説明

薬液ポンプ及び土壌消毒機

【課題】 薬液を安定的に吐出するようにする。
【解決手段】 本発明の薬液ポンプ1は、薬液Bを吸入口3からポンプ室2内へ吸入するとともに、ポンプ室2内の薬液Bを吐出口5から吐出するように構成されている。そして、吐出口5は吸入口3よりも相対的に高い位置に配設されている。このため、薬液ポンプ1が傾いても、ポンプ室2内の残留空気Aが吐出口5に集まり易く、該吐出口5から速やかに排出され易い。また、本発明の土壌消毒機は、地中に吐出するための薬液Bを薬液ポンプ1により送るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を送るための薬液ポンプ及び薬液を地中に対して吐出し土壌を消毒する土壌消毒機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1に記載された土壌消毒機を例示する。この土壌消毒機は、圃場内を走行しながら土中に薬液を注入するためのものであり、トラクター等の自走自在な駆動車に対し、転動輪に走行自在に支持して成る機体を牽引自在に連結せしめている。その機体には、前記転動輪に連動して作動するように構成された薬液ポンプと、薬液を収納する薬液タンクとを搭載している。薬液ポンプの吸入口側には薬液タンクに通じる吸引パイプを配し、吐出口側には機体底部の注入刀先端の吐出口に通じる吐出パイプを配してなっている。
【0003】
従来の薬液ポンプとしては、図4に示すダイヤフラムポンプからなるもの例示する。この薬液ポンプ50は、吸入口52及び吐出口54にそれぞれ吸入口逆止弁53及び吐出口逆止弁55を有するポンプ室51内を加圧したり減圧したりするようにプッシュロッド56を介してダイヤフラム57を往復運動させることにより吸入口52から吐出口54へ向けて薬液Bの流れを生じさせるように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−17058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の薬液ポンプ50は、吸入口52と吐出口54が略同一高さに配設されているため、圃場表面の状態等により土壌消毒機の機体の姿勢が変動し、図4に示すように、吸入口側が高くなるように薬液ポンプ50が傾くと、ポンプ室51内の残留空気Aが吸入口側に集まることにより吐出口54から排出されず、ポンプ室51内に残留した状態となってしまう。この状態では、薬液Bを吐出口54から吐出させるために、ダイヤフラム57でポンプ室51内を加圧しても、吸入口側の残留空気Aが縮んで、吐出口54から薬液Bが安定して吐出されないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の薬液ポンプは、
薬液を吸入口からポンプ室内へ吸入するとともに、ポンプ室内の薬液を吐出口から吐出するように構成された薬液ポンプであって、
前記吐出口は前記吸入口よりも相対的に高い位置に配設されている。
【0007】
前記吐出口は、前記ポンプ室内における最も高い位置に開口するように配設されることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、前記吐出口を前記吸入口よりも相対的に高い位置に配設したので、前記薬液ポンプが傾いても、前記ポンプ室内の残留空気が前記吐出口に集まり易く、該吐出口から速やかに排出され易い。このように、残留空気がポンプ室内に溜まることを防止することができるので、安定した吐出量が得られる。
【0009】
前記薬液ポンプとしては、
前記ポンプ室における低位置に開口するように配設された薬液排出口と、該薬液排出口を開閉する開閉弁とを備えた態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、前記薬液ポンプの使用後に、前記開閉弁を開けて前記ポンプ室内に残留する薬液を前記薬液排出口から簡単に排出させることができる。
【0011】
また、本発明の土壌消毒機は、地中に噴出するための薬液を、前記薬液ポンプにより送るように構成されている。
【0012】
この構成によれば、前記薬液ポンプにより、薬液を安定的に地中に吐出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る薬液ポンプ及び土壌消毒機によれば、薬液を安定的に吐出することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図2は本発明を具体化した第一実施形態の薬液ポンプ1及び該薬液ポンプ1を備えた土壌消毒機10を示している。この土壌消毒機10は、いわゆる自走タイプのものであり、前後に伸びる機体フレーム11の前部に走行用の原動機12を搭載して前輪13を駆動回転している。機体フレーム11の後端には、転動輪14が回転自在に取り付けられている。機体フレーム11後端より延出するブラケット11aには薬液吐出手段である薬液ポンプ1が固定されている。転動輪14の回転軸14aには、カム14bが取り付けられており、回転軸14aの回転に伴いカム14bはカムフォロアー16aを先端に取り付けたプッシュロッド16を上下に往復運動させるように構成されている。本例の薬液ポンプ1は、プッシュロッド16により駆動されるダイヤフラムポンプとなっており、薬液タンク18内の薬液Bを吸入するとともに、注入刀19の薬液吐出部19aより地中に吐出させるようになっている。なお、図1において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0015】
