する。
【0035】
溶融物は、フィラメント5または箔の形態で、押出しダイス26によって押出される。フィラメント/箔5は、冷却流体3を含む槽(trough)30を介して引き取られる。冷却流体3は、好ましくは、水、または水とエチレングリコールなどの凍結防止剤との混合物である。所望の場合には、第一に、フィラメント/箔5の濡れ性を良くし、従って熱伝達または冷却を改善する目的で、および第二に、フィラメント/箔の引き取りローラーまたは偏向ローラー(deflector rolls)への付着を低減し、フィラメントの癒着を抑制する目的で、界面活性剤を冷却流体3に添加してもよい。冷却流体3は、温度制御デバイスにより、−30〜+60℃の範囲の温度に保持される。冷却流体3への浸漬の前に、フィラメント/箔5は、高温の押出しダイス26を冷却流体3から断熱するエアギャップ50を通過する。冷却流体3の充填レベルまたは体積は、エアギャップ50の長さが0.5〜10cmであるように選択される。
【0036】
1つの有利な実施態様においては、冷却された窒素などの冷却されたガスが、フィラメント/箔5の急冷のための冷却流体として用いられる。このために、フィラメント5は、計量デバイスが装備されたラインにより液体窒素を含む容器と接続された管状ダクトを通して誘導される。フィラメント5の冷却速度は、管状ダクトの長さにより、および特には、管状ダクトに導入される窒素の流速によって制御される。ここで、ダクト内のガス流が層流であるように注意を払い、フィラメント5に横方向の力を及ぼして、切断を引き起こす可能性がある乱流を回避する必要がある。箔の窒素冷却については、これは、計量デバイスが装備されたラインにより液体窒素を含む容器と接続された、スロット形状の出口部を通過するように誘導される。
【0037】
押出しダイス26からのフィラメント/箔5の引き取りは、巻き取りデバイス40によって行われ、ここで、フィラメント/箔5は、押出しダイス26から巻き取りデバイス40までの途中にある偏向ローラー6によって誘導される。引き取り速度、すなわち巻き取りリールまたは巻き取りローラーの回転速度(毎分回転数)は、フィラメント/箔5が1.1〜2の延伸倍率で延伸される値に調節される。回転速度を調節または較正するために、フィラメント/箔5の平均直径の測定が、まずは押出しダイス26から排出された後にて、次に巻き取りデバイス40の前にて、公知の光学測定デバイスによって行われる。例として、光学測定デバイスは、フィラメント軸に対して垂直に配向された直線ビームプロファイルを有するレーザー光源、およびCCDセンサーを有するデジタルカメラを包含する。フィラメント5によって生じた直線ビームプロファイル中の影が、フィラメント直径またはフィラメント半径rの尺度として用いられる。rがΔrの量で減少する場合、体積の保持にはフィラメントの長さがΔlの量で長くなる必要がある。フィラメント5が円柱状であると仮定すると、長さの変化または延伸倍率(l+Δl)/lについて、以下の関係が得られる。
π・r・l = π・(r − Δr)・(l + Δl) または
(l + Δl)/l = r/(r − Δr)
【0038】
引き取り速度、すなわち巻き取りリールの回転速度は、この単純な関係、およびフィラメント5について光学的に測定された厚さ変化に基づいて較正される。
【0039】
フィルム厚さは、測定シグナルとして光減衰を用いる市販のレーザーマイクロメーターを用いて測定される。
【0040】
図1はまた、急冷後のフィラメント/箔5の温度を測定するためのサーモグラフィ測定デバイス200も示す。測定デバイス200の構造は、図2と合わせて以下でより詳細に説明する。
【0041】
図1に示さなかった更なる製造工程において、フィラメント/箔5は、続いて、延伸倍率2〜12で延伸される(200〜1200%の延伸比率)。
【0042】
続いて延伸された紡糸フィラメントの繊度は、5〜70texであり、その残留伸びは、5〜100%である。単位繊度あたりの破断力は、7〜15cN/texの範囲である。
【0043】
続いて延伸された箔の厚さは、100〜1000μmであり、その残留伸びは、10から100%であり、その最大引張強度は、50〜200N/mmである。未延伸状態の箔の残留伸びは、100〜1000%である。
【0044】
本発明のプロセスはまた、最大5000μmまでの厚さの箔を製造することもできる。一般に、特に厚さが500μm未満の場合、冷却流体の代わりに冷却ローラーを用いて箔を急冷させることも可能である。本発明のプロセスの1つの有利な態様では、箔は、続いてカレンダーローラーによってカレンダー処理される。本発明の箔は、水不透過性であり、撥水性である。2枚または3枚以上の箔を互いに融着させることができる。箔は、高い残留伸びおよび破断強度を有するため、布地、ゴム、およびその他の織物またはニットに積層するか、または縫い付けることができる。PCMの相転移点を超えて温度が上昇すると、箔の透明性が著しく高まる。箔は、加熱されると、続いて0.1〜0.8の比率で収縮する。箔は、150℃の温度までは、実質的に浸み出しによるロスがない。
