説明

蓄熱機能付吸着材の製造方法及び蓄熱機能付吸着材並びにキャニスター

【課題】本発明の目的は、蓄熱カプセルを含む蓄熱材と吸着材とを混合した蓄熱機能付吸着材における、混合時の蓄熱カプセルの破壊、耐溶剤性の低下、長期間継続使用時の蓄熱性能の低下(熱履歴耐久性の低下)等を適切に防止して、良好な吸着・脱着性能を維持することができる技術を提供する点にある。
【解決手段】温度変化に応じて潜熱の吸収と放出を生じる相変化物質1を、高分子化合物からなる外郭2中に封入してなる蓄熱カプセル4を含む蓄熱材と吸着材とを混合する蓄熱機能付吸着材の製造方法であって、外郭2の厚みを151nm以上300nm以下の範囲に形成した後、外郭2の表面を高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂により被覆し、被覆後の蓄熱カプセル4を含む蓄熱材をバインダーにより成型した成型蓄熱材と吸着材をバインダーにより成型した成型吸着材とを、混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を、高分子化合物からなる外郭中に封入してなる蓄熱カプセルを含んで構成される蓄熱材と、吸着材とを混合する蓄熱機能付吸着材の製造方法および蓄熱機能付吸着材、並びに当該蓄熱機能付吸着材をケース内に充填したキャニスターに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の内燃機関に供給される蒸散燃料(ガソリン等)が外部(大気中など)に放出されるのを防止するために用いられるキャニスターとして、例えば、吸着式キャニスター、すなわち、車両の停車時等に余剰の蒸散燃料をケース内の吸着材に吸着し、走行時等にはケース内に大気をパージガスとして導入して吸着された蒸散燃料を脱着し、改めて内燃機関等に供給する吸着式キャニスターがある。このような吸着式キャニスターに用いられる吸着材として、例えば、特許文献1には、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を外郭中に封入してなる蓄熱カプセルで構成された蓄熱材と、吸着材とを混合してなる蓄熱機能付吸着材及びその製造方法が開示されている。
上記特許文献1に記載の蓄熱機能付吸着材によれば、吸着材の吸脱着熱による温度の上昇および下降を蓄熱材の蓄熱機能により防止して、吸着材の吸着・脱着性能の低下を防止することができる。
【0003】
すなわち、一般に、吸着材の吸着性能は吸着材の温度が高くなると低くなり、吸着材の脱着性能は吸着材の温度が低くなると低くなる。従って、吸着材にガス等が吸着されたときに発生する吸着熱により吸着材の温度が上昇すると吸着性能の低下につながる。一方、吸着材からガス等が脱着されたときは脱着による吸熱が起こり、吸着材の温度が下降すると脱着性能の低下につながる。このような吸着・脱着性能の低下は、蓄熱材として、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を外郭中に封入してなる蓄熱カプセル(マイクロカプセル、以下において同じ)を含んで構成することにより、当該相変化物質が相変化する際に潜熱の吸収若しくは放出を行って、吸着材の温度変化を最小限に抑制することができ、蓄熱材を備えないものより高い吸着・脱着性能を得ることができる。
【0004】
従来、上記蓄熱カプセルは、一般に、媒体中においてカプセル化を行い、その後、この媒体を乾燥させて固体化することにより得られる。このような固体化した蓄熱カプセルは、取り扱いが容易で、使い勝手がよいものとして広範囲の用途(例えば、キャニスター)に用いられている。
【0005】
しかしながら、上記のように媒体中においてカプセル化を行った場合には、蓄熱カプセルの外郭を構成する高分子化合物(例えば、メラミン樹脂)の重合がある程度進むが、重合度は比較的低く、高分子化合物の未反応基が相当数存在し、用途によっては蓄熱カプセルの強度が充分だとは言い切れない。このような比較的強度の低い蓄熱カプセルを水スラリー中で使用する際には、蓄熱カプセルが破壊されるおそれをほぼ考慮する必要がなかったが、当該蓄熱カプセルを乾燥させて固体化した蓄熱カプセルとして利用しようとすると、当該固体化した蓄熱カプセルを比較的強度の高い吸着材等と混合した場合などにおいて、蓄熱カプセルの破壊を生じるおそれがあり、蓄熱カプセルの破壊に伴って蓄熱性能が低下して、吸着・脱着性能が低下するおそれがある。
【0006】
また、このような固体化した蓄熱カプセルと吸着材とを混合した蓄熱機能付吸着材を、例えば、キャニスターのケース内に充填した場合などには、当該ケース内の吸着材に吸着されるガソリンなどの蒸散燃料(有機溶剤)が蓄熱カプセルの外郭を破壊あるいは透過して、当該外郭内に封入された相変化物質を外部に漏出させてしまうおそれがある。さらに、当該ケース内に存在する湿気や水分等が蓄熱カプセルの外郭を劣化させて、当該外郭を破壊し、当該外郭内に封入された相変化物質を外部に漏出させてしまうおそれがある。
このような相変化物質の外部への漏出は、蓄熱性能を低下させるとともに、吸着・脱着性能の低下を招くおそれがある。
【0007】
さらに、固体化した蓄熱カプセルの外郭中に封入された相変化物質が相変化することによる膨張と収縮により、固体状の外郭に繰り返し応力を加え、長期間の使用により蓄熱カプセルの外郭が疲労破壊され、相変化物質が漏出して(熱履歴耐久性の低下)、蓄熱性能を低下させるとともに、吸着・脱着性能の低下を招くおそれがある。
【0008】
上記問題を解決するため、特許文献2には、固体化した蓄熱カプセルの平均粒子径を3.5μm以上とした上で、当該蓄熱カプセルの外郭の膜厚を5nm以上150nm以下の範囲とする蓄熱カプセルの発明が開示されている。
【0009】
また、同様に、特許文献3には、固体化した蓄熱カプセルの平均粒子径を3.5μm未満とした上で、当該蓄熱カプセルの外郭の膜厚を1nm以上100nm以下の範囲とする蓄熱カプセルの発明が開示されている。
【0010】
上記特許文献2及び3に記載の発明によれば、平均粒子径と膜厚を適宜設定することで、蓄熱カプセルを含む蓄熱材と吸着材とを混合した際に蓄熱カプセルに繰り返し応力や外部圧力が加わった場合でも、蓄熱カプセルの破壊を防止できることとされ、長期間の使用により膨張と収縮を繰り返した場合でも、蓄熱カプセルの外郭が変形することで当該外郭の破壊を防止できる。
【0011】
【特許文献1】特開2001−145832号公報
【特許文献2】特開2006−63328号公報
