説明

蓄電体の過放電警報回路

【課題】蓄電体における過放電の検出および警報の消費電力を抑制し、蓄電体を過放電から効果的に保護する。
【解決手段】電圧検出器S1により蓄電体Cの電圧を検出し、通常時は蓄電体Cの静電エネルギーをコンデンサC3に充電し、前記電圧検出部S1が過放電を検出した際は、コンデンサC3に充電された静電エネルギーを短時間放電する。この時、コンデンサC3から放電された電流は絶縁素子PC1の一次側に印加され、絶縁素子PC1の2次側がオンとなった際に、蓄電体Cと絶縁素子PC1の2次側との閉回路が形成される。そして、蓄電体Cからの電流が継電器RY1のコイルに励磁され、その継電器RY1の接点がオンに切り替わると、警報出力端子AL1,AL2間が導通する。そして、この継電器RY1の切替後はオン状態が機械的に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作電圧範囲が定められている蓄電体の電圧状態を監視し、低消費電力で過放電検出および警報出力を行う過放電警報回路に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンキャパシタは、一般的に動作電圧範囲が定められており、この動作電圧範囲内での使用であれば特性低下は小さく、電気二重層キャパシタと同等程度の寿命を有し長期に渡る安定使用が可能である。しかしながら、この動作電圧範囲外の電圧で使用すると急速に劣化してしまうため、使用に際しては、電圧の監視と制御を行う必要がある。
【0003】
また、リチウムイオン二次電池も、過充電や過放電となるといずれの場合も熱暴走につながり発火・爆発に至る危険性があるため、電圧の監視と制御が必要である。そのため、リチウムイオン二次電池には保護回路が標準的に搭載されており、常時セル電圧を監視し、過充電・過放電のそれぞれの場合に電界効果トランジスタを制御して主回路を遮断する方式がとられている。
【0004】
なお、セル電圧を監視するための手段として、電圧検出回路を備え、使用用途に応じてタイマーなどの制御と組み合わせてスイッチング素子を制御し、外部に信号を送出する回路が特許文献1に開示されている。
【0005】
また、二次電池など動作電圧範囲が定められている蓄電体の電圧を監視し、過放電から保護する方法として、特許文献2が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3670522号公報
【特許文献2】特開2007−103309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の方法の場合、電圧検出部からの電圧検出信号によって主回路が遮断され蓄電体と負荷とが切り離されたとしても、電圧検出部そのものが消費電力を有しているため、電圧検出部の消費電力により蓄電体からの放電は進行してしまう。さらに、過充電時や過放電時に外部に警報を出力する機能を有する場合は、警報出力の維持によっても電力を消費するため、深刻な過放電に至る危険性がより高くなる。このことから、蓄電体の過放電の検出および警報の出力は極めて低消費電力であることが求められる。
【0008】
以上示したようなことから、蓄電体における過放電の検出および警報の消費電力を抑制し、蓄電体を過放電から効果的に保護することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記従来の問題に鑑み案出されたもので、その一態様は、蓄電体の電圧監視および警報出力を行う過放電警報回路であって、蓄電体の電圧を検出する電圧検出部と、通常時は蓄電体の静電エネルギーを充電し、前記電圧検出部が過放電を検出した際は充電された静電エネルギーを短時間放電するコンデンサと、前記コンデンサから放電された電流が1次側に印加され2次側がオンとなった際、蓄電体と前記2次側との閉回路を形成する絶縁素子と、コイルが前記閉回路における蓄電体と絶縁素子との間に介挿され、接点が警報出力端子間に介挿され、接点がオンに切り替わると前記警報出力端子間が導通し、接点がオンに切り替わった後は警報出力端子間の導通状態を機械的に保持する継電器と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記蓄電体としてはリチウムイオンキャパシタを用いても良く、前記継電器にラッチングリレーを適用しても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蓄電体の過放電の検出および警報の消費電力を抑制し、蓄電体を過放電から効果的に保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態における蓄電体の過放電警報回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態における蓄電体の過放電警報回路を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