【0045】
本発明の方法の一実施態様は、2つの工程(a)および(b)を含む。工程(a)は、上記で図1と合わせて説明したものと類似の方法を用いており、PCMおよりポリマーキャリア成分を、ならびに所望に応じて添加剤をも、第一の押出し機内で可塑化、混合し、これらを1もしくは複数のストランドの形態に押出し、切断ユニットによってストランドをペレット化する。工程(b)は、第二の押出し機を用いて、得られたペレットを再可塑化、再溶融し、上記で図1と合わせて説明したように、その物質を紡糸することでフィラメントが得られ、またはその物質を押出すことで箔が得られ、ここで、フィラメントまたは箔は、押出しダイスから排出された後、直ちに急冷される。本発明の方法のこの二工程の態様により、溶融紡糸手順をPCM−ポリマー配合物の製造から切り離すことが可能となり、さらに、プロセス順序および物質の流れを、これらが論理計算上の要求事項に適するように、修正および最適化することが可能となる。
【0046】
上述のように、急冷プロセスは、本発明の溶融紡糸または箔押出しプロセスの実施に不可欠である。急冷プロセスが省略された場合、フィラメント/箔の切断および破断が非常に頻繁に発生するため、1分と経たない内に押出しダイス26は完全に目詰まりを起こしてしまう。この状況は、フィラメント/箔5が紡糸口金26から排出された後にまずエアギャップ50を通過するという事実に照らすと、意外なものである。エアギャップ50の長さは0.5〜10cmであり、フィラメント/箔5は、そこでは、実質的に熱を環境中へ放出することはない。従って、エアギャップ50内でのPCM−ポリマー配合物の粘度の上昇は、ほんの僅かなものであり、特にパラフィンは、低粘度液体として、または実際は気相として存在し続ける。従って、繊維/箔の破断および切断は、主としてエアギャップ50内で発生するはずであり、続いての急冷プロセスは、前記の問題を非常に僅かに補う以上のことは何も提供することはできない。しかし、まったく驚くべきことに、そして上記の考察とは矛盾して、急冷プロセスは、繊維/箔の破断および切断の実質的に完全な阻止に成功している。急冷プロセスの有利な効果の基礎となるものは、依然として解明されていない。しかし、PCM−ポリマー配合物が押出しダイス26から排出された後、液体パラフィンおよびキャリアポリマーは脱混合し、ここで、キャリアポリマー中に乳化されたパラフィンドメインのサイズが増加すると考えられる。急冷プロセスは、この比較的急速な脱混合を効果的に抑制するものであり、従って、パラフィンドメインのサイズは、実質的に、押出し機内での押出しダイス直前の溶融物中のドメインのサイズのままである。この仮説が正しい限りにおいて、本発明において急冷された繊維/箔中のパラフィンドメインは、急冷なしでPCM−ポリマー配合物から作製される多くの成型体よりも著しく小さいはずである。そうで、本発明の繊維/箔が、浸み出し試験において実質的にパラフィンを遊離させない理由も説明される。
【0047】
押出しダイスからの排出時のフィラメント/箔の温度は、押出しダイスと同じであり、すなわち、160〜200℃の範囲である。フィラメント/箔のために本発明にとって極めて重要である急冷または冷却の速度(K/秒)を決定する目的で、フィラメント/箔の温度が、急冷プロセスの直後に測定される。図2に示された、赤外サーモグラフィに基づく測定デバイス200が、この目的のために用いられる。繊維の実施例において説明される試験方法は、箔の端部領域へ同様に適用される。測定デバイス200は、赤外カメラ70(MWIR f/4.4マイクロスコープレンズを備え、スペクトル範囲が3.4から5μmである、ジェンオプティック社(Jenoptik GmbH)製のVarioTHERM(登録商標))、および測定を必要とする繊維またはフィラメント5のものと同じPCM−ポリマー配合物から製造しておいた少なくとも2つの中実の較正体(substantial calibration bodies)(81、82)を包含する。熱電ペルチェ素子(91、92)を用いて、較正体(81、82)が所定の一定の温度TおよびTに保持される。温度センサー(93、94)を用いて、各較正体(81、82)の温度がモニタリングされる。ペルチェ素子(91、92)に導入される電力は、可変電圧供給源(95、96)によって制御され、これに対する入力シグナルとしてペルチェ素子(93、94)からの測定シグナルが用いられ、それによって、較正体(81、82)が所定の温度TおよびTに保持される。TおよびTは、測定を必要とするフィラメント5の温度Tの下および上となるように、すなわちT<T<Tとなるように選択される。