【特許文献3】特開2006−63327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献2及び3に記載の発明では、蓄熱カプセルの平均粒子径と膜厚を適宜設定して、その設定範囲内において混合時及び長期間継続使用時における蓄熱カプセルの破壊をある程度防止できるものの、当該設定範囲外においては蓄熱カプセルの破壊を適切に防止するには限度がある。具体的には、蓄熱カプセルの外郭の膜厚は、厚い方が混合時の強度及び耐溶剤性の観点から有利であるが、特許文献2又は3に記載の発明では膜厚が最大でも150nmと比較的薄く、これよりも膜厚を厚くすれば、長期間継続使用時における相変化物質の膨張及び収縮による繰り返し応力に対応できず、蓄熱カプセルの外郭の疲労破壊を誘発して、蓄熱性能の低下(熱履歴耐久性の低下)とともに、吸着・脱着性能の低下をもたらすこととなりかねない。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄熱カプセルを含む蓄熱材と吸着材とを混合した蓄熱機能付吸着材における、混合時の蓄熱カプセルの破壊、耐溶剤性の低下、長期間継続使用時の蓄熱性能の低下(熱履歴耐久性の低下)等を適切に防止して、良好な吸着・脱着性能を維持することができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[第1構成]
上記目的を達成するための本発明に係る蓄熱機能付吸着材の製造方法は、特許請求の範囲の請求項1に記載した如く、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を、高分子化合物からなる外郭中に封入してなる蓄熱カプセルを含んで構成される蓄熱材と、吸着材とを混合する蓄熱機能付吸着材の製造方法であって、前記蓄熱カプセルの外郭の厚みを、151nm以上300nm以下の範囲に形成した後、前記外郭の表面を、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂により被覆し、被覆処理済みの前記蓄熱カプセルを含む前記蓄熱材をバインダーにより成型した成型蓄熱材とするとともに、前記吸着材をバインダーにより成型した成型吸着材としたうえで、前記成型蓄熱材と前記成型吸着材とを混合する点に特徴を有する。
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る蓄熱機能付吸着材は、上記第1構成の蓄熱機能付吸着材の製造方法により好適に製造されるものであり、特許請求の範囲の請求項5に記載した如く、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を、高分子化合物からなる外郭中に封入してなる蓄熱カプセルを含んで構成される蓄熱材と、吸着材とを混合した蓄熱機能付吸着材であって、前記蓄熱カプセルの外郭の厚みが、151nm以上300nm以下の範囲に形成されるとともに、前記外郭の表面に、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂の被覆層を有し、前記被覆層を有する蓄熱カプセルを含む前記蓄熱材をバインダーにより成型した成型蓄熱材と、前記吸着材をバインダーにより成型した成型吸着材とが、混合されてなる点に特徴を有する。
【0016】
上記第1構成によれば、蓄熱カプセルの外郭の厚みを可能な限り厚くするとともに、当該外郭の表面に樹脂からなる被覆層を設けて、耐溶剤性および耐水性を向上させるとともに、熱履歴耐久性を充分なものとすることとなる。
すなわち、蓄熱カプセルの外郭は、相変化物質の周りに高分子化合物が膜を作り、この膜の重合度が重合反応により高められて形成されるが、この膜が薄すぎると、吸着材と混合した場合に当該膜(外郭)が破壊され(混合時の破壊)、また有機溶剤等に接触した場合に当該有機溶剤等が膜を破壊若しくは透過して(耐溶剤性が低下)、外郭中に封入された相変化物質が漏出し蓄熱性能が低下するおそれがある。一方、蓄熱カプセルの外郭中に封入された相変化物質が温度変化を生じると相変化を繰り返しつつ膨張および収縮を生じ、蓄熱カプセルの外郭もこの影響を受けて膨張および収縮を繰り返すが、当該外郭が厚すぎると、当該膨張および収縮により外郭が変形して破壊され、外郭中に封入された相変化物質が漏出し、蓄熱性能が低下(熱履歴耐久性が低下)するおそれがある。
【0017】
したがって、蓄熱カプセルの外郭は、上記耐溶剤性および熱履歴耐久性が共に低下しない範囲の厚さに設定する必要がある。ここで、耐溶剤性をより充分なものとするためには、蓄熱カプセルの外郭を可能な限り厚く設定する必要があり、従来においては熱履歴耐久性の低下を招くため採用が困難とされていた範囲、すなわち、蓄熱カプセルの外郭の厚さの下限が、151nmとなるように設定する。これにより、外郭が厚くなるため、混合時の強度および耐溶剤性は向上する。そして、上記蓄熱カプセルの外郭の厚さの下限値が151nmという条件下において、熱履歴耐久性を充分なものとするため、蓄熱カプセルの外郭の上限を300nmとする。これにより、151nmよりも薄いことによる混合時の強度および耐溶剤性を充分なものとしつつ、300nmよりも厚いことによる熱履歴耐久性を充分なものとすることができる。
さらに、蓄熱カプセルの外郭が上記範囲内の厚さにある場合には、当該外郭の厚さが比較的厚いため、混合時の強度および耐溶剤性という観点からの蓄熱性能の低下は防止されているものの、熱履歴耐久性という観点からの蓄熱性能の低下を充分に防止できているとは言い難い。そこで、蓄熱カプセルの外郭の表面に樹脂による被覆層を設けて、熱履歴耐久性の向上を図ることができる。すなわち、蓄熱カプセルの外郭は高分子化合物で構成されており、当該高分子化合物には、カプセル化の段階で重合反応が進んでいない未反応基が相当数存在する。この未反応基と反応する基を有する樹脂を、蓄熱カプセルの外郭に被覆して被覆層を設け、未反応基の重合反応を進め、高分子化合物の重合度を高めることで、当該外郭の強度を向上させ、熱履歴耐久性を得るものであり、当該被覆層が、蓄熱カプセルの外表面を拘束して、相変化物質の膨張及び収縮による繰り返し応力が生じても蓄熱カプセルの外郭の疲労破壊を防止することができる。
また、蓄熱カプセルを含む蓄熱材同士を予めバインダーにより成型して成型蓄熱材としておくことで、後に強度の高い吸着材と混合する際に、蓄熱材が接触する面積を低下させ、吸着材による蓄熱カプセルの破壊を防止することができる。同様に吸着材同士を予めバインダーにより成型して成型吸着材としておくことで、後に蓄熱材と混合する際に、吸着材の破壊を防止することができる。
さらに、成型蓄熱材および成型吸着材は、両者共に成型されてある程度の大きさを有することから、混合状態において吸着されるガス等の流れを妨げない程度の空隙を作りつつも、両者の接触面積を確保しており、当該接触面積の低下による蓄熱性能の低下を防止しつつ、ガス等が吸着材に到達できないことによる吸着性能の低下も防止することができる。
【0018】
[第2構成]
上記目的を達成するための本発明に係る蓄熱機能付吸着材の製造方法は、特許請求の範囲の請求項2に記載した如く、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を、高分子化合物からなる外郭中に封入してなる蓄熱カプセルを含んで構成される蓄熱材と、吸着材とを混合する蓄熱機能付吸着材の製造方法であって、前記蓄熱カプセルに対する外郭の体積割合を、5%以上30%以下の範囲に形成するとともに、前記蓄熱カプセルの平均粒子径を、2.8μm以上15μm以下の範囲に形成した後、前記外郭の表面を、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂により被覆し、被覆処理済みの前記蓄熱カプセルを含む前記蓄熱材をバインダーにより成型した成型蓄熱材とするとともに、前記吸着材をバインダーにより成型した成型吸着材としたうえで、前記成型蓄熱材と前記成型吸着材とを混合する点に特徴を有する。