薬液ポンプ1は、吸入口3及び吐出口5にそれぞれ吸入口逆止弁4及び吐出口逆止弁6を有するポンプ室2と、該ポンプ室2内を加圧したり減圧したりするように往復運動可能に設けられた可動体としてのダイヤフラム7を備えている。本例では、吸入口3及び吐出口5がポンプ室2における天井側に設けられ、ダイヤフラム7がポンプ室2における底側に設けられている。ポンプ室2における天井側の内面の一部に上方への窪み2aが設けられ、該窪み2aにポンプ室2内の残留空気Aが集まるようにしている。この窪み2aの略頂点に吐出口5が配設され、吸入口3は該窪み2aの外側に配設されている。このように、吐出口5は吸入口3よりも相対的に高い位置に配設されている。特に、本例では、吐出口5は、ポンプ室2内における最も高い位置(残留空気Aが最も集まる位置)に開口するように配設されている。吸入口逆止弁4は、ポンプ室内方向への薬液Bの流れを許し、その逆方向の流れを阻止するように構成されている。吐出口逆止弁6は、ポンプ室外方向への薬液Bの流れを許し、その逆方向の流れを阻止するように構成されている。ダイヤフラム7は、上下に往復運動するプッシュロッド16により、駆動されるように構成されている。そして、ダイヤフラム7を往復運動させてポンプ室2内を加圧したり減圧したりすることにより吸入口3から吐出口5へ向けて薬液Bの流れを生じさせるように構成されている。
【0016】
以上のように構成された本発明によれば、吐出口5を吸入口3よりも相対的に高い位置に配設したので、薬液ポンプ1が傾いても、ポンプ室2内の残留空気Aが吐出口5に集まり易く、該吐出口5から速やかに排出され易い。このように、残留空気Aがポンプ室2内に溜まることを防止することができるので、安定した吐出量が得られる。
【0017】
また、吐出口5は、ポンプ室2内における最も高い位置に開口するように配設されているので、ポンプ室2内の残留空気Aを吐出口5から確実に排出させることができる。
【0018】
次に、図3は本発明を具体化した第二実施形態を示している。この薬液ポンプ31及び該薬液ポンプ31を備えた土壌消毒機は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く。
【0019】
本例の薬液ポンプ31は、ポンプ室の左右方向における一方側に吸入口3及び吐出口5が設けられ、同他方側にダイヤフラム7が設けられている。吐出口5は、前記一方側における最も高い位置(残留空気Aが最も集まる位置)に配設され、吸入口3は、該吐出口5よりも相対的に低い位置に配設されている。また、ダイヤフラム7は左右に往復運動可能に設けられており、左右に往復運動するプッシュロッド16により駆動されるように構成されている。
【0020】
また、本例の薬液ポンプ31は、前記一方側における低位置に開口するように配設された薬液排出口32と、該薬液排出口32を開閉する開閉弁33とを備えている。本例では、薬液排出口32の配設位置は、ポンプ室2内における可能な限り低い位置となっている。この構成によれば、薬液ポンプ1の使用後に、開閉弁33を開けてポンプ室2内に残留する薬液Bを薬液排出口32から簡単に排出させることができる。この種の薬液Bは刺激臭の強い劇薬であり、該薬液Bがポンプ室2内に残留したままになっていると、特にダイヤフラム7を損傷するおそれがあるが、これを防止することができる。
【0021】
本実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果に加え、上記本実施形態特有の効果を得ることができる。
【0022】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)自走のための機構(走行用の原動機12等)に代えて、トラクター等の自走可能な駆動車に対して連結する連結具を設け、該駆動車によって牽引されるように、本発明の土壌消毒機10を構成すること。
(2)薬液ポンプ1,31として、他の構造のポンプを採用すること。特に限定されないが、ピストンポンプや、プランジャポンプを採用することを例示する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を具体化した第一実施形態に係る薬液ポンプ及びそれを備えた土壌消毒機を示す側面図である。
【図2】同薬液ポンプの側断面図である。
【図3】本発明を具体化した第二実施形態に係る薬液ポンプの側断面図である。
【図4】従来の薬液ポンプの側断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 薬液ポンプ
2 ポンプ室
2a 窪み
3 吸入口
4 吸入口逆止弁
5 吐出口
6 吐出口逆止弁
7 ダイヤフラム
10 土壌消毒機
14 転動輪
14a 回転軸
14b カム
16 プッシュロッド
16a カムフォロアー
18 薬液タンク
19 注入刀
19a 薬液吐出部
31 薬液ポンプ
32 薬液排出口
33 開閉弁
A 残留空気
B 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を吸入口からポンプ室内へ吸入するとともに、ポンプ室内の薬液を吐出口から吐出するように構成された薬液ポンプであって、
前記吐出口は前記吸入口よりも相対的に高い位置に配設された薬液用ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプ室における低位置に開口するように配設された薬液排出口と、該薬液排出口を開閉する開閉弁とを備えた請求項1記載の薬液ポンプ。
【請求項3】
地中に吐出するための薬液を、請求項1又は2記載の薬液ポンプにより送るように構成された土壌消毒機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate