説明

薄膜型電気化学素子の製造方法

【課題】曲げ特性を改善し、素子特性の劣化を回避することができる薄膜型電気化学素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】電極固定工程では、正極21が支持された正極集電体23を正極用ラミネートフィルム53aに固定するとともに、負極31が支持された負極集電体33を負極用ラミネートフィルム53bに固定する。容器形成工程では、各ラミネートフィルム53a,53bを重ね合わせた後、該各ラミネートフィルム53a,53bにおける外周部58をその一辺59aを除いて熱溶着により封止して矩形袋状の容器51を形成する。電解液注入工程では、容器51の一辺59aの非封止部を注入口として電解液を容器51内に注入する。容器封止工程では、容器51の一辺59aを熱溶着により密封封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極とがセパレータを介して積層されてなる電極積層体を有し、電極積層体が電解液とともに金属ラミネートフィルム材からなる容器内に収容されている薄膜型電気化学素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の多様化に伴い、電子ペーパ、ICタグ、多機能カード、電子キーなどのさまざまな超薄型電子機器が実用化されており、それら電子機器には電源としてラミネートタイプの電池(電気化学素子)が組み込まれている。このラミネートタイプの電池に求められる特徴としては、軽薄長寿命に加えて、曲げに対する強度特性も求められている。
【0003】
ここでラミネートタイプの電池としては、扁平な形状の巻回電極体を金属ラミネートフィルム材の容器内に収容した薄型電池が従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。巻回電極体は、正極と負極とをセパレータを介して積層して巻回した構造を有している。また、巻回電極体の表面には保護テープが接着されており、その表面が接着層を介して外装容器の内面に接着固定されている。このように、巻回電極体と容器とが接着されることにより、ガス発生時における電池の膨れが防止されるようになっている。
【0004】
特許文献1の薄型電池では、巻回電極体が保護テープ及び接着層を介して容器の内面に接着固定されているため、部品点数が多くなる。また、扁平な形状の巻回電極体を容器内に収容しているため、電池を薄く形成するのには限界があるといった問題がある。
【0005】
また、正極集電体及び負極集電体を外装容器の一部として兼用するタイプの薄型電池が従来提案されている(例えば、特許文献2参照)。この薄型電池では、負極端子板上にリチウム負極、セパレータ、正極合剤、正極端子板を順次積み重ね、正極集電体及び負極集電体として機能する正極端子板及び負極端子板の周縁部が封口材によって熱溶着されている。このように、電極集電体を容器の外装材として兼用することで、薄型電池を形成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−151512号公報
【特許文献2】特許第2935427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献2の薄型電池における外装容器は、金属材のみからなる端子板にて形成されているため、金属ラミネートフィルム製の容器を使用した特許文献1の薄型電池と比較すると、曲げ強度が弱くなる。このため、薄型電池に曲げ応力が頻繁に加わることで、外装容器(電極集電体)の破断や皺が発生し、電池特性が悪化してしまう。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、曲げ特性を改善し、素子特性の劣化を回避することができる薄膜型電気化学素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段[1]〜[5]を以下に列挙する。
【0010】