【0048】
赤外カメラ70の視野に基づいて(FOVと略す)、較正体(81、82)は、測定を必要とするフィラメント5の後方にて、互いに平行となり、約1mmの距離のギャップを介して互いに断熱されるように配置される。赤外カメラ70は、フィラメント5に焦点が合わせられ、これのイメージを、赤外センサー上の較正体(81、82)と同時に形成する。測定デバイス200により、2Kよりも良好な精度でフィラメント5の温度測定が可能となる。
【0049】
冷却速度CRは、紡糸口金の温度Tと急冷プロセス後のフィラメントの温度Tとの間の差、紡糸口金と急冷プロセス直後のTの測定点との間の引き取り距離または走行距離I、ならびに引き取り速度vから、以下の関係を用いて算出される。
CR = (T − T)・v/I
【0050】
本発明の繊維またはフィラメントの繊度は、Vibroskop 400(レンジングインスツルメンツ(Lenzing Instruments))を用いて、DIN EN ISO1973:199512による振動法によって測定される。
【0051】
繊維の強度または破断力、および残留伸びは、DIN EN ISO5079によって測定される。
【0052】
本発明で製造される箔の、強度または破断力、および残留伸びは、DIN EN ISO527−3により、25mm幅の箔片で測定される。本発明の目的のために、DIN EN ISO527‐3により測定された破断力は、断面積(=箔幅×箔厚)に基づく単位[N/mm]で表される。
【0053】
正しい温度を確実に得る目的で、それぞれ紡糸口金およびダイスのオリフィスダクトに対する特定の設計前提条件を有する本プロセスの1つの特定の態様では、紡糸浴/急冷浴中へ直接紡糸することが可能である。前記の態様は、押出しダイスと急冷浴との間にエアギャップを必要としない。
【0054】
本発明はさらに、目付けが200から2000g/mであるスパンボンド不織布を作製する目的で、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセスにおける不織布ダイスの使用も提供する。本発明のスパンボンド不織布は、自己接着性であり、100〜1000%の残留伸びを有し、また温度を上げることで、0.1〜0.8の率で収縮する。スパンボンド不織布の個々の繊維の最大引張強度は、5から15cN/texである。
【実施例】
【0055】
以下の実施例1〜4は、高蓄熱容量のPCM‐ポリマー配合物から成る熱可塑性繊維を製造するための、続く急冷を含む本発明の溶融紡糸プロセスの本質的な特徴についてより詳細に説明するものである。
【0056】
実施例1
長さ:直径比が52:1であるZSE40(ライストリッツ(Leistritz))二軸押出し機をまず用いて、パラフィン、PMMA、およびSEEPSから成るペレットを作製した。
【0057】
PMMAおよびスチレンブロックコポリマー(株式会社クラレ製Septon(登録商標)4055 SEEPS)を溶融、混合させる目的で、ZSE40押出し機の最初の2つのゾーン(セグメント4Dおよび8D)を、それぞれ250℃および260℃の温度まで加熱した。ルビサームテクノロジーズ社(Rubitherm Technologies GmbH)製RT52パラフィンを、加熱可能供給容器中にて120℃の温度まで加熱して液化し、密封された計量ランス(metering lances)および計量デバイス(膜ポンプを備えたK−TRonウェイフィーダー)により、PMMA/SEEPS溶融物へ添加した。パラフィンは、ZSE40押出し機のスクリューゾーン領域内(セグメント16Dから22D)に添加した。
【0058】
ZSE40押出し機におけるスクリューの回転速度および溶融物の総処理量は、800rmpおよび35kg/時間であり、パラフィンの供給点(セグメント16Dから22D)から押出し機出口部(セグメント52D)までの得られた平均滞留時間は、2.5分であった。
【0059】
アダプタープレートによってZSE40押出し機に接続された水中ペレタイザー(Gala水中ペレタイザー、ガラ社(Gala Inc.))を用いて溶融物をペレット化し、平均直径4.5mmのペレットを得た。
【0060】
PCM‐ポリマー配合物またはペレットの出発物質および重量比は以下の通りとした。
− 15質量%のSEEPS(Septon(登録商標)4055、株式会社クラレ)
− 15質量%のPMMA(PMMA タイプ7N 無着色、Evonik AG)
− 70質量%のPCM(Rubitherm RT52、ルビサームテクノロジーズ社)
【0061】
ペレット化ダイスの温度および水中ペレタイザーの三枚刃切断ヘッドの回転速度などのプロセスパラメータは、平均粒子径が3から8mmである種々のタイプのペレットを作製する目的で、130〜210℃、および1500〜3600rpmの範囲で変化させた。
【0062】
パラフィンの相変化温度である52.5℃における得られたペレットの蓄熱容量は、DSC(示差走査熱量測定)により120J/gと測定された。
【0063】
次に、ペレットを実験スケールの紡糸システム(Randcastle 1/4インチミニ押出し機、ランドキャッスル社(Randcastle Inc.))で紡糸し、各々の内径が400μmである12のダイスオリフィスを有するスピナレットダイスから190℃で排出されるゲル様の溶融フィラメントを、25℃の温度に制御された水浴を通して引き取り速度20m/分で取り出し、偏向ローラーおよび引き取りシステムによりゴデット上へ巻き取ることで、繊度100tex(100g/1000m)のフィラメントを得た。PCM‐ポリマー配合物から成るペレットを、Randcastle押出し機へ一定の固体流速でホッパーにより導入した。Randcastle押出し機のジャケットを、入口部から出口部へ向かって、すなわち溶融流の方向に沿って、80℃、130℃、および230℃の温度の3つの溶融ゾーンが得られるように、セグメント毎に加熱した。Randcastle押出し機のスピナレットダイスを、加熱したメタルグリッドにより190℃の温度で維持した。押出し機スクリューの回転速度は90rpmとした。
【0064】
急冷槽の水の充填レベルを調節して約3cmのエアギャップを作り、これは、ダイスの排出領域と水面との間の距離であった。エアギャップの長さを実験目的で約3.5cmに伸ばしたところ、フィラメント切断の頻度が増加した。フィラメント切断の頻度はまた、引き取り速度を20m/分から10m/分へ低下させることによっても、ほんの僅かに低減されただけであった。これとは対照的に、エアギャップを僅かに1cmとした場合、溶融紡糸プロセスは、最大30m/分までの引き取り速度にて、実質的にフィラメントの切断なく行うことができた。
【0065】
疎水性フィラメントの濡れ性、および従って冷却を良くする目的で、急冷槽中の水へ1g/Lの濃度で界面活性剤を添加した。このことは、同時に、12のフィラメントの分繊も改善した。驚くべきことに、PCM−ポリマー配合物から紡糸されたフィラメントは、ほぼ1000%という高い残留伸びを有している。
【0066】
次に、紡糸したフィラメントを、加熱エアユニット(加熱チューブ)を装備した延伸デバイス(ランドキャッスル社)にて、1:9の延伸倍率を用いて25から40℃の温度で延伸した。以下の布地素材物理パラメータを、延伸繊維/フィラメントについて測定した。
− 繊度: 11tex
− 破断力: 85cN
− 単位繊度あたりの破断力: 7.8cN/tex
− 残留伸び: 85%
【0067】
延伸繊維100gのサンプルを、50質量%のエチレングリコールおよび50質量%の水から成る混合物1000ccm中での抽出試験に掛けた。60回の連続するサイクルとして、エチレングリコール/水/繊維混合物を30〜105℃に加熱し、次に再び30℃まで冷却した。加熱および冷却サイクルの各々の継続時間は8時間とした。ここではスターラーを用いて、エチレングリコール/水/繊維混合物に一定の動きを維持した。
【0068】
60回の温度サイクル終了後、繊維を取り出し、濁度計を用いてエチレングリコール/水混合物の濁度を測定したところ、30NTUと等しいかまたはこれより小さかった。また、GC/FID(ミネラル炭化水素検出ユニット)を用いてパラフィン含有量も測定したところ、200ppmであった。
【0069】
実施例2
実施例1で用いた方法を用いて、以下で構成されるPCM−ポリマー配合物から成るペレットを作製した。
− 15質量%のSEEPS(Septon(登録商標)4055、株式会社クラレ)
− 15質量%のPMMA(PMMA タイプ7N 無着色、Evonik AG)
− 4質量%の多層カーボンナノチューブ(NC7000、ナノシルS.A)
− 66質量%のPCM(Rubitherm RT52、ルビサームテクノロジーズ社)
【0070】
ペレット化ダイスの温度および水中ペレタイザーの三枚刃切断ヘッドの回転速度などのプロセスパラメータは、平均粒子径が3〜8mmである種々のタイプのペレットを作製する目的で、130〜210℃、および1500〜3600rpmの範囲で変化させた。
【0071】
パラフィンの相変化温度である52.5℃における得られたペレットの蓄熱容量は、DSC(示差走査熱量測定)により113J/gと測定された。
【0072】
次に、ペレットを実験スケールの紡糸システム(Randcastle 1/4インチミニ押出し機、ランドキャッスル社)で紡糸し、各々の内径が400μmである12のダイスオリフィスを有するスピナレットダイスから190℃で排出されるゲル様の溶融フィラメントを、25℃の温度に制御された水浴を通して引き取り速度40m/分で取り出し、偏向ローラーおよび引き取りシステムによりゴデット上へ巻き取ることで、繊度80tex(80g/1000m)のフィラメントを得た。PCM−ポリマー配合物から成るペレットを、Randcastle押出し機へ一定の固体流速でホッパーにより導入した。Randcastle押出し機のジャケットを、入口部から出口部へ向かって、すなわち溶融流の方向に沿って、80℃、130℃、および230℃の温度の3つの溶融ゾーンが得られるように、セグメント毎に加熱した。Randcastle押出し機のスピナレットダイスを、メタルグリッドにより190℃の温度で維持した。押出し機スクリューの回転速度は90rpmとした。
【0073】
急冷槽の水の充填レベルを調節して約4.5cmのエアギャップを作り、これは、ダイスの排出領域と水面との間の距離であった。エアギャップの長さを実験目的で約5cmに伸ばしたところ、フィラメント切断の頻度が増加した。フィラメント切断の頻度はまた、引き取り速度を40m/分から10m/分へ低下させることによっても、ほんの僅かに低減されただけであった。これとは対照的に、エアギャップを3cmとした場合、溶融紡糸プロセスは、最大40m/分までの引き取り速度にて、実質的にフィラメントの切断なく行うことができた。
【0074】
疎水性フィラメントの濡れ性、および従って冷却を良くする目的で、急冷槽中の水へ1g/Lの濃度で界面活性剤を添加した。このことは、同時に、12のフィラメントの分繊も改善した。PCM−ポリマー配合物から紡糸されたフィラメントは、ほぼ1000%という高い残留伸びを有していた。
【0075】
次に、紡糸したフィラメントを、加熱エアユニット(加熱チューブ)を装備した延伸デバイス(ランドキャッスル社)にて、1:10の延伸倍率を用いて25〜40℃の温度で延伸した。PCM‐ポリマー配合物中に存在するカーボンナノチューブが、紡糸したフィラメントの強度を大きく上昇させ、非常に細いフィラメントの紡糸および延伸が可能となった。以下の布地素材物理パラメータを、延伸繊維/フィラメントについて測定した。
− 繊度: 10tex
− 破断力: 100cN
− 単位繊度あたりの破断力: 10cN/tex
− 残留伸び: 90%
【0076】
延伸繊維100gのサンプルを、50質量%のエチレングリコールおよび50質量%の水から成る混合物1000ccm中での抽出試験に掛けた。60回の連続するサイクルとして、エチレングリコール/水/繊維混合物を30から105℃に加熱し、次に再び30℃まで冷却した。加熱および冷却サイクルの各々の継続時間は8時間とした。ここではスターラーを用いて、エチレングリコール/水/繊維混合物に一定の動きを維持した。
【0077】
60回の温度サイクル終了後、繊維を取り出し、濁度計を用いてエチレングリコール/水混合物の濁度を測定したところ、30NTUと等しいかまたはこれより小さかった。また、GC/FID(ミネラル炭化水素検出ユニット)を用いてパラフィン含有量も測定したところ、200ppmであった。
【0078】
実施例3
長さ:直径比が40:1であるZSK25(コペリオン(Coperion))二軸押出し機を用いて、以下で構成されるPCM−ポリマー配合物を可塑化または溶融した。
− 15質量%のSEEPS(Septon(登録商標)4055、株式会社クラレ)
− 15質量%のPMMA(PMMA タイプ7N 無着色、Evonik AG)
− 70質量%のPCM(Rubitherm RT52、ルビサームテクノロジーズ社)
【0079】
この場合、PMMAおよびスチレンブロックコポリマー(株式会社クラレ製Septon(登録商標)4055 SEEPS)を溶融、混合する目的で、ZSK25押出し機の最初の2つのゾーン(セグメント4Dおよび8D)を、それぞれ250℃および260℃の温度まで加熱した。ルビサームテクノロジーズ社製RT52パラフィンを、加熱可能供給容器中にて120℃の温度まで加熱して液化し、密封された計量ランスおよび計量デバイス(膜ポンプを備えたK−TRonウェイフィーダー)により、PMMA/SEEPS溶融物へ添加した。パラフィンは、ZSK25押出し機のスクリューゾーン領域12Dから16Dに添加した。
【0080】
ZSK25押出し機におけるスクリューの回転速度および溶融物の総処理量は、800rmpおよび5kg/時間であり、パラフィンの供給点(セグメント12Dから16D)から押出し機出口部までの得られた平均滞留時間は、2.5分であった。