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係る蓄熱機能付吸着材は、上記第2構成の蓄熱機能付吸着材の製造方法により好適に製造されるものであり、特許請求の範囲の請求項6に記載した如く、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を、高分子化合物からなる外郭中に封入してなる蓄熱カプセルを含んで構成される蓄熱材と、吸着材とを混合した蓄熱機能付吸着材であって、前記蓄熱カプセルに対する外郭の体積割合が、5%以上30%以下の範囲に形成されるとともに、前記蓄熱カプセルの平均粒子径が、2.8μm以上15μm以下の範囲に形成され、前記外郭の表面に、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂の被覆層を有し、前記被覆層を有する蓄熱カプセルを含む前記蓄熱材をバインダーにより成型した成型蓄熱材と、前記吸着材をバインダーにより成型した成型吸着材とが、混合されてなる点に特徴を有する。
【0020】
上記第2構成によれば、蓄熱カプセルの平均粒子径および蓄熱カプセルにおける外郭の体積割合を適切な範囲内にするとともに、当該外郭の表面に樹脂からなる被覆層を設けて、混合時の強度、耐溶剤性および耐水性を向上させるとともに、熱履歴耐久性を充分なものとする。
すなわち、蓄熱カプセルの平均粒子径が小さ過ぎると、外郭中に封入できる相変化物質の量が少なくなって蓄熱性能が低下してしまうとともに、混合時の強度および耐溶剤性が低下するおそれがある。蓄熱カプセルの平均粒子径が大き過ぎると、蓄熱カプセルの外郭も厚くなり、相変化物質の膨張および収縮による繰り返し応力により外郭が破壊され、熱履歴耐久性が低下してしまうおそれがある。したがって、平均粒子径は、蓄熱性能、混合時の強度、耐溶剤性が低下せず、熱履歴耐久性が低下しない範囲で適切に設定する必要がある。具体的には、平均粒子径が2.8μmより小さいと、蓄熱性能、混合時の強度、耐溶剤性が低下し、平均粒子径が15μmより大きいと、熱履歴耐久性が低下する。
よって、平均粒子径を、2.8μm以上15μm以下の範囲に設定する。
また、平均粒子径が上記範囲となっていても、蓄熱カプセルにおける外郭の体積割合が変化すると、上記蓄熱性能、混合時の強度、耐溶剤性、熱履歴耐久性が低下するおそれがある。したがって、上記平均粒子径の範囲において上記蓄熱性能、混合時の強度、耐溶剤性、熱履歴耐久性が低下しない範囲として、蓄熱カプセルにおける外郭の体積割合が5%以上30%以下の範囲に設定する。
さらに、蓄熱カプセルが上記範囲内にある場合には、蓄熱カプセルの外郭の厚さが比較的厚いため、混合時の強度、耐溶剤性という観点からの蓄熱性能の低下は防止されているものの、熱履歴耐久性という観点からの蓄熱性能の低下を充分に防止できているとは言い難い。そこで、蓄熱カプセルの外郭の表面に樹脂による被覆層を設けて、熱履歴耐久性の向上を図ることができる。すなわち、蓄熱カプセルの外郭は高分子化合物で構成されており、当該高分子化合物には、カプセル化の段階で重合反応が進んでいない未反応基が相当数存在する。この未反応基と反応する基を有する樹脂を、蓄熱カプセルの外郭に被覆して被覆層を設け、未反応基の重合反応を進め、高分子化合物の重合度を高めることで、当該外郭の強度を向上させ、熱履歴耐久性を得るものであり、当該被覆層が、蓄熱カプセルの外表面を拘束して、相変化物質の膨張及び収縮による繰り返し応力が生じても蓄熱カプセルの外郭の疲労破壊を防止することができる。
また、蓄熱カプセルを含む蓄熱材同士を予めバインダーにより成型して成型蓄熱材としておくことで、後に強度の高い吸着材と混合する際に、蓄熱材が接触する面積を低下させ、吸着材による蓄熱カプセルの破壊を防止することができる。同様に吸着材同士を予めバインダーにより成型して成型吸着材としておくことで、後に蓄熱材と混合する際に、吸着材の破壊を防止することができる。
さらに、成型蓄熱材および成型吸着材は、両者共に成型されてある程度の大きさを有することから、混合状態において吸着されるガス等の流れを妨げない程度の空隙を作りつつも、両者の接触面積を確保しており、当該接触面積の低下による蓄熱性能の低下を防止しつつ、ガス等が吸着材に到達できないことによる吸着性能の低下も防止することができる。
【0021】
[第3構成]
本発明に係る蓄熱機能付吸着材の製造方法は、特許請求の範囲の請求項3に記載した如く、上記第1又は第2構成の蓄熱機能付吸着材の製造方法の構成に加えて、初期加熱温度で加熱して前記外郭を形成する外郭形成処理を経てカプセル化を行った後、完成した前記蓄熱カプセルを、前記初期加熱温度より高い再加熱温度で再加熱処理する点に特徴を有する。
【0022】
本発明に係る蓄熱機能付吸着材は、上記第3構成の蓄熱機能付吸着材の製造方法により好適に製造されるものであり、特許請求の範囲の請求項7に記載した如く、上記第1又は第2構成の蓄熱機能付吸着材の構成に加えて、初期加熱温度で加熱して前記外郭を形成する外郭形成処理を経てカプセル化を行って前記蓄熱カプセルを完成した後、前記初期加熱温度より高い再加熱温度で再加熱処理された前記蓄熱カプセルを含んで構成される点に特徴を有する。
【0023】
上記第3構成によれば、蓄熱カプセルの外郭を構成する高分子化合物を初期加熱温度(一般に70℃〜80℃程度)で加熱して、当該高分子化合物の重合度を上昇させることで外郭を形成する外郭形成処理を行ってカプセル化し、この後、完成した蓄熱カプセルの外郭を構成する高分子化合物の重合度をさらに向上させるため、初期加熱温度より高い再加熱温度で再加熱処理を行うことができる。
すなわち、上記外郭形成処理において形成された高分子化合物の重合度が低い場合であっても、完成した蓄熱カプセルを改めて初期加熱温度よりも高い再加熱温度(100℃〜140℃程度)で再加熱処理を行うことにより、当該高分子化合物の重合度をより向上させて、緻密で強固な外郭を構成することができる。
これにより、外郭を構成する高分子化合物の重合度を向上させて、蓄熱カプセルの強度のみならず、耐溶剤性、耐水性、熱履歴耐久性をも向上させた蓄熱カプセルを得ることができ、蓄熱性能を充分なものとすることができる。
上記再加熱処理は、蓄熱カプセルの外郭が外郭形成処理において初期加熱温度(比較的低温状態)で形成されて、完成した固体状の蓄熱カプセルを再加熱温度により再加熱することによっても行なうことができる。
[第4構成]
本発明に係る蓄熱機能付吸着材の製造方法は、特許請求の範囲の請求項4に記載した如く、上記第1〜3構成の何れか一つに記載の蓄熱機能付吸着材の製造方法の構成に加えて、前記高分子化合物が、メラミン樹脂であり、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂が、ポリビニルアルコールである点に特徴を有する。
本発明に係る蓄熱機能付吸着材は、上記第4構成の蓄熱機能付吸着材の製造方法により好適に製造されるものであり、特許請求の範囲の請求項8に記載した如く、上記第1〜3構成の何れか一つに記載の蓄熱機能付吸着材の構成に加えて、前記高分子化合物が、メラミン樹脂であり、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂が、ポリビニルアルコールである点に特徴を有する。
【0024】
上記第4構成によれば、蓄熱カプセルの外郭を構成する高分子化合物としてのメラミン樹脂の表面において重合反応が行われたにもかかわらず、未反応で残存している未反応基に、反応する基を有する樹脂としてのポリビニルアルコールが被覆されて、当該未反応基及び反応する基が反応し重合反応が進むことにより、メラミン樹脂とポリビニルアルコールとの結合が強くなり、蓄熱カプセルの外郭の強度が向上することとなる。
特に、ポリビニルアルコールは、親水性の樹脂の中でも特に水酸基を多く含み、かつ熱可塑性樹脂であることから、メラミン樹脂の表面に被覆することにより、被覆された被覆層のガスバリア性、柔軟性および成膜性をより一層高いものとすることができる。また、メラミン樹脂は、機械的強度が強く、ガスバリア性の高い疎水性の樹脂である。したがって、蓄熱カプセルの外郭の強度をより一層強化して、相変化物質の膨張および収縮による繰り返し応力に充分に対抗することができる。
よって、混合時の強度、耐溶剤性の向上のみならず、熱履歴耐久性の向上をも図ることができる。
【0025】
[第5構成]
本発明に係るキャニスターは、特許請求の範囲の請求項9に記載した如く、上記第1〜4構成の何れか一つに記載の蓄熱機能付吸着材を、ケース内に充填してなる点に特徴を有する。
【0026】
上記第5構成によれば、強度の強化された蓄熱カプセルを含む蓄熱材(成型蓄熱材)と吸着材(成型吸着材)とを混合して、キャニスターのケース内に充填することができ、当該蓄熱材(成型蓄熱材)と吸着材(成型吸着材)との混合時およびケース内への充填時に蓄熱カプセルが破壊されること無く、良好な蓄熱性能、吸着・脱着性能を発揮することができる。
また、キャニスターのケース内にガソリンなどの蒸散燃料や水分が導入されたとしても、蓄熱カプセルの耐溶剤性および耐水性は向上しているので、蓄熱カプセルが破壊され、相変化物質が漏出することはないため、蓄熱性能の低下はなく、良好な蓄熱性能、吸着・脱着性能を発揮することができる。
さらに、キャニスターのケース内の温度変化による相変化物質の膨張および収縮による繰り返し応力が、蓄熱カプセルの外郭に加わったとしても、当該外郭はこの力に耐えうる強度を備えており破壊されることはないため、長期間の使用により膨張および収縮が繰り返されたとしても蓄熱性能の低下はなく、良好な蓄熱性能、吸着・脱着性能を発揮することができる。
したがって、上記蓄熱機能付吸着材は、キャニスターに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に係る蓄熱機能付吸着材7の製造方法(以下、本方法と略称する)の実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
本方法は、図1及び図2に示すように、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質1を、高分子化合物8からなる外郭2中に封入してなる蓄熱カプセル4を含んで構成される蓄熱材5と、吸着材6とを混合する蓄熱機能付吸着材7の製造方法であり、上記蓄熱カプセル4について、当該蓄熱カプセル4の外郭2の厚みを所定の範囲の厚さに形成した後、当該外郭2の表面に樹脂9の被覆層3を設け、被覆処理済みの蓄熱カプセル4を含む蓄熱材5をバインダー10により成型した成型蓄熱材5aとするとともに、吸着材6をバインダー10により成型した成型吸着材6aとしたうえで、成型蓄熱材5aと成型吸着材6aとを混合するものである。
図1は、蓄熱カプセル4の概略構成を示す図であり、図2は、後述する粉末状の蓄熱カプセル4(実質的にこの蓄熱カプセル4が蓄熱機能を果たす)がバインダー10により成型される成型蓄熱材5aの製造過程、粉末状の吸着材6がバインダー10により成型される成型吸着材6aの製造過程、成型蓄熱材5aと成型吸着材6aとを混合して製造される蓄熱機能付吸着材7の製造過程を示す図である。
【0028】
[蓄熱カプセル4]
蓄熱カプセル4は、図1に示すように、温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質1を外郭2中に封入してなるマイクロカプセルにより構成される。
上記相変化物質1としては、相変化に伴って潜熱の吸収および放出を生じる化合物であれば、特に制限されないが、蓄熱機能付吸着材7の用途に対応して相変化を生じる温度(例えば融点、凝固点など)を選択することができ、例えば、融点が−150℃〜100℃程度、キャニスター用として好ましくは、0℃〜50℃程度の有機化合物および無機化合物からなる。具体的に例示すると、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンイコサン、ドコサンなどの直鎖の脂肪族炭化水素、天然ワックス、石油ワックス、LiNO3・3H2O、Na2SO4・10H2O、Na2HPO4・12H2Oなどの無機化合物の水和物、カプリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸、炭素数が12〜15の高級アルコール、パルミチン酸メチル等のエステル化合物などを用いることができる。なお、相変化としては、固体−液体間等の相変化を例示することができる。
上記相変化物質1は、上記から選ばれる2種以上の化合物を併用してもよい。2種以上の相変化物質1を併用する場合、各相変化物質1の相変化を生じる温度の差が、0℃〜100℃程度、キャニスター用として好ましくは、0℃〜15℃となるような組み合わせが好ましい。
また、相変化物質1の過冷却現象を防止するために、必要に応じて相変化物質1の融点より高融点の化合物を添加して用いてもよい。
【0029】
そして、これらを芯材料として、例えば、コアセルベーション法、in−situ法(界面反応法)等の公知の方法により、マイクロカプセルとしたものを蓄熱カプセル4として用いることができる。例えば、相変化物質1を媒体中で界面活性剤等の乳化剤を用いて乳化し、これに後述する所望の高分子化合物8に対応する初期縮合物(プレポリマー)を添加した後、70℃程度に加熱し、重合反応を進めることにより外郭2を有し(初期加熱温度で加熱して、外郭2を形成する外郭形成処理に相当)、相変化物質1を外郭2中に封入した蓄熱カプセル4の分散液(スラリー)を調整することができる。
反応終了後、上記蓄熱カプセル4の分散液にポリビニルアルコールを加え、再度攪拌を行った後、スプレードライ法にて乾燥することによって、メラミン樹脂からなる外郭2の表面にポリビニルアルコールからなる被覆層3を形成した粉末状の蓄熱カプセル4を得ることができる。
【0030】
蓄熱カプセル4の外郭2の厚み(膜厚)は、相変化物質1および外郭2を構成する高分子化合物8の量、相変化物質1を乳化する際の攪拌速度、時間、温度等を調整することにより、151nm以上300nm以下の範囲に設定する。
蓄熱カプセル4の外郭2の厚さの下限値を151nmと設定すると、外郭2を可能な限り厚くして、従来、熱履歴耐久性との関係から採用が困難とされていた範囲において、混合時の強度および耐溶剤性を向上させることができる。そして、上記蓄熱カプセル4の外郭2の厚さの下限値が151nmという条件下において、熱履歴耐久性を充分なものとするため、蓄熱カプセル4の外郭2の厚さの上限値を300nmとする。これにより、151nmよりも薄いことによる混合時の強度および耐溶剤性の低下を防止しつつ、300nmよりも厚いことによる熱履歴耐久性の低下を防止することができる。
蓄熱カプセル4の外郭2の厚み(膜厚)は、好ましくは185nm〜250nm、より好ましくは200nm〜240nm、最も好ましくは220nmである。この範囲とすることで、従来、採用が困難とされていた膜厚が比較的厚い場合においても、熱履歴耐久性を充分なものとしつつ、混合時の強度および耐溶剤性を向上させることができる。具体的には、上記外郭2の厚みの下限を、好ましくは185nm、より好ましくは200nmとすることにより、混合時の強度および耐溶剤性を、より一層向上させることができ、上記外郭2の厚みの上限を、好ましくは250nm、より好ましくは240nmとすることにより、熱履歴耐久性の低下をより一層防止することができる。特に、上記外郭2の厚みを、220nmとすることにより、混合時の強度および耐溶剤性の向上ならびに熱履歴耐久性の低下の防止を両立させて、最良の状態とすることができた。
ここで、蓄熱カプセル4の外郭2の厚み(膜厚)が151nmのとき、蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合は30%であって、蓄熱カプセル4の平均粒子径は3.6μmであり、外郭2の厚みが160nmのとき、体積割合は20%程度であって、平均粒子径は3.5μm程度であった。同様に、外郭2の厚みが185nmのとき、体積割合は16%程度であって、平均粒子径は6μm程度であり、外郭2の厚みが200nmのとき、体積割合は14%程度であって、平均粒子径は7μm程度であった。また、同様に、外郭2の厚みが220nmのとき、体積割合は17%程度であって、平均粒子径は7μm程度であった。
なお、上記外郭2の厚み(膜厚)は、蓄熱カプセル4の固形物をミクロトームにより切断した断面を走査顕微鏡で観察することにより測定した。
上記重合反応を行う時間は1時間以上5時間以下であり、温度は70℃以上90℃以下である。上記外郭2の厚み(膜厚)は、所望のカプセル粒径になるように相変化物質1を乳化させ、そこに外郭2を構成する高分子化合物8を所定量添加することにより、制御することができる。添加する高分子化合物8の量は、所望の、蓄熱カプセル4の平均粒子径、外郭2の厚み(膜厚)、蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合により計算して、求めた。
【0031】
蓄熱カプセル4(マイクロカプセル)の外郭2としては、公知の高分子化合物8を特に制限なく用いることができるが、例えば、ホルムアルデヒド−メラミン樹脂、メラミン樹脂、ホルムアルデヒド−尿素樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルムアルデヒド−ポリアクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリブチルメタクリレート、ゼラチン等を用いることができる。好ましくは、熱硬化性樹脂、特にメラミン樹脂を用いるとよい。
蓄熱カプセル4の外郭2と相変化物質1との重量比(外郭2:相変化物質1)は、特に制限されないが、通常40:60〜5:95程度、好ましくは30:70〜10:90程度である。
蓄熱カプセル4の平均粒子径は、必要な蓄熱量、カプセル強度から適宜選択することができるが、所望の蓄熱性能を確保しつつ、蓄熱カプセル4の破壊を防止することができる、2.8μm以上15μm以下の平均粒子径がよい。この際、蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合は5%以上30%以下がよい。なお、平均粒子径とは、蓄熱カプセル粒子の体積換算値の平均粒子径を表すものであり、一定体積の粒子を小さいものから順に篩い分けし、その50%体積に当たる粒子が分別された時点での粒子径をいう。
被覆層3は、高分子化合物8の未反応基と反応する基を有する樹脂9であれば、特に制限されないが、親水性樹脂であるポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、エチレンビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール−ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン−ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン−ポリビニルアルコール共重合体などが好ましく、特にポリビニルアルコールが好ましい。なお、高分子化合物8が、メラミン樹脂である場合の未反応基は、メチロール基であり、この未反応基と反応するポリビニルアルコールが有する基は、水酸基、酢酸基(原料であるポリ酢酸ビニルの残渣基)である。また、高分子化合物8が、メラミン樹脂である場合の未反応基と反応する基を有する樹脂9は、メチロール化合物、フェノール樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アクリル酸、アルデヒド化合物等を用いることができる。
被覆層3を形成する樹脂9の添加量としては、蓄熱カプセル4に対して、1質量%〜5質量%、好ましくは、1質量%〜3質量%がよい。
【0032】
[蓄熱材5(成型蓄熱材5a)]
図2に示すように、蓄熱材5は、上記蓄熱カプセル4を含んで構成され、吸着材6と混合できればよく、本実施形態の場合、粉末状の蓄熱カプセル4を用いる。すなわち、蓄熱カプセル4を含む分散液を乾燥させることにより粉末状の蓄熱カプセル4を得ることができ、さらに、図2に示すように、粉末状の蓄熱カプセル4をバインダー10と混錬して公知の造粒機により成型蓄熱材5aとすることができる。
バインダー10としては、公知のバインダーを用いることができるが、蓄熱機能付吸着材7の使用用途、条件に応じて、適宜選択することができ、例えば、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等のセルロース、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、アミドエステル等を用いることができる。特に、当該蓄熱機能付吸着材7をキャニスターに用いる場合には、耐溶剤性(耐蒸散燃料性)、耐水性が要求されるため、この要求を満たすバインダー10を用いることが必要である。例えば、フェノール系、アクリル系、イソシアネート系、メラミン系、ウレタン系、アミドエステル系等の熱硬化性樹脂で、成型蓄熱材5aのJIS硬度(JIS K 1474)が90%以上となる熱硬化性樹脂が好ましい。
成型蓄熱材5aの形状は、特に制限されないが、ペレット(円柱状、球状)、ディスク、ブロック、ハニカム等の任意の形状に成型することができる。また、平均粒子径は、特に制限されないが、通常、0.1mm〜4mm程度、好ましくは0.3mm〜3.5mm程度、より好ましくは0.5mm〜2.5mm程度から選択することができる。
【0033】
[吸着材6]
吸着材6は、ガス等を吸着することができる公知の吸着材、キャニスターの場合には蒸散燃料を吸着することができる公知の吸着材を用いることができるが、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、有機金属錯体(フマル酸銅、テレフタル酸銅、シクロヘキサンジカルボン酸銅など)など、またはこれらの混合物を用いることができる。
吸着材6が吸着対象とするガス等としては、メタン、メタンを主成分とするガス(天然ガス、消化ガスなど)、エタン、プロパン、ジメチルエーテル、CO2、硫化水素、酸素、窒素、NOX、SOX、CO、アセチレン、エチレン、アンモニア、メタノール、エタノール、水、クロロホルム、アルデヒドなどが例示されるが、吸着材6がキャニスターのケース内に充填される場合には、蒸散燃料、特に、ガソリンとなる。
吸着材6は、例えば、活性炭などを破砕したもの等を用いてもよく、このような活性炭などを成型して成型吸着材6aとして用いる。この成型については、図2に示すように成型蓄熱材5aの場合と同様にバインダー10と混錬して、同様の形状、平均粒子径に成型を行うことができる。
【0034】
[蓄熱機能付吸着材7]
蓄熱機能付吸着材7は、蓄熱カプセル4を含んで構成される成型蓄熱材5aと成型吸着材6aとを混合して構成される。ここで、混合の方法は特に制限されない。例えば、図2に示すように、成型蓄熱材5aと成型吸着材6aとを混ぜ合わせて蓄熱機能付吸着材7を得ることができる。
【0035】
以下、本方法を、実施例を用いて具体的に説明する。
なお、本方法は、蓄熱カプセル4を含んで構成される蓄熱材5(成型蓄熱材5a)と吸着材6(成型吸着材6a)とを混合する蓄熱機能付吸着材7の製造方法であるが、以下の実施例においては、上記蓄熱機能付吸着材7の蓄熱性能等を評価するに当たり、蓄熱カプセル4の蓄熱性能等を評価することにより行うこととする。
(実施例1)
メラミン粉末5gに37%ホルムアルデヒド水溶液6.5gと水10gを加え、pHを8に調整した後、約70℃まで加熱しメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。pHを4.5に調整したスチレン無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100g中に、相変化物質1としてヘキサデカン68gを溶解した混合液を激しく攪拌しながら添加し、平均粒子径が7μm程度になるまで乳化を行った。この乳化された水溶液中に、上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液全量を添加し、70℃で2時間攪拌を行った後、pHを9に調整しカプセル化を行った(初期加熱温度で加熱して、外郭2を形成する外郭形成処理に相当)。このカプセル化処理により、メラミン樹脂からなる外郭2中に相変化物質1としてのヘキサデカンが封入された蓄熱カプセル4の分散液を得た。反応終了後、上記蓄熱カプセル4の分散液に、当該蓄熱カプセル4に対して1質量%となるようにポリビニルアルコールを加え、再度攪拌を行った後、スプレードライ法にて乾燥することによって、メラミン樹脂からなる外郭2の表面にポリビニルアルコールからなる被覆層3を形成した粉末状の蓄熱カプセル4を得た。なお、当該粉末状の蓄熱カプセル4をバインダー10により成型した成型蓄熱材5aと、吸着材6をバインダー10により成型した成型吸着材6aとを混合して、蓄熱機能付吸着材7を得ることができる。
この際の蓄熱カプセル4の平均粒子径は約7μmであり、蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合は17%であった。また、外郭2の厚みは220nmであった。
【0036】
図3に、当該蓄熱カプセル4をE10ガソリン(ガソリン90質量%にエタノールを10質量%の割合で混合した溶剤)に浸漬した時間と、浸漬した蓄熱カプセル4をヘキサンにて洗浄し80℃で真空乾燥後、蓄熱可能な熱量を示差走査熱量測定(DSC)により評価した結果(熱量)との関係を示す。
結果、図3に示すように、ポリビニルアルコールの被覆層3を設けた蓄熱カプセル4の場合には(実施例1)、浸漬時間が600時間を経過しても蓄熱性能がほとんど低下していないことが判明した。これは、外郭2の表面に被覆層3が存在することにより、E10ガソリンによっては外郭2の破壊および透過がほぼ進行せず、相変化物質1が外部に漏出することを防止して、蓄熱性能の低下が防止されているものと考えられる。
【0037】
(比較例1)
実施例1と同様の方法により、蓄熱カプセル4の分散液を作成した後、当該分散液にポリビニルアルコールを加えることなく、スプレードライ法にて乾燥することによって、蓄熱カプセル4を得た。
結果、図3に示すように、被覆層3を設けない蓄熱カプセル4の場合には(比較例1)、浸漬時間が300時間を経過する前に蓄熱性能が低下することが判明した。これは、E10ガソリンによって高分子化合物8からなる外郭2を破壊若しくは透過して、相変化物質1が外部に漏出し、蓄熱性能が低下しているものと考えられる。
【0038】
したがって、蓄熱カプセル4の外郭2の表面に被覆層3を設けたものと設けないものとでは、E10ガソリンに対する耐性が異なり、当該被覆層3を設けることにより外郭2の破壊や透過を防止して、蓄熱性能の低下を防止できることが判明した。
【0039】
(実施例2)
図4に、実施例1と同様の方法により製造した蓄熱カプセル4を用いて、相変化温度をまたぐように繰り返し熱履歴をかけ、液相と固相との相変化を所定回数起こした場合の蓄熱可能な熱量を示差走査熱量測定(DSC)により評価した結果(熱量)を示す。
図4に示すように、実施例1と同様の方法により平均粒子径が7μmとなるように製造した蓄熱カプセル4を用いた場合には(実施例2)、2500回以上繰り返し熱履歴を行っても蓄熱量はほとんど低下していないことが判明した。これは、蓄熱カプセル4の外郭2の厚さ、平均粒子径及び蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合が適切であることにより、相変化物質1の膨張及び収縮による繰り返し応力に対抗することができるよう外郭2の強度が適切に維持されて、蓄熱性能の低下が防止されているものと考えられる。なお、実施例2において用いた平均粒子径が7μmの蓄熱カプセル4の外郭2の厚さは220nmであり、蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合は17%であった。
【0040】
(比較例2)
図4に示すように、実施例1と同様の方法により平均粒子径が16μmとなるように製造した蓄熱カプセル4を用いた場合には(比較例2)、1000回程度繰り返し熱履歴を行うと蓄熱量が低下することが判明した。なお、比較例2において用いた平均粒子径が16μmの蓄熱カプセル4の外郭2の厚さは510nmであり、蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合は17%であった。
【0041】
したがって、蓄熱カプセル4の平均粒子径が16μm以上となると外郭2が厚くなり過ぎて、相変化物質1の相変化による膨張と収縮に対応できず、外郭2が破壊されてしまい、相変化物質1が外部に漏出して蓄熱性能が低下するものと考えられる。よって、平均粒子径を15μm以下として、熱履歴耐久性の低下を防止することが望ましい。
【0042】
(実施例3)
図5に、実施例1と同様の方法により製造した蓄熱カプセル4をガソリンに浸漬した時間と、浸漬した蓄熱カプセル4をヘキサンにて洗浄し80℃で真空乾燥後、蓄熱可能な熱量を示差走査熱量測定(DSC)により評価した結果(熱量)との関係を示す。
図5に示すように、実施例1と同様の方法により平均粒子径が7μmとなるように製造した蓄熱カプセル4を用いた場合には(実施例3)、ガソリンに500時間以上浸漬しても蓄熱量はほとんど低下していないことが判明した。これは、蓄熱カプセル4の外郭2の厚さ、平均粒子径及び蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合が適切であることにより、蓄熱カプセル4の外郭2の強度、特に耐溶剤性が向上して、蓄熱性能の低下が防止されているものと考えられる。なお、実施例3において用いた平均粒子径が7μmの蓄熱カプセル4の外郭2の厚さは220nmであり、蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合は17%であった。
【0043】
(実施例4)
図5に示すように、実施例1と同様の方法により平均粒子径が3.5μmとなるように製造した蓄熱カプセル4を用いた場合には(実施例4)、ガソリンに370時間以上浸漬しても蓄熱量はほとんど低下していないことが判明した。これは、実施例3の場合と同様に、蓄熱カプセル4の外郭2の厚さ、平均粒子径及び蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合が適切であることにより、蓄熱カプセル4の外郭2の強度、特に耐溶剤性が向上して、蓄熱性能の低下が防止されているものと考えられる。なお、実施例4において用いた平均粒子径が3.5μmの蓄熱カプセル4の外郭2の厚さは160nmであり、蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合は30%であった。
【0044】
(比較例3)
図5に示すように、実施例1と同様の方法により平均粒子径が2μmとなるように製造した蓄熱カプセル4を用いた場合には(比較例3)、20時間程度以上ガソリンに浸漬を行うと蓄熱量が低下することが判明した。なお、比較例3において用いた平均粒子径が16μmの蓄熱カプセル4の外郭2の厚さは500nmであり、蓄熱カプセル4に対する外郭2の体積割合は14%であった。
【0045】
したがって、蓄熱カプセル4の平均粒子径が2μm以下となると外郭2が薄くなり過ぎて、ガソリンによる外郭2の破壊や浸透に対抗できず、相変化物質1が外部に漏出してしまい、蓄熱性能が低下するものと考えられる。一方、平均粒子径が3.5μm以上の場合には、外郭2の厚みが充分に確保されており、相変化物質1が外部に漏出することによる、蓄熱性能の低下は生じていないものと考えられる。よって、平均粒子径を上記各平均粒子径の中間点付近である2.8μm以上として、蓄熱性能の低下を防止することが望ましい。
【0046】
〔別実施形態〕
(1)
上記第1実施形態では、本方法により製造された蓄熱機能付吸着材7の用途は特に限定していないが、当該蓄熱機能付吸着材7を、特にキャニスターに用いることもできる。
ここで、キャニスターとは、一般に、車両等の内燃機関に供給される蒸散燃料(有機溶剤等)が外部(大気中など)に放出されるのを防止するために、車両の停車時等には余剰の蒸散燃料をケース内の吸着材6に吸着し、走行時等にはケース内に大気をパージガスとして導入して、吸着された蒸散燃料を脱着し、改めて内燃機関等に供給するものである。
【0047】
キャニスターにおいては、固体化した蓄熱材5と吸着材6とを混合した蓄熱機能付吸着材7をケース内に充填して用いることがあるが、この場合、比較的強度の高い吸着材6に固体化した蓄熱材5が破壊されて、蓄熱性能が低下するおそれがある。
また、当該キャニスターのケース内に充填された蓄熱機能付吸着材7は、ガソリン等の蒸散燃料に接触するとともに、大気などに含まれる水分に接触することから耐溶剤性(例えば、耐ガソリン性)、耐水性が要求される。
さらに、当該キャニスターのケース内に充填された蓄熱機能付吸着材7は、蓄熱材5に含まれる相変化物質1が相変化することにより膨張と収縮を繰り返すことから、熱履歴耐久性が要求される。
【0048】
したがって、第1実施形態において説明した、強度が高く、耐溶剤性、耐水性に優れ、さらに、熱履歴耐久性にも優れた蓄熱カプセル4により構成される蓄熱機能付吸着材7を、キャニスターのケースに充填して用いると、長期間にわたり、吸着・脱着性能の低下を防止することができるキャニスターを得ることができる。
【0049】
なお、キャニスターは、ケース内にガソリン等の蒸散燃料が流通する流通路が設けられ、当該流通路の一端側の壁には、蒸散燃料が流入する流入口と蒸散燃料が流出する流出口とが設けられ、当該流通路の他端側の壁には、大気が流入する大気流入口が設けられている。
このようなキャニスターにおいては、車両停止時等には燃料タンクから流入口を通じて流入した蒸散燃料が、ケース内の流通路に充填された蓄熱機能付吸着材7に吸着され、車両走行時には当該吸着された蒸散燃料が、大気流入口から流入した大気により脱着させられて、当該蒸散燃料が流出口から内燃機関へ供給され燃焼させられる、という蒸散燃料の吸着・脱着操作が行われる。
【0050】
(2)
上記第1実施形態では、樹脂9として架橋剤により架橋されていない樹脂9を用いたが、樹脂により被覆層3を形成する際には、架橋剤により架橋された樹脂を用いることもできる。特に、樹脂としてポリビニルアルコールを用いる場合には、架橋剤として、エチレンジアミン、尿素などのアミン化合物、グリオキサール、ホルマリンなどのアルデヒド化合物、水溶性メラミン樹脂などのメチロール化合物、多官能エポキシ樹脂などのエポキシ化合物、多官能イソシアネートなどのイソシアネート化合物、硝酸ジルコニア、塩化ジルコニア、チタンアルコキシドなどの金属塩等を用いることができる。
この際には、上記第1実施形態と同様に蓄熱カプセル4の分散液を調整し、この分散液に樹脂としてポリビニルアルコールを添加した後、上記架橋剤を蓄熱カプセルに対して0.1質量%〜3質量%混合して、当該分散液をスプレードライにより乾燥させることにより架橋された樹脂による被覆層3を形成することができる。
また必要に応じて、上記架橋剤が混合された分散液を、上記スプレードライの前に室温から80℃にて加熱攪拌することにより、架橋された樹脂による被覆層3を形成することもできる。
【0051】
(3)
上記第1実施形態では、蓄熱カプセル4の外郭2を構成する高分子化合物8の重合度を高めるために、初期加熱温度(一般に70℃〜80℃程度)で外郭形成処理のみを行って、再加熱処理を行わなかったが、外郭形成処理によって外郭2を形成してカプセル化した後、完成した蓄熱カプセル4に初期加熱温度よりも高い温度(100℃〜140℃程度)で再加熱処理を行なうことができる。
すなわち、上記外郭形成処理において形成された高分子化合物8の重合度が低い場合であっても、改めて初期加熱温度よりも高い温度で再加熱処理を行うことにより、当該高分子化合物8の重合度をより向上させて、緻密で強固な外郭を構成することができる。
これにより、外郭2を構成する高分子化合物8の重合度を向上させて、蓄熱カプセル4の強度のみならず、耐溶剤性、耐水性をも向上させた蓄熱カプセル4を得ることができ、蓄熱性能を充分なものとすることができる。
上記再加熱処理は、外郭形成処理において蓄熱カプセル4の外郭2が初期加熱温度(比較的低温状態)で形成され、完成した固体状の蓄熱カプセル4を再加熱温度(比較的高温状態)により再加熱することによっても行なうことができる。
なお、再加熱処理は、固体状の蓄熱カプセル4の被覆層3が形成される前であっても後であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る蓄熱機能付吸着材の製造方法は、蓄熱カプセルを含む蓄熱材と吸着材とを混合した蓄熱機能付吸着材における、混合時の蓄熱カプセルの破壊、耐溶剤性の低下、長期間継続使用時の蓄熱性能の低下(熱履歴耐久性の低下)等を適切に防止して、良好な吸着・脱着性能を維持することができる技術として有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態における蓄熱カプセルの概略構成図
【図2】第1実施形態における蓄熱機能付吸着材の製造方法の概略を示す図
【図3】E10ガソリンへの浸漬時間と蓄熱量の関係を示すグラフ図
【図4】繰り返し熱履歴回数と蓄熱量の関係を示すグラフ図
【図5】ガソリンへの浸漬時間と蓄熱量の関係を示すグラフ図
【符号の説明】
【0054】
1:相変化物質
2:外郭
3:被覆層
4:蓄熱カプセル
5:蓄熱材
5a:成型蓄熱材
6:吸着材
6a:成型吸着材
7:蓄熱機能付吸着材
8:高分子化合物
9:樹脂
10:バインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を、高分子化合物からなる外郭中に封入してなる蓄熱カプセルを含んで構成される蓄熱材と、吸着材とを混合する蓄熱機能付吸着材の製造方法であって、
前記蓄熱カプセルの外郭の厚みを、151nm以上300nm以下の範囲に形成した後、前記外郭の表面を、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂により被覆し、
被覆処理済みの前記蓄熱カプセルを含む前記蓄熱材をバインダーにより成型した成型蓄熱材とするとともに、前記吸着材をバインダーにより成型した成型吸着材としたうえで、前記成型蓄熱材と前記成型吸着材とを混合する蓄熱機能付吸着材の製造方法。
【請求項2】
温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を、高分子化合物からなる外郭中に封入してなる蓄熱カプセルを含んで構成される蓄熱材と、吸着材とを混合する蓄熱機能付吸着材の製造方法であって、
前記蓄熱カプセルに対する外郭の体積割合を、5%以上30%以下の範囲に形成するとともに、前記蓄熱カプセルの平均粒子径を、2.8μm以上15μm以下の範囲に形成した後、前記外郭の表面を、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂により被覆し、
被覆処理済みの前記蓄熱カプセルを含む前記蓄熱材をバインダーにより成型した成型蓄熱材とするとともに、前記吸着材をバインダーにより成型した成型吸着材としたうえで、前記成型蓄熱材と前記成型吸着材とを混合する蓄熱機能付吸着材の製造方法。
【請求項3】
初期加熱温度で加熱して前記外郭を形成する外郭形成処理を経てカプセル化を行った後、
完成した前記蓄熱カプセルを、前記初期加熱温度より高い再加熱温度で再加熱処理する請求項1又は2に記載の蓄熱機能付吸着材の製造方法。
【請求項4】
前記高分子化合物が、メラミン樹脂であり、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂が、ポリビニルアルコールである請求項1〜3の何れか一項に記載の蓄熱機能付吸着材の製造方法。
【請求項5】
温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を、高分子化合物からなる外郭中に封入してなる蓄熱カプセルを含んで構成される蓄熱材と、吸着材とを混合した蓄熱機能付吸着材であって、
前記蓄熱カプセルの外郭の厚みが、151nm以上300nm以下の範囲に形成されるとともに、前記外郭の表面に、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂の被覆層を有し、
前記被覆層を有する蓄熱カプセルを含む前記蓄熱材をバインダーにより成型した成型蓄熱材と、前記吸着材をバインダーにより成型した成型吸着材とが、混合されてなる蓄熱機能付吸着材。
【請求項6】
温度変化に応じて潜熱の吸収および放出を生じる相変化物質を、高分子化合物からなる外郭中に封入してなる蓄熱カプセルを含んで構成される蓄熱材と、吸着材とを混合した蓄熱機能付吸着材であって、
前記蓄熱カプセルに対する外郭の体積割合が、5%以上30%以下の範囲に形成されるとともに、前記蓄熱カプセルの平均粒子径が、2.8μm以上15μm以下の範囲に形成され、前記外郭の表面に、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂の被覆層を有し、
前記被覆層を有する蓄熱カプセルを含む前記蓄熱材をバインダーにより成型した成型蓄熱材と、前記吸着材をバインダーにより成型した成型吸着材とが、混合されてなる蓄熱機能付吸着材。
【請求項7】
初期加熱温度で加熱して前記外郭を形成する外郭形成処理を経てカプセル化を行って前記蓄熱カプセルを完成した後、
前記初期加熱温度より高い再加熱温度で再加熱処理された前記蓄熱カプセルを含んで構成される請求項5又は6に記載の蓄熱機能付吸着材。
【請求項8】
前記高分子化合物が、メラミン樹脂であり、前記高分子化合物の未反応基と反応する基を有する樹脂が、ポリビニルアルコールである請求項5〜7の何れか一項に記載の蓄熱機能付吸着材。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか一項に記載の蓄熱機能付吸着材をケース内に充填してなるキャニスター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−221046(P2008−221046A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58927(P2007−58927)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【出願人】(000151209)株式会社マーレ フィルターシステムズ (159)
【Fターム(参考)】