[実施形態]
図1は、本実施形態における蓄電体の過放電警報回路の一例を示す回路構成図である。過放電警報回路1は、図1に示すように、直列接続された蓄電体Cと、電圧検出器S1と、コンデンサC3と、絶縁素子(本実施形態ではフォトカプラ:以下、フォトカプラと称する)PC1と、継電器(本実施形態ではラッチングリレー:以下、ラッチングリレーと称する)RY1と、スイッチS1aと、スイッチS1bと、ダイオードD1と、警報出力端子AL1,AL2と、を備える。
【0015】
なお、図1では蓄電体Cを1つのみ示しているが、蓄電体Cは複数個直列に接続され、この蓄電体Cにはそれぞれ過放電警報回路1が設けられている。
【0016】
本実施形態では、前記蓄電体Cとして、リチウムイオンキャパシタが用いられる。このリチウムイオンキャパシタは、一般的に活性炭等を構成材料とした正極と、黒鉛やグラファイトなどを主とした負極と、をセパレータを介して対向させた構造となっており、正極は電気二重層キャパシタ,負極はリチウムイオン二次電池と同様の構成を有している。また、その電極間は電解質塩を含む有機溶媒で満たされている。
【0017】
そして、あらかじめ負極にリチウムイオンを吸蔵させて電位をもたせることにより、電気二重層キャパシタよりも高い2.2Vから3.8V程度の動作電圧範囲を有している。この高い動作電圧範囲により、電気二重層キャパシタに比べて3〜4倍の高エネルギーを蓄えることが可能である。
【0018】
そのため、電気二重層キャパシタのエネルギーでは不十分であった高エネルギーを要する用途や、ある程度長い放電時間が必要な用途への適用が期待され、特に、電源バックアップ用途への適用において、電気二重層キャパシタや二次電池よりも優位性が得られると考えられている。
【0019】
前記電圧検出部S1は、蓄電体Cに並列接続され、蓄電体Cの電圧を検出する。そして、蓄電体Cの電圧が定格動作電圧範囲よりも低下した場合には、電圧低下信号をスイッチS1a,S1bに出力する。
【0020】
前記コンデンサC3は電圧検出部S1に並列接続され、後述するスイッチS1bのオン時(通常時)には蓄電体Cの静電エネルギーを充電し、スイッチS1aのオン時(過放電検出時)には、その充電した静電エネルギーを短時間放電する。
【0021】
前記フォトカプラPC1は、その一次側における動作制御のフォトダイオードが、前記蓄電体C,電圧検出部S1に並列に接続されている。また、フォトカプラPC1における2次側のフォトトランジスタは、ラッチングリレーRY1を介して蓄電体Cに並列接続されている。
【0022】
前記スイッチS1bは電圧検出部S1とコンデンサC3との間に介挿され、前記スイッチS1aはフォトカプラPC1における1次側のフォトダイオードとコンデンサC3との間(N側)に介挿されている。前記スイッチS1bは、通常時、投入されており、電圧検出部S1の電圧低下信号により開放される。一方、スイッチS1aは、通常時、開放されており、電圧検出部S1の電圧低下信号により投入される。また、スイッチS1bとコンデンサC3との間には、逆流阻止用のダイオードD1が設けられている。
【0023】
前記ラッチングリレー(2巻線)RY1のコイルは蓄電体CとフォトカプラPC1のフォトトランジスタとの間に介挿され、接点側は警報出力端子AL1,AL2間に介挿されている。
【0024】
次に、図1に基づき、本実施形態における蓄電体Cの過放電警報回路1の動作について説明する。
【0025】
[蓄電体Cの電圧が定格動作電圧範囲内の場合]
蓄電体Cが定格動作電圧範囲内にあり、通常の動作状態にある場合は、スイッチS1bは投入され、スイッチS1aは開放されている。蓄電体Cの静電エネルギーは、スイッチS1b,ダイオードD1を介して、コンデンサC3に充電される。この時、スイッチS1aが開放状態であるため、フォトカプラPC1における一次側のフォトダイオードには電流が印加されない。
【0026】
[蓄電体Cの電圧が定格動作電圧範囲外の場合]