【0081】
アダプター、溶融紡糸ポンプ、加熱偏向ヘッド(heated deflector head)、および内径400μmのダイスオリフィスを100有するスピナレットダイス、さらには布フィルターにより、ZSK25押出し機の出口部から溶融物を紡糸し、太さ約150μmのフィラメントを得た。スピナレットダイスの温度は、190℃で一定に保持した。
【0082】
スピナレットダイスから、長さ3cmのエアギャップにより、25℃の温度に制御された水浴を通してフィラメントを20m/分の速度で引き取り、中間リールへ巻き取った。次に、フィラメントを、加熱エアユニット(加熱チューブ)を装備した延伸デバイス(ランドキャッスル社)にて、1:9の延伸倍率を用いて30℃の温度で延伸した。
【0083】
実施例4
長さ:直径比が52:1であるZSE40(ライストリッツ)二軸押出し機をまず用いて、C16ジアルキルエーテル(ジ−n−セチルエーテル)、PMMA、およびSEEPSから成るペレットを作製した。
【0084】
PMMAおよびスチレンブロックコポリマー(株式会社クラレ製Septon(登録商標)4055 SEEPS)を溶融、混合する目的で、ZSE40押出し機の最初の2つのゾーン(セグメント4Dおよび8D)を、それぞれ250℃および260℃の温度まで加熱した。サソールジャーマニー社(Sasol Germany GmbH)製のジ−n−セチルエーテルを、加熱可能供給容器中にて120℃の温度まで加熱して液化し、密封された計量ランスおよび計量デバイス(膜ポンプを備えたK−TRonウェイフィーダー)により、PMMA/SEEPS溶融物へ添加した。ジアルキルエーテルは、ZSE40押出し機のスクリューゾーン領域内(セグメント16Dから22D)に添加した。
【0085】
ZSE40押出し機におけるスクリューの回転速度および溶融物の総処理量は、800rmpおよび35kg/時間であり、ジ−n−セチルエーテルの供給点(セグメント16Dから22D)から押出し機出口部(セグメント52D)までの得られた平均滞留時間は、2.5分であった。
【0086】
アダプタープレートによってZSE40押出し機に接続された水中ペレタイザー(Gala水中ペレタイザー、ガラ社)を用いて溶融物をペレット化し、平均直径4.5mmのペレットを得た。
【0087】
PCM‐ポリマー配合物またはペレットの出発物質および重量比は以下の通りとした。
− 15質量%のSEEPS(Septon(登録商標)4055、株式会社クラレ)
− 15質量%のPMMA(PMMA タイプ7N 無着色、Evonik AG)
− 70質量%のPCM(ジ−n−セチルエーテル、サソールジャーマニー社)
【0088】
ペレット化ダイスの温度および水中ペレタイザーの三枚刃切断ヘッドの回転速度などのプロセスパラメータは、平均粒子径が3〜8mmである種々のタイプのペレットを作製する目的で、130〜210℃、および1500〜3600rpmの範囲で変化させた。
【0089】
ジ−n−セチルエーテルの相変化温度である54℃における得られたペレットの蓄熱容量は、DSC(示差走査熱量測定)により193J/gと測定された。
【0090】
次に、ペレットを実験スケールの紡糸システム(Randcastle 1/4インチミニ押出し機、ランドキャッスル社)で紡糸し、各々の内径が400μmである12のダイスオリフィスを有する紡糸口金から120〜130℃で排出されるゲル様の溶融フィラメントを、5℃の温度に制御された水浴を通して引き取り速度40m/分で取り出し、偏向ローラーおよび引き取りシステムによりゴデット上へ巻き取ることで、繊度100tex(100g/1000m)のフィラメントを得た。ここでは円柱型外部断熱を有する加熱ダイスを用い、これを冷却水浴中へ10mm突き出した。
【0091】
PCM−ポリマー配合物から成るペレットを、Randcastle押出し機へ一定の固体流速でホッパーにより導入した。Randcastle押出し機のジャケットを、入口部から出口部へ向かって、すなわち溶融流の方向に沿って、80℃、130℃、および230℃の温度の3つの溶融ゾーンが得られるように、セグメント毎に加熱した。Randcastle押出し機の紡糸口金のダイスプレートヘッドは、ここで冷却水浴中へ10mm突き出しており、加熱したメタルグリッドおよび適切に設計された外部断熱により190℃の内部温度で維持した。しかし、ダイスの排出点直後のPCM溶融物フィラメントの温度は、すでに120〜130℃と大きく低下しており、このことは、フィラメントを直ちに形成させるのに非常に有利であることが示された。
【0092】
押出し機スクリューの回転速度は90rpmとした。
【0093】