[1]正極集電体に支持された正極と負極集電体に支持された負極とがセパレータを介して積層されてなる電極積層体を有し、前記電極積層体が電解液とともに金属ラミネートフィルム材からなる容器内に収容されて密封封止されている薄膜型電気化学素子の製造方法であって、シート状に形成された正極用金属ラミネートフィルム材と負極用金属ラミネートフィルム材とを別々に準備し、前記正極が支持された前記正極集電体を前記正極用金属ラミネートフィルム材に固定するとともに、前記負極が支持された前記負極集電体を前記負極用金属ラミネートフィルム材に固定する電極固定工程と、前記正極と前記負極とが対向するように内側に向けて前記正極及び前記負極間に前記セパレータを配置した状態で前記各金属ラミネートフィルム材を重ね合わせた後、該各金属ラミネートフィルム材における外周部をその一部を除いて熱溶着により封止して袋状の容器を形成する容器形成工程と、前記容器の非封止部を注入口として前記電解液を容器内に注入する電解液注入工程と、前記容器の非封止部を熱溶着により密封封止する容器封止工程とを含むことを特徴とする薄膜型電気化学素子の製造方法。
【0011】
手段1に記載の発明によると、金属ラミネートフィルム材を袋状の容器にする容器形成工程の前に電極固定工程を行い、シート状の各金属ラミネートフィルム材に正極集電体及び負極集電体が固定される。このようにすると、ラミネートフィルム材に各集電体を確実かつ容易に固定できるとともに、十分な固定強度を確保することができる。その後、容器形成工程において、各金属ラミネートフィルム材を重ね合わせて外周部を熱溶着により封止することで袋状の容器が形成される。このとき、一対の正極と負極とがセパレータを介して積層されて薄型の電極積層体が形成されるとともに、その電極積層体が容器内に収容される。さらに、電解液注入工程において、容器の非封止部から容器内に電解液が注入された後、容器封止工程において、熱溶着によりその非封止部が密封封止される。以上の製造工程により、容器内に電極積層体とともに電解液を確実に収容することができる。このように薄膜型電気化学素子を製造すると、容器の内面に十分な固定強度で正極集電体及び負極集電体を固定することができるため、曲げに対する特性が強くなり、容器の表面における皺の発生や容器の内部における異常を確実に防止することができる。この結果、薄膜型電気化学素子の保存特性や耐電解液性等を大幅に向上させることができる。
【0012】
[2]手段1において、前記電極固定工程では、前記正極集電体を熱可塑性樹脂を介して前記正極用金属ラミネートフィルム材に溶着するとともに、前記負極集電体を熱可塑性樹脂を介して前記負極用金属ラミネートフィルム材に溶着することを特徴とする薄膜型電気化学素子の製造方法。
【0013】
手段2に記載の発明によると、正極集電体及び負極集電体が熱可塑性樹脂を介して金属ラミネートフィルム材に溶着されるので、容器の内面に正極集電体及び負極集電体を確実に固定することができる。また、熱可塑性樹脂からなる樹脂層が容器の内面に形成されるので、容器の曲げ強度を十分に確保することができる。
【0014】
[3]手段1または2において、前記容器形成工程では、該各金属ラミネートフィルム材における三辺を熱溶着により封止する一方で一辺を非封止部とした矩形袋状の容器を形成することを特徴とする薄膜型電気化学素子の製造方法。
【0015】
手段3に記載の発明によると、一辺を非封止部として矩形袋状の容器が形成されるので、その容器の一辺に形成された非封止部を注入口として容器内に電解液を確実に注入することができる。
【0016】
[4]手段3において、前記電極積層体は複数のタブを備えるとともに、前記複数のタブは同じ方向に突出し、前記容器形成工程では、前記電極積層体におけるタブ突出側に対応する辺が前記非封止部となるように、該各金属ラミネートフィルム材における他の三辺を熱溶着により封止することを特徴とする薄膜型電気化学素子の製造方法。
【0017】
手段4に記載の発明によると、電極積層体のタブ突出側となる一辺を非封止部とし、他の三辺を熱溶着により封止することで矩形袋状の容器が形成される。この場合、容器における三辺の封止部を均一な溶着強度で形成することができ、タブ突出側となる一辺を注入口として容器内に電解液を確実に注入することができる。そして、容器封止工程では、電極積層体のタブを挟み込んだ状態で容器の非封止部が熱溶着により密封封止される。このようにすると、電極積層体の複数のタブを容器外部に突出させた状態で容器を確実に密封封止することができ、各タブを介して電極積層体の正極及び負極に電気的に接続することができる。
【0018】
[5]手段1乃至4のいずれか1項において、前記電極固定工程は、1枚の前記正極用金属ラミネートフィルム材に対して複数の前記正極集電体を溶着するとともに、1枚の前記負極用金属ラミネートフィルム材に対して複数の前記負極集電体を溶着する工程であり、前記電極固定工程の後、前記各ラミネートフィルム材を前記電気化学素子の素子単位毎に切断する切断工程を行うことを特徴とする薄膜型電気化学素子の製造方法。
【0019】
手段5に記載の発明によると、1枚の金属ラミネートフィルム材に対して複数の集電体が熱可塑性樹脂を介して溶着された後、切断工程によって、電気化学素子の素子単位毎にラミネートフィルム材が切断される。このようにすると、金属ラミネートフィルム材に各集電体を固定した中間製品を効率よく製造することができ、薄膜型電気化学素子の製造コストを低く抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上詳述したように、手段1乃至5のいずれかに記載の発明によると、曲げ特性を改善し、素子特性の劣化を回避することができる薄膜型電気化学素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施の形態のリチウム一次電池を示す平面図。
【図2】一実施の形態のリチウム一次電池を示す断面図。
【図3】一実施の形態のリチウム一次電池の製造方法を示す説明図。
【図4】一実施の形態のリチウム一次電池の製造方法を示す説明図。
【図5】一実施の形態のリチウム一次電池の製造方法を示す説明図。
【図6】一実施の形態のリチウム一次電池の製造方法を示す説明図。
【図7】別の実施の形態のリチウム一次電池の製造方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を薄膜型電気化学素子としてのリチウム一次電池に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施の形態におけるリチウム一次電池10を示す平面図であり、図2はそのリチウム一次電池10の断面図である。本実施の形態のリチウム一次電池10は、0.45mm以下の厚さを有する薄型ラミネートタイプの電池である。
【0023】
図1及び図2に示されるように、リチウム一次電池10は、正極集電体23に支持された正極21と負極集電体33に支持された負極31とがセパレータ41を介して積層されてなる電極積層体11を備えている。リチウム一次電池10において、電極積層体11は、非水電解液とともに容器51内に密封封止されている。非水電解液としては、プロピレンカーボーネートに溶質としてLiN(SOCFと表記されるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドを溶解させた電解液を用いている。
【0024】
セパレータ41は、電解液や電極活物質等に対して耐久性があり、連通気孔を有する非導電性の多孔体等からなる。本実施の形態では、セパレータ41として、ポリプロピレンからなる不織布が用いられる。セパレータ41の厚さは、電池10の内部抵抗を小さくするために薄いほうが好ましいが、電解液の保持量、流通性、強度等を勘案して適宜設定することができる。
【0025】
正極21は、二酸化マンガン(MnO)からなる正極活物質と、アセチレンブラックまたはグラファイトなどの炭素系導電剤と、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)からなる結着剤とを含んで構成されている。正極集電体23は、正極21を支持しつつ集電を行うための金属箔であり、例えば、厚みが20μmのステンレス箔からなる。正極集電体23は、表面を粗化するためのダル加工が施されるとともに部分的にニッケルめっきが施されている。本実施の形態では、正極集電体23の両面が粗化面となっており、正極集電体23の片面(図2では上側の粗化面)にニッケルめっき(図示略)が施されている。そして、正極集電体23のニッケルめっき上に正極21が形成されている。正極集電体23は平面視矩形状に形成され、その四辺のうちの一辺に正極用リード端子25(タブ)が溶接されている。この正極用リード端子25は、容器51の密封封止部52を介して容器51外部に引き出されている。
【0026】
負極31は、負極活物質としてのリチウム箔からなり、負極集電体33の片面に圧着されている。なお、負極31としては、リチウム箔の代わりにリチウム合金箔(例えば、アルミニウム−リチウム合金箔等)を用いてもよい。負極集電体33は、負極31を支持しつつ集電を行うための金属箔であって、例えば、厚みが20μmのニッケル箔からなる。負極集電体33は平面視矩形状に形成され、その四辺のうちの一辺に負極用リード端子35(タブ)が溶接されている。この負極用リード端子35も、正極用リード端子25と同様に容器51の密封封止部52を介して容器51外部に引き出されている。
【0027】
リチウム一次電池10の容器51は、アルミニウム箔を樹脂フィルムにラミネートしてなる2枚のアルミニウム・ラミネートフィルム(金属ラミネートフィルム材)53a,53bを用いて矩形袋状に加工した金属ラミネートフィルム製の容器である。なお、アルミニウム箔以外の他の金属箔からなる金属ラミネートフィルム材を用いて、容器51を形成してもよい。
【0028】
本実施の形態では、容器51を構成するラミネートフィルム53a,53bの内側に接着剤として機能する熱可塑性樹脂55(具体的には、変性ポリオレフィン樹脂の一種である酸変性ポリプロピレン樹脂)が設けられている。容器51内において、正極集電体23が熱可塑性樹脂55を介して正極用ラミネートフィルム53aに溶着されるとともに、負極集電体33が熱可塑性樹脂55を介して負極用ラミネートフィルム53bに溶着されている。各ラミネートフィルム53a,53bは100μm程度の厚さを有し、熱可塑性樹脂55は20μm程度の厚さを有している。
【0029】
なお、負極集電体33のニッケル箔と比較すると正極集電体23のステンレス箔は、熱可塑性樹脂55の接着性が劣る。本実施の形態では、正極集電体23を粗化面としてその粗化面が熱可塑性樹脂55を介してラミネートフィルム53aに溶着されることで、ラミネートフィルム53aと正極集電体23との溶着強度が十分に確保されている。また、負極集電体33のニッケル箔についてもダル加工を施して粗化面を形成し、負極集電体33の粗化面を溶着するようにしてもよい。
【0030】
また、容器51では、外周縁に沿ってラミネートフィルム53a,53bを帯状に熱溶着することで密封封止部52が形成されており、密封封止部52により容器51が密封封止されている。熱溶着による封止は、表裏のラミネートフィルム53a,53bに正極用リード端子25及び負極用リード端子35を挟み込んだ状態で行われる。
【0031】
次に、リチウム一次電池10の製造方法について説明する。
【0032】
正極21の作製は下記の手順で行う。先ず、シート状のステンレス箔を準備し、その両面にダル加工による表面処理を施して粗化面を形成する(粗化工程)。また、ステンレス箔の片側の粗化面に部分ニッケルめっきを施す。さらに、ステンレス箔を所定サイズに切断することで、厚さが20μmの矩形状の正極集電体23を作製する。
【0033】
次に、二酸化マンガン(MnO)からなる正極活物質と、アセチレンブラックまたはグラファイトなどの炭素系導電剤と、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)からなる結着剤とを所定の質量比となるように混合する。その混合物に有機溶剤となるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などを加え、溶解させることで正極活物質スラリーを準備する。そして、正極集電体23のニッケルめっき上に、正極活物質スラリーを100μm程度の厚みとなるよう塗布した後、真空中にて100℃の温度で乾燥して正極21を作製する。
【0034】
負極31の作製は以下の手順で行う。先ず、シート状のニッケル箔を準備し、ニッケル箔を所定サイズに切断することで、厚さが20μmの矩形状の負極集電体33を作製する。また、所定サイズに切断したリチウム箔を負極集電体33に重ね合わせ、所定の圧力で圧着することで、負極集電体33の片面に負極31を形成する。
【0035】
この後、正極集電体23に正極用リード端子25を超音波溶接し、かつ、負極集電体33に負極用リード端子35を超音波溶接する。また、プロピレンカーボーネートに溶質としてLiN(SOCFと表記されるリチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドを溶解させて非水電解液を作製する。
【0036】
次に、電極固定工程では、アルミニウム・ラミネートフィルムを容器51の平面サイズに合わせて矩形状に切断し、2枚の正極用ラミネートフィルム53aと負極用ラミネートフィルム53bとを準備する。その後、5μm〜30μm(本実施の形態では20μm)の厚さを有する熱可塑性樹脂55(上記の変性ポリプロピレン樹脂)を正極集電体23の粗化面と正極用ラミネートフィルム53aとの間に介在させる。そして、加熱加圧用治具(図示略)により140℃の熱を加えて加圧することにより、正極21を支持する正極集電体23を熱可塑性樹脂55を介してラミネートフィルム53aに溶着固定する(図3参照)。また、同様の手法により、負極31を支持する負極集電体33を熱可塑性樹脂55を介して負極用ラミネートフィルム53bに溶着固定する(図4参照)。
【0037】
次いで、正極21と負極31とが対向するように内側に向けそれら正極21及び負極31間にセパレータ41を配置した状態で各ラミネートフィルム53a,53bを重ね合わせる。そして、図5に示されるように、加熱加圧用治具57によりラミネートフィルム53a,53bの外周部58に170℃の熱を加えて加圧することにより、ラミネートフィルム53a,53bを熱溶着により密封封止する。なおここでは、先ず、図6に示されるように、ラミネートフィルム53a,53bの外周部58において、各リード端子25,35の突出側となる一辺59a以外の他の三辺59b,59c,59dについて密封封止し、一辺59aを非封止部とした矩形袋状の容器51を形成する(容器形成工程)。そして、その容器51の一辺59aの非封止部を注入口として非水電解液を容器51内に注入する(電解液注入工程)。その後、容器51において、一辺59aのフィルム53a,53bにより正極用リード端子25及び負極用リード端子35を挟み込んだ状態でその一辺59aの非封止部を熱溶着により密封封止する(容器封止工程)。以上の工程を経てリチウム一次電池10を製造する。
【0038】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0039】
(1)本実施の形態では、ラミネートフィルム53a,53bを袋状にする容器形成工程の前に電極固定工程を行い、シート状のラミネートフィルム53a,53bに正極集電体23及び負極集電体33が固定される。このようにすると、各集電体23,33を確実かつ容易に固定できるとともに、十分な固定強度を確保することができる。その後、容器形成工程では、各ラミネートフィルム53a,53bを重ね合わせて外周部58を熱溶着により封止することで袋状の容器51が形成される。この容器51の形成と同時に、一対の正極21と負極31とがセパレータ41を介して積層されて薄型の電極積層体11が形成されるとともに、その電極積層体11が容器51内に収容される。さらに、電解液注入工程において、容器51の一辺59aの非封止部から容器51内に非水電解液が注入された後、容器封止工程において、熱溶着によりその一辺59aの非封止部が密封封止される。この結果、電極積層体11とともに電解液を容器51内に確実に収容することができる。このようにリチウム一次電池10を製造すると、容器51の内面に十分な固定強度で正極集電体23及び負極集電体33を固定することができるため、曲げに対する特性が強くなる。これにより、容器51の表面における皺の発生や容器51の内部における異常(変形、皺、正極21や負極31の剥がれ等)を確実に防止することができる。この結果、リチウム一次電池10の保存特性や耐電解液性等を大幅に向上させることができる。
【0040】
(2)本実施の形態の場合、正極集電体23が正極用ラミネートフィルム53aに熱可塑性樹脂55を介して溶着されるとともに、負極集電体33が負極用ラミネートフィルム53bに熱可塑性樹脂55を介して溶着される。このようにすると、容器51の内面に正極集電体23及び負極集電体33を確実に固定することができる。また、熱可塑性樹脂55からなる樹脂層が容器51の内面に形成されるので、容器51の曲げ強度を十分に確保することができる。
【0041】
(3)本実施の形態では、容器形成工程において、電極積層体11のリード端子突出側となる一辺59aを非封止部として他の三辺59b〜59dを熱溶着により封止することで矩形袋状の容器51が形成される。この場合、容器51における三辺59b〜59dの密封封止部52を均一な溶着強度で形成することができ、リード端子突出側となる一辺59aを注入口として容器51内に電解液を確実に注入することができる。また、容器封止工程では、電極積層体11の各リード端子25,35を挟み込んだ状態で容器51の一辺59aの非封止部が熱溶着により密封封止される。このようにすると、電極積層体11の各リード端子25,35を容器51外部に突出させた状態で容器51を確実に密封封止することができる。また、リチウム一次電池10において、各リード端子25,35を介して容器51内における電極積層体11の正極21及び負極31に電気的に接続することができる。
【0042】
(4)本実施の形態のリチウム一次電池10では、正極集電体23(ステンレス箔)の表面が粗化面となっているので、熱可塑性樹脂55との接触面積が増し溶着強度を十分に確保することができる。
【0043】
(5)本実施の形態のリチウム一次電池10では、正極集電体23の粗化面にニッケルめっきが施されているので、正極21と正極集電体23との密着性が良好となり、正極21の剥がれが防止されるのに加えて電池10の放電特性を高めることができる。
【0044】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0045】
・上記実施の形態では、容器51の平面サイズに合わせて矩形状に切断したラミネートフィルム53a,53bに正極集電体23及び負極集電体33を1枚ずつ溶着して、リチウム一次電池10を製造していたが、これに限定されるものではない。具体的には、図7に示すように、長く帯状に形成された1枚のラミネートフィルム53aを用意して、そのラミネートフィルム53aに対して複数の正極集電体23を溶着させる。同様に、1枚のラミネートフィルム53bに対して複数の負極集電体33を溶着させる。そして、各集電体23,33の溶着後、各ラミネートフィルム53a,53bを電池単位毎に切断する切断工程を行って、リチウム一次電池10を製造するようにしてもよい。なお、切断工程としては、上記容器形成工程前に行ってもよいし、容器形成工程後に行ってもよい。さらに、容器封止工程後において切断工程を行うようにしてもよい。このようすると、図1のリチウム一次電池10を効率よく製造することができ、リチウム一次電池10の製造コストを抑えることができる。
【0046】
・上記実施の形態では、ラミネートフィルム53a,53bの内面に熱可塑性樹脂55を設け、ラミネートフィルム53a,53bと集電体23,33とを熱可塑性樹脂55を介して溶着するものであったがこれに限定されるものではない。例えば、接着剤を用いて各集電体23,33を各ラミネートフィルム53a,53bに接着固定するように構成してもよい。また例えば、アルミニウム箔と熱可塑性樹脂の接着層とが一体に形成された金属ラミネートフィルム材も実用化されている。この金属ラミネートフィルム材を用い、金属ラミネートフィルム材の最内層を構成する熱可塑性樹脂の接着層(樹脂層)を介して集電体23,33を溶着してリチウム一次電池10を製造してもよい。このようにすると、ラミネートフィルム53a,53bと熱可塑性樹脂55とを別部品として準備する必要がないため、部品点数を低減することができ、リチウム一次電池10の製造コストを低く抑えることができる。
【0047】
・上記実施の形態のリチウム一次電池10では、正極用リード端子25及び負極用リード端子35が同一方向から引き出されていたが、これに限定するものではなく、正極用リード端子25及び負極用リード端子35が互いに反対方向に引き出される構成としてもよい。また、上記実施の形態の容器形成工程では、電極積層体11におけるタブ突出側に対応する辺59aを非封止部としたが、それ以外の辺59b,59c,59dを非封止部としてもよい。あるいは、いずれの辺59a〜59dを非封止部とするのでもなく、辺と辺とが交わる角部を非封止部としてもよい。
【0048】
・上記実施の形態において、容器51は、矩形袋状に形成されるものであったが、矩形以外に三角形や五角形などの多角袋状や円形や楕円形などの袋状に形成されるものであってもよい。なおこの場合、容器形成工程では、ラミネートフィルムにおける外周部をその一部を除いて熱溶着により封止して所定形状の容器51を形成する。
【0049】
・上記実施の形態では、リチウム一次電池10に具体化するものであったが、金属ラミネートフィルム製の容器51に収容される薄膜型電気化学素子であれば、リチウム一次電池以外の電池やキャパシタなどに本発明を具体化してもよい。
【0050】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0051】
(1)手段1乃至5のいずれか1項において、前記正極集電体及び前記負極集電体に粗化面を形成するための粗化工程をさらに含み、前記電極固定工程では、前記正極集電体及び前記負極集電体の粗化面が前記熱可塑性樹脂を介して前記金属ラミネートフィルム材に溶着されることを特徴とする薄膜型電気化学素子の製造方法。
【0052】
(2)手段1乃至5のいずれか1項において、前記電極積層体は、一対の正極及び負極を積層した積層体であることを特徴とする薄膜型電気化学素子の製造方法。
【0053】
(3)手段1乃至5のいずれか1項において、前記薄膜型電気化学素子が一次電池であることを特徴とする薄膜型電気化学素子の製造方法。
【符号の説明】
【0054】
10…薄膜型電気化学素子としてのリチウム一次電池
11…電極積層体
21…正極
23…正極集電体
25…タブとしての正極用リード端子
31…負極
33…負極集電体
35…タブとしての負極用リード端子
41…セパレータ
51…容器
53a…正極用金属ラミネートフィルム材としてのラミネートフィルム
53b…負極用金属ラミネートフィルム材としてのラミネートフィルム
55…熱可塑性樹脂
58…外周部
59a…非封止部となる金属ラミネートフィルム材の一辺
59b〜59d…金属ラミネートフィルム材の三辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体に支持された正極と負極集電体に支持された負極とがセパレータを介して積層されてなる電極積層体を有し、前記電極積層体が電解液とともに金属ラミネートフィルム材からなる容器内に収容されて密封封止されている薄膜型電気化学素子の製造方法であって、
シート状に形成された正極用金属ラミネートフィルム材と負極用金属ラミネートフィルム材とを別々に準備し、前記正極が支持された前記正極集電体を前記正極用金属ラミネートフィルム材に固定するとともに、前記負極が支持された前記負極集電体を前記負極用金属ラミネートフィルム材に固定する電極固定工程と、
前記正極と前記負極とが対向するように内側に向けて前記正極及び前記負極間に前記セパレータを配置した状態で前記各金属ラミネートフィルム材を重ね合わせた後、該各金属ラミネートフィルム材における外周部をその一部を除いて熱溶着により封止して袋状の容器を形成する容器形成工程と、
前記容器の非封止部を注入口として前記電解液を容器内に注入する電解液注入工程と、
前記容器の非封止部を熱溶着により密封封止する容器封止工程と
を含むことを特徴とする薄膜型電気化学素子の製造方法。
【請求項2】
前記電極固定工程では、前記正極集電体を熱可塑性樹脂を介して前記正極用金属ラミネートフィルム材に溶着するとともに、前記負極集電体を熱可塑性樹脂を介して前記負極用金属ラミネートフィルム材に溶着することを特徴とする請求項1に記載の薄膜型電気化学素子の製造方法。
【請求項3】
前記容器形成工程では、該各金属ラミネートフィルム材における三辺を熱溶着により封止する一方で一辺を非封止部とした矩形袋状の容器を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜型電気化学素子の製造方法。
【請求項4】
前記電極積層体は複数のタブを備えるとともに、前記複数のタブは同じ方向に突出し、
前記容器形成工程では、前記電極積層体におけるタブ突出側に対応する辺が前記非封止部となるように、該各金属ラミネートフィルム材における他の三辺を熱溶着により封止することを特徴とする請求項3に記載の薄膜型電気化学素子の製造方法。
【請求項5】
前記電極固定工程は、1枚の前記正極用金属ラミネートフィルム材に対して複数の前記正極集電体を溶着するとともに、1枚の前記負極用金属ラミネートフィルム材に対して複数の前記負極集電体を溶着する工程であり、
前記電極固定工程の後、前記各ラミネートフィルム材を前記電気化学素子の素子単位毎に切断する切断工程を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薄膜型電気化学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97931(P2013−97931A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238049(P2011−238049)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000177081)FDK鳥取株式会社 (28)
【Fターム(参考)】