蓄電体Cからの放電が進み、電圧検出部S1で検出した電圧が定格動作電圧範囲よりも低下した際には、電圧検出部S1から電圧低下信号がスイッチS1a,S1bに出力される。この電圧低下信号により、スイッチS1aが投入され、同時にスイッチS1bが開放される。その結果、蓄電体CとコンデンサC3間は遮断され、コンデンサC3に蓄えられた静電エネルギーが、スイッチS1aを介して短時間放電される。これにより、フォトカプラPC1における1次側のフォトダイオードに短時間電流が印加され、フォトカプラPC1における2次側のフォトトランジスタがオンとなり、蓄電体Cと前記フォトトランジスタとで閉回路を形成する。
【0027】
この時、蓄電体Cに蓄えられた静電エネルギーは、ラッチングリレーRY1,フォトカプラPC1における2次側のフォトトランジスタを介して、短時間放電される。そして、ラッチングリレーRY1のコイルに短時間電流が励磁され、接点側がオン状態に切り替わると、警報出力端子AL1,AL2間が導通し、警報が出力される。ラッチングリレーRY1は、この状態を機械的に保持させる。すなわち、通常のリレーは電流を励磁し続けないとON状態を保持できないが、ラッチングリレーRY1はON/OFFの切替時のみ励磁電流の供給が必要であり、ON/OFFの切替後は励磁電流が無くてもその状態が保持される。
【0028】
その後、コンデンサC3の放電が終了することにより、フォトカプラPC1におけるフォトダイオードへの電流印加が停止し、フォトトランジスタがオフとなる。これにより、蓄電体CからラッチングリレーRY1への放電は遮断される。この時、警報出力端子AL1,AL2間はラッチングリレーRY1により、機械的にON状態が維持されるため、警報出力は継続される。
【0029】
以上示したように、本実施形態における蓄電体Cの過放電警報回路1は、警報出力動作をコンデンサC3に充電した電力によって短時間のみ行うことにより蓄電体Cの電力消費を抑制することができる。また、警報出力を機械的に保持することにより、コンデンサCの電力消費は、ラッチングリレーRY1の切替時のみとなり、蓄電体Cからの電力消費を抑制することが可能となる。
【0030】
その結果、蓄電体Cにおける過放電の検出および警報の消費電力を抑制し、蓄電体Cを深刻な過放電から効果的に保護することが可能となる。
【0031】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0032】
例えば、実施形態では、継電器にラッチングリレーRY1を用いたが、機械的に警報出力端子AL1,AL2間の導通状態が保持できるものであればその他の構成でもよい。
【0033】
また、実施形態では蓄電体Cとしてリチウムイオンキャパシタを用いたが、その他の蓄電体でも適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
C…蓄電体(リチウムイオンキャパシタ)
1…過放電警報回路
S1…電圧検出部
C3…コンデンサ
PC1…フォトカプラ(絶縁素子)
S1a,S1b…スイッチ
RY1…ラッチングリレー(継電器)
D1…ダイオード
AL1,AL2…警報出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電体の電圧監視および警報出力を行う過放電警報回路であって、
蓄電体の電圧を検出する電圧検出部と、
通常時は蓄電体の静電エネルギーを充電し、前記電圧検出部が過放電を検出した際は充電された静電エネルギーを短時間放電するコンデンサと、
前記コンデンサから放電された電流が1次側に印加され2次側がオンとなった際、蓄電体と前記2次側との閉回路を形成する絶縁素子と、
コイルが前記閉回路における蓄電体と絶縁素子との間に介挿され、接点が警報出力端子間に介挿され、接点がオンに切り替わると前記警報出力端子間が導通し、接点がオンに切り替わった後は警報出力端子間の導通状態を機械的に保持する継電器と、
を備えたことを特徴とする蓄電体の過放電警報回路。
【請求項2】
前記蓄電体は、リチウムイオンキャパシタであることを特徴とする請求項1記載の蓄電体の過放電警報回路。
【請求項3】
前記継電器は、ラッチングリレーであることを特徴とする請求項1または2記載の蓄電体の過放電警報回路。

【図1】
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【公開番号】特開2013−34302(P2013−34302A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168958(P2011−168958)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【出願人】(591108710)昌栄電機株式会社 (3)
【Fターム(参考)】