25℃の温度に制御された冷却水浴中に、水面下10mmまでスピナレットダイスを僅かに直接浸漬させることで、引き取り速度を50m/分まで上げても、個々のフィラメントの切断を回避することができた。
【0094】
疎水性フィラメントの濡れ性、および従って冷却を良くする目的で、急冷槽中の水へ1g/Lの濃度で界面活性剤を添加した。このことは、同時に、12のフィラメントの分繊も改善した。驚くべきことに、PCM‐ポリマー配合物から紡糸されたフィラメントは、ほぼ1000%という高い残留伸びを有している。
【0095】
次に、紡糸したフィラメントを、加熱エアユニット(加熱チューブ)を装備した延伸デバイス(ランドキャッスル社)にて、1:9の延伸倍率を用いて40から45℃の温度で延伸した。以下の布地素材物理パラメータを、延伸繊維/フィラメントについて測定した:
− 繊度: 11tex
− 破断力: 87cN
− 単位繊度あたりの破断力: 8.1cN/tex
− 残留伸び: 80%
【0096】
延伸繊維100gのサンプルを、50質量%のエチレングリコールおよび50質量%の水から成る混合物1000ccm中での抽出試験に掛けた。60回の連続するサイクルとして、エチレングリコール/水/繊維混合物を30〜105℃に加熱し、次に再び30℃まで冷却した。加熱および冷却サイクルの各々の継続時間は8時間とした。ここではスターラーを用いて、エチレングリコール/水/繊維混合物に一定の動きを維持した。
【0097】
60回の温度サイクル終了後、繊維を取り出し、濁度計を用いてエチレングリコール/水混合物の濁度を測定したところ、30NTUと等しいかまたはこれより小さかった。また、GC/FID(ミネラル炭化水素検出ユニット)を用いてジ‐n‐セチルエーテル含有量も測定したところ、120ppmであった。
【0098】
比較例1
次に、発明例1のPCM‐ポリマー配合物を、水浴を用いる代わりにダクト内の物質に冷却エアを吹き付けることでフィラメントを急冷させる紡糸実験に用いた。この実験は、フィラメントの切断が続いたためにうまく行かなかった。約10〜15cmの長さ(スピナレットダイスからの距離)の紡糸後、スピナレットダイスから引き取った12のフィラメントの多くが切断して、切断フィラメントの遊離末端がここで無傷のフィラメントまたはスピナレットダイスに付着してしまい、従って溶融紡糸プロセスを短時間で停止しなければならなかった。
【0099】
比較例2
以下で構成されるPCM‐ポリマー配合物から、発明例3のプロセスによる繊維の紡糸を試みた:
− 30質量%のSEEPS(Septon(登録商標)4055、株式会社クラレ)
− 70質量%のPCM(Rubitherm RT52、ルビサームテクノロジーズ社)
【0100】
この実験は、スピナレットダイスから190℃の温度で排出されたフィラメントがすぐに付着してしまうために、成功しなかった。ダイスの温度を段階的に130℃まで低下させても、大きく改善されることはなかった。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の質量に対して60〜10質量%のキャリア成分および40〜90質量%の相変化物質から構成される可塑化混合物から成る繊維状または箔様成型体を製造する方法であって、
前記キャリア成分は、前記可塑化混合物の質量に対して5〜20質量%の、LDPE、HDPE、PMMA、ポリカーボネート、およびこれらの混合物の群から選択されるポリマーまたはポリマーブレンド、5〜20質量%のスチレンブロックコポリマー、ならびに、0〜20質量%の1種または2種以上の添加剤、を含み、
前記相変化物質は、天然および合成パラフィン、長鎖ジアルキルエーテル、長鎖アルキルアルコール、低分子量高結晶度PEワックス、ポリエチレングリコール、ならびにこれらの混合物から成る群より選択されるものであり、
前記可塑化混合物が、130〜220℃の温度にて押出しダイスを通して押出されて、繊維状または箔様成型体が得られ、前記押出しダイスから排出後0.05〜4秒の時間内に、前記成型体は10〜80℃の範囲の温度まで急冷される、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記成型体が、10〜60℃、好ましくは15〜40℃、特に好ましくは15〜25℃の範囲の温度まで急冷されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャリア成分および相変化物質から成る前記可塑化混合物が、130〜220℃、好ましくは160〜200℃の温度で押出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記成型体が、60〜600K/秒、好ましくは80〜300K/秒、特に好ましくは120〜200K/秒の平均冷却速度で急冷されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記キャリア成分が、粒子サイズが2mm以下の粉末ブレンドの形態で充填され、可塑化装置中にて混合および可塑化され、
前記相変化物質が、50〜130℃の範囲の温度にて液体の形態で前記可塑化装置へ導入され、前記可塑化されたキャリア成分と2.5〜10分間混合されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記急冷工程において、前記成型体が冷却流体で処理され、とりわけ、前記成型体が、所望により0.1〜3g/Lの濃度で界面活性剤を含んでいてよい水浴を通されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記押出しダイスからの排出後、急冷の前に、前記成型体が、0.5〜10cm、好ましくは1〜5cmの長さのエアギャップを通されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記成型体が前記押出しダイスから引き抜かれる速度が、5〜50m/分、好ましくは10〜30m/分であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記押出しダイスからの排出後、前記成型体が、1.1〜2の延伸倍率にて延伸されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記成型体が、続いて、2〜12の延伸倍率にて延伸されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
60〜10質量%のキャリア成分および40〜90質量%の相変化物質から構成される成型体であって、
前記キャリア成分は、前記成形体に対して5〜20質量%の、LDPE、HDPE、PMMA、ポリカーボネート、およびこれらの混合物の群から選択されるポリマーまたはポリマーブレンド、5〜20質量%のスチレンブロックコポリマー、ならびに0〜20質量%の1種または2種以上の添加剤、を含み、
前記相変化物質は、天然および合成パラフィン、ポリエチレングリコール、ならびにこれらの混合物から成る群より選択されるものであり、
前記成型体は、繊度が5〜70tex、残留伸びが5〜100%、および単位繊度あたりの破断力が7〜15cN/texである繊維であるか、または厚さが100〜1000μm、残留伸びが10〜100%、および最大引張強度が50〜200N/mmである箔であり、
前記相変化物質の相転移温度におけるその熱容量は、70〜270J/gであることを特徴とする、成型体。
【請求項12】
前記相変化物質の相転移温度が、30〜+135℃の範囲内であることを特徴とする、請求項11に記載の成型体。
【請求項13】
前記スチレンブロックコポリマーが、ジまたはトリブロックコポリマーであり、第一および第二のポリマー構成成分AおよびB、ならびに所望により第三のポリマー構成成分Cを包含し、
前記Aはスチレンであり、前記Bおよび前記Cは、エチレン、ブタジエン、ブチレン、イソプレン、およびプロピレンから選択されることを特徴とする、請求項11または12に記載の成型体。
【請求項14】
前記スチレンブロックコポリマーが、SB(スチレン−ブタジエン)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)、およびSEEPS(スチレン−ポリ(イソプレン−ブタジエン)−スチレン)から選択されることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の成型体。
【請求項15】
前記添加剤として、ナノスケール物質、とりわけカーボンナノチューブを含むことを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載の成型体。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか一項に請求される方法によって製造されることを特徴とする、請求項11に記載の成型体。

【公表番号】特表2013−501649(P2013−501649A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524252(P2012−524252)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000450
【国際公開番号】WO2011/098225
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(502451568)
【Fターム(参考)】